有価証券報告書-第36期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 9:59
【資料】
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【項目】
147項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用環境の改善を背景に、緩やかな回復基調で推移しておりましたが、年明け以降の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、経済に深刻な影響を及ぼす状況となり、先行きについては極めて不透明な状況が続いております。
このような経済環境下、当連結会計年度における当社グループの業績は、累計正味加入件数の減少に伴う有料放送収入の減少等により、売上高は824億50百万円と前期に比べ1億72百万円(△0.2%)の減収となりました。営業利益は新型コロナウイルス感染症の影響によるスポーツや音楽ライブ等の延期、中止に伴い番組費が減少したこと等により、84億89百万円と前期に比べ17億10百万円(25.2%)の増益、経常利益は92億25百万円と前期に比べ16億94百万円(22.5%)の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券評価損等を計上したことにより、50億72百万円と前期に比べ1億10百万円(△2.1%)の減益となりました。
当社グループは、放送衛星を使った放送事業に係るサービスを行う「放送」、放送事業に係る顧客管理を含む「テレマーケティング」の2つを報告セグメントとしております。各セグメントの経営成績は次のとおりです。
<放送>当連結会計年度は、引き続きオリジナルコンテンツの強化や、話題性のある質の高い番組編成に取り組みました。
スポーツでは、井上尚弥選手のボクシング世界タイトルマッチやテニス等が新規加入を牽引しました。音楽ではサザンオールスターズや氣志團万博等のライブ、オリジナルドラマではWOWOW×東海テレビ 共同製作連続ドラマ「連続ドラマW ミラー・ツインズ Season2」等が好評を得ました。
また、より多くのお客さまにWOWOWをご視聴していただける環境をご提供するため、2019年10月からスカパー!サービス(BS/CS110)においてWOWOWの放送・契約受付を開始しました。
しかしながら、動画配信サービスの普及により、お客さまの視聴の選択肢が増えていること等から、正味加入件数は14期振りの純減と厳しい結果になりました。
以上の結果、当連結会計年度における放送セグメントの売上高は780億85百万円と前期に比べ1億65百万円(△0.2%)の減収、セグメント利益は82億22百万円と前期に比べ18億2百万円(28.1%)の増益となりました。
当連結会計年度の加入件数の状況は次表のとおりとなりました。
(単位:件)
第35期
2019年3月期
第36期
2020年3月期
対前年差対前年増減率
新規加入件数660,191563,915△96,276△14.6%
解約件数635,100610,642△24,458△3.9%
正味加入件数25,091△46,727△71,818-
累計正味加入件数2,901,4932,854,766△46,727△1.6%
内)複数契約(注)1415,289409,910△5,379△1.3%
内)宿泊施設契約(注)264,18070,3586,1789.6%

(注)1. 同一契約者による2契約目と3契約目については、月額2,300円(税抜)の視聴料金を900円(税抜)に割引しており、当該割引の対象となる契約を「複数契約」と呼称しております。
2. 宿泊施設の客室で視聴するための宿泊施設事業者との契約については、視聴料金を個別に定めており、当該契約を「宿泊施設契約」と呼称しております。
<テレマーケティング>セグメント間の内部売上の増加等により、売上高は90億67百万円と前期に比べ1億49百万円(1.7%)の増収となりましたが、売上原価の増加等により、セグメント利益は2億66百万円と前期に比べ92百万円(△25.7%)の減益となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の期末残高は、前連結会計年度末に比べ41億59百万円増加し、282億88百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は99億82百万円(前期比49億65百万円増)となりました。主なプラス要因は、税金等調整前当期純利益79億96百万円、たな卸資産の減少額60億25百万円、減価償却費27億25百万円、投資有価証券評価損6億34百万円及び関係会社株式評価損5億85百万円の計上等であり、主なマイナス要因は、仕入債務の減少額52億67百万円及び法人税等の支払額19億60百万円等です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は35億80百万円(前期比7億24百万円増)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出23億15百万円及び無形固定資産の取得による支出12億8百万円等です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果使用した資金は21億98百万円(前期比38百万円減)となりました。主な要因は、配当金の支払額21億59百万円等です。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における売上高実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称売上高(百万円)対前年増減率(%)
放送78,081△0.2
テレマーケティング4,369△0.7
合計82,450△0.2

(注)1.上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.主要な販売の相手先は一般視聴者であり、主な相手先別に記載するべきものはありません。
4.放送セグメントには有料放送収入70,173百万円(対前年増減率△0.7%)を含んでおります。
加入件数の状況、加入方法及び有料放送の料金体系を示すと、以下のとおりです。
A 加入件数の状況
「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」における加入件数の状況をご参照ください。
B 加入方法
(A) デジタル機器(直接受信)による視聴の場合
加入申込は、カスタマーセンターでの電話による受付及びインターネット等を通じて顧客と当社が直接契約する形態と特約店業務委託契約をしている電器店等を通じて行う形態があります。
(B) ケーブルテレビ局経由による視聴の場合
加入申込は、当社が契約しているケーブルテレビ局を通じて行っております。
(C) スカパー経由による視聴の場合
加入申込は、スカパーJSAT㈱を通じて行っております。
(D) ひかりTV経由による視聴の場合
加入申込は、㈱アイキャストを通じて行っております。
C 有料放送の料金体系
区分視聴料備考
衛星デジタル有料放送サービス月額視聴料 2,300円
(プログラムガイド込み)
-
衛星デジタル有料放送サービスに更に衛星デジタル有料放送サービスを追加して有料放送契約を締結する場合の衛星デジタル有料放送サービス(複数契約)月額視聴料 900円
(プログラムガイドなし)
ただし、同一世帯による同一口座から視聴料の引落しを受ける衛星デジタル有料放送サービス契約1契約につき新たな衛星デジタル有料放送サービス2契約までとする。

(注)上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって、決算日における資産・負債の数値並びに当該会計期間における収益・費用の数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行います。
見積り及び判断の基礎としては、過去の実績や合理的と考えられる査定方式を採っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性により、見積りと異なる場合があります。見積りに大きな影響を及ぼす重要な会計方針の主要なものは以下のとおりです。
A 固定資産の減損
当社グループは、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等を合理的に見積った上で計算するため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の見積りに変更があった場合、当社グループで減損損失が計上される可能性があります。
B 繰延税金資産
当社グループは、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、当該見積額が減少した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
C 投資有価証券
当社グループは、長期的な取引関係維持または将来における事業の多角化を見据え、特定の有価証券を保有しております。これらの株式のうち、時価のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理をしております。時価を把握することが極めて困難と認められるものについて実質価額が著しく低下したときは、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない限り、減損処理をしております。
将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現在簿価に反映されていない追加的な評価損の計上が必要となる可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については不確実性があり、将来の業績予測等に反映させることが難しい要素もあるものの、現時点において入手可能な情報を基に合理的な見積りを行っております。合理的な見積りを行うにあたり使用した当該感染症の収束時期等を含む仮定に関する情報と影響する項目は、第5「経理の状況」の1「連結財務諸表等」の(追加情報)に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
A 連結経営成績の推移
最近5期間における経営成績(重要な経営指標)は、以下のように推移しております。
回次第32期第33期第34期第35期第36期
決算年月2016年3月2017年3月2018年3月2019年3月2020年3月
新規加入件数(件)589,731578,193590,649660,191563,915
解約件数(件)541,387559,682537,432635,100610,642
正味加入件数(件)48,34418,51153,21725,091△46,727
累計正味加入件数(件)2,804,6742,823,1852,876,4022,901,4932,854,766
売上高(百万円)75,29678,25381,57482,62382,450
経常利益(百万円)9,51610,28210,6987,5319,225
売上高経常利益率(%)12.613.113.19.111.2
営業活動による
キャッシュ・フロー
(百万円)5,33112,2029,4215,0179,982

2016年3月期
累計正味加入件数増加に伴い有料放送収入が前期に比べ増加したこと等により、売上高は前期に比べ3.7%の増収となりました。番組等に戦略的な費用投下を行ったことにより営業費用が増加したため、経常利益は前期に比べ8.2%の減益、経常利益率は1.7ポイントの減少となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ42.7%の減少となりました。
2017年3月期
累計正味加入件数増加に伴い有料放送収入が前期に比べ増加したことや、EC(電子商取引)ショップ等でのグッズ販売が増加したこと等により、売上高は前期に比べ3.9%の増収となりました。一方で、効果的・効率的な費用投下等により広告宣伝費等が減少したこと等により、経常利益は前期に比べ8.1%の増益、経常利益率は0.5ポイントの増加となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ128.9%の増加となりました。
2018年3月期
新たに㈱WOWOWプラスを連結子会社化したこと等により、売上高は前期に比べ4.2%の増収となりました。経常利益は広告宣伝費等が増加するも、為替差損益が良化したことにより、前期に比べ4.0%の増益、経常利益率は前期と同率となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ22.8%の減少となりました。
2019年3月期
累計正味加入件数増加に伴い有料放送収入が前期に比べ増加したことや、テレマーケティング事業における外部売上の増加等により、売上高は前期に比べ1.3%の増収となりました。一方で、戦略的なコンテンツ強化による番組費の増加等により、経常利益は前期に比べ29.6%の減益、経常利益率は4.0ポイントの減少となりました。営業活動の結果得られた資金は前期に比べ46.8%の減少となりました。
B 当連結会計年度(2020年3月期)の経営成績の分析
(A) 加入件数
当連結会計年度における加入件数の状況は、動画配信サービスの普及により、お客さまの視聴の選択肢が増えていることや、新型コロナウイルス感染症の影響により、2月、3月に放送、配信を予定していたスポーツや音楽ライブ等が延期、中止となったこと等から、新規加入件数は563,915件(対前年増減率△14.6%)、解約件数は610,642件(同△3.9%)、新規加入件数から解約件数を差し引きました正味加入件数は△46,727件となり、当連結会計年度末の累計正味加入件数は2,854,766件(同△1.6%)と14期振りの純減と厳しい結果になりました。また、当連結会計年度末時点において、複数契約は409,910件(同△1.3%)、宿泊施設契約は70,358件(同9.6%)となりました。
(B) 売上高
累計正味加入件数の減少に伴う有料放送収入の減少等により、売上高は824億50百万円と前期に比べ1億72百万円(△0.2%)の減収となりました。
(C) 経常利益
経常利益は新型コロナウイルス感染症の影響により、2月、3月に放送、配信を予定していたスポーツや音楽ライブ等が延期、中止となったことに伴い番組費が減少したこと等により、92億25百万円と前期に比べ16億94百万円(22.5%)の増益となりました。
(D) 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は99億82百万円となり、前期に比べ49億65百万円(99.0%)の増加となりました。主なプラス要因は、税金等調整前当期純利益79億96百万円、たな卸資産の減少額60億25百万円、減価償却費27億25百万円、投資有価証券評価損6億34百万円及び関係会社株式評価損5億85百万円の計上等であり、主なマイナス要因は、仕入債務の減少額52億67百万円及び法人税等の支払額19億60百万円等です。
C 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループを取り巻く事業環境は、年々競争激化の様相を強めております。それに伴い事業運営のリスク要因等も多種・多様化しております。詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」並びに「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
当社グループの売上高の源泉は加入者からの視聴料です。したがって、加入者を如何にして増やし続けるか、その為に何をするかが重要な課題であり、経営成績に重要な影響を与える要因です。さらに、当社グループの基幹事業は放送です。加入への誘引、加入していただいたお客さまの視聴の継続に大きく影響を及ぼすのは、放送の内容、番組、コンテンツです。質の高いコンテンツを獲得することは、必要不可欠であり、経営成績に重要な影響を与える要因です。
D 資本の財源及び資金の流動性について
(A) 当社グループの資金状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の期末残高は、前連結会計年度に比べ41億59百万円増加し、282億88百万円となりました。詳細につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(B) 財務政策
当社グループは、運転資金及び設備投資等の資金につきましては、自己資金により充当しております。
次期の運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金及び取引銀行4行と個別契約しております総額32億70百万円の当座貸越契約により確保しております。