四半期報告書-第120期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

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2022/08/03 9:49
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(1) 経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2022年4月1日~6月30日)の世界経済は、経済活動の制限の緩和が進み、個人消費を中心に景気の回復が続きました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレの進行により、先行きの不透明感が強まりました。米国経済は、供給制約に起因するインフレが高進しましたが、良好な雇用・所得環境や家計の過剰貯蓄の取り崩しによる活発な個人消費が景気を下支えしました。欧州経済は、ロシア・ウクライナ情勢が影響し、貿易取引の縮小が景気の重石となったものの、過剰貯蓄の取り崩しによる個人消費の活発化が景気を下支えしました。アジア・新興国経済は、厳格な活動規制措置を発動せず個人消費が堅調に推移したことや、米国向けの輸出が好調だったことが景気回復を牽引しました。中国経済は、5月以降徐々に多くの都市で活動制限が緩和され、個人消費の底入れや工業生産の持ち直しが見られ、先行きの不透明感はあるものの景気は最悪期を脱したと思われます。わが国経済は、中国のロックダウンの影響で生産・輸出が下振れしましたが、行動制限の緩和による活発な個人消費が経済を牽引しました。
当社グループでは、2021年度に策定した戦略経営計画「FUSION25」の完遂に向けて、成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめとした重点9テーマの施策に取り組んでおります。
上記のような事業環境のもと、事業活動の上振れと下振れの両面から複数のシナリオを想定しながら、それぞれの地域・事業の進捗状況をきめ細かくフォローし、課題に対応することにより、環境変化による当社事業への影響を極小化することに努めました。具体的には、次に挙げるテーマへの取り組みを継続・強化しました。
・市場・顧客にその価値を認めていただける、差別化商品の投入による販売価格政策の推進
・業務用空調をはじめとした各事業における、販売力・営業力の強化
・原材料市況の悪化や資源価格の高騰に対応するための、変動費コストダウンの推進
・物流経費のさらなる高騰への対応としての、物流コストの効率化
・積極的な投資と収益性向上を両立させながらの、固定費の効率化
・次年度以降も見据えた、中期的な調達・供給力の強化
・大型設備投資の成果創出・収益化
また、世の中の変化を機会と捉え、カーボンニュートラル実現の加速やデジタル技術の活用など、当社グループの強みを活かし次の飛躍につなげる挑戦テーマを設定し、強靭な企業体質の構築と成果創出に取り組みました。
当第1四半期連結累計期間の経営成績については、売上高は9,677億55百万円(前年同期比21.1%増)となりました。しかし、原材料価格の高騰や中国でのロックダウン等の影響を受け、利益面では、営業利益は1,078億60百万円(前年同期比1.3%減)、経常利益は1,095億15百万円(前年同期比2.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は、705億51百万円(前年同期比10.3%減)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
①空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前年同期比20.9%増の8,892億54百万円となりました。営業利益は、前年同期比5.5%減の944億83百万円となりました。
国内空調機器の業界需要は、事業環境が不透明な中での設備投資の先送りや、半導体や部品・部材不足に起因する現場工期の遅延、住宅用市場での昨年の巣ごもり需要からの反動など、需要面・供給面でそれぞれ影響が生じ、業務用・住宅用ともに前年同期を下回りました。このような状況の中、当社グループは、強靭なサプライチェーンの実現による安定的な生産・供給の維持に努め、影響の極小化に取り組みました。
国内業務用空調機器市場に向けては、施工性を大幅に向上させた「スカイエア」・「VRV」シリーズや、全熱交換器『ベンティエール』や『UVストリーマ空気清浄機』など、当社グループの持つ換気・除菌機器と空調機器を組み合わせることで、顧客の抱える空気の課題に沿った提案を拡大しました。このように、商品ラインナップの強化と提案の幅を広げましたが、厳しい需要環境もあり、業務用空調機器の売上高は前年同期を下回りました。
国内住宅用空調機器市場に向けては、無給水加湿や給気・排気換気など独自の機能を搭載するルームエアコン『うるさらX(エックス)』、細部までデザインにこだわったルームエアコン『risora(リソラ)』など、当社独自の商品力を活かしたユーザー訴求を強化しました。また、エネルギー価格の上昇によりニーズの高まる省エネ性能の訴求拡大を進めました。これらの取り組みにより、需要の落ち込みはありましたが、住宅用空調機器の売上高は前年同期並みとなりました。
米州では、記録的な高インフレや、一部機種で部品不足に起因した供給の逼迫、労働者不足等の問題がある中でも生産力の向上に努め、拡販しました。また、価格政策の着実な実行に努めた結果、売上高は前年同期を大きく上回りました。住宅用空調機器については、販売の増加によりシェアも堅調に向上し、また、買収による販売網強化や価格政策の着実な実行に努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。大型ビル(アプライド)空調分野は、サービス事業の拡大に取り組んだことや、前期に買収した販売会社を活用した拡販効果もあり、売上高は前年同期を上回りました。
中国では、当社グループの生産拠点は上海を中心としており、ロックダウンにより、4月・5月は生産・物流が停止して製品供給が滞り、販売が減少したことにより、地域全体の売上高は前年同期を下回りました。ロックダウンが解除された6月には、いち早く生産・物流をフル稼働させ、6月単月の販売は前年同期を大きく上回りました。利益面では、原材料価格の高騰や半導体不足の影響を受けましたが、高付加価値商品の拡販、コストダウン・固定費削減に取り組み、これまでの高水準を維持しました。住宅用市場では、当社グループ独自の専売店「プロショップ」とオンラインを組み合わせた販売活動を推進し、新規顧客の探索や更新需要の獲得に注力しました。ライブコマースやカスタマーセンターを通じた顧客とのコミュニケーションや、顧客の空調機器の運転状況を遠隔で確認するなど、オンラインを活用した販売・サービスを展開し、ロックダウン中でも販売力を維持しました。顧客の空気・環境への関心は高まっており、空気・換気関連商品やエネルギー消費量可視化商品、ヒートポンプ式温水暖房機器などのシステム商品の品揃えを強化しました。業務用市場では、店舗・オフィスなどで換気・洗浄を切り口に顧客との接点を拡大し、機器の更新や追加購入の需要を取り込みました。大型物件市場では、空気・エネルギーなどのソリューション提案を強化しました。工場向け市場では環境対策による省エネ機器への更新需要を取り込みました。アプライド空調機器市場では、半導体関連など成長分野に経営資源をシフトしたことに加え、保守・メンテナンス事業を強化しました。
アジア・オセアニアでは、建設現場での資材・労働者不足による工事の遅れや延期が一部見られたものの、コロナ禍での行動制限の緩和による需要回復を受け、住宅用・業務用空調機器ともに販売は堅調に推移しました。特にインドでは、猛暑や行動制限の緩和による需要増加を捉え、販売を大幅に伸ばしました。電子部品等が逼迫する中でも製品供給を継続し、各国で価格政策を着実に実行した結果、地域全体の売上高は住宅用・業務用ともに前年同期を大きく上回りました。
欧州では、ロシア・ウクライナ情勢の悪化、エネルギー・物流費の高騰に加え、中国でのロックダウンの影響による供給逼迫など、期初から様々な問題が発生し、厳しい事業環境が続きました。しかしながら、生産・販売・供給部門の連携強化、各国での出荷極大化の取り組みにより販売を拡大し、地域全体の売上高は前年同期を上回りました。住宅用空調機器では、ドイツやフランスでは需要低迷により販売が減少しましたが、熱波が到来したスペインやイタリアなどでは販売を伸ばしました。住宅用ヒートポンプ式温水暖房機器は、各国政府のCO2削減を目標とした補助金制度が追い風となり、ガスやオイルボイラーからの更新需要が堅調に伸びる中、販売店開発や補助金申請支援などの販売力強化と最寄り工場での生産・供給力強化で需要を最大限に取り込みました。これらにより、住宅用空調・暖房機器の売上高は前年同期を上回りました。業務用空調機器においては、供給遅れの影響があったものの、物件需要の最大限の取り込みや納期フォローの徹底で販売を最大化しました。その結果、業務用空調機器の売上高は前年同期を上回りました。また、低温事業は、部品供給不足により生産が減少したことにより、売上高は前年同期を下回りました。
中近東・アフリカでは、サウジアラビア・エジプト・カタールでの販売強化が牽引し、売上高は前年同期を上回りました。トルコでは、現地で生産を開始した業務用空調機器において短納期対応を強みに販売を拡大したことにより前年同期を大きく上回りました。
フィルタ事業は、コロナ禍での行動制限の緩和による経済活動再開の後押しもあり、需要は緩やかに回復しました。米国では、記録的なインフレが続きながらも、住宅用製品の個人消費だけでなく、企業の積極的な設備投資にも支えられ、大きく販売を伸ばしました。欧州では、省エネや空気質ニーズの高まりを捉え、ハイエンド市場での販売が好調となりました。アジアでは、中国でのロックダウン影響がありましたが、アジア全体では半導体市場が活況であったことなどにより、高性能フィルタの販売が好調に推移しました。国内では、感染症対策機器の需要拡大に一服感がみられるものの、好調な半導体市場向けに高性能フィルタの販売が拡大しました。また、ガスタービン・集塵機事業も、欧州での集塵機の受注が好調なこともあり、フィルタ事業全体の売上高は前年同期を大きく上回りました。
舶用事業は、舶用エアコン・冷凍機は販売を伸ばしましたが、海上コンテナ冷凍装置において中国でのロックダウンの影響を受け、部品不足による生産の減少や物流の混乱により販売が減少しました。6月から生産は正常化し、販売を伸ばしましたが、4月・5月の販売減少の影響が大きく、舶用事業全体での売上高は前年同期を下回りました。
②化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前年同期比26.8%増の639億7百万円となりました。営業利益は、前年同期比58.6%増の125億35百万円となりました。
フッ素化学製品全体の販売は、半導体・自動車分野を中心に広範囲での堅調な需要に加え、原材料市況高騰を背景とする適正な価格政策を実施したことにより、売上高は前年同期を大きく上回りました。
フッ素樹脂は、世界的な半導体・自動車関連需要の堅調な推移に伴い、売上高は前年同期を上回りました。また、フッ素ゴムについても、自動車関連を中心に需要が堅調であること、原材料市況高騰を背景とした価格政策を実施したことにより、売上高は前年同期を大きく上回りました。
化成品のうち、表面防汚コーティング剤は需要の停滞が見られたものの、撥水撥油剤や半導体向けエッチング剤などの需要が堅調に推移したことにより、化成品全体の売上高は前年同期を上回りました。
フルオロカーボンガスについては、原材料市況高騰に対応した価格政策の着実な実行や拡販施策に努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。
③その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前年同期比13.0%増の145億93百万円となりました。営業利益は、前年同期比38.6%減の8億54百万円となりました。
油機事業では、産業機械用油圧機器は、国内市場では工作機械向けを中心に販売が増加したことに加え、欧米向けの販売も増加したことにより、売上高は前年同期を上回りました。また、建機・車両用油圧機器は、国内主要顧客及び米国市場向けの販売が増加したことにより、売上高は前年同期を上回りました。
特機事業では、防衛省向け砲弾の受注が減少したことに加え、酸素濃縮装置及びパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要が一巡したことにより、売上高は前年同期を下回りました。
電子システム事業では、大手企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によるIT投資が増加したことにより、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客ニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『SpaceFinder(スペースファインダー)』の販売は堅調に推移しました。しかし、ゲーム市場向けCG制作ソフトの販売が減少したことにより、売上高は前年同期を下回りました。
(2) 財政状態の状況
総資産は、4兆786億30百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,546億31百万円増加しました。流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,212億90百万円増加の2兆2,869億13百万円となりました。固定資産は、のれんの増加や円安による為替換算の影響を受けたこと等により、前連結会計年度末に比べて1,333億41百万円増加の1兆7,917億16百万円となりました。
負債は、支払手形及び買掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて923億46百万円増加の1兆9,082億35百万円となりました。有利子負債比率は、前連結会計年度末の21.6%から19.3%となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や為替の変動によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,622億85百万円増加の2兆1,703億94百万円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間のキャッシュ・フローについては、営業活動では、棚卸資産の増加等により、前年同期に比べて178億44百万円収入が減少し、441億96百万円の収入となりました。投資活動では、子会社株式の取得による支出の増加等により、前年同期に比べて79百万円支出が増加し、395億38百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入金の返済による支出の増加等により、前年同期に比べて931億60百万円支出が増加し、1,302億63百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた当第1四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の増減額は、前年同期に比べて812億66百万円減少し、938億78百万円のキャッシュの減少となりました。
(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第1四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は232億30百万円であります。