有価証券報告書-第116期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 15:46
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(経営成績等の状況の概要)
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当期の世界経済は、期間前半は緩やかに拡大したものの、期間後半以降は成長鈍化の動きが見られ、先行き不透明感が強まりました。米国経済は住宅投資が減速したものの、大型減税の効果により堅調な個人消費が牽引しました。欧州経済はドイツ経済の停滞や英国の合意なきEU離脱への懸念が影響し、期間後半から成長が鈍化しました。新興国経済は米国の政策金利の利上げを要因とする通貨安の影響から、景気減速の動きが広がりました。中国経済は米中貿易摩擦の本格化、ハイテク製品の在庫調整により、期間後半以降は減速基調となりました。わが国経済は個人消費と設備投資は堅調に推移したものの、輸出が鈍化し、成長ペースは緩やかでした。
このような事業環境のもと、当社グループは、2018年のグループ年頭方針を「一人ひとりが壁を乗り越え、強みを結集して新たなテーマに挑戦しよう」と定め、継続的に取り組んでいる販売力・営業力の強化、商品開発・生産・調達・品質力の向上、人材力強化などに磨きをかけ、さらなる成長に向けたテーマを推進するとともに、固定費の削減など身軽で強靭な体質づくりにも取り組んでまいりました。さらにはテクノロジー・イノベーションセンターを中心に差別化技術の獲得に向けた産学連携・産産連携など外部との協創に取り組むとともに、世界主要拠点での差別化技術・商品の創出を加速していくなど、中長期での持続的発展に向けた事業拡大にも努めてまいりました。また、2020年度を目標年度とする戦略経営計画“FUSION20(フュージョン・トゥエンティ)”の後半計画(2018~2020年度)を策定し、米国・アジアを中心とした空調事業や化学事業など既存事業の強化に加えて、IoT・AIなどのデジタル技術の進歩普及をチャンスと捉えた空調ソリューション事業の推進や、商業用冷設や暖房・給湯など事業領域の拡大、環境技術の強化など、時代の変化に対応した積極的な投資や具体的な施策を追加しました。
当期の経営成績については、売上高は2兆4,811億9百万円(前期比8.3%増)となりました。利益面では、営業利益は2,762億54百万円(前期比8.9%増)、経常利益は2,770億74百万円(前期比8.6%増)となりました。前期に米国における税制改正により法人税等が減少していた影響もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,890億48百万円(前期比0.0%減)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
① 空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比8.2%増の2兆2,221億72百万円となりました。営業利益は、前期比6.3%増の2,376億45百万円となりました。
国内業務用空調機器の業界需要は、設備投資の拡大により堅調に推移しました。当社グループは、店舗・オフィス用市場では、『FIVE STAR ZEAS(ファイブスタージアス)』・『Eco-ZEAS(エコジアス)』をはじめとする「スカイエアシリーズ」、個別運転が可能でスリム設計の『machi(マチ)マルチ』が好調に推移し、販売を拡大しました。また、ビル・設備用市場では、省エネ性能や設置自由度をさらに高めた「VRVシリーズ」の新モデルを発売しました。さらに、事務所・工場などの好調な需要や職場環境の改善ニーズの高まりを背景に、大空間でも個別に温度・風量を制御できる『MULTI CUBE(マルチキューブ)』など、ユーザー用途に沿った提案型商品の販売を拡大し、業務用空調機器の売上高は前期を上回りました。
国内住宅用空調機器の業界需要は、夏季が猛暑であった影響により堅調に推移しました。当社グループは、独自のAIにより湿度までコントロールする機能を搭載した高級機種『うるさら7(セブン)』の新機種の発売に加え、デザイン性と機能性を両立した『risora(リソラ)』の販売が好調に推移し、住宅用空調機器の売上高は前期を上回りました。
米州では、堅調な需要に加えて販売戦略が奏功し、地域全体の売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器は、ローコストモデルのミニスプリット、インバータ搭載のユニタリー製品などの新製品の発売、新規販売網の開発や売価アップに取り組んだ結果、売上高は前期を上回りました。ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)は、「VRVシリーズ」の販売が拡大し、売上高は前期を上回りました。大型ビル(アプライド)空調分野は、需要が堅調に推移する中、販売網強化や商品ラインナップ拡充により、ルーフトップを中心にアプライド機器の販売を拡大しました。また、サービス事業も販売を拡大し、売上高は前期を上回りました。
中国では、米中貿易摩擦や政府の新築住宅抑制政策による厳しい市場環境の中、商品戦略の転換、地方都市での拡販により売上高は前期並みを確保しました。同時に、為替・原材料価格上昇の影響を最小限に抑え、固定費削減やコストダウンを推進し、高収益を維持しました。住宅用市場では、中高級住宅向け「ニューライフマルチシリーズ」に加え、市場の変化に対応し、一般住宅を攻略するため「普及型マルチシリーズ」を拡充しました。不動産物件が減少する中、比較的堅調な地方都市を中心に当社グループの専売店である「プロショップ」の販売網を拡大しました。業務用市場では、新築ビルをはじめとする大型物件が減少する中、飲食・医療・情報分野などの伸びている市場に資源を投入しました。大都市ではインターネットを介して顧客と繋がる「インテリジェントVRV」を活用し、更新需要の獲得に注力しました。アプライド空調市場では、インフラ投資などの大型物件から中小物件まで、多様な顧客ニーズにあわせたシステムを提案し、機器の拡販に加え、保守・サービス事業でも販売を拡大しました。
アジア・オセアニアでは、地域全体の売上高は前期を上回りました。東南アジアの住宅用空調機器では、都市部から地方までカバーする独自の販売店網構築により販売が堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。業務用空調機器では、販売店網の拡充やスペックイン活動の強化などにより、売上高は前期を上回りました。インドの住宅用空調機器では、販売店網の拡充や地方都市での拡販により販売が伸び、また、業務用空調機器も販売が堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。
欧州では、景気の減速が見られる中、各国での営業力強化と新商品の投入により、特にフランスなど主要国での販売が拡大し、地域全体での売上高は前期を上回りました。住宅用空調機器では、温暖化係数の低い空調機器(低GWP機)の拡販、欧州北部での猛暑効果の取り込みなどにより、主要各国で販売が増加しました。業務用空調機器では、堅調な建築着工および更新需要の取り込みや、店舗向け市場への低GWP機の訴求などにより売上高は前期を上回りました。また、ヒートポンプ式温水暖房機器は、専任販売体制の強化、暖房販売ルートの開発、新商品の投入効果により、売上高は前期を大きく上回りました。
中東・アフリカでは、イランへの制裁再開など政治情勢が不安定な中、地域全体の売上高は前期を上回りました。中東では、販売網拡充と受注物件管理強化を進め、アフリカでも、住宅用・業務用空調機器の販売を伸ばしました。トルコでは、インフレによる個人消費と建築投資へのマイナス影響が顕在化する中、値上げの実施や比較的堅調な住宅用暖房機器の販売を拡大した結果、現地通貨での売上高は前期を大きく上回りましたが、トルコリラ急落の影響により円貨換算後の売上高は前期を下回りました。
舶用事業は、海上コンテナ冷凍装置の販売台数増加により、売上高は前期を上回りました。
② 化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前期比9.6%増の2,007億90百万円となりました。営業利益は、前期比27.5%増の325億33百万円となりました。
フッ素樹脂は、米国市場でのLANケーブル用の新商品拡販と、世界各地域での半導体関連需要が好調に推移したことにより、売上高は前期を上回りました。フッ素ゴムについても、国内・米国市場において、自動車関連・半導体関連分野での需要が堅調に推移したことにより、売上高は前期を上回りました。
化成品のうち、表面防汚コーティング剤は、中国での需要が減少した影響が大きく、売上高は前期を下回りました。一方、撥水撥油剤は、国内・中国・アジアでの需要が堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。これらの結果、化成品全体では売上高は前期を上回りました。
フルオロカーボンガスについては、原材料価格高騰と需給逼迫に対応した国内・欧州を中心とする価格改定により、ガス全体の売上高は前期を大きく上回りました。
③ その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前期比6.6%増の581億45百万円となりました。営業利益は、前期比27.5%増の60億65百万円となりました。
産業機械用油圧機器は、国内および米国市場が堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。建機・車両用油圧機器は、国内および米国主要顧客向け販売が堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。
特機部門では、在宅酸素医療用機器の売上高は堅調に推移しましたが、防衛省向け砲弾の販売が減少したことにより、売上高は前期を下回りました。
電子システム事業では、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客のニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『SpaceFinder(スペースファインダー)』と、業務アプリケーション開発システム『Smart Innovator(スマートイノベータ―)』の販売が堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。
総資産は、2兆7,008億90百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,251億82百万円増加しました。
流動資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,123億11百万円増加し、1兆3,176億5百万円となりました。
固定資産は、連結子会社買収により発生した顧客関連資産の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,128億71百万円増加し、1兆3,832億85百万円となりました。
負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,026億54百万円増加し、1兆2,540億40百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,225億28百万円増加し、1兆4,468億49百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の52.4%と同率となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の4,433.62円から4,841.15円となりました。
また、有利子負債については、短期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて312億70百万円増加し、5,856億41百万円となりました。なお、連結子会社買収等により資産も増加しているため、有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、22.4%から21.7%となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、税金等調整前純利益の増加等により、前連結会計年度に比べて262億69百万円収入が増加し、2,500億9百万円の収入となりました。投資活動では、連結子会社買収による支出の増加等により、前連結会計年度に比べて383億14百万円支出が増加し、1,657億73百万円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて252億33百万円支出が減少し、687億21百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べて27億4百万円減少し、102億28百万円のキャッシュの増加となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
空調・冷凍機事業1,658,9357.1
化学事業183,70610.1
その他事業52,4536.8
合計1,895,0957.4

(注) 1 金額は販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注状況
当社グループの製品は、大部分見込み生産であるため、受注高及び受注残高の記載は省略しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
空調・冷凍機事業2,222,1728.2
化学事業200,7909.6
その他事業58,1456.6
合計2,481,1098.3

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
以下に記載の内容については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。
なお、連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針等は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態
①資産
総資産は、2兆7,008億90百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,251億82百万円増加しました。
流動資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,123億11百万円増加し、1兆3,176億5百万円となりました。
固定資産は、連結子会社買収により発生した顧客関連資産の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,128億71百万円増加し、1兆3,832億85百万円となりました。
②負債及び純資産
負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,026億54百万円増加し、1兆2,540億40百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,225億28百万円増加し、1兆4,468億49百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の52.4%と同率になり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の4,433.62円から4,841.15円となりました。
(3) 経営成績
①売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比8.3%増の2兆4,811億9百万円となった。
空調・冷凍機事業では、米州・欧州・アジアを中心に海外での販売が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比8.2%増の2兆2,221億72百万円となりました。
化学事業では、半導体関連や自動車関連等の需要が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比9.6%増の2,007億90百万円となりました。
その他事業全体では、産業機械用油圧機器や建機・車両用油圧機器が国内及び米国市場で堅調に推移し、売上高は前連結会計年度比6.6%増の581億45百万円となりました。
②営業費用、営業利益
売上原価は、前連結会計年度比8.1%増加し、1兆6,121億86百万円となりました。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度比8.7%増加し、5,926億68百万円となりました。人件費の増加が主な要因であります。
以上の結果、営業利益は前連結会計年度比8.9%増の2,762億54百万円となりました。
なお、セグメントの営業損益については、空調・冷凍機事業では、前連結会計年度比6.3%増の2,376億45百万円の営業利益となり、化学事業では、前連結会計年度比27.5%増の325億33百万円の営業利益となり、その他事業は前連結会計年度比27.5%増の60億65百万円の営業利益となりました。
③営業外損益、経常利益
営業外損益は、為替差損が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて4億59百万円減少し、8億20百万円のプラスとなりました。
経常利益は、前連結会計年度比8.6%増の2,770億74百万円となりました。
④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、前連結会計年度に関係会社整理損を計上していたこと等により、前連結会計年度に比べて13億98百万円増加し、17億64百万円のマイナスとなりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に米国における税制改正により法人税等が減少した影響もあり、前連結会計年度比0.0%減の1,890億48百万円となりました。
(4) キャッシュ・フロー
営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加等により、前連結会計年度に比べて262億69百万円収入が増加し、2,500億9百万円の収入となりました。投資活動では、連結子会社買収による支出の増加等により、前連結会計年度に比べて383億14百万円支出が増加し、1,657億73百万円の支出となりました。財務活動では、短期借入金の増加等により、前連結会計年度に比べて252億33百万円支出が減少し、687億21百万円の支出となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べ27億4百万円減少し、102億28百万円のキャッシュの増加となりました。
資金の調達は、内部留保の蓄積を基本とし、自己資金中心に行うことを原則としておりますが、必要に応じ、金融機関からの借入や社債等で調達しております。
当連結会計年度では、金融機関からの短期借入によって、1,006億40百万円を調達し、投資資金の一部に充当しました。
キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2015年3月期2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期
自己資本比率(%)45.346.347.252.452.4
時価ベースの自己資本比率(%)103.7112.1138.8138.6140.5
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (年)4.12.72.32.52.3
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)16.825.926.820.921.2

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用しております。