四半期報告書-第50期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

【提出】
2022/07/29 16:35
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【項目】
35項目
文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと費用の効率化ならびに規制当局への対応簡素化を期待してCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)へのアウトソーシング(外部委託)の動きが引き続き拡大しており、コロナ禍でその流れはさらに加速しています。また、COVID-19に対するワクチンや治療薬の研究開発に加えて、抗体医薬、核酸医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新規創薬モダリティの研究開発が本格化してきています。このようなトレンドを受け、CRO事業を主力事業とする当社は、“ダントツのCRO”としてクライアントから第一に指名される存在になることを目指しており、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上ならびに継続的な品質の向上に注力しております。
こうした状況の中、当第1四半期連結累計期間(2022年4月1日から2022年6月30日)における売上高は4,046百万円と前第1四半期連結累計期間に比べて1,005百万円(33.1%)の増加となりました。営業利益は714百万円と前第1四半期連結累計期間に比べて222百万円(45.2%)の増加、経常利益は為替差益1,686百万円(前第1四半期連結累計期間は為替差損7百万円)を計上したこともあり、2,772百万円と前第1四半期連結累計期間に比べて2,099百万円(312.1%)の増加となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、前第1四半期連結累計期間に中国国内にて実験動物の繁殖・飼育・検疫事業を行っている肇慶創薬生物科技有限公司に関して、中国の康龍化成(北京)新薬技術股份有限公司(Pharmaron Group)へ持分譲渡と第三者割当増資の実施を行ったことにより特別利益1,360百万円を計上しましたが、当期の特別利益は0百万円であり、また法人税等合計が増加したことで、1,944百万円と前第1四半期連結累計期間に比べて117百万円(6.5%)の増加となりました。
当社グループの従業員数(連結ベース/時間給・非常勤を除く)は、2022年6月30日現在で1,050名(2022年3月末比56人増)です。なお、当社の女性従業員比率は51.8%(2022年3月末は51.2%)となっております。
弊社グループのセグメント別の経営成績及びSDGs/ESGへの取組みは次のとおりです。
①CRO事業
CRO事業は、細胞・実験動物等を用いる前臨床試験を受託する前臨床事業と、臨床試験を受託する臨床事業から構成されます。
前臨床事業は、当第1四半期連結累計期間も順調に推移しました。当社がこれまで実施してきた以下の取組みが成果を表してきております。
・CROとして世界で唯一構築できている「自社グループ内における大型実験動物繁殖・供給体制」が新たな創薬モダリティの研究開発の本格化等により重要性を増し、海外顧客からの受注増に繋がっております。
・新たな創薬モダリティの有効性・安全性評価に必要な最新鋭装置を導入し、評価系を早い時期から構築してきたことが、上記「自社グループ内における大型実験動物繁殖・供給体制」構築と相乗効果を発揮し、新たな創薬モダリティに関連した受注に繋がっております。
・大手製薬企業との創薬段階における包括的研究受託契約も順調に推移し、既に複数の企業から創薬段階の研究を受注しております。
上記取組みの結果、当第1四半期連結累計期間における受注高は6,566百万円となり、高水準であった前第1四半期連結累計期間に比べて433百万円(7.1%)の増加となりました。2022年6月末の受注残高は22,589百万円と過去最高額を示しています。また、海外からの受注額は前第1四半期連結累計期間に比べて1,074百万円(66.6%)増加の2,686百万円と大幅に伸長しました。主なけん引役は、欧米顧客からの受注増であり、総受注額に占める海外受注比率は40.9%(前第1四半期連結累計期間は26.3%)となりました。なお、当第1四半期連結累計期間において霊長類試験設備の増設が完了し、約10%の動物収容力増となりました。
一方、臨床事業は、米国に本拠を置くグローバル臨床CROであるPPD, Inc.(以下、PPD社)との合弁会社である株式会社新日本科学PPD(以下 新日本科学PPD)において受託事業を展開しております。新日本科学PPDは、PPD社が受注した国際共同治験(グローバル試験)の日本国内での実施を主力事業としており、事業は順調に推移しています。なお、新日本科学PPDは持分法適用関連会社(現在の当社持分は40%)であることから、連結損益計算書に及ぼす影響額については、営業外収益の項目に「持分法による投資利益」として計上されています。新日本科学PPDの当第1四半期連結累計期間の「持分法による投資利益」は348百万円(前第1四半期連結累計期間は192百万円)と大幅に増加しております。なお、PPD社は、2021年12月にThermo Fisher Scientific Inc.(以下、TF社)によって株式買収され、現在はTF社の100%子会社となっております。
CRO事業の当第1四半期連結累計期間の売上高は、3,679百万円と前第1四半期連結累計期間に比べ803百万円(27.9%)の増加となりました。同事業の営業利益は、864百万円と前第1四半期連結累計期間に比べ226百万円(35.5%)の増加となり、売上高営業利益率は23.5%になっております。
②トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)
トランスレーショナル リサーチ事業(TR:Translational Research、以下TR事業)とは、社内の研究開発のほか、国内外の大学、バイオベンチャー、研究機関などにおいて基礎研究から生まれる有望なシーズや新技術を発掘し、付加価値を高めて事業化または株式上場、あるいはM&Aにつなげる研究開発型の事業で、創薬を指向しています。
1997年以来TR事業として探求してきた経鼻投与基盤技術は、独自に発見した担体をベースにした粉体製剤技術と独自設計の投与デバイス(医療用具)を組み合わせたプラットフォーム技術であり、鼻粘膜からの速やかな薬物吸収に基づく即効性を特徴としており、加えて注射に比べて投与が簡易で製剤の室温保存も可能という強みがあります。
経鼻投与による神経変性疾患レスキュー薬の臨床開発を目的に設立した子会社の株式会社SNLD(以下、SNLD社)では、パーキンソン病に対する経鼻レスキュー薬(開発コード:TR-012001)の国内第Ⅰ相臨床試験を開始し、被験者エントリーを完了しました。本試験では、合計21例の健常人を対象にTR-012001の安全性、忍容性及び薬物動態の評価を実施する予定です。併せてTR事業別プロジェクトでは、粘膜免疫作用を期待した経鼻ワクチン開発など新規ポートフォリオ創生を目指しております。
上記のように、薬物の経鼻投与基盤技術を応用した自社創薬を行う一方、経鼻投与によって薬物の脳移行性を高める独自の送達技術(Nose-to-Brain技術)にも発展させた研究開発に取り組んでおります。
子会社の株式会社Gemsekiは、創薬シーズ・技術に関するライセンス仲介事業をグローバルベースで展開するとともに、同社を無限責任組合員としたファンドを組成し、投資事業を行っております。
そうした中、TR事業の当第1四半期連結累計期間の売上高は、11百万円(前第1四半期連結累計期間:計上されず)、営業損失は123百万円(前第1四半期連結累計期間:営業損失144百万円)となりました。
③メディポリス事業(社会的利益創出事業)
当社は、鹿児島県指宿市の高台に103万坪(3,400,000㎡)の広大な敷地(メディポリス指宿)を保有しており、この自然資本(約9割が森林)を活用した環境に配慮した社会的利益創出事業を行っています。具体的には、再生可能エネルギーを活用した発電事業、人々の健康の実現(Well-being)をメインコンセプトとしたホテル宿泊施設の運営(ホスピタリティ事業)などを行っております。
発電事業は、2015年2月に地熱発電所が稼働以来、順調に発電を継続しており、2022年3月期は過去最高発電量(1,075万kWh)を記録しました。当第1四半期連結累計期間は、新規発電プロジェクトとして、ホテルで浴用や床暖房に使用している泉源の余剰蒸気を活用した温泉発電所(年間発電量は400万kWh)の建設が2022年6月に完工しました。本発電所は、昨今の半導体不足に伴う一部装置の製造遅延により、売電のための系統接続は2022年10月を予定しております。ただし、系統接続までの期間も本発電所を積極的に稼働させ、同敷地内にある当社が運営するホテル施設等に電力供給することで、温室効果ガス排出の削減に努めていきます。
ホスピタリティ事業は、お客様のニーズに合わせる形で宿泊施設(合計宿泊部屋数74室)を宿泊棟ごと、機能ごとに3つのホテルに分けており、それぞれヒーリングリゾートホテル「別邸 天降る丘」、中長期滞在型施設「指宿ベイヒルズHOTEL & SPA」、メディポリス国際陽子線治療センターの患者専用宿泊施設「HOTELフリージア」が稼働しております。
メディポリス事業の当第1四半期連結累計期間の売上高は175百万円と前第1四半期連結累計期間に比べ38百万円(27.9%)の増加となり、営業利益は1,500kW級のバイナリー型地熱発電所が安定的な高稼働で推移したことやホテル宿泊施設の稼働率が回復傾向にあることから19百万円と前第1四半期連結累計期間に比べて1百万円の増加となりました。
④SDGs/ESGへの取組み
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」は、2030年までの達成を目指す世界中の人々が幸せに暮らせるように定められた世界共通の目標です。これは、当社創業以来の企業理念「環境・生命・人材を大切にする会社であり続ける」と、当社スローガン「わたしも幸せ、あなたも幸せ、みんな幸せ」そのものであり、当社はSDGs/ESGの取組みについて業界のリーディングカンパニーであると自覚しております。
現在、2021年8月に取締役会の諮問機関として設置した「SDGs委員会」(委員長は独立社外取締役の戸谷圭子氏)において毎月活発な議論を行っており、その成果として作成したサステナビリティレポート及び各種ESGポリシー、TCFD提言に基づく情報開示を自社WEBサイト上の専用ページ(https://www.snbl.co.jp/esg/)に開示しております。当第1四半期連結累計期間は2022年6月にコーポレートガバナンス報告書を更新しました。当社は、2021年6月の改訂後のコーポレートガバナンス・コードの各原則(プライム市場向けの内容含む)のすべてを実施しています。今後、財務・非財務情報を統合的にステークホルダーに向けて報告し、さらなる情報開示を充実すべく、統合報告書作成に鋭意取組んでおります。
当第1四半期連結累計期間における前連結会計年度末からの財政状態の変動は、以下のとおりとなりました。
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ5,968百万円(15.2%)増加し、45,280百万円となりました。流動資産は、現金及び預金が2,457百万円増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ2,453百万円(15.2%)増加して18,588百万円となりました。固定資産は、投資有価証券の時価評価額が増加したことなどにより前連結会計年度末に比べ3,514百万円(15.2%)増加して26,692百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ4,465百万円(22.8%)増加し、24,055百万円となりました。流動負債は、短期借入金や前受金が増加したことや未払法人税等が減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ1,490百万円(11.1%)増加して14,864百万円となりました。固定負債は、長期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ2,974百万円(47.8%)増加して9,190百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益を1,944百万円計上したことや、為替換算調整勘定のマイナスが減少したことで、前連結会計年度末に比べ1,502百万円(7.6%)増加し、21,225百万円となりました。
(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第1四半期連結累計期間において会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
(3)経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において新たに発生した優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題はありません。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、116,488千円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。