有価証券報告書-第9期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う世界経済の停滞により、極めて厳しい環境下でスタートしました。夏場以降、中国をはじめ各国で持ち直しの動きも見られましたが、欧米で感染が再拡大するなど回復のペースは鈍く、新型コロナウイルス感染症流行以前の水準を取り戻すには至りませんでした。わが国においても、各種政策の効果や海外経済の改善を受けて、輸出や生産、個人消費などで持ち直しの動きがありますが、昨年末に感染が急拡大し回復にブレーキがかかるなど、全体として厳しい状況となりました。 アルミニウム業界では、テレワーク、巣ごもり関連需要を受け、電子機器向けなど堅調な分野もありましたが、自動車向け、建材向けなど、多くの分野での需要が期初に低迷し、その後回復したものの、一年を通じての需要は減少しました。また、アルミニウム地金価格は、期初に下落したのち、上昇基調で推移しました。 このような状況のもと、当社グループは、当連結会計年度が二年目となる中期経営計画(2019年度~2021年度)(以下「中計」といいます。)の基本方針に則り、連結収益の最大化に努めてまいりました。 中計第一の基本方針「新商品・新ビジネスの創出」では、当社グループの強みを追求し、ものづくりを核としたサプライチェーン全体での商品・ビジネス開発に取り組みました。具体的には、環境対応車関連、半導体関連、医療関連など成長性の高い分野で新商品の開発、拡販に注力するとともに、トラック架装事業、パネル事業、景観事業などにおいて商品販売後のサービス、メンテナンス事業を強化してまいりました。 中計第二の基本方針「成長に向けた資源投入」では、以下のように、グループの強みを活かせる分野・地域への資源投入を継続してまいりました。 中国におけるNEV(新エネルギー車)規制に対応した環境対応車関連商品の現地生産については、政策変更や需要動向に柔軟に対応しつつ昨年末に量産を開始しました。また、環境規制の強化、自動車軽量化ニーズの高まりを背景として、2019年度米国に設立した自動車足回り部品関連の子会社においては、2022年度中の量産開始に向けた工事が計画どおり進捗しております。 さらに、インドの自動車市場の成長と日系メーカーの進出に対応するため2019年度同国に設立した二次合金事業の子会社においても、新型コロナウイルス感染症流行の影響で計画に遅れが出たものの、2022年度中の操業開始に向けた準備が着実に進行しております。 このほか、日本国内では、自動車・輸送、電機・電子、食品・健康といった分野における投資が概ね計画どおり進捗しており、一例として、パネル事業では、エンジニアリング機能の更なる強化のための新たな研究開発施設・人財育成拠点が竣工しております。 当連結会計年度の業績といたしましては、以下のとおりであります。
テレワークの浸透や巣ごもり需要の増加によりパソコン向け、食品・日用品関連などで販売が増加した一方、自動車関連をはじめ多くの分野で販売回復が道半ばであったことから、売上高は前期を下回りましたが、収益面では板加工製品など高収益商品が寄与したこともあり、ほぼ前期並みの営業利益・経常利益を確保することができました。なお、当社子会社の日本軽金属株式会社が保有する雨畑ダム(山梨県)の堆砂対策が着実に進展し、合理的な費用見積りが可能となったことから、2022年度から2024年度にかけて見込まれる堆砂対策に係る費用を特別損失に計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期を大きく下回りました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

(アルミナ・化成品、地金)

アルミナ・化成品部門におきましては、主力の水酸化アルミニウム及びアルミナ関連製品で耐火物向けや自動車関連などの需要が落ち込み、化学品関連では凝集剤や無機塩化物などの販売減少により、部門全体で売上高・営業利益とも前期を下回りました。 地金部門におきましては、主力の自動車向け二次合金の需要が、国内、海外とも下半期に入り回復の動きが強まったものの、全体では大きく減少したため、売上高は前期を下回るとともに、営業利益も減益となりました。 以上の結果、アルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比11.3%減の911億81百万円、営業利益は前期比11.8%減の96億14百万円となりました。
(板、押出製品)

板製品部門におきましては、半導体・液晶製造装置向け厚板の販売量は前期を上回り、板加工製品はパソコン需要の好調継続により前期と比べ販売量が増加したものの、自動車向けや建材向けなどの販売減少により、売上高はほぼ前期並みとなり、採算面では高収益商品である板加工製品の販売増により、前期に比べ大幅な増益となりました。 押出製品部門におきましては、主力の自動車関連向けで需要回復がみられるものの、建材関連などでの販売減少により、売上高は前期を下回りましたが、営業利益はほぼ前期並みとなりました。 以上の結果、板、押出製品セグメントの売上高は前期比3.3%減の978億50百万円となりましたが、営業利益は前期比67.3%増の59億50百万円となりました。
(加工製品、関連事業)

主要部門の概況は以下のとおりであります。
輸送関連部門のうち、トラック架装事業におきましては、国内のドライバー不足・物流効率化などに伴うトラック全体の需要減少の影響に加え、排ガス規制強化に伴う駆け込み需要の反動減や、トラックメーカーの在庫調整などにより、前期を下回る売上高となりました。採算面では、材料価格下落の効果があったことなどにより、営業利益は前期を上回りました。
熱交製品事業は、エアコン用コンデンサは主力の軽自動車向けを中心に需要が低迷し、売上高・営業利益とも前期を下回りました。
素形材製品事業は、需要の落ち込んだ上半期に対し、下半期は鍛造品において電動車向け部品の販売が増加し、鋳造品においても主力のブレーキキャリパーや電動車向けの販売が増加したことなどにより、売上高は前期を上回り、営業利益も前期に比べ大幅な増益となりました。
電子材料部門におきましては、在庫調整局面であった上半期に対し、下半期に車載機器向けがけん引する形で需要が回復したことにより、アルミ電解コンデンサ用電極箔の販売量が増加し、売上高・営業利益とも前期を上回りました。 パネルシステム部門におきましては、クリーンルーム分野では、5G(第5世代移動通信システム)関連などの電子部品工場向けやデータセンター向けの需要は堅調だったものの、医療・医薬向けの販売が減少しました。冷凍・冷蔵分野では、食品加工工場などの大型投資の減少や店舗向け物件における計画延期の動きもあり、部門全体の売上高・営業利益とも前期を下回りました。 景観エンジニアリング部門におきましては、構造物向けでは水門や浄水場の覆蓋の需要が前期に引き続き堅調に推移し、道路・橋梁向けにおいても主力の高欄の売上が増加しました。一方、都市景観向けにおいてはオリンピック関連需要が終了したことから販売が減少しました。この結果、部門全体の売上高は前期を下回りましたが、道路・橋梁向けがけん引し、営業利益は前期を大幅に上回りました。 炭素製品部門におきましては、主要顧客となる鉄鋼業界向けの販売が上半期の落ち込みを取り戻すに至らなかったことを受け、主力製品であるカーボンブロックの販売が減少したほか、リチウムイオン電池用負極材の熱処理事業の売上が減少したことから、前期を下回る売上高・営業利益となりました。 以上の結果、加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比9.1%減の1,572億97百万円、営業利益は前期比14.8%減の88億92百万円となりました。
(箔、粉末製品)

箔部門におきましては、素材箔の分野で、リチウムイオン電池外装用箔や正極材用箔が、好調なパソコン需要に加え中国を中心として自動車需要が回復してきていることもあり、販売が増加しました。加工箔の分野では、医薬包材向け加工箔で販売が減少したほか、ICカード用アンテナ回路向け製品の販売が減少したものの、食品向け撥水性加工箔の需要は巣ごもり需要を受け堅調に推移し、部門全体で前期を上回る売上高・営業利益となりました。
パウダー・ペースト部門におきましては、粉末製品では、放熱用途の電子材アルミパウダーはパソコン需要の好調などにより堅調な販売となりましたが、窒化アルミニウムの販売は低調なものとなりました。ペースト製品は、主力の自動車塗料向けの需要は回復しつつあるものの、自動車生産台数の減少により販売量が大きく減少したことから、部門全体で前期を下回る売上高・営業利益となりました。
以上の結果、箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比3.0%減の862億40百万円となりましたが、営業利益は前期比7.7%増の33億11百万円となりました。

②キャッシュ・フローの状況
当期末における連結ベースの現金及び現金同等物については、前期末に比べ248億80百万円(68.5%)増加の611億76百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは419億42百万円の収入となりました。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、法人税等の支払などによる支出を上回ったことによるものです。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前連結会計年度と比べ67億34百万円減少しておりますが、これは主に売上債権が前連結会計年度においては大きく減少した一方、当連結会計年度においてはほぼ横ばいであったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは256億74百万円の支出となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものです。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ40億10百万円減少しておりますが、これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは81億94百万円の収入となりました。これは主として長期借入れによる収入によるものです。なお、財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度の157億45百万円の支出に対し、当連結会計年度は81億94百万円の収入となっておりますが、これは主に長期借入れによる収入が増加したことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産実績及び受注実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
(b)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、主要な販売先として記載すべきものはありません。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 中期経営計画進捗
当社グループを取り巻く事業環境は、中期経営計画策定時より大きく変化しております。この状況を踏まえ、中期経営計画目標数値を今回算定した業績予想値へと見直すことといたしました。
(金額単位:億円)
しかしながら、外部環境や市場環境の変化に対応しながらも、中期経営計画で掲げている3つの基本方針は変えず、グループの成長を目指し活動を続けてまいります。
中期経営計画第一の基本方針「新商品・新ビジネスの創出」については、お客様の価値創造を念頭に、お客様に選んでいただける商品・ビジネスを創出してまいります。
このうち自動車関連分野においては、今後増加が見込まれる環境対応車への対応として、グループ一貫生産や横串活動といった当社グループが持つ資源や要素技術といった価値を複合化することで高付加価値商品の市場投入を継続してまいります。
第二の基本方針「成長に向けた資源投入」については、成長市場・成長地域でたゆまぬ前進を続けてまいります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一部において遅延はあるものの、当社グループの成長を図るべく、将来の種まきは着実に実行してまいります。
特に、環境対応車を中心に今後も成長が期待される自動車分野では、アメリカでの製造販売拠点の新設、インドでのリサイクルビジネス拡大、中国での部品ビジネスの拡充など、日本で確立した技術・商流をもとに、内容を精査しながら投資を続けていきます。
また、サービス・メンテナンス分野への拡大を企図し、滋賀県にエンジニアリングセンター「テックラボ」を開設いたしました。このテックラボでは、パネル事業の商品開発・研究機能だけでなく施工技術の向上や将来を担う人財育成の中核拠点として、社内だけでなく協力業者の皆様と一丸となり、お客様にとって、より価値のある商品・サービスの提案・提供を進めてまいります。
第三の基本方針「経営基盤強化」については、盤石な財務基盤の下、さらなる成長に向けた設備投資、研究開発、設備メンテナンスは費用を絞るべきではないと判断しております。
以上のように、新商品・新ビジネスの創出、成長に向けた資源投入をしていくという方針は変えず活動を続けてまいります。
また、今後の成長に向けて、安全優先とコンプライアンス、品質順守の徹底が不可欠であると認識しております。改めてコンプライアンスを経営の最重要課題と位置付け、活動の再構築を図り、グループを挙げて信頼回復に向け取り組んでまいります。
② 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金が増加したことなどにより、前連結会計年度末と比べて369億51百万円増の5,069億55百万円となりました。
負債合計は、堆砂対策引当金が増加したことなどにより、前連結会計年度末と比べて310億45百万円増の2,998億51百万円となりました。
純資産合計は、為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末と比べて59億6百万円増の2,071億4百
万円となりました。この結果、自己資本比率(期末純資産から非支配株主持分を控除したベース)は、前連結会計年度末の39.6%から37.6%となりました。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)概要
当連結会計年度の売上高は4,325億68百万円(前連結会計年度比 7.2%減、333億78百万円減)、営業利益は241億94百万円(同 1.7%減、4億13百万円減)、経常利益は240億30百万円(同 2.4%増、5億55百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は33億66百万円(同 55.0%減、41億10百万円減)となりました。
(単位:百万円)
(b)営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ、4億13百万円減の241億94百万円となりました。これは、売上高が前期を下回ったこと等によるものです。営業利益のセグメント毎の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
(c)営業外収益・費用
営業外収益は、持分法による投資利益が増加したことなどにより、前連結会計年度と比べ、5億2百万円増加し、39億16百万円となりました。
営業外費用は、支払利息やその他の営業外費用が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、4億68百万円減少し、40億8百万円となりました。
(d)特別利益・損失
特別損失は、前連結会計年度においては、堆砂対策費用として110億円計上しました。当連結会計年度においても、堆砂対策費用として162億円を計上しました。堆砂対策費用の内容については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりであります。
(e)税金費用等
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、課税所得が減少したこと等により、前連結会計年度と比べ、4億57百万円減少し、27億33百万円となりました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主として子会社である日本フルハーフ㈱、日本電極㈱及び㈱東陽理化学研究所の非支配株主に帰属する利益であり、前連結会計年度と比べ、78百万円減少し当連結会計年度は17億31百万円となりました。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ248億80百万円(68.5%)増加の611億76百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ、67億34百万円(13.8%)減少し、419億42百万円の収入となりました。これは主に売上債権が前連結会計年度においては大きく減少した一方、当連結会計年度においてはほぼ横ばいであったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の296億84百万円の支出に対し、当連結会計年度は256億74百万円の支出となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の157億45百万円の支出に対し、81億94百万円の収入となりました。これは主に長期借入れによる収入が増加したことによるものです。
(b)資金需要・調達及び流動性について
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の維持に留意しております。当社グループの資金需要としては、製品製造のための原料及び操業材料の購入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動に係る運転資金需要、製造設備の購入及び事業買収等の投資活動に係る長期資金需要があります。
当社グループは、資金調達に当たって資金の安定性強化と資金コストの低減に傾注しつつ、社債の発行や、主力銀行をはじめとする幅広い金融機関からの借り入れによる調達を行なっております。
また、流動性に関して、当社グループは金融情勢の変化等を勘案しながら、現金同等物の残高が適正になるように努めております。
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度486億76百万円、当連結会計年度419億42百万円であり、キャッシュ・フローの水準としては比較的安定していると当社グループは考えておりますが、将来の当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び長期資金を調達するためには、必ずしも充分ではない可能性があると認識しております。将来の成長を維持・加速するために必要な資金は、基本的に新商品・新規事業の創出による売上、収益の拡大を通じて営業キャッシュ・フローの増大により確保していく方針であります。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えております。また、会計上の見積りのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると識別したものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(a)貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能見込額を見積り、貸倒引当金として計上しております。将来、顧客等の財務状況悪化、経営破綻等により、顧客等の支払能力が低下したとの疑義が生じたと判断される場合には、貸倒引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
(b)資産の評価
当社グループは、たな卸資産については主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しておりますが、製品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上しております。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
当社グループは、長期的な取引関係の維持・構築のため、一部の顧客及び金融機関等の株式を所有しており、金融商品に係る会計基準に基づいて評価しております。将来において市場価格のある株式の時価が著しく下落したとき、回復する見込みがあると認められない場合には、評価損を計上する可能性があります。一方、市場価格のない株式については、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性があります。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
(c)繰延税金資産
当社グループは、合理的で実現可能なタックスプランニングに基づき将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を充分に検討し繰延税金資産を計上しております。
将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性があります。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の当期純利益を増加させる可能性があります。
(d)退職給付費用及び債務
当社グループは、従業員の退職給付費用及び債務を算出するに当たり、数理計算上で設定した基礎率(割引率、昇給率、退職率、死亡率、期待運用収益率等)は、統計数値等により合理的な見積りに基づいて採用している。これらの見積りを含む基礎率が実際の結果と異なる場合、その影響額は数理計算上の差異として累積され、将来期間にわたって償却されるため、将来において計上される退職給付費用及び債務に影響を及ぼします。当社グループは採用している基礎率は適切であると考えておりますが、実際の結果との差異が将来の当社グループの退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
(e)堆砂対策引当金
当社の連結子会社である日本軽金属㈱が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)上流の雨畑川の水位が2019年8月の台風10号、同年10月の台風19号などによる豪雨の影響を受け上昇したことにより、周辺地域で浸水被害が発生いたしました。現在、地域の皆さまの安全を最優先に、関係各所との連携により地域復旧と浸水被害を防ぐための対策を進めております。
また、国土交通省より抜本的な解決に向け、堆砂対策の計画を取りまとめ、計画的に取り組むよう指導されております。
この状況を厳粛に受け止め、日本軽金属㈱は国土交通省、山梨県及び早川町との4者で構成する雨畑地区土砂対策検討会を設立し、周辺地域における浸水被害発生に対する応急対策、及び堆積土砂の抜本対策について検討を重ね、その内容に基づき雨畑ダム堆砂対策基本計画を策定し、その実行に伴う費用等を合理的に見積っておりますが、見積りの前提として仮定した搬出計画(搬出方法や搬出先)は、必ずしもすべての内容につき実行の許認可を得られたものではなく、許認可の内容や工事方法の変更等によって見積り額が変動する可能性があります。
なお、当見積り項目は、重要な会計上の見積りとして、そのリスク内容を「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う世界経済の停滞により、極めて厳しい環境下でスタートしました。夏場以降、中国をはじめ各国で持ち直しの動きも見られましたが、欧米で感染が再拡大するなど回復のペースは鈍く、新型コロナウイルス感染症流行以前の水準を取り戻すには至りませんでした。わが国においても、各種政策の効果や海外経済の改善を受けて、輸出や生産、個人消費などで持ち直しの動きがありますが、昨年末に感染が急拡大し回復にブレーキがかかるなど、全体として厳しい状況となりました。 アルミニウム業界では、テレワーク、巣ごもり関連需要を受け、電子機器向けなど堅調な分野もありましたが、自動車向け、建材向けなど、多くの分野での需要が期初に低迷し、その後回復したものの、一年を通じての需要は減少しました。また、アルミニウム地金価格は、期初に下落したのち、上昇基調で推移しました。 このような状況のもと、当社グループは、当連結会計年度が二年目となる中期経営計画(2019年度~2021年度)(以下「中計」といいます。)の基本方針に則り、連結収益の最大化に努めてまいりました。 中計第一の基本方針「新商品・新ビジネスの創出」では、当社グループの強みを追求し、ものづくりを核としたサプライチェーン全体での商品・ビジネス開発に取り組みました。具体的には、環境対応車関連、半導体関連、医療関連など成長性の高い分野で新商品の開発、拡販に注力するとともに、トラック架装事業、パネル事業、景観事業などにおいて商品販売後のサービス、メンテナンス事業を強化してまいりました。 中計第二の基本方針「成長に向けた資源投入」では、以下のように、グループの強みを活かせる分野・地域への資源投入を継続してまいりました。 中国におけるNEV(新エネルギー車)規制に対応した環境対応車関連商品の現地生産については、政策変更や需要動向に柔軟に対応しつつ昨年末に量産を開始しました。また、環境規制の強化、自動車軽量化ニーズの高まりを背景として、2019年度米国に設立した自動車足回り部品関連の子会社においては、2022年度中の量産開始に向けた工事が計画どおり進捗しております。 さらに、インドの自動車市場の成長と日系メーカーの進出に対応するため2019年度同国に設立した二次合金事業の子会社においても、新型コロナウイルス感染症流行の影響で計画に遅れが出たものの、2022年度中の操業開始に向けた準備が着実に進行しております。 このほか、日本国内では、自動車・輸送、電機・電子、食品・健康といった分野における投資が概ね計画どおり進捗しており、一例として、パネル事業では、エンジニアリング機能の更なる強化のための新たな研究開発施設・人財育成拠点が竣工しております。 当連結会計年度の業績といたしましては、以下のとおりであります。
テレワークの浸透や巣ごもり需要の増加によりパソコン向け、食品・日用品関連などで販売が増加した一方、自動車関連をはじめ多くの分野で販売回復が道半ばであったことから、売上高は前期を下回りましたが、収益面では板加工製品など高収益商品が寄与したこともあり、ほぼ前期並みの営業利益・経常利益を確保することができました。なお、当社子会社の日本軽金属株式会社が保有する雨畑ダム(山梨県)の堆砂対策が着実に進展し、合理的な費用見積りが可能となったことから、2022年度から2024年度にかけて見込まれる堆砂対策に係る費用を特別損失に計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期を大きく下回りました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

(アルミナ・化成品、地金)

アルミナ・化成品部門におきましては、主力の水酸化アルミニウム及びアルミナ関連製品で耐火物向けや自動車関連などの需要が落ち込み、化学品関連では凝集剤や無機塩化物などの販売減少により、部門全体で売上高・営業利益とも前期を下回りました。 地金部門におきましては、主力の自動車向け二次合金の需要が、国内、海外とも下半期に入り回復の動きが強まったものの、全体では大きく減少したため、売上高は前期を下回るとともに、営業利益も減益となりました。 以上の結果、アルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比11.3%減の911億81百万円、営業利益は前期比11.8%減の96億14百万円となりました。
(板、押出製品)

板製品部門におきましては、半導体・液晶製造装置向け厚板の販売量は前期を上回り、板加工製品はパソコン需要の好調継続により前期と比べ販売量が増加したものの、自動車向けや建材向けなどの販売減少により、売上高はほぼ前期並みとなり、採算面では高収益商品である板加工製品の販売増により、前期に比べ大幅な増益となりました。 押出製品部門におきましては、主力の自動車関連向けで需要回復がみられるものの、建材関連などでの販売減少により、売上高は前期を下回りましたが、営業利益はほぼ前期並みとなりました。 以上の結果、板、押出製品セグメントの売上高は前期比3.3%減の978億50百万円となりましたが、営業利益は前期比67.3%増の59億50百万円となりました。
(加工製品、関連事業)

主要部門の概況は以下のとおりであります。
輸送関連部門のうち、トラック架装事業におきましては、国内のドライバー不足・物流効率化などに伴うトラック全体の需要減少の影響に加え、排ガス規制強化に伴う駆け込み需要の反動減や、トラックメーカーの在庫調整などにより、前期を下回る売上高となりました。採算面では、材料価格下落の効果があったことなどにより、営業利益は前期を上回りました。
熱交製品事業は、エアコン用コンデンサは主力の軽自動車向けを中心に需要が低迷し、売上高・営業利益とも前期を下回りました。
素形材製品事業は、需要の落ち込んだ上半期に対し、下半期は鍛造品において電動車向け部品の販売が増加し、鋳造品においても主力のブレーキキャリパーや電動車向けの販売が増加したことなどにより、売上高は前期を上回り、営業利益も前期に比べ大幅な増益となりました。
電子材料部門におきましては、在庫調整局面であった上半期に対し、下半期に車載機器向けがけん引する形で需要が回復したことにより、アルミ電解コンデンサ用電極箔の販売量が増加し、売上高・営業利益とも前期を上回りました。 パネルシステム部門におきましては、クリーンルーム分野では、5G(第5世代移動通信システム)関連などの電子部品工場向けやデータセンター向けの需要は堅調だったものの、医療・医薬向けの販売が減少しました。冷凍・冷蔵分野では、食品加工工場などの大型投資の減少や店舗向け物件における計画延期の動きもあり、部門全体の売上高・営業利益とも前期を下回りました。 景観エンジニアリング部門におきましては、構造物向けでは水門や浄水場の覆蓋の需要が前期に引き続き堅調に推移し、道路・橋梁向けにおいても主力の高欄の売上が増加しました。一方、都市景観向けにおいてはオリンピック関連需要が終了したことから販売が減少しました。この結果、部門全体の売上高は前期を下回りましたが、道路・橋梁向けがけん引し、営業利益は前期を大幅に上回りました。 炭素製品部門におきましては、主要顧客となる鉄鋼業界向けの販売が上半期の落ち込みを取り戻すに至らなかったことを受け、主力製品であるカーボンブロックの販売が減少したほか、リチウムイオン電池用負極材の熱処理事業の売上が減少したことから、前期を下回る売上高・営業利益となりました。 以上の結果、加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比9.1%減の1,572億97百万円、営業利益は前期比14.8%減の88億92百万円となりました。
(箔、粉末製品)

箔部門におきましては、素材箔の分野で、リチウムイオン電池外装用箔や正極材用箔が、好調なパソコン需要に加え中国を中心として自動車需要が回復してきていることもあり、販売が増加しました。加工箔の分野では、医薬包材向け加工箔で販売が減少したほか、ICカード用アンテナ回路向け製品の販売が減少したものの、食品向け撥水性加工箔の需要は巣ごもり需要を受け堅調に推移し、部門全体で前期を上回る売上高・営業利益となりました。
パウダー・ペースト部門におきましては、粉末製品では、放熱用途の電子材アルミパウダーはパソコン需要の好調などにより堅調な販売となりましたが、窒化アルミニウムの販売は低調なものとなりました。ペースト製品は、主力の自動車塗料向けの需要は回復しつつあるものの、自動車生産台数の減少により販売量が大きく減少したことから、部門全体で前期を下回る売上高・営業利益となりました。
以上の結果、箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比3.0%減の862億40百万円となりましたが、営業利益は前期比7.7%増の33億11百万円となりました。

②キャッシュ・フローの状況
当期末における連結ベースの現金及び現金同等物については、前期末に比べ248億80百万円(68.5%)増加の611億76百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは419億42百万円の収入となりました。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、法人税等の支払などによる支出を上回ったことによるものです。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前連結会計年度と比べ67億34百万円減少しておりますが、これは主に売上債権が前連結会計年度においては大きく減少した一方、当連結会計年度においてはほぼ横ばいであったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは256億74百万円の支出となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものです。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ40億10百万円減少しておりますが、これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは81億94百万円の収入となりました。これは主として長期借入れによる収入によるものです。なお、財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度の157億45百万円の支出に対し、当連結会計年度は81億94百万円の収入となっておりますが、これは主に長期借入れによる収入が増加したことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産実績及び受注実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
(b)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) | |
アルミナ・化成品 | 29,219 | △14.8 | |
地金 | 61,962 | △9.6 | |
アルミナ・化成品、地金 | 91,181 | △11.3 | |
板製品 | 57,631 | △2.0 | |
押出製品 | 40,219 | △5.1 | |
板、押出製品 | 97,850 | △3.3 | |
輸送関連製品 | 79,551 | △2.7 | |
電子材料 | 6,213 | 13.7 | |
その他 | 71,533 | △16.5 | |
加工製品、関連事業 | 157,297 | △9.1 | |
箔、粉末製品 | 86,240 | △3.0 | |
合計 | 432,568 | △7.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、主要な販売先として記載すべきものはありません。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 中期経営計画進捗
当社グループを取り巻く事業環境は、中期経営計画策定時より大きく変化しております。この状況を踏まえ、中期経営計画目標数値を今回算定した業績予想値へと見直すことといたしました。
(金額単位:億円)
2021年3月期 実績 | 2022年3月期 中期経営計画目標 | 2022年3月期 業績予想 | |
売上高 | 4,326 | 5,400 | 4,700 |
営業利益 | 242 | 375 | 270 |
経常利益 | 240 | 370 | 270 |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 34 | 240 | 180 |
ROCE | 8.4% | 11.4% | 9.7% |
しかしながら、外部環境や市場環境の変化に対応しながらも、中期経営計画で掲げている3つの基本方針は変えず、グループの成長を目指し活動を続けてまいります。
中期経営計画第一の基本方針「新商品・新ビジネスの創出」については、お客様の価値創造を念頭に、お客様に選んでいただける商品・ビジネスを創出してまいります。
このうち自動車関連分野においては、今後増加が見込まれる環境対応車への対応として、グループ一貫生産や横串活動といった当社グループが持つ資源や要素技術といった価値を複合化することで高付加価値商品の市場投入を継続してまいります。
第二の基本方針「成長に向けた資源投入」については、成長市場・成長地域でたゆまぬ前進を続けてまいります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一部において遅延はあるものの、当社グループの成長を図るべく、将来の種まきは着実に実行してまいります。
特に、環境対応車を中心に今後も成長が期待される自動車分野では、アメリカでの製造販売拠点の新設、インドでのリサイクルビジネス拡大、中国での部品ビジネスの拡充など、日本で確立した技術・商流をもとに、内容を精査しながら投資を続けていきます。
また、サービス・メンテナンス分野への拡大を企図し、滋賀県にエンジニアリングセンター「テックラボ」を開設いたしました。このテックラボでは、パネル事業の商品開発・研究機能だけでなく施工技術の向上や将来を担う人財育成の中核拠点として、社内だけでなく協力業者の皆様と一丸となり、お客様にとって、より価値のある商品・サービスの提案・提供を進めてまいります。
第三の基本方針「経営基盤強化」については、盤石な財務基盤の下、さらなる成長に向けた設備投資、研究開発、設備メンテナンスは費用を絞るべきではないと判断しております。
以上のように、新商品・新ビジネスの創出、成長に向けた資源投入をしていくという方針は変えず活動を続けてまいります。
また、今後の成長に向けて、安全優先とコンプライアンス、品質順守の徹底が不可欠であると認識しております。改めてコンプライアンスを経営の最重要課題と位置付け、活動の再構築を図り、グループを挙げて信頼回復に向け取り組んでまいります。
② 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金が増加したことなどにより、前連結会計年度末と比べて369億51百万円増の5,069億55百万円となりました。
負債合計は、堆砂対策引当金が増加したことなどにより、前連結会計年度末と比べて310億45百万円増の2,998億51百万円となりました。
純資産合計は、為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末と比べて59億6百万円増の2,071億4百
万円となりました。この結果、自己資本比率(期末純資産から非支配株主持分を控除したベース)は、前連結会計年度末の39.6%から37.6%となりました。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)概要
当連結会計年度の売上高は4,325億68百万円(前連結会計年度比 7.2%減、333億78百万円減)、営業利益は241億94百万円(同 1.7%減、4億13百万円減)、経常利益は240億30百万円(同 2.4%増、5億55百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は33億66百万円(同 55.0%減、41億10百万円減)となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度 2021年3月期 | 前連結会計年度 2020年3月期 | 比較増減 | (△印減少) | |
売上高 | 432,568 | 465,946 | △33,378 | (△7.2%) |
営業利益 | 24,194 | 24,607 | △413 | (△1.7%) |
経常利益 | 24,030 | 23,475 | 555 | (2.4%) |
親会社株主に帰属する 当期純利益 | 3,366 | 7,476 | △4,110 | (△55.0%) |
(b)営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ、4億13百万円減の241億94百万円となりました。これは、売上高が前期を下回ったこと等によるものです。営業利益のセグメント毎の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
(c)営業外収益・費用
営業外収益は、持分法による投資利益が増加したことなどにより、前連結会計年度と比べ、5億2百万円増加し、39億16百万円となりました。
営業外費用は、支払利息やその他の営業外費用が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、4億68百万円減少し、40億8百万円となりました。
(d)特別利益・損失
特別損失は、前連結会計年度においては、堆砂対策費用として110億円計上しました。当連結会計年度においても、堆砂対策費用として162億円を計上しました。堆砂対策費用の内容については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりであります。
(e)税金費用等
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、課税所得が減少したこと等により、前連結会計年度と比べ、4億57百万円減少し、27億33百万円となりました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主として子会社である日本フルハーフ㈱、日本電極㈱及び㈱東陽理化学研究所の非支配株主に帰属する利益であり、前連結会計年度と比べ、78百万円減少し当連結会計年度は17億31百万円となりました。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ248億80百万円(68.5%)増加の611億76百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ、67億34百万円(13.8%)減少し、419億42百万円の収入となりました。これは主に売上債権が前連結会計年度においては大きく減少した一方、当連結会計年度においてはほぼ横ばいであったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の296億84百万円の支出に対し、当連結会計年度は256億74百万円の支出となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の157億45百万円の支出に対し、81億94百万円の収入となりました。これは主に長期借入れによる収入が増加したことによるものです。
(b)資金需要・調達及び流動性について
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の維持に留意しております。当社グループの資金需要としては、製品製造のための原料及び操業材料の購入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動に係る運転資金需要、製造設備の購入及び事業買収等の投資活動に係る長期資金需要があります。
当社グループは、資金調達に当たって資金の安定性強化と資金コストの低減に傾注しつつ、社債の発行や、主力銀行をはじめとする幅広い金融機関からの借り入れによる調達を行なっております。
また、流動性に関して、当社グループは金融情勢の変化等を勘案しながら、現金同等物の残高が適正になるように努めております。
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度486億76百万円、当連結会計年度419億42百万円であり、キャッシュ・フローの水準としては比較的安定していると当社グループは考えておりますが、将来の当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び長期資金を調達するためには、必ずしも充分ではない可能性があると認識しております。将来の成長を維持・加速するために必要な資金は、基本的に新商品・新規事業の創出による売上、収益の拡大を通じて営業キャッシュ・フローの増大により確保していく方針であります。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えております。また、会計上の見積りのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると識別したものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(a)貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能見込額を見積り、貸倒引当金として計上しております。将来、顧客等の財務状況悪化、経営破綻等により、顧客等の支払能力が低下したとの疑義が生じたと判断される場合には、貸倒引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
(b)資産の評価
当社グループは、たな卸資産については主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しておりますが、製品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上しております。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
当社グループは、長期的な取引関係の維持・構築のため、一部の顧客及び金融機関等の株式を所有しており、金融商品に係る会計基準に基づいて評価しております。将来において市場価格のある株式の時価が著しく下落したとき、回復する見込みがあると認められない場合には、評価損を計上する可能性があります。一方、市場価格のない株式については、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性があります。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
(c)繰延税金資産
当社グループは、合理的で実現可能なタックスプランニングに基づき将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を充分に検討し繰延税金資産を計上しております。
将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性があります。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の当期純利益を増加させる可能性があります。
(d)退職給付費用及び債務
当社グループは、従業員の退職給付費用及び債務を算出するに当たり、数理計算上で設定した基礎率(割引率、昇給率、退職率、死亡率、期待運用収益率等)は、統計数値等により合理的な見積りに基づいて採用している。これらの見積りを含む基礎率が実際の結果と異なる場合、その影響額は数理計算上の差異として累積され、将来期間にわたって償却されるため、将来において計上される退職給付費用及び債務に影響を及ぼします。当社グループは採用している基礎率は適切であると考えておりますが、実際の結果との差異が将来の当社グループの退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
(e)堆砂対策引当金
当社の連結子会社である日本軽金属㈱が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)上流の雨畑川の水位が2019年8月の台風10号、同年10月の台風19号などによる豪雨の影響を受け上昇したことにより、周辺地域で浸水被害が発生いたしました。現在、地域の皆さまの安全を最優先に、関係各所との連携により地域復旧と浸水被害を防ぐための対策を進めております。
また、国土交通省より抜本的な解決に向け、堆砂対策の計画を取りまとめ、計画的に取り組むよう指導されております。
この状況を厳粛に受け止め、日本軽金属㈱は国土交通省、山梨県及び早川町との4者で構成する雨畑地区土砂対策検討会を設立し、周辺地域における浸水被害発生に対する応急対策、及び堆積土砂の抜本対策について検討を重ね、その内容に基づき雨畑ダム堆砂対策基本計画を策定し、その実行に伴う費用等を合理的に見積っておりますが、見積りの前提として仮定した搬出計画(搬出方法や搬出先)は、必ずしもすべての内容につき実行の許認可を得られたものではなく、許認可の内容や工事方法の変更等によって見積り額が変動する可能性があります。
なお、当見積り項目は、重要な会計上の見積りとして、そのリスク内容を「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。