有価証券報告書-第39期(2025/04/01-2026/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、観光需要や個人消費に持ち直しの動きが見られた一方で、物価上昇やエネルギー価格の高止まり、人手不足や人件費の上昇などにより、企業経営を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にありました。
当社の営業基盤である能登地域においては、令和6年能登半島地震からの復旧・復興が進められているものの、人口流出や少子化の進行による利用者の減少、観光需要の回復の遅れなどにより、依然として厳しい経営環境が続いております。また、2025年8月には大雨の影響により当社線路敷法面が崩れ、一部区間で運転を見合わせる事態が発生するなど、自然災害への対応も求められる年度となりました。
このような状況の中、当社では年間を通じて17往復体制による列車運行を行うとともに、観光列車「のと里山里海号」を活用した震災語り部観光列車の運行やポケモン列車による利用促進など、交流人口の拡大と利用者確保に取り組みました。
その結果、輸送人員は444,489人(前年同期比2.5%増)となりました。また、営業収益は190,661千円(前年同期比22.8%増)となり、震災語り部観光列車による団体利用の増加や物産館収入等の下支えもあり、前事業年度を上回りました。
損益面では、経常損失は74,979千円(前年同期比26.8%減)となり、前事業年度の102,446千円から改善いたしました。一方、当期純損失は3,708千円となり、前事業年度に震災対応等に伴う特別利益を計上していたことなどから、前事業年度を下回る結果となりました。
また、令和6年能登半島地震により被災した鉄道施設につきましては、2026年3月をもって列車運行に必要な主要設備の本復旧が完了し、運行に係る施設面において一定の区切りを迎えることができました。
財政状態につきましては、当事業年度末の総資産は423,773千円、純資産は149,198千円となりました。また、自己資本比率は35.2%となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
鉄道事業
鉄道事業は、地域住民の生活の足を支え、また地域内外の交流を支える不可欠な公共交通機関として、安全・安定輸送を第一に取り組んでまいりました。当事業年度の輸送人員は、地震による人口流失などによる学生数の減少はあったものの、震災語り部観光列車の運行により、団体利用客数が増加し、444千人(前年同期比2.5%増)となりました。これにより、単価の高い団体客数が増加したことにより、営業収益は137,074千円(前年同期比27.7%増)となりました。
一方、営業費は、従業員の退職に伴う採用により、人件費は増加したものの、車両の大規模修繕費用の減少により、425,980千円(前年同期比9.6%減)となりました。
これらの結果、営業損失は288,906千円(前年同期比20.6%減)となりました。
国内旅行業
国内旅行業は、沿線人口の減少、地震や大雨による地元住民の旅行需要の減少はあるものの、企業活動の再開に伴い、出張利用等でJR券の取扱高は増加し、営業収益は3,907千円(前年同期比8.8%増)、営業費は5,201千円(前年同期比21.2%増)となりました。
結果として、営業損失1,294千円(前年同期比84.2%増)の計上となりました。
物品販売業
物品販売業は、穴水町から委託を受け、穴水町物産館「四季彩々」の営業を行っております。
営業収益は、鉄道の団体利用客数の増加や震災復興ボランティア等のご利用により、49,679千円(前年同期比12.1%増)となりました。一方、営業費は、不足していた職員の採用に伴う人件費の増加等により、39,643千円(前年同期比25.0%増)となりました。
結果として、営業利益は10,036千円(前年同期比20.4%減)となりました。
その他事業
その他事業として、震災前までは、冬季限定で能登地域の冬の名産である牡蠣を炉端焼き等にて提供する飲食業の営業を行ってまいりましたが、当事業年度は、引き続き、営業を中止しております。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、補助金等の受入による収入、設備投資や災害復旧工事における支出があり、前事業年度末に比べ18,495千円増加し、当事業年度末には75,573千円となりました。
また当事業年度中における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は793,714千円(前年同期は425,978千円の使用)となりました。
これは、主に減価償却費を除く営業損失272,333千円の計上及び災害復旧費の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は121,248千円(前年同期は95,559千円の使用)となりました。
これは、主に鉄道事業の安全対策のためのコンクリート枕木等の設備投資による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は933,457千円(前年同期は486,075千円の獲得)となりました。
これは、安全対策や災害復旧にかかる地方公共団体等補助金の受入によるものであります。
③財政状態の分析
財政状態の分析は前事業年度末との比較で記載しております。
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ417,996千円減少し、423,773千円となりました。
(流動資産)
流動資産は前事業年度末に比べ419,868千円減少し、388,734千円となりました。これは、主に補助金等の未収金や未収消費税等が減少したためであります。
(固定資産)
固定資産は前事業年度末に比べ1,872千円増加し、35,039千円となりました。これは、主に安全対策にかかる設備投資によるものであります。
(流動負債)
流動負債は前事業年度末に比べ416,134千円減少し、261,780千円となりました。これは、主に災害工事に係る未払金が減少したことによるものであります。
(固定負債)
固定負債は前事業年度末に比べ1,846千円増加し、12,794千円となりました。これは、退職給付引当金の増加によるものであります。
(純資産)
純資産は前事業年度末に比べ3,708千円減少し、149,198千円となりました。これは、当期純損失3,708千円の計上によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.鉄道事業の輸送実績
当事業年度における輸送実績は次のとおりであります。
| 区分 | 前事業年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) | 当事業年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | |||
| 営業日数 | 365日 | 365日 | |||
| 営業区間 | 七尾~穴水 | 七尾~穴水 | |||
| 営業キロ | 33.1㎞ | 33.1㎞ | |||
| 延日キロ | 12,081日キロ | 12,081日キロ | |||
| 輸送量 | 人 員 (人) | 金 額 (千円) | 人 員 (人) | 金 額 (千円) | 前年同期比 (%) |
| 定期外 | 115,240 | 52,035 | 146,529 | 71,741 | 137.9 |
| 定期 | 318,480 | 49,743 | 297,960 | 48,134 | 96.8 |
| 通勤 | 54,000 | 12,954 | 61,260 | 14,592 | 112.6 |
| 通学 | 264,480 | 36,788 | 236,700 | 33,542 | 91.2 |
| 運輸雑収 | - | 5,550 | - | 17,197 | 309.8 |
| 計 | 433,720 | 107,328 | 444,489 | 137,074 | 127.7 |
(注)前年同期比は、金額に対する比較であります。
b.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 第39期 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) | 前年同期比(%) |
| 鉄道事業(千円) | 137,074 | 127.7 |
| 国内旅行業(千円) | 3,907 | 108.8 |
| 物品販売業(千円) | 49,679 | 112.1 |
| 報告セグメント計(千円) | 190,661 | 122.8 |
| その他(千円) | - | - |
| 合計(千円) | 190,661 | 122.8 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.その他は、冬季限定の飲食業であり、令和6年能登半島地震以降、営業を中止しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。なお、個々の重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
なお、当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性がある事象につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度においては、輸送人員は444,489人となり、前事業年度を上回りました。また、営業収益は190,661千円となり、震災語り部観光列車による団体利用の増加、観光列車及びポケモン列車を活用した利用促進、物産館収入等の下支えにより、前事業年度を上回りました。これらの結果、経常損失は74,979千円となり、前事業年度の102,446千円から改善いたしました。
当社としては、令和6年能登半島地震後の段階的な運行再開を経て、当事業年度において年間を通じて17往復体制による列車運行を維持できたことが、まず収益回復の前提になったものと認識しております。加えて、観光列車「のと里山里海号」を活用した震災語り部観光列車については、震災を経験した当社社員が語り部として乗車し、被災当時の状況や現在の能登の姿を伝える取り組みとして、多くの団体利用につながりました。また、ポケモン列車についても、地域の子どもたちやご家族に明るい話題を届ける取り組みとして、家族層を中心とした利用につながったものと認識しております。
一方で、当事業年度の輸送人員の増加は前事業年度比で2.5%にとどまっており、利用者数が震災前の水準まで回復したものではありません。また、現在の利用状況には、震災からの復旧過程における団体利用や復興関連の移動需要など、一時的な要素も含まれているものと認識しております。特に、当社の輸送人員の多くを占める通学利用については、沿線人口の減少や少子化の進行により減少が続いており、日常利用を中心とした利用者基盤の回復には至っておりません。このことから、当社を取り巻く経営環境については、依然として厳しい状況が続いているものと認識しております。
損益面につきましては、営業収益の増加に加え、車両の大規模修繕検査に係る費用の減少等により、経常損失は前事業年度と比較して改善いたしました。ただし、当社の事業構造上、沿線人口の減少や少子化の進行に伴う利用者減少の影響は今後も継続することが見込まれており、単年度の業績改善をもって経営環境が好転したと判断できる状況にはないものと認識しております。また、当期純損失は3,708千円となりましたが、前事業年度に震災対応等に伴う特別利益を計上していたことなどにより、経常損益の改善がそのまま最終損益には反映されない結果となりました。
財政状態につきましては、令和6年能登半島地震により被災した鉄道施設のうち、列車運行に必要な主要設備の本復旧が当事業年度末までに完了し、施設面では一定の区切りを迎えることができました。これは、震災発生以降、段階的な復旧と運行再開を進めてきた取組の成果であり、今後の安全・安定輸送を支える重要な基盤になるものと認識しております。一方で、今後も鉄道施設の維持管理や車両更新、安全対策に係る投資は継続して必要であり、引き続き国、石川県及び沿線自治体の支援を受けながら、財務基盤の安定確保に努める必要があると認識しております。
当社といたしましては、当事業年度の経常損失の改善を一定の前進と受け止めておりますが、利用者基盤の本格的な回復にはなお時間を要するものと考えております。また、主要設備の本復旧が完了したことにより、当社は復旧の段階から、将来にわたり持続可能な鉄道事業をどのように維持していくかを考える新たな段階に入ったものと認識しております。
今後は、地域住民の日常生活を支える公共交通機関として安全・安定輸送を確保するとともに、観光列車や震災語り部観光列車等を活用した交流人口の拡大により新たな需要を創出し、持続可能な事業運営につなげていくことが重要であると認識しております。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社のキャッシュ・フロー状況は、基幹事業である鉄道事業において、継続的に多額の営業損失を計上しており、営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、日々の売上のほか、関係自治体からの補助金等による支援により資金繰りが成り立っている状況です。
当事業年度においては、地方公共団体等補助金として933,457千円を受け入れており、財務活動によるキャッシュ・フローとして計上しております。
また、事業活動における運転資金需要の主なものは、鉄道事業に係る動力費や修繕費等、その他事業における商品仕入、共通するものとして販売費及び一般管理費等の営業費があります。また、設備資金需要としては主に鉄道事業における列車運行の安全確保を目的とした鉄道施設への設備投資であります。