四半期報告書-第121期第1四半期(2023/04/01-2023/06/30)

【提出】
2023/08/09 9:40
【資料】
PDFをみる
【項目】
44項目
(1) 経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2023年4月1日~6月30日)の世界経済は、コロナ禍の行動制限解除を受けてサービス消費が回復した一方、インフレ長期化と金利上昇を受けた欧米経済の低迷が各国に波及し、全体として減速しました。米国経済は、良好な雇用環境を背景に個人消費が堅調であったものの、住宅需要や設備投資が落ち込み、経済を下押ししました。欧州経済は、エネルギー価格高騰による物価の高止まりにより、消費が落ち込んでおり、景気減速が続きました。中国経済は、昨年から続く不動産不況が一段と悪化し、ゼロコロナ政策解除による反動需要(ペントアップ需要)も一服したことで、景気が落ち込みました。アジア・新興国経済は、欧米向けの輸出が伸び悩んだものの、コロナ禍からの回復による旺盛な内需が経済を下支えし、堅調に推移しました。日本経済は、行動制限の解除によって経済活動の正常化が進み、サービス消費を中心に景気回復が続きました。
当社グループでは、2021年度に策定した戦略経営計画「FUSION25」の完遂に向けて、成長戦略3テーマ「カーボンニュートラルへの挑戦」「顧客とつながるソリューション事業の推進」「空気価値の創造」をはじめとした重点9テーマの施策に取り組んでおりますが、2023年に「FUSION25後半3ヵ年計画」を策定し、実行を開始しました。経営環境の足元の変化と中長期的なトレンドをチャンスと捉え、重点テーマへの取り組みを強化するとともに、「インドの一大拠点化」「高機能・環境材料事業」などを新たに加え、重点11テーマとして、経済価値・環境価値・社会価値の創造に取り組んでおります。
上記のような事業環境のもと、2023年度は、収益力の再強化に取り組むとともに、カーボンニュートラルへの世の中の流れをチャンスとした事業の拡大に取り組んでおります。それぞれの地域・事業の進捗状況をきめ細かくフォローしながら、臨機応変に課題に対応することで、環境変化による当社事業への影響を極小化する一方、堅調な地域・事業でのさらなる販売の拡大・収益力の向上に努めております。具体的なテーマは以下のとおりです。
・カーボンニュートラル・省エネに資する商品・サービスによる、業務用途・住宅用途での当社シェアの向上
・用途や市場ごとの付加価値提供による、ソリューション事業の収益拡大
・市場環境の変化に柔軟・迅速に対応が可能な、強靭なサプライチェーンの構築
・市場・顧客のニーズにミートした差別化商品の投入による、販売価格政策の推進
・変動費・物流費低減、材料置換、生産性向上など、グローバル横断でのコスト力強化
・積極的な投資を行いながら収益を向上させるため、デジタルを活用した経営基盤強化による固定費の削減
・実行してきた買収案件・生産能力増強投資の成果創出
当第1四半期連結累計期間の経営成績については、売上高は1兆947億15百万円(前年同期比13.1%増)となりました。利益面では、営業利益は1,178億84百万円(前年同期比9.3%増)、経常利益は1,148億9百万円(前年同期比4.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は、802億58百万円(前年同期比13.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
①空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前年同期比13.8%増の1兆118億40百万円となりました。営業利益は、前年同期比9.7%増の1,036億89百万円となりました。
国内空調では、業務用市場の需要は、新築物件の回復は遅れましたが、小口更新需要では増加傾向が見られ、前年同期を上回りました。一方、住宅用市場の需要は、消費者の買い控え傾向や、消費対象の変化などの影響もあり、前年同期を下回りました。このような状況の中、当社グループは、業務用空調機器市場に向けては、ユーザー提案の強化に取り組み、高い省エネ性能と優れた施工性を併せ持つ「FIVESTAR ZEAS」、個別運転ニーズに応える「machi(マチ)マルチ」、パッケージエアコンに取り付けることで空気清浄機能・除菌機能を付加する『UVストリーマ除菌ユニット』など、高付加価値商品の販売を拡大し、売上高は前年同期を上回りました。一方、住宅用空調機器市場に向けては、電気料金の上昇や住宅の省エネ性能ニーズの拡大を背景に、ユーザー訴求の強化に取り組み、省エネ性の高い高・中級機種の販売比率は向上しましたが、需要の落ち込みによる販売台数減の影響を吸収し切れず、売上高は前年同期を下回りました。
米州では、住宅需要の停滞と流通在庫の調整などに伴い、空調機器の販売は厳しい状況が続きました。住宅用空調機器については、長引くインフレや住宅ローン金利の上昇などにより業界需要の伸びが停滞し、また、独立系のディストリビューター(卸)においては依然として在庫抑制の動きもあり、販売数量は減少しました。しかしながら、ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)の堅調な需要に伴う販売拡大や、前期に買収した会社を活用した販売網強化に加え価格政策の実施に努め、売上高は前年同期を上回りました。大型ビル(アプライド)空調分野については、今年に入り市場が拡大する中、価格政策の効果を取り込みながら市場の伸びを上回る空調機器の販売となりました。さらに、前期までに買収した販売代理店、計装・エンジニアリング会社、カスタムエアハンドリングユニットメーカーを活用したサービス・ソリューション事業の拡大もあり、売上高は前年同期を大きく上回りました。
中国では、ゼロコロナ政策が解除され、3年ぶりに生産活動・販売店による営業活動・大型キャンペーン等の施策を全面的に展開しました。その結果、不動産・住宅販売等の市場の回復は遅れているものの、住宅用・業務用・アプライド空調機器ともに販売は大きく伸び、中国全体の売上高は前年同期を大きく上回りました。利益面では、販売拡大による固定費の吸収、高付加価値商品の拡販、コストダウン等に取り組み、これまでの高水準を維持しました。住宅用空調機器市場では、当社グループ独自のユーザーダイレクトの小売販売に加え、ショールームを活用したライブ放送、Web戦略などのオンラインを活用した販売も売上拡大に大きく貢献しました。また、顧客の空気・環境への関心の高まりもあり、新たに空調・空気質改善機能・全熱交換器・ヒートポンプ床暖房などを組み合わせた「Daikin Care中央空気システム」シリーズを投入しました。業務用空調機器市場では、これまで中断されていた物件が動き出したこともあり、販売が伸びました。カーボンニュートラル政策により、政府物件・工場・グリーンビル(環境性能が高まるよう配慮して設計された建物)などの市場が伸びており、省エネルギー化に対応した新商品を投入しました。アプライド空調機器市場では、インフラ・半導体関連など成長分野に経営資源をシフトしたことに加え、保守・メンテナンス事業を強化しました。ゼロコロナ政策解除後に期待されていた需要の回復に鈍化が見られたところもありましたが、経済の回復を見越して建設を再開する物件も一部で出始めたこともあり販売は増加しました。
アジア・オセアニアでは、アセアンでの住宅用空調機器の販売、インドでの業務用空調機器の販売の伸びが牽引し、地域全体の売上高は前年同期を上回りました。アセアン・オセアニアでは、販売店ごとの販促支援策の展開、新規店の開発による増販に加え、アセアンでの気温上昇の追い風もあり、住宅用空調機器の販売は堅調に推移しました。一方、業務用空調機器については、インフレに起因した金融引き締めの影響で、施主やコントラクター等の資金繰りが悪化し、一部の国で物件遅延の影響を受け、販売が停滞しました。インドでは、北西部での天候不順により住宅用空調機器の販売が減速したものの、引き続き経済成長を背景に業務用空調機器の販売は好調を維持しました。
欧州では、インフレ率の高止まりに対する金融引き締め政策の継続により景気回復が遅れる厳しい事業環境ではありましたが、昨年来の部材供給の逼迫が緩和され、各国で出荷極大化に取り組んだこともあり、地域全体の売上高は前年同期を上回りました。住宅用空調機器は、春先以降の気温上昇を追い風に、フランス・スペイン等で販売を伸ばしましたが、景気減速による消費マインドへの影響もあり、売上高は前年同期を下回りました。住宅用ヒートポンプ温水暖房機器については、イタリア政府による補助金制度変更の影響はありましたが、その他の国ではCO2削減を目標とした補助金制度による需要拡大が継続しており、販売店開発や補助金申請支援などの販売力強化と商品ラインナップ拡充を進めました。その結果、高付加価値商品でガスやオイルボイラーからの更新需要を取り込むことにより、住宅用ヒートポンプ温水暖房機器の売上高は前年同期を上回りました。また、業務用空調機器では、コロナ規制の緩和による反動需要は一巡しましたが、オフィスや店舗等の省エネニーズを着実に取り込み、売上高は前年同期を上回りました。
中近東・アフリカでは、UAE・ナイジェリア等での業務用物件の受注増加が販売を牽引し、売上高は前年同期を大きく上回りました。トルコでは、前期より現地で生産を開始した業務用空調機器において短納期対応を強みに販売を拡大しました。
フィルタ事業では、半導体・製薬市場で需要に一部弱含みが見られるものの、全体として底堅く推移しました。米国では、前期に事業買収した代理店を積極的に活用することによるシナジー創出や、病院・製薬・データセンター等の注力市場で販売を強化しました。その結果、ハイエンド市場での販売は拡大しましたが、低収益事業からの撤退を進めたこともあり、米国全体の売上高は減少しました。欧州では、省エネや空気質ニーズは引き続き底堅く、ハイエンド・OEM市場向けを中心に販売が好調に推移しました。アジアでは、半導体投資が減速したものの、高性能フィルタの販売は好調で前年同期並みの売上高を確保しました。また、国内では、感染症対策機器向けの販売が減速しましたが、半導体市場向け高性能フィルタに加え、一般機器向けの販売も堅調に推移しました。ガスタービン・集塵機事業は、油田向け特殊フィルタの販売が好調に推移しました。このように、販売が好調な地域もありましたが、米国での販売減が影響し、フィルタ事業全体の売上高は前年同期を下回りました。
舶用事業では、前期のような中国ロックダウンの影響を受けての部品不足による生産の減少や物流の混乱はなく、海上コンテナ冷凍装置の販売台数は前年同期を上回りました。さらに、舶用エアコン・冷凍機も販売を伸ばし、舶用事業全体の売上高は前年同期を上回りました。
②化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前年同期比4.8%減の608億50百万円となりました。営業利益は、前年同期比1.9%増の127億73百万円となりました。
フッ素化学製品全体の販売は、半導体・自動車分野を中心にした広範囲での需要減速に加え、それに伴う流通在庫調整の動きなどもあり、売上高は前年同期を下回りました。
フッ素樹脂は、半導体分野で比較的需要が堅調な部分が見られたものの、電線等のその他の分野で需要が減速したことから、売上高は前年同期並みとなりました。一方、フッ素ゴムについては、自動車分野の需要減速と、それに伴う流通在庫調整の影響により、売上高は前年同期を下回りました。
化成品は、表面防汚コーティング剤や撥水撥油剤の需要が停滞し、半導体向けエッチング剤等の需要の落ち込みもあったことから、化成品全体の売上高は前年同期を大きく下回りました。
フルオロカーボンガスについては、底堅い需要の中、原材料市況高騰に対応した価格政策の実施に努め、売上高は前年同期を大きく上回りました。
③その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前年同期比50.9%増の220億24百万円となりました。営業利益は、前年同期比65.3%増の14億12百万円となりました。
油機事業では、国内市場及び米国市場向けの販売が増加したことに加え、前期に買収した会社が欧米向けの販売の増加に寄与し、産業機械用油圧機器、建機・車両用油圧機器ともに売上高は前年同期を上回りました。
特機事業では、酸素濃縮装置及びパルスオキシメータ(採血することなく血中酸素飽和度を簡易に測定できる医療機器)の新型コロナウイルスに伴う需要が収束したことにより、売上高は前年同期を下回りました。
電子システム事業では、品質課題の解決・設計開発期間の短縮・コストダウン支援といった顧客ニーズに合致した設計・開発分野向けデータベースシステム『Smart Innovator(スマートイノベーター)』の販売が増加したことに加え、データサイエンスソフトの大口案件の販売もあり、売上高は前年同期を上回りました。
(2) 財政状態の状況
総資産は、4兆7,251億25百万円となり、前連結会計年度末に比べて4,214億42百万円増加しました。流動資産は、受取手形、売掛金及び契約資産の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,663億43百万円増加の2兆6,934億26百万円となりました。固定資産は、建設仮勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,550億99百万円増加の2兆316億99百万円となりました。
負債は、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べて2,492億2百万円増加の2兆2,737億90百万円となりました。有利子負債比率は、前連結会計年度末の20.6%から22.8%となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や為替の変動によるその他の包括利益累計額の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,722億40百万円増加の2兆4,513億35百万円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間のキャッシュ・フローについては、営業活動では、仕入債務の減少等により、前年同期に比べて29億67百万円収入が減少し、412億28百万円の収入となりました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出の増加等により、前年同期に比べて481億23百万円支出が増加し、876億62百万円の支出となりました。財務活動では、長期借入金の返済による支出の減少等により、前年同期に比べて2,164億34百万円収入が増加し、861億70百万円の収入となりました。これらの結果に為替換算差額を加えた当第1四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の増減額は、前年同期に比べて1,574億69百万円増加し、635億91百万円のキャッシュの増加となりました。
(4) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第1四半期連結累計期間において、当連結会社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は302億17百万円であります。