有価証券報告書-第32期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/21 16:46
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【項目】
132項目
業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度の日本株式市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による前期3月の大幅な下落から、新型コロナウイルス感染症の欧米諸国での新規患者数の減少や、治療薬に関する報道、経済活動の早期再開への期待などにより、4月から上昇し始まりました。世界的に新型コロナウイルス感染拡大が続いたものの、経済活動の再開や米国雇用統計の改善を受け、日経平均株価は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復しました。その後は、欧州諸国を中心に新型コロナウイルス感染再拡大が顕著になるなど一時的に軟調な展開となるものの、日経平均株価は各国の積極的な財政、金融政策、ワクチンの接種開始などを背景に経済活動が正常化するとの期待から大幅に上昇し日経平均株価は1990年8月2日以来の30,000円台を回復しました。年度末にかけて米国の金融緩和策の「出口」への警戒感、なお続く新型コロナウイルスの変異株による感染再拡大などから下落したものの、日経平均株価は前期末に比べ54.2%と大幅に上昇し29,178.80円で取引を終えました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、1兆5,356億円(注1)と前期末に比して36.7%と大幅に増加しました。
上記の結果、当連結会計年度における残高報酬(注3)は前期比2.0%増の109億22百万円となりました。さらに、成功報酬(注4)は、前期比91.6%増の31億66百万円となり、営業収益は前期比14.6%増の142億95百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比0.6%減の79億46百万円となりました。これは主に成功報酬の増加に伴い利益が増加したことで業績賞与が増加したものの、新型コロナウイルスの影響により旅費交通費が減少したこと等により費用が減少したものです。
これらの結果、営業利益は前期比41.7%増の63億49百万円、経常利益は前期比39.9%増の61億89百万円となりました。また、投資有価証券評価損及び減損損失を特別損失に計上し、税金等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比50.7%増の34億68百万円となりました。
なお、事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注2)は、残高報酬の増加及び新型コロナウイルスの影響に伴う旅費交通費の減少等により、前期比23.8%増の44億44百万円(前期は35億91百万円)となっており、実質的な収益体質は着実に強化されております。
(注1)当連結会計年度末(2021年3月末)運用資産残高は速報値であります。
(注2)基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
(注3)残高報酬には、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所等の管理報酬を含んでおります。
(注4)成功報酬には、株式運用実績から発生する報酬の他に、不動産購入・売却に対して当社グループがファンドから受ける一時的な報酬や、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)及び再生可能エネルギーファンドが投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合に受領する報酬を含んでおります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ14億61百万円増加し、当連結会計年度末は199億35百万円(前期比7.9%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主たる要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは61億18百万円の収入(前期は45億35百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益60億44百万円の計上等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは29億円の支出(前期は25億81百万円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出21億54百万円、長期貸付けによる支出10億10百万円の計上等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは18億44百万円の支出(前期は2億97百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払い18億22百万円があったことによるものです。
営業の実績
(1)営業収益の実績
当社グループの連結営業収益の項目別内訳は以下のとおりです。
項目前連結会計年度(2020年3月期)当連結会計年度(2021年3月期)
金額
(百万円)
構成比(%)金額
(百万円)
構成比(%)
残高報酬10,71085.9%10,92276.4%
成功報酬(注)1,65213.2%3,16622.1%
その他1140.9%2061.5%
営業収益合計12,476100.0%14,295100.0%

(注)成功報酬には、上場株式投資戦略1,621百万円(前期は517百万円)、再生可能エネルギー投資戦略からのアクイジションフィー1,064百万円(前期は335百万円)、再生可能エネルギーファンドが、投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合に受領する報酬470百万円(前期は697百万円)が含まれております。
・残高報酬
残高報酬料率(ネット・ベース)の推移は以下のとおりです。
区分前連結会計年度
(2020年3月期)
当連結会計年度
(2021年3月期)
当社グループ残高報酬料率
(ネット・ベース)
0.75%0.69%

(注) 残高報酬料率(ネット・ベース)=(残高報酬-残高報酬に係る支払手数料)÷ 期中平均運用資産残高
・成功報酬
(株式運用ファンド関連)
成功報酬は、単純なケースでは過去のファンド計算期間末日の「一口当たり純資産価額」=「Net Asset Value Per Share」(以下、「NAVPS」と言います。)の最高値を、今ファンド計算期間末日のNAVPSと比較して、今ファンド計算期間末日のNAVPSの方が高かった場合に、値上がり部分に一定料率をかけて計算します(これを「ハイ・ウォーター・マーク方式」といいます)。
また、契約によっては、ベンチマークを一定以上上回った部分に一定料率をかけて計算するものもあります。
(再生可能エネルギーファンド関連)
事業計画を策定、工事業者の選定・管理、固定価格買取制度の認定手続き、資金調達など、一連の発電所開発プロセスが成就した場合に、プロジェクトコストに一定料率を乗じた成功報酬(アクイジションフィー)を受領する場合があります。
また、当社子会社が運用する再生可能エネルギーファンド(グリーン・フィールド投資ファンド(*))が投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合には、その売却益に一定料率を乗じた成功報酬を受領する場合があります。
なお、この売却に際しては、上記とは別の当社子会社が運営する再生可能エネルギーファンド(ブラウン・フィールド投資ファンド(*))も売却先候補となりますが、その場合であっても、双方のファンドを運用する両子会社は、それぞれ適切な利益相反管理のもとで独立した意思決定を行っており、双方のファンドの投資家にとって、それぞれが最良の条件で譲渡取引を執行しております。譲渡価格の決定に際して外部評価機関の評価を利用しております。
(*)グリーン・フィールド投資ファンドとは、発電所の開発段階から運転開始までのフェーズに投資するファンドであります。また、ブラウン・フィールド投資ファンドとは、発電所の運転開始後のフェーズに投資するファンドであります。
絶対リターン追求型の運用に多いハイ・ウォーター・マーク(HWM)方式の成功報酬の仕組み
0102010_001.jpg(注)1.上記の図は成功報酬の仕組みを簡便に説明したもので、実際の成功報酬の体系及びファンドの基準価格の
計算方法を厳密に説明しているものではありません。
(注)2.上記では、説明の都合上、成功報酬の料率を便宜的に20%として計算しております。
(2)運用資産残高の実績
以下の表は、当社グループの当期の運用資産残高の実績を示したものです。なお、日本円建て以外の運用資産残高を日本円に換算する際には、それぞれの時点における月末為替レートを用いております。
当社グループは、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッドのビジネスモデルを強化・拡大して成長することを目指しており、現在「日本株式」、「OneAsia」、「実物資産」及び「未来創生」の投資戦略を4本の柱としております。
① 投資戦略別の四半期運用資産残高の推移 (単位:億円)
投資戦略2020年6月2020年9月2020年12月2021年3月
日本株式8,4448,90210,07810,302
OneAsia6497499091,343
実物資産2,1232,3212,4802,552
未来創生1,2141,2141,1391,157
合計12,43113,18614,60815,356

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.2021年3月末運用資産残高は速報値となっております。
② 平均運用資産残高 (単位:億円)
2020年3月期
連結会計年度
2021年3月期
連結会計年度
当社グループ合計11,84013,438

(注) 1.各期の月末運用資産残高の単純平均であります。
2.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
3.2021年3月末運用資産残高は速報値となっております。
③ 成功報酬付運用資産残高及び比率
会社名2020年3月2021年3月
当社グループ合計残高(億円)3,7634,987
比率(%)33.532.5

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2. 2021年3月末運用資産残高は速報値となっております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、後述の「第5経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照ください。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループは、コロナ禍という未曽有の環境下においても、安定して高い運用実績を維持するとともに、これまで以上にコスト削減に取り組み、安定的に稼ぐ力である基礎収益を確実に増加させております。
当連結会計年度は、年度を通じてしっかりとした増収増益の結果を残すことが出来ました。コスト面において人件費等の増加がありましたが、コロナ禍における外出規制等により旅費交通費等の経費が大幅に減少し、結果前々期と同水準の費用となりました。さらに、上場株式投資戦略からの成功報酬約16億円、再生可能エネルギー投資戦略からの成功報酬約15億円を実現することが出来ました。これらの要因が、前期の収益拡大に繋がったものと考えております。残高報酬も安定的に推移することで基礎収益も増加しており、従来より申し上げているスパークス特有の残高報酬と成功報酬のハイブリッドモデルが収益成長に大きく貢献したと考えております。
当連結会計年度末(2021年3月末)の運用資産残高(AUM)は、前連結会計年度末(2020年3月末)に比べて37%増加し1兆5,356億円となりました。このAUMを2026年までに2倍の3兆円に増加させることを今後5年間の目標といたします。スパークスが作り上げてきたハイブリッド型収益モデルは、私たちの厚い人財力、投資力があれば、AUM3兆円となっても機能すると考えております。
これまでのコスト増加の傾向をみていただくとお分かりと思いますが、AUMが2倍になったとしてもコストが2倍に増加することはなく、現在の収益モデルは損益分岐点をすでに大幅に超えております。ここからのAUMの成長は利益を直接増加させ、今後さらに利益率が高まっていく局面に入っていくと考えております。
スパークスの強みは人財にあり、そして人財が育つ組織と仕組みを作ってきたことにあると考えています。その人財が生みだす投資力こそが、私達の力の源泉であります。この人財の中から、今後数年のうちに次世代のスパークスを担うプロフェッショナルを見出していくことがマネジメントの使命であり、是非それを実現していきたいと考えております。
長期的で大きな展望をもちながらも、先ずは足元のことをしっかりやっていくことが大切です。今期も増収増益の基盤をしっかりと固めてまいります。
また、ROEの向上を会社の重要課題のひとつと位置付け、実現していきたいと思っております。スパークスのビジネスは非常にシンプルです。AUMが増加する過程で、収益性が上がり、ROEも確実に上がっていきます。
すでに自己強化的なサイクルに入っていると考えており、繰り返しとなりますが2026年までに現在の2倍であるAUM3兆円を目指します。同時にスパークスの次の時代の成長を牽引する「デジタル×エネルギー」、「デジタル×医療」、「デジタル×金融」などの領域に種を撒き、育てていくことをスパークスの目標として取り組んでまいります。
「世界で最も信頼・尊敬されるインベストメント・カンパニーになる」というビジョンを持ち続けながら、投資家の皆様に支持される会社であり続けるよう努力精進してまいります。
なお、経営成績の分析については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析(1)業績」に含めて記載しております。
(次期の見通し)
当社グループの主たる事業である投信投資顧問業は、業績が経済情勢や相場環境によって大きな影響を受けるため将来の業績予想は難しいと認識しており、次期の見通しについての具体的な公表は差し控えさせていただきます。
(3)当連結会計年度の財政状態の分析
<資産の部>当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ42億78百万円増加し、379億86百万円となりました。主な増減内訳は、シードマネー投資、配当金の支払い及び決算賞与の支払い等があったものの、営業収益の増加により現金及び預金が14億61百万円の増加、新規シードマネー投資及び既保有分の時価の上昇により投資有価証券が44億円の増加、連結除外の影響により営業権が17億46百万円の減少となっております。
<負債の部・純資産の部>当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ13億40百万円増加し、147億10百万円となりました。主な増減内訳は、未払法人税等が13億27百万円の増加となっております。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ29億37百万円増加し、232億76百万円となりました。主な増減内訳は、利益剰余金が16億68百万円の増加、保有する投資有価証券(シードマネー投資)の時価の上昇に伴いその他有価証券評価差額金が17億23百万円の増加、連結除外の影響により非支配株主持分が6億円の減少となっております。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの投資を目的とした主な資金需要につきましては、シードマネー投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金を基本としており、シードマネー投資等につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債の残高は90億96百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は199億35百万円となっております。