有価証券報告書-第35期(2024/04/01-2025/03/31)

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2025/06/24 15:06
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122項目
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
インターネット接続サービスの状況
2025年3月期のインターネット接続サービスの売上高は前期比896百万円増(8.3%増)の11,739百万円となりました。
ISP「ASAHIネット」
ISP「ASAHIネット」においては、FTTH接続サービスの2025年3月末の契約数は前期末比28千ID増(6.0%増)の498千IDとなりました。FTTH接続サービスにおいてはNTT東西が提供する最大通信速度が概ね10Gbpsの光アクセスサービス「フレッツ 光クロス」の提供エリア拡大にともない契約数は増加しました。加えて、NTT東西と協業して販売する「マンション全戸加入プラン」の契約数も増加しました。マンション入居時にインターネットが備え付けられている契約形態が増加しており、今後も契約数の増加が見込めるマーケットと捉えております。2025年3月末は個人会員の引越しや法人会員のインターネット拠点の追加等により契約数が増加しました。
モバイル接続サービスの2025年3月末の契約数は、前期末比1千ID減(1.8%減)の47千IDとなりました。モバイル接続サービスはSIMカード型で従量制のLTEと、モバイルWi-Fiルータ型で定額制のWiMAXの2つの接続サービスを提供しております。LTE接続サービスは、固定IPアドレスオプションと組み合わせることで遠隔に設置している機器にインターネット経由でアクセスするIoT/M2Mの需要が継続的にあります。
ADSL接続サービスの2025年3月末の契約数は前期末比0千ID減(13.4%減)の2千IDとなりました。NTT東西のフレッツADSLの提供エリアが縮小したことにより契約数が減少しております。
以上の結果、2025年3月期の「ASAHIネット」の売上高は前期比714百万円増(8.1%増)の9,578百万円となりました。
第三者機関の調査により、利用者満足度の高いインターネット通信サービスを選出する「RBB TODAY ブロードバンドアワード2024法人版」において、当社の「AsahiNet 光」は、NTT東西のフレッツ回線とプロバイダを組み合わせた光コラボレーションモデルとしては唯一、複数部門で最優秀賞を受賞しました。具体的には、大企業部門の「サポートの部」、「継続意向の部」、小規模事業者部門(個人事業主含む)の「総合満足度」、「通信速度の部」、「継続意向の部」において受賞いたしました。また、2024年には、上記以外にも「RBB TODAY ブロードバンドアワード2024」の「プロバイダ部門」および「キャリア部門(エリア別総合)」の関東エリアにおいて総合1位を獲得したほか、「RBB TODAY 光コラボアワード 2024」の「カスタマーサポートの部」においても最優秀賞を受賞しております。当社は、PPPoE、IPoE両方の設備を自社で運営するインターネット・サービス・プロバイダとして、お客様にとって最適な通信方法を適切な価格で提供できるという強みを活かし、品質維持に不可欠な設備投資を積極的に進めてまいりました。これらの取り組みが、このような高い顧客評価に繋がったものと考えております。
VNE「v6 コネクト」
VNE「v6 コネクト」の2025年3月末の提携事業者数は10社となりました。前年同期末比1社の減少となります。2025年3月期の「v6 コネクト」の売上高は前期比182百万円増(9.2%増)の2,161百万円となりました。「v6 コネクト」はVNO事業者(電気通信事業者)に対してNTT東西が提供するフレッツ光を使ったIPoE方式によるIPv6インターネット接続を卸提供するサービスです。当社は、主として基本料およびVNO事業者が利用したトラフィックに応じた従量課金額を売上として計上します。売上高の増収要因は主に2点から構成されます。1点目は提携事業者が取り扱うフレッツ光の回線数増加です。2点目は1回線あたりのトラフィック増加です。2025年3月期の売上高には1回線あたりのトラフィック増加が大きく影響しております。
インターネット関連サービスの状況
2025年3月期のインターネット関連サービスの売上高は前期比35百万円減(2.6%減)の1,338百万円となりました。
教育支援サービス「manaba」
教育支援サービス「manaba(マナバ)」の2025年3月末の契約ID数は前年同期末比22千ID減(2.8%減)の768千IDとなりました。全学導入校数は前年同期末比5校減(5.4%減)の88大学となりました。2025年3月期の「manaba」の売上高は前期比22百万円減(3.8%減)の577百万円となりました。
大学を取り巻く環境は、文部科学省が進める教育のDX化が後押しされたことにより、LMSやポートフォリオは新たな価値を求められております。教育支援サービス「manaba」は教育の質保証や大学IRを実現するために必要なサービスの提供が必要と考えており、2025年3月期から2年間の開発計画を策定し、下記3点を重点取り組みとして活動しております。1点目は変わりつつある学修環境に対応するための各種システムとの連携強化です。教育業界の標準規格であるLTI(Learning Tools Interoperability)に対応し、2024年7月に1EdTech Consortium Inc.より、国際標準規格「LTI1.3」に関する認証を取得しました。LTI Advantage(LTI1.3の機能を拡張するパッケージ群の総称)についてもサービス開発を進めております。2点目は学修行動を分析するためのログの抽出です。「manaba」に蓄積された様々な学修ログデータを大学IR(Institutional Research)に利活用できるよう、データ抽出の準備をしています。3点目は学生の能動的な学修を促すための機能提供です。アクティブラーニングと呼ばれる学生の能動的な活動を推し進めるための機能開発に取り組みます。これらの取り組みを実施することで利用大学の拡大ならびに退会抑止を実施しました。
その他
「その他」はメールサービスやセキュリティサービス、その他関連サービスの売上高となります。2025年3月期の「その他」の売上高は前期比12百万円減(1.6%減)の761百万円となりました。
収益の状況
売上高、営業利益は、業績予想に対し計画通りに進捗し、2025年2月に上方修正した業績予想の売上高12,900百万円に対する達成率は101.4%、営業利益2,300百万円に対する達成率は102.0%となりました。VNE「v6 コネクト」は、提携事業者との取り扱い通信量が増加したことにより増収となりました。ISP「ASAHIネット」は、NTTチャネルやWebチャネルで会員獲得を強化したことによりFTTH接続サービス数の契約数が増加し増収となりました。また、「固定IPアドレスオプション」を2024年2月にリニューアルしたことも増収に寄与しました。教育支援サービス「manaba」は、全学導入校数の減少により減収となりました。
売上原価は、今後も増加するトラフィックを効率的に処理するために、複数年度の期間をかけてネットワーク設備を更改してきたことにより通信費の増加が抑制されました。一方、基幹システム更改の一部リリースに伴う減価償却費及び基幹システム更改の維持開発等に関する業務委託費が増加しております。
販売費及び一般管理費は、ISP「ASAHIネット」のインターネット接続契約数の増加に向けて、営業活動量の拡大を目的とした業務委託費、新規会員数に連動する施策やイベント出展、代理店手数料等に投下したことにより増加しました。
以上の結果、2025年3月期の売上高は13,078百万円(前期比861百万円増、7.1%増)、営業利益は2,345百万円(同380百万円増、19.3%増)、経常利益は2,364百万円(同378百万円増、19.1%増)、当期純利益は1,752百万円(同463百万円増、35.9%増)となりました。なお、2025年3月期は特別利益として投資有価証券売却益137百万円、また、特別損失として固定資産除却損5百万円を計上しております。
財政の状況
財政状態といたしましては、ソフトウェアの増加などにより、当事業年度末の総資産は14,787百万円(前期末比3.6%増)となりました。
負債は、買掛金の減少などにより1,696百万円(同4.3%減)となりました。
純資産は、利益剰余金の増加などにより13,091百万円(同4.7%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)前期末より652百万円増加し、4,161百万円となりました。
なお、当期における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は2,462百万円(前年同期は2,468百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が2,497百万円、減価償却費が974百万円あったことに対し、法人税等の支払額が567百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は563百万円(前年同期は1,770百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が256百万円、無形固定資産の取得による支出が1,435百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は1,247百万円(前年同期は836百万円の使用)となりました。これは、自己株式の取得による支出が606百万円、配当金の支払額が640百万円あったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績を製品及びサービスごとに示すと、次のとおりであります。
製品及びサービスの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ISP事業
インターネット接続サービス11,7398.3
インターネット関連サービス1,338△2.6
合計13,0787.1

(注)インターネット接続サービスには、新規会員獲得に関わる提携電気通信事業者からの報奨金を含んでおります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の記載のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 当事業年度の財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
a.財政状態の分析
当期末の流動資産合計は8,924百万円(前年同期末比329百万円減)となりました。また、固定資産合計は5,863百万円(同838百万円増)となりました。
以上の結果、当期末の資産合計は14,787百万円(同508百万円増)となりました。
(負債)
当期末の流動負債合計は1,696百万円(同76百万円減)となりました。
以上の結果、当期末の負債合計は1,696百万円(同76百万円減)となりました。
(純資産)
当期末の純資産合計は13,091百万円(同585百万円増)となりました。
以上の結果、自己資本比率は88.5%となりました。
b.経営成績の分析
当事業年度の売上高は、13,078百万円(前年同期比861百万円増)となりました。ISP「ASAHIネット」は「AsahiNet 光」、「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」などのFTTH接続サービスやLTEやWiMAXなどのモバイル接続サービスの拡販、VNE「v6 コネクト」は取り扱い通信量の増加、が主な増収要因となります。
営業利益は2,345百万円(同380百万円増)となりました。売上原価は、将来的なトラフィック増加を見据え、複数年度にわたりネットワーク設備の更改を進めた結果、通信費の増加が抑制されました。また、基幹システム更改の一部リリースにより、減価償却費および基幹システム更改の維持開発等に関する業務委託費が増加いたしました。
以上の結果、当期純利益は1,752百万円(同463百万円増)となりました。なお、2025年3月期は特別利益として投資有価証券売却益137百万円、また、特別損失として固定資産除却損5百万円を計上しております。
c.キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、無借金による財務体質を維持しており、高い自己資本により事業運営を行っております。事業活動にかかる運営資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源とし、設備投資及び配当原資としております。
③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は自己資本当期純利益率(ROE)を全社の目標経営指標として設定し、投資家が期待する利回りである株主資本コスト(5%~6%)を上回るROE10%以上の達成を目標としております。さらに1株当たり純利益の継続的な成長により、株主還元の充実を図る事を重要な経営方針としております。
過去5年間のROE、PBR及び1株当たり純利益の推移は以下のとおりです。
2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期
ROE12.6%11.3%11.1%10.5%13.7%
PBR2.071.461.381.431.39
1株当たり純利益46.67円44.92円45.92円46.46円64.99円

2025年3月期は特別利益として投資有価証券売却益137百万円を計上しているため、ROE及び1株当たり純利益が増加しております。
ISP「ASAHIネット」につきましては、FTTH接続サービス並びに、モバイル接続サービスの契約数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。
過去5年間の推移は以下のとおりです。 (単位:千ID)
2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期
FTTH(光接続)サービス契約数424448455470498
モバイル接続サービス契約数4647474847
平均退会率0.79%0.71%0.75%0.66%0.66%
第三者による顧客満足度調査RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位等
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位等
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位等
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位等

「ASAHIネット」契約数は順調に増加しております。トラフィックの増加によりFTTHの需要が増加する中で、接続料金、通信の安定性、通信速度等により当社接続サービスの契約数が増加しております。IoTの進展や働き方改革による法人契約の需要が増加していることに加え、マンション全体での一括契約を前提とした「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」も引き続き契約数が増加する要因にあげられます。
平均退会率については、安定して低減傾向にあり、2025年3月期は0.66%という結果となりました。
第三者による顧客満足度調査では、2025年1月に発表されたブロードバンド時代のベストプロバイダを選ぶ「RBB TODAY ブロードバンドアワード」において「プロバイダ部門 総合満足度第1位」を獲得しました。同受賞は11年連続通算14回目となります。
今後も高品質なサービスを提供していくことで、会員数の増大を図り企業価値を高めてまいります。
インターネット関連サービスにおいては、教育支援サービス「manaba」の契約ID数、全学導入校数を重要な指標としております。
過去5年間の推移は以下のとおりです。 (単位:千ID)
2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期
「manaba」契約ID数793825818790768
全学導入校数(※)98校
(110校)
101校
-
100校
-
93校
-
88校
-

(※)2021年3月末から全学導入校の集計対象を大学・短期大学のみとしました。
2021年3月期は新型コロナウイルス感染症に対処することを目的として大学がオンライン授業の対応を行ったため「manaba」契約ID数及び全学導入校数が増加しております。2025年3月期は一部大学の解約が発生したことと新規で契約する全学導入校数が少なかったことにより減少しております。
④ 重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたりまして、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。