有価証券報告書-第30期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 13:24
【資料】
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【項目】
99項目
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当事業年度における新型コロナウイルス感染症の影響については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営環境 ④ 業績の見通し」に記載のとおり、当社業績予想への影響は軽微であると認識しております。
① 財政状態及び経営成績の状況
業界の動向
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては2019年12月末のFTTH(光ファイバー)の利用者数は前年同期比136万契約増(4.3%増)の3,272万契約となり一貫して増加しております。次世代移動通信5Gの基地局整備に伴う光ファイバー敷設の推進や商業施設等への導入等により、今後も利用者数の伸びは増加すると考えております。
MVNOサービスの利用者数は前年同期比319万契約増(15.5%増)の2,388万契約となりました。そのうち高速モバイル通信やIoT(Internet of Things)/M2M(Machine to Machine)に利用されるSIMカード型の契約者数は前年同期比268万契約増(21.7%増)の1,503万契約と増加しております。
インターネットにおけるトラフィックにおいては総務省が公開した2019年11月の集計結果で報告されているとおり、1契約あたりのダウンロードトラフィックは前年同期比34.4kbps増(12.5%増)の309.5kbps、1日あたり約3.3GBとなり増加し続けております。在宅勤務等のテレワークが拡大することで発生するインターネット利活用の変化が一時的ではなく継続的な変化となるかを注視しております。ISP業界としてはトラフィック増加への対処と通信品質の維持が引き続き喫緊の課題となっております。
インターネット接続サービスの状況
インターネット接続サービス「ASAHIネット」においては、2020年3月末の会員数が前年同期末比で10千ID増(1.6%増)の623千IDとなりました。インターネット接続環境を導入する商業店舗または商業施設の増加やオフィス環境のインターネット整備、集合賃貸住宅へのインターネット設置等の需要によりFTTH接続サービスである「AsahiNet 光」、「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」等の入会が好調に推移しております。モバイル接続サービスはIoT/M2Mの増加に加え、在宅勤務等のテレワーク拡大により個人または法人顧客からの入会申込やオプションサービスである「固定IPアドレスオプション」の契約数が増加しております。
サービスについては、IP電話サービス「AsahiNet 光電話」の提供を当事業年度第2四半期より開始するなど需要に応えるべくサービス拡充を進めております。
会員獲得については広告宣伝費や販売促進費を投下し、費用対効果を適切に判断しながらWebチャネル、対面チャネル、代理店チャネル等を横断したメディア展開の取り組みを行いました。
2019年12月に発表された利用者満足度の高いインターネット通信サービスを選出する「RBB TODAY ブロードバンドアワード2019」においては「ASAHIネット」が「プロバイダ部門 総合満足度1位」を獲得しました。同賞の受賞は6年連続、通算9回目の受賞となります。
電気通信事業者へIPv6インターネット接続をローミング提供するサービス「v6 コネクト」においては、2020年3月末の提携事業者数は7社となりました。インターネット通信量が継続的に増加している課題に対して電気通信事業者が通信品質や費用を適正化できるような提案や、各事業者の業務オペレーションを効率化するための仕組みを支援することで差別化を図り、今後も導入社数の増加に取り組んでまいります。当事業年度第4四半期には、NTT東日本またはNTT西日本が提供するホームゲートウェイで「v6 コネクト」のIPv4 over IPv6接続機能(DS-Lite方式)の提供を開始しております。利用者はインターネット接続の初期設定が従来よりも簡便になるなどの利便性が向上するだけでなく、安定した通信を利用できるようになりました。
教育支援サービスの状況
教育支援サービス「 manaba (マナバ)」の2020年3月末の契約ID数は前年同期末比44千ID増(6.7%増)の698千IDとなりました。全学導入校数は前年同期末比7校増(7.8%増)の97校となりました。
当事業年度は鳥取大学、明治学院大学、文教大学など新たに8校と契約締結しました。また、新規導入校や契約ID数を増加させる営業活動に加え、導入校へWeb上でのセミナーの開催など新たな活用促進の取り組みを行いました。これにより導入校とのきめ細やかなコミュニケーションをより効率的に取ることができるようになりました。
文部科学省から通知された新型コロナウイルス感染症拡大抑止のための休校措置を受けて遠隔授業を実施する大学が増加しております。これによる「 manaba 」の同時利用者数の増加など、新しい需要に応えられるようサービス拡充とサーバー等の設備増強などの対策を検討してまいります。
収益の状況
「AsahiNet 光」、「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」などのFTTH接続サービスやモバイル接続サービスの拡販、「v6 コネクト」の提携事業者数増加と既存契約の売上増加により8年連続で過去最高の売上高を更新しました。また営業利益も増益となりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は10,265百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益は1,606百万円(同26.5%増)、経常利益は1,647百万円(同28.9%増)、当期純利益は1,150百万円(同20.9%増)となりました。
財政の状況
財政状態といたしましては、自己株式の取得による現金及び預金の減少などにより、当事業年度末の総資産は11,094百万円(前年同期末比4.3%減)となりました。
負債は、未払法人税等の減少などにより1,390百万円(同5.8%減)となりました。
純資産は、当期純利益を計上したものの、自己株式の取得や剰余金の配当などにより9,704百万円(同4.1%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べて103百万円減少し、4,906百万円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得た資金は1,223百万円(前年同期は1,698百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が1,657百万円、減価償却費が448百万円あったことに対し、たな卸資産の増加額が226百万円、法人税等の支払額が572百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により獲得した資金は276百万円(前年同期は220百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が672百万円、無形固定資産の取得による支出が237百万円あったことに対し、定期預金の預け替えによる収入が1,200百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は1,603百万円(前年同期は532百万円の使用)となりました。これは、自己株式の取得による支出が1,086百万円、配当金の支払額が516百万円あったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績を製品及びサービスごとに示すと、次のとおりであります。
製品及びサービスの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
ISP事業
インターネット接続サービス8,839106.7
インターネット関連サービス1,42598.2
合計10,265105.4

(注)1.インターネット接続サービスには、新規会員獲得に関わる提携電気通信事業者からの報奨金を含んでおります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の記載のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 当事業年度の財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
a.財政状態の分析
当事業年度末の流動資産合計は8,084百万円(前事業年度末比908百万円減)となりました。また、固定資産合計は3,010百万円(同409百万円増)となりました。
以上の結果、当事業年度末の資産合計は11,094百万円(同499百万円減)となりました。
(負債の部)
当事業年度末の流動負債合計は1,388百万円(同85百万円減)となりました。
以上の結果、当事業年度末の負債合計は1,390百万円(同85百万円減)となりました。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産合計は9,704百万円(同413百万円減)となりました。
以上の結果、自己資本比率は87.5%となりました。
b.経営成績の分析
当事業年度の売上高は10,265百万円(前年同期比526百万円増)となりました。主な増加要因は、「AashiNet 光」、「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」などのFTTH接続サービスやモバイル接続サービスの拡販、「v6 コネクト」の提携事業者数増加と既存契約の売上高が増加したことによるものです。
営業利益は1,606百万円(同336百万円増)となりました。主な増加要因は、売上高の増加の他、2017年3月期に構築した通信ネットワーク等、インターネットトラフィック増加に対して効率の良い設備増強を実施することにより通信費の増加幅を抑えられたことによるものです。
以上の結果、当事業年度の当期純利益は1,150百万円(同198百万円増)となりました。
c.キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、無借金による財務体質を維持しており、高い自己資本により事業運営を行っております。事業活動にかかる運営資金については営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源とし、設備投資及び配当原資としております。
③ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、ROE10%以上の収益力を経営上の目標としております。さらに1株当たり純利益の継続的な成長により、株主還元の充実を図ることを重要な経営方針としております。
過去5年間のROE及び1株当たり純利益の推移は以下のとおりとなります。
2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期
ROE(%)9.6%10.0%6.0%9.6%11.6%
1株当たり純利益29.50円32.08円19.53円32.17円40.92円

2018年3月期にROE及び1株当たり純利益が減少したのは、「ASAHIネット」会員当たりの通信トラフィックが増大する中においても通信品質を維持し収益性を高めていくため、ネイティブ方式でのIPv6接続サービスを構築したことによる通信費並びに減価償却費が増加したためです。2019年3月期はIPv6接続サービスを他電気通信事業者へ提供する「v6 コネクト」のサービスを開始したこと、「ASAHIネット」会員数の増加により売上高が増加したたことにより増収増益を実現しました。
2020年3月期は、「v6 コネクト」の提携事業者が7社に増加したことと、「ASAHIネット」会員が10千人増加したこと等によりROEは11.6%となりました。
新型コロナウイルス感染症に伴う経営指標の変更等については現時点では想定しておりません。
ISP「ASAHIネット」につきましては、会員数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。
過去5年間の会員数等の推移は以下のとおりとなります。
2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期
「ASAHIネット」会員数
(千ID)
587591599613623
平均退会率(%)0.97%1.10%0.94%0.83%0.74%
第三者による顧客満足度調査RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位
RBB TODAY
ISP部門
総合第1位

「ASAHIネット」会員数は順調に増加しております。通信料の増加によりFTTHの需要が増加する中で、接続料金、通信の安定性、通信速度等により当社接続サービスへの入会が増加しております。IoTの進展や働き方改革による法人契約の需要が増加していることに加え、マンション全体での一括契約を前提とした「マンション全戸加入プラン」も引き続き増加の要因にあげられます。
平均退会率については、2017年3月期は大型顧客の解約により1.1%と悪化しましたが、その後は安定して低下傾向にあり、2020年3月期は0.74%という結果となりました。
また、ブロードバンド時代のベストプロバイダを選ぶRBB TODAYのブロードバンドアワードにおいて6年連続(通算9回)で総合1位を受賞しております。
今後も高品質なサービスを提供していくことで、会員数の増大を図り企業価値を高めてまいります。
教育支援サービス「 manaba 」につきましては、契約ID数、全学導入校数を重要な指標としております。
過去5年間の推移は以下のとおりとなります。
2016年3月期2017年3月期2018年3月期2019年3月期2020年3月期
「 manaba 」契約ID数(千ID)491597645654698
全学導入校数62校76校86校90校97校

「 manaba 」の契約ID数及び全学導入校数は順調に増加しております。教育のICT化や教育の質保証への取り組みを実現するため、教育支援サービスが大学を支えるインフラとして必須化していく中で、シンプルで簡単な操作性やサービスの安定性により「 manaba 」は一定して新規導入校が増加しております。
④ 重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、当事業年度末日時点の資産・負債及び当事業年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社が採用しております重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「重要な会計方針」に記載のとおりでありますが、見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、下記の2項目が重要であると判断しております。
なお、新型コロナウイルス感染症については不確実な部分もありますが、財務諸表における会計上の見積りに及ぼす重要な影響は生じておりません。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。