有価証券報告書-第62期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当期のわが国の経済は、雇用・所得環境の改善、緩やかな回復基調が続く中、米中貿易摩擦を背景とした世界経済の減速をはじめとした海外経済の動向や政策に起因した先行き不透明な状況が続き、加えて、多発する豪雨や大型台風による自然災害、10月の消費税率引上げに伴う消費の落ち込みなどの影響を受けました。とりわけ、2020年に入ってからは、新型コロナウイルス感染症の世界への広がりにより、景気は急速に厳しい状況へと追い込まれました。放送業界においては、各種動画配信サービスに加えて、NHKの同時配信サービスや第5世代移動通信システム(5G)の商用サービス開始など、放送と通信の垣根を越える環境変化への適応が求められています。
こうした経済や社会情勢のもと、当社グループでは主力事業である放送事業部門の収益拡大を第一に、放送事業収入の拡大と放送外収入のさらなる獲得に注力し、各事業部門においても収益力の強化に邁進しました。その結果、放送事業、その他の事業が減収、不動産賃貸事業、情報処理事業が増収となり、連結売上高は192億19百万円(前年同期比-1.7%)となりました。経常利益は13億50百万円(前期比-15.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億19百万円(前期比-13.6%)となりました。
セグメントごとの業績は以下のとおりです。
① 放送事業
放送事業では、GRP(のべ視聴率)が少しずつ回復傾向にある中、市況悪化や消費税増税などの影響によって福岡地区へのスポットCM広告投下量も減少したことにより、放送事業収入の柱であるスポット収入が前年同期比3.8%減となりました。ローカルタイム放送収入は、前期の開局60周年記念番組の反動減などで減少、ネットタイム放送収入は、ほぼ前期並みとなり、タイム収入全体では前年同期比1.6%減となりました。その他事業収入は前年同期比8.7%増となりましたが、「平成中村座 小倉城公演」「FIVBワールドカップバレーボール2019 男子福岡大会」などの大型イベントにより催物収入が前年同期比19.6%の増収、不動産事業収入が賃貸オフィスビルTNC放送会館の増収により前年同期比1.9%の増収、MD事業収入が番組関連のDVDやグッズ販売により前年同期比5.6%の増収となったことなどによります。一方、費用面では、開局60周年期間の終了に伴う費用の減少、働き方改革のさらなる推進に向けた取り組みなどにより、放送事業費が前年同期比0.2%増となりました。また、その他事業費は、大型イベントの開催で催物費が増加したことなどにより前年同期比4.8%増となりました。販売費及び一般管理費は、開局60周年期間の終了に伴う費用の減少などにより、前年同期比3.3%減となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は前年同期比2.4%減の133億86百万円となり、営業費用は前年同期比0.6%減の129億25百万円、セグメント損益(営業損益)は前年同期比31.2%減の5億68百万円となりました。
新型コロナウイルスによる社会生活、経済活動への甚大な影響が引き続く中、視聴者への正確な情報の提供という放送局が果たすべき役割を念頭に置き、視聴者に選ばれる「地域ナンバー1局」を目指します。特に、報道・情報番組の強化が喫緊の課題であり、営業面でも「コロナ後」の日本経済の変化を見据え、地域の情勢に即した活動を展開していきます。また、放送事業以外への投資についても検討を重ね、地上波放送収入以外の収益源の強化を目指します。
② 不動産賃貸事業
㈱TNC放送会館では、賃貸オフィスビルTNC放送会館の高水準の入居率の維持と、賃料の増額改定の効果などにより、当セグメントの売上高は前年同期比2.2%増の11億27百万円となりました。営業費用は、㈱TNC放送会館の人員補充に伴う人件費の増加があった一方で、大規模修繕案件がなく修繕費が減少したことなどにより、前年同期比2.5%減の11億61百万円となりました。
以上の結果、セグメント損益(営業損益)は、前年同期比22.8%増の2億83百万円となりました。福岡市街地で進行する再開発計画を念頭に置いて、入居テナントとの意思疎通、信頼関係の向上を図りながら、ビルの競争力及び資産価値を高め、収益力の向上を図っていきます。
③ 情報処理事業
㈱ニシコンでは、放送系ビジネスにおいて、テレビ営放システム、ラジオ営放システムの本番稼働や、FNS系列局の標準マスター更新作業が順次、計画どおりに進行しました。事務トータルシステムでは、大規模ユーザー及びその関連会社での本番稼働がありました。また、自治体・その他ビジネスでも、大型案件の本番稼働などがありました。これらの結果、当セグメントの売上高は前年同期比5.0%増の31億83百万円となりました。一方、費用面では、将来のビジネス展開に向けた報道システムクラウドバージョンや次期事務システムなどの開発準備作業のためにスケジュールが過密となって外注加工費が増加することとなり、営業費用は前年同期比8.0%増の29億57百万円となりました。
以上の結果、セグメント損益(営業損益)は前年同期比20.5%減の3億4百万円となりました。
今後も複数年にわたる大型開発案件が続きます。長期的なスケジュールの過密状況に対応するため、より綿密な要員計画を立て、効率的な作業を進めて行きます。
④ その他の事業
㈱VSQでは、好調なタレントキャスティングビジネスでは売上が伸びたものの、特番や通販関連番組の発注数の減少で番組制作収入が減少、CMの新規制作案件の減少によりCM制作収入が減少、映像制作関連業務(プリプロダクション・ポストプロダクション)も発注が減少するなど、売上高は前年同期比7.6%減となりました。費用面では、キャスティング部門の売上拡大に伴う費用増がありましたが、全体としては減収に伴う直接費の減少などにより、営業費用は前年同期比6.7%減となりました。その結果、営業利益は前年同期比で21百万円の減益となりました。
㈱TNCプロジェクトでは、メディア事業部門で「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」の企画販売があった一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大によるイベント中止や、人材派遣部門でグループ外への派遣スタッフの減少などがあり、売上高は前年同期比5.5%減となりました。費用面では、売上の減少に伴って直接経費が減少したことなどにより、営業費用は前年同期比7.0%減となりました。その結果、営業利益は前年同期比56.1%増となりました。
以上の結果、その他の事業全体の売上高は前年同期比11.0%減の15億21百万円、営業費用は前年同期比6.6%減の26億78百万円となり、セグメント利益(営業利益)は前年同期比18.1%減の40百万円となりました。
その他の事業の両社ともに、新型コロナウイルスによる影響への対応が急務であり、適切に対処しながら収益の拡大を目指します。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、143億29百万円(前期末131億12百万円)となりました。前期に比べ、営業活動による収入が増加、投資活動による支出が増加、財務活動による支出が増加しました。その結果、資金は12億16百万円(+9.3%)増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動で得られた資金は、前期に比べ8億55百万円(+48.1%)増加し、26億33百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益14億76百万円、減価償却費8億80百万円、法人税等の支払額5億32百万円があったことなどによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動で使用した資金は、9億58百万円(前期は20百万円の収入)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出10億6百万円、投資有価証券の取得による支出2億55百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入3億22百万円があったことなどによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動で使用した資金は、前期に比べ1億58百万円(+53.3%)増加し、4億55百万円となりました。これは主に、短期借入金の返済による支出3億20百万円、長期借入金の返済による支出57百万円、配当金の支払額41百万円があったことなどによります。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループは受注生産形態をとらないものがほとんどで、販売品目は多岐にわたり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。販売の実績については、「経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しています。当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメント | 販売高(千円) | 前期比(%) |
放送事業 | 13,386,937 | -2.4% |
不動産賃貸事業 | 1,127,547 | 2.2% |
情報処理事業 | 3,183,469 | 5.0% |
その他の事業 | 1,521,914 | -11.0% |
合 計 | 19,219,869 | -1.7% |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 上記の金額に消費税等は含まれていません。
3 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
㈱電 通 | 2,934,982 | 15.0 | 2,814,807 | 14.6 |
㈱博報堂DYメディアパートナーズ | 2,416,121 | 12.4 | 2,344,023 | 12.2 |
㈱フジテレビジョン | 1,569,067 | 8.0 | 1,580,202 | 8.2 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当連結会計年度における経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
(1) 財政状態の分析
① 資産
当期の資産合計は、現金及び預金が大きく増加し、有形固定資産も増加した一方で、受取手形及び売掛金、投資有価証券が大きく減少したことなどにより、前期末に比べ2億61百万円(-0.6%)減少し、420億86百万円となりました。
② 負債
当期の負債合計は、支払手形及び買掛金、退職給付に係る負債が増加した一方で、短期借入金が大きく減少し、その他の流動負債、固定負債も減少が大きく、前期末に比べ4億15百万円(-6.0%)減少し、64億91百万円となりました。
③ 純資産
当期の純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益を8億19百万円計上し、利益剰余金が7億77百万円増加、その他有価証券評価差額金は7億93百万円減少しましたが、非支配株主持分1億70百万円の増加で、前期末に比べ1億54百万円(+0.4%)増加し、355億94百万円となりました。
(2) 経営成績の分析
① 売上高
当期の売上高は、放送事業がスポット収入の減少により減収となった一方で、不動産賃貸事業が高水準の入居率と賃料の増額改定の効果により増収、情報処理事業が受注量の増加で増収、その他の事業が前期の反動減や派遣先の減少、番組制作、CM制作、映像制作関連業務などの受注減少で減収となり、前期に比べ3億36百万円(-1.7%)減少して192億19百万円となりました。
② 営業利益
当期の営業利益は、売上高が減少し、売上原価が情報処理事業と放送事業で増加、他の事業部門では減少、販売費及び一般管理費が情報処理事業と不動産賃貸事業で増加、他の事業部門で減少したことなどにより、前期に比べ2億91百万円(-19.7%)減少して11億87百万円となりました。
③ 経常利益
当期の経常利益は、営業利益が減少し、営業外収益が受取保険金の増加で前期より増加、営業外費用も増加したことなどにより、前期に比べ2億53百万円(-15.8%)減少して13億50百万円となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
当期の親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益による特別利益の増加、投資有価証券評価損による特別損失の増加、法人税等減少により、前期に比べ1億29百万円(-13.6%)減少して8億19百万円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は143億29百万円(前期末131億12百万円)となりました。前期に比べ営業活動による収入が8億55百万円増加し、投資活動による支出が9億58百万円(前期は20百万円の収入)あり、財務活動による支出が1億58百万円増加したため、12億16百万円(+9.3%)増加しました。
詳細については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりです。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況」の注記事項に記載のとおりです。