有価証券報告書-第51期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/25 13:38
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161項目
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における売上高は26,450百万円と前連結会計年度に比べて1,359百万円(5.4%)の増加となっております。
営業利益は4,162百万円と前連結会計年度に比べて1,082百万円(20.6%)の減少、経常利益は7,015百万円と前連結会計年度に比べて2,178百万円(23.7%)の減少となり、親会社株主に帰属する当期純利益は固定資産除売却損54百万円、減損損失34百万円を計上したこと等から、5,531百万円と前連結会計年度に比べて528百万円(8.7%)の減少となりました。
当社グループのセグメント別業績は次のとおりであります。
(a) CRO事業
売上高は25,909百万円と前連結会計年度に比べて1,909百万円(8.0%)の増加となり、営業利益は、6,998万円と前連結会計年度に比べて662百万円(10.5%)の増加となりました。
(b) トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)
売上高は13百万円と前連結会計年度に比べて前連結会計年度に比べて3百万円(19.7%)の減少となり、営業損失は2,465百万円(前連結会計年度:営業損失879百万円)となりました。
(c) メディポリス事業
売上高は569百万円と前連結会計年度に比べて114百万円(16.8%)の減少となり、営業損失は254百万円(前連結会計年度:営業損失203百万円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前連結会計年度末に比べて1,077百万円(11.7%)増加して、10,274百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は2,106百万円と前連結会計年度に比べて1,897百万円(47.4%)の減少となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純利益6,974百万円、減価償却費1,774百万円、持分法による投資利益2,751百万円、棚卸資産の増加額5,003百万円、前受金の増加額1,487百万円、利息及び配当金の受取額2,447百万円及び法人税等の支払額1,223百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は6,907百万円と前連結会計年度に比べて977百万円(16.5%)支出が増加となりました。
主な内訳は、有形固定資産の取得による支出8,583百万円があったことに対して定期預金の払出による収入1,507百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は5,318百万円と前連結会計年度に比べて947百万円(15.1%)の減少となりました。
主な内訳は、長期借入れによる収入が17,700百万円あったことに対し、長期借入金の返済による支出6,230百万円を行ったこと、短期借入金の純増減額△3,903百万円及び配当金の支払額を2,072百万円行ったためであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前期比(%)
CRO事業28,662,089101.2
トランスレーショナル リサーチ事業11,67070.8
メディポリス事業477,55079.5
報告セグメント 計29,151,310100.7
その他事業936,444169.4
合計30,087,755102.0

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
(b) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前期比(%)受注残高(千円)前期比(%)
CRO事業28,388,157109.433,538,610113.7
トランスレーショナル
リサーチ事業
11,67070.8--
メディポリス事業477,55079.5--
報告セグメント 計28,877,378108.733,538,610113.7
その他事業1,036,123164.3865,865644.8
合計29,913,501110.034,404,475116.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前期比(%)
CRO事業25,660,795107.3
トランスレーショナル リサーチ事業11,67070.8
メディポリス事業477,55079.5
報告セグメント 計26,150,016106.6
その他事業300,45254.7
合計26,450,468105.4

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、販売価格によっております。
3 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。
(a) 概要
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと費用の効率化並びに規制当局への対応簡素化を期待してCROへのアウトソーシングの動きが引き続き活発化しています。加えて核酸医薬、次世代抗体医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新規創薬モダリティ(治療手段)の研究開発が本格化してきています。このようなトレンドを受け、CRO事業を主力事業とする当社は、“ダントツのCRO”としてクライアントから第一に指名される存在になることを目指しており、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上並びに継続的な品質の向上に注力しております。
(b) CRO事業
CRO事業は、細胞・実験動物等を用いる非臨床試験(または前臨床試験)を受託する非臨床事業と、臨床試験を受託する臨床事業から構成されます。
当社の非臨床事業は、業界では国内最大手であり、海外では実験用NHPを用いた数多くの試験実績から第2グループの一角を占めています。非臨床事業業績の先行指標である受注高は、2020年3月期から当連結会計年度までの4年平均成長率(CAGR)は20.1%(イナリサーチ社を除くと16.0%)と順調に拡大しています。当社がこれまで実施してきた以下の取組みが成果を表してきております。
・CROとして唯一構築できている「自社グループ内における大型実験動物繁殖・供給体制」が新たな創薬モダリティの研究開発の本格化等により重要性を増し、加えて世界的な実験用NHPの枯渇により受注に繋がっております。また、国内での実験用NHP繁殖体制を強化し、輸入リスクの軽減と品質向上を目指しております。当連結会計年度には新規の繁殖・育成施設が完成し、稼働を開始しました。
・試料中の医薬品等開発候補品(被験物質)やバイオマーカーの濃度分析をバイオアナリシスと呼びます。新たな創薬モダリティの有効性・安全性評価に必要な最新鋭装置を導入し、被験物質やバイオマーカーの評価系を早い時期から構築してきたことが、上記「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」構築と相乗効果を発揮し、新たな創薬モダリティに関連した受注に繋がっております。
・これらの取組みを評価いただき国内製薬企業と新たなプリファード契約を締結し受注増に繋がっております。また、当連結会計年度に入り海外大手製薬数社が新たな契約締結へ向けたデューデリジェンスを本格化しておりましたが、第3四半期に複数社からパイロットとなる受注を得ることができました。
・大手製薬企業との創薬段階における包括的研究受託契約も順調に推移し、既に複数の企業から創薬段階の研究を受注しております。
・研究員を中心にサイエンスレベル向上に注力しております。当社は、顧客に対してより効果的で効率的な試験を提示できる提案型CROを目指しており、当連結会計年度には国内外の複数の学会において研究成果の発表及び論文発表を行いました。また、韓国、日本国内においてSNBLセミナーを開催し、多くの顧客と科学的なディスカッションを行い、当社のこれらまでの経験や取組みを広くご理解いただきました。
上記取組みの結果、2024年3月期における非臨床事業の受注高は27,411百万円と過去最高となり、前年度から2,490百万円(10.0%)の増加となりました。2024年3月末の受注残高は33,212百万円となりました(2023年3月末比3,964百万円増)。国内製薬企業、ベンチャー企業の受注高は順調に増加し、国内受注高は前年度比4,019百万円(24.6%)増加の20,359百万円となりました。海外からの受注額は、前年度比1,529百万円(17.8%)減少の7,052百万円となり、総受注額に占める海外受注比率は25.7%(前年度は34.4%)となりました。しかしながら、受注の先行指標である足元の問い合わせ状況は好転しており、海外顧客からの問い合わせ及び当社訪問件数も増加しております。なお、2022年7月に連結子会社となった株式会社イナリサーチ(以下、イナリサーチ)の2024年3月期の受注高は3,540百万円となっております。
(c) トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)
トランスレーショナル リサーチ事業(TR:Translational Research、以下TR事業)とは、自社研究開発のほか、国内外の大学、バイオベンチャー、研究機関などにおいて基礎研究から生まれる有望なシーズや新技術を発掘し、付加価値を高めて事業化または株式上場、あるいはM&Aにつなげる研究開発型の事業です。
1997年以来、TR事業の主軸として探求してきた当社経鼻投与基盤技術は、独自の担体組成をベースとした、粉体製剤技術と独自設計の投与デバイス(医療機器)を組み合わせたプラットフォーム技術です。鼻粘膜上での十分な停留性と、速やかな薬物吸収に基づく即効性を特徴としており、加えて注射に比べて投与が簡易で製剤の室温保存も可能という強みがあります。
経鼻投与の事業化については、プロジェクトを数種に絞り込んでおります。当社連結子会社である株式会社SNLDでは、国内でパーキンソン病のオフ症状治療のための経鼻On-demand therapy(要求に応じた治療)薬(開発コード:TR-012001)の開発を進めており、2024年1月に臨床第2相前期試験における患者様への投薬を完了しました。現在、安全性・忍容性・即吸収性を確認し、Proof-of-Concept(POC)取得に至るデータの固定と解析を鋭意進めております。また、更なる利便性向上を企図した、TR-012001の改良開発品(TRN501)については、2024年1月に臨床第1相試験の治験届を提出し、すでに遂行段階にあります。2024年6月に、日本人健康成人への投薬開始を予定しております。
当社は経鼻偏頭痛治療薬(開発コード:STS101)の開発を進める米国Satsuma社に経鼻投与技術のライセンス供与をしていましたが、2023年4月16日にSatsuma社の買収に関する契約を締結、公開買付けを実施し、2023年6月8日に同社を完全子会社としました。STS101は、偏頭痛に対して豊富な効果実績を有するジヒドロエルゴタミンを有効成分とし、臨床試験で速やかで持続的な吸収と高い安全性が確認された、使い勝手と携帯性に優れた経鼻剤です。Satsuma社は、2023年3月17日にFDA(米国食品医薬品局)に新薬承認申請書(NDA)を提出し、2024年1月17日にFDAから審査完了報告通知を受領しました。Satsuma社では、FDA見解に基づいて、本年2月に製造した製剤の安定性情報までを組み入れた上で、本年10月までに本剤の新薬承認の再申請を行うべく準備を進めています。
もう1つの経鼻製剤開発プロジェクトとして、経鼻粘膜免疫作用を期待した経鼻ワクチンの研究を行っております。多くのワクチンの目的は発症阻止または重症化予防ですが、当社が目指す経鼻ワクチンは、感染そのものを起こさせないこと(これを「遮断免疫」と言います)を狙って開発しています。2023年4月には近畿大学名誉教授・医学部客員教授の宮澤正顯(まさあき)氏を当社TRカンパニー経鼻粘膜ワクチン研究開発センターのトップに迎えました。国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)内に設置した先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が公募した令和5年度「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」に係る研究開発課題の中から「感染症ワクチンへの応用が期待される新規モダリティの研究開発」について、当社の「粉体噴射型IgA産生誘導経鼻ワクチンシステムの開発」が採択されました。新規ワクチン国策研究開発の大型予算を得て、複数の呼吸器系ウイルスに対し上気道に遮断免疫能を付与する粉体型経鼻ワクチンの開発を本格化することになりました。
子会社の株式会社Gemsekiは、創薬シーズ・技術に関するライセンス仲介事業をグローバルベースで展開するとともに、同社を無限責任組合員としたファンドを組成し、ベンチャー企業への投資事業を行っております。ライセンス仲介事業においては、Gemsekiの仲介により、複数の案件でオプション契約や共同研究契約が締結されました。2023年5月には、国立大学法人北海道大学と株式会社ティムスのオプション契約が締結されたことを開示いたしました。また、本オプション契約に基づいて、2023年10月に国立大学法人北海道大学、株式会社ティムス及び国立大学法人金沢大学の共同研究契約が締結されました。その他、合意書締結等に至った案件もでており、創薬シーズ・技術の導出・導入、産学連携に貢献しております。
投資事業は、既存投資先への追加投資を含むベンチャー企業への投資を積極的に検討しております。国内外の複数の既存投資先との継続的なコミュニケーションの過程で、Gemsekiのライセンス仲介事業や当社との事業シナジー創出に向けた検討を進めております。医薬品・医療機器を創出し育てていくために必要な支援を当社グループ内でワンストップで提供するとともに、当社グループ間でのシナジー創出を目指しております。
(d) メディポリス事業
当社は、鹿児島県指宿市の高台に103万坪(3,400,000㎡)の広大な敷地「メディポリス指宿」を保有しており、この自然資本(約9割が森林)を活用したメディポリス事業を社会的利益創出事業として展開しています。社会的利益創出事業は、企業理念である「環境、生命、人材を大切にする会社であり続ける」ことを体現するものであり、当社は経済的利益のみならず、社会や環境課題といった視点からの社会的利益を一体的に創出しています。具体的には、再生可能エネルギーを活用した発電事業や人々のWellbeing(ウェルビーイング)、つまり全人的な健康の実現をメインコンセプトとしたホテル宿泊施設の運営(ホスピタリティ事業)などを行っております。
発電事業は、2015年2月より1,500キロワット級のバイナリー式地熱発電所を運営しています。本発電所は、当連結会計年度第4四半期より発電機の開放点検並びに修繕を実施しておりました。これに伴い、地熱発電所の稼働停止が発生しておりましたが、2024年5月に修繕が完了し、稼働を再開しております。また、新規発電プロジェクトとして、ホテルで浴用や床暖房に使用している泉源の余剰蒸気を活用した温泉発電所の計画を進めております。本プロジェクトは2024年3月期の売電開始に向けて最終的な調整段階に入っておりましたが、発電設備の初期不良が見つかり、現在、一部設備の新品交換を含めた修繕作業を行っております。売電開始は2025年3月期第4四半期を予定しております。なお、本温泉発電所は固定価格買取制度におけるFIT認定(期間15年、売電単価40円/kWh)を取得済みであることから、遅延による本プロジェクトの期待収益に与える影響は軽微であります。
ホスピタリティ事業は、お客様のニーズに合わせる形でホテル施設(宿泊部屋総数74室)を宿泊棟と機能ごとに3つに区分しており、ヒーリングリゾートホテル「別邸 天降る丘」、研修滞在型施設「指宿ベイヒルズHOTEL & SPA」、メディポリス国際陽子線治療センターの患者様専用宿泊施設「HOTELフリージア」がそれぞれ稼働しております。なお、メディポリス国際陽子線治療センターは2011年1月に治療を開始して以来、6,400件を超えるがん患者さんの陽子線治療の実績を積み重ねています。ホスピタリティ事業を行っている意義は、主に2点あります。1つは、企業価値向上という視点で、人々のWellbeingに貢献する企業であるという点です。もう1つは、新日本科学における顧客へのおもてなしマインド向上への貢献という点にあります。ホスピタリティ事業を通して、新日本科学グループとしてのおもてなしマインドを一層強化し、それを主力のCRO事業にも還元していくことは、当社が世界で戦っていくうえで重要な役割を果たすことになると考えています。
(e) 財政状態の分析
当連結会計年度における前連結会計年度末からの財政状態の変動は、以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ19,060百万円(33.3%)増加し、76,302百万円となりました。流動資産は、「受取手形、売掛金及び契約資産」が1,018百万円(21.4%)増加したことや「棚卸資産」が5,043百万円(68.8%)増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ6,938百万円(29.0%)増加して30,837百万円となりました。
固定資産は、「有形固定資産」が7,478百万円(39.6%)増加したことや「投資有価証券」が3,255百万円(27.2%)増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ12,121百万円(36.4%)増加して45,464百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ11,258百万円(36.5%)増加し、42,141百万円となりました。「有利子負債」が増加したことや「前受金」が増加したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度に比べ7,801百万円(29.6%)増加し、34,160百万円となりました。「利益剰余金」が増加したことや「為替換算調整勘定」が増加したことによるものであります。
(f) 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、医薬品開発に係わるGLPやGCPといった法的規制に対する適合性の調査等で高い評価を受けております。しかしながら、クライアントの創薬開発競争が激化し国際化、高度化及び大型化していく中で、当社グループは、サービスの質を継続的に高めていくと共に、グローバル化し複雑化していく顧客ニーズに対し的確に対応しつつ成長を維持していくために、設備、人材面での投資が不可欠となっております。人材の育成には時間を要する部分があり、また施設に対する投資も規模の経済性の観点からも先行的に行う必要が生じます。
とりわけ、日本よりもはるかに巨大な市場を有する米国等の海外クライアントからのニーズに迅速かつ的確に対応していくためには、海外の規格や法的規制に対応可能な体制を整えることが戦略的に重要であると考えております。海外の規格や基準に適合性をもつためには、十分なる準備や適合性に関する調査への対応が必要であります。
従って、事業のグローバルな競争力の向上と事業規模拡大のためには、これらに継続的に取り組む必要があり、その結果、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(g) 戦略的現状と見通し
CRO事業は、中長期的な視点で国内外の顧客からの要望に対して、確実に応えられる体制構築に取り組んでおります。抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療、再生医療などの新規創薬モダリティ分野の研究支援では、最新装置の導入及び評価系の構築などの投資へも積極的に取り組んでおり、他施設では実施困難な案件を受託できております。また、新型コロナウイルスに対するワクチンあるいは治療薬の研究・開発についても、当社のリードタイム短縮などの取組みを顧客に評価いただき、多くの案件を受託しております。
TR事業は、当社独自の経鼻投与基盤技術を用いた既存薬剤の投与経路変更による医薬品開発など、パートナー企業とのアライアンス構築を進めており、特に国外の製薬企業との、複数の候補薬剤ライセンスアウト・共同開発交渉を継続します。また、米国で経鼻偏頭痛治療薬の新薬承認申請をしているSatsuma社に対し、支援をしてまいります。当社連結子会社であるSNLD社では、当社TRカンパニーが業務委託契約を結び、ハンズオンで開発をサポートしています。パーキンソン病のオフ症状治療のための経鼻レスキュー薬の第1相臨床試験は2023年1月に終了しており、次相での薬効を的確に把握するための臨床試験の準備を進めるとともに、それに続くポートフォリオとして、当社の経鼻投与基盤技術に親和性のあるレスキュー薬として主に中枢神経作動薬を調査中です。経鼻粘膜免疫作用を期待したワクチンの研究開発については、経鼻粘膜ワクチン研究開発センターを主体として活動推進してまいります。また、子会社Gemseki社は、創薬シーズ・技術に関するライセンス仲介事業をグローバルベースで積極的に展開すると共に、投資事業を推進してまいります。
メディポリス事業では、従来の地熱発電所に加えて、既存の泉源を活用した温泉発電所の稼働開始に向けた準備を進めております。ホテル事業は、サービスの質のさらなる向上に加え、積極的なインバウンドの受け入れ体制強化にも注力し、より強固なブランディングを通して集客力の強化を行ってまいります。その他、メディポリス指宿の資源を最大限活用すべく、地熱由来の電力を使用したグリーン水素製造を含む様々な取組みを検討しております。
(h) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、ここ数年の世界的な新薬開発における国際化、大型化、高度化等の動向に鑑みますと、環境の変化に対応して経営施策を機動的かつ柔軟に展開していくことが要求されております。
CRO事業においては、海外顧客からの引き合いは引き続き活発に推移しており、グローバルな大手製薬企業からも継続的な受注に成功しております。この20年間、米国非臨床事業運営で培ったノウハウと米国での勤務経験を積んだ人材資産を活用して、海外顧客からの受託拡大を実現しております。
これら顧客ニーズに応えている大きな要因は、当社が構築している「自社グループ内での実験用NHPの繁殖・供給体制」、サプライチェーンマネジメントであります。新型コロナウイルス感染の蔓延などによる医薬品開発への実験動物需要増加が世界的に顕著となっており、その供給不足がCRO業界の課題となっております。当社では長年にわたり確立してきたサプライチェーンにより、以前と同様に安定的な実験動物の供給を実現しております。今後もこれらサプライチェーンマネジメントの強化施策を実施してまいります。その一環として、中国における実験動物繁殖・供給施設であるSNBL CHINAを中国上場企業のPharmaronグループとの合弁事業とすることで拡充し、カンボジアの当社グループ施設の繁殖体制強化とともに、日本国内の繁殖育成を強化します。今後も効率的かつ効果的に各種実験を適切なタイミングで行えるオンリーワンの事業価値を継続して提供してまいります。
TR事業では、遮断免疫作用を有する新規経鼻ワクチンの研究を推進しており、ワクチンの効果を高めるためのアジュバント製剤に関する研究にも取り組んでおります。新規経鼻ワクチンの研究開発を目的として、2023年1月に共同研究契約を締結した近畿大学と連携強化し、ワクチン開発会社や研究機関との更なる連携体制も構築しながら、ワクチンの開発推進に当社も独自技術で寄与していくことを計画しております。また、鼻から脳へと薬物を送達させる技術(Nose-to-Brain送達技術)研究においては、臨床研究段階へと進展させるべく、臨脳移行性をさらに高めるための製剤や投与デバイスの改良研究を進めております。
昨今の医薬品開発においては、低分子医薬品から抗体医薬・核酸医薬、さらに再生医療・遺伝子治療へと創薬モダリティの多様化が進んでおります。当社グループは、こうした業界の動きに一早く対応し、常に新たな創薬ニーズに応えるべく取り組んで参りました。特に再生医療分野においては、京都大学iPS細胞研究所との共同研究に基づくiPS細胞を用いた治療に向けた安全性試験に関する研究開発経験を活かして受託しているほか、重要投資先である株式会社リジェネシスサイエンスを通じたライセンス事業にも取り組んでおります。
今後とも創薬モダリティの多様化により生じる顧客からの様々な新規ニーズに迅速に対応し、付加価値の高いサービスを効率的に提供してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(a) 資金需要
当社グループの資金需要は、主に設備投資等の投資及び運転資金等となっております。設備投資等の投資を行うにあたっては、案件ごとに投資の回収可能性や収益向上の点から検討を行い、重要なものについては取締役会での決議を経て決定するなど、社内の所定の手続に従って決定しております。計画については、「第3設備の状況 3設備の新設、除却等の計画(1)重要な設備の新設等」に記載のとおりです。
(b) 資金の源泉
営業キャッシュ・フローからの収入で賄いきれないものについて、借入により調達しております。また、設備投資の一部についてファイナンス・リースを利用しております。なお、当連結会計年度における現金及び現金同等物等の残高は10,274百万円となっております。
(c) 有利子負債
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は26,331百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積に用いた仮定
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。
以下「連結財務諸表規則」) に基づいて作成しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載しております。