有価証券報告書-第89期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 10:17
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【項目】
133項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済につきましては、生産、輸出いずれも弱含んで推移する中、第4四半期後半には新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大の影響が表れ始めました。
このような経営環境の下、当社グループは、2019年5月に発表した中期経営方針及び中期事業計画の成長戦略である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」に取り組んできました。「事業領域の拡大」につきましては、油空圧機器事業において耐圧防爆電磁切換弁をリリースし、これまで高いシェアを維持してきた一般産業機械市場に加え新たに防爆市場への参入を果たしました。また、防衛・通信機器事業において、新規事業として推進してきました農業機械の自動操舵補助装置が新たな母機メーカーに採用され、農業機械関連の売上は前期比で約3倍に成長しました。「グローバル化の推進」につきましては、油空圧機器事業でアジア地区及びインドでの新たな販売パートナーの確保等による販売力強化を推進しました。「既存事業の継続的強化」につきましては、生産・販売・技術・サービスが一丸となって効率化を追求してまいりました結果、防衛・通信機器事業において、2018年3月期より継続したレーダー警戒装置を始めとする大型量産契約案件等を大きな損失の発生をすることなく予定通り納入し、当期においては当該セグメントとしては過去5年間で最高となる売上高を上げることができました。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度における業績につきましては、防衛・通信機器事業が大きく増収であったことから、売上高は前期に比べ、749百万円(1.6%)増収の47,440百万円となりました。また、営業利益は製品ミックスの変化により原価率が1.7ポイント悪化したことから565百万円(23.2%)減益の1,875百万円、経常利益は649百万円(24.4%)減益の2,011百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は511百万円(26.4%)減益の1,425百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
[船舶港湾機器事業]
当事業では、国内市場において新造船向け販売や換装需要が低迷したものの、船舶関連機器の保守サービスの需要が堅調に推移したことに加えて、海外市場ではアジア向け新造船の売上が増加しました。新商品については、内航船市場向けに中型マリンレーダーの後継機種 BR-2570シリーズ、GPSコンパス TC-300シリーズを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比145百万円(1.6%)増収の9,094百万円、営業利益は前期比223百万円(49.0%)減益の233百万円となりました。
[油空圧機器事業]
当事業では、前期に好調だったプラスチック加工機械市場及び工作機械市場での自動車関連設備の需要減少や国内外で米中貿易摩擦の影響があり売上が減少しました。新商品については、耐圧防爆電磁切換弁DG4VX-5、カートリッジ形サーボ弁CVSVS及びデジタル制御コントローラSV、加速度センサU-CSを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比1,014百万円(7.8%)減収の12,050百万円、営業損失は223百万円(前期営業利益118百万円)となりました。
[流体機器事業]
当事業では、民需市場、海外市場、消火設備市場は堅調に推移したものの、官需市場で前期に導入が進んだ河川防災向けの危機管理型水位計の販売減等により売上が減少しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比356百万円(8.7%)減収の3,745百万円、営業利益は前期比300百万円(35.6%)減益の545百万円となりました。
[防衛・通信機器事業]
当事業では、官需市場でレーダー警戒装置を始めとする大型量産契約案件等の納入があったことに加え、農業機械関連機器の需要増、放送市場向けの新商品として投入した車載型カメラ防振装置TVACS-V、8Kスーパーハイビジョン伝送ヘリ用アンテナ自動指向装置ADSの販売開始により好調に推移しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比2,355百万円(13.9%)増収の19,264百万円、営業利益は前期比406百万円(77.3%)増益の931百万円となりました。
[その他の事業]
当事業では、検査機器事業は前年同期並みに推移しましたが、鉄道機器事業で役務工事は堅調だったものの、機器販売で前期にあった海外大型物件が今期はなかったことから売上が減少しました。
この結果、当事業全体として売上高は前期比384百万円(10.5%)減収の3,283百万円、営業利益は前期比108百万円(18.9%)減益の464百万円となりました。
財政状態の状況は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の流動資産は、前期末に比べて3,430百万円減少し、42,695百万円となりました。これは、受取手形及び売掛金が増加したものの、仕掛品並びに現金及び預金が減少したことによるものであります。また、固定資産は、前期末に比べて342百万円減少し、11,882百万円となりました。この結果、資産合計は、前期末の58,349百万円から3,772百万円減少し、54,577百万円となりました。
流動負債は、前期末に比べて552百万円減少し、21,736百万円となりました。これは、短期借入金が増加したものの、支払手形及び買掛金が減少したことによるものであります。また、固定負債は、前期末に比べて3,382百万円減少し、3,197百万円となりました。これは、長期借入金が減少したことによるものであります。この結果、負債合計は、前期末の28,868百万円から3,934百万円減少し、24,933百万円となりました。
純資産合計は、前期末の29,481百万円から162百万円増加し、29,644百万円となりました。これは、退職給付に係る調整累計額及びその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことによるものであります。
以上の結果、自己資本比率は前期末の49.8%から3.7ポイント増加し、53.5%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は7,709百万円と前期比1,688百万円(18.0%)減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は2,915百万円(前期は1,638百万円の獲得)となりました。その主な収入要因は、税金等調整前当期純利益2,007百万円、たな卸資産の減少1,989百万円及び減価償却費1,230百万円、支出要因は、仕入債務の減少1,225百万円及び法人税の支払額791百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,139百万円(前期は1,135百万円の使用)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出1,134百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は3,456百万円(前期は920百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入金の返済による支出2,943百万円及び配当金の支払411百万円によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。なお、以下の前年同期比については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業8,1622.1
油空圧機器事業11,201△7.7
流体機器事業3,747△8.7
防衛・通信機器事業18,88613.4
報告セグメント計41,9952.7
その他の事業1,755△17.6
合計43,7501.7

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 上記生産高のほか、各報告セグメントに配分していない全社生産高42百万円があります。
4 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業8,958△0.82,676△4.9
油空圧機器事業11,327△16.22,547△22.1
流体機器事業3,993△2.696334.6
防衛・通信機器事業13,670△25.615,268△26.8
報告セグメント計37,947△15.721,454△22.4
その他の事業3,1792.3430△19.6
合計41,127△14.621,884△22.4

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記受注高のほか、各報告セグメントに配分していない全社受注高3百万円があります。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
船舶港湾機器事業9,0941.6
油空圧機器事業12,050△7.8
流体機器事業3,745△8.7
防衛・通信機器事業19,26413.9
報告セグメント計44,1542.6
その他の事業3,283△10.5
合計47,4371.6

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記販売高のほか、各報告セグメントに配分していない全社販売高3百万円があります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先前連結会計年度当連結会計年度
販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)
防衛省6,45713.89,38519.8

4 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4 会計方針に関する事項」に記載されているとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は防衛・通信機器事業で大幅な増収となったことから、前期に比べ1.6%増収の47,440百万円となりました。
売上原価は、売上原価率が前期に比べ1.7ポイント悪化したことから、4.0%増加の35,876百万円となりました。この要因は、トータルコストダウンの推進に努めたものの、前期好調に推移した比較的原価率が低い流体機器事業は危機管理型水位計の売上が減少したこと、比較的原価率の高い防衛・通信機器事業は原価率の高い大型案件の納入があったことなど、製品ミックスの変化の影響等によるものです。一方、利益につきましては、販売費及び一般管理費は前期に比べ0.6%、57百万円減少の9,690百万円となったものの、原価率の上昇により売上総利益が5.1%、623百万円減少した結果、営業利益は前期に比べ23.2%減益の1,875百万円、経常利益は前期に比べ24.4%減益の2,011百万円、また、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ26.4%減益の1,425百万円となりました。
当社グループが経営指標として掲げております当連結会計年度の連結営業利益率につきましては、前期と比べ1.2ポイント悪化の4.0%となりました。また、自己資本利益率(ROE)につきましては、前期と比べ1.9ポイント悪化の4.9%となりました。ROEは過去3年間では、4.1%、6.8%、4.9%と推移した結果、平均では5.3%となりました。今後につきましては、リスク管理を強化しながら更なる事業収益の改善と財務基盤の強化に注力するとともに、連結売上高営業利益率及びROEにつきましては資本効率の向上にも努力していき、安定して8%以上となることに加え、株主資本コストを上回ることを目指していきます。
当連結会計年度の当社グループの経営成績に重要な影響を与えた要因としては、内外経済の変動、自然災害、官公庁との取引等があります。
内外経済の変動及び自然災害につきましては、特に営業損失となった油空圧機器事業において、米中貿易摩擦の影響により、当社が得意とする各種成形機、工作機械等、当社製品が組み込まれた国内外の顧客の商品に対する需要の大幅な縮小の影響を受けました。また、当事業の主力市場に成長した建設機械市場において、建設機械の主力部品供給業者の一部が台風による被災で操業ができなくなったことから建設機械メーカーの生産計画が見直され、当社製品の売上に大きな影響を受けました。
一方、官公庁との取引につきましては、防衛・通信機器事業において、官公庁との取引にて契約数量増等の変更があり、当初の予想を上回る増収・増益となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループは、運転資金及び設備資金を内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、2020年3月末日現在の連結借入金残高は12,768百万円となっております。財務政策は営業キャッシュ・フローの改善による資本の財源の獲得を最優先事項と考えており、不足分は借入金により資金調達することとしております。