有価証券報告書-第87期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/29 13:00
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109項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済につきましては、アジア向けを中心に輸出が持ち直す中、企業の設備投資や生産活動が緩やかに増加していることなどから、景気は緩やかな回復基調が続きました。
このような経営環境の中、当社グループは、平成25年に発表した5ヶ年中期経営方針に基づく3ヶ年中期事業計画の成長戦略である「既存事業の強化」に加え、「グローバル化の推進」と「事業領域の拡大」を重点に取り組んできました。「既存事業の強化」につきましては、防衛・通信機器事業の官需市場で過年度に受注したF-15主力戦闘機用レーダー警戒装置の更新に伴う開発・納入が計画どおりに推移しました。「グローバル化の推進」につきましては、油空圧機器事業の海外市場で中国の北部地域に設定した複数の有力な新規代理店による成果が出始めました。また、インドでも新たに2社と代理店契約を締結するなど販路を更に拡充しました。「事業領域の拡大」につきましては、防衛・通信機器事業の民需市場で農業機械用自動操舵補助装置及び半導体製造装置用マイクロ波増幅器の量産が始まりました。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度における業績につきましては、前期に比べ、売上高は2,409百万円(5.8%)増収の43,803百万円となりました。また、売上高の増加等により、営業利益は198百万円(17.6%)増益の1,319百万円、経常利益が260百万円(20.7%)増益の1,511百万円、親会社株主に帰属する当期純利益も411百万円(58.0%)増益の1,120百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
[船舶港湾機器事業]
当事業の商船市場では、新造船向けに航海機器のパッケージ販売が増加し、仕入商品の販売も堅調であったことなどから、受注は前期並みとなりましたが、売上は前期を上回りました。
内航船市場では、新造船向けにコンソールなどと組み合わせた舶用機器が増加したことなどから、受注、売上共に前期を上回りました。
海外市場では、アジアの新規建造需要が一部回復したことなどから、受注は前期を上回りましたが、新造船向け販売と欧米向けOEMジャイロコンパス販売の回復が遅れたことから、売上は前期を下回りました。
船舶関連機器の保守サービスについては、部品販売及び役務工事が堅調に推移したことから、受注は前期並みとなり、売上は前期を上回りました。
このような状況の中、新商品については、商船市場向けにMF/HF無線電話装置TRM-1510及び航海情報表示装置BM-8100シリーズ、内航船市場向けに電子海図装置ECS-8100シリーズ及び舶用レーダーBR-1220/1520、内航船・漁船市場向けにトラッキングインターフェースユニットTIF-3を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比398百万円(4.7%)増収の8,858百万円、営業利益は161百万円(前期営業損失141百万円)となりました。
[油空圧機器事業]
当事業のプラスチック加工機械市場では、自動車関連設備の需要が増加したことなどから、受注、売上共に前期を上回りました。
工作機械市場では、国内及び北米の需要が一般産業機械を中心に堅調であったことなどから、受注、売上共に前期を上回りました。
建設機械市場では、国内の復興需要及びインフラ整備需要が減少したことなどから、受注、売上共に前期を下回りました。
海外市場では、中国の成形機需要が堅調であったことから、受注、売上共に前期を上回りました。
油圧応用装置については、一般産業機械市場では自動車関連設備の需要が堅調に推移したことから、受注は前期を上回りましたが、売上は前期並みとなりました。
このような状況の中、新商品については、建設機械市場向け高圧ピストンポンプPHC45、高速比例弁HRD-7、画像処理用グラバーボードDAPDNA-CP300、超音波厚さ計UTM-210を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比464百万円(3.7%)増収の12,853百万円、営業利益は前期比32百万円(15.6%)増益の235百万円となりました。
[流体機器事業]
当事業の官需市場では、災害復旧工事に予算が優先され、計装工事の発注が遅れたことなどから、受注、売上共に前期を下回りました。
民需市場では、船舶接岸速度計の発注が遅れたことなどから、受注、売上共に前期を下回りました。
海外市場では、ミャンマー向けODA案件があったことなどから、受注、売上共に前期を上回りました。
このような状況の中、新商品については、官需市場向けに農業用水用電池式超音波流量計UFB-20及び2線式超音波流量計UFR-40を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比237百万円(9.0%)減収の2,381百万円、営業利益は前期比146百万円(55.3%)減益の118百万円となりました。
[防衛・通信機器事業]
当事業の官需市場では、F-15主力戦闘機用レーダー警戒装置の量産受注、航空機用油圧機器の修理契約及び部品販売の増加、新型潜水艦用装備品の開発契約があったものの、前期にあったSH-60K哨戒ヘリコプター17機一括調達に伴う逆探装置のような大型契約が当連結会計年度はなかったことなどから、受注は前期を下回りました。一方、F-15主力戦闘機用レーダー警戒装置の更新に伴う開発・納入があったことから、売上は前期を上回りました。
民需のセンサー機器市場では、地震計関連機器及び道路関連機器の需要が増加したことに加え、新たに市場投入した農機関連装置の量産出荷が始まったことから、受注、売上共に前期を上回りました。
通信機器市場では、地上デジタル放送関連機器の換装需要が好調であったこと、当連結会計年度から量産が始まった半導体製造装置用マイクロ波増幅器の数量が増加したこと、衛星通信用アンテナスタビライザーなどの需要が好調であったことから、受注、売上共に前期を上回りました。
このような状況の中、新商品については、センサー機器市場向けにIRI機能を搭載した新型平坦性計測解析装置レーザ・プロファイラLP-3000及び田植機用自動操舵補助装置、放送局向けSNGアンテナ装置、車両向け衛星通信用アンテナスタビライザーを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比2,199百万円(15.9%)増収の16,051百万円と、営業利益は前期比334百万円(265.6%)と大幅な増益の460百万円になりました。
[その他の事業]
検査機器事業は、新商品P-CAP V6の市場投入が遅れたことなどから、受注は前期を上回りましたが、売上は前期を下回りました。
防災機器事業は、立体駐車場の完成物件が増えたことに加え、「ガス系消火設備の容器弁の安全性に係る点検」の新たに法定期限を迎える物件が増えたことから、受注、売上共に前期を上回りました。
鉄道機器事業は、役務工事は堅調に推移したものの、大型物件であるレール探傷車の更新需要の端境期に入ったことなどから、受注、売上共に前期を下回りました。
このような状況の中、新商品については、検査機器市場向けに印刷品質検査装置 P-CAP V6、鉄道機器市場向けに分岐器検査装置SPG-5、レール底部探傷装置ST-1、クレーンレール探傷器CRD-50を市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比414百万円(10.2%)減収の3,659百万円、営業利益は前期比319百万円(44.6%)減益の396百万円となりました。
財政状態の状況は、次の通りであります。
当連結会計年度末の流動資産は、前期末に比べて5,420百万円増加し46,011百万円となりました。これは、仕掛品、受取手形及び売掛金並びに現金及び預金が増加したことによるものであります。また、固定資産は前期末に比べて419百万円増加し、12,035百万円となりました。これは、建設仮勘定及び繰延税金資産が減少したものの、工具器具及び備品並びに投資有価証券が増加したことによるものであります。この結果、資産合計は、前期末の資産合計52,206百万円から5,839百万円増加し、58,045百万円となりました。
流動負債は、前期末に比べて14百万円増加し20,580百万円となりました。これは短期借入金が減少したものの、支払手形及び買掛金が増加したことによるものであります。固定負債は、前期末に比べて4,756百万円増加し、9,041百万円となりました。これは、長期借入金が増加したことによるものであります。この結果、負債合計は前期末の負債合計24,850百万円から4,770百万円増加し、29,620百万円となりました。
純資産合計は、前期末の純資産合計27,356百万円から1,069百万円増加し、28,425百万円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことに加え、退職給付に係る調整累計額及びその他有価証券評価差額金が増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は前期末51.6%から3.3ポイント減少し、48.3%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前期に比べ1,664百万円増加の9,828百万円となりました。この主な要因は、営業活動で獲得した資金による増加463百万円、固定資産の取得など投資活動で使用した資金による減少1,374百万円、長期借入金の増加など財務活動で獲得した資金による増加2,589百万円であります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は463百万円(前期は2,949百万円の使用)となりました。その主な収入要因は、税金等調整前当期純利益1,540百万円、仕入債務の増加1,336百万円及び減価償却費1,221百万円、支出要因は、たな卸資産の増加2,449百万円及び売上債権の増加1,893百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,374百万円(前期は1,569百万円の使用)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出1,266百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は2,589百万円(前期は741百万円の獲得)となりました。その主な要因は、長期借入による収入6,050百万円、長期借入金の返済による支出3,022百万円及び配当金の支払332百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業7,402△0.7
油空圧機器事業11,9314.7
流体機器事業2,382△9.0
防衛・通信機器事業15,85716.7
報告セグメント計37,5727.2
その他の事業2,370△6.6
合計39,9426.2

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 上記生産高のほか、各報告セグメントに配分していない全社生産高30百万円があります。
4 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業8,58117.02,736△9.2
油空圧機器事業13,0424.22,8167.2
流体機器事業2,326△9.0134△29.4
防衛・通信機器事業16,469△9.419,3882.2
報告セグメント計40,416△0.425,0741.1
その他の事業3,790△10.41,6758.3
合計44,207△1.426,7491.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記受注高のほか、各報告セグメントに配分していない全社受注高1百万円があります。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業8,8584.7
油空圧機器事業12,8533.7
流体機器事業2,381△9.0
防衛・通信機器事業16,05115.9
報告セグメント計40,1437.6
その他の事業3,659△10.2
合計43,8025.8

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記販売高のほか、各報告セグメントに配分していない全社販売高1百万円があります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
防衛省6,23115.14,90711.2

4 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4 会計方針に関する事項」に記載されているとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は前期に比べ5.8%増収の43,803百万円となりました。売上原価は前期に比べ6.8%増加の32,864百万円となりました。売上原価率は、トータルコストダウンの推進に努めたものの、比較的原価率が低い流体機器事業が低迷し、比較的原価率が高い防衛・通信機器事業の売上が増加した等、製品ミックスの変化の影響等による原価率の悪化により、前期に比べ0.7ポイント悪化の75.0%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べ1.2%増加の9,621百万円となりました。営業利益は前期に比べ17.6%増益の1,319百万円となりました。経常利益は前期に比べ20.7%増益の1,511百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ58.0%増益の1,120百万円となりました。
船舶港湾機器事業では、国内外の商船市場及び内航船市場が堅調であったことなどから、売上高は前期に比べ4.7%増収の8,858百万円、営業利益は前期141百万円の損失から161百万円の利益となりました。
油空圧機器事業では、プラスチック加工機械市場が好調であったこと、工作機械市場が堅調に推移したことから、売上高は前期に比べ3.7%増収の12,853百万円、営業利益は前期に比べ15.6%増益の235百万円となりました。
流体機器事業では、官需市場で災害復旧工事に予算が優先され、計装工事の発注が遅れたことなどから、売上高は前期に比べ9.0%減収の2,381百万円、営業利益は前期に比べ55.3%減益の118百万円となりました。
防衛・通信機器事業では、官需市場でF-15主力戦闘機用レーダー警戒装置の更新に伴う開発・納入があったこと、通信機器市場で当連結会計年度から量産が始まった半導体製造装置用マイクロ波増幅器の数量が増加したこと、衛星通信用アンテナスタビライザーなどの需要が好調であったことから、売上高は前期に比べ15.9%増収の16,051百万円、営業利益は前期に比べ265.6%増益の460百万円となりました。
また、その他の事業では、鉄道機器事業で大型物件であるレール探傷車の更新需要の端境期に入ったことなどから、売上高は前期に比べ10.2%減収の3,659百万円、営業利益は前期に比べ44.6%減益の396百万円となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、内外経済の変動、官公庁との取引等があります。
内外経済の変動につきましては、当社グループの商品は、直接又は間接的に、国内のみならず、アジア、欧米等の様々な国又は地域に供給しており、これらの国又は地域の市場における経済状況の影響を受けることがあります。特に船舶港湾機器事業では、国際的な海運市況の影響を受ける商船の需要の変化、油空圧機器事業では、当社が得意とする建設機械、各種成形機、工作機械等の各市場での当社製品が組み込まれた顧客の商品に対するニーズの変化や為替レートの変動、その他予測せざる事態の発生に伴う需要の縮小の影響を受けることがあります。
官公庁との取引につきましては、流体機器事業や防衛・通信機器事業において、直接又は間接的に、防衛省、海上保安庁、国土交通省、農林水産省、各種自治体等と多くの商品及び修理に関する取引があります。官公庁の予算の見直しに伴い予定していた調達数量が増減することや、予算の前倒し執行や後年度への繰り延べ等により当社グループの事業計画に大きな影響を及ぼすことがあります。また、特に防衛省関連の商品は、受注から納入までの期間が長く、納入までの間に一時的なたな卸資産の増加、仕入債務の増加や借入金の増加等、財政状況に影響を与えることがあります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループは、運転資金及び設備資金を内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、平成30年3月末日現在の連結借入金残高は16,212百万円となっております。財務政策は営業キャッシュ・フローの改善による資本財源の獲得を最優先事項と考えており、不足分は借入金により資金調達することとしております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループは、企業価値を高めるべく「高収益体質の実現と財務基盤の強化」を目指し、経営指標として自己資本比率及び自己資本利益率(ROE)の向上を目標に掲げてまいりましたが、当連結会計年度の自己資本比率につきましては、前期に比べ3.3ポイント悪化の48.3%となりました。この主な要因は、自己資本が、利益剰余金の788百万円増加、その他の包括利益累計額の377百万円増加などにより、28,024百万円と前期に比べ1,078百万円増加しましたが、総資産も、長短借入金の3,028百万円増加などにより、58,045百万円と前期に比べ5,839百万円と大きく増加したためであります。一方、自己資本利益率(ROE)につきましては、前期の2.7%に比べ1.4ポイント好転の4.1%となりました。過去5年間では、10.6%、9.1%、4.7%、2.7%、4.1%と推移した結果、平均では6.2%となり、大手議決権行使助言会社などが示している最低ラインの「直近5年間の平均5%以上」は上回りました。
今後につきましては、リスク管理を強化しながら更なる事業収益の改善と財務基盤の強化に注力するとともに、資本効率の向上にも努力していきます。ROEにつきましては、安定して8%以上となることを目標としてまいります。