有価証券報告書-第29期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 16:53
【資料】
PDFをみる
【項目】
108項目
業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度の日本株式市場は、期初には北朝鮮情勢など地政学リスクに対する懸念や米国の経済政策に対する期待感の後退などを受けて軟調に推移する場面もありましたが、米国経済指標の好調さと日本企業の収益の上昇を背景に堅調に推移しました。期中は北朝鮮リスクが再度断続的に意識され一時軟調となった局面もありましたが、ミサイル発射が秋以降一時的に行われなかったこと、加えて日本の10月の総選挙で与党の優勢が伝わり与党の勝利に終ったことで政治の安定を好感し、また日本企業の好業績とあわせて、日経平均株価は史上最長となる16日連騰を記録し、21年ぶりの高値水準へと回復するなど、非常に力強い株価の推移が続きました。年を明けた1月後半から米国の長期金利上昇とそれを受けた米国株式の下落をきっかけに、世界的に株式市場が大きく調整しました。加えて日本株式市場は為替が円高ドル安となったこともマイナスに作用して大幅に調整が入り下落しました。さらに財務省の文書改ざん問題をきっかけに安倍政権の支持率が急落したことが投資家心理を冷やす要因となるなど年度末まで不安定な推移となったものの、日経平均株価は前連結会計年度末に比べ13.5%上昇し21,454.30円で取引を終えました。
当連結会計年度の韓国株式市場も、期初は地政学的リスクが浮き彫りになり軟調となりましたが、大統領選挙前後の政治的な不確実性が解消されたこと、好調な企業業績などを背景に堅調な動きとなり、秋以降、米国株式市場の良好さや北朝鮮の追加挑発がなく緊張が和らぐ場面もあったことから、韓国株式市場はさらに上昇しました。日本株式市場と同様に米国の長期金利の上昇がきっかけとなる世界株式市場の調整により2月は下落し、さらに米国と中国の貿易摩擦激化への懸念から不安定な動きとなったものの、結果的には、韓国総合株価指数(KOSPI)は前連結会計年度末に比べ13.2%上昇して2,445.85で取引を終えました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、1兆1,240億円(注1)と前期末に比して16.8%増加しました。比較的報酬料率の高い日本地域の運用資産残高が伸びたため残高報酬が増加し、加えて良好なパフォーマンスにより成功報酬も増加したことから、当社グループの業績は前期比107.3%増の65億69百万円の営業利益となりました。
事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注2)も前期比28.3%増の31億69百万円(前期は24億69百万円)となり、実質的な収益体質は一層強化されております。
日本株式を投資対象とする運用戦略は、ほぼ年間を通じて安定した市場環境下であったこともファンドのパフォーマンスの追い風となり、子会社であるスパークス・アセット・マネジメント株式会社が運用するファンドは、運用評価機関から継続して高い評価を受けております。また、私どもの投資哲学や運用スタイルへの関心も引き続き高いことから、日本の個人投資家の皆様に「日本株ならスパークス」とのSPARXブランドをさらに幅広く認知いただくよう、当社ウェブサイトを通じた動画配信やメディアへのアプローチなど広報及び宣伝活動を積極化しております。
アジア株式を投資対象とする運用戦略は、東京・香港・韓国のファンドマネジャーがアジア企業への調査などを共同で行っており、昨年5月に公募投資信託の設定をいたしました。アジア企業の調査を通じ、今まで日本株式運用で培った運用手法を伝承することで「アジア株もスパークス」とのSPARXブランドを構築してまいります。
再生可能エネルギー発電事業のインフラ資産や不動産を投資対象とする実物資産の運用戦略は、全国の発電施設への投資を25件実行しており、投資対象も太陽光、風力から、バイオマスなどへと拡大しており、当期はバイオマス発電所も運転開始にまで至りました。また、これまで提供してきた発電事業等の開発段階から運転開始までのフェーズにおける投資(グリーン・フィールド投資)に加えて、運転開始後のフェーズにおける投資(ブラウン・フィールド投資)にフォーカスした、長期的に安定したキャッシュ・フローを源泉としたファンドを設立し、機関投資家等向けにご提供を開始しております。これにより自ら開発した発電設備のみならず外部からの発電設備の取得も行うことができます。今後も引き続きインフラファンドのパイオニアとして皆様のご期待にお応えすべく、魅力的な投資商品の提供を行ってまいります。
次世代の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドは、平成30年3月末で367億円の規模となっております。当該ファンドは、既に国内外のベンチャー企業等への投資を着実に実行しており、来年度早々にも投資額が投資限度額に達する見通しであります。2号ファンドの設立準備を進め、運用資産残高の更なる積み上げを目指してまいります。
上記の結果、当連結会計年度における残高報酬は前期比14.6%増の85億68百万円となりました。一方、成功報酬(注3)は、良好なパフォーマンス等により前期比238.4%増の44億76百万円となり、営業収益は前期比48.5%増の132億27百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比16.0%増の66億58百万円となりました。これは、主に営業収益の増加に伴う支払手数料及び好調な業績に伴って賞与手当が増加したことによるものです。
これらの結果、営業利益は前期比107.3%増の65億69百万円、経常利益は前期比109.7%増の66億68百万円となりました。また、税金等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比99.5%増の46億81百万円となりました。
(注1)当連結会計年度末(平成30年3月末)運用資産残高は速報値であります。
(注2)基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
(注3)成功報酬には、株式運用から発生する報酬の他、日本不動産投資戦略に関連する不動産購入・売却に対して当社グループがファンドから受ける一時的な報酬や、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)を含んでおります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、残高報酬及び成功報酬に係る収入によって、前連結会計年度末に比べ41億90百万円増加し、当連結会計年度末は186億49百万円(前期比29.0%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主たる要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは71億44百万円の収入(前期は19億72百万円の収入)となりました。これは主に、法人税等の支払額3億60百万円があった一方で、税金等調整前当期純利益62億97百万円の計上及び未払金・未払費用の増加額4億61百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは20億50百万円の支出(前期は16億58百万円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入7億91百万円があった一方で、投資有価証券の取得による支出24億23百万円及び無形固定資産の取得による支出3億76百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは7億63百万円の支出(前期は9億14百万円の収入)となりました。これは主に自己株式処分による収入6億42百万円及び非支配株主からの払込みによる収入4億円があった一方で、自己株式取得による支出9億72百万円及び配当金の支払い8億11百万円があったことによるものです。
営業の実績
(1)営業収益の実績
当社グループの連結営業収益の項目別内訳は以下のとおりです。
項目前連結会計年度(平成29年3月期)当連結会計年度(平成30年3月期)
金額
(百万円)
構成比(%)金額
(百万円)
構成比(%)
残高報酬7,47683.9%8,56864.8%
成功報酬1,32214.9%4,47633.8%
その他1071.2%1821.4%
営業収益合計8,907100.0%13,227100.0%

・残高報酬
残高報酬料率(ネット・ベース)の推移は以下のとおりです。
区分前連結会計年度
(平成29年3月期)
当連結会計年度
(平成30年3月期)
当社グループ残高報酬料率
(ネット・ベース)
0.69%0.68%

(注) 残高報酬料率(ネット・ベース)=(残高報酬-残高報酬に係る支払手数料)÷ 期中平均運用資産残高
・成功報酬(株式運用ファンド関連)
成功報酬は、単純なケースでは過去のファンド計算期間末日の「一口当たり純資産価額」=「Net Asset Value Per Share」(以下、「NAVPS」と言います。)の最高値を、今ファンド計算期間末日のNAVPSと比較して、今ファンド計算期間末日のNAVPSの方が高かった場合に、値上がり部分に一定料率をかけて計算します(これを「ハイ・ウォーター・マーク方式」といいます)。
また、契約によっては、ベンチマークを一定以上上回った部分に一定料率をかけて計算するものもあります。
絶対リターン追求型の運用に多いハイ・ウォーター・マーク(HWM)方式の成功報酬の仕組み
(注)1.上記の図は成功報酬の仕組みを簡便に説明したもので、実際の成功報酬の体系及びファンドの基準価格の
計算方法を厳密に説明しているものではありません。
(注)2.上記では、説明の都合上、成功報酬の料率を便宜的に20%として計算しております。
(2)運用資産残高の実績
以下の表は、当社グループの当期の運用資産残高の実績を示したものです。なお、日本円建て以外の運用資産残高を日本円に換算する際には、それぞれの時点における月末為替レートを用いております。
当社グループは、以下の場合を除き、直接的、間接的に子会社の持分割合を100%保有しており、下記の数値は当社子会社に対する当社持分に拘らず運用資産残高の100%を記載しております。
会社名平成29年3月平成30年3月
SPARX Asset Management Korea Co., Ltd.70.1%70.1%

① 投資対象別の四半期運用資産残高の推移 (単位:億円)
投資対象平成29年6月平成29年9月平成29年12月平成30年3月
日本8,7519,39910,77610,945
韓国1,3811,3181,261196
アジア全域909610299
合計10,22410,81412,14011,240

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.平成30年3月末運用資産残高は速報値となっております。
② 平均運用資産残高 (単位:億円)
平成29年3月期
連結会計年度
平成30年3月期
連結会計年度
当社グループ合計9,45910,937

(注) 1.各期の月末運用資産残高の単純平均であります。
2.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
3.平成30年3月末運用資産残高は速報値となっております。
③ 成功報酬付運用資産残高及び比率
会社名平成29年3月平成30年3月
当社グループ合計残高(億円)3,5022,853
比率(%)36.425.4

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2. 平成30年3月末運用資産残高は速報値となっております。
④ 投資戦略別四半期末運用資産残高の推移
■投資対象が日本となる運用資産残高の内訳
(単位:億円)
投資戦略平成29年6月平成29年9月平成29年12月平成30年3月
日本株式ロング・ショート投資戦略165173232367
日本株式長期厳選投資戦略3,2263,4364,1754,414
日本株式中小型投資戦略2,0882,2892,7432,725
日本株式環境・クリーンテック投資戦略1,1151,2021,1821,022
日本株式価値創造・対話型投資戦略5867117135
日本不動産投資戦略331331331331
日本再生可能エネルギー投資戦略1,3731,4781,5681,575
未来創生投資戦略367367367367
その他2352575
合計8,7519,39910,77610,945

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.平成30年3月末運用資産残高は速報値となっております。
■投資対象が韓国となる運用資産残高の内訳
(単位:億円)
投資戦略平成29年6月平成29年9月平成29年12月平成30年3月
韓国株式アクティブ投資戦略1,1921,1411,08248
韓国株式アブソリュート・リターン投資戦略96909368
その他93858578
合計1,3811,3181,261196

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.平成30年3月末運用資産残高は速報値となっております。
■投資対象がアジア全域となる運用資産残高の内訳
(単位:億円)
投資戦略平成29年6月平成29年9月平成29年12月平成30年3月
アジア株式投資戦略909610299
合計909610299

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.平成30年3月末運用資産残高は速報値となっております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、後述の「第5経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照ください。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
経営成績の分析については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績」に含めて記載しております。
(次期の見通し)
当社グループの主たる事業である投信投資顧問業は、業績が経済情勢や相場環境によって大きな影響を受けるため将来の業績予想は難しいと認識しており、次期の見通しについての具体的な公表は差し控えさせていただきます。
(3)当連結会計年度の財政状態の分析
<資産の部>当連結会計年度末の資産合計は、前期末に比べ79億40百万円増加し、314億82百万円となりました。主な増減内訳は、現金及び預金が41億90百万円の増加、投資有価証券が14億52百万円の増加、無形固定資産が17億71百万円の増加となっております。
<負債の部・純資産の部>当連結会計年度末の負債合計は、前期末に比べ37億32百万円増加し、100億91百万円となりました。主な増減内訳は、未払金が17億83百万円増加、未払法人税等が11億65百万円の増加となっております。
当連結会計年度末の純資産合計は、前期末に比べ42億8百万円増加し、213億91百万円となりました。主な増減内訳は、資本剰余金が8億25百万円の減少、利益剰余金が38億70百万円、その他有価証券評価差額金3億59百万円及び自己株式が4億97百万円の減少となっております。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの投資を目的とした主な資金需要につきましては、シードマネー投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金を基本としており、シードマネー投資等につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債の残高は50億18百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は186億49百万円となっております。