有価証券報告書-第25期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)におけるわが国経済は、個人消費や設備投資の持ち直し等を背景として、雇用情勢・企業収益は引き続き緩やかな回復基調で推移しました。一方で、米中貿易摩擦の激化や米国政権運営に対する不安、地政学的リスクの高まり等、世界経済の先行きが不透明な状況が続いていました。さらに、2020年3月に顕在化した新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により、世界および日本経済は急速に悪化しました。
当社グループが属するセキュリティ業界におきましては、ランサムウェア・エモテット等、多様化するサイバー攻撃被害が相次いでいることを背景として需要が拡大しており、従来、需要の中心であった大規模組織のみならず、相対的にセキュリティ対策が遅れていた中堅・中小企業における新規導入需要が拡大しております。加えて、IoT・AI等の普及や新型コロナウイルス感染症拡大防止のためのテレワークの急速な普及に伴い、セキュリティ担当者が管理しなければならないリスクは益々多様化・高度化し、セキュリティサービスに対する需要は今後も拡大するものと予想されます。一方で、当連結会計年度においては消費税増税およびWindows7のサポート終了に伴うPCの買い替え需要が増加し、当社の販売代理店がPCの買い替え商談に注力する状況が続きました。 このような状況の中、当社グループの国内事業につきましては、お客様の規模に関わらず安全なインターネット環境を享受できるソリューションを提供するため、企業・公共向け市場においては、引き続き「i-FILTER」Ver.10、「m-FILTER」Ver.5の拡販に努めました。加えて、テレワークの普及等によりWebサービスやメール環境のクラウド化が急速に進んでいることを背景として、2018年5月に開始したクラウドサービス「i-FILTER@Cloud」「m-FILTER@Cloud」の価格改定により、クラウド環境においても、Webを安心して閲覧でき、メールをためらいなく開くことができる世界を提供してまいりました。さらに、テキストチャットに加えてビデオチャットによるオンライン会議を可能としたビジネスツール「Chat@Cloud」を提供開始し、コロナ禍において在宅勤務等のテレワークが急速に普及している中で、利用の増加が期待できる新製品をリリースいたしました。
家庭向け市場においては、高校生のみならず中学生以下の子どもたちにも急速にスマートフォンが普及していることを背景として、2018年2月1日に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が改正され、従来から義務付けられている青少年に対するフィルタリング導入の運用がより厳格化されました。当社グループは引き続き携帯電話事業者やMVNO事業者等と連携し、スマートフォン向け「i-フィルター」の更なる普及活動を推進いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて992,887千円増加し、10,852,234千円となりました。これは主として、有価証券が299,968千円、受取手形及び売掛金が177,721千円減少したものの、現金及び預金が1,482,473千円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度に比べて115,557千円増加し、2,172,010千円となりました。これは主として、未払法人税等が138,407千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度に比べて877,329千円増加し、8,680,224千円となりました。これは新株予約権の行使による減少要因があったものの、主として利益剰余金が822,412千円増加したことによるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度における売上高は5,641,805千円(前年同期比96.6%)、営業利益は2,328,036千円(前年同期比88.5%)、経常利益は2,326,930千円(前年同期比88.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,590,784千円(前年同期比81.1%)となりました。
各市場の業績は次の通りです。
企業向け市場
企業向け市場におきましては、当連結会計年度から販売を本格化させたハイエンドモデルである「i-FILTER」Ver.10、「m-FILTER」Ver.5については、積極的な販売促進活動を推進した結果、両製品の製品性に対する認知が高まり、新規案件の獲得が一定程度進んだものの、Windows7のサポート終了に伴うPC買い替え需要の著しい増加の影響により、想定を下回りました。一方で、セキュリティ人材の不足やテレワークの普及等を背景として、セキュリティ運用の負荷軽減を目的としたクラウドサービスの利用が加速し、当社製品ラインアップのうち、「i-FILTER」ブラウザー&クラウド等のクラウドサービス系製品の売上比率が徐々に高まり、売上高が増加しております。ライセンス販売については、出荷時に売上を一括計上するのに対し、クラウドサービスについてはサービス提供期間を通じて月額按分で売上計上するため、前受金残高が増加いたしました。当該残高は翌連結会計年度以降に売上計上することになります。
以上の結果、企業向け市場の売上高は、3,284,873千円(前年同期比104.8%)となりました。
公共向け市場
公共向け市場において、従来当社は内部情報漏洩型の国産セキュリティ対策メーカーとして高い認知とシェアを獲得してまいりました。その実績と信頼性が評価され、内部情報漏洩対策のみならず、標的型攻撃を含めた高度なセキュリティ対策が可能となる「i-FILTER」Ver.10、「m-FILTER」Ver.5の販売が進み、企業向け市場に先行して、当市場における総合セキュリティ対策メーカーとしての存在感を高めることが出来ました。また、企業向け市場と同様に、公共向け市場においてもクラウド化の動きが見られ、クラウドサービス系製品の売上比率が徐々に高まっており、翌連結会計年度以降に売上計上する残高が拡大いたしました。一方で、前連結会計年度に売上高をけん引した金額的規模の大きい受注案件の反動による減少が生じたことに加えて、児童生徒向けの1人1台の学習用端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する構想(GIGAスクール構想)において、2019年12月に閣議決定された補正予算案2,318億円が盛り込まれたことにより、交渉中の案件内容に見直しが行われ、当連結会計年度に獲得を見込んでいた案件が、翌連結会計年度以降に繰り越される見込みとなりました。
以上の結果、公共向け市場の売上高は、1,911,173千円(前年同期比87.2%)となりました。
家庭向け市場
家庭向け市場におきましては、携帯電話事業者やMVNO事業者等との連携、1つのシリアルIDで複数OSでの利用が可能な「i-フィルター for マルチデバイス」の販売に注力いたしました。拡大する青少年のスマートフォン利用に対して、フィルタリング導入が進んだこと、複数年パッケージ製品や複数の端末で利用可能な「i-フィルター for マルチデバイス」の販売が順調に推移したこと等により、ライセンス数が増加しました。一方で、携帯電話事業者に対する販売価格の見直しの影響により、売上高は減少しました。
以上の結果、家庭向け市場の売上高は、445,759千円(前年同期比86.4%)となりました。
当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の売上高
| 企業向け市場 | 公共向け市場 | 家庭向け市場 | 合計 | |
| 百万円 | 百万円 | 百万円 | 百万円 | |
| 2020年3月期 | 3,284 | 1,911 | 445 | 5,641 |
| 2019年3月期 | 3,133 | 2,191 | 516 | 5,841 |
(百万円未満切捨)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、2,082,473千円増加し、7,651,645千円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益2,326,026千円及び減価償却費805,723千円の計上等により、2,686,572千円の収入(前連結会計年度は3,091,862千円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得があったものの、定期預金の減少、有価証券の償還による収入等により、111,013千円の収入(前連結会計年度は908,784千円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の処分による収入があったものの、配当金の支払、自己株式の取得による支出等により、709,214千円の支出(前連結会計年度は429,712千円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
| 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) | |
| 企業向け市場 (千円) | 3,187,513 | 108.4 |
| 公共向け市場 (千円) | 1,883,048 | 88.0 |
| 家庭向け市場 (千円) | 447,911 | 87.2 |
| 合 計 (千円) | 5,518,473 | 98.6 |
(注)1 金額は販売価格によっております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当社グループは、セキュリティ事業のみの単一セグメントであるため、セグメントに係る記載は省略しております。
b.受注実績
当社グループは受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
| 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 前年同期比(%) | |
| 企業向け市場 (千円) | 3,284,873 | 104.8 |
| 公共向け市場 (千円) | 1,911,173 | 87.2 |
| 家庭向け市場 (千円) | 445,759 | 86.4 |
| 合 計 (千円) | 5,641,805 | 96.6 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 輸出販売高はありません。
3 当社グループは、セキュリティ事業のみの単一セグメントであるため、セグメントに係る記載は省略しております。
4 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | ||
| 金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
| SB C&S株式会社 | 1,247,566 | 21.4 | 1,166,937 | 21.9 |
| ダイワボウ情報システム 株式会社 | 1,160,228 | 19.9 | 1,109,164 | 20.8 |
(注)ソフトバンク コマース&サービス株式会社は、2019年1月1日付でSB C&S株式会社に社名変更しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は以下の通りであります。
a.経営成績等の状況
(売上高)
当連結会計年度の売上高は5,641,805千円となり、前連結会計年度と比較し199,481千円減少(前年同期比96.6%)となりました。
これは、企業向け市場で「i-FILTER」Ver.10、「m-FILTER」Ver.5の販売が進んだものの、Windows7のサポート終了に伴うPC買い替え需要の著しい増加の影響があったこと、公共向け市場で前連結会計年度に売上高をけん引した金額的規模の大きい受注案件の反動による減少が生じたこと、GIGAスクール構想の影響で交渉中の案件内容が見直され翌期以降に繰り越されたことに加え、家庭向け市場で、キャリアによるエンドユーザーに対するサービス無償化に伴うキャリアへの提供価格の引き下げを行ったことが主要因です。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は1,361,682千円となり、前連結会計年度と比較し302,237千円増加(前年同期比128.5%)となりました。また、売上総利益は4,280,123千円となり、前連結会計年度と比較し501,719千円減少(前年同期比89.5%)となりました。
当連結会計年度は、新製品のリリースに伴う減価償却費の増加、コンサルタントの人員増による労務費の増加等により、売上総利益が減少いたしました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,952,086千円となり、前連結会計年度と比較し200,664千円減少(前年同期比90.7%)となりました。また、営業利益は2,328,036千円となり、前連結会計年度と比較し301,055千円の減少(前年同期比88.5%)となりました。
当連結会計年度は、前期の海外戦略見直しに伴うグループ再編によって販売費及び一般管理費の収益性が改善したものの、売上高の減収に伴い営業利益が減少いたしました。
(経常利益)
当連結会計年度は、主として雑収入2,354千円、未払配当金除斥益840千円等を営業外収益に計上し、為替差損4,812千円等を営業外費用に計上したことにより、経常利益は2,326,930千円(前年同期比88.4%)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の米国子会社清算に伴う税金費用の抑制効果の反動減により、1,590,784千円(前年同期比81.1%)となりました。
b. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標についての分析
当連結会計年度における客観的な指標は以下の通りであります。なお、契約高成長率については、「a.経営成績等の状況(売上高)」に記載している主要因により減少しております。契約高成長率と売上高成長率の乖離は、主に当連結会計年度の売上高に前連結会計年度以前の契約高から繰延計上された売上高が含まれていることによるものであります。
| 前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | |
| 契約高成長率 (%) | 19.3 | △8.6 |
| 売上高成長率 (%) | 14.2 | △3.4 |
| 営業利益率 (%) | 45.0 | 41.3 |
| 自己資本当期純利益率(ROE) (%) | 28.1 | 19.4 |
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
資本政策につきましては、企業価値の持続的な向上を目指し、成長分野に対して迅速に投資可能な水準の内部留保の充実と株主の皆様への利益還元を総合的に勘案し、実施していくことを基本方針としております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,651,645千円となっているのに対して、有利子負債残高はございません。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、高付加価値なソリューションを提供するために必要な優秀人材の確保と育成に関する人件費等であります。内部留保については人材の確保と育成に対して優先的に充当し、既存事業の安定的・継続的な成長を持続すると共に、新しいニーズの発掘に積極的に取り組んでまいります。
d.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。