有価証券報告書-第202期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/25 14:32
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、海外経済の減速や自然災害の影響により輸出・生産等に弱さがみられたものの、雇用・所得環境が着実な改善を続けるなか、消費税増税の影響も限定的となり、個人消費・企業収益とも総じて堅調に推移するなど、緩やかな回復基調が続きました。
当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、空室率が引き続き低水準で推移し、賃料も上昇傾向が継続するなど、好調に推移しました。分譲住宅市場については、分譲価格が高水準で推移するなか、立地等による顧客の選別傾向が強まりました。不動産投資市場については、きわめて緩和的な金融環境を背景として、多様なアセットタイプにおいて物件取得競争が継続しました。
このような事業環境のもと、当連結会計年度における当社グループの連結業績については、ビル事業において投資家向け物件売却が増加したこと等により、営業収益は3,230億3千6百万円(前期2,733億2百万円、前期比18.2%増)、営業利益は524億1千万円(前期467億6千5百万円、前期比12.1%増)と前連結会計年度比で増収増益となりました。また、持分法投資利益が減少したこと等により、経常利益は446億1千1百万円(前期420億3千6百万円、前期比6.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は297億9千6百万円(前期272億7千7百万円、前期比9.2%増)となりました。
各セグメントの業績の概況は以下の通りであります。
(a)ビル事業
ビル事業におきましては、2020年完成予定の「Hareza(ハレザ)池袋(豊島区旧庁舎跡地活用事業)」(東京都豊島区)や「東京駅前八重洲一丁目東地区第一種市街地再開発事業」(東京都中央区)等の再開発プロジェクトを着実に推進したほか、都市型商業施設・ホテルに加えて、物流施設の開発への取り組みを本格化しました。また、「TOKYO FOOD LAB(トーキョーフードラボ)」(食のイノベーションコミュニティ拠点)等を東京駅周辺に新規開業させる等、エリア価値の向上に取り組むとともに、事業全般においてお客様への「安全・安心・快適」の提供をはじめとするサービス強化に取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、「ザ・スクエアホテル銀座」(東京都中央区)、「ホテルグレイスリー浅草」(東京都台東区)等の通期稼働、「DNP五反田ビル」(東京都品川区)の取得、都市型商業施設の「FUNDES(ファンデス)神保町」(東京都千代田区)等の売却のほか、賃料増額改定等により収益が増加いたしました。
この結果、営業収益は1,209億4千万円(前期1,086億2千万円、前期比11.3%増)、営業利益は370億9千5百万円(前期333億9千万円、前期比11.1%増)となりました。
区分前連結会計年度当連結会計年度
数量等営業収益
(百万円)
数量等営業収益
(百万円)
ビル賃貸建物賃貸面積726,387㎡71,025建物賃貸面積799,622㎡73,902
(うち転貸面積98,212㎡)(うち転貸面積97,737㎡)
不動産売上1件1,8883件12,380
管理受託等-35,706-34,658
営業収益計-108,620-120,940
営業利益-33,390-37,095

(b)住宅事業
住宅事業におきましては、分譲マンションブランド「Brillia(ブリリア)」の価値向上とお客様評価NO.1を目指すとともに、賃貸マンション「Brillia ist(ブリリアイスト)」の開発等にも積極的に取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、住宅分譲で「Brillia Tower 上野池之端」(東京都台東区)、「Brillia Tower 代々木公園 CLASSY」(東京都渋谷区)、「Brillia 一番町」(東京都千代田区)、「Brillia City 三鷹」(東京都練馬区)、「Brillia Tower 八王子」(東京都八王子市)等を売上に計上いたしました。また、「Brillia ist 文京茗荷谷」(東京都文京区)、「Brillia ist 千駄ヶ谷」(東京都新宿区)等が新規稼働するとともに、「CREAR PALETTE(クレアパレット)梶ヶ谷」(川崎市高津区)、「Brillia ist 北沢 KEYAKI」(東京都世田谷区)等を売却し、売上に計上いたしました。
この結果、営業収益は1,312億9千7百万円(前期977億3百万円、前期比34.4%増)、営業利益は158億4千6百万円(前期141億4千6百万円、前期比12.0%増)となりました。
区分前連結会計年度当連結会計年度
数量等営業収益
(百万円)
数量等営業収益
(百万円)
住宅分譲989戸72,7561,316戸98,397
宅地等売上-2,925-8,149
住宅賃貸建物賃貸面積80,495㎡3,830建物賃貸面積87,277㎡4,352
マンション管理受託管理戸数93,206戸11,073管理戸数94,319戸10,751
その他-7,118-9,646
営業収益計-97,703-131,297
営業利益-14,146-15,846

(c)アセットサービス事業
アセットサービス事業におきましては、法人のお客様との関係強化による仲介事業の強化、既存の収益不動産の価値を高めて販売するアセットソリューション事業への注力に加え、賃貸管理事業における受託戸数の着実な増加と駐車場事業における新規大型物件の受注等により、更なる収益力の強化に取り組みました。
当連結会計年度においては、駐車場事業が堅調に推移した一方で、アセットソリューション事業における投資家向け物件売却の利益率が前連結会計年度と比べて低下した結果、営業収益は441億9千2百万円(前期428億8千5百万円、前期比3.0%増)、営業利益は58億9千9百万円(前期63億6千6百万円、前期比7.3%減)となりました。
区分前連結会計年度当連結会計年度
数量等営業収益
(百万円)
数量等営業収益
(百万円)
仲介1,059件3,7611,081件3,840
アセットソリューション(注)-13,619-14,389
賃貸管理等-3,996-4,202
駐車場運営車室数68,578室21,509車室数69,401室21,758
営業収益計-42,885-44,192
営業利益-6,366-5,899

(注)取得した不動産の付加価値を向上させて再販する買取再販業務を主に行っております。
(d)その他
リゾート事業におきましては、スーパー銭湯の「おふろの王様 大井町店」(東京都品川区)がリニューアルオープンいたしました。クオリティライフ事業におきましては、サービス付き高齢者向け住宅等が高稼働を維持するとともに、「おはよう保育園 マチノマ大森」(東京都大田区)等、新たに4つの認可保育園が開園いたしました。また、海外事業におきましては、タイ(バンコク市)及び中国(徐州市)において分譲マンションの開発事業に新たに参画いたしました。
当連結会計年度においては、リゾート事業及びクオリティライフ事業における既存施設の稼働率上昇が寄与した結果、営業収益は266億6百万円(前期240億9千2百万円、前期比10.4%増)、営業利益は17億6千9百万円(前期1億8千万円、前期比879.7%増)となりました。
なお、当連結会計年度より、その他に含めておりました保育事業について、クオリティライフ事業へ区分を変更しております。前連結会計年度の実績値については、新区分に組み替えて表示しております。
区分前連結会計年度当連結会計年度
営業収益
(百万円)
営業収益
(百万円)
リゾート事業14,61114,779
クオリティライフ事業7,1168,490
その他2,3643,336
営業収益計24,09226,606
営業利益1801,769

② 財政状態の状況
「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は1兆5,640億4千9百万円となり、前連結会計年度末比で1,139億5千8百万円の増加となりました。これは、販売用不動産及び投資有価証券の増加等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は1兆1,798億3千7百万円となり、前連結会計年度末比で863億2千5百万円の増加となりました。これは、有利子負債の増加等によるものであります。なお、有利子負債残高(リース債務除く)は9,248億9千1百万円(前期末比677億7千4百万円の増加)となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,842億1千1百万円となり、前連結会計年度末比で276億3千3百万円の増加となりました。これは、自己株式の取得による減少があった一方で、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金の増加があったこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により240億9千6百万円増加、投資活動により640億8千2百万円減少、財務活動により480億円増加したこと等により、前連結会計年度末比で77億9千4百万円増加し、394億9千7百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、240億9千6百万円(前期比43億4千8百万円増加)となりました。これは主に、たな卸資産の増加による資金の減少があった一方、税金等調整前当期純利益及び減価償却費による資金の増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、640億8千2百万円(前期比5億5百万円減少)となりました。これは主に、固定資産の取得による資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、480億円(前期比135億6千2百万円増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済及び自己株式の取得による資金の減少があった一方、社債の発行による資金の増加があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
生産、受注及び販売の実績については、「① 経営成績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、グループ中期経営計画「次も選ばれる東京建物グループへ」(2015~2019年度)において、最終年度である当連結会計年度の目標として、連結営業利益500億円を掲げており、また、D/Eレシオ3倍、有利子負債/EBITDA倍率13倍を目標達成に向けた財務指標の目途としておりました。
最終年度である当連結会計年度における達成状況は次の通りであり、連結営業利益の目標を達成するとともに、財務指標についても、想定を上回る水準となっております。
2019年12月期 実績
連結営業利益524億円
D/Eレシオ2.5倍
有利子負債/EBITDA倍率12.6倍

2020年度以降については、2024年までの5年間を対象とした中期経営計画を新たに策定しており、目標とする利益指標については、連結営業利益に持分法投資損益を加えた「事業利益」を採用いたしました。最終年度である2024年度の事業利益の目標は750億円であり、また資本効率の指標としてROE8~10%、財務指針としてD/Eレシオ2.4倍程度、有利子負債/EBITDA倍率12倍程度と設定しております。
② 経営成績の分析
当連結会計年度においては、ビル事業において投資家向け物件売却が増加したこと等により、増収増益となりました。この結果、営業収益は3,230億3千6百万円(前期比497億3千3百万円増加)、営業利益は524億1千万円(前期比56億4千5百万円増加)、経常利益は446億1千1百万円(前期比25億7千5百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は297億9千6百万円(前期比25億1千9百万円増加)となりました。
各セグメントの業績概要については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載の通りであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要は主に不動産の取得・開発資金であり、これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入や社債発行等により資金調達を行っております。また、当社及び主要な連結子会社は、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金の効率化を図っております。
なお、資本の財源及び資金の流動性についての分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に、財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載の通りであります。