有価証券報告書-第31期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/28 14:31
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(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当事業年度における新型コロナウイルス感染症の影響については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営環境 ④ 業績の見通し」に記載のとおり、当社業績予想への影響は軽微であると認識しております。
① 財政状態及び経営成績の状況
業界の動向
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては2020年12月末のFTTH(光ファイバー)の利用者数は前年同期比179万契約増(5.5%増)の3,453万契約となり一貫して増加しております。また、FTTH契約数のうちNTT東西の卸電気通信役務(サービス卸)を利用して提供される契約数は1,491万となっており、FTTHの契約数に占める比率は前年同期比1.5%増の43.2%となりました。
MVNOサービスの利用者は前年同期比191万契約増(8.0%増)の2,586万契約となりました。そのうち高速モバイル通信やIoT(Internet of Things)/M2M(Machine to Machine)に利用されるSIMカード型の契約者数は前年同期比118万契約増(7.9%増)の1,604万契約と順調に増加しております。
インターネットにおけるトラフィックは総務省が2020年11月に公開した集計結果では1契約当たりのダウンロードトラフィックは前年同期末比160.2kbps増(51.8%増)の469.4kbps、1ヵ月当たり154.3GBとなり引き続き増加傾向にあります。昼間帯はテレワークの拡大等ビジネスでの利用に加え、大学の遠隔授業やGIGAスクール構想による情報端末を用いた学習環境整備の取り組みなどにより強い増加率で推移しております。また巣ごもり消費等で報道されているように外出を控え自宅で過ごす機会が増え新たなインターネット需要が創出されていると捉えてます。夜間帯では、オンラインライブやインターネット上で開催されるeスポーツイベントなど次々と新しい取り組みが増えております。トラフィックの増加によって引き起こされる通信速度の低下及び通信品質の悪化は、ISP業界に留まらず通信業界全体での課題となっております。
インターネット接続サービスの状況
ISP「ASAHIネット」
ISP「ASAHIネット」においては、2021年3月末の会員数が前年同期末比で15千ID増(2.4%増)の638千IDとなりました。内訳として「AsahiNet 光」などのFTTH接続サービス契約数が17千IDの増加、LTE・WiMAX 2+などのモバイル接続サービス契約数が2千IDの増加となりました。
FTTH接続サービスにおいては「AsahiNet光」「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」等のフレッツ光サービスの契約数が好調に推移をしております。また当社が強みとしている「固定IPアドレスオプション」とFTTH接続サービスを組み合わせた契約が増加しております。インターネットへアクセスする際にID認証と固定IPアドレスを用いた多要素認証や、インターネット側からPCやサーバ等にアクセスし機器を遠隔で操作するなど企業運営に必要な業務を行うために当社サービスを利用する事例が増えていることが背景となります。
モバイル接続サービスにおいてはIoT/M2Mでの利用が増加しております。ルータ機器や監視カメラなど人を介さずにインターネット経由で情報取得をする用途として音声電話を含まないデータ容量のみのLTE契約数が増加しております。
FTTH接続サービスおよびモバイル接続サービスに共通して当社が重要視しているのが通信品質です。2021年1月に発表された利用者満足度の高いインターネット通信サービスを選出する「RBB TODAY ブロードバンドアワード2020」では「ASAHIネット」が「プロバイダ部門総合満足度第1位」を獲得しました。同受賞は7年連続、通算10回目となります。同時に「AsahiNet 光」が「キャリア部門(その他サービス)継続意向の部 最優秀賞」を獲得しました。当社を継続的に利用したいと回答された方が多いことは「ASAHIネット」会員全体における退会率の低さを裏付ける評価と捉えております。2021年3月末の退会率は0.79%となり引き続き低い状態を保っております。
2021年3月に「RBB TODAY テレアワード2021」が発表され「ASAHIネット」が「プロバイダ部門総合満足度第1位」を獲得しました。テレワークアワードはテレワークを実施している会社員を対象に、注目を集めたサービスや機器ベンダーを表彰するものです。調査に回答した会社員のうちテレワークを週2日以上実施している人は60%を占めています。また調査に回答した会社員の50%以上が2020年4月の緊急事態宣言以降テレワークを実施しております。調査の対象はプロバイダ以外にもインターネット接続に必要なルーター機器、ビジネスチャットやWeb会議ツールなどテレワーク中に利用するアプリケーションも調査対象となっております。テレワークに求められる通信速度や通信品質は当社が対処すべき課題として取り組んでいる根幹の部分です。当社は事業としての利益を確保しつつ品質維持に必要な設備投資を進めてまいりました。今後は評価いただいた実績を強みとし、テレワークに必要なサービス拡充や新規会員獲得施策を進めることを計画しております。
VNE「v6 コネクト」
VNE「v6 コネクト」は、2021年3月末の提携事業者数は累計11社となりました。前年同期末比4社の増加となります。その結果「v6 コネクト」の2021年3月期の売上は前年同期比516百万円増(158.3%増)の842百万円となりました。 提携事業者数の増加と取り扱い通信量の増加により増収となりました。日本全体でトラフィックが増加していることに加え、各提携事業者の新規顧客開拓が順調に推移していることもあり前年に引き続き売上に貢献をいたしました。
教育支援サービスの状況
教育支援サービス「manaba」の2021年3月末の契約ID数は前年同期末比95千ID増(13.6%増)の793千IDとなりました。全学導入校数は98校となりました。全学導入校数は2021年3月末から大学と短期大学のみを集計対象としました。当事業年度は茨城大学、獨協大学、札幌国際大学など、11校が利用開始しました。
当事業年度は大学が新型コロナウイルス感染症への対応として対面授業を縮小したことを起因とし、授業運営を継続するためにインターネットを活用したライブ型授業やオンデマンド型授業の取り組みが拡大しました。この状況下で国内において既に70万人を超える教員および学生が利用している実績があるLMS(ラーニング・マネジメント・システム)として「manaba」が多く採択されました。
政府および文部科学省はデジタルを活用した大学・高専教育高度化プランに対して補助金を付与するなど、教育におけるICT化はこの1年間で大きく前進し、今後も進化を続けると捉えています。
引き続き、当社は大学をはじめとする高等教育機関に対して学生の学びを支え、学生一人ひとりの学修機会を確保するなどデジタル化が進む大学運営を支えるサービスとして引き続き展開をしてまいります。
収益の状況
ISP「ASAHIネット」、VNE「v6 コネクト」、教育支援サービス「manaba」の各サービスが増収したことにより9年連続で過去最高の売上高を更新しました。売上原価は、売上に連動する回線仕入の増加や通信品質を維持するための通信費や設備投資が先行しており前年から増加しております。販売費及び一般管理費はFTTH接続サービス及びモバイル接続サービスの契約数増加に伴う獲得費用が増加しました。これらの状況を踏まえて営業利益は増益となりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は11,351百万円(前年同期比10.6%増)、営業利益は1,690百万円(同5.2%増)、経常利益は1,786百万円(同8.5%増)、当期純利益は1,301百万円(同13.1%増)となりました。
財政の状況
財政状態といたしましては、有形固定資産の増加などにより、当事業年度末の総資産は12,814百万円(前年同期末比15.5%増)となりました。
負債は、未払金の増加などにより1,884百万円(同35.6%増)となりました。
純資産は、利益剰余金の増加などにより10,930百万円(同12.6%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べて667百万円減少し、4,239百万円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は1,889百万円(前年同期は1,223百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が1,890百万円、減価償却費が581百万円あったことに対し、法人税等の支払額が498百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は2,026百万円(前年同期は276百万円の獲得)となりました。これは主に、有価証券の取得による支出が2,000百万円、有形固定資産の取得による支出が1,118百万円、無形固定資産の取得による支出が245百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は529百万円(前年同期は1,603百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額が529百万円あったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績を製品及びサービスごとに示すと、次のとおりであります。
製品及びサービスの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ISP事業
インターネット接続サービス9,771110.5
インターネット関連サービス1,580110.8
合計11,351110.6

(注)1.インターネット接続サービスには、新規会員獲得に関わる提携電気通信事業者からの報奨金を含んでおります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の記載のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 当事業年度の財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
a.財政状態の分析
当事業年度末の流動資産合計は8,495百万円(前事業年度末比411百万円増)となりました。また、固定資産合計は4,319百万円(同1,308百万円増)となりました。
以上の結果、当事業年度末の資産合計は12,814百万円(同1,719百万円増)となりました。
(負債の部)
当事業年度末の流動負債合計は1,821百万円(同432百万円増)となりました。
以上の結果、当事業年度末の負債合計は1,884百万円(同494百万円増)となりました。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産合計は10,930百万円(同1,225百万円増)となりました。
以上の結果、自己資本比率は85.3%となりました。
b.経営成績の分析
当事業年度の売上高は、11,351百万円(前年同期比1,086百万円増)となりました。主な増加要因は、「AsahiNet 光」、「ASAHIネットマンション全戸加入プラン」などのFTTH接続サービスやモバイル接続サービスの拡販、VNE「v6 コネクト」の提携事業者数増加と取り扱い通信量の増加、教育支援サービス「manaba」の導入校数と契約ID数増加により売上高が増加したことによるものです。
営業利益は1,690百万円(同84百万円増)となりました。売上原価は、売上に連動する回線仕入の増加や通信品質を維持するための通信費や設備投資が先行したことにより前年より増加しました。また販売費及び一般管理費は、FTTH接続サービス及びモバイル接続サービスの契約者数増加に伴う獲得費用が増加しました。これらの状況を踏まえて営業利益は増益となりました。
以上の結果、当期純利益は1,301百万円(同151百万円増)となりました。
c.キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、無借金による財務体質を維持しており、高い自己資本により事業運営を行っております。事業活動にかかる運営資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源とし、設備投資及び配当原資としております。
③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、ROE10%以上の収益力を経営上の目標としております。さらに1株当たり純利益の継続的な成長により、株主還元の充実を図ることを重要な経営方針としております。
過去5年間のROE及び1株当たり純利益の推移は以下のとおりです。
2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期
ROE10.0%6.0%9.6%11.6%12.6%
1株当たり純利益32.08円19.53円32.17円40.92円46.67円

2018年3月期にROE及び1株当たり純利益が減少したのは「ASAHIネット」会員当たりの通信トラフィックが増大する中においても通信品質を維持し収益性を高めていく目的で、ネイティブ方式でのIPv6接続サービスを構築したことによる通信費並びに減価償却費が増加したためです。2019年3月期以降はIPv6接続サービスを他電気通信事業者へ提供する「v6 コネクト」のサービスを開始したことや「ASAHIネット」会員数の増加により増収増益を実現しました。
2021年3月期は、「v6 コネクト」の提携事業者が11社に増加したこと、「ASAHIネット」会員が15千人増加したこと、「manaba」の契約ID数が95千ID増加したことで増収増益となりROEは12.6%となりました。
ISP「ASAHIネット」につきましては、会員数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。
過去5年間の会員数等の推移は以下のとおりです。 (単位:千ID)
2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期
「ASAHIネット」会員数 計591599613623638
内訳:FTTH(光接続)会員数368378392408424
内訳:モバイル接続会員数3236414446
平均退会率1.10%0.94%0.83%0.74%0.79%
第三者による顧客満足度調査RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位等

「ASAHIネット」会員数は順調に増加しております。通信料の増加によりFTTHの需要が増加する中で、接続料金、通信の安定性、通信速度等により当社接続サービスへの入会が増加しております。IoTの進展や働き方改革による法人契約の需要が増加していることに加え、マンション全体での一括契約を前提とした「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」も引き続き増加の要因にあげられます。
平均退会率については、2017年3月期は大型顧客の解約により1.10%と悪化しましたが、その後は安定して低下傾向にあり、2021年3月期は0.79%という結果となりました。
第三者による顧客満足度調査では、2021年1月に発表されたブロードバンド時代のベストプロバイダを選ぶ「RBB TODAY ブロードバンドアワード」において「プロバイダ部門 総合満足度第1位」を獲得しました。同受賞は7年連続通算10回目となります。同時に「AsahiNet 光」が「キャリア部門(その他のサービス)継続意向の部 最優秀賞」を獲得しました。また、2021年3月に発表されたテレワークで注目を集めたサービスを表彰する「RBB TODAYテレワークアワード」においても「プロバイダ部門 総合満足度第1位」を獲得しました。
今後も高品質なサービスを提供していくことで、会員数の増大を図り企業価値を高めてまいります。
教育支援サービス「manaba」につきましては、契約ID数、全学導入校数を重要な指標としております。
過去5年間の推移は以下のとおりです。 (単位:千ID)
2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期2021年3月期
「manaba」契約ID数597645654698793
全学導入校数(※)-
(76校)
-
(86校)
-
(90校)
-
(97校)
98校
(110校)

(※)2021年3月末から全学導入校の集計対象を大学・短期大学のみとしました。この変更により専門学校や高校及び高等専門学校を全学導入校数に含めておりません。カッコ内の数値は従来の集計対象での全学導入校数となります。
「manaba」の契約ID数及び全学導入校数は順調に増加しております。遠隔授業などインターネットを活用した学びの多様化における教育のICT化や教育の質保証への取り組みを実現するため、教育支援サービスが大学を支えるインフラとして必須化していく中で、シンプルで簡単な操作性やサービスの安定性により「manaba」は一定して新規導入校が増加しております。
④ 重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、当事業年度末日時点の資産・負債及び当事業年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社が採用しております重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「重要な会計方針」に記載のとおりでありますが、見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、下記の2項目が重要であると判断しております。
なお、新型コロナウイルス感染症については不確実な部分もありますが、財務諸表における会計上の見積りに及ぼす重要な影響は生じておりません。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。