有価証券報告書-第29期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/26 15:07
【資料】
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【項目】
103項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
業界の動向
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては2018年12月末のFTTH(光ファイバー)の利用者数は前年同期比88万契約増(2.9%増)の3,097万契約となり一貫して増加しております。
MVNOサービスの利用者数は前年同期比272万契約増(15.5%増)の2,036万契約となりました。そのうち高速モバイル通信やIoT(Internet of Things)/M2M(Machine to Machine)に利用されるSIMカード型の契約者数は前年同期比197万契約増(18.8%増)の1,244万契約と順調に増加しております。
インターネットにおけるトラフィックにおいては総務省が2019年3月に公開した集計結果で報告されているとおり、1契約あたりのダウンロードトラフィックは前年同期比49.9kbps増(22.0%増)の277kbpsとなり増加し続けています。ISP業界においてはトラフィック増加への対処が喫緊の課題となっております。
インターネット接続サービスの状況
インターネット接続サービスにおいては光コラボレーションモデルを活用したサービスである「AsahiNet 光」や「ASAHIネットドコモ光」、マンション全体での一括契約を前提としたサービス「マンション全戸加入プラン」等の入会が好調に推移しております。その結果、2019年3月末のASAHIネット会員数は前年同期比13千ID増(2.2%増)の613千IDとなりました。
また、当事業年度から他電気通信事業者へネイティブ方式の通信帯域をローミング提供するサービスを開始しました。これにより「フレッツ光ネクスト」の利用者はネイティブ方式(IPv6 IPoE)を使ったIPv6インターネット接続を利用することができます。IPv6普及・高度化推進協議会が調査をしたIPv6普及率は2018年12月末時点で57.8%まで増加しており今後も普及率の向上が予測されます。本サービスにより新たな売上と利益の創出を見込んでおります。
教育支援サービスの状況
教育支援サービス「manaba」(マナバ)においては2019年3月末の契約ID数は前年同期比9千ID増(1.4%増)の654千IDとなりました。当事業年度においては新たに8校導入し、2019年3月末における全学導入校は前年同期比4校増(4.7%増)の90校となりました。
当事業年度は新規導入校や契約IDを増加させる営業活動に加えて導入校へWeb上でのセミナーの開催など新たな活用促進の取り組みを行いました。これにより導入校とのきめ細やかなコミュニケーションをより効率的に取ることができるようになりました。
収益の状況
「AsahiNet 光」、「マンション全戸加入プラン」、モバイルサービスなどの拡販により7年連続で過去最高の売上高を更新しました。また営業利益も増益となりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は9,739百万円(前年同期比4.3%増)、営業利益は1,269百万円(同50.5%増)、経常利益は1,277百万円(同50.0%増)、当期純利益は952百万円(同64.9%増)となりました。
財政の状況
財政状態といたしましては、利益増にる現金及び預金の増加などにより、当事業年度末の総資産は11,593百万円(前年同期末比8.3%増)となりました。
負債は、当事業年度の利益が前事業年度に比べて増加したことに伴う未払法人税等の増加などにより1,475百万円(同43.6%増)となりました。
純資産は、当期純利益を計上したものの、剰余金の配当などにより10,118百万円(同4.5%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べて945百万円増加し、
5,010百万円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は1,698百万円(前年同期は915百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が1,387百万円、減価償却費が410百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は220百万円(前年同期は541百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が314百万円、無形固定資産の取得による支出が199百万円あったことに対し、投資有価証券の売却による収入が195百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は532百万円(前年同期は532百万円の使用)となりました。これは、配当金の支払額が532百万円あったことによるものです。
③生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
該当事項はありません。
b. 受注実績
該当事項はありません。
c. 販売実績
当事業年度における販売実績を製品及びサービスごとに示すと、次のとおりであります。
製品及びサービスの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ISP事業
インターネット接続サービス8,287105.2
インターネット関連サービス1,45199.6
合計9,739104.3

(注) 1.インターネット接続サービスには、新規会員獲得に関わる提携電気通信事業者からの報奨金を含んでおります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の記載のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
①当事業年度の財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
a. 財政状態の分析
当事業年度末の流動資産合計は8,992百万円(前事業年度末比887百万円増)となりました。また、固定資産合計は2,601百万円(同0百万円減)となりました。
以上の結果、当事業年度末の資産合計は11,593百万円(同886百万円増)となりました。
(負債の部)
当事業年度末の流動負債合計は1,474百万円(同447百万円増)となりました。
以上の結果、当事業年度末の負債合計は1,475百万円(同447百万円増)となりました。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産合計は10,118百万円(同439百万円増)となりました。
以上の結果、自己資本比率は87.3%となりました。
b. 経営成績の分析
当事業年度の売上高は9,739百万円(前年同期比400百万円増)となりました。主な増加要因は、「AashiNet 光」や「ASAHIネット ドコモ光」の売上高が増加したことに加え、LTE・WiMAXなどのモバイル接続サービスがIoT/M2Mなどに利活用される事例が増えてきており、売上増加に寄与しております。
営業利益は1,269百万円(同425百万円増)となりました。主な増加要因は、売上高の増加の他、前々事業年度(2016年度)に構築した通信ネットワークにより通信費の増加が抑えられたことにや、前事業年度に一時的に発生したネットワーク関連費用が当事業年度には発生しなかったことなどにるコスト減によります。
以上のほか、保有株式の売却による特別利益115百万円を計上した結果、当事業年度の当期純利益は952百万円(同374百万円増)となりました。
c. キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
②資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、無借金による財務体質を維持しており、高い自己資本により事業運営を行っております。事業活動にかかる運営資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源とし、設備投資及び配当原資としております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、ROE10%以上の収益力を経営上の目標としております。更に1株当たり純利益の継続的な成長により、株主還元の充実を図ることを重要な経営方針としております。
過去5年間のROEおよび1株当たり純利益の推移は以下のとおりとなります。
2015年3月期2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期
ROE(%)10.0%9.6%10.0%6.0%9.6%
1株当たり純利益29.21円29.50円32.08円19.53円32.17円

2018年3月期にROEおよび1株あたり純利益が減少したのは、1人当たり通信トラフィックが増大する中においても、通信品質を維持し収益性を高めていくために、ネイティブ方式でのネットワークを構築し償却費・通信費が増加したことによるものです。2019年3月期には、前年度に構築したネットワークを利用して、他電気通信事業者へ通信帯域をローミングするサービスを開始したことなどにより、大幅増益を実現致しました。
2020年3月期には、他電気通信事業者へのローミング・サービスを更に拡大することなどにより、ROE10%を回復する見込みです。
また、主力のインターネット接続事業においては、ASAHIネット会員数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。
過去5年間の会員数等の推移は以下のとおりとなります。
2015年3月期2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期
会員数(千ID)572587591599613
平均退会率(%)0.94%0.97%1.10%0.94%0.83%
第三者による
顧客満足度調査
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位

インターネット接続サービスの会員数は順調に増加しております。IoTの進展による法人顧客の需要が増加していることに加え、マンション全体での一括契約を前提とした「マンション全戸加入プラン」が好調な要因にあげられます。平均退会率については、2017年3月期には大口顧客の解約により1.10%と悪化しましたが、その後は安定しており、2019年3月期には0.83%という非常に良好な水準となりました。
また、ブロードバンド時代のベストプロバイダを選ぶRBB TODAYのブロードバンドアワードにおいて5年連続(通算8回)で総合1位を受賞しております。
今後も高品質なサービスを提供していくことで、会員数の増大を図り企業価値を高めてまいります。
④重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、当事業年度末日時点の資産・負債及び当事業年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社が採用しております会計方針の内、重要となる事項につきましては、「第5 経理の状況」の「重要な会計方針」に、記載しておりますのでご参照ください。