有価証券報告書-第36期(2024/04/01-2025/03/31)

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2025/06/20 16:24
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146項目
業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度の日本株式市場は、利益確定売りや米長期金利上昇懸念、米CPIの上昇、中東情勢の悪化が影響したことから下落して始まりました。日経平均株価は一時37,000円を割り込みましたが、5月には米消費者物価指数や米小売売上高など予想を下回る指標が発表され、金融引き締めの長期化への懸念が後退した結果、米国の主要3株価指数が史上最高値を更新し、日経平均株価も一時39,000円を回復しました。日米の金融政策の動向に注目が集まるなかレンジ内でもみ合いの推移となった後、円安の進行とともに好調な流れが継続し、7月11日には42,000円台まで上昇いたしました。しかしながら、米国消費者物価指数が想定以上に軟化し、米国ハイテク株に利益確定売りが入ったことや為替が円高方向に振れたことなどから、日本株式市場は下落に転じ、7月末の日銀金融政策決定会合での追加利上げが円高を呼び、さらに市場予想を下回った7月の米ISM製造業景気指数で米国景気減速懸念が台頭し円高が一層進行したことで、リスク回避の流れが強まり暴落となりました。その後、為替が落ち着いたことで、日本株式市場も落ち着きを取り戻し、大幅に回復していきました。円安の進行や米国経済の底堅さ、新たに発足した石破政権の経済政策継承方針などを背景に日本株式市場は上昇しましたが、米国の大統領選挙において、トランプ前大統領が掲げる関税強化策への警戒感などから軟調な動きとなる場面もありました。その後は好調な米国の半導体株及びさらなる円安に支えられ、日本株式市場は再び上昇に転じ、年末終値としては日経平均株価が最高値を更新しました。しかしながら、年明け後は、2025年3月31日には前日から1,502円下落するなど、トランプ米大統領が突き出す関税政策が生む不況に徐々に身構え始めた結果、日経平均株価は前期末と比べると11.8%下落し35,617.56円で取引を終え、値動きの荒い一年となりました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、1兆8,720億円(注1)と前期末に比して0.9%減少しました。上記の結果、当連結会計年度における残高報酬(注2)は前期比11.2%増の158億57百万円となりました。成功報酬(注3)は、前期比7.6%減の18億97百万円となり、営業収益は前期比8.9%増の179億61百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比13.5%増の102億44百万円となりました。これは主に公募投信の運用資産残高増加に伴う支払手数料の増加及び人件費の増加によるものです。これらの結果、営業利益は前期比3.2%増の77億17百万円、経常利益は為替差益の減少及び投資事業組合運用損の計上等により前期比3.9%減の77億78百万円となりました。また、当社が保有する投資有価証券の一部売却による投資有価証券売却益が前期に比べて減少したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比19.4%減の52億52百万円となりました。
なお、事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注4)は、経常的経費の増加はあるものの、それを上回る残高報酬の増加により、前期比5.9%増の67億22百万円(前期は63億48百万円)となり、過去最高値を更新いたしました。
(注1)当連結会計年度末(2025年3月末)運用資産残高は速報値であります。
(注2)残高報酬には、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所等の管理報酬を含んでおります。
(注3)成功報酬には、株式運用実績から発生する報酬の他に、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)及びプライベート・エクイティ投資戦略に関連する出資履行金額を分配累計額が超過する場合に受ける報酬等を含んでおります。
(注4)基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ6億81百万円減少し、当連結会計年度末は213億85百万円(前期比3.1%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主たる要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは50億63百万円の収入(前期は60億44百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益79億35百万円、法人税等の支払額25億6百万円の計上等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは21億24百万円の支出(前期は31億26百万円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出38億47百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入20億39百万円の計上等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは33億91百万円の支出(前期は33億42百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払い27億18百万円、自己株式の取得による支出2億93百万円の計上等があったことによるものです。
営業の実績
(1)営業収益の実績
当社グループの連結営業収益の項目別内訳は以下のとおりです。
項目前連結会計年度(2024年3月期)当連結会計年度(2025年3月期)
金額
(百万円)
構成比(%)金額
(百万円)
構成比(%)
残高報酬14,25886.4%15,85788.3%
成功報酬(注)2,05412.5%1,89710.6%
その他1861.1%2051.1%
営業収益合計16,498100.0%17,961100.0%

(注)成功報酬には、上場株式投資戦略783百万円(前期は1,716百万円)、再生可能エネルギー投資戦略からのアクイジションフィー229百万円(前期は75百万円)、再生可能エネルギーファンドが、投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合に受領する報酬(前期247百万円)、プライベート・エクイティファンドについて出資履行金額を分配累計額が超過する各段階ごとに、一定割合を受領する報酬879百万円、その他にかかる報酬5百万円が含まれております。
・残高報酬
残高報酬料率(ネット・ベース)の推移は以下のとおりです。
区分前連結会計年度
(2024年3月期)
当連結会計年度
(2025年3月期)
当社グループ残高報酬料率
(ネット・ベース)
0.70%0.67%

(注) 残高報酬料率(ネット・ベース)=(残高報酬-残高報酬に係る支払手数料)÷ 期中平均運用資産残高
・成功報酬
(株式運用ファンド関連)
成功報酬は、単純なケースでは過去のファンド計算期間末日の「一口当たり純資産価額」=「Net Asset Value Per Share」(以下、「NAVPS」と言います。)の最高値を、今ファンド計算期間末日のNAVPSと比較して、今ファンド計算期間末日のNAVPSの方が高かった場合に、値上がり部分に一定料率をかけて計算します(これを「ハイ・ウォーター・マーク方式」といいます)。
また、契約によっては、ベンチマークを一定以上上回った部分に一定料率をかけて計算するものもあります。
(再生可能エネルギーファンド関連)
事業計画を策定、工事業者の選定・管理、固定価格買取制度の認定手続き、資金調達など、一連の発電所開発プロセスが成就した場合に、プロジェクトコストに一定料率を乗じた成功報酬(アクイジションフィー)を受領する場合があります。
また、当社子会社が運用する再生可能エネルギーファンド(グリーン・フィールド投資ファンド(*))が投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合には、その売却益に一定料率を乗じた成功報酬を受領する場合があります。
なお、この売却に際しては、上記とは別の当社子会社が運営する再生可能エネルギーファンド(ブラウン・フィールド投資ファンド(*))も売却先候補となりますが、その場合であっても、双方のファンドを運用する両子会社は、それぞれ適切な利益相反管理のもとで独立した意思決定を行っており、双方のファンドの投資家にとって、それぞれが最良の条件で譲渡取引を執行しております。譲渡価格の決定に際して外部評価機関の評価を利用しております。
(*)グリーン・フィールド投資ファンドとは、発電所の開発段階から運転開始までのフェーズに投資するファンドであります。また、ブラウン・フィールド投資ファンドとは、発電所の運転開始後のフェーズに投資するファンドであります。
絶対リターン追求型の運用に多いハイ・ウォーター・マーク(HWM)方式の成功報酬の仕組み
0102010_007.jpg(注)1.上記の図は成功報酬の仕組みを簡便に説明したもので、実際の成功報酬の体系及びファンドの基準価格の
計算方法を厳密に説明しているものではありません。
(注)2.上記では、説明の都合上、成功報酬の料率を便宜的に20%として計算しております。
(2)運用資産残高の実績
以下の表は、当社グループの当期の運用資産残高の実績を示したものです。なお、日本円建て以外の運用資産残高を日本円に換算する際には、それぞれの時点における月末為替レートを用いております。
当社グループは、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッドのビジネスモデルを強化・拡大して成長することを目指しており、現在「日本株式」、「OneAsia」、「実物資産」及び「プライベート・エクイティ」の投資戦略を4本の柱としております。
① 投資戦略別の四半期運用資産残高の推移 (単位:億円)
投資戦略2024年6月2024年9月2024年12月2025年3月
日本株式13,68813,11213,77212,925
OneAsia1,4831,2661,0331,043
実物資産2,8552,8552,8123,021
プライベート・エクイティ1,7491,7761,7391,729
合計19,77719,01119,35718,720

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.2025年3月末運用資産残高は速報値となっております。
② 平均運用資産残高 (単位:億円)
2024年3月期
連結会計年度
2025年3月期
連結会計年度
当社グループ合計16,74319,122

(注) 1.各期の月末運用資産残高の単純平均であります。
2.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
3.2025年3月末運用資産残高は速報値となっております。
③ 成功報酬付運用資産残高及び比率
会社名2024年3月2025年3月
当社グループ合計残高(億円)6,6736,571
比率(%)35.335.1

(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2. 2025年3月末運用資産残高は速報値となっております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、後述の「第5経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照ください。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当年度のグループ運用資産残高(AUM)は前年度末比0.9%減少して、1兆8,720億円(注1)となりましたが、期中平均AUMが前年度比2,379億円増加したことで、残高報酬は前年度比15億99百万円増加して158億57百万円となりました。これに加え、適切にコストコントロールを続けた結果、安定的に稼ぐ力である基礎収益は前年度に続き過去最高を更新して67億22百万円となりました。スパークスを支える土台は着実に強くなっていると考えております。
日本株式を投資対象とする運用戦略は、1兆2,925億円と減少いたしましたが、当年度にいくつかのファンドを設定しており、この3月にもUCITSファンド市場において初めてとなる日本株式を投資対象とするロング・ショート・ファンドを設定いたしました。EU加盟国のいずれかで認可を得ることで、パスポートのようにEU域内で自由に販売が可能となります。継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取り組みを求める東京証券取引所の要請や政府の政策も継続されるなど、日本株に対する投資魅力は高位安定していくと考えております。海外投資家の要望に応え、資金を運用することは、スパークスの強みであり、この運用戦略を運用資産残高増加の飛躍のエンジンにしたいと考えております。
アジア株式を投資対象とするOneAsia運用戦略は、良好なファンド・パフォーマンスが継続しているものの、運用資産残高は1,043億円に減少いたしました。今後アジアが世界をリードする時代が本格的に始まると考えており、東京・香港・韓国のファンドマネジャーがアジア企業への調査などを共同で行うなど、投資アイデアを共有することを続け、良好なファンド・パフォーマンスを実現させております。今後当社グループの成長を牽引する領域であるとの考えは変わっておらず、注力しなければならない最も重要な戦略の一つと考えております。日本株式の運用で培ってきた投資力でこのファンドを大きく成長させ、「アジア株もスパークス」とのSPARXブランドを幅広く認知いただくよう努めております。
再生可能エネルギー発電事業のインフラ資産を主な投資対象とする実物資産の運用戦略は、全国の発電施設への投資を実行しており、再生可能エネルギー投資戦略の運用資産残高は3,021億円の規模となっております。太陽光に加え、風力・バイオマス発電所も運営しておりますが、これに加え蓄電所事業へ参画し、さらに投資対象を広げております。また、北海道苫小牧でグリーン水素の製造・貯蔵・輸送・利用までのサプライチェーンを構築する環境省から委託を受けた実証事業も当年度に開始しております。今後も引き続き再生可能エネルギーファンドのパイオニアとして皆様のご期待にお応えするべく、魅力的な投資商品の提供を行ってまいります。
プライベート・エクイティ投資戦略は、次世代の企業の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドを中心に当該運用戦略のAUMは1,729億円となっております。IPO等のイグジット案件も出ており、これまでの投資の成果が、具体的に投資家の皆様へのリターンとして実現し、未来創生ファンドから初の成功報酬を計上しております。また、宇宙開発に関わる人材・技術を支援し、世界と戦える日本初の宇宙企業を育成すること、さらには日本全体の技術革新に貢献することを主たる目的に運用を開始した宇宙フロンティアファンドは投資が進み当年度に2号ファンドをAUM131億円で設立し運用を開始しております。これらのファンドについても質の高い投資を着実に実行し、投資実績を積み上げ、革新的な技術やビジネスモデルで世界をリードする企業を発掘・育成することで未来社会に貢献することを引き続き目指してまいります。加えて、日本モノづくり未来ファンドによるシンニッタン社へのTOB(株式公開買付)を実行しており、2024年1月に実施したIJTT社に続くものとなります。日本モノづくり未来ファンドは2020年に設立し、日本で優れた技術・人材・サービスを持つモノづくり企業に投資し、TPS(トヨタ生産方式)を活用して各社を支援し、適切な経営戦略を展開することで、社会に貢献することを目指したいという理念のもと設立いたしました。良い投資を積み重ね、企業の持続的な成長を通じて日本のモノづくりの発展と人財の育成に貢献し、このような投資領域でも大きな飛躍を目指しております。
なお、経営成績の分析については、「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績」に含めて記載しております。
(次期の見通し)
当社グループの主たる事業である投信投資顧問業は、業績が経済情勢や相場環境によって大きな影響を受けるため将来の業績予想は難しいと認識しており、次期の見通しについての具体的な公表は差し控えさせていただきます。
(3)当連結会計年度の財政状態の分析
<資産の部>当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ38億27百万円増加し、499億39百万円となりました。主な増減内訳は、現金及び預金が6億81百万円の減少、リース資産が16億69百万円の増加、発電設備開発権利金が12億18百万円の減少、投資有価証券が31億79百万円の増加となっております。
<負債の部・純資産の部>当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ17億39百万円増加し、164億32百万円となりました。主な増減内訳は、リース債務が17億49百万円の増加となっております。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ20億87百万円増加し、335億7百万円となりました。主な増減内訳は、利益剰余金が25億37百万円の増加、資本剰余金が3億67百万円の減少、自己株式が3億57百万円の減少、その他有価証券評価差額金が2億65百万円の減少となっております。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの投資を目的とした主な資金需要につきましては、シードマネー投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金を基本としており、シードマネー投資等につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債の残高は108億24百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は213億85百万円となっております。