有価証券報告書-第106期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/06/20 15:07
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136項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)重要な会計上の見積り
IFRSにしたがった連結財務諸表の作成は、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような、マネジメントによる見積り・仮定を必要とします。ソニーは、継続的に、過去のデータ、将来の予測及び状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な仮定にもとづき見積りを評価します。これらの評価の結果は、他の方法からは容易に判定しえない資産・負債の簿価あるいは費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、これらの見積りと大きく異なる場合があります。ソニーは、会社の財政状態や業績に重要な影響を与え、かつその適用にあたってマネジメントが重要な判断や見積りを必要とするものを重要な会計上の見積りであると考えます。ソニーは、以下に述べる項目を会社の重要な会計上の見積りとして考えています。なお、会計上の見積りの各項目に関連する会計方針については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『3.重要な会計方針の要約』をご参照ください。
金融商品
ソニーは、金融商品の契約の当事者になった時点で、金融商品を金融資産又は金融負債として認識しています。金融資産及び金融負債は公正価値で当初測定されます。
ソニーの保有する金融商品は測定方法にしたがって分類され、このうち公正価値で測定される金融商品については、将来における公正価値の変動により連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
また、負債性証券の信用損失の評価は、多くの場合、主観的であり、発行企業の信用格付け、業績予想、事業計画及び将来キャッシュ・フローに関するある特定の前提及び見積りが必要とされます。したがって、現在、信用損失がないと判断している負債性証券について、信用格付けの低下、継続的な業績の低迷、将来の世界的な株式市況の大幅悪化又は市場金利変動の影響等の事後的に利用可能となる情報の評価にもとづき、将来、信用損失に関する引当金が測定され、費用として認識されることにより、将来の収益を減少させる場合があります。
非金融資産の減損
ソニーは、棚卸資産、契約コスト及び繰延税金資産を除く非金融資産について、個々の資産又は資金生成単位に係る減損の兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能性の検討を行っています。これに加え、各資金生成単位に配分されているのれん、耐用年数が確定できない無形資産及び未だ利用可能でない無形資産の帳簿価額については、年に1回第4四半期に減損テストを実施しています。
当年度の減損判定において、のれんを持つ全ての資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を超過していたため、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。また、重要なのれんを持つ資金生成単位において回収可能価額は帳簿価額を少なくとも10%以上超過しています。耐用年数が確定できない無形資産及び未だ利用可能でない無形資産においても、回収可能価額が帳簿価額を超過していたため、減損損失を認識することはありませんでした。
中期計画を除く、2022年度ののれんの減損判定において実施された資金生成単位の回収可能価額への影響に関する感応度分析を含む重要な前提の検討は下記のとおりです。
・税引後割引率は2.6%から15.0%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、割引率を1ポイント増加させた場合においても、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。
・G&NS分野、ET&S分野、I&SS分野及び金融分野の資金生成単位におけるターミナル・バリューに適用された成長率はおおよそ1.0%から1.5%の範囲です。音楽分野の資金生成単位における中期計画を超える期間の成長率は1.0%から3.0%の範囲、映画分野では△5.0%から21.0%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、成長率を1ポイント減少させた場合においても、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。
・映画分野の資金生成単位におけるターミナル・バリューの算定に使用される利益倍率は1.5から12.0、収益倍率は1.3から1.5です。他の全ての前提を同一とし、利益倍率を1.0、収益倍率を0.25それぞれ減少させた場合においても、重要なのれんの減損損失を認識することはありませんでした。
マネジメントは、のれんの減損判定における回収可能価額の見積りに用いられた前提は、合理的であると考えています。しかしながら、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化による、回収可能価額の下落を引き起こすような見積りの変化が、これらの評価に不利に影響し、結果として、将来においてソニーが非金融資産の減損損失を認識することになる可能性があります。
企業結合
被取得企業における識別可能資産及び負債は、限定的な例外を除き、取得日の公正価値で測定しています。
企業結合で移転された対価、被取得企業の非支配持分の金額及びソニーが従来保有していた被取得企業の資本持分の公正価値の合計が、取得日における識別可能資産及び負債の正味価額を上回る場合にはその超過額がのれんとして認識され、下回る場合には純利益として認識されます。
見積りや前提には固有の不確実性が含まれるため、この移転された対価は異なる金額で評価され、識別可能資産及び負債に割り当てられる可能性があります。実際の結果が異なる可能性があること又は予想しない事象及び状況がこのような見積りに影響を与える可能性があることから、識別可能資産及びのれんの減損損失の計上又は識別可能負債の増加が必要となる可能性があります。
映画分野における予想総収益の見積り
映画会計においては、作品のライフサイクルを通した予想総収益を見積もる過程でマネジメントの判断が必要となります。この予想総収益の見積りは、繰延映画製作費及び映画分野における未払分配金債務の測定にあたり重要となります。
映画作品が製作され関連する費用が資産化される際に、その繰延映画製作費の公正価値が減損し、回収不能と見込まれる額を評価減する必要があるかどうかを決定するため、マネジメントは発生時に費用化される配給関連費用を含む追加で発生する費用を控除した予想総収益を見積もる必要があります。また、ある映画作品に関する売上原価として認識される繰延映画製作費の額は、その映画作品がそのライフサイクルにおいて様々な市場で公開されることから、残りの予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合にもとづいて計上されています。
マネジメントが各作品の予想総収益を見積もる際に基礎とするのは、同種の過去の作品の収益、主演俳優の人気度、その作品の公開される予測映画館数、BD/DVDなどのパッケージメディアやデジタル販売、テレビ放映及びその他の付随マーケットでの期待収益ならびに将来の売上に関する契約などです。この見積りは、各作品の直近までの実現収益及び将来予測収益にもとづいて定期的に見直されます。例えば、公開当初数週間の劇場収入が予想を下回った場合には、通常、劇場、BD/DVDなどのパッケージメディアやデジタル販売、及びテレビ放映の生涯収益などを下方に修正することになります。そのような下方修正を行わなかった場合、当該期間における映画製作費の償却費の過少計上になる可能性があります。さらに、未払分配金債務は残りの予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合に応じて計上されます。
繰延税金資産の評価
繰延税金資産は、将来それらを利用できる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で認識しています。したがって、繰延税金資産の計上金額は、繰延税金資産の回収可能性に関連する入手可能な証拠にもとづいて、定期的に評価されます。
繰延税金資産の評価は、財政状態計算書日時点で適用されている税制や税率にもとづいており、また、ソニーの財務諸表及び税務申告書で認識されている事象に関して将来に起こり得る税務上の結果についてのマネジメントの判断と最善の見積り、様々な税務戦略を実行する能力、一定の場合においての将来の結果に関する予測、事業計画及びその他の見込みを反映しています。ソニーが事業を行っているそれぞれの税務管轄における現在の税制や税率の改正は、実際の税務上の結果に影響を与える可能性があり、市場経済の悪化やマネジメントによる構造改革の目標未達は、将来における業績に影響を与える可能性があります。そして、これらのいずれかが、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性があります。将来の結果が計画を下回る場合、税務調査の結果や連結会社間の移転価格に関する事前確認制度の交渉が現在の損益配分に関する予想と異なる結果となる場合、及び税務戦略の選択肢が実行可能ではなくなる場合や売却を予定する資産の価値が税務上の簿価を下回ることになる場合には、繰延税金資産に対して評価減の計上が要求される可能性があります。一方、将来の予測される利益の改善や継続した利益の計上、ビジネス構造の変革といった他の要因によって、関連し得る要因の評価の結果、将来において、税金費用の減額をともなう評価減の戻し入れが計上される可能性があります。現在の見込みにおいて予想していないこれらの起こり得る要因や変化は、評価減が計上又は取崩される期間において、ソニーの業績又は財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
繰延保険契約費
新規保険契約の獲得もしくは保険契約の更新に直接関連し、かつそれに応じて変動する費用のうち、回収できると認められるものについては繰り延べています。繰り延べの対象となる新規契約費用は、保険契約募集手数料(費用)、診査及び調査費用等から構成されます。繰延保険契約費については、資産計上した金額が見積粗利益又は保険料から保険給付金及び事業費を控除した額の現在価値を超えていないことを検証するために、少なくとも年1回、回収テストが行われます。伝統的保険商品に関する繰延費用は、保険契約債務の計算と共通の基礎数値を用いて関連する保険契約の保険料払込期間にわたり償却されます。非伝統的保険商品に関する繰延費用は、見積期間にわたり関連する保険契約の見積粗利益の現在価値にもとづく一定の比率により償却されます。見積粗利益の現在価値算定における重要な仮定として資産運用利回り、死亡率、解約率及び割引率などを使用しています。
保険契約債務
保険契約債務は、保険契約者に対する将来の予測支払額の現在価値として計上されています。これらの債務は将来の資産運用利回り、罹患率、死亡率及び解約率等の要因についての予測にもとづき平準純保険料式の評価方法により算定されます。これらの見積り・予測は定期的に検証されています。また、保険契約債務には変額個人年金保険契約及び変額保険契約における最低保証給付に対する債務を含んでいます。
生命保険ビジネスにおける契約者勘定
生命保険ビジネスにおける契約者勘定に関する負債は、会計期間末日での契約者の給付に生じた契約の価値を表しています。負債は一般的に、累積的な積立額に付与利息を加え、契約者の引出額と残高に対して課せられるその他の手数料を差し引いたものです。生命保険ビジネスにおける契約者勘定には最低保証が付帯する変額個人年金保険契約及び変額保険契約に関する債務を含んでいます。
(2)生産、受注及び販売の状況
ソニーの生産・販売品目は極めて広範囲かつ多種多様であり、また、ゲーム機やゲームソフト、音楽・映像ソフト、エレクトロニクス機器等は、その性質上、原則として見込生産を行っているため、分野別に生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしていません。販売の状況については後述の「(3)経営成績の分析」において各分野の業績に関連付けて示しています。
(3)経営成績の分析
営業概況
2021年度
(億円)
2022年度
(億円)
売上高及び金融ビジネス収入99,215115,398
営業利益12,02312,082
税引前利益11,17511,803
当社株主に帰属する当期純利益8,8229,371

連結業績
売上高
2022年度の売上高及び金融ビジネス収入(以下「売上高」)は、前年度比1兆6,183億円増加し、11兆5,398億円となりました。この大幅な増収は、G&NS分野、I&SS分野、音楽分野及び映画分野の大幅な増収、ならびにET&S分野の増収によるものです。売上高の内訳の詳細については、後述の「分野別営業概況」をご参照ください。
(後述の「売上原価」、「研究開発費」及び「販売費及び一般管理費」に関する売上高に対する比率分析において、売上高には、純売上高のみが考慮されており、金融ビジネス収入は除かれています。これは、金融ビジネス費用は連結財務諸表上、売上原価や販売費及び一般管理費とは別に計上されていることによります。さらに、後述の比率分析のうち、セグメントに関するものについては、セグメント間取引を含んで計算されています。)
売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業損(益)(純額)
2022年度の売上原価は、前年度比1兆3,289億円増加して7兆1,747億円となり、売上高に対する比率は前年度の69.6%から71.1%に悪化しました。
研究開発費(売上原価に全額含まれる)は、前年度比1,173億円増加して7,357億円となり、売上高に対する比率は前年度の7.4%から7.3%になりました。(詳細は「第2 事業の状況」『6 研究開発活動』参照)
販売費及び一般管理費は、前年度比3,807億円増加し、1兆9,692億円になりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は前年度の18.9%から19.5%に悪化しました。
その他の営業損(益)(純額)は、前年度比535億円減少し、120億円の利益となりました。この悪化は、主に前年度に映画分野においてGame Show Network, LLCの一部の事業譲渡にともなう利益700億円があったことによるものです。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『31.連結損益計算書についての補足情報』参照)
持分法による投資利益(損失)
2022年度の持分法による投資利益(損失)は、前年度比ほぼ横ばいの244億円の利益となりました。これは、エムスリー㈱の持分法による投資利益の減少などがあったものの、主に音楽分野及び映画分野における投資利益の増加によるものです。エムスリー㈱の持分法による投資利益の減少は、前年度にエムスリー㈱の関連会社が上場にともない新株発行を行ったことによるエムスリー㈱で計上された持分変動利益に係る持分法投資利益51億円の計上があったことによるものです。
営業利益
2022年度の営業利益は、前年度比ほぼ横ばいの1兆2,082億円となりました。これは、映画分野及びG&NS分野の大幅な減益ならびにET&S分野の減益があったものの、金融分野、I&SS分野及び音楽分野の大幅な増益、ならびに全社(共通)及びセグメント間取引消去の損失の大幅な縮小によるものです。なお、前年度の営業利益には、前述のその他の営業損(益)(純額)として計上された要因が含まれています。また、前年度の営業利益には、ソニー生命の子会社における不正送金による損失168億円ならびに主に全社(共通)及びセグメント間取引消去に計上されている一部の米国子会社における確定給付型年金制度終了にともなう清算益55億円が含まれています。当年度の営業利益には、音楽制作及び音楽出版における訴訟に関する和解金の受領の影響(関連費用控除後)57億円及びソニー生命の子会社において前年度に発生した不正送金に係る資金回収221億円が含まれています。
金融収益及び費用
2022年度の金融収益は、前年度から118億円増加し、311億円となりました。一方、金融費用は前年度に比べ452億円減少し、590億円となりました。金融収益から金融費用を差し引いた純額は、前年度比569億円改善し、279億円の費用となりました。この大幅な改善は主に、Spotify Technology S.A.株式などの評価損が減少したことによるものです。
税引前利益
2022年度の税引前利益は、前年度比628億円増加し、1兆1,803億円となりました。
法人所得税
2022年度の法人所得税は、当年度において2,367億円を計上し、実効税率は前年度の20.5%を下回り、20.1%となりました。当年度の税率には、日本における税額控除額の増加及び日本における外国子会社合算税制に係る繰延税金負債の減少の影響が反映されています。なお、前年度の税率には、一部の日本の会社における繰延税金資産に対する以前に計上した評価減の戻入れの影響が反映されていました。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『25.法人所得税』参照)
非支配持分に帰属する当期純利益
2022年度の非支配持分に帰属する当期純利益は、前年度比3億円増加し、65億円となりました。
当社株主に帰属する当期純利益
2022年度の当社株主に帰属する当期純利益(非支配持分に帰属する当期純利益を除く)は、前年度比549億円増加し、9,371億円となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前年度の711.84円に対し、2022年度は758.38円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前年度の705.16円に対し、2022年度は754.95円となりました。(1株当たり当社株主に帰属する当期純損益の詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『26.基本的及び希薄化後EPSの調整表』参照)
分野別営業概況
以下の情報はセグメント情報にもとづきます。各分野の売上高はセグメント間取引消去前のものであり、また各分野の営業損益はセグメント間取引消去前のもので配賦不能費用は含まれていません。(「第5 経理の状況」 連結財務諸表注記『4.セグメント情報』参照)
G&NS分野
主要経営数値
2021年度
(百万円)
2022年度
(百万円)
製品部門別の外部顧客向け売上高
デジタルソフトウェア・アドオンコンテンツ1,424,4591,523,045
ネットワーク409,355464,676
ハードウェア・その他840,5421,550,812
外部顧客向け売上高の合計2,674,3563,538,533
セグメント間取引65,407106,065
セグメント売上高2,739,7633,644,598
セグメント営業利益346,089250,006
主要製品の売上台数(万台)(万台)
PS5™ハードウェア1,1501,910

2022年度のG&NS分野の売上高は、前年度比9,048億円増加し、3兆6,446億円となりました。この大幅な増収は、アドオンコンテンツを含む自社制作以外のゲームソフトウェア販売減少などがあったものの、主に為替の影響やハードウェアの売上増加及び自社制作ゲームソフトウェア販売の増加によるものです。
営業利益は、前年度比961億円減少し、2,500億円となりました。この大幅な減益は、主にゲームソフトウェア開発費及びBungie等の当年度に取引を完了した買収にともなう費用*を中心としたコスト増や前述の自社制作以外のゲームソフトウェア販売減少の影響によるものです。この減益は、前述の自社制作ゲームソフトウェア販売の増加の影響やハードウェアの損失縮小により一部相殺されています。なお、当年度の為替の悪影響は324億円でした。
* 当年度に取引を完了した買収にともなう費用として527億円を計上しました。なお、Bungieの買収に関する詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『30.企業結合』をご参照ください。
事業環境及び事業戦略
2022年度の当分野の業績は、下半期にPS5™の供給が大きく改善したことによるハードウェア及び周辺機器の販売好調と、3つのティアで構成される新たなプレイステーション®プラスのローンチの好影響によるネットワークサービスからの継続的かつ安定した収益貢献を反映したものとなりました。一方、ソフトウェア販売については、『God of War: Ragnarök』などの一部の新作タイトルの販売が好調だったものの、新型コロナウイルス感染縮小による外出機会の増加にともなうユーザーのゲーム支出減少の影響を受けました。このような環境下、プレイステーションのエコシステムのアクティブユーザー数増加を通じた今後の成長に向けて、三つの成長戦略として、コンソールの成長、ポートフォリオの拡大及びソニーグループ内連携のための取り組みを進めていきます。コンソールの成長については、ユーザーエンゲージメントをけん引しているPS5™のユーザーベースのさらなる拡大のために、PS5™の普及をさらに加速していきます。ポートフォリオの拡大については、PlayStation Studiosへの積極的な費用投下やサードパーティスタジオに対する出資・買収などを継続的に実施することにより、新規IPとライブサービスゲームの開発を強化していきます。例えば、今後のライブサービスゲーム領域におけるポートフォリオ拡大の推進にあたって、2022年7月のBungieの買収完了以降、同社と密接に連携し、その専門性や経験を活用しています。また、PCやモバイルといったマルチプラットフォームに自社制作ソフトウェアを展開することで、既存IPのリーチ拡大にも取り組んでおり、2022年度には『Marvel’s Spider-Man』や『The Last of Us Part 1』などのPC向けタイトルの売上が前年度比で大幅に増加しました。ソニーグループ内連携については、2022年度に『The Last of Us』のテレビシリーズのヒットがあったように、プレイステーションのゲームIPの映画化・テレビ番組化を着実に進めており、さらなる連携強化に取り組んでいきます。
音楽分野
音楽分野の業績には、日本のSMEJの円ベースでの業績、ならびにその他全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、SME及びSMPの円換算後の業績が含まれています。
主要経営数値
2021年度
(百万円)
2022年度
(百万円)
ビジネス部門別の外部顧客向け売上高
音楽制作(ストリーミング)462,368598,868
音楽制作(その他)206,412286,270
音楽出版200,334276,665
映像メディア・プラットフォーム231,418203,012
外部顧客向け売上高の合計1,100,5321,364,815
セグメント間取引16,41715,817
セグメント売上高1,116,9491,380,632
セグメント営業利益210,933263,107

2022年度の音楽分野の売上高は、前年度比2,637億円増加し、1兆3,806億円となりました。この大幅な増収は、アニメ事業の収入減少による映像メディア・プラットフォームの減収があったものの、主に為替の影響ならびに音楽制作及び音楽出版の増収によるものです。音楽制作及び音楽出版の増収は、音楽制作における新作リリースのヒットもあり、主に有料会員制ストリーミングサービスからの収入が増加したことによるものです。
営業利益は、前年度比522億円増加し、2,631億円となりました。この大幅な増益は、前述の映像メディア・プラットフォームの減収の影響があったものの、主に為替の好影響や前述の音楽制作及び音楽出版の増収の影響ならびに音楽制作及び音楽出版における訴訟に関する和解金の受領の影響(関連費用控除後で57億円)によるものです。
事業環境及び事業戦略
2022年度の当分野の業績は、世界的にデジタルストリーミング配信の拡大が続く中、Alamo Records、Som Livre、AWALなどを含めた過去に積極的に行った買収を含めたアーティストの発掘・育成の強化によるストリーミングサービスからの収入の増加を反映したものとなりました。このような環境下、ソニーは市場成長を上回る継続的な成長の実現に向けた施策として、コンテンツIP強化やアーティストとの関係強化のための積極的な投資、The Orchardを核にしたディストリビューション・レーベルに対するサービスの強化、AWALなどを通じた新興アーティストとの接点の早期確保、ならびに新興市場におけるローカルタレントへの積極的な投資やローカル企業との協業などによる新興市場へのアプローチの強化を進めていきます。さらに、ソーシャルメディアやゲームなどの新たな事業機会も引き続き増加しており、今後もこのような新規事業領域において、多様なサービスパートナーとの連携を通じて、音楽コンテンツの新たな利用機会の創出による収益基盤の拡大と、アーティストにとっての収益拡大の機会の創出によるアーティストとの関係強化に取り組んでいきます。加えて、ソニーグループの多様性を活かし、アーティストに幅広いマーケティングの機会を提供していきます。また、映像メディア・プラットフォームにおいては、マーチャンダイジングや海外販売の拡大及び制作力強化によるアニメ事業の成長、ならびにファンエンゲージメントの向上やクオリティの高いゲーム開発の推進によるゲーム事業の成長を図っていきます。
映画分野
映画分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結しているSPEの円換算後の業績です。ソニーはSPEの業績を米ドルで分析しているため、一部の記述については「米ドルベース」と特記してあります。
主要経営数値
2021年度
(百万円)
2022年度
(百万円)
ビジネス部門別の外部顧客向け売上高
映画製作518,840464,043
テレビ番組制作419,494536,250
メディアネットワーク298,065364,594
外部顧客向け売上高の合計1,236,3991,364,887
セグメント間取引2,5124,535
セグメント売上高1,238,9111,369,422
セグメント営業利益217,393119,255

2022年度の映画分野の売上高は、前年度比1,305億円(11%)増加し、1兆3,694億円となりました(米ドルベースでは、8%の減収)。この米ドルベースでの減収は、主に映画製作において「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」、「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」などの大型作品の貢献があった前年度に比べ、当年度劇場興行収入が減少したこと、テレビ番組制作において前年度に「サインフェルド」のライセンス収入があったこと、及び、映画製作において前年度に動画配信サービスへライセンスした新作映画の作品数が多かったことによるものです。この減収は、テレビ番組制作における作品の納入数の増加やIndustrial Media及びBad Wolfの買収の影響、ならびにCrunchyrollの買収の影響を含むアニメ専門DTCサービスにおける増収などにより一部相殺されています。
営業利益は、前年度比981億円減少し、1,193億円となりました(米ドルベースでは、54%の減益)。この米ドルベースでの大幅な減益は、主に前年度にGame Show Network, LLCの一部門であるGSN Gamesの事業譲渡にともなう譲渡益700億円の計上があったこと及び前述の減収の影響によるものです。
事業環境及び事業戦略
2022年度の当分野の業績は、前年度における大型作品の貢献やGSN Gamesの譲渡益及び「サインフェルド」のライセンス収入の計上の剥落による影響があったものの、動画配信サービスからのコンテンツへの継続的な需要があったことや米国における劇場興行収入の回復が進んだことを背景に、ストラテジックサプライヤー(あらゆる配信プラットフォームにコンテンツを提供できる独立系コンテンツサプライヤー)としてのソニーの強みを反映したものとなりました。このような環境下、ストラテジックサプライヤーとしての強みを活かすとともに、映画作品の劇場公開を重視する戦略を継続し、引き続き作品の長期的な価値最大化をめざします。映画製作においては、新規IPの展開及び既存IPの再活性化を進めていきます。2023年度には『Spider-Man: Across the Spider-Verse』や『Kraven the Hunter』といった映画作品の劇場公開を通じて、Sony Pictures Universe of Marvel Charactersの展開を拡大していく予定です。テレビ番組制作においては、多様なコンテンツに対するニーズに対応するために、ドキュメンタリーやリアリティ番組を含む様々なノンフィクションジャンルにおける制作能力を引き続き強化していきます。加えて、映画製作やテレビ番組制作におけるソニーグループ内連携の取り組みも継続しており、2022年の『アンチャーテッド』の劇場公開や2023年のテレビシリーズ『The Last of Us』の成功に続き、今後もプレイステーションのゲームIPを題材とした作品展開を拡大していきます。メディアネットワークにおいては、CrunchyrollやSonyLIVなどのDTCサービスの展開をさらに強化していきます。例えば、Crunchyrollは、2022年度には、アニメグッズの販売会社Right Stuf, Inc.の買収を通じてファン向けのeコマースサービスを強化しました。2021年12月にSPNIとZeeとの合併に関する確定契約の締結を発表しましたが、本合併により、急成長するインドのメディア・エンタテインメント市場において、両社の強みを活かしデジタル配信サービスを強化していくことで、事業拡大とデジタル化をさらに加速していくことをめざします。また、ソニーは、ロケーションベースエンタテインメント領域においても既存IPからの収益機会を積極的に追求していきます。
ET&S分野
主要経営数値
2021年度
(百万円)
2022年度
(百万円)
製品部門別の外部顧客向け売上高
テレビ858,837733,251
オーディオ・ビデオ326,704391,608
静止画・動画カメラ414,898565,018
モバイル・コミュニケーション365,864356,771
その他331,583390,091
外部顧客向け売上高の合計2,297,8862,436,739
セグメント間取引41,30039,286
セグメント売上高2,339,1862,476,025
セグメント営業利益212,942179,461
主要製品の売上台数(万台)(万台)
テレビ850660

2022年度のET&S分野の売上高は、前年度比1,368億円増加し、2兆4,760億円となりました。この増収は、販売台数の減少によるテレビの減収があったものの、主に為替の影響及び販売台数の増加によるデジタルカメラの増収によるものです。
営業利益は、前年度比335億円減少し、1,795億円となりました。この減益は、前述のデジタルカメラの増収の影響があったものの、主にテレビの減収の影響によるものです。なお、当年度の為替の好影響は94億円でした。
事業環境及び事業戦略
2022年度の当分野の業績は、中国での断続的な新型コロナウイルス感染再拡大による生産及び物流の混乱や欧米を中心とした市場減速などの厳しい事業環境の中、これらに機敏に対応するための徹底したサプライチェーンマネジメントや固定費削減などの各種施策を実行するとともに、テレビやデジタルカメラを中心に高付加価値商品へのシフトを推進した成果を反映したものとなりました。このような環境下、当分野では、収益性の維持向上をめざす「収益軸事業領域」と新規事業の創出・拡大による成長をめざす「成長軸事業領域」の二軸での事業構造を確立するという方針のもと、事業運営を行っていきます。収益軸事業領域においては、生産から販売までの一貫したDX化や自動化の推進によるオペレーション強化を進めていきます。また、サウンドやイメージングの独自技術を活かしたキャプチャリングデバイスの強みに加え、通信やクラウドといったテクノロジーを活かしたクリエイティブソリューションを加えることで、クリエイターと新たな体験価値を創造するとともに、リカーリング型の事業モデルへとポートフォリオをシフトさせ、ボラティリティの低減をめざします。成長軸事業領域においては、クリエイターとともに未来のエンタテインメントを創造していくために、社内外のパートナーとの連携により事業モデルを進化させ、持続的な成長の実現に向けた新たな事業モデルの構築をめざします。時間や空間、ハードウェア機能の制約からクリエイターを開放し、新たな映像・クリエイティブ表現を実現するバーチャルプロダクション事業やソフトウェアソリューション事業、リアルとバーチャルをつなぐ新しいスポーツエンタテインメントの実現をめざすスポーツ事業などを推進していきます。また、ライフサイエンス事業やネットワークサービス事業では、これまで培ってきたテクノロジーを活用することで、安心と持続可能な社会の実現に貢献することをめざします。
I&SS分野
主要経営数値
2021年度
(百万円)
2022年度
(百万円)
外部顧客向け売上高の合計992,2001,301,481
セグメント間取引84,224100,706
セグメント売上高1,076,4241,402,187
セグメント営業利益155,597212,214

2022年度のI&SS分野の売上高は、前年度比3,258億円増加し、1兆4,022億円となりました。この大幅な増収は、主に為替の影響及びモバイル機器向けイメージセンサーが販売数量の減少の一方で製品ミックスの改善により増収となったことによるものです。
営業利益は、前年度比566億円増加し、2,122億円となりました。この大幅な増益は、研究開発費及び減価償却費の増加ならびに製造経費の増加があったものの、主に為替の好影響及び前述の増収の影響によるものです。なお、当年度の為替の好影響は1,209億円でした。
事業環境及び事業戦略
2022年度の当分野の業績は、中国のスマートフォン市場の減速が続いたものの、ハイエンドスマートフォンを中心にモバイル機器向けイメージセンサーの大型化、高画質・高性能化の傾向が継続したことを反映したものとなりました。このような環境下、引き続き、イメージセンサーの大型化、高画質・高性能化に対応するための技術力と生産能力を向上させ、中期的な売上成長及び収益性改善のための取り組みを進めるとともに、イメージセンサーにおける世界No.1ポジションのさらなる強化をめざします。また、車載や産業機器などのセンシング領域やエッジAIセンシングプラットフォームAITRIOS™によるソリューション事業といった新規領域における取り組みも引き続き積極的に進めていきます。車載領域はこれまで順調に成長しており、引き続きOEMやプラットフォーマーとの関係構築・強化を進め、収益拡大をめざします。産業機器領域では、多種多様な商品ラインアップを強みとして、省人化や自動化をはじめとした、様々な現場の課題解決に貢献するソリューションを提供し、中長期的な事業成長につなげていきます。中長期的なイメージセンサーの需要拡大に対応することを目的として、将来の不確実性を念頭に置き、今後の投資計画を慎重に精査しつつも、生産能力増強のための設備投資も継続していきます。
金融分野
金融分野には、SFGI及びSFGIの連結子会社であるソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行等の業績が含まれています。金融分野に記載されている業績は、SFGI及びその連結子会社が日本の会計基準に則って個別に開示している業績とは異なります。
主要経営数値
2021年度
(百万円)
2022年度
(百万円)
金融ビジネス収入1,533,8291,454,546
営業利益150,111223,935

2022年度の金融ビジネス収入は、主にソニー生命の減収により、前年度比793億円減少し1兆4,545億円となりました。ソニー生命の収入は、特別勘定における運用益が減少したことにより、前年度比1,084億円減少し、1兆2,421億円となりました。
営業利益は、前年度比738億円増加し、2,239億円となりました。この大幅な増益は、ソニー生命の子会社において前年度は不正送金による損失168億円を計上したのに対し、当年度は当該不正送金の資金回収にともない営業利益が221億円増加したこと、及びソニー生命における大幅な増益などによるものです。ソニー生命の営業利益は、新型コロナウイルス関連の給付金などの増加があったものの、不動産売却益の計上や、保有契約高の積み上がりによる利益の増加などにより、前年度比297億円増加し、1,770億円となりました。
事業環境及び事業戦略
2022年度の当分野の業績は、日本経済と債券市場の状況を反映したものとなりました。日本経済は、前年度同様に新型コロナウイルスの感染拡大による逆風を受けました。また、ロシアによるウクライナ侵攻後に加速した輸入物価の高騰が食料やガソリン価格の上昇を通じて、家計を圧迫しました。しかし、経済活動の正常化が徐々に進展したことにより、景気は緩やかな回復傾向で推移しました。2022年度第1四半期には年初からのオミクロン変異株の感染拡大が一服したことを受け、5月の大型連休時を中心に旅行や買い物目的の外出需要が持ち直しました。その後にオミクロン変異株の感染が再度拡大する時期もありましたが、日本政府は行動制限・自粛要請を見送りました。その結果、人々の外出増加や入国制限の本格緩和など経済活動の正常化が進展したことにより、景気が下支えされました。一方、海外経済の減速や半導体などIT関連需要の減少等により、年度後半の製造業の生産は鈍化しました。日本の債券市場は、米国及び日本の金融政策の影響を受けました。このような環境下、お客様への提供価値を最大化することで金融グループ全体として収益性をともなった持続的成長を実現するため、コア・ユニークな競争優位性の徹底強化、低金利に耐え得る収益構造への転換、お客様目線経営のさらなる進化、テクノロジーによる競争力強化、グループシナジーの最大化の五つを戦略の柱として、各種取り組みを進めています。これまでの取り組みは順調に進んでおり、強みを活かすことで業容は着実に拡大しています。例えば、ソニー生命におけるライフプランナーの一人当たりの生産性は、注力分野である法人ビジネスにおける新契約高の伸長によって改善しており、ライフプランナー数も着実に増加しています。今後もライフプランナーの生産性向上、収益性強化などの質的転換を徹底し、さらなる利益成長をめざします。加えて、テクノロジーによる競争力の強化を加速するためのソニーグループ内連携の強化や外部パートナーからの知見・技術の獲得の強化、金融分野各社の事業の垣根を超えたデータ利活用等によるお客様への提供価値向上に向けた取り組みも推進していきます。また、ソニーグループの一員として社会的責任を果たすべく、サステナビリティ推進と金融グループにおけるガバナンス徹底強化に注力します。さらに、中長期的には、コア顧客の深掘りに加え、テクノロジーやアライアンスの活用により、顧客基盤及び顧客とのタッチポイントを拡大し、顧客生涯価値の最大化をめざします。
金融分野を分離した経営成績情報
以下の表は金融分野の要約損益計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約損益計算書です。これらの要約損益計算書は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。
要約損益計算書(3月31日に終了した1年間)
(単位:百万円)金融分野金融分野を除くソニー連結ソニー連結
2021年度2022年度2021年度2022年度2021年度2022年度
売上高--8,402,21710,101,9798,396,70210,095,841
金融ビジネス収入1,533,8291,454,546--1,524,8111,443,996
売上高及び金融ビジネス収入合計1,533,8291,454,5468,402,21710,101,9799,921,51311,539,837
売上原価--5,856,9257,186,7675,845,8047,174,723
販売費及び一般管理費--1,582,8501,961,9061,588,4731,969,170
金融ビジネス費用1,383,0541,234,758--1,374,0371,224,208
その他の営業損(益)(純額)664△4,147△66,158△5,566△65,494△12,021
売上原価、販売費・一般管理費及びその他の一般費用合計1,383,7181,230,6117,373,6179,143,1078,742,82010,356,080
持分法による投資利益(損失)--23,64624,44923,64624,449
営業利益150,111223,9351,052,246983,3211,202,3391,208,206
金融収益(費用)(純額)--△45,69813,437△84,836△27,893
税引前利益150,111223,9351,006,548996,7581,117,5031,180,313
法人所得税45,40263,865183,689172,528229,097236,691
当期純利益104,709160,070822,859824,230888,406943,622
当期純利益の帰属
金融分野の当期純利益104,216159,698----
金融分野を除くソニー連結の当期純利益--817,123818,106--
当社株主に帰属する当期純利益----882,178937,126
非支配持分に帰属する当期純利益4933725,7366,1246,2286,496

その他分野
2022年度の売上高は、前年度比112億円減少し、876億円となりました。営業利益は、前年度比11億円減少し、168億円となりました。
為替変動とリスク・ヘッジ
2022年度の米ドル、ユーロに対する平均円レートはそれぞれ135.4円、140.9円と前年度の平均レートに比べ米ドルは23.1円、ユーロは10.4円の円安となりました。
2022年度の連結売上高は、前年度に比べ1兆6,183億円(16%)増加し、11兆5,398億円となりました。前年度の為替レートを適用した場合、売上高は約4%の増収となります。為替変動による売上高及び営業損益への影響については後述の『注記』をご参照ください。
G&NS分野、ET&S分野及びI&SS分野の為替変動による売上高及び営業損益への影響については、以下の表をご参照ください。また、詳細については、「経営成績の分析」の分野別概況における各分野の分析をご参照ください。為替の影響が大きかった分野やカテゴリーについて、その影響に言及しています。
2021年度
(億円)
2022年度
(億円)
為替変動による影響額
(億円)
G&NS分野売上高27,39836,446+4,198
営業利益3,4612,500△324
ET&S分野売上高23,39224,760+2,375
営業利益2,1291,795+94
I&SS分野売上高10,76414,022+2,027
営業利益1,5562,122+1,209

なお、2022年度の音楽分野の売上高は前年度比24%増加の1兆3,806億円となりましたが、前年度の為替レートを適用した場合、約8%の増収でした。映画分野の売上高は前年度比11%増加の1兆3,694億円となりましたが、米ドルベースでは、前年度比約8%の減収でした。詳細な分析は、「(3)経営成績の分析」の「音楽分野」及び「映画分野」をご参照ください。ソニーの金融分野は、円ベースのSFGIを連結しています。同分野の事業のほとんどが日本で行われていることから、ソニーは金融分野の業績の分析を円ベースでのみ行っています。
2022年度のG&NS分野、ET&S分野及びI&SS分野において、米ドルに対する1円の円高の影響は、売上高では約299億円、営業損益では約4億円の減少と試算されます。ユーロに対する1円の円高の影響は、売上高では約111億円、営業損益では約66億円の減少と試算されます。(「第2 事業の状況」『3 事業等のリスク』参照)
ソニーの連結業績は、主に収入と費用において通貨構成が異なることから生ずる為替変動リスクにさらされています。G&NS分野では、米ドル建てのコストの割合が高いのに対して、売上高は日本円、米ドル又はユーロで計上されるため、米ドルに対する円高は営業利益に好影響を、ユーロに対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。ET&S分野では、主要製品におけるドル建ての製造コスト等の割合が高いことなどから米ドルに対する円高は営業利益に好影響を及ぼします。一方で、新興国での売上高の割合が高いため、新興国通貨に対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。I&SS分野では、米ドル建ての販売契約の割合が高い一方、主に日本で製造を行っていることから、米ドルに対する円高は営業利益に大幅な悪影響を及ぼします。
これらの為替変動によるリスクを軽減するため、ソニーは一貫したリスク管理方針に従い、先物為替予約、通貨オプション契約を含むデリバティブを利用しています。ソニーが行っているこれらのデリバティブは、主に当社及び当社の子会社の予想される外貨建て取引及び外貨建て営業債権や営業債務から生じるキャッシュ・フローの為替変動によるリスクを低減するために利用されています。
ソニーは、総合的な財務サービスを当社及び当社の子会社・関連会社に提供することを目的として、Sony Global Treasury Services Plc(以下「SGTS」)を英国に設立しています。為替変動リスクにさらされている当社及び全ての子会社が、リスク・ヘッジのための契約をSGTSとの間で結ぶことがソニーの方針となっており、当社及び当社の子会社のほとんどはこの目的のためにSGTSを利用しています。為替リスク集中の原則にもとづき、SGTSと当社がソニーグループ全体の相殺後のほとんどの為替変動リスクをヘッジしています。ソニーの方針として、金融機関との為替デリバティブ取引は、リスク管理のため、原則としてSGTSに集中しています。 SGTSはグループ外の信用の高い金融機関との間で外国為替取引を行っています。ほとんどの外国為替取引は、実際の輸出入取引が行われる前の予定された取引や債権・債務に対して行われます。一般的には、実際の輸出入取引が行われる1ヵ月前からヘッジを行っています。ソニーは金融機関との外国為替取引を主にヘッジ目的のために行っています。ソニーは、金融分野を除き、売買もしくは投機目的でこれらのデリバティブを利用していません。金融分野においては、主に資産負債の総合管理の一環としてデリバティブを活用しています。
キャッシュ・フロー・ヘッジとして指定されたデリバティブの公正価値変動は、当初累積その他の包括利益に計上され、ヘッジ対象取引が損益に影響を与える時点で損益に振り替えられます。一方、ヘッジ会計の要件を満たさない先物為替予約、通貨オプション契約、及びその他のデリバティブは時価評価され、その変動は、直ちに金融収益・金融費用に計上されます。2022年度末における外国為替契約の資産に計上された公正価値(純額)の合計は14億円となっています。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『15.デリバティブ及びヘッジ活動』参照)
『注記』
前年度の為替レートを適用した場合の売上高の状況、及び為替変動による影響額について
前年度の為替レートを適用した場合の売上高の状況は、当年度の現地通貨建て月別売上高に対し、前年度の月次平均レートを適用して算出しています。ただし、音楽分野のSME及びSMP、ならびに映画分野については、米ドルベースで集計した上で、前年度の月次平均米ドル円レートを適用した金額を算出しています。
映画分野の業績の状況は、米国を拠点とするSPEが、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結していることから、米ドルベースで記載しています。
為替変動による影響額は、売上高については前年度及び当年度における平均為替レートの変動を主要な取引通貨建て売上高に適用して算出し、営業損益についてはこの売上高への為替変動による影響額から、同様の方法で算出した売上原価ならびに販売費及び一般管理費への為替変動による影響額を差し引いて算出しています。I&SS分野では独自に為替ヘッジ取引を実施しており、売上高及び営業損益への為替変動による影響額に同取引の影響が含まれています。
これらの情報はIFRSに則って開示されるソニーの連結財務諸表を代替するものではありません。しかしながら、これらの開示は、投資家の皆様にソニーの営業概況をご理解頂くための有益な分析情報と考えています。
所在地別の業績
所在地別の業績は、顧客の所在国又は地域別に分類した売上高及び金融ビジネス収入を「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『4.セグメント情報』に記載しています。
(4)財政状態の分析
以下の表は金融分野の要約財政状態計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約財政状態計算書です。これらの要約財政状態計算書はソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他のセグメントとは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、両者の繰延税金資産と繰延税金負債を相殺する前の金額となっています。これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。
要約財政状態計算書
(単位:百万円)
科 目金融分野金融分野を除くソニー連結ソニー連結
2021年度末2022年度末2021年度末2022年度末2021年度末2022年度末



流動資産
現金及び現金同等物 *1889,140756,4931,160,496724,4072,049,6361,480,900
金融分野における投資及び貸付 *2360,673328,357--360,673328,357
営業債権、その他の債権及び契約資産169,929134,4041,478,6201,668,2571,628,5211,777,939
棚卸資産 *3--874,0071,468,042874,0071,468,042
その他の金融資産81,17447,04468,12463,906149,301110,950
その他の流動資産72,44163,025450,953562,442473,070610,330
流動資産合計1,573,3571,329,3234,032,2004,487,0545,535,2085,776,518
非流動資産
持分法で会計処理されている投資--268,513325,220268,513325,220
金融分野における投資及び貸付 *218,445,08818,445,728--18,445,08818,445,728
金融分野への投資(取得原価)--550,483550,483--
有形固定資産18,01015,3161,095,2411,329,2191,113,2131,344,864
使用権資産73,77484,023339,658395,210413,430478,063
のれん及び無形資産(コンテンツ資産含む) *472,57878,1972,672,4663,322,6392,745,0443,400,836
繰延保険契約費676,526730,864--676,526730,864
繰延税金資産--332,330431,533298,589384,839
その他の金融資産37,03746,941663,233789,470696,306832,344
その他の非流動資産77,65775,143284,834319,306289,050321,946
非流動資産合計19,400,67019,476,2126,206,7587,463,08024,945,75926,264,704
合 計20,974,02720,805,53510,238,95811,950,13430,480,96732,041,222







流動負債
短期借入金1,964,7761,891,856183,187211,0202,147,9622,102,876
営業債務及びその他の債務118,92177,5951,744,0111,812,6701,843,2421,865,993
銀行ビジネスにおける顧客預金2,886,3613,163,237--2,886,3613,163,237
未払法人所得税4,44413,370101,648139,330106,092152,700
映画分野における未払分配金債務--190,162230,223190,162230,223
その他の金融負債68,79343,12829,05030,44497,84373,572
その他の流動負債242,937222,0391,296,2051,513,8821,488,4881,720,335
流動負債合計5,286,2325,411,2253,544,2633,937,5698,760,1509,308,936
非流動負債
長期借入債務470,498663,353733,1481,104,3441,203,6461,767,696
退職給付に係る負債37,16737,183217,381198,938254,548236,121
繰延税金負債634,576304,838110,715112,938696,492356,324
保険契約債務その他7,039,0347,264,421--7,039,0347,264,421
生命保険ビジネスにおける契約者勘定4,791,2955,148,579--4,791,2955,148,579
映画分野における未払分配金債務--220,113192,952220,113192,952
その他の金融負債128,208153,72486,391199,327211,959350,278
その他の非流動負債5,8647,225121,558142,096106,481127,593
非流動負債合計13,106,64213,579,3231,489,3061,950,59514,523,56815,443,964
負 債 合 計18,392,87418,990,5485,033,5695,888,16423,283,71824,752,900
金融分野の株主に帰属する資本2,577,7051,811,167----
金融分野を除くソニー連結の株主に帰属する資本--5,156,0596,007,177--
当社株主に帰属する資本----7,144,4717,229,709
非支配持分3,4483,82049,33054,79352,77858,613
資 本 合 計2,581,1531,814,9875,205,3896,061,9707,197,2497,288,322
合 計20,974,02720,805,53510,238,95811,950,13430,480,96732,041,222

(注)*1 2022度末の金融分野を除くソニー連結における現金及び現金同等物の減少要因は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の『(5)キャッシュ・フローの状況の分析』をご参照ください。
*2 2021年度末及び2022年度末の金融分野における投資及び貸付の変動については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『5.金融商品』をご参照ください。
*3 2022年度末の金融分野を除くソニー連結における棚卸資産の増加は、主にG&NS分野において棚卸資産が増加したことによるものです。
*4 2022年度末の金融分野を除くソニー連結におけるのれん及び無形資産(コンテンツ資産含む)の増加は、主にBungieの株式の取得及び繰延映画製作費の増加によるものです。
(5)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フロー:2022年度において営業活動から得た現金及び現金同等物(純額)は、前年度比9,190億円減少し、3,147億円となりました。
金融分野を除いたソニー連結では、4,155億円の受取超過となり、前年度比3,978億円の受取の減少となりました。この減少は、非資金調整項目(減価償却費及び償却費(契約コストの償却を含む)、その他の営業損(益)(純額)ならびに有価証券に関する損(益)(純額))を加味した後の税引前利益が前年度に比べて増加した一方で、棚卸資産やコンテンツ資産の増加額が拡大したこと、営業債務が増加から減少に転じたことなどによるものです。
金融分野では前年度の4,597億円の受取超過に対し、当年度は563億円の支払超過となりました。これは、生命保険ビジネス及び銀行ビジネスにおける借入債務の増加額が前年度に比べて縮小したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー:2022年度において投資活動に使用した現金及び現金同等物(純額)は、前年度比3,239億円増加し、1兆527億円となりました。
金融分野を除いたソニー連結では、1兆320億円の支払超過となり、前年度比3,209億円の支払の増加となりました。この増加は、固定資産の購入による支払が前年度に比べ増加したことや、当年度においてBungieの株式の取得があったこと、Epic Gamesへの追加出資があったこと、Industrial Mediaの買収に関連する支払があったことなどによるものです。なお、前年度においては、アニメ事業Crunchyrollを運営するEllationの持分取得や、主にインディーズアーティストを対象とした音楽配給事業であるAWALを含むKobaltの一部の子会社の全ての株式及び関連資産の取得、ならびにEpic Gamesへの追加出資に係る支払などがありました。
金融分野ではほぼ前年度並みの238億円の支払超過となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー:財務活動による現金及び現金同等物(純額)は、前年度の3,366億円の支払超過に対し、2022年度は843億円の受取超過となりました。
金融分野を除いたソニー連結では、前年度の3,258億円の支払超過に対し、当年度は955億円の受取超過となりました。この受取超過は、長期銀行借入を行ったことや、普通社債の発行を行ったことなどによるものです。
金融分野ではほぼ前年度並みの526億円の支払超過となりました。
現金及び現金同等物:以上の結果、為替変動の影響を加味した2023年3月末の現金及び現金同等物期末残高は1兆4,809億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の2023年3月末における現金及び現金同等物期末残高は、2022年3月末に比べ4,361億円減少し、7,244億円となりました。金融分野の2023年3月末における現金及び現金同等物残高は、2022年3月末に比べ1,326億円減少し、7,565億円となりました。
金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報
以下の表は、金融分野の要約キャッシュ・フロー計算書、及び金融分野を除くソニー連結の要約キャッシュ・フロー計算書です。この要約キャッシュ・フロー計算書は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられたIFRSには準拠していませんが、金融分野はソニーのその他のセグメントとは性質が異なるため、ソニーはこのような比較表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。
要約キャッシュ・フロー計算書
(単位:百万円)
項 目金融分野金融分野を除くソニー連結ソニー連結
2021年度2022年度2021年度2022年度2021年度2022年度
営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前利益(損失)150,111223,9351,006,548996,7581,117,5031,180,313
営業活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)への税引前利益(損失)の調整
減価償却費及び償却費(契約コストの償却を含む)24,93226,333810,301978,257835,2331,004,590
繰延保険契約費の償却費69,23784,523--69,23784,523
その他の営業損(益)(純額)664△4,147△66,158△5,566△65,494△12,021
有価証券に関する損(益)(純額)(金融分野以外)--60,4024,46960,4024,469
保険契約債務その他の増加・減少(△)458,880234,102--458,880234,102
生命保険ビジネスにおける契約者勘定の非資金取引の増加・減少(△)238,30915,523--238,30915,523
生命保険ビジネスにおける契約者勘定の収入・支払(△)227,262346,455--227,262346,455
資産及び負債の増減
営業債権及び契約資産の増加(△)・減少△53,81935,524△121,684△110,668△171,094△70,448
棚卸資産の増加(△)・減少--△194,624△560,382△194,624△560,382
金融分野における投資及び貸付の増加(△)・減少△1,724,164△1,250,078--△1,724,164△1,250,078
コンテンツ資産の増加(△)・減少--△502,253△603,314△502,253△603,314
繰延保険契約費の増加(△)・減少△117,337△118,096--△117,337△118,096
営業債務の増加・減少(△)37,885△40,07193,660△64,765126,989△109,336
銀行ビジネスにおける顧客預金の増加・減少(△)230,236300,201--230,236300,201
生命保険ビジネス及び銀行ビジネスにおける借入債務の増加・減少(△)905,139111,314--905,139111,314
法人所得税以外の未払税金(純額)の増加・減少(△)△511217,8454,07117,8404,183
その他12,380△21,912△290,769△223,387△278,421△247,307
営業活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)459,710△56,282813,268415,4731,233,643314,691
投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産及びその他の無形資産の購入△20,562△24,195△420,542△590,320△441,096△613,635
投資及び貸付(金融分野以外)--△91,082△191,129△91,082△191,129
投資の売却又は償還及び貸付の回収(金融分野以外)--16,08113,54816,08113,548
その他2,914393△215,597△264,125△212,683△261,448
投資活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)△17,648△23,802△711,140△1,032,026△728,780△1,052,664
財務活動によるキャッシュ・フロー
借入債務の増加・減少(△)△10,975△11,226△151,721273,195△162,696261,969
配当金の支払△39,159△41,335△74,342△86,568△74,342△86,568
その他△6△2△99,702△91,100△99,540△91,101
財務活動から得た又は使用した(△)現金及び現金同等物(純額)△50,140△52,563△325,76595,527△336,57884,300
現金及び現金同等物に対する為替相場変動の影響額--94,36984,93794,36984,937
現金及び現金同等物の純増加・減少(△)額391,922△132,647△129,268△436,089262,654△568,736
現金及び現金同等物期首残高497,218889,1401,289,7641,160,4961,786,9822,049,636
現金及び現金同等物期末残高889,140756,4931,160,496724,4072,049,6361,480,900

(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析
以下の基本方針及び数値情報は、独自に流動性を確保している金融分野及び一部の子会社を除いたソニーの連結事業にもとづいて説明しています。なお、金融分野については当該項目において別途説明しています。
流動性マネジメントと資金の調達
ソニーは、事業活動に必要な流動性を保ちながら健全な財政状態を維持することを財務の重要な目標と考えています。ソニーは、現金及び現金同等物(以下「現預金等」。ただし、国の規制等で資金の移動に制約があるものを除く)及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけています。
流動性の保持に必要な資金は、営業活動及び投資活動(資産売却を含む)によるキャッシュ・フロー及び現預金等でまかないますが、ソニーは必要に応じて社債、CP、銀行借入などの手段を通じて、金融・資本市場からの資金調達を行っています。
当社、SGTS及び米国の子会社Sony Capital Corporation(以下「SCC」)は日本・米国・欧州の各市場へアクセス可能なCPプログラム枠を有しています。2022年度末時点で当社、SGTS及びSCCは、円換算で合計1兆1,663億円分のCPプログラム枠を保有しています。2022年度末における発行残高はありません。
金融・資本市場が不安定な混乱状況に陥り、前述の手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、ソニーは、多様な金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しています。2022年度末の未使用のコミットメントラインの総額は円換算で6,415億円です。未使用のコミットメントラインの内訳は、日本の銀行団と結んでいる2,750億円の円貨コミットメントライン、日本の銀行団と結んでいる1,700百万米ドルの複数通貨建てコミットメントライン、外国の銀行団と結んでいる1,050百万米ドルの複数通貨建てコミットメントラインです。金融・資本市場の流動性がなくなった場合でも、ソニーは現預金等及びこれらのコミットメントラインを使用することによって十分な流動性を維持することができると現時点では考えています。
ソニーは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、安定した一定水準の信用格付けの維持を重要な経営目標の一つと位置づけています。ただし、グループ全体の主要な資金調達に関する金融機関との契約において、ソニーの信用格付けが低下した場合に、強制的に早期弁済を求められるものはありません。また、これら契約のうち一部のコミットメントライン契約については、ソニーの信用格付けにより借入コストが変動する条件が含まれているものがありますが、未使用のコミットメントラインからの借入を禁ずる条項を含んでいるものはありません。
キャッシュ・マネジメント
ソニーは日本においては当社、米国においてはSCC、それ以外の地域においてはSGTSを中心にグローバルな資金管理を行っています。資本取引に規制があり資金移動を制限されている国や地域は一部存在しますが、大部分の子会社における資金の過不足は、当社、SGTS及びSCCにより純額ベースで運用又は調達をしています。ソニーは資金の効率化をめざし、各子会社に資金余剰が出た場合は当社、SGTS及びSCCに預け、また各子会社に資金不足が生じた場合には当社、SGTS及びSCCを通じて資金の貸し借りを行うことで、余剰資金を活用し、外部借入を削減することができます。関係会社間の効率的な資金移動が制限されている国や地域では、ソニーは当社、SGTS及びSCCの外に資金を残していますが、必要な流動性資金はキャッシュ・フローや外部からの借入(もしくはその両方)によって調達しています。ソニーは、海外に所在する移動を制限されている資金が、ソニー全体の流動性や財務状況ならびに業績に重大な影響を与えるとは考えていません。
金融分野
SFGI、ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行の各マネジメントは、業務の遂行にともなう支払義務を履行するのに十分な流動性を確保することが重要だと認識しています。ソニー生命、ソニー損保及びソニー銀行は、法令(保険業法及び銀行法など)や金融庁及びその他関係規制当局の定める各種規制を遵守することに加え、それに準拠した社内規程を制定、運用しながら、十分な現預金等を準備し、支払能力を確保することに努めています。ソニー生命及びソニー損保は、受取保険料を主な資金の源泉とし、有価証券を中心とした投資を行うにあたり、保険金等の円滑な支払等に十分な水準の流動性を確保しています。ソニー銀行は、顧客からの円貨・外貨建て預金を主な資金の源泉とし、住宅ローンを中心とする貸出と主に市場性のある有価証券投資を行う中で、円滑な決済等に必要な水準の流動性を確保しています。外貨建て顧客預金で得られた資金は、主に同じ通貨建の金融商品に投資されています。
なお、金融分野の子会社は、保険業務、銀行業務の公共性から、その信用を維持し、契約者や預金者の保護を確保することが保険業法、銀行法で定められています。したがって、金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されており、金融分野の子会社は、上記の当社、SGTS及びSCCを介したグローバルなキャッシュ・マネジメントからも隔離されています。
なお、ソニーグループが創出した営業活動によるキャッシュ・フローに関する、成長投資、手許資金及び株主還元への配分についての考え方に関しては「第2 事業の状況」「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等『第四次中期経営計画 数値目標とその進捗』」をご参照ください。
オフバランス取引
ソニーは、流動性と資金調達手段の確保、及びクレジットリスクを軽減するためにオフバランス取引を行っています。これらの取引は、ソニーが営業債権に対する支配を放棄したことから、売却として会計処理されます。なお、一部の営業債権売却プログラムにはストラクチャード・エンティティが関与しています。「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28.ストラクチャード・エンティティ』をご参照ください。
借入債務、コミットメント及び偶発債務等
2023年3月31日現在におけるソニーの借入債務、コミットメント及び偶発債務等は以下のとおりです。
借入債務
「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『6.金融商品に関連するリスク管理 (4) 流動性リスク』及び『14.短期借入金及び長期借入債務』をご参照ください。
ローン・コミットメント、パーチェス・コミットメント及び訴訟に関する偶発債務
「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『33.パーチェス・コミットメント、偶発債務及びその他』をご参照ください。
保険契約負債
「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『13.保険関連科目 (5) 保険及び市場リスク』をご参照ください。