有価証券報告書-第90期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 10:55
【資料】
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【項目】
122項目
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済につきましては、第3四半期から中国を中心とした輸出に回復がみられるものの、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大及び国内における緊急事態宣言による行動制限の影響により、生産、輸出いずれも弱含みで推移しました。
このような経営環境の下、当社グループは、2020年5月に発表した中期経営方針及び中期事業計画の成長戦略である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」に取り組んできました。
「事業領域の拡大」につきましては、防衛・通信機器事業で当社の得意とするマイクロ波技術を応用し、半導体製造装置分野へエッチング装置向けや、成膜装置向けのソリッドステートマイクロ波電源をリリースし、2022年からの本格的な量産による売上増が期待出来ることとなりました。
「グローバル化の推進」につきましては、船舶港湾機器事業で中国の内航船・漁船市場向けにジャイロコンパス及び中型オートパイロットをリリースし、拡販を推進しました。
「既存事業の継続的強化」につきましては、流体機器事業で国内官需市場での売上増・シェアアップのための戦略商品となる新型高精度超音波流量計をリリースしました。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度における業績につきましては、流体機器事業が増収だったものの、それ以外の事業が減収だったことから、売上高は前期比5,359百万円(11.3%)減収の42,081百万円となりました。営業利益は前期比625百万円(33.3%)減益の1,250百万円、経常利益は前期比553百万円(27.5%)減益の1,458百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比480百万円(33.7%)減益の945百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
[船舶港湾機器事業]
当事業では、船舶関連機器の保守サービスが第3四半期から好転し堅調に推移したものの、コロナ禍の影響等を受け、商船市場及びアジアを主とした海外市場での新造船向けの需要が低調に推移しました。
新商品については、中国内航船・漁船市場向けにジャイロコンパスTKG-1100及び中型オートパイロットPR-3000シリーズを、学校・官公庁船市場向けに電子チャートテーブルを市場投入しました。
この結果、当事業の売上高は前期比573百万円(6.3%)減収の8,522百万円、営業利益は販管費の減少などから前期比14百万円(5.9%)増益の246百万円となりました。
[油空圧機器事業]
当事業では、海外市場は中国向け販売が堅調であったことから前期を上回ったものの、それ以外の市場はコロナ禍の影響により需要が低迷しました。
新商品については、油圧製品として斜板式可変容量ピストンポンプPH260、カートリッジサーボ弁ユニットU-CVSVS-125を、電子機器製品としてI/O拡張モジュールEXM2000、グラバーボードDCP-320を市場投入しました。
この結果、当事業の売上高は前期比1,700百万円(14.1%)減収の10,351百万円、営業損失は424百万円(前期は223百万円の営業損失)となりました。
[流体機器事業]
当事業では、コロナ禍の影響を受け一部の案件が次期に繰り延べになったものの、すべての市場が堅調に推移しました。
新商品については、主に官需市場向けの戦略商品として高精度で且つメンテナンスが容易な高精度超音波流量計UFR-300を市場投入しました。
この結果、当事業の売上高は前期比258百万円(6.9%)増収の4,003百万円、営業利益は前期比103百万円(18.9%)増益の647百万円となりました。
[防衛・通信機器事業]
当事業では、民需市場の農機用自動操舵補助装置及び半導体製造装置向け機器の需要が堅調に推移したものの、放送局向け機器の需要が低調に推移したことに加え、官需市場ではレーダー警戒装置の納入数が減少し、前期にあった海上交通機器のVTSシステムの納入が当期はなかったことから売上は前期実績を下回りました。
新商品については、半導体製造装置用マイクロ波電源(エッチング装置向け機能拡張品及び成膜装置向け)及び2.45GHz汎用50Wマイクロ波発振器を市場投入しました。
この結果、当事業の売上高は前期比2,982百万円(15.5%)減収の16,281百万円、営業利益は前期比395百万円(42.4%)減益の537百万円となりました。
[その他の事業]
当事業では、鉄道機器事業は前期並みに推移しましたが、検査機器事業がコロナ禍の影響で海外での営業活動、装備工事に制限があり売上が減少しました。
新商品については、鉄道保線市場向けに従来機になかったタッチパネルを搭載したポータブル超音波探傷器SM-5Rを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比360百万円(11.0%)減収の2,924百万円、営業利益は前期比134百万円(28.9%)減益の330百万円となりました。
財政状態の状況は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の流動資産は、前期末に比べて1,745百万円減少し、40,950百万円となりました。これは、現金及び預金が増加したものの、受取手形及び売掛金並びに仕掛品が減少したことによるものです。また、固定資産は、前期末に比べて714百万円増加し、12,596百万円となりました。これは、繰延税金資産が減少したものの、退職給付に係る資産及び投資有価証券が増加したことによるものです。この結果、資産合計は、前期末の54,577百万円から1,031百万円減少し、53,546百万円となりました。
流動負債は、前期末に比べて4,014百万円減少し、17,722百万円となりました。これは、短期借入金並びに支払手形及び買掛金が減少したことによるものです。また、固定負債は、前期末に比べて688百万円増加し、3,884百万円となりました。これは、退職給付に係る負債が減少したものの、長期借入金が増加したことによるものです。この結果、負債合計は、前期末の24,933百万円から3,327百万円減少し、21,607百万円となりました。
純資産合計は、前期末の29,644百万円から2,295百万円増加し、31,939百万円となりました。これは、退職給付に係る調整累計額、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金が増加したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前期末の53.5%から5.2ポイント増加し、58.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は11,588百万円と前期比3,879百万円(50.3%)増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は7,068百万円(前期は2,915百万円の獲得)となりました。その主な収入要因は、税金等調整前当期純利益1,465百万円、売上債権の減少3,278百万円及びたな卸資産の減少2,323百万円、支出要因は、仕入債務の減少704百万円及び法人税の支払額396百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は928百万円(前期は1,139百万円の使用)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出1,014百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は2,247百万円(前期は3,456百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入による収入2,050百万円、長期借入金の返済による支出3,878百万円及び配当金の支払409百万円によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業7,452△8.7
油空圧機器事業9,716△13.3
流体機器事業4,0056.9
防衛・通信機器事業14,807△21.6
報告セグメント計35,981△14.3
その他の事業1,428△18.7
合計37,408△14.5

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 上記生産高のほか、各報告セグメントに配分していない全社生産高44百万円があります。
4 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業8,123△9.32,277△14.9
油空圧機器事業10,463△7.62,6594.4
流体機器事業4,0551.61,0155.4
防衛・通信機器事業16,58221.315,5712.0
報告セグメント計39,2233.421,5220.3
その他の事業3,3986.9903109.8
合計42,6203.622,4252.5

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記受注高のほか、各報告セグメントに配分していない全社受注高1百万円があります。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業8,522△6.3
油空圧機器事業10,351△14.1
流体機器事業4,0036.9
防衛・通信機器事業16,281△15.5
報告セグメント計39,157△11.3
その他の事業2,924△11.0
合計42,080△11.3

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記販売高のほか、各報告セグメントに配分していない全社販売高1百万円があります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
防衛省9,38519.88,10919.3

4 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は油空圧機器事業で大幅な減収となったことから、前期に比べ11.3%減収の42,081百万円となりました。
売上原価は、売上原価率が前期に比べ0.9ポイント好転し31,415百万円となりました。この要因は、トータルコストダウンの推進に努めたことに加え、比較的原価率の低い製品の売上が増加したことなど、製品ミックスの変化の影響等によるものです。一方、利益につきましては、販売費及び一般管理費は前期に比べ273百万円減少したものの、売上高の減少により売上総利益が898百万円減少した結果、営業利益は前期に比べ33.3%減益の1,250百万円、経常利益は前期に比べ27.5%減益の1,458百万円、また、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ33.7%減益の945百万円となりました。
当社グループが経営指標として掲げております当連結会計年度の連結営業利益率につきましては、前期と比べ1.0ポイント悪化の3.0%となりました。また、自己資本利益率(ROE)につきましては、前期と比べ1.8ポイント悪化の3.1%となりました。ROEは過去3年間では、6.8%、4.9%、3.1%と推移した結果、3年間平均では4.9%となりましたが、5年平均では4.3%となりました。今後につきましては、リスク管理を強化しながら更なる事業収益の改善と財務基盤の強化に注力するとともに、2031年3月期までに連結営業利益率10%以上、ROEにつきましても株主資本コストを上回る10%以上を安定的に創出することを目指してまいります。
当連結会計年度の当社グループの経営成績に重要な影響を与えた要因としては、内外経済の変動、自然災害・疫病があります。
内外経済の変動及び疫病につきましては、特に営業損失となった油空圧機器事業において、新型コロナウイルス感染症の影響により、当社が得意とする各種成形機、工作機械、建設機械等、当社製品が組み込まれた国内外の顧客の一時的な操業停止や商品に対する需要の大幅な縮小の影響を受けました。
当社グループは、運転資金及び設備資金を内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、2021年3月末日現在の連結借入金残高は10,941百万円となっております。財務政策は営業キャッシュ・フローの改善による資本の財源の獲得を最優先事項と考えており、不足分は借入金により資金調達することとしております。