半期報告書-第52期(2024/04/01-2025/03/31)
文中における将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
(経営成績)
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと費用の効率化ならびに規制当局への対応簡素化を期待してCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)へのアウトソーシング(外部委託)の動きが引き続き活発化しております。加えて核酸医薬、次世代抗体医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新規創薬モダリティ(治療手段)の研究開発が本格化してきています。このようなトレンドを受け、新規創薬モダリティの研究開発支援で高い実績をもつ当社は、“ダントツのCRO”としてクライアントから第一に指名される存在になることを目指しており、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上ならびに継続的な品質の向上に注力しております。
こうした状況の中、当中間期連結累計会計期間(2024年4月1日から2024年9月30日;以下 2025年3月期中間期)における売上高は主力のCRO事業がけん引し、12,508百万円となり、前中間期連結累計会計期間(以下 前中間期)に比べて624百万円(5.3%)の増加となりました。営業利益は、80百万円と前中間期に比べて2,269百万円(96.6%)の減益となりました。減益の主因は、米国連結子会社のSatsuma Pharmaceuticals,Inc.(以下、Satsuma社)の経鼻偏頭痛治療薬「STS101」のFDA再申請に向けた経費1,272百万円が計上されたことです。また、当社は主力事業のCRO事業について、現状の当社を取り巻く事業環境をさらなる成長への好機ととらえており、人材の大幅強化、実験施設の増強、実験用NHPの国内繁殖体制確立等、戦略的に大型先行投資を継続して行っていることによるコストアップも減益の要因となりました。経常利益は営業利益の減益により1,829百万円と前中間期に比べて1,927百万円(51.3%)の減益となりました。CRO事業のうち臨床事業を推進している新日本科学PPDからの持分法利益は前中間期比476百万円増加の1,708百万円となり、中間期として過去最高となりました。為替差損益については96百万円の為替差損となり、前中間期の為替差益(242百万円)と比べて338百万円の減益要因となっております。親会社株主に帰属する中間純利益は1,331百万円と前中間期に比べて1,635百万円(55.1%)の減益となりました。
当社グループの従業員数(連結ベース/時間給・非常勤を除く)は、2024年4月に100名(うち女性は59名)の新入社員が加わったこともあり2024年9月30日現在で1,451名(2024年3月末比110人増)です。なお、当社の女性従業員比率は51.9%(連結ベース/臨時従業員も含む)となっております。
セグメント別の経営成績及びSDGs/ESGへの取組みは次のとおりです。
① CRO事業
CRO事業は、細胞・実験動物等を用いる非臨床試験(または前臨床試験)を受託する非臨床事業と、臨床試験を受託する臨床事業から構成されます。
当社の非臨床事業は、業界では国内最大手であり、海外では実験用NHP(Non-human Primates)を用いた数多くの試験実績から第2グループの一角を占めています。2025年3月期中間期の非臨床事業は、順調に推移しました。当社がこれまで実施してきた以下の取組みが成果を表してきております。
・CROとして世界で唯一構築できている「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」が新たな創薬モダリティの研究開発の本格化等により重要性を増しております。加えて、海外での実験用NHPの入手困難な環境もプラスに働き、受注に繋がっております。また、2023年3月期より本格的に国内でのNHP生産体制を強化し、輸入リスクの軽減と品質向上を目指しております。2025年3月期中間期には新たな繁殖・育成施設を追加建設し、稼働を開始しました。
・生体試料中の医薬品等開発候補品(被験物質)やバイオマーカーの濃度分析をバイオアナリシスと呼びます。新たな創薬モダリティの有効性・安全性評価に必要な最新鋭装置を導入し、被験物質やバイオマーカーの評価系を早い時期から構築してきたことが、上記「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」構築と相乗効果を発揮し、バイオアナリシスの受注増に繋がっております。
・これらの取組みを評価いただき複数の製薬企業とプリファード契約(予め選定したCROに優先的に委託する契約)を締結し受注増に繋がっております。また、2024年3月期には複数の海外大手製薬企業とプリファード契約締結へ向けたデューデリジェンスの初回試験を受注しました。2025年3月期は海外営業人員を増加し営業活動を強化しています。海外受注の増加に対応するため、研究所内に海外顧客専任チーム(Global Study Team: GST)を組成しました。
・国内大手製薬企業との創薬段階における包括的研究受託契約も順調に顧客数が推移しており、複数の企業から創薬初期段階からの研究を受注しております。
・2022年12月から鹿児島本社で進めてきた新社屋研究棟(地上8階建・2棟)が2024年5月末に竣工し、6月18日に落成式を行いました。新棟はバイオアナリシス実験室の拡張をはじめ非臨床事業において大型受注に対応できる体制構築を進めていくうえで重要な役割を担っており、9月から本格運用を開始しております。現在、Microphysiological System(MPS)の受託サービス開始へ向け準備を進めておりますが、新社屋研究棟にはMPS受託のための専用実験室も設置しております。
・2024年7月30日、岸田首相(当時)が開催した「創薬エコシステムサミット」において、永田社長も首相官邸に招かれ、当社グループの創薬エコシステムにおける事例の紹介(1部および2部)を行いました。発表スライドは、内閣府ホームページ「創薬エコシステムサミット」にてご覧いただけます。
上記取組みの結果、2025年3月期中間期における非臨床事業の受注高は15,311百万円と前中間期に比べて2,695百万円(21.4%)の増加となり、中間期として過去最高を更新しました。なお、Q2(7月-9月)の受注高は8,140百万円(前Q2は4,217百万円)となり、Q2として過去最高を更新しています。中間期の国内受注高は前中間期比76百万円(0.8%)増加の9,756百万円、海外受注高は、前中間期比2,619百万円(89.2%)増加の5,555百万円となり、総受注額に占める海外受注比率は36.3%(前中間期は23.2%)となりました。海外受注高増加の主要因は欧米顧客からの受注増加で前中間期比46.7%増の3,653百万円となっております。一方、2025年3月期中間期における既契約案件の試験開始前キャンセル高は3,260百万円であり、その内訳はQ1が2,217百万円、Q2が1,043百万円となっています。なお、2024年9月末の受注残高は35,877百万円と高水準を維持しています。
臨床事業は、米国に本拠を置くグローバル臨床CROであるPPD,Inc.(以下、PPD社)との合弁会社、株式会社新日本科学PPD(以下、新日本科学PPD)において、主に国際共同治験(グローバル・スタディ)の受託事業を展開しております。PPD社は、2021年12月に世界的な大手医療機器企業であるThermo Fisher Scientific Inc.グループに加わることにより、受注シナジーを高めることを目指しております。新日本科学PPDは、PPD社が受託した国際共同治験における日本エリアの実施を主力事業としており、グローバル企業でありながら、当社がこれまで長年培ってきた経営・教育ノウハウを取り入れ定着率の高い職場環境を整えることで、ハイレベルな受注残高を背景に、設立以来高い成長率を実現してきております。
治験の推進にあたっては、Web会議システムやデバイスの普及進化に合わせて、医療機関へ訪問せずにデータ収集などを行う“リモートモニタリング”を組み合わせることにより効率化を図ってきております。また人材採用面では、設立当初から4月入社と併設する形で10月入社を希望する新卒者には半年間の奨学金を支給し海外語学留学等を通じGlobalな対応力や社会経験値を高めた上で入社できる制度を導入し、設立以来累計200人以上の新卒者が語学留学を経て入社しております。同時に経験値を積んだグローバルキャリア組の積極採用・海外大学卒のバイリンガル組採用と共に、新卒の春秋入社制度をバランスよく組み合わせつつ機動的な採用戦略を進めてまいりました。新卒入社後2年間は社内に併設されているビジネスイングリッシュスクールで学ぶことができ、その後はPPD社の国際的ネットワークを活用した短期留学制度を通じて欧米の治験制度を学ぶ機会を設けるなど世界に通用するグローバル人材の育成に長年努めてまいりました。その結果、2015年4月のスタート時と比較しますと社員総数は2024年4月末で約3倍の1,000名を超えております。
新日本科学PPDの2025年3月期中間期の「持分法による投資利益」は1,708百万円(前中間期は1,232百万円)と大幅に増加しており、中間期として過去最高となりました。新日本科学において、実験用NHPを用いた非臨床事業は成長エンジンとなっていますが、新日本科学PPDによる臨床事業は当社の2つ目の成長エンジンとなっています。
CRO事業の2025年3月期中間期の売上高は、12,199百万円と前中間期に比べ708百万円(6.2%)の増加となり、中間期として過去最高を更新しました。同事業の営業利益は、2,205百万円と前中間期に比べ736百万円(25.0%)の減益となり、売上高営業利益率は18.1%になっております。
② トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)
トランスレーショナル リサーチ事業(TR:Translational Research、以下TR事業)とは、自社研究開発のほか、国内外の大学、バイオベンチャー、研究機関などにおいて基礎研究から生まれる有望なシーズや新技術を発掘し、付加価値を高めて事業化または株式上場、あるいはM&Aにつなげる研究開発型の事業です。
1997年以来、TR事業の主軸として探求してきた当社独自開発の経鼻投与基盤技術は、担体組成をベースとした粉体製剤技術と投与デバイス(医療機器)を組み合わせたプラットフォーム技術です。鼻粘膜上での十分な停留性と、速やかな薬物吸収に基づく即効性を特徴としており、加えて注射に比べて投与が簡易であり、製剤の室温保存も可能という強みがあります。
経鼻投与の事業化は、連結子会社のSatsuma社が経鼻偏頭痛治療薬(開発コード:STS101)臨床試験を終了しており、2024年10月30日にFDA(米国食品医薬品局)に対し新薬承認の再申請を行いました。また、パーキンソン病のオフ症状治療のための経鼻On-demand therapy(要求に応じた治療)薬(開発コード:TR-012001)の開発を当社連結子会社である株式会社SNLDで進めています。
Satsuma社で開発を進めているSTS101は、偏頭痛に対して豊富な効果実績を有するジヒドロエルゴタミンを有効成分とし、臨床試験で速やかで持続的な吸収と高い安全性が確認された、使い勝手と携帯性に優れた経鼻剤です。Satsuma社が実施したSTS101の臨床第3相長期安全性試験(試験名:ASCEND)の成果に基づく論文が、2024年10月8日に中枢神経疾患の薬物療法に関して権威のある国際医学専門誌CNS Drugsに掲載されました。論文の筆頭著者は米国頭痛学会フェローであり、頭痛領域で国際的に著名なStewart J. Tepper医学博士です。博士はSatsuma社のプレスリリースに「STS101が安全で、忍容性が高く、患者が長期にわたって使用しやすいことがデータで実証されたことをうれしく思います。これは、既存の治療法では十分な緩和効果が得られなかった偏頭痛患者と、新しい治療法を求めている治療医にとって、非常に重要な情報です」「ここ数年で新しい治療法が導入されましたが、経口投与では迅速な緩和が得られない多くの患者には、新しい非経口治療の選択肢が極めて必要です」とのコメントをいただいております。
パーキンソン病のオフ症状治療のための経鼻On-demand therapy薬(開発コード:TR-012001)の開発については、2024年1月に臨床第2相前期試験における患者様への投薬を完了しています。現在、安全性・忍容性・即吸収性を確認し、Proof-of-Concept(POC)取得に至るデータの固定と解析が進み、最終報告書の確定が間近となりました。次年度の学会発表を企図しております。また、更なる利便性向上を企図した、TR-012001の改良開発品(TRN501)については、2024年8月に臨床第1相試験における日本人健康成人への投薬を完了し、データ解析に進んでおります。
当社のTR事業は、もう1つの経鼻製剤開発プロジェクトとして、経鼻粘膜免疫作用を期待した経鼻ワクチンの研究を行っております。多くのワクチンの目的は発症阻止または重症化予防ですが、当社が目指す経鼻ワクチンは、感染そのものを起こさせないこと(これを「遮断免疫」と言います)を狙って開発しています。一方、日本政府が国策としてのワクチン開発を迅速に推進するために、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)内に設置した先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が公募した令和5年度「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」に係る研究開発課題の中から「感染症ワクチンへの応用が期待される新規モダリティの研究開発」について、当社経鼻粘膜ワクチン研究センター監修の「粉体噴射型IgA産生誘導経鼻ワクチンシステムの開発」が支援対象として採択され、非臨床POC取得まで1億円の予算を獲得しており、複数の呼吸器系ウイルスに対し上気道に遮断免疫能を付与する粉体型経鼻ワクチンの開発が、製剤化研究と非臨床試験系の確立を目指して、本格化しております。
当社の連結子会社の株式会社Gemseki(以下、Gemseki)は、「創薬シーズの最適な活用を支援することで、人類および社会に貢献する」ことを企業理念に2017年10月に設立され、創薬シーズ・技術に関するライセンス仲介事業をグローバルベースで展開するとともに、同社を無限責任組合員としたファンドを組成し、ベンチャー企業への投資事業を行っております。他方、今後の当社グループの経営資源の有効活用と最適化、ならびに経営の効率化を考慮しますと、当社の一部門としてGemsekiの活動を取り込むことが合理的であると判断し、10月1日付でGemsekiの会社分割および吸収合併を行いました。具体的には、ライセンス仲介事業は当社が吸収合併し、投資事業は新たに設立する株式会社Gemsekiインベストメントに承継されることで、機動的かつ柔軟な事業戦略の遂行および経営の効率化を図ります。ライセンス仲介事業においては、これまで同様、バイオテクノロジー関連展示会・パートナリングイベントを活用し、有望な創薬シーズ・技術を有するアカデミアや企業等の新規顧客の探索と契約獲得、および既存顧客の創薬シーズ・技術の紹介活動に注力いたしました。今後は新日本科学の一つの事業部として、他部門と連携した活動に取り組み、仲介実績の向上とグループシナジー創出を進めてまいります。
投資事業は、ファンドの投資先である株式会社PRISM BioLabが、2024年7月2日付で東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。他の投資先についても、さらなる成長にコミットすべく、投資先支援を継続しております。また、国内外の投資候補企業を継続的に探索するとともに、有望なシーズや技術を有するアカデミアと会社設立型の投資の議論を進めております。海外展開を前提とした医薬品・医療機器の創出および育成に必要な支援を当社グループ内でワンストップで提供してまいります。
こうした中、TR事業の2025年3月期中間期の売上高は、15百万円(前中間期:6百万円)、営業損失はSatsuma社が連結業績に加わったことで1,272百万円のコストアップがあり、1,775百万円(前中間期:営業損失498百万円)となりました。
③ メディポリス事業(社会的利益創出事業)
当社は、鹿児島県指宿市の高台に103万坪(3,400,000㎡)の広大な敷地「メディポリス指宿」を保有しており、この自然資本(約9割が森林)を活用したメディポリス事業を社会的利益創出事業として展開しています。社会的利益創出事業は、企業理念である「環境、生命、人材を大切にする会社であり続ける」ことを体現するものであり、当社は経済的利益のみならず、社会や環境課題といった視点から社会的利益を一体的に創出しています。具体的には、再生可能エネルギーを活用した発電事業や人々のWellbeing(ウェルビーイング)、つまり全人的な健康の実現をメインコンセプトとしたホテル宿泊施設の運営(ホスピタリティ事業)などを行っております。
発電事業は、2015年2月より1,500キロワット級のバイナリー型地熱発電所を運営しています。地熱発電はCO2排出量がほぼゼロであり、日中夜間を通じて天候に左右されず、年間を通して安定的な発電が可能なベースロード電源として期待されています。当社の地熱発電所は年間を通じて約1,000万kWhを発電することが可能であり、これは当社の年間消費電力量の約半分に相当します。また、発電した電力はFIT(固定価格買取)制度を利用することで安定的な売電収入を計上しています。なお、稼働開始から9年が経過し、今後の長期的な安定稼働に向け、2024年3月期第4四半期より発電機の開放点検ならびに修繕を実施し地熱発電所の稼働を停止していましたが、2024年5月中旬より発電を再開しております。また、新規発電プロジェクトとして、ホテルで浴用や床暖房に使用している泉源の余剰蒸気を活用した温泉発電所(年間発電量は400万kWh)の計画を進めております。温泉発電もCO2排出量がほぼゼロであり温室効果ガスの削減に大きく寄与します。温泉発電によって発電した電力もFIT制度での売電を計画しており、2025年1月より売電開始を予定しております。
ホスピタリティ事業は、お客様のニーズに合わせる形でヒーリングリゾートホテル「別邸 天降る丘」とメディポリス国際陽子線治療センターの患者専用宿泊施設「HOTELフリージア」の2つの施設をそれぞれ運営しております。なお、メディポリス国際陽子線治療センターは2011年1月に治療を開始して以来、6,700件を超えるがん患者さんの陽子線治療の実績を積み重ねています。ホスピタリティ事業を行っている意義は、主に2点あります。1つは、企業価値向上という視点で、人々のWellbeingに貢献する企業であるという点です。もう1つは、新日本科学における顧客へのおもてなしマインド向上への貢献という点にあります。ホスピタリティ事業を通して、新日本科学グループとしてのおもてなしマインドを一層強化し、それを主力のCRO事業にも還元していくことは、当社が世界で戦っていくうえで重要な役割を果たすことになると考えています。
メディポリス事業の2025年3月期中間期の売上高は、225百万円と前中間期に比べ123百万円(35.3%)の減少となりました。主因は、地熱発電が5月中旬に稼働を再開するまで売電を停止していたためですが、期初見込みよりも半年近く早い再開ができました。営業損失は地熱発電の売電停止の影響により221百万円(前中間期:営業損失57百万円)となりました。
④ SDGs/ESGへの取組み
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」は、2030年までの達成を目指す世界中の人々が幸せに暮らせるように定められた世界共通の目標です。これは、当社創業以来の企業理念「環境・生命・人材を大切にする会社であり続ける」と、当社スローガン「わたしも幸せ、あなたも幸せ、みんな幸せ」そのものであり、当社はSDGs/ESGの取組みについて、業界のリーディングカンパニーであると自覚しております。
SDGs/ESGの取組みについては、取締役会の諮問機関として設置した「SDGs委員会」(委員長は独立社外取締役の戸谷圭子氏)およびSDGs委員会の下部組織として設置した「環境委員会」(委員長はサステナビリティ担当役員)において毎月活発な議論を行っており、その成果として作成したESGデータブック及び各種ESGポリシー、TCFD提言に基づく情報開示等を自社WEBサイト上の専用ページ(https://snbl.com/esg/)に開示しております。
当社が創造していきたい未来として、「統合報告書」に2028Vision「ステークホルダーに寄り添い、幸せの連鎖を創造する」を掲げています。経営戦略では2028年度の財務KPI(目標)として「売上高500億円、経常利益200億円、売上高経常利益率40%、配当性向30~40%」と掲載しました。なお、資本コストについては、2024年3月期の業績を基に試算し5.1%と認識しています。資本収益性の指標については、ROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を重視しており、毎月の取締役会の報告事項となっております。ともに10%以上を目指すとしており、2024年3月期の業績を基に計算したROEは18.3%、ROICは10.3%です。また、2024年6月にコーポレートガバナンス報告書を更新しており、2021年6月の改訂後のコーポレートガバナンス・コードの各原則(プライム市場向けの内容含む)のすべてを実施しています。2024年9月30日時点の女性取締役比率は22.2%(9名中2人)となっています。
当社は、SDGs/ESGに関する継続的な取組みにより、各評価機関から高い評価を受けております。2024年7月にグローバルインデックスプロバイダーである英国FTSE Russellにより構築されたFTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に継続選定されました。MSCI ESGレーティングにおいては、2024年3月にHealth Care Equipment & Supplies(ヘルスケア機器・用品)の分野の企業として昨年に引き続き「A」評価を獲得しています。2024年8月には株式会社JPX総研及び株式会社日本経済新聞社が共同で算出を行っているJPX日経中小型株指数の構成銘柄に継続選定されております。健康経営については、2024年3月に経済産業省から健康経営優良法人「ホワイト500」に8年連続で選定されています。女性活躍については、2023年10月に女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣認定の「プラチナえるぼし」を取得し、2024年9月には「子育てと仕事の両立」支援だけでなく、「不妊治療と仕事の両立」をサポートする企業として厚生労働大臣から「プラチナくるみんプラス」の認定(鹿児島県初)を取得しています。
2025年3月期中間期における株主/投資家との対話実績について、機関投資家/アナリストミーティングは104件となりました。6月に開催した株主総会においては、株主総会出席の株主様向けに、総会終了後に当社の経鼻投与基盤技術に関する説明会を開催しました。
当社は生物多様性の保全への取組み、および地域貢献(鹿児島県はニホンウナギの供給国内1位)のために、レッドリストに登録されているニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの人工生産研究を進めております。2019年に鹿児島県沖永良部島和泊町に研究施設を移し、天然海水による人工シラスウナギの生産を行っています。既に研究室におけるスモールスケールでは、摂餌開始からシラスウナギ変態前の大型仔魚までの飼育において50%以上の高い生残率を実現しており、2024年5月に人工生産したウナギの試食会を東京で初めて開催しました。
2025年3月期中間期は、大量生産に向けたスケールアップを実現するために新規大型水槽の開発および各種課題解決に取り組みました。
(資産、負債、純資産の状況)
当中間連結会計期間における前連結会計年度末からの財政状態の変動は、以下のとおりです。
当中間連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ12,681百万円(16.6%)増加し、88,983百万円となりました。流動資産は、棚卸資産が1,840百万円(14.9%)増加したことや、現金及び預金が810百万円(7.9%)増加したこと、並びに受取手形、売掛金及び契約資産が544百万円(9.4%)増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ3,124百万円(10.1%)増加して33,961百万円となりました。固定資産は、設備投資等により有形固定資産が5,946百万円(22.6%)増加したこと、投資有価証券が3,088百万円(20.3%)増加したことや、並びに繰延税金資産が343百万円(34.7%)増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ9,556百万円(21.0%)増加して55,021百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ10,388百万円(24.7%)増加し、52,529百万円となりました。流動負債は、短期借入金が4,277百万円(54.7%)増加したこと、前受金が3,088百万円(32.4%)増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ5,249百万円(22.3%)増加して28,816百万円となりました。固定負債は、長期借入金が4,708百万円(25.9%)増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ5,138百万円(27.7%)増加して23,712百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する中間純利益を1,331百万円計上しましたが、その他有価証券評価差額金が2,786百万円増加したこと、支払配当を1,248百万円行ったこと、為替換算調整勘定が553百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ2,293百万円(6.7%)増加し、36,453百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前連結会計年度末に比べて810百万円(7.9%)増加して、11,085百万円となりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は231百万円と前中間連結会計期間に比べて455百万円(66.2%)の減少となりました。
主な内訳は、税金等調整前中間純利益1,755百万円、減価償却費1,079百万円、持分法による投資利益1,834百万円、棚卸資産の増加額1,709百万円、前受金の増加額3,088百万円及び利息及び配当金の受取額1,113百万円、法人税等の支払額1,746百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は7,522百万円と前中間連結会計期間に比べて3,850百万円(104.9%)の使用の増加となりました。
主な内訳は、有形固定資産取得による支出7,640百万円、有価証券の償還による収入211百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は7,658百万円と前中間連結会計期間に比べて5,534百万円(260.5%)の増加となりました。
主な内訳は、長期借入れによる収入10,000百万円、長期借入金の返済による支出4,595百万円、短期借入金の増加額3,580百万円及び配当金の支払額1,247百万円です。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当中間連結会計期間において会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
当中間連結会計期間において新たに発生した優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題はありません。
(6)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、1,276百万円であります。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(1)財政状態及び経営成績の状況
(経営成績)
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと費用の効率化ならびに規制当局への対応簡素化を期待してCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)へのアウトソーシング(外部委託)の動きが引き続き活発化しております。加えて核酸医薬、次世代抗体医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新規創薬モダリティ(治療手段)の研究開発が本格化してきています。このようなトレンドを受け、新規創薬モダリティの研究開発支援で高い実績をもつ当社は、“ダントツのCRO”としてクライアントから第一に指名される存在になることを目指しており、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上ならびに継続的な品質の向上に注力しております。
こうした状況の中、当中間期連結累計会計期間(2024年4月1日から2024年9月30日;以下 2025年3月期中間期)における売上高は主力のCRO事業がけん引し、12,508百万円となり、前中間期連結累計会計期間(以下 前中間期)に比べて624百万円(5.3%)の増加となりました。営業利益は、80百万円と前中間期に比べて2,269百万円(96.6%)の減益となりました。減益の主因は、米国連結子会社のSatsuma Pharmaceuticals,Inc.(以下、Satsuma社)の経鼻偏頭痛治療薬「STS101」のFDA再申請に向けた経費1,272百万円が計上されたことです。また、当社は主力事業のCRO事業について、現状の当社を取り巻く事業環境をさらなる成長への好機ととらえており、人材の大幅強化、実験施設の増強、実験用NHPの国内繁殖体制確立等、戦略的に大型先行投資を継続して行っていることによるコストアップも減益の要因となりました。経常利益は営業利益の減益により1,829百万円と前中間期に比べて1,927百万円(51.3%)の減益となりました。CRO事業のうち臨床事業を推進している新日本科学PPDからの持分法利益は前中間期比476百万円増加の1,708百万円となり、中間期として過去最高となりました。為替差損益については96百万円の為替差損となり、前中間期の為替差益(242百万円)と比べて338百万円の減益要因となっております。親会社株主に帰属する中間純利益は1,331百万円と前中間期に比べて1,635百万円(55.1%)の減益となりました。
当社グループの従業員数(連結ベース/時間給・非常勤を除く)は、2024年4月に100名(うち女性は59名)の新入社員が加わったこともあり2024年9月30日現在で1,451名(2024年3月末比110人増)です。なお、当社の女性従業員比率は51.9%(連結ベース/臨時従業員も含む)となっております。
セグメント別の経営成績及びSDGs/ESGへの取組みは次のとおりです。
① CRO事業
CRO事業は、細胞・実験動物等を用いる非臨床試験(または前臨床試験)を受託する非臨床事業と、臨床試験を受託する臨床事業から構成されます。
当社の非臨床事業は、業界では国内最大手であり、海外では実験用NHP(Non-human Primates)を用いた数多くの試験実績から第2グループの一角を占めています。2025年3月期中間期の非臨床事業は、順調に推移しました。当社がこれまで実施してきた以下の取組みが成果を表してきております。
・CROとして世界で唯一構築できている「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」が新たな創薬モダリティの研究開発の本格化等により重要性を増しております。加えて、海外での実験用NHPの入手困難な環境もプラスに働き、受注に繋がっております。また、2023年3月期より本格的に国内でのNHP生産体制を強化し、輸入リスクの軽減と品質向上を目指しております。2025年3月期中間期には新たな繁殖・育成施設を追加建設し、稼働を開始しました。
・生体試料中の医薬品等開発候補品(被験物質)やバイオマーカーの濃度分析をバイオアナリシスと呼びます。新たな創薬モダリティの有効性・安全性評価に必要な最新鋭装置を導入し、被験物質やバイオマーカーの評価系を早い時期から構築してきたことが、上記「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」構築と相乗効果を発揮し、バイオアナリシスの受注増に繋がっております。
・これらの取組みを評価いただき複数の製薬企業とプリファード契約(予め選定したCROに優先的に委託する契約)を締結し受注増に繋がっております。また、2024年3月期には複数の海外大手製薬企業とプリファード契約締結へ向けたデューデリジェンスの初回試験を受注しました。2025年3月期は海外営業人員を増加し営業活動を強化しています。海外受注の増加に対応するため、研究所内に海外顧客専任チーム(Global Study Team: GST)を組成しました。
・国内大手製薬企業との創薬段階における包括的研究受託契約も順調に顧客数が推移しており、複数の企業から創薬初期段階からの研究を受注しております。
・2022年12月から鹿児島本社で進めてきた新社屋研究棟(地上8階建・2棟)が2024年5月末に竣工し、6月18日に落成式を行いました。新棟はバイオアナリシス実験室の拡張をはじめ非臨床事業において大型受注に対応できる体制構築を進めていくうえで重要な役割を担っており、9月から本格運用を開始しております。現在、Microphysiological System(MPS)の受託サービス開始へ向け準備を進めておりますが、新社屋研究棟にはMPS受託のための専用実験室も設置しております。
・2024年7月30日、岸田首相(当時)が開催した「創薬エコシステムサミット」において、永田社長も首相官邸に招かれ、当社グループの創薬エコシステムにおける事例の紹介(1部および2部)を行いました。発表スライドは、内閣府ホームページ「創薬エコシステムサミット」にてご覧いただけます。
上記取組みの結果、2025年3月期中間期における非臨床事業の受注高は15,311百万円と前中間期に比べて2,695百万円(21.4%)の増加となり、中間期として過去最高を更新しました。なお、Q2(7月-9月)の受注高は8,140百万円(前Q2は4,217百万円)となり、Q2として過去最高を更新しています。中間期の国内受注高は前中間期比76百万円(0.8%)増加の9,756百万円、海外受注高は、前中間期比2,619百万円(89.2%)増加の5,555百万円となり、総受注額に占める海外受注比率は36.3%(前中間期は23.2%)となりました。海外受注高増加の主要因は欧米顧客からの受注増加で前中間期比46.7%増の3,653百万円となっております。一方、2025年3月期中間期における既契約案件の試験開始前キャンセル高は3,260百万円であり、その内訳はQ1が2,217百万円、Q2が1,043百万円となっています。なお、2024年9月末の受注残高は35,877百万円と高水準を維持しています。
臨床事業は、米国に本拠を置くグローバル臨床CROであるPPD,Inc.(以下、PPD社)との合弁会社、株式会社新日本科学PPD(以下、新日本科学PPD)において、主に国際共同治験(グローバル・スタディ)の受託事業を展開しております。PPD社は、2021年12月に世界的な大手医療機器企業であるThermo Fisher Scientific Inc.グループに加わることにより、受注シナジーを高めることを目指しております。新日本科学PPDは、PPD社が受託した国際共同治験における日本エリアの実施を主力事業としており、グローバル企業でありながら、当社がこれまで長年培ってきた経営・教育ノウハウを取り入れ定着率の高い職場環境を整えることで、ハイレベルな受注残高を背景に、設立以来高い成長率を実現してきております。
治験の推進にあたっては、Web会議システムやデバイスの普及進化に合わせて、医療機関へ訪問せずにデータ収集などを行う“リモートモニタリング”を組み合わせることにより効率化を図ってきております。また人材採用面では、設立当初から4月入社と併設する形で10月入社を希望する新卒者には半年間の奨学金を支給し海外語学留学等を通じGlobalな対応力や社会経験値を高めた上で入社できる制度を導入し、設立以来累計200人以上の新卒者が語学留学を経て入社しております。同時に経験値を積んだグローバルキャリア組の積極採用・海外大学卒のバイリンガル組採用と共に、新卒の春秋入社制度をバランスよく組み合わせつつ機動的な採用戦略を進めてまいりました。新卒入社後2年間は社内に併設されているビジネスイングリッシュスクールで学ぶことができ、その後はPPD社の国際的ネットワークを活用した短期留学制度を通じて欧米の治験制度を学ぶ機会を設けるなど世界に通用するグローバル人材の育成に長年努めてまいりました。その結果、2015年4月のスタート時と比較しますと社員総数は2024年4月末で約3倍の1,000名を超えております。
新日本科学PPDの2025年3月期中間期の「持分法による投資利益」は1,708百万円(前中間期は1,232百万円)と大幅に増加しており、中間期として過去最高となりました。新日本科学において、実験用NHPを用いた非臨床事業は成長エンジンとなっていますが、新日本科学PPDによる臨床事業は当社の2つ目の成長エンジンとなっています。
CRO事業の2025年3月期中間期の売上高は、12,199百万円と前中間期に比べ708百万円(6.2%)の増加となり、中間期として過去最高を更新しました。同事業の営業利益は、2,205百万円と前中間期に比べ736百万円(25.0%)の減益となり、売上高営業利益率は18.1%になっております。
② トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)
トランスレーショナル リサーチ事業(TR:Translational Research、以下TR事業)とは、自社研究開発のほか、国内外の大学、バイオベンチャー、研究機関などにおいて基礎研究から生まれる有望なシーズや新技術を発掘し、付加価値を高めて事業化または株式上場、あるいはM&Aにつなげる研究開発型の事業です。
1997年以来、TR事業の主軸として探求してきた当社独自開発の経鼻投与基盤技術は、担体組成をベースとした粉体製剤技術と投与デバイス(医療機器)を組み合わせたプラットフォーム技術です。鼻粘膜上での十分な停留性と、速やかな薬物吸収に基づく即効性を特徴としており、加えて注射に比べて投与が簡易であり、製剤の室温保存も可能という強みがあります。
経鼻投与の事業化は、連結子会社のSatsuma社が経鼻偏頭痛治療薬(開発コード:STS101)臨床試験を終了しており、2024年10月30日にFDA(米国食品医薬品局)に対し新薬承認の再申請を行いました。また、パーキンソン病のオフ症状治療のための経鼻On-demand therapy(要求に応じた治療)薬(開発コード:TR-012001)の開発を当社連結子会社である株式会社SNLDで進めています。
Satsuma社で開発を進めているSTS101は、偏頭痛に対して豊富な効果実績を有するジヒドロエルゴタミンを有効成分とし、臨床試験で速やかで持続的な吸収と高い安全性が確認された、使い勝手と携帯性に優れた経鼻剤です。Satsuma社が実施したSTS101の臨床第3相長期安全性試験(試験名:ASCEND)の成果に基づく論文が、2024年10月8日に中枢神経疾患の薬物療法に関して権威のある国際医学専門誌CNS Drugsに掲載されました。論文の筆頭著者は米国頭痛学会フェローであり、頭痛領域で国際的に著名なStewart J. Tepper医学博士です。博士はSatsuma社のプレスリリースに「STS101が安全で、忍容性が高く、患者が長期にわたって使用しやすいことがデータで実証されたことをうれしく思います。これは、既存の治療法では十分な緩和効果が得られなかった偏頭痛患者と、新しい治療法を求めている治療医にとって、非常に重要な情報です」「ここ数年で新しい治療法が導入されましたが、経口投与では迅速な緩和が得られない多くの患者には、新しい非経口治療の選択肢が極めて必要です」とのコメントをいただいております。
パーキンソン病のオフ症状治療のための経鼻On-demand therapy薬(開発コード:TR-012001)の開発については、2024年1月に臨床第2相前期試験における患者様への投薬を完了しています。現在、安全性・忍容性・即吸収性を確認し、Proof-of-Concept(POC)取得に至るデータの固定と解析が進み、最終報告書の確定が間近となりました。次年度の学会発表を企図しております。また、更なる利便性向上を企図した、TR-012001の改良開発品(TRN501)については、2024年8月に臨床第1相試験における日本人健康成人への投薬を完了し、データ解析に進んでおります。
当社のTR事業は、もう1つの経鼻製剤開発プロジェクトとして、経鼻粘膜免疫作用を期待した経鼻ワクチンの研究を行っております。多くのワクチンの目的は発症阻止または重症化予防ですが、当社が目指す経鼻ワクチンは、感染そのものを起こさせないこと(これを「遮断免疫」と言います)を狙って開発しています。一方、日本政府が国策としてのワクチン開発を迅速に推進するために、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)内に設置した先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が公募した令和5年度「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)」に係る研究開発課題の中から「感染症ワクチンへの応用が期待される新規モダリティの研究開発」について、当社経鼻粘膜ワクチン研究センター監修の「粉体噴射型IgA産生誘導経鼻ワクチンシステムの開発」が支援対象として採択され、非臨床POC取得まで1億円の予算を獲得しており、複数の呼吸器系ウイルスに対し上気道に遮断免疫能を付与する粉体型経鼻ワクチンの開発が、製剤化研究と非臨床試験系の確立を目指して、本格化しております。
当社の連結子会社の株式会社Gemseki(以下、Gemseki)は、「創薬シーズの最適な活用を支援することで、人類および社会に貢献する」ことを企業理念に2017年10月に設立され、創薬シーズ・技術に関するライセンス仲介事業をグローバルベースで展開するとともに、同社を無限責任組合員としたファンドを組成し、ベンチャー企業への投資事業を行っております。他方、今後の当社グループの経営資源の有効活用と最適化、ならびに経営の効率化を考慮しますと、当社の一部門としてGemsekiの活動を取り込むことが合理的であると判断し、10月1日付でGemsekiの会社分割および吸収合併を行いました。具体的には、ライセンス仲介事業は当社が吸収合併し、投資事業は新たに設立する株式会社Gemsekiインベストメントに承継されることで、機動的かつ柔軟な事業戦略の遂行および経営の効率化を図ります。ライセンス仲介事業においては、これまで同様、バイオテクノロジー関連展示会・パートナリングイベントを活用し、有望な創薬シーズ・技術を有するアカデミアや企業等の新規顧客の探索と契約獲得、および既存顧客の創薬シーズ・技術の紹介活動に注力いたしました。今後は新日本科学の一つの事業部として、他部門と連携した活動に取り組み、仲介実績の向上とグループシナジー創出を進めてまいります。
投資事業は、ファンドの投資先である株式会社PRISM BioLabが、2024年7月2日付で東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。他の投資先についても、さらなる成長にコミットすべく、投資先支援を継続しております。また、国内外の投資候補企業を継続的に探索するとともに、有望なシーズや技術を有するアカデミアと会社設立型の投資の議論を進めております。海外展開を前提とした医薬品・医療機器の創出および育成に必要な支援を当社グループ内でワンストップで提供してまいります。
こうした中、TR事業の2025年3月期中間期の売上高は、15百万円(前中間期:6百万円)、営業損失はSatsuma社が連結業績に加わったことで1,272百万円のコストアップがあり、1,775百万円(前中間期:営業損失498百万円)となりました。
③ メディポリス事業(社会的利益創出事業)
当社は、鹿児島県指宿市の高台に103万坪(3,400,000㎡)の広大な敷地「メディポリス指宿」を保有しており、この自然資本(約9割が森林)を活用したメディポリス事業を社会的利益創出事業として展開しています。社会的利益創出事業は、企業理念である「環境、生命、人材を大切にする会社であり続ける」ことを体現するものであり、当社は経済的利益のみならず、社会や環境課題といった視点から社会的利益を一体的に創出しています。具体的には、再生可能エネルギーを活用した発電事業や人々のWellbeing(ウェルビーイング)、つまり全人的な健康の実現をメインコンセプトとしたホテル宿泊施設の運営(ホスピタリティ事業)などを行っております。
発電事業は、2015年2月より1,500キロワット級のバイナリー型地熱発電所を運営しています。地熱発電はCO2排出量がほぼゼロであり、日中夜間を通じて天候に左右されず、年間を通して安定的な発電が可能なベースロード電源として期待されています。当社の地熱発電所は年間を通じて約1,000万kWhを発電することが可能であり、これは当社の年間消費電力量の約半分に相当します。また、発電した電力はFIT(固定価格買取)制度を利用することで安定的な売電収入を計上しています。なお、稼働開始から9年が経過し、今後の長期的な安定稼働に向け、2024年3月期第4四半期より発電機の開放点検ならびに修繕を実施し地熱発電所の稼働を停止していましたが、2024年5月中旬より発電を再開しております。また、新規発電プロジェクトとして、ホテルで浴用や床暖房に使用している泉源の余剰蒸気を活用した温泉発電所(年間発電量は400万kWh)の計画を進めております。温泉発電もCO2排出量がほぼゼロであり温室効果ガスの削減に大きく寄与します。温泉発電によって発電した電力もFIT制度での売電を計画しており、2025年1月より売電開始を予定しております。
ホスピタリティ事業は、お客様のニーズに合わせる形でヒーリングリゾートホテル「別邸 天降る丘」とメディポリス国際陽子線治療センターの患者専用宿泊施設「HOTELフリージア」の2つの施設をそれぞれ運営しております。なお、メディポリス国際陽子線治療センターは2011年1月に治療を開始して以来、6,700件を超えるがん患者さんの陽子線治療の実績を積み重ねています。ホスピタリティ事業を行っている意義は、主に2点あります。1つは、企業価値向上という視点で、人々のWellbeingに貢献する企業であるという点です。もう1つは、新日本科学における顧客へのおもてなしマインド向上への貢献という点にあります。ホスピタリティ事業を通して、新日本科学グループとしてのおもてなしマインドを一層強化し、それを主力のCRO事業にも還元していくことは、当社が世界で戦っていくうえで重要な役割を果たすことになると考えています。
メディポリス事業の2025年3月期中間期の売上高は、225百万円と前中間期に比べ123百万円(35.3%)の減少となりました。主因は、地熱発電が5月中旬に稼働を再開するまで売電を停止していたためですが、期初見込みよりも半年近く早い再開ができました。営業損失は地熱発電の売電停止の影響により221百万円(前中間期:営業損失57百万円)となりました。
④ SDGs/ESGへの取組み
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」は、2030年までの達成を目指す世界中の人々が幸せに暮らせるように定められた世界共通の目標です。これは、当社創業以来の企業理念「環境・生命・人材を大切にする会社であり続ける」と、当社スローガン「わたしも幸せ、あなたも幸せ、みんな幸せ」そのものであり、当社はSDGs/ESGの取組みについて、業界のリーディングカンパニーであると自覚しております。
SDGs/ESGの取組みについては、取締役会の諮問機関として設置した「SDGs委員会」(委員長は独立社外取締役の戸谷圭子氏)およびSDGs委員会の下部組織として設置した「環境委員会」(委員長はサステナビリティ担当役員)において毎月活発な議論を行っており、その成果として作成したESGデータブック及び各種ESGポリシー、TCFD提言に基づく情報開示等を自社WEBサイト上の専用ページ(https://snbl.com/esg/)に開示しております。
当社が創造していきたい未来として、「統合報告書」に2028Vision「ステークホルダーに寄り添い、幸せの連鎖を創造する」を掲げています。経営戦略では2028年度の財務KPI(目標)として「売上高500億円、経常利益200億円、売上高経常利益率40%、配当性向30~40%」と掲載しました。なお、資本コストについては、2024年3月期の業績を基に試算し5.1%と認識しています。資本収益性の指標については、ROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を重視しており、毎月の取締役会の報告事項となっております。ともに10%以上を目指すとしており、2024年3月期の業績を基に計算したROEは18.3%、ROICは10.3%です。また、2024年6月にコーポレートガバナンス報告書を更新しており、2021年6月の改訂後のコーポレートガバナンス・コードの各原則(プライム市場向けの内容含む)のすべてを実施しています。2024年9月30日時点の女性取締役比率は22.2%(9名中2人)となっています。
当社は、SDGs/ESGに関する継続的な取組みにより、各評価機関から高い評価を受けております。2024年7月にグローバルインデックスプロバイダーである英国FTSE Russellにより構築されたFTSE Blossom Japan Sector Relative Indexの構成銘柄に継続選定されました。MSCI ESGレーティングにおいては、2024年3月にHealth Care Equipment & Supplies(ヘルスケア機器・用品)の分野の企業として昨年に引き続き「A」評価を獲得しています。2024年8月には株式会社JPX総研及び株式会社日本経済新聞社が共同で算出を行っているJPX日経中小型株指数の構成銘柄に継続選定されております。健康経営については、2024年3月に経済産業省から健康経営優良法人「ホワイト500」に8年連続で選定されています。女性活躍については、2023年10月に女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣認定の「プラチナえるぼし」を取得し、2024年9月には「子育てと仕事の両立」支援だけでなく、「不妊治療と仕事の両立」をサポートする企業として厚生労働大臣から「プラチナくるみんプラス」の認定(鹿児島県初)を取得しています。
2025年3月期中間期における株主/投資家との対話実績について、機関投資家/アナリストミーティングは104件となりました。6月に開催した株主総会においては、株主総会出席の株主様向けに、総会終了後に当社の経鼻投与基盤技術に関する説明会を開催しました。
当社は生物多様性の保全への取組み、および地域貢献(鹿児島県はニホンウナギの供給国内1位)のために、レッドリストに登録されているニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの人工生産研究を進めております。2019年に鹿児島県沖永良部島和泊町に研究施設を移し、天然海水による人工シラスウナギの生産を行っています。既に研究室におけるスモールスケールでは、摂餌開始からシラスウナギ変態前の大型仔魚までの飼育において50%以上の高い生残率を実現しており、2024年5月に人工生産したウナギの試食会を東京で初めて開催しました。
2025年3月期中間期は、大量生産に向けたスケールアップを実現するために新規大型水槽の開発および各種課題解決に取り組みました。
(資産、負債、純資産の状況)
当中間連結会計期間における前連結会計年度末からの財政状態の変動は、以下のとおりです。
当中間連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ12,681百万円(16.6%)増加し、88,983百万円となりました。流動資産は、棚卸資産が1,840百万円(14.9%)増加したことや、現金及び預金が810百万円(7.9%)増加したこと、並びに受取手形、売掛金及び契約資産が544百万円(9.4%)増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ3,124百万円(10.1%)増加して33,961百万円となりました。固定資産は、設備投資等により有形固定資産が5,946百万円(22.6%)増加したこと、投資有価証券が3,088百万円(20.3%)増加したことや、並びに繰延税金資産が343百万円(34.7%)増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ9,556百万円(21.0%)増加して55,021百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ10,388百万円(24.7%)増加し、52,529百万円となりました。流動負債は、短期借入金が4,277百万円(54.7%)増加したこと、前受金が3,088百万円(32.4%)増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ5,249百万円(22.3%)増加して28,816百万円となりました。固定負債は、長期借入金が4,708百万円(25.9%)増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ5,138百万円(27.7%)増加して23,712百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する中間純利益を1,331百万円計上しましたが、その他有価証券評価差額金が2,786百万円増加したこと、支払配当を1,248百万円行ったこと、為替換算調整勘定が553百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ2,293百万円(6.7%)増加し、36,453百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は前連結会計年度末に比べて810百万円(7.9%)増加して、11,085百万円となりました。
当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は231百万円と前中間連結会計期間に比べて455百万円(66.2%)の減少となりました。
主な内訳は、税金等調整前中間純利益1,755百万円、減価償却費1,079百万円、持分法による投資利益1,834百万円、棚卸資産の増加額1,709百万円、前受金の増加額3,088百万円及び利息及び配当金の受取額1,113百万円、法人税等の支払額1,746百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は7,522百万円と前中間連結会計期間に比べて3,850百万円(104.9%)の使用の増加となりました。
主な内訳は、有形固定資産取得による支出7,640百万円、有価証券の償還による収入211百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は7,658百万円と前中間連結会計期間に比べて5,534百万円(260.5%)の増加となりました。
主な内訳は、長期借入れによる収入10,000百万円、長期借入金の返済による支出4,595百万円、短期借入金の増加額3,580百万円及び配当金の支払額1,247百万円です。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当中間連結会計期間において会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当中間連結会計期間において当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
当中間連結会計期間において新たに発生した優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題はありません。
(6)研究開発活動
当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、1,276百万円であります。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。