訂正有価証券報告書-第55期(2019/04/01-2020/03/31)

【提出】
2023/02/13 14:13
【資料】
PDFをみる
【項目】
157項目
文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。
(1) 連結経営成績等の状況の概要
① 連結経営成績の状況
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2018年4月 1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月 1日
至 2020年3月31日)
前年度比
増減額増減率
売上高501,243528,87327,6295.5%
海外売上高53,08146,752△6,328△11.9%
海外売上高比率10.6%8.8%△1.7P-
営業利益71,44283,17811,73616.4%
営業利益(のれん償却前)75,37386,34310,97014.6%
営業利益率14.3%15.7%1.5P-
営業利益率(のれん償却前)15.0%16.3%1.3P-
EBITDAマージン21.7%22.2%0.5P-
経常利益72,40984,52812,11916.7%
親会社株主に帰属する
当期純利益
50,93169,27618,34436.0%
ROE(自己資本利益率)12.3%20.3%8.0P-

(注)1. 消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜き方式によっています。
2. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額+固定資産除却損)÷売上高
当年度の日本経済は、米国を起点とする貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題による世界経済への影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きが不透明な状況となりました。情報システム投資においては、ITを用いたビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要は緩やかに増加しましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、今後、企業の情報システム投資が鈍化する可能性があります。
このような環境の下、当社グループ(当社及び連結子会社をいう。以下同じ。)は、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。
当社グループは、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け、2019年4月に後半4か年の「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)を策定しました。「中期経営計画2022」では、2022年度の営業利益1,000億円、海外売上高1,000億円などの財務目標と、成長戦略と連動した非財務目標「持続的成長に向けた重要課題」に加えて、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)への取組みを「価値共創を通じた社会課題の解決」として新たに明示しました。これらの取組みを通じて、当社グループの持続的成長と持続可能な未来社会づくりを両立させる「サステナビリティ経営」を推進していきます。
「中期経営計画2022」では、その目標達成に向けて、当社グループの強みを発揮し、社会課題の解決を通じて事業の成長につながる(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の3つを成長戦略として位置付け、顧客との価値共創を目指します。
(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションの実装まで、テクノロジーを活用し、総合的に支援していきます。
ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援も行っていきます。
クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現していきます。
(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸とした事業基盤の拡大を進めます。豪州においてはマーケットシェアの拡大とM&Aを通じた成長を図るため、当年度に当社の豪州子会社を通じて豪州IT企業2社を子会社としました。M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。
(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しました。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現していきます。
なお、当社は、資本効率の向上、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として、自己株式の取得(101,910千株、159,999百万円)及び自己株式の消却(114,591千株、169,710百万円)を行いました。
当社グループの当年度の売上高は、金融ITソリューションを中心に前年度を上回り、528,873百万円(前年度比5.5%増)となりました。売上原価は348,006百万円(同3.4%増)、売上総利益は180,866百万円(同9.8%増)、販売費及び一般管理費は97,688百万円(同4.7%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益性が向上し、営業利益は83,178百万円(同16.4%増)、営業利益率は15.7%(同1.5ポイント増)、経常利益は84,528百万円(同16.7%増)となりました。なお、営業利益(のれん償却前)は86,343百万円(同14.6%増)、営業利益率(のれん償却前)は16.3%(同1.3ポイント増)、EBITDAマージンは22.2%(同0.5ポイント増)となりました。保有株式の売却に伴い投資有価証券売却益19,198百万円、子会社株式の売却に伴い関係会社株式売却益1,566百万円を計上した一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の米国子会社の収益力の悪化懸念から、固定資産及びのれんの減損損失2,383百万円を特別損失として計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は69,276百万円(同36.0%増)となりました。
※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。
※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提して設計された情報システムやサービス。
② 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2018年4月 1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月 1日
至 2020年3月31日)
前年度比
増減額増減率
営業活動によるキャッシュ・フロー56,349102,78746,43782.4%
投資活動によるキャッシュ・フロー△16,82618,38235,209-
フリー・キャッシュ・フロー39,523121,16981,646206.6%
財務活動によるキャッシュ・フロー△73,106△139,857△66,75191.3%
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△35,102△22,42112,680△36.1%
現金及び現金同等物の期末残高123,200100,778△22,421△18.2%

当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から22,421百万円減少し100,778百万円となりました。
当年度において、営業活動により得られた資金は102,787百万円となり、前年度と比べ46,437百万円多くなりました。法人税等の支払額が大きく減少し、売上債権の減少額が多くなりました。
投資活動による収入は18,382百万円(前年度は16,826百万円の支出)となりました。共同利用型システムの開発に伴う無形固定資産の取得などの投資を行ったことに加え、日本証券テクノロジー㈱の株式取得などにより、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出がありましたが、保有株式の一部売却や資金運用目的の有価証券及び、関係会社株式の売却による収入がありました。
財務活動による支出は139,857百万円となり、前年度と比べ66,751百万円多くなりました。自己株式の取得による支出が171,058百万円となり、前年度と比べ134,273百万円増加しました。前年度は、取締役会決議に基づく自己株式の取得を29,999百万円実施し、当年度は、NRIグループ社員持株会専用信託による信託型従業員持株インセンティブ・プランのための当社株式の取得10,865百万円や、自己株式の公開買付けによる取得159,999百万円を実施しました。また、長期借入れ(シンジケートローン)による収入10,000百万円及び社債40,000百万円(第5回普通社債25,000百万円及び第6回普通社債15,000百万円)の発行による収入がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度にセグメントの区分を一部変更しており、以下、前年度比較については、当該変更後の区分による前年度の数値を用いています。
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。
セグメントの名称金額
(百万円)
前年度比
(%)
コンサルティング20,54712.3
金融ITソリューション200,9764.8
産業ITソリューション130,240△1.6
IT基盤サービス91,6217.2
小 計443,3853.6
調整額△106,188-
337,1973.0

(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。
2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。
前連結会計年度当連結会計年度前年度比
(%)
金額
(百万円)
割合
(%)
金額
(百万円)
割合
(%)
外注実績150,63546.0161,30547.87.1
うち、中国企業への外注実績23,21315.428,51417.722.8

② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。
セグメントの名称受注高受注残高
金額
(百万円)
前年度比
(%)
金額
(百万円)
前年度比
(%)
コンサルティング39,35214.74,33921.9
金融ITソリューション284,0896.9165,4496.8
産業ITソリューション176,867△4.298,949△1.6
IT基盤サービス40,67121.517,04116.6
540,9804.4285,7794.4

(注)1. 金額は販売価格によっています。
2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。
③ 販売実績
a. セグメント別販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上高は次のとおりです。
セグメントの名称金額
(百万円)
前年度比
(%)
コンサルティング38,57210.7
金融ITソリューション273,5718.4
産業ITソリューション178,490△1.3
IT基盤サービス38,23915.3
528,8735.5

b. 主な相手先別販売実績
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上高及び当該売上高の連結売上高に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度当連結会計年度前年度比
(%)
金額
(百万円)
割合
(%)
金額
(百万円)
割合
(%)
野村ホールディングス㈱60,57912.165,04912.37.4
㈱セブン&アイ・ホールディングス49,1099.852,4349.96.8

(注) 相手先別の売上高には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。
c. サービス別販売実績
当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上高は次のとおりです。
サービスの名称金額
(百万円)
前年度比
(%)
コンサルティングサービス96,8626.7
開発・製品販売161,7037.5
運用サービス251,9083.1
商品販売18,39917.3
528,8735.5

(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されています。その作成には、資産、負債、収益及び費用の額に影響を与える仮定や見積りを必要とします。これらの仮定や見積りは、過去の実績や現在の状況等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」等に記載していますが、特に以下の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を与えると考えています。
a. 工事進行基準の適用について
当社グループは、受注制作のソフトウエア及びコンサルティングプロジェクトの売上高及び売上原価の認識方法について、原則として工事進行基準を適用しています。具体的には、売上原価を発生基準で計上し、原価進捗率(プロジェクトごとの見積総原価に対する実際発生原価の割合)に応じて売上高を計上しています。期末時点で未完成のプロジェクトに係る売上高に対応する債権を、連結貸借対照表上「開発等未収収益」として計上しています。
工事進行基準の採用に当たっては、売上高を認識する基となるプロジェクトごとの総原価及び進捗率が合理的に見積り可能であることが前提となります。当社グループでは、プロジェクト管理体制を整備し、受注時の見積りと受注後の進捗管理を適切に行うとともに、見積総原価に一定割合以上の変動があったときはその修正を速やかに行っており、売上高計上額には相応の精度を確保していると判断しています。
b. ソフトウエアの会計処理について
パッケージ製品の開発、共同利用型サービス及びアウトソーシングサービスで使用する情報システムの開発において、発生した外注費や労務費等を費用処理せず、当社グループの投資としてソフトウエア及びソフトウエア仮勘定に資産計上することがあります。その場合、完成した情報システムを顧客に販売又はサービスを提供することによって、中長期的に開発投資を回収しています。
その資金の回収形態に対応して、共同利用型システム等で使用するサービス提供目的の自社利用ソフトウエアについては、利用可能期間(原則5年)に基づく定額法により償却しています。これらの償却に加えて、事業環境が急変した場合等には、回収可能額を適切に見積もり、損失を計上することがあります。
c. 退職給付会計について
退職給付債務及び年金資産は、割引率、年金資産の長期期待運用収益率等の将来に関する一定の見積数値に基づいて算定されています。退職給付債務の計算に用いる割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しています。また、年金資産の長期期待運用収益率は、将来の収益に対する予測や過去の運用実績を考慮して決定しています。
見積数値と実績数値との差異や、見積数値の変更は、将来の退職給付債務及び退職給付費用に重要な影響を及ぼす可能性があります。
退職給付の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」をご覧ください。
d. 繰延税金資産について
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。将来の課税所得は過去の業績等に基づいて見積もっているため、税制改正や経営環境の変化等により課税所得の見積りが大きく変動した場合等には、繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。
繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご覧ください。
e. のれんの減損について
当社グループは、のれんについて、事業環境や将来の業績見通しの悪化等、減損の兆候が発生した場合に、減損の判定を行っています。公正価値の見積りについては、必要に応じて、外部専門家等による評価を活用しています。
公正価値の算定においては、将来の収益に対する予測や割引率など、多くの見積りを使用しているため、将来の予想不能な事業上の前提条件の変化によって公正価値が下落した場合には、減損損失が発生する可能性があります。
のれんの減損の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益及び包括利益計算書関係 ※5 減損損失)」をご覧ください。
f. 従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引について
当社は、従業員(連結子会社の従業員を含む。以下この項において同じ。)に対する中長期的な当社企業価値向上へのインセンティブ付与及び福利厚生の拡充等により当社の持続的成長を促すことを目的として、信託型従業員持株インセンティブ・プランを導入しています。
同プランは、NRIグループ社員持株会に加入する全ての従業員を対象に、当社株式の株価上昇メリットを還元するインセンティブ・プランであり、同プランを実施するため当社はNRIグループ社員持株会専用信託(以下この項において「持株会信託」という。)を設定しています。持株会信託は、信託の設定後4年間にわたりNRIグループ社員持株会が取得すると見込まれる規模の当社株式を、あらかじめ一括して取得し、NRIグループ社員持株会の株式取得に際して当該株式を売却していきます。株価が上昇し信託終了時に持株会信託内に利益がある場合には、従業員に金銭が分配されます。なお、当社は持株会信託が当社株式を取得するために行った借入れについて保証しており、信託終了時に借入債務が残っている場合には保証契約に基づき当社が弁済することになります。
会計処理については、期末における持株会信託の資産及び負債を当社の連結貸借対照表に計上し、持株会信託が保有する当社株式については、持株会信託の帳簿価額で純資産の部の自己株式に計上します。持株会信託における利益は、将来精算されることになる仮勘定として負債に計上します。持株会信託が損失となる場合は、将来精算されることになる仮勘定として資産に計上した上で、信託終了時に借入債務が残ることが見込まれるときは引当金を計上します。
② 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ① 連結経営成績の状況」に記載のとおり、当年度の当社グループの売上高は528,873百万円(前年度比5.5%増)、営業利益は83,178百万円(同16.4%増)となり、営業利益率は15.7%(同1.5ポイント増)となりました。
営業外収益は、為替相場が円安に推移し為替差損から為替差益に転じたことなどにより、2,068百万円
(同18.6%増)となりました。また、営業外費用は、自己株式取得費用が減少したことなどにより、718百万円
(同7.4%減)となりました。この結果、営業外損益は1,349百万円(同39.5%増)となり、経常利益は84,528百万円(同16.7%増)となりました。
特別損益は、保有株式の売却に伴い投資有価証券売却益19,198百万円(前年度は9,079百万円を計上)、子会社株式の売却に伴い関係会社株式売却益1,566百万円を計上した一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の米国子会社の収益力の悪化懸念から、固定資産及びのれんの減損損失2,383百万円を特別損失として計上しました。この結果、特別損益は17,968百万円(前年度比314.0%増)となりました。
税効果会計適用後の法人税等は、32,288百万円(同28.1%増)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は69,276百万円(同36.0%増)となりました。
法人税等の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご覧ください。
b. 財政状態
(単位:百万円)
前連結会計年度
(2019年3月31日)
当連結会計年度
(2020年3月31日)
前年度末比
増減額増減率
流動資産285,788259,855△25,932△9.1%
固定資産326,404273,295△53,108△16.3%
総資産612,192533,151△79,041△12.9%
流動負債124,264140,45616,19213.0%
固定負債62,419105,07642,65668.3%
純資産425,032287,153△137,878△32.4%
自己資本410,978271,332△139,646△34.0%
自己資本比率67.1%50.9%△16.2P-
有利子負債60,883107,41046,52676.4%
グロスD/Eレシオ(倍)0.150.400.25-

(注)1. 自己資本:純資産-非支配株主持分-新株予約権
2. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷自己資本
当年度末における当社グループの財政状態は、流動資産259,855百万円(前年度末比9.1%減)、固定資産
273,295百万円(同16.3%減)、流動負債140,456百万円(同13.0%増)、固定負債105,076百万円(同68.3%増)、純資産287,153百万円(同32.4%減)となり、総資産は533,151百万円(同12.9%減)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.40倍となっています。
前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。
当年度は3月に完了した案件が多かったことから、売掛金は2,467百万円増加し90,569百万円、開発等未収収益は4,014百万円減少し39,996百万円となりました。
投資有価証券は、保有株式の一部売却に加え、資金運用目的の有価証券の売却などにより51,691百万円減少し28,512百万円となりました。これにより、その他有価証券評価差額金は16,635百万円減少し10,517百万円、繰延税金負債は4,068百万円減少し1,860百万円となりました。
自己株式は、NRIグループ社員持株会専用信託による信託型従業員持株インセンティブ・プランのための当社株式の取得(2,119千株(2019年7月1日付株式分割(1:3)考慮後:6,358千株)、10,865百万円)や、自己株式の公開買付けによる取得(101,910千株、159,999百万円)により増加したものの、自己株式の消却(114,591千株、169,710百万円)により5,569百万円減少し、66,628百万円となりました。
自己株式の公開買付け資金は、手元資金の充当のほか、シンジケートローンにより10,000百万円、社債により40,000百万円(第5回普通社債25,000百万円及び第6回普通社債15,000百万円)を調達しました。これらにより、1年内返済予定の長期借入金は453百万円増加し5,133百万円、長期借入金は4,662百万円増加し17,876百万円、社債は39,379百万円増加し73,310百万円となりました。
このほか、現金及び預金が22,232百万円減少の102,540百万円、買掛金が2,085百万円減少の25,612百万円、未払法人税等が14,337百万円増加の20,772百万円となりました。
c. キャッシュ・フローの状況
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
d. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。
情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、情報サービス産業は厳しい競争の環境下にあります。あわせて、新しい技術が次々と登場する中で、企業のITに対する期待が変化してきています。コーポレートITは、品質を重視しながらも可能な限りコスト削減を目指し、パッケージ製品やクラウドサービス、ユーティリティ・サービスを利用することが一般化し、ビジネスITは、新たなデジタル技術を活用しながら事業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みが拡大しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、さまざまな業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。
品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
e. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及び協力会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。
当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、一定以上、社債や借入れによる負債を活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、グロスD/Eレシオ(グロスデット・エクイティ・レシオ)は0.1倍前後を基本とし、0.3倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は107,410百万円(前年度末比76.4%増)、現金及び現金同等物の残高は100,778百万円(同18.2%減)、グロスD/Eレシオは0.40倍となっています。
また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の悪化懸念に備えるため、2020年4月にコマーシャルペーパーを発行しています。
f. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、EPSの成長を通じた持続的な株主価値の向上に努めています。
当年度におけるこれらの指標は、営業利益は83,178百万円(前年度比16.4%増)、EBITDAマージンは22.2%(同0.5ポイント増)、ROEは20.3%(同8.0ポイント増)、EPSは109円35銭(同37円24銭増)となりました。
当社グループは、2022年度を最終年度とする8ヵ年の長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)を策定しています。「Vision2022」は、当社の既存の強みである業界標準ビジネスプラットフォームなどの強化、グローバル化の飛躍的拡大、ビジネスIT領域での新たな価値創造など、成長戦略の5つの柱と数値目標で構成されています。
また、2019年4月には、「Vision2022」の実現に向け、後半4か年の「NRIグループ中期経営計画
(2019年度~2022年度)(以下、「中期経営計画2022」という。)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)は次のとおりです。
中期経営計画2022(2019年度~2022年度)
(単位:百万円)
指標実績中期経営計画2022
2019年度2022年度(目標)
売上高528,873670,000以上
営業利益83,178100,000
営業利益率15.7%14%以上
海外売上高46,752100,000
EBITDAマージン22.2%20%以上
自己資本利益率(ROE)20.3%14%

※ 当年度に自己株式の取得及び消却を行ったことから、当年度の自己資本利益率(ROE)が目標を超える水準となりましたが、当社グループは、引き続き高い資本効率を維持していきます。
g. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績(売上高には内部売上高を含む。)は次のとおりです。
なお、当年度にセグメントの区分を一部変更しており、以下、前年度比較については、当該変更後の区分による前年度の数値を用いています。
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2018年4月 1日
至 2019年3月31日)
当連結会計年度
(自 2019年4月 1日
至 2020年3月31日)
前年度比
増減額増減率
コンサルティング売上高35,48139,6124,13011.6%
営業利益7,7869,5151,72922.2%
営業利益率21.9%24.0%2.1P-
金融ITソリューション売上高255,162276,93721,7758.5%
営業利益27,09535,0347,93829.3%
営業利益率10.6%12.7%2.0P-
産業ITソリューション売上高183,580181,438△2,142△1.2%
営業利益18,44919,7191,2706.9%
営業利益率10.0%10.9%0.8P-
IT基盤サービス売上高127,777138,83311,0558.7%
営業利益17,13018,4541,3237.7%
営業利益率13.4%13.3%△0.1P-
調整額売上高△100,757△107,946△7,189-
営業利益980454△525-
売上高501,243528,87327,6295.5%
営業利益71,44283,17811,73616.4%
営業利益率14.3%15.7%1.5P-

(コンサルティング)
当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。
顧客の経営環境の変化や競争の激化から、顧客のデジタル化、グローバル化への取組みや投資意欲が高まっており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスが期待されています。
当社グループは、顧客のDXを支援するDXコンサルティングの創出と拡大を通じて顧客基盤の拡大に努めるとともに、グローバル領域においては、当社グループが強みを持つアジアの顧客基盤の拡大に努めていきます。
当年度の売上高は、顧客のDXを支援するコンサルティングやシステムコンサルティングが増加し39,612百万円(前年度比11.6%増)となりました。営業利益は、良好な受注環境を背景に収益性が向上し、9,515百万円(同22.2%増)となりました。
(金融ITソリューション)
当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービスの提供、共同利用型システム等のITソリューションの提供を行っています。
社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの開発、デジタルバンキング事業などのDXビジネスの創出と拡大及び金融グローバル事業の拡大並びに既存事業の高度化・大型化を通じて、顧客基盤の拡大に努めていきます。事業拡大を支える生産活動においては、セグメント全体で生産革新による効率化や開発リソース管理の高度化を進めます。ビジネスモデルを変革するDX領域では、高度な技術を有する企業や顧客と合弁会社を設立するなど、協業を通じて、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みも進めていきます。また、金融インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、ITインフラの安定サービス運用に加え、顧客と共創し金融業界の発展に貢献することも目指します。
デジタルアセットの領域で金融ビジネスを創出することを目的に、野村ホールディングス㈱と合弁で、ブロックチェーン技術を活用した有価証券等の取引基盤の開発や提供を行う㈱BOOSTRYを設立し、当年度より持分法適用の範囲に含めています。
このほか、協業を通じた取り組みとして、㈱QUICKと共同出資により、金融情報に関連したシステムやサービスの開発を行う㈱Financial Digital Solutionsを設立し、子会社としました。同社は、新たに開発したシステムやサービスを通じて、金融機関の環境変化への対応に貢献していきます。また、みずほ証券㈱との協業を目的に、同社の連結子会社である日本証券テクノロジー㈱を子会社とし、金融ITソリューションセグメントの主要な関係会社としています。
当年度の売上高は、銀行業向け開発・製品販売や、証券業向けコンサルティングなど全てのサービスで増加し276,937百万円(前年度比8.5%増)となりました。良好な受注環境、生産活動に加え大型の製品販売の寄与もあり、収益性が向上し、営業利益は35,034百万円(同29.3%増)となりました。
(産業ITソリューション)
当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションの提供を行っています。
産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。ビジネスモデルを変革するDX領域では、高度な技術を有する企業や顧客と合弁会社を設立するなど、協業を通じて、デジタル技術を活用した新たなビジネスを創造する取組みを進めています。日本航空㈱との合弁会社JALデジタルエクスペリエンス㈱においては、当年度より多様な業界のパートナー企業と提携し、サービスを開始しました。
顧客基盤の拡大に向け、産業分野に多くの顧客を持つコンサルティング部門と連携し、顧客のDX領域でのビジネスモデルの構築からシステム構築まで、コンサルティングとITソリューションが一体となり、総合的に支援していきます。
当年度の売上高は、流通業向け開発・製品販売が増加しましたが、製造・サービス業向けコンサルティングが減少し、前年度と同水準の181,438百万円(前年度比1.2%減)となりました。国内子会社を中心に収益性が向上し、営業利益は19,719百万円(同6.9%増)となりました。
(IT基盤サービス)
当セグメントは、主に金融ITソリューションセグメント及び産業ITソリューションセグメントに対し、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。
DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、企業におけるITシステムのクラウド化の進展に伴い、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。
当社グループは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※1)やマネージドサービス(※2)の拡大や、IoT(モノのインターネット)領域でのセキュリティ事業の拡大に取り組んでいきます。
当年度の外部顧客に対する売上高は、デジタルワークプレイス事業(※3)やセキュリティ事業で増加し、内部売上高は、クラウドサービスやネットワークサービスなどが増加しました。
この結果、売上高138,833百万円(前年度比8.7%増)、営業利益18,454百万円(同7.7%増)となりました。
※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。
※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するITサービス。
※3 デジタルワークプレイス事業:企業文化、IT、オフィス空間など物理的環境という3つの要素を組み合わせて、従業員の経験価値の向上を高めるソリューション。