訂正有価証券報告書-第99期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当期のわが国経済は、企業収益が高い水準で推移するとともに、雇用・所得環境に改善の動きが続く中、個人消費が持ち直すなど、緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、期末にかけて、新型コロナウイルス感染症の影響により景気が下押しされる厳しい状況となりました。また、先行きについても、感染症の影響による厳しい状況が続く見込みとなっています。
このような状況のもと、当社グループでは全事業にわたり積極的な営業活動を行い、不動産業等で増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、営業収益は534,132百万円(前期比1.4%増)にとどまりました。
また、こうした影響や運輸業等における費用の増加により、営業利益は41,103百万円(同21.1%減)となったほか、経常利益は38,299百万円(同22.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は19,923百万円(同38.6%減)となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりです。
ア 運輸業
鉄道事業は、輸送面において、本年3月、ダイヤ改正を実施し、平日朝方ラッシュ時の各駅停車の10両編成化推進により輸送力増強を図るなど、通勤時の更なる利便性向上に努めました。さらに、ロマンスカー30000形(EXE)や通勤車両1000形のリニューアルを引き続き実施するとともに、本年3月に営業運転を開始した新型通勤車両5000形は、「より広く、より快適に」をキーワードに、車内スペースを拡張し、空気清浄機、防犯カメラを設置するなど、輸送サービスの向上を図りました。
営業面は、小田急線における「1日全線フリー乗車券」の通年販売を開始したほか、箱根を舞台とする人気アニメ「エヴァンゲリオン」との大型コラボレーションイベントや江ノ島線開業90周年を記念したスタンプラリー等のイベントを開催するなど、さまざまな企画を実施し、箱根、江の島・鎌倉エリア等への積極的な旅客誘致による収益の向上に努めました。また、当社ホームページにおける鉄道運行異常時の多言語での情報発信を充実させるなど、外国人旅行者がストレスなく旅行できるサービスの提供に努めました。
施設面は、列車運行の安全性を一層高めるため、新たに代々木上原駅(1、4番ホーム)、東北沢駅、世田谷代田駅、梅ヶ丘駅でホームドアの使用を開始したほか、大規模地震や土砂崩壊等による被害を抑制すべく、新百合ヶ丘駅~柿生駅間のトンネル等での耐震補強工事や、愛甲石田駅~伊勢原駅間等での法面改修工事を実施しました。また、本年2月には、片瀬江ノ島駅新駅舎の一部供用を開始しました。このほか、下北沢駅構内等15ヶ所において、Amazon商品の受け取りが可能なロッカーサービス「Amazon Hub ロッカー」を国内の鉄道会社として初めて導入し、駅をご利用になるお客さまへのサービス向上に加え、再配達問題等の運送に関する社会課題解決を意識した取り組みを推進しました。
このほか、経営の一体化による長期的な視点での戦略立案や施策の推進を通じて、江の島・鎌倉エリアの持続的な成長に貢献することを目的に、昨年10月に当社を完全親会社、江ノ島電鉄㈱を完全子会社とする株式交換を実施しました。
自動車運送事業は、小田急箱根高速バス㈱において、昨年12月に「御殿場~箱根」間でのシャトル便の運行を開始し、御殿場・箱根エリアの回遊性向上に努めたほか、各社でお客さまのニーズに対応した路線の開設やダイヤ改正を実施し、利便性の向上を図りました。
以上の結果、当社の鉄道事業において、複々線化効果等により定期の輸送人員が増加した一方、台風19号による箱根登山鉄道の一部区間運休や新型コロナウイルス感染症による外出自粛に伴う旅客人員の減少等の影響から、営業収益は173,174百万円(前期比3.4%減)、営業利益は21,641百万円(同26.1%減)となりました。
(提出会社の鉄道事業運輸成績表)
(注) 乗車効率の算出方法
乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)×100
イ 流通業
百貨店業は、昨年3月、㈱小田急百貨店において、町田店がグランドオープンし、百貨店ならではの強みを活かしたフロアと百貨店にない商品カテゴリーを有する専門店とを組み合わせた複合型百貨店に生まれ変わるとともに、旧藤沢店のリニューアルによりオープンした「ODAKYU 湘南 GATE」内で「小田急百貨店ふじさわ」が営業を開始しました。また、全店において催事をはじめとする各種営業施策を積極的に展開しました。
ストア業等は、当社および小田急商事㈱において、㈱セブン&アイ・ホールディングスとの業務提携契約に基づき、2018年度から実施してきた駅構内売店(Odakyu SHOP)およびコンビニエンスストア(Odakyu MART)等のセブン‐イレブン店舗への転換を新たに33店舗(合計50店舗)で実施するなど、駅をご利用になるお客さまの利便性・満足度の向上を図りました。
以上の結果、百貨店業において、㈱小田急百貨店町田店および藤沢店におけるリニューアルに伴う売場面積減少、新型コロナウイルス感染症による外出自粛や入国制限に伴う顧客の減少の影響から、営業収益は206,563百万円(前期比2.0%減)、営業利益は、百貨店業において人件費等の費用が減少したことから、4,373百万円(同47.7%増)となりました。
ウ 不動産業
不動産分譲業は、小田急不動産㈱において、「リーフィア南大沢ガーデンズ」等の戸建住宅や、「リーフィアタワー海老名アクロスコート」をはじめとしたマンションを分譲するなど、収益の確保に努めました。
不動産賃貸業は、当社において、新宿ミロードの玄関口である2階フロアを本年3月にリニューアルオープンするなど、施設の充実および活性化を図りました。また、小田急不動産㈱において、オフィスと賃貸レジデンスの機能を兼ね備えた複合ビル「O-PLACE」が昨年7月に完成するなど、新規物件の開発・取得を推進し、事業規模拡大に努めました。
以上の結果、不動産分譲業において販売戸数が増加したことや、不動産賃貸業において新規に開業した物件の収入が寄与したことなどにより、営業収益は80,478百万円(前期比16.6%増)、営業利益は、当社の不動産賃貸業において新規物件の取得による費用等が増加したことから、12,940百万円(同6.0%減)となりました。
エ その他の事業
ホテル業は、㈱小田急リゾーツにおいて、昨年8月に「箱根ゆとわ」を、昨年12月に御殿場プレミアム・アウトレット内で「HOTEL CLAD」をオープンするなど、グループ全体で6店の新規ホテルを出店するとともに、「ハイアット リージェンシー 東京」において、本年2月にブラッスリー「Vicky’s」の営業を開始するなど、事業基盤の強化に努めました。
レストラン飲食業は、㈱小田急レストランシステムにおいて、スターバックス コーヒー ジャパン㈱との間で、駅施設等での店舗展開に関するライセンス契約を私鉄グループ会社としては初めて締結するなど、顧客のニーズを捉えた施策を実施しました。また、ジローレストランシステム㈱において、新規業態の開発や店舗の改装を実施するなど、集客力の強化を図りました。
以上の結果、主にホテル業およびレストラン飲食業において、新型コロナウイルス感染症による外出自粛や入国制限に伴う顧客の減少の影響があったものの、前期末に㈱ヒューマニックを連結子会社化したことに加え、ホテル業において、新規に開業した物件の収入が寄与したことなどにより、営業収益は112,256百万円(前期比5.0%増)、営業利益は、ホテル業において新規物件の開業費用等が増加したことから、2,090百万円(同64.8%減)となりました。
② キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益35,998百万円に減価償却費や法人税等の支払額等を加減した結果、74,897百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ、2,163百万円の資金収入の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、85,454百万円の資金支出となり、有形固定資産の取得による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ、5,360百万円の資金支出の増加となりました。
この結果、これらを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、10,557百万円の資金支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行等により、17,171百万円の資金収入となりました。
なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ6,828百万円増加し、28,464百万円となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
当社グループの主たる事業は、鉄道事業を中核とする運輸業、百貨店業を中核とする流通業、建物の賃貸、土地および建物の販売を行う不動産業およびその他の事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産及び受注の実績を金額あるいは数量で示すことはしていません。
そのため生産、受注及び販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成に際し、経営者は、決算日における資産・負債および報告期間における収入・費用の金額ならびに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針および見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において判断したものです。
また、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等[注記事項](追加情報)(会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響)」に記載しています。
ア たな卸資産の評価
当社グループは、多くのたな卸資産を保有しており、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2008年9月26日)を適用しています。これらのうち、分譲土地建物については原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切り下げの方法により算定)を採用しており、市場価格が下落した場合には、簿価の切り下げにより費用が発生する可能性があります。
イ 有価証券の減損
当社グループは、金融機関や取引先の有価証券を保有しています。これらのうち、時価のある有価証券については、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っています。
これらの有価証券は価格変動リスクを負っているため、損失が発生する可能性がありま
す。
ウ 固定資産の減損
当社グループは、多くの固定資産を保有しています。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等多くの前提条件に基づき算出しているため、前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。
エ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しています。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少または増加した場合には、評価性引当額の追加計上または取り崩しが必要となる場合があります。
オ 退職給付債務および費用
従業員の退職給付債務および費用は、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務および費用に影響する可能性があります。
② 財政状態及び経営成績
(財政状態)
総資産は、現金及び預金が増加したことなどから、1,328,303百万円(前連結会計年度末比15,870百万円増)となりました。
負債の部は、有利子負債が増加したことなどから、938,120百万円(同14,867百万円増)となりました。
純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことなどから、390,183百万円(同1,002百万円増)となりました。
(経営成績)
ア 営業収益および営業利益
当連結会計年度は、不動産業等で増収となったことから、営業収益は534,132百万円と、前連結会計年度に比べ7,456百万円の増加(前期比1.4%増)、営業利益は41,103百万円と、前連結会計年度に比べ10,986百万円の減少(前期比21.1%減)となりました。なお、各セグメントの営業収益および営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しています。
イ 営業外損益および経常利益
営業利益の減少に伴い、経常利益は38,299百万円(前期比22.9%減)となりました。
ウ 特別損益および親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別損益は、前連結会計年度に比べて2,192百万円の改善となりました。これは、前期に比べ、特別利益が増加したことによるものです。
これらの結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は35,998百万円となり、ここから法人税等及び非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は19,923百万円(前期比38.6%減)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア 設備投資による資本の投下
当社グループは、鉄道事業において、安全防災対策に積極的に取り組みながら、快適かつスピーディーな鉄道運行の実現に努めているほか、他の事業においても、沿線の魅力を高めることを目指して継続的な設備投資を行っています。当連結会計年度は総額91,599百万円の設備投資を実施しました。
なお、各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」の「1 設備投資等の概要」に記載しています。
イ 資金需要の主な内容と動向
当社グループの主要な資金需要は、安心・便利・快適に鉄道をご利用いただくために不可欠な設備や施設への投資や、沿線価値の向上に資する開発への投資等の設備投資の支出ですが、その他に人件費等の事業運営のための運転資金の支出があります。また、今後の動向としては、設備投資が資金需要の中で最も高い割合を占める状況が続くと考えています。
ウ 資金調達
当社グループの資金調達は、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金等、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しています。
なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム
(CMS)を導入し、資金繰りの波動により、短期的な資金需要が発生する場合には、極力グ
ループ内資金を活用するほか、適宜、コマーシャルペーパー(CP)の発行等により緊急時
の流動性を確保しています。
エ 資金の流動性
当社グループは、鉄道事業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の流行により資金繰りへの影響が生じていますが、コマーシャルペーパー(CP)や社債の発行等により、手元資金は十分に確保できています。
また、今後急激に資金繰りが悪化した場合においても、迅速に追加での資金調達が可能な体制を構築しています。
④ 経営指標
新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度の連結数値目標として掲げていた
「EBITDA 1,092億円、有利子負債/EBITDA倍率 7.0倍」の達成は困難なもの
の、各事業における収支構造の改善施策や、投資案件のこれまで以上の選別等に取り組んで
まいります。また、ROA・ROEについても注視し、効率的な経営に努めてまいります。
なお、当連結会計年度については、以下のとおりです。
(EBITDA・有利子負債/EBITDA倍率)
(注) 1 鉄道・運輸機構長期未払金は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表[借入金等明細表]」における鉄道・運輸機構長期未払金の額とは異なり、上表では消費税等相当額を加えています。
2 リース債務及び社内預金は除いています。
3 EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えたものです。
(ROA・ROE)
(注) 総資産、自己資本からその他有価証券の時価評価による影響額を除いて算出しています。
① 経営成績
当期のわが国経済は、企業収益が高い水準で推移するとともに、雇用・所得環境に改善の動きが続く中、個人消費が持ち直すなど、緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、期末にかけて、新型コロナウイルス感染症の影響により景気が下押しされる厳しい状況となりました。また、先行きについても、感染症の影響による厳しい状況が続く見込みとなっています。
このような状況のもと、当社グループでは全事業にわたり積極的な営業活動を行い、不動産業等で増収となったものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、営業収益は534,132百万円(前期比1.4%増)にとどまりました。
また、こうした影響や運輸業等における費用の増加により、営業利益は41,103百万円(同21.1%減)となったほか、経常利益は38,299百万円(同22.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は19,923百万円(同38.6%減)となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりです。
ア 運輸業
鉄道事業は、輸送面において、本年3月、ダイヤ改正を実施し、平日朝方ラッシュ時の各駅停車の10両編成化推進により輸送力増強を図るなど、通勤時の更なる利便性向上に努めました。さらに、ロマンスカー30000形(EXE)や通勤車両1000形のリニューアルを引き続き実施するとともに、本年3月に営業運転を開始した新型通勤車両5000形は、「より広く、より快適に」をキーワードに、車内スペースを拡張し、空気清浄機、防犯カメラを設置するなど、輸送サービスの向上を図りました。
営業面は、小田急線における「1日全線フリー乗車券」の通年販売を開始したほか、箱根を舞台とする人気アニメ「エヴァンゲリオン」との大型コラボレーションイベントや江ノ島線開業90周年を記念したスタンプラリー等のイベントを開催するなど、さまざまな企画を実施し、箱根、江の島・鎌倉エリア等への積極的な旅客誘致による収益の向上に努めました。また、当社ホームページにおける鉄道運行異常時の多言語での情報発信を充実させるなど、外国人旅行者がストレスなく旅行できるサービスの提供に努めました。
施設面は、列車運行の安全性を一層高めるため、新たに代々木上原駅(1、4番ホーム)、東北沢駅、世田谷代田駅、梅ヶ丘駅でホームドアの使用を開始したほか、大規模地震や土砂崩壊等による被害を抑制すべく、新百合ヶ丘駅~柿生駅間のトンネル等での耐震補強工事や、愛甲石田駅~伊勢原駅間等での法面改修工事を実施しました。また、本年2月には、片瀬江ノ島駅新駅舎の一部供用を開始しました。このほか、下北沢駅構内等15ヶ所において、Amazon商品の受け取りが可能なロッカーサービス「Amazon Hub ロッカー」を国内の鉄道会社として初めて導入し、駅をご利用になるお客さまへのサービス向上に加え、再配達問題等の運送に関する社会課題解決を意識した取り組みを推進しました。
このほか、経営の一体化による長期的な視点での戦略立案や施策の推進を通じて、江の島・鎌倉エリアの持続的な成長に貢献することを目的に、昨年10月に当社を完全親会社、江ノ島電鉄㈱を完全子会社とする株式交換を実施しました。
自動車運送事業は、小田急箱根高速バス㈱において、昨年12月に「御殿場~箱根」間でのシャトル便の運行を開始し、御殿場・箱根エリアの回遊性向上に努めたほか、各社でお客さまのニーズに対応した路線の開設やダイヤ改正を実施し、利便性の向上を図りました。
以上の結果、当社の鉄道事業において、複々線化効果等により定期の輸送人員が増加した一方、台風19号による箱根登山鉄道の一部区間運休や新型コロナウイルス感染症による外出自粛に伴う旅客人員の減少等の影響から、営業収益は173,174百万円(前期比3.4%減)、営業利益は21,641百万円(同26.1%減)となりました。
(提出会社の鉄道事業運輸成績表)
種別 | 単位 | 当連結会計年度 (2019.4.1~2020.3.31) | ||
対前期増減率(%) | ||||
営業日数 | 日 | 366 | 0.3 | |
営業キロ | キロ | 120.5 | 0.0 | |
客車走行キロ | 千キロ | 190,986 | △0.7 | |
定期 | 千人 | 477,738 | 1.2 | |
輸送人員 | 定期外 | 〃 | 287,589 | △2.4 |
計 | 〃 | 765,327 | △0.2 | |
定期 | 百万円 | 48,354 | 1.4 | |
旅客運輸収入 | 定期外 | 〃 | 68,951 | △4.0 |
計 | 〃 | 117,306 | △1.9 | |
運輸雑収 | 〃 | 3,798 | △1.0 | |
運輸収入合計 | 〃 | 121,105 | △1.8 | |
乗車効率 | % | 44.7 | ― |
(注) 乗車効率の算出方法
乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)×100
イ 流通業
百貨店業は、昨年3月、㈱小田急百貨店において、町田店がグランドオープンし、百貨店ならではの強みを活かしたフロアと百貨店にない商品カテゴリーを有する専門店とを組み合わせた複合型百貨店に生まれ変わるとともに、旧藤沢店のリニューアルによりオープンした「ODAKYU 湘南 GATE」内で「小田急百貨店ふじさわ」が営業を開始しました。また、全店において催事をはじめとする各種営業施策を積極的に展開しました。
ストア業等は、当社および小田急商事㈱において、㈱セブン&アイ・ホールディングスとの業務提携契約に基づき、2018年度から実施してきた駅構内売店(Odakyu SHOP)およびコンビニエンスストア(Odakyu MART)等のセブン‐イレブン店舗への転換を新たに33店舗(合計50店舗)で実施するなど、駅をご利用になるお客さまの利便性・満足度の向上を図りました。
以上の結果、百貨店業において、㈱小田急百貨店町田店および藤沢店におけるリニューアルに伴う売場面積減少、新型コロナウイルス感染症による外出自粛や入国制限に伴う顧客の減少の影響から、営業収益は206,563百万円(前期比2.0%減)、営業利益は、百貨店業において人件費等の費用が減少したことから、4,373百万円(同47.7%増)となりました。
ウ 不動産業
不動産分譲業は、小田急不動産㈱において、「リーフィア南大沢ガーデンズ」等の戸建住宅や、「リーフィアタワー海老名アクロスコート」をはじめとしたマンションを分譲するなど、収益の確保に努めました。
不動産賃貸業は、当社において、新宿ミロードの玄関口である2階フロアを本年3月にリニューアルオープンするなど、施設の充実および活性化を図りました。また、小田急不動産㈱において、オフィスと賃貸レジデンスの機能を兼ね備えた複合ビル「O-PLACE」が昨年7月に完成するなど、新規物件の開発・取得を推進し、事業規模拡大に努めました。
以上の結果、不動産分譲業において販売戸数が増加したことや、不動産賃貸業において新規に開業した物件の収入が寄与したことなどにより、営業収益は80,478百万円(前期比16.6%増)、営業利益は、当社の不動産賃貸業において新規物件の取得による費用等が増加したことから、12,940百万円(同6.0%減)となりました。
エ その他の事業
ホテル業は、㈱小田急リゾーツにおいて、昨年8月に「箱根ゆとわ」を、昨年12月に御殿場プレミアム・アウトレット内で「HOTEL CLAD」をオープンするなど、グループ全体で6店の新規ホテルを出店するとともに、「ハイアット リージェンシー 東京」において、本年2月にブラッスリー「Vicky’s」の営業を開始するなど、事業基盤の強化に努めました。
レストラン飲食業は、㈱小田急レストランシステムにおいて、スターバックス コーヒー ジャパン㈱との間で、駅施設等での店舗展開に関するライセンス契約を私鉄グループ会社としては初めて締結するなど、顧客のニーズを捉えた施策を実施しました。また、ジローレストランシステム㈱において、新規業態の開発や店舗の改装を実施するなど、集客力の強化を図りました。
以上の結果、主にホテル業およびレストラン飲食業において、新型コロナウイルス感染症による外出自粛や入国制限に伴う顧客の減少の影響があったものの、前期末に㈱ヒューマニックを連結子会社化したことに加え、ホテル業において、新規に開業した物件の収入が寄与したことなどにより、営業収益は112,256百万円(前期比5.0%増)、営業利益は、ホテル業において新規物件の開業費用等が増加したことから、2,090百万円(同64.8%減)となりました。
② キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益35,998百万円に減価償却費や法人税等の支払額等を加減した結果、74,897百万円の資金収入となり、前連結会計年度に比べ、2,163百万円の資金収入の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、85,454百万円の資金支出となり、有形固定資産の取得による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ、5,360百万円の資金支出の増加となりました。
この結果、これらを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、10,557百万円の資金支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行等により、17,171百万円の資金収入となりました。
なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ6,828百万円増加し、28,464百万円となりました。
③ 生産、受注および販売の実績
当社グループの主たる事業は、鉄道事業を中核とする運輸業、百貨店業を中核とする流通業、建物の賃貸、土地および建物の販売を行う不動産業およびその他の事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産及び受注の実績を金額あるいは数量で示すことはしていません。
そのため生産、受注及び販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成に際し、経営者は、決算日における資産・負債および報告期間における収入・費用の金額ならびに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針および見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において判断したものです。
また、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等[注記事項](追加情報)(会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響)」に記載しています。
ア たな卸資産の評価
当社グループは、多くのたな卸資産を保有しており、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2008年9月26日)を適用しています。これらのうち、分譲土地建物については原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切り下げの方法により算定)を採用しており、市場価格が下落した場合には、簿価の切り下げにより費用が発生する可能性があります。
イ 有価証券の減損
当社グループは、金融機関や取引先の有価証券を保有しています。これらのうち、時価のある有価証券については、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っています。
これらの有価証券は価格変動リスクを負っているため、損失が発生する可能性がありま
す。
ウ 固定資産の減損
当社グループは、多くの固定資産を保有しています。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等多くの前提条件に基づき算出しているため、前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。
エ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しています。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少または増加した場合には、評価性引当額の追加計上または取り崩しが必要となる場合があります。
オ 退職給付債務および費用
従業員の退職給付債務および費用は、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、予想昇給率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務および費用に影響する可能性があります。
② 財政状態及び経営成績
(財政状態)
総資産は、現金及び預金が増加したことなどから、1,328,303百万円(前連結会計年度末比15,870百万円増)となりました。
負債の部は、有利子負債が増加したことなどから、938,120百万円(同14,867百万円増)となりました。
純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことなどから、390,183百万円(同1,002百万円増)となりました。
(経営成績)
ア 営業収益および営業利益
当連結会計年度は、不動産業等で増収となったことから、営業収益は534,132百万円と、前連結会計年度に比べ7,456百万円の増加(前期比1.4%増)、営業利益は41,103百万円と、前連結会計年度に比べ10,986百万円の減少(前期比21.1%減)となりました。なお、各セグメントの営業収益および営業利益の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載しています。
イ 営業外損益および経常利益
営業利益の減少に伴い、経常利益は38,299百万円(前期比22.9%減)となりました。
ウ 特別損益および親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別損益は、前連結会計年度に比べて2,192百万円の改善となりました。これは、前期に比べ、特別利益が増加したことによるものです。
これらの結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は35,998百万円となり、ここから法人税等及び非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は19,923百万円(前期比38.6%減)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア 設備投資による資本の投下
当社グループは、鉄道事業において、安全防災対策に積極的に取り組みながら、快適かつスピーディーな鉄道運行の実現に努めているほか、他の事業においても、沿線の魅力を高めることを目指して継続的な設備投資を行っています。当連結会計年度は総額91,599百万円の設備投資を実施しました。
なお、各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」の「1 設備投資等の概要」に記載しています。
イ 資金需要の主な内容と動向
当社グループの主要な資金需要は、安心・便利・快適に鉄道をご利用いただくために不可欠な設備や施設への投資や、沿線価値の向上に資する開発への投資等の設備投資の支出ですが、その他に人件費等の事業運営のための運転資金の支出があります。また、今後の動向としては、設備投資が資金需要の中で最も高い割合を占める状況が続くと考えています。
ウ 資金調達
当社グループの資金調達は、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債および民間金融機関からの借入金等、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しています。
なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム
(CMS)を導入し、資金繰りの波動により、短期的な資金需要が発生する場合には、極力グ
ループ内資金を活用するほか、適宜、コマーシャルペーパー(CP)の発行等により緊急時
の流動性を確保しています。
エ 資金の流動性
当社グループは、鉄道事業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の流行により資金繰りへの影響が生じていますが、コマーシャルペーパー(CP)や社債の発行等により、手元資金は十分に確保できています。
また、今後急激に資金繰りが悪化した場合においても、迅速に追加での資金調達が可能な体制を構築しています。
④ 経営指標
新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度の連結数値目標として掲げていた
「EBITDA 1,092億円、有利子負債/EBITDA倍率 7.0倍」の達成は困難なもの
の、各事業における収支構造の改善施策や、投資案件のこれまで以上の選別等に取り組んで
まいります。また、ROA・ROEについても注視し、効率的な経営に努めてまいります。
なお、当連結会計年度については、以下のとおりです。
(EBITDA・有利子負債/EBITDA倍率)
前連結会計年度 (百万円) | 当連結会計年度 (百万円) | |
借入金・社債 | 615,568 | 652,412 |
鉄道・運輸機構長期未払金(注1) | 99,724 | 88,614 |
有利子負債計(注2) | 715,293 | 741,027 |
EBITDA(注3) | 98,817 | 90,731 |
有利子負債/EBITDA倍率 | 7.2倍 | 8.2倍 |
(注) 1 鉄道・運輸機構長期未払金は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表[借入金等明細表]」における鉄道・運輸機構長期未払金の額とは異なり、上表では消費税等相当額を加えています。
2 リース債務及び社内預金は除いています。
3 EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えたものです。
(ROA・ROE)
前連結会計年度 (%) | 当連結会計年度 (%) | |
ROA(総資産営業利益率)(注) | 4.2 | 3.2 |
ROE(自己資本当期純利益率)(注) | 9.7 | 5.6 |
(注) 総資産、自己資本からその他有価証券の時価評価による影響額を除いて算出しています。