有価証券報告書-第58期(2022/04/01-2023/03/31)
文中の将来に関する記載は、当年度末現在において当社が判断したものであり、当社としてその実現を約束するものではありません。
(1) 連結経営成績等の状況の概要
① 連結経営成績の状況
(単位:百万円)
(注)1. 事業利益は、営業利益から一時的要因(のれん減損及び固定資産減損等)を除いたものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。
2. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+固定資産除却損±一時的要因)÷売上収益
当年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症対策や各種政策の効果により、経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直しました。情報システム投資については、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要が引き続き活況を呈しています。一方、世界的な金融引締め等が続く中で海外景気の下振れが国内景気に及ぼすリスクに加え、米国の銀行破綻を契機とした金融市場の混乱、急激な為替変動、物価の上昇やサプライチェーンの制約など先行き不透明な状況が続いています。また、今後の業績の変調によっては企業投資が絞られる可能性もあります。
このような環境の下、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。
当年度は、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け策定した「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)の最終年度となり、より一層の生産性向上と既存事業の拡大に取り組むとともに、中期経営計画2022の成長戦略である(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の実現を推進しました。
(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションまで、テクノロジーを活用し、総合的に支援しています。
ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援をしています。
クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現しています。
(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸としたIPの獲得も含めた事業基盤の拡大を進めています。
M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。
(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しています。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現しています。
当社グループの当年度の売上収益は、コンサルティングサービスを中心に全てのサービスで増加し、692,165百万円(前年度比13.2%増)となりました。売上原価は452,336百万円(同14.4%増)、売上総利益は239,829百万円(同11.0%増)、販売費及び一般管理費は131,580百万円(同15.9%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益が向上したことに加え、横浜野村ビルにおける信託受益権を売却したことに伴い固定資産売却益2,238百万円を計上し、営業利益は111,832百万円(同5.3%増)、営業利益率は16.2%(同1.2ポイント減)、EBITDAマージンは22.5%(同1.4ポイント減)となりました。
※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。
※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提として設計された情報システムやサービス。
<株式の売出し>当社は、当社株主2社による当社株式の売却意向を受け、当社株式の円滑な売却の機会を設定するため、2022年11月25日付の取締役会決議により株式の売出し及び第三者割当による自己株式の処分を決定しました。当社は、本売出しを通じて長期的な視点に立って当社の成長戦略に理解を示す株主層の拡大と、当社株式の市場流動性の向上を期待しています。本売出しは、2022年12月28日をもって全ての手続きが完了しました。なお、当年度において、株式の売出しに伴う第三者割当による自己株式の処分(5,545,200株、16,007百万円)を行いました。当社は、本売出し後も引き続き野村ホールディングス㈱の関連会社です。
<自己株式の取得>2022年11月25日付の取締役会決議により、本売出しに伴う株式需給への影響を緩和し、既存株主への影響を軽減する観点から、自己株式の取得を決定しました。取得する株式の総数は8,000,000株(上限)(2022年9月30日時点の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合1.35%)、株式の取得価額の総額は20,000百万円(上限)、取得期間は2022年12月23日から2023年3月31日までとし、取得の方法は自己株式取得に係る取引一任契約に基づく市場買付け(ただし、当社の各四半期決算発表日の翌営業日より10営業日の間は取得を行わない。)とし、当年度において、自己株式の取得(6,501,900株、19,999百万円)を行いました。
<自己株式の消却>2023年3月10日開催の取締役会決議により、当社普通株式17,700,958株(消却前の発行済株式総数に対する割合 2.90%)を消却することを決議し、2023年3月31日に手続きが完了しました。
② 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から13,646百万円増加し129,257百万円となりました。
営業活動による収入は、営業債権及びその他の債権が減少したこと等により、前年度と比べ20,761百万円増加し、118,899百万円となりました。
投資活動による支出は61,190百万円となり、前年度と比べ69,357百万円小さくなりました。前年度は、米国のConvergence Technologies, Inc.、豪州のSQA Holdco Pty Ltd及びAustralian Investment Exchange Limitedの株式取得により、子会社の取得による支出75,105百万円がありました。当年度の主な投資内容は、共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得でした。
財務活動による支出は44,921百万円となり、前年度と比べ、36,925百万円大きくなりました。前年度は、M&A及び自己株式取得の原資として借入れを実施したことで、短期借入金の純増減額(収入)53,425百万円がありました。また、取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出59,999百万円がありました。当年度は、米国のConvergence Technologies, Inc.のM&A原資として前年度に借入れた資金の借換えを実施したこと等による短期借入金の純増減額(支出)65,048百万円及び長期借入れによる収入59,755百万円がありました。第9回、第10回及び第11回無担保社債の発行による収入64,807百万円及び第5回無担保社債の償還による支出25,000百万円がありました。また、取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出19,999百万円及び自己株式の処分に伴う自己株式の売却による収入22,722百万円がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。
(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。
2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。
(注)1. 金額は販売価格によっています。
2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。
3. 受注高は、従前は期首受注残高より生じる為替変動影響を含んでいましたが、当該影響を含めない方法に変更しています。なお、前年同期比は、遡及修正後の数値に基づき計算しています。
③ 販売実績
a. セグメント別販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
b. 主な相手先別販売実績
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上収益及び当該売上収益の連結売上収益に対する割合は次のとおりです。
(注) 相手先別の売上収益には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。
c. サービス別販売実績
当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、持続的な株主価値の向上に努めています。
当年度におけるこれらの指標は、営業利益は111,832百万円(前年度比5.3%増)、EBITDAマージンは22.5%(同1.4ポイント減)、ROEは20.7%(同0.6ポイント減)となりました。
当社グループは、長期経営ビジョンVision2022の実現に向け、2019年4月に中期経営計画2022(※1)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)及び進捗状況は次のとおりです。
中期経営計画2022(2020年3月期~2023年3月期)
(単位:百万円)
※1 中期経営計画2022の詳細については、当社が2019年4月25日付で公表した「『NRIグループ中期経営計画(2019-2022)』説明会資料」をご参照下さい。
また、長期経営ビジョンV2030の実現に向け、2023年4月に中計2025(※1)を策定しました。中計2025における主な財務数値目標(連結)は次のとおりです。
中計2025(2024年3月期~2026年3月期)
(単位:百万円)
※1 中計2025の詳細については、当社が2023年4月27日付で公表した「NRIグループ中期経営計画(2023-2025)を策定」(適時開示資料)及び「1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営戦略」をご参照下さい。
※2 2026年3月期(目標)は、M&Aを含んでいません。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。
情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、IT産業は厳しい競争の環境下にあります。また、デジタルを活用してビジネスモデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、様々な業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。
品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
c. 経営成績
当年度の連結経営成績は、「(1)連結経営成績等の状況の概要 ①連結経営成績の状況」をご覧ください。
当年度のセグメントごとの経営成績(売上収益には内部売上収益を含む。)は、次のとおりです。
(コンサルティング)
当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。
コロナ禍をうけて顧客の経営環境が急速に変化している中、デジタル技術を活用した企業変革が加速しています。また、脱炭素等の社会課題の解決を経営戦略に取り入れる企業が増加しており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスによる社会課題解決が期待されています。
当セグメントは、顧客のDXを支援するコンサルティングを強化し、顧客ニーズへの的確な対応に努めるとともに、グローバル領域においては、これまでの顧客基盤を維持強化しながら欧米等の先進国におけるサービス拡大に努めました。また、脱炭素等の社会課題の解決を起点にした新たなコンサルティングサービスの創出に向けた取組みを行いました。
当年度の売上収益は、前年度に引き続きDX関連や社会課題案件のコンサルティングが好調に推移し、47,821百万円(前年度比7.7%増)となりました。営業利益は、国内のDX関連や社会課題案件が活況であったものの、海外の収益性悪化により、12,329百万円(同3.8%減)となりました。
(金融ITソリューション)
当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションやBPОサービスを提供しています。
社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。また、顧客におけるデジタル化やビジネスモデル変革のニーズも急速に高まっています。
当セグメントは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの創出と拡大、マイナンバー等のデジタルガバメント政策に資する新たなDXビジネスの推進、金融グローバル事業の安定稼働と事業拡大に努めました。
当年度の売上収益は、証券業向け開発・製品販売及び運用サービス、銀行業向け開発・製品販売が増加し、334,141百万円(前年度比8.4%増)となりました。営業利益は、海外の収益性悪化があったものの、良好な受注環境や生産活動等により収益性が向上し、49,710百万円(同13.3%増)となりました。
(産業ITソリューション)
当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションを提供しています。
産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、コロナ禍を経てデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。
当セグメントは、DXビジネスの領域で顧客や業界を問わず活用可能なデジタルIPの開発に注力し、顧客のビジネスモデルの創出からシステム構築や運用の高度化まで総合的に支援しました。また、グローバル事業では、豪州は買収子会社間の連携強化・機能統合により、北米は買収子会社を中核としたオーガニック成長に加え、地域拡大・ケイパビリティ強化に資するM&Aにより、さらなる事業拡大と持続的な価値向上を目指しています。
当年度に、ASG Group Limitedのブランドを“NRI”に統合し、社名を「NRI Australia Limited」に変更しました。この度の社名変更により、豪州IT市場におけるNRIブランドの浸透を促進するとともに、豪州内の各事業会社がNRIというブランドのもと一体となり、より一層、事業連携、融合を進め、NRIグループのグローバル事業の柱として着実に成長することを目指します。
当年度の売上収益は、豪州事業の成長や前年度に買収した北米子会社の連結影響が寄与し、276,031百万円(前年度比20.1%増)となりました。営業利益は、豪州事業で収益改善がみられたものの、海外子会社の連結に伴い識別した無形資産の償却費影響等により、24,429百万円(同4.0%減)となりました。
(IT基盤サービス)
当セグメントは、主に金融ITソリューション部門及び産業ITソリューション部門を通じて、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。
DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。また、近年ではサイバー攻撃が多様化・進化しており、顧客のDXの要となるクラウドサービスの導入・活用を安全安心に実施するために、サイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。
当セグメントは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※1)及びマネージドサービス(※2)の拡大、ゼロトラスト(※3)事業やマネージドセキュリティサービス(※4)の推進に取り組みました。
当年度の外部顧客に対する売上収益は、オフィスの生産性向上に貢献するDWP(デジタルワークプレイス)事業やセキュリティ事業で増加し、内部売上収益はDWP事業が増加しました。この結果、売上収益169,840百万円(前年度比7.8%増)、営業利益23,346百万円(同11.4%増)となりました。
※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。
※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するサービス。
※3 ゼロトラスト:ネットワークの内部と外部を区別することなく、守るべき情報資産やシステムにアクセスするものは全て検証するというセキュリティの新たな考え方。
※4 マネージドセキュリティサービス(MSS):企業や組織の情報セキュリティシステムの運用管理を、社外のセキュリティ専門企業などがトータルに請け負うサービス。
d. 財政状態
(単位:百万円)
(注)1. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分
2. ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ(正味負債資本倍率)):(有利子負債-現金及び現金同等物等)÷親会社の所有者に帰属する持分
3. 有利子負債:社債及び借入金+その他有利子負債(信用取引借入金及び有価証券担保借入金)
信用取引借入金(前連結会計年度末608百万円、当連結会計年度末1,284百万円)は、連結財政状態計算書上の営業債務及びその他の債務に、有価証券担保借入金(前連結会計年度末802百万円、当連結会計年度末1,578百万円)は、連結財政状態計算書上のその他の流動負債に含めています。
4. 現金及び現金同等物等:現金及び現金同等物+資金運用目的投資
当年度末において、流動資産349,102百万円(前年度末比4.6%増)、非流動資産489,122百万円(同7.3%増)、流動負債198,247百万円(同33.6%減)、非流動負債237,570百万円(同59.6%増)、資本合計402,406百万円(同17.5%増)となり、資産合計は838,224百万円(同6.2%増)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.52倍、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は、0.19倍となっています。
前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。
営業債権及びその他の債権は4,086百万円減少し131,592百万円、契約資産は5,314百万円増加し55,980百万円となりました。
のれん及び無形資産は、国内における共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得等により、26,539百万円増加し237,283百万円となりました。
社債及び借入金は、第9回、第10回及び第11回無担保社債を発行した一方、第5回無担保社債を償還したこと等により、5,254百万円減少し202,961百万円となりました。
このほか、現金及び現金同等物が13,646百万円増加の129,257百万円、営業債務及びその他の債務が1,880百万円増加の55,681百万円、未払法人所得税が7,554百万円減少の13,093百万円となりました。
e. キャッシュ・フローの状況
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
f. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及びパートナー会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。
当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、社債や借入れによる負債を一定以上活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、ネットD/Eレシオ(ネットデット・エクイティ・レシオ)は0.5倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は205,823百万円(前年度末比1.8%減)、現金及び現金同等物等の残高は131,235百万円(同11.8%増)、グロスD/Eレシオは0.52倍、ネットD/Eレシオは0.19倍となっています。
また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。その作成にあたり、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。これらの見積りや仮定は、過去の実績や現在の状況などを勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。
なお、当社の連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。
(1) 連結経営成績等の状況の概要
① 連結経営成績の状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2021年4月 1日 至 2022年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) | 前年度比 | ||
増減額 | 増減率 | |||
売上収益 | 611,634 | 692,165 | 80,531 | 13.2% |
海外売上収益 | 76,519 | 123,207 | 46,687 | 61.0% |
海外売上収益比率 | 12.5% | 17.8% | 5.3P | - |
事業利益 | 102,881 | 110,032 | 7,150 | 7.0% |
営業利益 | 106,218 | 111,832 | 5,613 | 5.3% |
営業利益率 | 17.4% | 16.2% | △1.2P | - |
EBITDAマージン | 23.9% | 22.5% | △1.4P | - |
税引前利益 | 104,671 | 108,499 | 3,827 | 3.7% |
親会社の所有者に帰属する 当期利益 | 71,445 | 76,307 | 4,861 | 6.8% |
ROE (親会社所有者帰属持分当期利益率) | 21.3% | 20.7% | △0.6P | - |
(注)1. 事業利益は、営業利益から一時的要因(のれん減損及び固定資産減損等)を除いたものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。
2. EBITDAマージン=EBITDA(営業利益+減価償却費+固定資産除却損±一時的要因)÷売上収益
当年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症対策や各種政策の効果により、経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに持ち直しました。情報システム投資については、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に企業の投資需要が引き続き活況を呈しています。一方、世界的な金融引締め等が続く中で海外景気の下振れが国内景気に及ぼすリスクに加え、米国の銀行破綻を契機とした金融市場の混乱、急激な為替変動、物価の上昇やサプライチェーンの制約など先行き不透明な状況が続いています。また、今後の業績の変調によっては企業投資が絞られる可能性もあります。
このような環境の下、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用まで一貫して提供できる総合力をもって事業活動に取り組みました。
当年度は、長期経営ビジョン「Vision2022」(2015年度~2022年度)の実現に向け策定した「NRIグループ中期経営計画(2019年度~2022年度)」(以下「中期経営計画2022」という。)の最終年度となり、より一層の生産性向上と既存事業の拡大に取り組むとともに、中期経営計画2022の成長戦略である(1)DX戦略、(2)グローバル戦略、(3)人材・リソース戦略の実現を推進しました。
(1) DX戦略:当社グループは、顧客のビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革に対して、戦略策定からソリューションまで、テクノロジーを活用し、総合的に支援しています。
ビジネスプラットフォーム戦略においては、金融分野を中心に共同利用型サービスの拡大をさらに進めるとともに、業界構造の変化に合わせて異業種から金融業へ参入する顧客に向けては、新たなビジネスプラットフォームを提供することで、顧客の新事業創出や新市場進出の支援をしています。
クラウド戦略においては、顧客のレガシーシステムのモダナイゼーション(※1)やクラウドネイティブ(※2)のアプリケーション開発などを通じて、顧客のビジネスのアジリティ(機敏性)を高め、ITコストの最適化を実現しています。
(2) グローバル戦略:当社グループは、豪州と北米を主たる注力地域とし、M&Aなどによる外部成長を軸としたIPの獲得も含めた事業基盤の拡大を進めています。
M&Aにより取得した子会社については、さらなるシナジーの創出に向け、グローバル本社機構を中心に、経営管理制度や業務管理体制の構築など買収後の経営統合プロセスを進めています。
(3) 人材・リソース戦略:当社グループは、顧客のビジネスを成功に導くために、デジタル時代を支える人材の採用と育成を強化しています。また、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うとともに多様な働き方を推進し、当社グループらしい働き方改革を実現しています。
当社グループの当年度の売上収益は、コンサルティングサービスを中心に全てのサービスで増加し、692,165百万円(前年度比13.2%増)となりました。売上原価は452,336百万円(同14.4%増)、売上総利益は239,829百万円(同11.0%増)、販売費及び一般管理費は131,580百万円(同15.9%増)となりました。良好な受注環境、生産活動を背景に収益が向上したことに加え、横浜野村ビルにおける信託受益権を売却したことに伴い固定資産売却益2,238百万円を計上し、営業利益は111,832百万円(同5.3%増)、営業利益率は16.2%(同1.2ポイント減)、EBITDAマージンは22.5%(同1.4ポイント減)となりました。
※1 レガシーシステムのモダナイゼーション:老朽化した基幹システムなどのソフトウエアやハードウエアのシステム基盤やアプリケーションを最適化、近代化を行う手法。
※2 クラウドネイティブ:クラウド上での利用を前提として設計された情報システムやサービス。
<株式の売出し>当社は、当社株主2社による当社株式の売却意向を受け、当社株式の円滑な売却の機会を設定するため、2022年11月25日付の取締役会決議により株式の売出し及び第三者割当による自己株式の処分を決定しました。当社は、本売出しを通じて長期的な視点に立って当社の成長戦略に理解を示す株主層の拡大と、当社株式の市場流動性の向上を期待しています。本売出しは、2022年12月28日をもって全ての手続きが完了しました。なお、当年度において、株式の売出しに伴う第三者割当による自己株式の処分(5,545,200株、16,007百万円)を行いました。当社は、本売出し後も引き続き野村ホールディングス㈱の関連会社です。
<自己株式の取得>2022年11月25日付の取締役会決議により、本売出しに伴う株式需給への影響を緩和し、既存株主への影響を軽減する観点から、自己株式の取得を決定しました。取得する株式の総数は8,000,000株(上限)(2022年9月30日時点の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合1.35%)、株式の取得価額の総額は20,000百万円(上限)、取得期間は2022年12月23日から2023年3月31日までとし、取得の方法は自己株式取得に係る取引一任契約に基づく市場買付け(ただし、当社の各四半期決算発表日の翌営業日より10営業日の間は取得を行わない。)とし、当年度において、自己株式の取得(6,501,900株、19,999百万円)を行いました。
<自己株式の消却>2023年3月10日開催の取締役会決議により、当社普通株式17,700,958株(消却前の発行済株式総数に対する割合 2.90%)を消却することを決議し、2023年3月31日に手続きが完了しました。
② 連結キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2021年4月 1日 至 2022年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) | 前年度比 | ||
増減額 | 増減率 | |||
営業活動によるキャッシュ・フロー | 98,137 | 118,899 | 20,761 | 21.2% |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △130,547 | △61,190 | 69,357 | △53.1% |
フリー・キャッシュ・フロー | △32,410 | 57,709 | 90,119 | - |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △7,995 | △44,921 | △36,925 | 461.8% |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | △37,576 | 13,646 | 51,223 | - |
現金及び現金同等物の期末残高 | 115,610 | 129,257 | 13,646 | 11.8% |
当年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から13,646百万円増加し129,257百万円となりました。
営業活動による収入は、営業債権及びその他の債権が減少したこと等により、前年度と比べ20,761百万円増加し、118,899百万円となりました。
投資活動による支出は61,190百万円となり、前年度と比べ69,357百万円小さくなりました。前年度は、米国のConvergence Technologies, Inc.、豪州のSQA Holdco Pty Ltd及びAustralian Investment Exchange Limitedの株式取得により、子会社の取得による支出75,105百万円がありました。当年度の主な投資内容は、共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得でした。
財務活動による支出は44,921百万円となり、前年度と比べ、36,925百万円大きくなりました。前年度は、M&A及び自己株式取得の原資として借入れを実施したことで、短期借入金の純増減額(収入)53,425百万円がありました。また、取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出59,999百万円がありました。当年度は、米国のConvergence Technologies, Inc.のM&A原資として前年度に借入れた資金の借換えを実施したこと等による短期借入金の純増減額(支出)65,048百万円及び長期借入れによる収入59,755百万円がありました。第9回、第10回及び第11回無担保社債の発行による収入64,807百万円及び第5回無担保社債の償還による支出25,000百万円がありました。また、取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出19,999百万円及び自己株式の処分に伴う自己株式の売却による収入22,722百万円がありました。その他の支出の主な内容は、いずれの期も配当金の支払いです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
コンサルティング | 24,843 | 13.4 |
金融ITソリューション | 255,856 | 7.8 |
産業ITソリューション | 184,882 | 15.0 |
IT基盤サービス | 115,217 | 10.1 |
小 計 | 580,800 | 10.7 |
調整額 | △129,180 | - |
計 | 451,620 | 13.0 |
(注)1. 金額は製造原価によっています。各セグメントの金額は、セグメント間の内部振替前の数値であり、調整額で内部振替高を消去しています。
2. 外注実績は次のとおりです。なお、外注実績の割合は、生産実績に対する割合を、中国企業への外注実績の割合は、総外注実績に対する割合を記載しています。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年度比 (%) | |||
金額 (百万円) | 割合 (%) | 金額 (百万円) | 割合 (%) | ||
外注実績 | 194,766 | 48.7 | 214,166 | 47.4 | 10.0 |
うち、中国企業への外注実績 | 36,730 | 18.9 | 37,436 | 17.5 | 1.9 |
② 受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績(外部顧客からの受注金額)は次のとおりです。
セグメントの名称 | 受注高 | 受注残高 | ||
金額 (百万円) | 前年度比 (%) | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) | |
コンサルティング | 49,189 | 10.5 | 11,929 | 35.7 |
金融ITソリューション | 342,201 | 7.9 | 212,716 | 7.2 |
産業ITソリューション | 266,947 | 10.7 | 130,186 | 5.5 |
IT基盤サービス | 53,781 | 19.2 | 21,283 | 19.6 |
計 | 712,120 | 9.9 | 376,116 | 8.0 |
(注)1. 金額は販売価格によっています。
2. 継続的な役務提供サービスや利用度数等に応じて料金をいただくサービスについては、各年度末時点で翌年度の売上見込額を受注額に計上しています。
3. 受注高は、従前は期首受注残高より生じる為替変動影響を含んでいましたが、当該影響を含めない方法に変更しています。なお、前年同期比は、遡及修正後の数値に基づき計算しています。
③ 販売実績
a. セグメント別販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
コンサルティング | 46,100 | 7.7 |
金融ITソリューション | 328,576 | 8.2 |
産業ITソリューション | 267,190 | 20.0 |
IT基盤サービス | 50,298 | 18.0 |
計 | 692,165 | 13.2 |
b. 主な相手先別販売実績
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の売上収益及び当該売上収益の連結売上収益に対する割合は次のとおりです。
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 前年度比 (%) | |||
金額 (百万円) | 割合 (%) | 金額 (百万円) | 割合 (%) | ||
野村ホールディングス㈱ | 63,025 | 10.3 | 72,921 | 10.5 | 15.7 |
(注) 相手先別の売上収益には、相手先の子会社に販売したもの及びリース会社等を経由して販売したものを含めています。
c. サービス別販売実績
当連結会計年度におけるサービスごとの外部顧客への売上収益は次のとおりです。
サービスの名称 | 金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
コンサルティングサービス | 156,582 | 24.8 |
開発・製品販売 | 211,512 | 7.9 |
運用サービス | 292,874 | 7.3 |
商品販売 | 31,195 | 80.6 |
計 | 692,165 | 13.2 |
(3) 経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としています。経営指標としては、事業の収益力を表す営業利益及び営業キャッシュ・フローを重視し、これらの拡大を目指しています。また、資本効率の観点からROEを重視し、持続的な株主価値の向上に努めています。
当年度におけるこれらの指標は、営業利益は111,832百万円(前年度比5.3%増)、EBITDAマージンは22.5%(同1.4ポイント減)、ROEは20.7%(同0.6ポイント減)となりました。
当社グループは、長期経営ビジョンVision2022の実現に向け、2019年4月に中期経営計画2022(※1)を策定しました。中期経営計画2022における財務数値目標(連結)及び進捗状況は次のとおりです。
中期経営計画2022(2020年3月期~2023年3月期)
(単位:百万円)
実績 | 中期経営計画2022 | ||
2023年3月期 | 2023年3月期(目標) | ||
売上収益 | 692,165 | 670,000以上 | |
海外売上収益 | 123,207 | 100,000 | |
営業利益 営業利益率 | 111,832 16.2% | 100,000 14%以上 | |
EBITDAマージン | 22.5% | 20%以上 | |
ROE(親会社所有者帰属 持分当期利益率) | 20.7% | 14% |
※1 中期経営計画2022の詳細については、当社が2019年4月25日付で公表した「『NRIグループ中期経営計画(2019-2022)』説明会資料」をご参照下さい。
また、長期経営ビジョンV2030の実現に向け、2023年4月に中計2025(※1)を策定しました。中計2025における主な財務数値目標(連結)は次のとおりです。
中計2025(2024年3月期~2026年3月期)
(単位:百万円)
実績 | 中計2025 | ||
2023年3月期 | 2026年3月期(目標) | ||
売上収益 | 692,165 | 810,000 | |
海外売上収益 | 123,207 | 150,000 | |
営業利益 営業利益率 | 111,832 16.2% | 145,000 17.9% | |
ROE(親会社所有者帰属 持分当期利益率) | 20.7% | 20%以上 |
※1 中計2025の詳細については、当社が2023年4月27日付で公表した「NRIグループ中期経営計画(2023-2025)を策定」(適時開示資料)及び「1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営戦略」をご参照下さい。
※2 2026年3月期(目標)は、M&Aを含んでいません。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に特に影響を与える大きな要因としては、情報技術動向、市場動向、品質及び事業継続に対する取組みなどがあります。
情報技術動向については、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術が次々に登場し、従来の技術、手法では対応できないテーマが増えています。当社グループは、情報技術に関する先端技術や基盤技術、生産・開発技術の調査・研究に、社内横断的な体制で取り組むことで、技術革新への迅速な対応に努めています。
市場動向については、他業種からの新規参入や海外企業の台頭、パッケージ製品やクラウドサービスの普及などが進んでおり、IT産業は厳しい競争の環境下にあります。また、デジタルを活用してビジネスモデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。顧客のDXに対する取組みを実現するためには、顧客のビジネスを深く理解していなければ実現することが出来ません。当社グループは、様々な業界や業務プロセスに精通したコンサルタントと、実用性までを考慮して最新のITを駆使できるシステムエンジニアという2つの人的資本があり、顧客のDXの取組みの拡大において、大きな競争優位性があると考えています。
品質及び事業継続に対する取組みについては、複数のデータセンターを保有し、社会インフラとしての情報システムを担う責任に加え、不測の不採算案件が発生した場合の業績への影響もあることから、当社グループの事業活動の根幹として特に重視しています。品質監理を専門とする組織を中心に、受注前の見積り審査や受注後のプロジェクト管理を適切に行う体制を整えていることに加え、一定規模以上のプロジェクトは、システム開発会議など専用の審査体制を整え、プロジェクト計画から安定稼動まで進捗状況に応じたレビューの徹底を図り、不測の不採算案件の発生防止に取り組んでいます。災害やシステム障害などの事業継続に対しては、大規模災害、大規模障害などの発生に備えて、初動体制と行動指針をまとめたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定し、事前対策や訓練を重ね、より円滑な事業継続に向けた体制の構築や事業計画に必要なインフラの整備など、危機管理体制の整備・強化に取り組んでいます。
c. 経営成績
当年度の連結経営成績は、「(1)連結経営成績等の状況の概要 ①連結経営成績の状況」をご覧ください。
当年度のセグメントごとの経営成績(売上収益には内部売上収益を含む。)は、次のとおりです。
(単位:百万円) | |||||
前連結会計年度 (自 2021年4月 1日 至 2022年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2022年4月 1日 至 2023年3月31日) | 前年度比 | |||
増減額 | 増減率 | ||||
コンサルティング | 売上収益 | 44,414 | 47,821 | 3,407 | 7.7% |
営業利益 | 12,820 | 12,329 | △490 | △3.8% | |
営業利益率 | 28.9% | 25.8% | △3.1P | - | |
金融ITソリューション | 売上収益 | 308,376 | 334,141 | 25,765 | 8.4% |
営業利益 | 43,877 | 49,710 | 5,832 | 13.3% | |
営業利益率 | 14.2% | 14.9% | 0.6P | - | |
産業ITソリューション | 売上収益 | 229,921 | 276,031 | 46,110 | 20.1% |
営業利益 | 25,449 | 24,429 | △1,019 | △4.0% | |
営業利益率 | 11.1% | 8.9% | △2.2P | - | |
IT基盤サービス | 売上収益 | 157,598 | 169,840 | 12,242 | 7.8% |
営業利益 | 20,955 | 23,346 | 2,391 | 11.4% | |
営業利益率 | 13.3% | 13.7% | 0.4P | - | |
調整額 | 売上収益 | △128,676 | △135,669 | △6,993 | - |
営業利益 | 3,116 | 2,015 | △1,100 | - | |
計 | 売上収益 | 611,634 | 692,165 | 80,531 | 13.2% |
営業利益 | 106,218 | 111,832 | 5,613 | 5.3% | |
営業利益率 | 17.4% | 16.2% | △1.2P | - |
(コンサルティング)
当セグメントは、政策提言や戦略コンサルティング、業務改革をサポートする業務コンサルティング、ITマネジメント全般にわたるシステムコンサルティングを提供しています。
コロナ禍をうけて顧客の経営環境が急速に変化している中、デジタル技術を活用した企業変革が加速しています。また、脱炭素等の社会課題の解決を経営戦略に取り入れる企業が増加しており、具体的な成果につながる実行支援型のコンサルティングサービスによる社会課題解決が期待されています。
当セグメントは、顧客のDXを支援するコンサルティングを強化し、顧客ニーズへの的確な対応に努めるとともに、グローバル領域においては、これまでの顧客基盤を維持強化しながら欧米等の先進国におけるサービス拡大に努めました。また、脱炭素等の社会課題の解決を起点にした新たなコンサルティングサービスの創出に向けた取組みを行いました。
当年度の売上収益は、前年度に引き続きDX関連や社会課題案件のコンサルティングが好調に推移し、47,821百万円(前年度比7.7%増)となりました。営業利益は、国内のDX関連や社会課題案件が活況であったものの、海外の収益性悪化により、12,329百万円(同3.8%減)となりました。
(金融ITソリューション)
当セグメントは、主に証券業や保険業、銀行業等の金融業顧客向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス、共同利用型システム等のITソリューションやBPОサービスを提供しています。
社会における高齢化の一層の進展、異業種からの金融業への新規参入やデジタルアセットの拡大、低金利の継続及び人口減少による国内市場の縮小など、金融業を取り巻く環境は大きな構造変化を迎えています。また、顧客におけるデジタル化やビジネスモデル変革のニーズも急速に高まっています。
当セグメントは、これらの環境変化に対応し、顧客の新規事業や新サービスの創出を支援するため、新たな金融ビジネスプラットフォームの創出と拡大、マイナンバー等のデジタルガバメント政策に資する新たなDXビジネスの推進、金融グローバル事業の安定稼働と事業拡大に努めました。
当年度の売上収益は、証券業向け開発・製品販売及び運用サービス、銀行業向け開発・製品販売が増加し、334,141百万円(前年度比8.4%増)となりました。営業利益は、海外の収益性悪化があったものの、良好な受注環境や生産活動等により収益性が向上し、49,710百万円(同13.3%増)となりました。
(産業ITソリューション)
当セグメントは、流通業、製造業、サービス業や公共向けに、システムコンサルティング、システム開発及び運用サービス等のITソリューションを提供しています。
産業分野の顧客におけるDXの取組みは、既存のビジネスモデルの効率化や高度化のみならず、コロナ禍を経てデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルを創造する領域にも広がっています。
当セグメントは、DXビジネスの領域で顧客や業界を問わず活用可能なデジタルIPの開発に注力し、顧客のビジネスモデルの創出からシステム構築や運用の高度化まで総合的に支援しました。また、グローバル事業では、豪州は買収子会社間の連携強化・機能統合により、北米は買収子会社を中核としたオーガニック成長に加え、地域拡大・ケイパビリティ強化に資するM&Aにより、さらなる事業拡大と持続的な価値向上を目指しています。
当年度に、ASG Group Limitedのブランドを“NRI”に統合し、社名を「NRI Australia Limited」に変更しました。この度の社名変更により、豪州IT市場におけるNRIブランドの浸透を促進するとともに、豪州内の各事業会社がNRIというブランドのもと一体となり、より一層、事業連携、融合を進め、NRIグループのグローバル事業の柱として着実に成長することを目指します。
当年度の売上収益は、豪州事業の成長や前年度に買収した北米子会社の連結影響が寄与し、276,031百万円(前年度比20.1%増)となりました。営業利益は、豪州事業で収益改善がみられたものの、海外子会社の連結に伴い識別した無形資産の償却費影響等により、24,429百万円(同4.0%減)となりました。
(IT基盤サービス)
当セグメントは、主に金融ITソリューション部門及び産業ITソリューション部門を通じて、データセンターの運営管理やIT基盤・ネットワーク構築等のサービスを提供しています。また、様々な業種の顧客に対してIT基盤ソリューションや情報セキュリティサービスを提供しています。このほか、ITソリューションに係る新事業・新商品の開発に向けた実験的な取組みや先端的な情報技術等に関する調査、研究を行っています。
DX時代のシステム開発は、新たな開発手法や、よりスピーディーな開発が求められるとともに、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の活用も必要となります。クラウド領域においては、多様化・複雑化するシステム基盤を高い品質で総合的に運用していくことが必要となります。また、近年ではサイバー攻撃が多様化・進化しており、顧客のDXの要となるクラウドサービスの導入・活用を安全安心に実施するために、サイバーセキュリティ対策の重要性が高まっています。
当セグメントは、これらの環境変化に対応し、DX時代のシステム開発手法や生産革新ツールの開発を行うとともに、マルチクラウドサービス(※1)及びマネージドサービス(※2)の拡大、ゼロトラスト(※3)事業やマネージドセキュリティサービス(※4)の推進に取り組みました。
当年度の外部顧客に対する売上収益は、オフィスの生産性向上に貢献するDWP(デジタルワークプレイス)事業やセキュリティ事業で増加し、内部売上収益はDWP事業が増加しました。この結果、売上収益169,840百万円(前年度比7.8%増)、営業利益23,346百万円(同11.4%増)となりました。
※1 マルチクラウドサービス:複数のクラウド基盤を組み合わせて、一元的に管理するサービス。
※2 マネージドサービス:顧客のIT部門に代わり、システム全体を最適化して総合的に支援するサービス。
※3 ゼロトラスト:ネットワークの内部と外部を区別することなく、守るべき情報資産やシステムにアクセスするものは全て検証するというセキュリティの新たな考え方。
※4 マネージドセキュリティサービス(MSS):企業や組織の情報セキュリティシステムの運用管理を、社外のセキュリティ専門企業などがトータルに請け負うサービス。
d. 財政状態
(単位:百万円)
前連結会計年度 (2022年3月31日) | 当連結会計年度 (2023年3月31日) | 前年度末比 | ||
増減額 | 増減率 | |||
流動資産 | 333,645 | 349,102 | 15,456 | 4.6% |
非流動資産 | 456,010 | 489,122 | 33,111 | 7.3% |
資産合計 | 789,655 | 838,224 | 48,568 | 6.2% |
流動負債 | 298,342 | 198,247 | △100,094 | △33.6% |
非流動負債 | 148,826 | 237,570 | 88,743 | 59.6% |
資本合計 | 342,486 | 402,406 | 59,919 | 17.5% |
親会社の所有者に帰属する持分 | 339,360 | 399,006 | 59,645 | 17.6% |
親会社所有者帰属持分比率 | 43.0% | 47.6% | 4.6P | - |
有利子負債 | 209,627 | 205,823 | △3,803 | △1.8% |
グロスD/Eレシオ(倍) | 0.62 | 0.52 | △0.10 | - |
ネットD/Eレシオ(倍) | 0.27 | 0.19 | △0.08 | - |
(注)1. グロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ(負債資本倍率)):有利子負債÷親会社の所有者に帰属する持分
2. ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ(正味負債資本倍率)):(有利子負債-現金及び現金同等物等)÷親会社の所有者に帰属する持分
3. 有利子負債:社債及び借入金+その他有利子負債(信用取引借入金及び有価証券担保借入金)
信用取引借入金(前連結会計年度末608百万円、当連結会計年度末1,284百万円)は、連結財政状態計算書上の営業債務及びその他の債務に、有価証券担保借入金(前連結会計年度末802百万円、当連結会計年度末1,578百万円)は、連結財政状態計算書上のその他の流動負債に含めています。
4. 現金及び現金同等物等:現金及び現金同等物+資金運用目的投資
当年度末において、流動資産349,102百万円(前年度末比4.6%増)、非流動資産489,122百万円(同7.3%増)、流動負債198,247百万円(同33.6%減)、非流動負債237,570百万円(同59.6%増)、資本合計402,406百万円(同17.5%増)となり、資産合計は838,224百万円(同6.2%増)となりました。また、当年度末におけるグロスD/Eレシオ(グロス・デット・エクイティ・レシオ)は、0.52倍、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は、0.19倍となっています。
前年度末と比べ増減した主な内容は、次のとおりです。
営業債権及びその他の債権は4,086百万円減少し131,592百万円、契約資産は5,314百万円増加し55,980百万円となりました。
のれん及び無形資産は、国内における共同利用型システムの開発に伴う無形資産の取得等により、26,539百万円増加し237,283百万円となりました。
社債及び借入金は、第9回、第10回及び第11回無担保社債を発行した一方、第5回無担保社債を償還したこと等により、5,254百万円減少し202,961百万円となりました。
このほか、現金及び現金同等物が13,646百万円増加の129,257百万円、営業債務及びその他の債務が1,880百万円増加の55,681百万円、未払法人所得税が7,554百万円減少の13,093百万円となりました。
e. キャッシュ・フローの状況
「(1) 連結経営成績等の状況の概要 ② 連結キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
f. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは社会インフラとしての情報システムを担う社会的責任から、不測の事態が発生した場合でもサービス提供を継続するため、比較的厚めの自己資金を保持する方針としています。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、コンサルティングやシステム開発を担う従業員の労務費及びパートナー会社に対する外注費のほか、事業活動を支える不動産費や販売費及び一般管理費などがあります。投資資金需要としては、共同利用型サービスやアウトソーシングサービスを提供するためのデータセンターの建設やサービス提供用機器、自社利用ソフトウエアの開発費用に加え、事業拡大のためのM&A資金などがあります。
当社グループはこれらの資金需要に対して、事業の継続的な拡大を背景に、安定的にキャッシュ・フローを創出しており、事業運営上必要な資金は、自己資金でまかなうことを基本としています。毎期のソフトウエア投資など事業運営で必要な設備投資資金については、減価償却費の範囲内で行うことを基本としていますが、M&Aをはじめとした中長期的な投資資金については、資本と負債のバランスなどの財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、社債や借入れによる負債を一定以上活用した資金調達を行う方針としています。マーケットとの対話を意識し、ネットD/Eレシオ(ネットデット・エクイティ・レシオ)は0.5倍を上限としています。当年度末における有利子負債の残高は205,823百万円(前年度末比1.8%減)、現金及び現金同等物等の残高は131,235百万円(同11.8%増)、グロスD/Eレシオは0.52倍、ネットD/Eレシオは0.19倍となっています。
また、当社グループは、事業内容及び財務状況について第三者から客観的な評価を得ることで、経営の透明性と対外的な信用力を高めるとともに、事業機会に即した資金調達手段の多様化、資金調達の安定性向上に努めており、高い信用格付の維持を目指しています。本有価証券報告書提出日現在において、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱より「A」の格付を取得しています。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。その作成にあたり、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の計上額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。これらの見積りや仮定は、過去の実績や現在の状況などを勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積り及び仮定と異なる可能性があります。
なお、当社の連結財務諸表で採用する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。