有価証券報告書-第24期(2023/01/01-2023/12/31)

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2024/03/26 13:12
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の分類が5類感染症に変更され、社会経済活動の平常化が進むなかで、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の改善などを背景に、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、ウクライナ情勢の長期化に加え、中東情勢の緊迫化など地政学上のリスクに伴うエネルギー価格及び原材料価格の高騰、持続的な円安やインフレの長期化、世界的な金融引締めによる景気の下振れリスクなど、国際情勢の不安定化も相まって、先行き不透明な状況が続いております。
当社の属する決済市場においては、政府が主導するキャッシュレス決済の普及促進や、コロナ禍によるキャッシュレス決済の浸透の影響も受け、支払手段におけるキャッシュレス化は年々増加傾向にあります。経済産業省が2023年4月に公表した「2022年度のキャッシュレス決済比率」においても、キャッシュレス決済比率は36.0%、決済額は111兆円となり、2025年6月までにキャッシュレス決済比率を40%程度にするという政府目標も達成間近となり、将来的には80%という目標に向け、今後も継続的な市場の成長が見込まれております。
このような状況の下、当社グループは、クイック入金サービスや公共料金支払い代行サービスなど既存サービスの着実な運営を推進すると共に、スマホ決済サービスPayBやキャッシュレス決済端末事業の拡大に向け取組んでまいりました。
マホ決済サービスPayBは、2023年12月末時点で、ゆうちょ銀行や各メガバンクを始めとして647の金融機関において利用可能となっており、また利用可能な払込票発行機関(加盟店)は民間収納企業、地方公共団体合わせ16,384社・団体まで広がり、特に地方公共団体については、地方税統一QRコード(eL-QR)制度にも対応したことから、全国1,788団体まで拡大しております。
2023年2月から「PayB」に登録したクレジットカード及び金融機関の預貯金口座から国民年金保険料を即時納付できるサービスの提供を開始しております。また、地方税統一QRコード(eL-QR)にも対応し、全国の地方公共団体が発行する固定資産税や自動車税等の支払いをアプリに登録した金融機関の預貯金口座から即時に納付できるサービスの提供を開始し、更に2023年10月から従来の預貯金口座からの即時納付に加え、クレジットカードによる即時納付にも対応することで「PayB」アプリの機能改善、サービス全体の利便性向上を図るとともに、クレジットカード会社が提供するスマートフォンアプリにPayB同等の機能を組み込んでサービスを展開する準備も進めております。その他、株式会社ふくおかフィナンシャルグループのグループ銀行である福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行(以下、「FFG三銀行」)の個人向けバンキングアプリに「PayB」を組み込み、FFG三銀行のお客様に向けたサービスの提供を開始しております。また、FFG三銀行が新紙幣発行に併せて導入する新型ATM(現金自動預け払い機)にも「PayB」機能を組み込み、当該ATMに搭載されたマルチリーダーを活用して、コンビニ等払込票のバーコードを読み取り、FFG三銀行のキャッシュカード、通帳または現金での支払い手続きが可能となるサービスの提供も開始しております。
本サービスは、銀行にとっては窓口収納業務の事務負担軽減につながる全国初の取り組みであり、利用者及び金融機関双方の利便性、業務効率化に資するサービスとなりますので、今後はATM製造メーカー等との協業により、その他の金融機関にも展開、推進していく方針であります。
次に、大学等の教育業種向けの学費収納管理業務効率化ソリューションである「学費収納管理システム」については、従来の「PayB for Campus」による支払手段に加え、主にアジア圏を中心とする外国人留学生向けに「WechatPay」及び「Alipay+」による決済機能を追加し、現在全国の大学に向けて提案、推進しております。
スマホマルチ決済サービスの「WechatPay」や「Alipay+」につきましては、新型コロナウイルス感染症に対する入国制限が解除されたことに伴うインバウンド需要の回復は、ALPS処理水の影響等により、中国からの団体客の本格的な戻りはありませんでしたが、売上高はコロナ前の水準を回復しております。
キャッシュレス決済端末の販売については、飲料自販機での販売と共に、駐車場やコインランドリー等への新機能の開発や運営ソリューションの構築を引き続き進めております。
端末販売は、半導体不足等の影響により製品の納期や設置に遅延が生じたことなどから期初計画を下回りましたが、JR東日本が駅構内に設置する多機能ロッカー「マルチエキューブ」への導入など、来期に向けた取り組みも開始しております。
なお、利益率の高いシステムの受託開発案件は、追加開発の受託もあり、期初計画を大きく上回ったため、キャッシュレス決済端末事業全体では、売上・利益ともに期初計画を上回る結果となっております。
既存サービスにつきましては、クイック入金サービスは、円安の進行や株価の上昇など、株価・為替相場の変動が大きかったことから、通期に渡り取扱件数が計画を上回り堅調に推移いたしました。また、収納代行サービスの売上も取扱件数が当初の見込みを大きく上回って推移したため、計画比で増収となっております。その他のサービスも概ね、期初計画を上回り、順調に推移いたしました。
なお、2023年6月に本社移転を実施したことにより、什器備品等の購入費用や引越費用などの一時費用が発生したため販管費が前期比で増加しておりますが、当該一時費用は、概ね期初計画に織り込んだ範囲内に収まっております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産の合計は、前連結会計年度末に比べ6,129,786千円増加し、21,291,573千円となりました。
当連結会計年度末における負債の合計は、前連結会計年度末に比べ5,879,515千円増加し、18,677,989千円となりました。
当連結会計年度末における純資産の合計は、前連結会計年度末に比べ250,270千円増加し、2,613,584千円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高3,782,637千円(前年同期比10.1%増)、営業利益466,040千円(前年同期比3.2%減)、経常利益464,149千円(前年同期比3.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益300,064千円(前年同期比7.1%減)となりました。
セグメントごとの経営成績については、決済支援事業サービス以外の区分のサービスについては、重要性が乏しいことから記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比較して5,997,678千円増加となり、残高は19,426,623千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は6,131,277千円(前連結会計年度末は1,123,732千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益462,581千円、預り金の増加による収入5,864,257千円等の資金増加要因が棚卸資産の増加による支出49,856千円、売掛金の増加による支出40,526千円、立替金の増加による支出38,870千円等の資金減少要因を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は66,149千円(前連結会計年度は112,512千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出78,742千円、無形固定資産の取得による支出54,935千円などの資金減少要因が敷金及び保証金の回収による収入67,257千円等の資金増加要因を上回ったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は66,759千円(前連結会計年度末は66,825千円の支出)となりました。これは主に配当金の支払い額62,634千円などの資金減少要因によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループでは、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループでは、受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業ごとに示すと、次のとおりであります。
事業の名称販売高(千円)前年同期比(%)
決済支援事業(千円)3,781,42210.1
ファイナンス支援事業(千円)1,214△4.2
合計(千円)3,782,63710.1

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績及び現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りに特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
その他重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、主なもの及びその補足事項については以下のとおりであります。
a.繰延税金資産
繰延税金資産については、将来の課税所得を検討し、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。しかしながら、将来の課税所得等を検討し、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加計上する可能性があります。また、法人税率が引き下げられた場合、貸借対照表に計上する繰延税金資産の計上額を減額する可能性があります。
b.ソフトウエア
ソフトウエアについては、将来の収益獲得、費用削減が確実であると認められた開発費用についてはソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)に計上しております。このソフトウエアについて将来大規模な計画の変更や使用状況の見直しにより収益獲得、費用削減効果が大幅に損なわれた場合には、ソフトウエアの減損が必要となる可能性があります。
c.投資の減損
投資価値の棄損が著しく、かつ回収の可能性がないと判断した場合、投資の減損を計上しております。非上場企業への投資の場合、当該会社の財政状態の悪化によりその純資産価値が取得価額に比して50%程度以上下落した場合に将来の回復可能性がなければ、減損処理を行っております。将来の市況悪化・業績不振等により現在の帳簿価額に反映されていない損失や回収不能が発生した場合、投資の減損が必要となる可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態の分析
(資産合計)
当連結会計年度末における資産の合計は、前連結会計年度末に比べ6,129,786千円増加の21,291,573千円(前連結会計年度末は15,161,786千円)となりました。これは主に、収納代行サービスに係る預り金の入出金のタイミングの影響を受け、現金及び預金が5,997,678千円増加したことなどによるものであります。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ6,112,593千円増加の20,899,993千円(前連結会計年度末は14,787,399千円)となりました。これは主に、現金及び預金が5,997,678千円増加したことなどによるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ17,193千円増加の391,580千円(前連結会計年度末は374,386千円)となりました。これは主に、ソフトウエアが23,858千円増加したことなどによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債の合計は、前連結会計年度末に比べ5,879,515千円増加の18,677,989千円(前連結会計年度末は12,798,473千円)となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ5,872,982千円増加の18,601,799千円(前連結会計年度末は12,728,816千円)となりました。これは主に、預り金が5,865,357千円増加したことなどによるものであります。
固定負債は前連結会計年度末に比べ6,533千円増加の76,189千円(前連結会計年度末は69,656千円)となりました。これは資産除去債務が増加した一方で、長期前受収益等が減少したことなどによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末における純資産の合計は、前連結会計年度末に比べ250,270千円増加の2,613,584千円(前連結会計年度末は2,363,313千円)となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益300,064千円を計上した一方で、剰余金の配当62,894千円を実施したことなどによるものであります。
2) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、収納代行サービス、クイック入金サービス等が順調に推移したことにより、売上高は前連結会計年度に比べ10.1%増の3,782,637千円となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における売上原価は、上記収納代行サービスの売上増に伴い売上原価が増加したため、前連結会計年度に比べ8.3%増の2,414,516千円となりました。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、本社移転に伴う一時費用の発生や事業体制強化による人件費の増加などにより、前連結会計年度に比べ24.5%増の902,080千円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)は、146,097千円となりました。この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ7.1%減の300,064千円となりました。
3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、株式市場・外為市況動向、銀行法などの法改正、収納代行預り金などがあります。
まず、株式市場・外為市況動向によって、当社グループの提供するクイック入金サービスが売上に与える影響は大きく、クイック入金サービスの収益が当社グループ全体の業績に大きな影響を与えることを認識しております。株式・外為等市況の変動幅が大きい程取引件数が増加する傾向にあり、市況変動幅が小さいと取引件数が減少する傾向にあります。このように株式・外為等市況に当社グループの業績が大きく影響を受けないために、スマホマルチ決済サービスやキャッシュレス決済端末の販売などの新規サービスを展開し事業を拡大していくことで、株式・外為等市況によるリスクを最大限に抑えるよう取り組んでおります。
また、当社グループは、改正割賦販売法のクレジット番号等取扱契約締結事業者に登録し、また、改正銀行法における電子決済等代行業者に登録しており、それぞれの規制を受け事業を行っております。それぞれの法律が改正され、その内容によって当社の提供するサービスが制限を受ける、また、何らかの事情により登録が取り消された場合、当社グループの事業及び業績に大きな影響を及ぼすことを認識しております。そのため当社グループは、関連する業界団体等に加入し、研修会やセミナーに参加することで最新の情報を入手できる環境を整えており、事業部門だけなくコーポレート部門も関与し、法改正への対応についても事前に対策が講じることができる体制を整えております。
当社グループの収納代行サービスは、事業者に代わり収納した代金を、分別管理された当社名義の預貯金口座に一時保管した後、所定の期日に事業者に送金しております。この際、当該収納代行代金の一次保管中に預貯金口座のある銀行が破綻した場合に、預貯金が目減りするリスクを認識しております。そのため当社グループは、事業者財産保護の観点から金融機関の決済性預貯金口座において決済用資金を分別管理し、ペイオフによる預金目減りのリスクを回避しております。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、収納代行サービスにかかる金融機関等への支払手数料や、システム開発の運用・維持にかかる人件費や外注費、キャッシュレス決済端末の購入費用などの売上原価のほか、営業や管理部門などの人件費や本社オフィスの家賃などの販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、当社サービスにかかるサーバ構築費用やソフトウエア開発費用であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入金を基本としております。
なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は19,426,623千円となっております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが重視している経営指標は、新しく展開しておりますサービスの売上高です。それぞれの指標の実績及び目標は以下のとおりです。
サービス名2022年12月期
実績
2023年12月期
実績
2024年12月期
目標
スマートフォン決済サービス404百万円554百万円797百万円
カードリーダーソリューションサービス409百万円545百万円534百万円

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「決済支援事業」以外の事業の重要性が乏しいため、記載を省略しております。