有価証券報告書-第67期(2022/04/01-2023/03/31)
経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
(1)経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度における世界情勢は、世界各国で新型コロナウイルス感染症により停滞した経済活動が回復してまいりましたが、ウクライナ情勢の悪化による農作物、エネルギー価格の上昇等、先行きは不透明な状況で推移いたしました。
当社グループが属する射出成形機業界では、期前半、円安の影響により収益の改善が図られ回復基調にありましたが、通年に渡る運搬費及び原材料・資源価格の高騰、半導体不足に加え期後半からの円高基調により受注、販売ともに厳しい経営環境となりました。
このような状況のもと、当社グループは、長期的な視点からの成長戦略や業績目標を見据え、2026年3月期を最終年度とする第四次中期経営計画に基づいた事業を展開いたしました。
事業拠点の展開につきましては、部材高騰の対応として、従前、外部から購入していた機械部品を内製加工することでアジア地域を中心とした成形機の価格競争力の維持拡大を目的に、中国・浙江省塩海県に設立した生産子会社、日精塑料机械(海塩)有限公司の工場建設に着手いたしました。また、NISSEI PLASTIC SINGAPORE PTE LTDを当社の海外支店に改め、同社の子会社であったNISSEI(MALAYSIA)SDN.BHD.を当社直轄の販売子会社に変更いたしました。
当社グループの商品につきましては、各国のカーボンニュートラル目標の達成に向けて取り組みが本格化している中で、特に自動車産業のEVシフトが鮮明になっており、車両の軽量化、電子部品点数の増加等、これまで以上に樹脂素材への高付加価値ニーズが高まっております。この対応として成形品の高機能化に対応するため熱硬化性樹脂専用射出成形機「FWX760Ⅲ-130BK」を開発、熱により軟化することのない硬化性樹脂特性を活かし、自動車部品をはじめ、配電盤、電気絶縁部品、半導体関連部品等において欠かすことのできない新しい分野へ上市いたしました。
展示会への出展につきましては、「Inclusive Growth」(包括的成長)をテーマに、昨年10月、ドイツのデュッセルドルフで開催された世界最大の国際プラスチック・ゴム見本市「K2022」に出展いたしました。今回はイタリア子会社との共同出展となり、業界初となる100%生分解性樹脂でのボトル成形や当社開発のドイツ食品法に適合した木粉コンポジット材料を使用したエコフレンドリーなカトラリーの成形等、自然環境への対応はもちろんのこと、ヨーロッパにおける成形現場の底上げ、高度化、そして工場環境の在り方も含めて、プラスチックの新しい価値の提案を行いました。国内におきましては、昨年6月、9月、12月に本社テクニカルセンター及び兵庫県にある西日本テクニカルセンターにおいてプライベート展を開催いたしました。これらのテーマとして「EVシフトに向けた新素材の提案」、「SDGsと環境対応」をそれぞれ掲げ、EV化に対しては大手材料メーカーとのコラボレーション、環境に対しては新しいリサイクル成形や工場環境改善に向けた提案によりお客様から好評を博しました。
営業面におきましては、海外市場では円安傾向が継続する中、北米地域の自動車業界向けに大型機、アジア市場におきましては、医療、IT、EVに関連した業種に対して汎用機、大型機、国内市場におきましては、大型機、特殊機、竪型機の営業強化に加え、内覧会を用いた各種特殊機への営業展開を強化いたしました。
サステナビリティへの取り組みといたしましては、社会、環境、人財、ガバナンスを軸に取り組みを展開いたしました。射出成形機業界では、海洋プラスチック問題の解決やCO₂の削減が喫緊の課題となっており、社内で環境経営プロジェクトを立ち上げ対応を進めております。社会につきましては、地元小学校において当社のSDGsへの取り組みや将来におけるプラスチックの可能性について出前授業を実施し、地域社会への貢献を進めました。環境につきましては、省エネ、省スペースの環境配慮型の射出成形機や植物由来ポリ乳酸(PLA)と木粉を混ぜた材料等、環境配慮型製品の開発、販売を強化いたしました。人財につきましては、従業員が仕事と家庭を両立させることができ、能力を十分に発揮できる職場環境を整備するため育児・介護休業制度の充実を図るとともに、正社員登用制度の充実、70歳までの雇用制度の導入等、ライフステージに応じた働き方を選択できるように種々の取り組みを推進いたしました。ガバナンスについては、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行したことにより一層透明性の高い経営体制を確保いたしました。また、役員の指名及び報酬に関する任意の諮問機関である指名・報酬委員会におきましてもこれまでの役付取締役2名、社外取締役2名の4名体制から、役付取締役3名、社外取締役4名の7名体制に変更し、社外取締役が過半数となる体制に変更したことでガバナンス体制の強化を図りました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は期中後半以降、需要が減少傾向にありましたが、大型機及び特殊機の販売に注力したことで価格単価が上昇したこと等から前年同期比7.1%増の522億5百万円となりました。
利益面におきましては、営業利益は26億8千2百万円(前年同期比4.0%増)、為替差損5億3千5百万円を計上したことにより経常利益は24億2千7百万円(同17.4%減)となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は18億3千5百万円(前年同期比31.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次の通りであります。
① 日本
原材料及び資源価格の上昇、部材不足等の影響がありましたが、大型機、特殊機の営業を強化したこと等から売上高(外部顧客への売上高)は162億9千万円(前年同期比1.2%減)、セグメント利益は31億1千4百万円(同70.2%増)となりました。
② 欧米地域
米国において、景気の後退及び金利上昇等を背景に厳しい経営環境でありましたが、前期に実施した米国子会社の決算期の変更による影響もあり、売上高(外部顧客への売上高)は245億3千8百万円(前年同期比37.2%増)、セグメント利益は9億5千8百万円(同97.2%増)となりました。
③ アジア地域
中国の都市封鎖による需要の停滞等から売上高(外部顧客への売上高)は113億7千6百万円(前年同期比20.8%減)、セグメント利益は4億8千9百万円(同39.8%減)となりました。
なお、当期の単体業績につきましては、売上高合計370億6千8百万円(前年同期比1.7%増)となりました。このうち国内売上高は128億7千4百万円、輸出の売上高は241億9千3百万円となり、輸出比率は65.3%(前年同期実績は66.2%)となりました。
利益面におきましては、営業利益が31億8千4百万円(前年同期比71.9%増)、経常利益が38億2千9百万円(同44.1%増)、当期純利益が29億1千4百万円(前年同期比58.0%増)となりました。
財政状態におきましては次の通りであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて87億9千3百万円増加し、776億4千5百万円となりました。
このうち流動資産は前連結会計年度末に比べて71億7百万円増加し、579億4千1百万円となりました。主たる増加要因は、商品及び製品の増加36億5千万円及び原材料及び貯蔵品の増加20億4千4百万円並びに仕掛品の増加20億1百万円であり、主たる減少要因は、受取手形、売掛金及び契約資産の減少25億9千1百万円であります。
また、固定資産は、前連結会計年度末に比べ16億8千5百万円増加し、197億3百万円となりました。主たる増加要因は、有形固定資産の増加9億3千8百万円及び繰延税金資産の増加5億3千1百万円、主たる減少要因は無形固定資産の減少4千7百万円であります。
当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べて60億6千7百万円増加し、379億8千1百万円となりました。
このうち流動負債は前連結会計年度末に比べて37億4千万円増加し、262億2千9百万円となりました。主たる増加要因は、短期借入金の増加40億6千9百万円及び1年内返済予定長期借入金の増加5億9百万円であり、主たる減少要因は、支払手形及び買掛金の減少8億6千6百万円であります。
また、固定負債は前連結会計年度末に比べて23億2千7百万円増加し、117億5千2百万円となりました。主たる増加要因は、長期借入金の増加24億5千6百万円であります。
当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べて27億2千5百万円増加し、396億6千3百万円となりました。
なお、当連結会計年度における増減資はありません。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ、7億円増加し、113億1百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は41億5千5百万円(前年同期実績は16億1千9百万円の資金収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益24億2千7百万円及び売上債権及び契約資産の減少額26億2千5百万円の資金収入及び棚卸資産の増加64億8千6百万円の資金支出があったことによっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、15億7千2百万円(前年同期実績は7億7千7百万円の資金支出)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入1億9千4百万円の資金収入及び有形固定資産の取得による支出14億6千3百万円の資金支出があったことによっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、61億2千7百万円(前年同期実績は42億3千8百万円の資金支出)となりました。これは主に長期借入れによる収入54億1千3百万円及び短期借入金の純増額36億8千5百万円があったこと、長期借入金の返済よる支出19億5千万円の資金支出があったことによっております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1 金額は、販売価格によっております。
2 周辺機器及び部品につきましては、製品(又は部品)として仕入れる部分が多いため、上記に含めておりません。
(2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
該当する主要な相手先がないため、記載を省略しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において経営者が判断または予想したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におきましては、2026年3月期を最終年度とする「フューチャーデザイン2026」の達成に向けて、第67期を期初とする第四次中期経営計画を推し進め、経営目標を「グローバル環境経営を更に進化させ、フューチャーデザイン2026の達成に向けた総仕上げを行う」として種々の課題に取り組み、結果的に当初計画を上回り、過去最高の売上高を更新し522億5百万円を達成することができました。しかしながら急激な為替変動や半導体関連の調達難による機械納期遅延、IT、自動車産業等の特定業種に偏った営業形態の脆弱さ等が課題として残りました。
当連結会計年度の経営成績等は次の通りであります。
① 売上高及び売上総利益
当連結会計年度の売上高合計は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により停滞していた経済活動が回復基調にあったこと等から522億5百万円(前年同期比7.1%増)となりました。
製品別売上高については次の通りであります。
射出成形機
主力である射出成形機につきましては、売上高404億2千5百万円(前年同期比6.4%増)となりました。
周辺機器
射出成形機の需要が増加したこと等に伴い売上高は23億2千1百万円(前年同期比13.8%増)となりました。
部品
サービス需要が堅調だったこと等から売上高は76億8千万円(前年同期比15.7%増)となりました。
金型等
売上高は17億7千7百万円(前年同期比13.8%減)となりました。
売上総利益につきましては、需要が回復傾向にあったこと等から162億円(前年同期比12.5%増)となりました。また、売上高総利益率は31.0%(前年同期実績は29.6%)となりました。
② 営業利益
販売費及び一般管理費につきましては、売上高が増加したこと等から合計で135億1千8百万円(前年同期比14.3%増)、営業利益は26億8千2百万円(前年同期比4.0%増)、売上高営業利益率は5.1%(前年同期実績は5.3%)となりました。
③ 経常利益
経常利益は為替差損5億3千5百万円を計上したこと等により24億2千7百万円(前年同期比17.4%減)、売上高経常利益率は4.7%(前年同期実績は6.0%)となりました。
④ 税金等調整前当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、24億2千7百万円(前年同期比39.4%減)となり、法人税等合計額6億1千5百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は18億3千5百万円(前年同期比31.5%減)となりました。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、2024年3月期(第68期)は第四次中期経営計画の2年目にあたり売上高570億円を計画として掲げておりましたが、当業界の連結受注環境が前年比較30%以上下落しており、当社におきましても現在の受注残金額及び引合件数を勘案し、当初計画より20%減の460億円に修正し、前年度の課題に対処しつつ今期の計画を策定いたしました。今期の経営目標は「フューチャーデザイン2026の達成に向けた総仕上げを行う」をローリングさせ、拠点整備を行ってまいります。
具体的には、中国海塩工場の竣工による鋳物の内製加工推進によりコスト削減を実現します。また、米国工場の超大型成形機組立てエリアの改築により3,000t級の成形機組立てが開始されます。成形技術におきましては環境対応と経済活動の調和を図る提案を更に進めてまいります。具体的には名古屋地区において自動車産業向けに内覧会を開催し、自動車のEV化に伴う主要部品の樹脂化による軽量化、リサイクル材料を使った新しい成形方法等を紹介してまいります。また、医療機器分野の大量引合いへの対応、及びIT関連分野における更なる精密成形の対応、それに伴うリモートメンテナンス、無人化、省エネ化を実現してまいります。環境面ではマイクロプラスチックによる海洋汚染対策として生分解性樹脂を用いた環境対応樹脂成形への啓蒙と木粉コンポジット材料の拡販に向けた新成形技術を加速させ、日本、米国、中国及び欧州向けにハイエンド製品として展開させてまいります。
また前年度よりスタートしたインクルーシブ・グロース・チャレンジ(包括的成長への挑戦)としてグローバルサウスに対してのBOP戦略機の開発を進めております。このBOPとは世界人口の半数を占める年間世帯所得が3,000㌦未満のBase of the economic pyramid・低所得貧困層のことを示しております。当該国の成形加工業におきましては、低価格機を使用しているケースが多く、固定ポンプによる過大な電力消費量や高額な保守部品、機械精度により金型を破損させるリスク等、貧困層であるがために受けてしまうBOP ペナルティと呼ばれる不利益やコスト高に直面していることが挙げられます。こうしたグローバルサウスに対して、当社は子会社であるネグリボッシ・インドの成形機組立工場にて、新たに機能を絞った廉価で性能、品質、省エネに優れた電気式射出成形機の量産・販売を行い、当該国のBOPペナルティを排除し経済発展と生活水準の向上をサポートしていくことを目的としております。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資本需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、射出成形機の部材の購入費用、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的にしたものは、主に生産設備等の設備投資費用及び射出成形機の研究開発費用等であります。
② 資金の流動性について
当社グループは、事業運営上の必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
運転資金につきましては、主に自己資金及び金融機関からの借入によって調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は155億3千9百万円であります。当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
(1)経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度における世界情勢は、世界各国で新型コロナウイルス感染症により停滞した経済活動が回復してまいりましたが、ウクライナ情勢の悪化による農作物、エネルギー価格の上昇等、先行きは不透明な状況で推移いたしました。
当社グループが属する射出成形機業界では、期前半、円安の影響により収益の改善が図られ回復基調にありましたが、通年に渡る運搬費及び原材料・資源価格の高騰、半導体不足に加え期後半からの円高基調により受注、販売ともに厳しい経営環境となりました。
このような状況のもと、当社グループは、長期的な視点からの成長戦略や業績目標を見据え、2026年3月期を最終年度とする第四次中期経営計画に基づいた事業を展開いたしました。
事業拠点の展開につきましては、部材高騰の対応として、従前、外部から購入していた機械部品を内製加工することでアジア地域を中心とした成形機の価格競争力の維持拡大を目的に、中国・浙江省塩海県に設立した生産子会社、日精塑料机械(海塩)有限公司の工場建設に着手いたしました。また、NISSEI PLASTIC SINGAPORE PTE LTDを当社の海外支店に改め、同社の子会社であったNISSEI(MALAYSIA)SDN.BHD.を当社直轄の販売子会社に変更いたしました。
当社グループの商品につきましては、各国のカーボンニュートラル目標の達成に向けて取り組みが本格化している中で、特に自動車産業のEVシフトが鮮明になっており、車両の軽量化、電子部品点数の増加等、これまで以上に樹脂素材への高付加価値ニーズが高まっております。この対応として成形品の高機能化に対応するため熱硬化性樹脂専用射出成形機「FWX760Ⅲ-130BK」を開発、熱により軟化することのない硬化性樹脂特性を活かし、自動車部品をはじめ、配電盤、電気絶縁部品、半導体関連部品等において欠かすことのできない新しい分野へ上市いたしました。
展示会への出展につきましては、「Inclusive Growth」(包括的成長)をテーマに、昨年10月、ドイツのデュッセルドルフで開催された世界最大の国際プラスチック・ゴム見本市「K2022」に出展いたしました。今回はイタリア子会社との共同出展となり、業界初となる100%生分解性樹脂でのボトル成形や当社開発のドイツ食品法に適合した木粉コンポジット材料を使用したエコフレンドリーなカトラリーの成形等、自然環境への対応はもちろんのこと、ヨーロッパにおける成形現場の底上げ、高度化、そして工場環境の在り方も含めて、プラスチックの新しい価値の提案を行いました。国内におきましては、昨年6月、9月、12月に本社テクニカルセンター及び兵庫県にある西日本テクニカルセンターにおいてプライベート展を開催いたしました。これらのテーマとして「EVシフトに向けた新素材の提案」、「SDGsと環境対応」をそれぞれ掲げ、EV化に対しては大手材料メーカーとのコラボレーション、環境に対しては新しいリサイクル成形や工場環境改善に向けた提案によりお客様から好評を博しました。
営業面におきましては、海外市場では円安傾向が継続する中、北米地域の自動車業界向けに大型機、アジア市場におきましては、医療、IT、EVに関連した業種に対して汎用機、大型機、国内市場におきましては、大型機、特殊機、竪型機の営業強化に加え、内覧会を用いた各種特殊機への営業展開を強化いたしました。
サステナビリティへの取り組みといたしましては、社会、環境、人財、ガバナンスを軸に取り組みを展開いたしました。射出成形機業界では、海洋プラスチック問題の解決やCO₂の削減が喫緊の課題となっており、社内で環境経営プロジェクトを立ち上げ対応を進めております。社会につきましては、地元小学校において当社のSDGsへの取り組みや将来におけるプラスチックの可能性について出前授業を実施し、地域社会への貢献を進めました。環境につきましては、省エネ、省スペースの環境配慮型の射出成形機や植物由来ポリ乳酸(PLA)と木粉を混ぜた材料等、環境配慮型製品の開発、販売を強化いたしました。人財につきましては、従業員が仕事と家庭を両立させることができ、能力を十分に発揮できる職場環境を整備するため育児・介護休業制度の充実を図るとともに、正社員登用制度の充実、70歳までの雇用制度の導入等、ライフステージに応じた働き方を選択できるように種々の取り組みを推進いたしました。ガバナンスについては、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行したことにより一層透明性の高い経営体制を確保いたしました。また、役員の指名及び報酬に関する任意の諮問機関である指名・報酬委員会におきましてもこれまでの役付取締役2名、社外取締役2名の4名体制から、役付取締役3名、社外取締役4名の7名体制に変更し、社外取締役が過半数となる体制に変更したことでガバナンス体制の強化を図りました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は期中後半以降、需要が減少傾向にありましたが、大型機及び特殊機の販売に注力したことで価格単価が上昇したこと等から前年同期比7.1%増の522億5百万円となりました。
利益面におきましては、営業利益は26億8千2百万円(前年同期比4.0%増)、為替差損5億3千5百万円を計上したことにより経常利益は24億2千7百万円(同17.4%減)となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は18億3千5百万円(前年同期比31.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次の通りであります。
① 日本
原材料及び資源価格の上昇、部材不足等の影響がありましたが、大型機、特殊機の営業を強化したこと等から売上高(外部顧客への売上高)は162億9千万円(前年同期比1.2%減)、セグメント利益は31億1千4百万円(同70.2%増)となりました。
② 欧米地域
米国において、景気の後退及び金利上昇等を背景に厳しい経営環境でありましたが、前期に実施した米国子会社の決算期の変更による影響もあり、売上高(外部顧客への売上高)は245億3千8百万円(前年同期比37.2%増)、セグメント利益は9億5千8百万円(同97.2%増)となりました。
③ アジア地域
中国の都市封鎖による需要の停滞等から売上高(外部顧客への売上高)は113億7千6百万円(前年同期比20.8%減)、セグメント利益は4億8千9百万円(同39.8%減)となりました。
なお、当期の単体業績につきましては、売上高合計370億6千8百万円(前年同期比1.7%増)となりました。このうち国内売上高は128億7千4百万円、輸出の売上高は241億9千3百万円となり、輸出比率は65.3%(前年同期実績は66.2%)となりました。
利益面におきましては、営業利益が31億8千4百万円(前年同期比71.9%増)、経常利益が38億2千9百万円(同44.1%増)、当期純利益が29億1千4百万円(前年同期比58.0%増)となりました。
財政状態におきましては次の通りであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて87億9千3百万円増加し、776億4千5百万円となりました。
このうち流動資産は前連結会計年度末に比べて71億7百万円増加し、579億4千1百万円となりました。主たる増加要因は、商品及び製品の増加36億5千万円及び原材料及び貯蔵品の増加20億4千4百万円並びに仕掛品の増加20億1百万円であり、主たる減少要因は、受取手形、売掛金及び契約資産の減少25億9千1百万円であります。
また、固定資産は、前連結会計年度末に比べ16億8千5百万円増加し、197億3百万円となりました。主たる増加要因は、有形固定資産の増加9億3千8百万円及び繰延税金資産の増加5億3千1百万円、主たる減少要因は無形固定資産の減少4千7百万円であります。
当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べて60億6千7百万円増加し、379億8千1百万円となりました。
このうち流動負債は前連結会計年度末に比べて37億4千万円増加し、262億2千9百万円となりました。主たる増加要因は、短期借入金の増加40億6千9百万円及び1年内返済予定長期借入金の増加5億9百万円であり、主たる減少要因は、支払手形及び買掛金の減少8億6千6百万円であります。
また、固定負債は前連結会計年度末に比べて23億2千7百万円増加し、117億5千2百万円となりました。主たる増加要因は、長期借入金の増加24億5千6百万円であります。
当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べて27億2千5百万円増加し、396億6千3百万円となりました。
なお、当連結会計年度における増減資はありません。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ、7億円増加し、113億1百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は41億5千5百万円(前年同期実績は16億1千9百万円の資金収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益24億2千7百万円及び売上債権及び契約資産の減少額26億2千5百万円の資金収入及び棚卸資産の増加64億8千6百万円の資金支出があったことによっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、15億7千2百万円(前年同期実績は7億7千7百万円の資金支出)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入1億9千4百万円の資金収入及び有形固定資産の取得による支出14億6千3百万円の資金支出があったことによっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、61億2千7百万円(前年同期実績は42億3千8百万円の資金支出)となりました。これは主に長期借入れによる収入54億1千3百万円及び短期借入金の純増額36億8千5百万円があったこと、長期借入金の返済よる支出19億5千万円の資金支出があったことによっております。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
日本 | 17,723 | 108.1 |
欧米地域 | 6,637 | 108.4 |
アジア地域 | 8,905 | 89.2 |
合計 | 33,266 | 102.4 |
(注)1 金額は、販売価格によっております。
2 周辺機器及び部品につきましては、製品(又は部品)として仕入れる部分が多いため、上記に含めておりません。
(2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前年同期比(%) | 受注残高 (百万円) | 前年同期比(%) |
日本 | 15,351 | 78.5 | 5,951 | 86.4 |
欧米地域 | 19,951 | 91.5 | 4,464 | 49.3 |
アジア地域 | 11,223 | 77.7 | 2,433 | 94.1 |
合計 | 46,525 | 83.4 | 12,849 | 69.3 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
日本 | 16,290 | 98.8 |
欧米地域 | 24,538 | 137.2 |
アジア地域 | 11,376 | 79.2 |
合計 | 52,205 | 107.1 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
該当する主要な相手先がないため、記載を省略しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において経営者が判断または予想したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におきましては、2026年3月期を最終年度とする「フューチャーデザイン2026」の達成に向けて、第67期を期初とする第四次中期経営計画を推し進め、経営目標を「グローバル環境経営を更に進化させ、フューチャーデザイン2026の達成に向けた総仕上げを行う」として種々の課題に取り組み、結果的に当初計画を上回り、過去最高の売上高を更新し522億5百万円を達成することができました。しかしながら急激な為替変動や半導体関連の調達難による機械納期遅延、IT、自動車産業等の特定業種に偏った営業形態の脆弱さ等が課題として残りました。
当連結会計年度の経営成績等は次の通りであります。
① 売上高及び売上総利益
当連結会計年度の売上高合計は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により停滞していた経済活動が回復基調にあったこと等から522億5百万円(前年同期比7.1%増)となりました。
製品別売上高については次の通りであります。
射出成形機
主力である射出成形機につきましては、売上高404億2千5百万円(前年同期比6.4%増)となりました。
周辺機器
射出成形機の需要が増加したこと等に伴い売上高は23億2千1百万円(前年同期比13.8%増)となりました。
部品
サービス需要が堅調だったこと等から売上高は76億8千万円(前年同期比15.7%増)となりました。
金型等
売上高は17億7千7百万円(前年同期比13.8%減)となりました。
売上総利益につきましては、需要が回復傾向にあったこと等から162億円(前年同期比12.5%増)となりました。また、売上高総利益率は31.0%(前年同期実績は29.6%)となりました。
② 営業利益
販売費及び一般管理費につきましては、売上高が増加したこと等から合計で135億1千8百万円(前年同期比14.3%増)、営業利益は26億8千2百万円(前年同期比4.0%増)、売上高営業利益率は5.1%(前年同期実績は5.3%)となりました。
③ 経常利益
経常利益は為替差損5億3千5百万円を計上したこと等により24億2千7百万円(前年同期比17.4%減)、売上高経常利益率は4.7%(前年同期実績は6.0%)となりました。
④ 税金等調整前当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、24億2千7百万円(前年同期比39.4%減)となり、法人税等合計額6億1千5百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は18億3千5百万円(前年同期比31.5%減)となりました。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
当社グループは、2024年3月期(第68期)は第四次中期経営計画の2年目にあたり売上高570億円を計画として掲げておりましたが、当業界の連結受注環境が前年比較30%以上下落しており、当社におきましても現在の受注残金額及び引合件数を勘案し、当初計画より20%減の460億円に修正し、前年度の課題に対処しつつ今期の計画を策定いたしました。今期の経営目標は「フューチャーデザイン2026の達成に向けた総仕上げを行う」をローリングさせ、拠点整備を行ってまいります。
具体的には、中国海塩工場の竣工による鋳物の内製加工推進によりコスト削減を実現します。また、米国工場の超大型成形機組立てエリアの改築により3,000t級の成形機組立てが開始されます。成形技術におきましては環境対応と経済活動の調和を図る提案を更に進めてまいります。具体的には名古屋地区において自動車産業向けに内覧会を開催し、自動車のEV化に伴う主要部品の樹脂化による軽量化、リサイクル材料を使った新しい成形方法等を紹介してまいります。また、医療機器分野の大量引合いへの対応、及びIT関連分野における更なる精密成形の対応、それに伴うリモートメンテナンス、無人化、省エネ化を実現してまいります。環境面ではマイクロプラスチックによる海洋汚染対策として生分解性樹脂を用いた環境対応樹脂成形への啓蒙と木粉コンポジット材料の拡販に向けた新成形技術を加速させ、日本、米国、中国及び欧州向けにハイエンド製品として展開させてまいります。
また前年度よりスタートしたインクルーシブ・グロース・チャレンジ(包括的成長への挑戦)としてグローバルサウスに対してのBOP戦略機の開発を進めております。このBOPとは世界人口の半数を占める年間世帯所得が3,000㌦未満のBase of the economic pyramid・低所得貧困層のことを示しております。当該国の成形加工業におきましては、低価格機を使用しているケースが多く、固定ポンプによる過大な電力消費量や高額な保守部品、機械精度により金型を破損させるリスク等、貧困層であるがために受けてしまうBOP ペナルティと呼ばれる不利益やコスト高に直面していることが挙げられます。こうしたグローバルサウスに対して、当社は子会社であるネグリボッシ・インドの成形機組立工場にて、新たに機能を絞った廉価で性能、品質、省エネに優れた電気式射出成形機の量産・販売を行い、当該国のBOPペナルティを排除し経済発展と生活水準の向上をサポートしていくことを目的としております。
指標 | 2024年3月期業績目標 | 中期経営計画 (2025年3月期 目標値) |
連結売上高(百万円) | 46,000 | 64,000 |
連結営業利益(百万円) | 1,200 | 4,200 |
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資本需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、射出成形機の部材の購入費用、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的にしたものは、主に生産設備等の設備投資費用及び射出成形機の研究開発費用等であります。
② 資金の流動性について
当社グループは、事業運営上の必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
運転資金につきましては、主に自己資金及び金融機関からの借入によって調達しております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は155億3千9百万円であります。当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。