有価証券報告書-第56期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。
なお、当社グループは、当連結会計年度から、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っています。
(1) 連結経営成績等の状況の概要
① 連結経営成績の状況
(単位:百万円)
(注)1. 消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜き方式によっています。
2. 事業利益は、営業利益から一時的要因(のれん減損及び固定資産減損等)を除いたものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。
3. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+固定資産除却損±一時的要因)÷売上収益
当年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う世界経済の悪化懸念から、先行きが不透明な状況が続きました。景気後退に伴う企業の業績悪化により投資需要が鈍化する懸念があったものの、情報システム投資については、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要が回復しています。
このような環境の下、当社グループ(当社及び連結子会社をいう。以下同じ。)は、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。
当年度は、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け策定した「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)の2年目となり、より一層の生産性向上と既存事業の拡大に取組むとともに、「中期経営計画2022」の成長戦略である(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の3つを進めています。
(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションの実装まで、テクノロジーを活用し、総合的に支援しています。
ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援をしています。
クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現しています。
(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸としたIPの獲得も含めた事業基盤の拡大を進めます。M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。
(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しています。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現しています。
なお、当社は、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として、自己株式の消却(30,787千株、45,688百万円)を行いました。
当社グループの当年度の売上収益は、金融ITソリューションを中心に前年度を上回り、550,337百万円(前年度比4.1%増)となりました。売上原価は364,539百万円(同5.3%増)、売上総利益は185,798百万円(同1.7%増)、販売費及び一般管理費は98,366百万円(同0.9%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益性が向上したものの、事業資産の効率化を目的とした横浜第一データセンターのクロージングに伴う減損損失や、ニューノーマル時代におけるオフィス戦略の一環として当社及び一部の子会社でオフィスの再整備を行ったことに伴いオフィス再編費用を計上したことにより、営業利益は80,748百万円(同5.7%減)、営業利益率は14.7%(同1.5ポイント減)となりました。なお、EBITDAマージンは23.6%(同0.2ポイント減)となりました。税引前利益は71,075百万円(同16.9%減)となりましたが、信託型従業員持株インセンティブ・プランの切替による税効果があり、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,867百万円(同9.2%減)となりました。
※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。
※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提として設計された情報システムやサービス。
② 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から52,408百万円増加し153,187百万円となりました。
当年度において、営業活動により得られた資金は84,594百万円となり、前年度と比べ28,244百万円少なくなりました。法人所得税の支払額が増加し、営業債権及びその他の債権の増加額が大きくなりました。
投資活動による支出は20,522百万円(前年度は18,382百万円の収入)となりました。前年度は、投資の売却による収入がありました。当年度の主な投資内容は、共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得でした。
財務活動による支出は13,183百万円となり、前年度と比べ136,725百万円少なくなりました。前年度は、自己株式の公開買付けによる取得159,999百万円を実施しました。当年度に、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるためのコマーシャル・ペーパーの発行による収入4,978百万円及び社債の発行による収入14,946百万円がありました。
また、㈱だいこう証券ビジネスの株式等を取得したことにより、非支配持分からの子会社持分取得による支出11,324百万円がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。
(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。
2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。
(注)1. 金額は販売価格によっています。
2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。
③ 販売実績
a. セグメント別販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
b. 主な相手先別販売実績
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上収益及び当該売上収益の連結売上収益に対する割合は次のとおりです。
(注) 相手先別の売上収益には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。
c. サービス別販売実績
当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。その作成にあたり、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。これらの見積りや仮定は、過去の実績や現在の状況などを勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。
なお、当社の連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針 4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。
② 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ① 連結経営成績の状況」に記載のとおり、当年度の当社グループの売上収益は550,337百万円(前年度比4.1%増)となりました。
当年度は、サステナブルな退職給付制度の確立に向け制度を見直した結果、退職給付制度改定益928百万円を計上しました。一方で、事業資産の効率化を目的とした横浜第一データセンターのクロージングに伴う減損損失2,220百万円や、ニューノーマル時代におけるオフィス戦略の一環として当社及び一部の子会社でオフィスの再整備を行ったことに伴いオフィス再編費用4,439百万円を計上しました。この結果、営業利益は80,748百万円(同5.7%減)となり、営業利益率は14.7%(同1.5ポイント減)となりました。
金融費用は、信託型従業員持ち株インセンティブ・プラン関連費用を計上したことなどにより、11,514百万円
(同435.2%増)となり、税効果会計適用後の法人所得税費用は、18,497百万円(同29.9%減)となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,867百万円(同9.2%減)となりました。
法人所得税費用の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13. 法人所得税」をご覧ください。
b. 財政状態
(単位:百万円)
(注)1. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分
2. ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ(正味負債資本倍率)):(有利子負債-現預金)÷親会社の所有者に帰属する持分
3. 有利子負債:社債及び借入金+リース負債+その他有利子負債(信用取引借入金及び有価証券担保借入金)
信用取引借入金(前連結会計年度末335百万円、当連結会計年度末503百万円)は、連結財政状態計算書上の営業債務及びその他の債務に、有価証券担保借入金(前連結会計年度末1,297百万円、当連結会計年度末606百万円)は、連結財政状態計算書上のその他の流動負債に含めています。
当年度末における当社グループの財政状態は、流動資産323,366百万円(前年度末比24.8%増)、非流動資産
333,170百万円(同8.9%増)、流動負債174,348百万円(同11.6%増)、非流動負債148,981百万円(同3.2%増)、資本合計333,206百万円(同25.9%増)となり、資産合計は656,536百万円(同16.2%増)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.50倍、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は、0.04倍となっています。
前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。
当年度は3月に完了した案件が多かったことから、営業債権及びその他の債権は8,919百万円増加し106,324百万円、契約資産は2,925百万円増加し42,921百万円となりました。
制度資産の増加等により退職給付に係る資産が26,750百万円増加し81,927百万円となりました。
社債及び借入金は、社債を新たに15,000百万円(第7回無担保社債10,000百万円及び第8回期限前償還条項付無担保社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)5,000百万円)を発行したこと及び新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるためコマーシャル・ペーパーを発行したことにより14,486百万円増加し117,495百万円となりました。
シンジケートローン10,000百万円が返済まで1年内となり、固定負債から流動負債に振り替えたことなどにより、1年内返済予定の長期借入金は10,431百万円増加し15,565百万円、長期借入金は13,441百万円減少し4,435百万円となりました。また、2021年3月に再導入した信託型従業員持株インセンティブ・プランに伴い、信託型従業員持株インセンティブ・プランに係る負債が11,198百万円増加し12,840百万円となりました。
自己株式は、自己株式の消却(30,787千株、45,688百万円)等により51,600百万円減少し、15,027百万円となりました。
非支配持分は、㈱だいこう証券ビジネスの株式等を追加取得したことなどにより、12,591百万円減少し2,711百万円となりました。
このほか、現金及び現金同等物が52,408百万円増加の153,187百万円、営業債務及びその他の債務が3,296百万円増加の37,358百万円、未払法人所得税が10,959百万円減少の8,939百万円となりました。
c. キャッシュ・フローの状況
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
d. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。
情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、情報サービス産業は厳しい競争の環境下にあります。あわせて、新しい技術が次々と登場する中で、企業のITに対する期待が変化してきています。コーポレートITは、品質を重視しながらも可能な限りコスト削減を目指し、パッケージ製品やクラウドサービス、ユーティリティ・サービスを利用することが一般化し、ビジネスITは、新たなデジタル技術を活用しながら事業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みが拡大しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、様々な業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。
品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
e. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及び協力会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。
当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、社債や借入れによる負債を一定以上活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、ネットD/Eレシオ(ネットデット・エクイティ・レシオ)は0.1倍前後を基本とし、0.3倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は166,704百万円(前年度末比10.1%増)、現金及び現金同等物の残高は153,187百万円(同52.0%増)、グロスD/Eレシオは0.50倍、ネットD/Eレシオは0.04倍となっています。
また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるため、当年度にコマーシャル・ペーパーを発行しています。
f. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。
当年度におけるこれらの指標は、営業利益は80,748百万円(前年度比5.7%減)、EBITDAマージンは23.6%(同0.2ポイント減)、ROEは18.2%(同0.1ポイント減)、EPSは88円34銭(同3円52銭減)となりました。
当社グループは、2022年度を最終年度とする8ヵ年の長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)を策定しています。「Vision2022」は、当社の既存の強みである業界標準ビジネスプラットフォームなどの強化、グローバル化の飛躍的拡大、ビジネスIT領域での新たな価値創造など、成長戦略の5つの柱と数値目標で構成されています。
当社は、長期経営ビジョン「Vision2022」の実現に向け、2019年4月に「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」(※1)という。)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)は次のとおりです。
中期経営計画2022(2019年度~2022年度)
(単位:百万円)
※ 昨年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度のROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率を維持していきます。
g. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績(売上収益には内部売上収益を含む。)は次のとおりです。
(コンサルティング)
当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い顧客の経営環境が急速に変化している中、顧客のDXによる企業変革が加速しており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスが期待されています。
当社グループは、顧客のDXを支援するDXコンサルティングを強化し、顧客ニーズへの的確な対応に努めるとともに、グローバル領域においては、欧米等の先進国におけるDX関連の知的資産を探索し、国内外拠点の連携を通じた提案力の強化に努めました。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大は、未来社会を大きく変える可能性のある環境変化であることから、当社グループの総力を挙げて、新型コロナウイルス対策緊急提言を行いました。
当年度の売上収益は、グローバル関連のコンサルティング案件が減少し38,155百万円(前年度比3.7%減)となりました。営業利益は、ニューノーマルにおける新たなワークスタイルが浸透したことに伴い生産性が向上し、10,059百万円(同6.0%増)となりました。
(金融ITソリューション)
当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションを提供しています。
社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの開発、デジタルバンキング事業などのDXビジネスの創出と展開、金融グローバル事業の拡大及び既存事業の高度化・大型化を進め、顧客基盤の拡大に努めました。
金融ビジネスプラットフォームの更なる進化を目的として、当第2四半期に、㈱だいこう証券ビジネスを当社の完全子会社としました。
当年度の売上収益は、証券業向け開発・製品販売の増加や、日本証券テクノロジー㈱の寄与もあり、292,038百万円(前年度比5.5%増)となりました。前年度にあった利益率の高い大型の製品販売の反動や当第1四半期に一部の子会社において不採算案件が発生したものの、足元の受注環境は良好に推移しており、相場活況による共同利用型サービスの利用料の増加やBPОサービスが好調で、営業利益は36,275百万円(同6.2%増)となりました。
(産業ITソリューション)
当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションを提供しています。
産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により景気減退に伴うITコスト削減のニーズがあるものの、コロナ禍におけるパラダイムシフトを契機とした顧客のDXによる企業変革が加速しており、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みを進めています。
当社グループは、顧客基盤の拡大に向け、産業分野に多くの顧客を持つコンサルティング部門と連携し、顧客のDX領域でのビジネスモデルの構築からシステム構築まで、コンサルティングとITソリューションが一体となり、総合的に支援しました。
当年度の売上収益は、流通業向け運用サービスが減少しましたが、製造・サービス業向け開発・製品販売が増加し、189,551百万円(前年度比4.5%増)となりました。新型コロナウイルス感染症の影響により海外子会社の採算性が悪化し、営業利益は19,482百万円(同11.7%減)となりました。
(IT基盤サービス)
当セグメントは、主に金融ITソリューションセグメント及び産業ITソリューションセグメントに対し、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。
DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、顧客のDXによる事業継続のニーズが加速しています。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※3)及びマネージドサービス(※4)の拡大や、IoT(モノのインターネット)領域でのセキュリティ事業の拡大に取り組んでいます。当第2四半期より、「Oracle Cloud」dedicated regionを世界で初めて採用し、自社データセンター内に専用パブリッククラウドを設置することで、自社統制下で運用するという新しい活用形態の取組みを始めました。
当年度の外部顧客に対する売上収益は、セキュリティ事業で増加し、内部売上収益はクラウドサービスやネットワークサービスなどが増加しました。
この結果、売上収益142,686百万円(前年度比2.9%増)、営業利益19,785百万円(同1.7%増)となりました。
※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。
※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するITサービス。
※3 デジタルワークプレイス事業:企業文化、IT、オフィス空間など物理的環境という3つの要素を組み合わせて、従業員の経験価値の向上を高めるソリューション。
(4) 並行開示情報
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、次のとおりです。
なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。
① 要約連結貸借対照表(日本基準)
② 要約連結損益及び包括利益計算書(日本基準)
③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(収益認識に関する会計基準等の適用)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしました。
当該会計方針の変更による影響は軽微です。
(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりです。
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 37. 初度適用」に記載のとおりです。
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(のれんの償却)
日本基準では、のれんを個別案件ごとに判断し、20年以内の合理的な年数で定額法により償却していましたが、IFRSではのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が3,058百万円減少しています。
(退職給付に係る費用)
日本基準では、数理計算上の差異を発生時にその他の包括利益で認識し、発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を、発生の翌年度から費用処理していましたが、IFRSでは発生時にその他の包括利益に認識し、直ちに利益剰余金に振替えています。また、日本基準では売上原価並びに販売費及び一般管理費で計上していた利息費用等を、IFRSでは金融収益又は金融費用で計上しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価並びに販売費及び一般管理費が2,694百万円増加し、金融収益が339百万円増加し、その他の包括利益が10,379百万円減少しています。
(リース)
日本基準では、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていました。IFRSでは、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がないため、基本的に全てのリース取引について、「使用権資産」及び「リース負債」を計上しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、「使用権資産」及び「リース負債」がそれぞれ43,581百万円及び48,098百万円増加しています。
なお、当社グループは、当連結会計年度から、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っています。
(1) 連結経営成績等の状況の概要
① 連結経営成績の状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月 1日 至 2021年3月31日) | 前年度比 | ||
増減額 | 増減率 | |||
売上収益 | 528,721 | 550,337 | 21,616 | 4.1% |
海外売上収益 | 46,752 | 43,625 | △3,126 | △6.7% |
海外売上収益比率 | 8.8% | 7.9% | △0.9P | - |
事業利益 | 85,571 | 87,510 | 1,938 | 2.3% |
営業利益 | 85,625 | 80,748 | △4,876 | △5.7% |
営業利益率 | 16.2% | 14.7% | △1.5P | - |
EBITDAマージン | 23.8% | 23.6% | △0.2P | - |
税引前利益 | 85,484 | 71,075 | △14,409 | △16.9% |
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 58,195 | 52,867 | △5,328 | △9.2% |
ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) | 18.3% | 18.2% | △0.1P | - |
(注)1. 消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜き方式によっています。
2. 事業利益は、営業利益から一時的要因(のれん減損及び固定資産減損等)を除いたものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。
3. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+固定資産除却損±一時的要因)÷売上収益
当年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う世界経済の悪化懸念から、先行きが不透明な状況が続きました。景気後退に伴う企業の業績悪化により投資需要が鈍化する懸念があったものの、情報システム投資については、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要が回復しています。
このような環境の下、当社グループ(当社及び連結子会社をいう。以下同じ。)は、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。
当年度は、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け策定した「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)の2年目となり、より一層の生産性向上と既存事業の拡大に取組むとともに、「中期経営計画2022」の成長戦略である(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の3つを進めています。
(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションの実装まで、テクノロジーを活用し、総合的に支援しています。
ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援をしています。
クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現しています。
(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸としたIPの獲得も含めた事業基盤の拡大を進めます。M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。
(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しています。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現しています。
なお、当社は、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として、自己株式の消却(30,787千株、45,688百万円)を行いました。
当社グループの当年度の売上収益は、金融ITソリューションを中心に前年度を上回り、550,337百万円(前年度比4.1%増)となりました。売上原価は364,539百万円(同5.3%増)、売上総利益は185,798百万円(同1.7%増)、販売費及び一般管理費は98,366百万円(同0.9%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益性が向上したものの、事業資産の効率化を目的とした横浜第一データセンターのクロージングに伴う減損損失や、ニューノーマル時代におけるオフィス戦略の一環として当社及び一部の子会社でオフィスの再整備を行ったことに伴いオフィス再編費用を計上したことにより、営業利益は80,748百万円(同5.7%減)、営業利益率は14.7%(同1.5ポイント減)となりました。なお、EBITDAマージンは23.6%(同0.2ポイント減)となりました。税引前利益は71,075百万円(同16.9%減)となりましたが、信託型従業員持株インセンティブ・プランの切替による税効果があり、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,867百万円(同9.2%減)となりました。
※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。
※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提として設計された情報システムやサービス。
② 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月 1日 至 2021年3月31日) | 前年度比 | ||
増減額 | 増減率 | |||
営業活動によるキャッシュ・フロー | 112,838 | 84,594 | △28,244 | △25.0% |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 18,382 | △20,522 | △38,905 | - |
フリー・キャッシュ・フロー | 131,221 | 64,071 | △67,150 | △51.2% |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △149,908 | △13,183 | 136,725 | 91.2% |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | △22,421 | 52,408 | 74,830 | - |
現金及び現金同等物の期末残高 | 100,778 | 153,187 | 52,408 | 52.0% |
当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から52,408百万円増加し153,187百万円となりました。
当年度において、営業活動により得られた資金は84,594百万円となり、前年度と比べ28,244百万円少なくなりました。法人所得税の支払額が増加し、営業債権及びその他の債権の増加額が大きくなりました。
投資活動による支出は20,522百万円(前年度は18,382百万円の収入)となりました。前年度は、投資の売却による収入がありました。当年度の主な投資内容は、共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得でした。
財務活動による支出は13,183百万円となり、前年度と比べ136,725百万円少なくなりました。前年度は、自己株式の公開買付けによる取得159,999百万円を実施しました。当年度に、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるためのコマーシャル・ペーパーの発行による収入4,978百万円及び社債の発行による収入14,946百万円がありました。
また、㈱だいこう証券ビジネスの株式等を取得したことにより、非支配持分からの子会社持分取得による支出11,324百万円がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
コンサルティング | 19,324 | △6.4 |
金融ITソリューション | 214,233 | 6.6 |
産業ITソリューション | 139,072 | 7.5 |
IT基盤サービス | 93,169 | 2.8 |
小 計 | 465,800 | 5.5 |
調整額 | △111,765 | 5.0 |
計 | 354,035 | 5.6 |
(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。
2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年度比 (%) | |||
金額 (百万円) | 割合 (%) | 金額 (百万円) | 割合 (%) | ||
外注実績 | 161,353 | 48.1 | 171,560 | 48.5 | 6.3 |
うち、中国企業への外注実績 | 28,514 | 17.7 | 30,460 | 17.8 | 6.8 |
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高 | 受注残高 | ||
金額 (百万円) | 前年度比 (%) | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) | |
コンサルティング | 39,957 | 1.5 | 7,050 | 62.5 |
金融ITソリューション | 307,715 | 8.3 | 184,968 | 11.8 |
産業ITソリューション | 189,587 | 7.2 | 102,484 | 3.6 |
IT基盤サービス | 37,083 | △8.8 | 15,281 | △10.3 |
計 | 574,343 | 6.2 | 309,785 | 8.4 |
(注)1. 金額は販売価格によっています。
2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。
③ 販売実績
a. セグメント別販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
コンサルティング | 37,246 | △3.4 |
金融ITソリューション | 288,196 | 5.3 |
産業ITソリューション | 186,051 | 4.2 |
IT基盤サービス | 38,843 | 2.0 |
計 | 550,337 | 4.1 |
b. 主な相手先別販売実績
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上収益及び当該売上収益の連結売上収益に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年度比 (%) | |||
金額 (百万円) | 割合 (%) | 金額 (百万円) | 割合 (%) | ||
野村ホールディングス㈱ | 65,049 | 12.3 | 66,309 | 12.0 | 1.9 |
(注) 相手先別の売上収益には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。
c. サービス別販売実績
当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
サービスの名称 | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
コンサルティングサービス | 90,056 | △7.0 |
開発・製品販売 | 183,847 | 13.7 |
運用サービス | 258,656 | 2.7 |
商品販売 | 17,777 | △3.4 |
計 | 550,337 | 4.1 |
(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。その作成にあたり、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。これらの見積りや仮定は、過去の実績や現在の状況などを勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。
なお、当社の連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要な会計方針 4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。
② 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ① 連結経営成績の状況」に記載のとおり、当年度の当社グループの売上収益は550,337百万円(前年度比4.1%増)となりました。
当年度は、サステナブルな退職給付制度の確立に向け制度を見直した結果、退職給付制度改定益928百万円を計上しました。一方で、事業資産の効率化を目的とした横浜第一データセンターのクロージングに伴う減損損失2,220百万円や、ニューノーマル時代におけるオフィス戦略の一環として当社及び一部の子会社でオフィスの再整備を行ったことに伴いオフィス再編費用4,439百万円を計上しました。この結果、営業利益は80,748百万円(同5.7%減)となり、営業利益率は14.7%(同1.5ポイント減)となりました。
金融費用は、信託型従業員持ち株インセンティブ・プラン関連費用を計上したことなどにより、11,514百万円
(同435.2%増)となり、税効果会計適用後の法人所得税費用は、18,497百万円(同29.9%減)となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は52,867百万円(同9.2%減)となりました。
法人所得税費用の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13. 法人所得税」をご覧ください。
b. 財政状態
(単位:百万円)
前連結会計年度 (2020年3月31日) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) | 前年度末比 | ||
増減額 | 増減率 | |||
流動資産 | 259,187 | 323,366 | 64,178 | 24.8% |
非流動資産 | 306,042 | 333,170 | 27,127 | 8.9% |
資産合計 | 565,229 | 656,536 | 91,306 | 16.2% |
流動負債 | 156,179 | 174,348 | 18,168 | 11.6% |
非流動負債 | 144,322 | 148,981 | 4,659 | 3.2% |
資本合計 | 264,727 | 333,206 | 68,479 | 25.9% |
親会社の所有者に帰属する持分 | 249,424 | 330,495 | 81,070 | 32.5% |
親会社所有者帰属持分比率 | 44.1% | 50.3% | 6.2P | - |
有利子負債 | 151,395 | 166,704 | 15,308 | 10.1% |
グロスD/Eレシオ(倍) | 0.61 | 0.50 | △0.10 | - |
ネットD/Eレシオ(倍) | 0.20 | 0.04 | △0.16 | - |
(注)1. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分
2. ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ(正味負債資本倍率)):(有利子負債-現預金)÷親会社の所有者に帰属する持分
3. 有利子負債:社債及び借入金+リース負債+その他有利子負債(信用取引借入金及び有価証券担保借入金)
信用取引借入金(前連結会計年度末335百万円、当連結会計年度末503百万円)は、連結財政状態計算書上の営業債務及びその他の債務に、有価証券担保借入金(前連結会計年度末1,297百万円、当連結会計年度末606百万円)は、連結財政状態計算書上のその他の流動負債に含めています。
当年度末における当社グループの財政状態は、流動資産323,366百万円(前年度末比24.8%増)、非流動資産
333,170百万円(同8.9%増)、流動負債174,348百万円(同11.6%増)、非流動負債148,981百万円(同3.2%増)、資本合計333,206百万円(同25.9%増)となり、資産合計は656,536百万円(同16.2%増)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.50倍、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は、0.04倍となっています。
前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。
当年度は3月に完了した案件が多かったことから、営業債権及びその他の債権は8,919百万円増加し106,324百万円、契約資産は2,925百万円増加し42,921百万円となりました。
制度資産の増加等により退職給付に係る資産が26,750百万円増加し81,927百万円となりました。
社債及び借入金は、社債を新たに15,000百万円(第7回無担保社債10,000百万円及び第8回期限前償還条項付無担保社債(サステナビリティ・リンク・ボンド)5,000百万円)を発行したこと及び新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるためコマーシャル・ペーパーを発行したことにより14,486百万円増加し117,495百万円となりました。
シンジケートローン10,000百万円が返済まで1年内となり、固定負債から流動負債に振り替えたことなどにより、1年内返済予定の長期借入金は10,431百万円増加し15,565百万円、長期借入金は13,441百万円減少し4,435百万円となりました。また、2021年3月に再導入した信託型従業員持株インセンティブ・プランに伴い、信託型従業員持株インセンティブ・プランに係る負債が11,198百万円増加し12,840百万円となりました。
自己株式は、自己株式の消却(30,787千株、45,688百万円)等により51,600百万円減少し、15,027百万円となりました。
非支配持分は、㈱だいこう証券ビジネスの株式等を追加取得したことなどにより、12,591百万円減少し2,711百万円となりました。
このほか、現金及び現金同等物が52,408百万円増加の153,187百万円、営業債務及びその他の債務が3,296百万円増加の37,358百万円、未払法人所得税が10,959百万円減少の8,939百万円となりました。
c. キャッシュ・フローの状況
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
d. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。
情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、情報サービス産業は厳しい競争の環境下にあります。あわせて、新しい技術が次々と登場する中で、企業のITに対する期待が変化してきています。コーポレートITは、品質を重視しながらも可能な限りコスト削減を目指し、パッケージ製品やクラウドサービス、ユーティリティ・サービスを利用することが一般化し、ビジネスITは、新たなデジタル技術を活用しながら事業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みが拡大しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、様々な業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。
品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
e. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及び協力会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。
当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、社債や借入れによる負債を一定以上活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、ネットD/Eレシオ(ネットデット・エクイティ・レシオ)は0.1倍前後を基本とし、0.3倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は166,704百万円(前年度末比10.1%増)、現金及び現金同等物の残高は153,187百万円(同52.0%増)、グロスD/Eレシオは0.50倍、ネットD/Eレシオは0.04倍となっています。
また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるため、当年度にコマーシャル・ペーパーを発行しています。
f. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。
当年度におけるこれらの指標は、営業利益は80,748百万円(前年度比5.7%減)、EBITDAマージンは23.6%(同0.2ポイント減)、ROEは18.2%(同0.1ポイント減)、EPSは88円34銭(同3円52銭減)となりました。
当社グループは、2022年度を最終年度とする8ヵ年の長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)を策定しています。「Vision2022」は、当社の既存の強みである業界標準ビジネスプラットフォームなどの強化、グローバル化の飛躍的拡大、ビジネスIT領域での新たな価値創造など、成長戦略の5つの柱と数値目標で構成されています。
当社は、長期経営ビジョン「Vision2022」の実現に向け、2019年4月に「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」(※1)という。)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)は次のとおりです。
中期経営計画2022(2019年度~2022年度)
(単位:百万円)
指標 | 実績 | 中期経営計画2022 | |
2020年度 | 2022年度(目標) | ||
売上収益 | 550,337 | 670,000以上 | |
営業利益 | 80,748 | 100,000 | |
営業利益率 | 14.7% | 14%以上 | |
海外売上収益 | 43,625 | 100,000 | |
EBITDAマージン | 23.6% | 20%以上 | |
ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率) | 18.2% | (※)14% |
※ 昨年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度のROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率を維持していきます。
g. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績(売上収益には内部売上収益を含む。)は次のとおりです。
(単位:百万円) | |||||
前連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月 1日 至 2021年3月31日) | 前年度比 | |||
増減額 | 増減率 | ||||
コンサルティング | 売上収益 | 39,612 | 38,155 | △1,457 | △3.7% |
営業利益 | 9,494 | 10,059 | 565 | 6.0% | |
営業利益率 | 24.0% | 26.4% | 2.4P | - | |
金融ITソリューション | 売上収益 | 276,937 | 292,038 | 15,101 | 5.5% |
営業利益 | 34,170 | 36,275 | 2,105 | 6.2% | |
営業利益率 | 12.3% | 12.4% | 0.1P | - | |
産業ITソリューション | 売上収益 | 181,438 | 189,551 | 8,113 | 4.5% |
営業利益 | 22,055 | 19,482 | △2,573 | △11.7% | |
営業利益率 | 12.2% | 10.3% | △1.9P | - | |
IT基盤サービス | 売上収益 | 138,680 | 142,686 | 4,006 | 2.9% |
営業利益 | 19,450 | 19,785 | 335 | 1.7% | |
営業利益率 | 14.0% | 13.9% | △0.2P | - | |
調整額 | 売上収益 | △107,946 | △112,094 | △4,148 | - |
営業利益 | 454 | △4,855 | △5,309 | - | |
計 | 売上収益 | 528,721 | 550,337 | 21,616 | 4.1% |
営業利益 | 85,625 | 80,748 | △4,877 | △5.7% | |
営業利益率 | 16.2% | 14.7% | △1.5P | - |
(コンサルティング)
当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い顧客の経営環境が急速に変化している中、顧客のDXによる企業変革が加速しており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスが期待されています。
当社グループは、顧客のDXを支援するDXコンサルティングを強化し、顧客ニーズへの的確な対応に努めるとともに、グローバル領域においては、欧米等の先進国におけるDX関連の知的資産を探索し、国内外拠点の連携を通じた提案力の強化に努めました。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大は、未来社会を大きく変える可能性のある環境変化であることから、当社グループの総力を挙げて、新型コロナウイルス対策緊急提言を行いました。
当年度の売上収益は、グローバル関連のコンサルティング案件が減少し38,155百万円(前年度比3.7%減)となりました。営業利益は、ニューノーマルにおける新たなワークスタイルが浸透したことに伴い生産性が向上し、10,059百万円(同6.0%増)となりました。
(金融ITソリューション)
当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションを提供しています。
社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの開発、デジタルバンキング事業などのDXビジネスの創出と展開、金融グローバル事業の拡大及び既存事業の高度化・大型化を進め、顧客基盤の拡大に努めました。
金融ビジネスプラットフォームの更なる進化を目的として、当第2四半期に、㈱だいこう証券ビジネスを当社の完全子会社としました。
当年度の売上収益は、証券業向け開発・製品販売の増加や、日本証券テクノロジー㈱の寄与もあり、292,038百万円(前年度比5.5%増)となりました。前年度にあった利益率の高い大型の製品販売の反動や当第1四半期に一部の子会社において不採算案件が発生したものの、足元の受注環境は良好に推移しており、相場活況による共同利用型サービスの利用料の増加やBPОサービスが好調で、営業利益は36,275百万円(同6.2%増)となりました。
(産業ITソリューション)
当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションを提供しています。
産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により景気減退に伴うITコスト削減のニーズがあるものの、コロナ禍におけるパラダイムシフトを契機とした顧客のDXによる企業変革が加速しており、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みを進めています。
当社グループは、顧客基盤の拡大に向け、産業分野に多くの顧客を持つコンサルティング部門と連携し、顧客のDX領域でのビジネスモデルの構築からシステム構築まで、コンサルティングとITソリューションが一体となり、総合的に支援しました。
当年度の売上収益は、流通業向け運用サービスが減少しましたが、製造・サービス業向け開発・製品販売が増加し、189,551百万円(前年度比4.5%増)となりました。新型コロナウイルス感染症の影響により海外子会社の採算性が悪化し、営業利益は19,482百万円(同11.7%減)となりました。
(IT基盤サービス)
当セグメントは、主に金融ITソリューションセグメント及び産業ITソリューションセグメントに対し、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。
DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、顧客のDXによる事業継続のニーズが加速しています。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※3)及びマネージドサービス(※4)の拡大や、IoT(モノのインターネット)領域でのセキュリティ事業の拡大に取り組んでいます。当第2四半期より、「Oracle Cloud」dedicated regionを世界で初めて採用し、自社データセンター内に専用パブリッククラウドを設置することで、自社統制下で運用するという新しい活用形態の取組みを始めました。
当年度の外部顧客に対する売上収益は、セキュリティ事業で増加し、内部売上収益はクラウドサービスやネットワークサービスなどが増加しました。
この結果、売上収益142,686百万円(前年度比2.9%増)、営業利益19,785百万円(同1.7%増)となりました。
※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。
※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するITサービス。
※3 デジタルワークプレイス事業:企業文化、IT、オフィス空間など物理的環境という3つの要素を組み合わせて、従業員の経験価値の向上を高めるソリューション。
(4) 並行開示情報
連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、次のとおりです。
なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。
① 要約連結貸借対照表(日本基準)
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (2020年3月31日) | 当連結会計年度 (2021年3月31日) | |
資産の部 | ||
流動資産 | 259,855 | 324,298 |
固定資産 | ||
有形固定資産 | 63,422 | 61,207 |
無形固定資産 | 85,118 | 87,691 |
投資その他の資産 | 124,755 | 156,902 |
固定資産合計 | 273,295 | 305,801 |
資産合計 | 533,151 | 630,100 |
負債の部 | ||
流動負債 | 140,456 | 154,458 |
固定負債 | 105,076 | 119,108 |
特別法上の準備金 | 464 | 230 |
負債合計 | 245,997 | 273,797 |
純資産の部 | ||
株主資本 | 272,517 | 329,377 |
その他の包括利益累計額 | △1,184 | 23,723 |
新株予約権 | 679 | 394 |
非支配株主持分 | 15,141 | 2,806 |
純資産合計 | 287,153 | 356,302 |
負債純資産合計 | 533,151 | 630,100 |
② 要約連結損益及び包括利益計算書(日本基準)
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月 1日 至 2021年3月31日) | |
売上高 | 528,873 | 550,490 |
売上原価 | 348,006 | 365,150 |
売上総利益 | 180,866 | 185,339 |
販売費及び一般管理費 | 97,688 | 98,837 |
営業利益 | 83,178 | 86,502 |
営業外収益 | 2,068 | 1,538 |
営業外費用 | 718 | 2,018 |
経常利益 | 84,528 | 86,022 |
特別利益 | 20,873 | 8,067 |
特別損失 | 2,905 | 5,403 |
税金等調整前当期純利益 | 102,496 | 88,686 |
法人税等合計 | 32,288 | 20,566 |
当期純利益 | 70,208 | 68,120 |
(内訳) | ||
親会社株主に帰属する当期純利益 | 69,276 | 68,120 |
非支配株主に帰属する当期純利益 | 931 | △0 |
その他の包括利益合計 | △26,447 | 25,199 |
包括利益 | 43,760 | 93,320 |
(内訳) | ||
親会社株主に係る包括利益 | 42,852 | 93,029 |
非支配株主に係る包括利益 | 908 | 291 |
③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
(単位:百万円) | |||||
株主資本 | その他の包括利益 累計額 | 新株予約権 | 非支配株主持分 | 純資産合計 | |
当期首残高 | 385,739 | 25,239 | 978 | 13,075 | 425,032 |
当期変動額合計 | △113,222 | △26,424 | △298 | 2,065 | △137,878 |
当期末残高 | 272,517 | △1,184 | 679 | 15,141 | 287,153 |
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(単位:百万円) | |||||
株主資本 | その他の包括利益 累計額 | 新株予約権 | 非支配株主持分 | 純資産合計 | |
当期首残高 | 272,517 | △1,184 | 679 | 15,141 | 287,153 |
当期変動額合計 | 56,860 | 24,908 | △285 | △12,335 | 69,148 |
当期末残高 | 329,377 | 23,723 | 394 | 2,806 | 356,302 |
④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
(単位:百万円) | ||
前連結会計年度 (自 2019年4月 1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月 1日 至 2021年3月31日) | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 102,787 | 73,931 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 18,382 | △20,518 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △139,857 | △2,525 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △3,734 | 1,520 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | △22,421 | 52,408 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 123,200 | 100,778 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 100,778 | 153,187 |
⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(収益認識に関する会計基準等の適用)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしました。
当該会計方針の変更による影響は軽微です。
(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりです。
前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 37. 初度適用」に記載のとおりです。
当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(のれんの償却)
日本基準では、のれんを個別案件ごとに判断し、20年以内の合理的な年数で定額法により償却していましたが、IFRSではのれんの償却は行わず、毎期減損テストを実施しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が3,058百万円減少しています。
(退職給付に係る費用)
日本基準では、数理計算上の差異を発生時にその他の包括利益で認識し、発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を、発生の翌年度から費用処理していましたが、IFRSでは発生時にその他の包括利益に認識し、直ちに利益剰余金に振替えています。また、日本基準では売上原価並びに販売費及び一般管理費で計上していた利息費用等を、IFRSでは金融収益又は金融費用で計上しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価並びに販売費及び一般管理費が2,694百万円増加し、金融収益が339百万円増加し、その他の包括利益が10,379百万円減少しています。
(リース)
日本基準では、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていました。IFRSでは、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がないため、基本的に全てのリース取引について、「使用権資産」及び「リース負債」を計上しています。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、「使用権資産」及び「リース負債」がそれぞれ43,581百万円及び48,098百万円増加しています。