有価証券報告書-第8期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦の動向、英国のEU離脱、中東地域の地政学リスクなどの先行き懸念要因が増大したことに加え、本年に入り新型コロナウイルスの感染が拡大し急激に悪化した。わが国経済も、海外経済の動向に加え、消費税率引上げや相次ぐ自然災害などにより足踏み感が見られたところ、年度末には国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大し、悪化へと転じた。
アルミニウム業界においては、半導体製造装置向けや自動車向けの需要が減少し、全体として力強さを欠く展開となった。また、アルミニウム地金価格は下落基調で推移した。
このような状況のもと、当社グループは、当連結会計年度が初年度となる中期経営計画(2019年度~2021年度)(以下「中計」という。)の基本方針に則り、連結収益の最大化に注力してきた。
中計第一の基本方針「新商品・新ビジネスの創出」では、グループ連携の強みを徹底的に追求し、すべてのお客様の新しい価値を創造するべく、ものづくりを核としサプライチェーン全体を通じた商品・ビジネス開発に取り組んできた。具体的には、環境対応車向け熱デバイスビジネスの分野などにおいて、素材・設計・加工の一気通貫で、高付加価値の新商品を創出・提供してきた。
中計第二の基本方針「成長に向けた資源投入」では、グループの強みを活かせる分野・地域へより積極的に資源を投入すべく、以下の取組みを行ってきた。
まず、中国のNEV(新エネルギー車)規制による環境対応車の需要増に対応し、技術力と日本での採用実績を活かした関連商品の現地生産を開始するため、工場建屋の拡張を行った。また、インドの自動車市場の成長と日系メーカーの進出に対応するため、二次合金事業において、現地企業との合弁会社が第二工場の稼働を開始した。
さらに、北米においても環境規制の強化、自動車軽量化ニーズの高まりを背景として、アルミ製品の需要拡大が見込まれることから、既設のマーケティング拠点に続き、自動車足回り部品の開発と製造・販売を行う子会社を米国に設立した。
加えて、お客様の満足を追求する取組みとして、アルミペースト事業では、自動車用塗料の新色ニーズに応えるべく、お客様と同等の評価が可能な設備を有し、世界5極(フランス、米国、中国、インド、日本)のビジネス展開を支えるセントラルラボ(高機能アルミペースト研究開発中核拠点)が、国内において本格稼働している。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。
(アルミナ・化成品、地金)

アルミナ・化成品部門は、化学品関連において、凝集剤や有機塩化物の販売は堅調だったが、主力の水酸化アルミニウムおよびアルミナ関連製品において、耐火物向けや半導体関連の需要が落ち込み、部門全体の売上高は前期を下回った。一方、採算面では、品種構成改善の効果や高付加価値品の堅調な販売、原料価格の下落により、前期に比べ増益となった。 地金部門においては、主力の自動車向け二次合金の分野において、北米における需要は堅調だったが、国内および中国・タイにおける需要が減少したことに加え、中国製汎用合金との競合による販売減・販売価格下落の影響もあり、部門全体で前期を下回る売上高となり、採算面でも減益となった。
以上の結果、アルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比12.1%減の1,028億33百万円となったが、営業利益は前期比13.4%増の109億2百万円となった。
(板、押出製品)

板製品部門においては、半導体・液晶製造装置向けの厚板や環境対応車向け部材、パソコン筐体向け部材の販売量が減少し、部門全体で前期を下回る売上高となった。採算面でも、高付加価値品の販売減に加え、アルミニウム地金価格を反映した販売価格下落の影響もあり、前期に比べ大幅な減益となった。 押出製品部門においては、データセンター向けなど通信関連の販売量は増加したが、トラック関連が伸び悩んだことに加え、半導体製造装置向けや自動車関連の販売量が減少し、部門全体の売上高は前期を下回った。採算面でも、販売量の減少に加え、アルミニウム地金価格を反映した販売価格下落の影響もあり、前期に比べ大幅な減益となった。 以上の結果、板・押出製品セグメントの売上高は前期比6.2%減の1,011億93百万円、営業利益は前期比50.3%減の35億56百万円となった。
(加工製品、関連事業)

主要部門の概況は以下のとおりである。 輸送関連部門のうち、トラック架装事業においては、トレーラ向けの需要が堅調に推移した半面、排ガス規制強化に伴う駆け込み需要の反動減により小型トラック向けの販売が減少したほか、温度管理車向けの需要が減少した影響などもあり、前期を下回る売上高となった。一方、採算面では、生産性向上の効果や材料価格下落の影響により、前期に比べ増益となった。 熱交製品事業は、エアコン用コンデンサは主力の軽自動車向けを中心に堅調に推移したが、環境対応車関連商品の販売が大きく落ち込んだ。なお、2019年8月、持分法適用関連会社であった日軽熱交株式会社の株式を追加取得し、完全子会社とした。今般の完全子会社化により、当社グループとの連携をさらに強化し、環境対応車関連部材など熱デバイスの分野において、新商品・新ビジネスの創出を加速させていく。 素形材製品事業は、鋳造品において、主力のブレーキキャリパーの販売が減少したことに加え、鍛造品においても、中国・タイ向けの需要が大きく落ち込んだことから、売上高・営業利益とも前期に比べ大幅に減少した。 電子材料部門においては、電機・電子関連の市場環境悪化により、アルミ電解コンデンサ用電極箔の需要が低迷し、売上高・営業利益とも前期を大幅に下回った。 パネルシステム部門においては、クリーンルーム分野では、5G(第5世代移動通信システム)の基盤整備に伴い電子部品工場向けが増加したほか、医療・医薬向けの需要も増加したが、冷蔵・冷凍分野において、食品加工工場向けの需要が大型物件を中心に減少し、売上高・営業利益ともに前期を下回りった。 景観エンジニアリング部門においては、道路・橋梁向けにおいて、高欄の需要が減少したが、橋梁点検用の新商品は、前期に引き続き堅調に推移した。構造物向けにおいては水門や浄水場の覆蓋の需要が増加し、部門全体の売上高は前期を上回ったが、株式会社住軽日軽エンジニアリング(現 日軽エンジニアリング株式会社)を前期中に子会社化した際に発生したのれんの償却額の影響により、営業利益は前期を下回った。 炭素製品部門においては、主要顧客となる鉄鋼業界は減速傾向にあったが、主力製品である高炉・電炉用カーボンブロックにて高付加価値品の販売が多かったこと、加えて、リチウムイオン電池用負極材の熱処理事業が進展したことから、前期を上回る売上高・営業利益となった。 以上の結果、加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比4.0%減の1,729億75百万円、営業利益は前期比10.6%減の104億40百万円となった。
(箔、粉末製品)

箔部門においては、素材箔の分野では、リチウムイオン電池外装用箔や正極材用箔の販売は、スマートフォン・パソコン向けが減少した一方で車載向けが増加し、前期を上回ったが、コンデンサ用箔の販売は、電子部品・ハイテク製品の需要減により大幅に減少した。加工箔の分野では、医薬包材向け加工箔の販売が増加した一方、食品向け撥水性加工箔・ICカード用アンテナ回路向け製品の販売が減少し、部門全体で前期を下回る売上高・営業利益となった。 パウダー・ペースト部門においては、粉末製品は、放熱用途の電子材アルミパウダーの販売は堅調に推移したが、窒化アルミニウムの販売は、熱伝導フィラー向けが増加したものの、全体としては低調だった。ペースト製品は、インキ用において、グラビア印刷向けなど高付加価値品の販売は比較的堅調だったが、主力の自動車塗料用において、自動車生産台数の減少やシルバー色の低迷により販売量が減少した結果、部門全体の売上高・営業利益は前期を下回った。
ソーラー部門においては、太陽電池用バックシートは、中国政府の太陽光発電設備導入に関する支援策見直しや価格競争により販売量が減少した。太陽電池用機能性インキにおいても、競合他社の参入により競争が激化したことに加え、次世代型セル対応の新商品の販売が伸び悩み、部門全体の売上高は前期を大きく下回った。
以上の結果、箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比6.7%減の889億45百万円、営業利益は前期比39.9%減の30億74百万円となった。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における連結ベースの現金および現金同等物については、前期末に比べ29億51百万円(8.8%)増加の362億96百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは486億76百万円の収入となった。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、法人税等の支払などによる支出を上回ったことによるものである。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前連結会計年度と比べ140億32百万円増加しているが、これは主に売上債権が減少したことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは296億84百万円の支出となった。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものである。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ69億7百万円増加しているが、これは主に有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは157億45百万円の支出となった。これは主として長期借入金の返済による支出によるものである。なお、財務活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ68億41百万円増加しているが、これは主に長期借入れによる収入が減少したことによるものである。
③生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。
このため、生産実績及び受注実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント業績に関連付けて示している。
(b)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去している。
2.当連結会計年度において、主要な販売先として記載すべきものはない。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていない。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 中期経営計画進捗
当社グループは、足元の事業環境は大きく変わっているものの、中期経営計画で掲げた基本方針に関して、決して歩みを止めず進めていく所存である。
一番目の柱である「新商品・新ビジネスの創出」については、お客様の価値創造を念頭に、お客様に選んでいただける商品・ビジネスを創出していく。
二番目の柱である「成長に向けた資源投入」については、成長市場・成長地域でたゆまぬ前進を続けていく。新型コロナウイルスの影響は現状様々な事業部門で発生しているが、当社グループの成長を図るべく、将来の種まきは着実に実行していく考えである。特に、現在小休止状態ではあるものの環境対応車を中心に今後も成長が期待される自動車分野では、中国での部品ビジネスの拡充、アメリカでの製造販売拠点の新設、インドでのリサイクルビジネス拡大など、日本で確立した技術・商流をもとに、数年後の成功を目指し、内容を精査しながら投資を続ける。
三番目の柱「経営基盤強化」については、盤石な財務基盤の下、さらなる成長に向けた設備投資、研究開発、設備メンテナンスは費用を絞るべきではないと判断している。
② 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ112億99百万円減少し、4,700億4百万円となった。これは、受取手形及び売掛金が減少したことなどによるものである。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ97億62百万円減少し、2,688億6百万円となった。これは、支払手形及び買掛金が減少したことなどによるものである。有利子負債残高は、前連結会計年度末の1,395億70百万円から69億48百万円減少し、1,326億22百万円となった。
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ15億37百万円減少し、2,011億98百万円となった。これは、為替換算調整勘定の減少などによるものである。この結果、自己資本比率(期末純資産から非支配株主持分を控除したベース)は、前連結会計年度末の39.0%から0.6ポイント上昇し、39.6%となった。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)概要
当連結会計年度の売上高は4,659億46百万円(前連結会計年度比 6.9%減、345億5百万円減)、営業利益は246億7百万円(同 18.1%減、54億45百万円減)、経常利益は234億75百万円(同 24.5%減、76億9百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は74億76百万円(同 63.6%減、130億84百万円減)となった。
(b)営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ、54億45百万円減の246億7百万円となった。これは、売上高が前期を下回ったこと等によるものである。営業利益のセグメント毎の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載している。
(c)営業外収益・費用
営業外収益は、持分法による投資利益が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、14億60百万円減少し、34億14百万円となった。
営業外費用は、為替差損が増加したことなどにより、前連結会計年度と比べ、7億4百万円増加し、45億46百万円となった。
(d)特別利益・損失
特別利益は、前連結会計年度においては、段階取得に係る差益として13億71百万円計上した。当連結会計年度においては、特別利益を計上していない。
特別損失は、前連結会計年度においては、減損損失として9億57百万円、投資有価証券評価損として3億86百万円計上した。当連結会計年度においては、堆砂対策費用として110億円計上した。
(e)税金費用等
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、課税所得が減少したこと等により、前連結会計年度と比べ、59億16百万円減少し、31億90百万円となった。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主として子会社である日本フルハーフ㈱、日本電極㈱及び㈱住軽日軽エンジニアリング(現・日軽エンジニアリング㈱)の非支配株主に帰属する利益であり、前連結会計年度と比べ、3億63百万円増加し当連結会計年度は18億9百万円となった。
(f)親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の205億60百万円に対して63.6%減の74億76百万円となり、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の33円20銭に対し当連結会計年度は12円7銭となり21円13銭の減少となった。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ29億51百万円(8.8%)増加し、362億96百万円となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ、140億32百万円(40.5%)増加し、486億76百万円の収入となった。これは主に売上債権が減少したことなどによるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の227億77百万円の支出に対し、当連結会計年度は296億84百万円の支出となった。これは主に有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の89億4百万円の支出に対し、157億45百万円の支出となった。これは主に長期借入による収入が減少したことなどによるものである。
(b)資金需要・調達及び流動性について
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の維持に留意している。当社グループの資金需要としては、製品製造のための原料及び操業材料の購入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動に係る運転資金需要、製造設備の購入及び事業買収等の投資活動に係る長期資金需要がある。
当社グループは、資金調達に当たって資金の安定性強化と資金コストの低減に傾注しつつ、社債の発行や、主力銀行をはじめとする幅広い金融機関からの借り入れによる調達を行なっている。
また、流動性に関して、当社グループは金融情勢の変化等を勘案しながら、現金同等物の残高が適正になるように努めている。
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度346億44百万円、当連結会計年度486億76百万円であり、キャッシュ・フローの水準としては比較的安定していると当社グループは考えているが、将来の当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び長期資金を調達するためには、必ずしも充分ではない可能性があると認識している。将来の成長を維持・加速するために必要な資金は、基本的に新商品・新規事業の創出による売上、収益の拡大を通じて営業キャッシュ・フローの増大により確保していく方針である。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している。当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えている。
(a)貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能見込額を見積り、貸倒引当金として計上している。将来、顧客等の財務状況悪化、経営破綻等により、顧客等の支払能力が低下したとの疑義が生じたと判断される場合には、貸倒引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性がある。
(b)資産の評価
当社グループは、たな卸資産については主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しているが、製品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上している。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性がある。
当社グループは、長期的な取引関係の維持・構築のため、一部の顧客及び金融機関等の株式を所有しており、金融商品に係る会計基準に基づいて評価している。将来において市場価格のある株式の時価が著しく下落したとき、回復する見込みがあると認められない場合には、評価損を計上する可能性がある。一方、市場価格のない株式については、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性がある。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性がある。
(c)繰延税金資産
当社グループは、合理的で実現可能なタックスプランニングに基づき将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を充分に検討し繰延税金資産を計上している。
将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性がある。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の当期純利益を増加させる可能性がある。
(d)退職給付費用及び債務
当社グループは、従業員の退職給付費用及び債務を算出するに当たり、数理計算上で設定した基礎率(割引率、昇給率、退職率、死亡率、期待運用収益率等)は、統計数値等により合理的な見積りに基づいて採用している。これらの見積りを含む基礎率が実際の結果と異なる場合、その影響額は数理計算上の差異として累積され、将来期間にわたって償却されるため、将来において計上される退職給付費用及び債務に影響を及ぼす。当社グループは採用している基礎率は適切であると考えているが、実際の結果との差異が将来の当社グループの退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性がある。
(e)堆砂対策引当金
当社の連結子会社である日本軽金属㈱が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)の堆砂対策の計画のうち、計画実行の課題である「搬出先」と「搬出方法」において、搬出能力の増強、土砂の骨材活用、土砂運搬道路の整備や地域造成用盛土等への土砂の活用等に関し一定の仮定を置き、その負担額を合理的に見積りができる2020年度から2021年度にかけて実施する堆砂対策について、当該見積額を計上している。今後の工事の進捗状況等によって見積りの前提となっている計画内容に変更が生じた場合には、堆砂対策引当金及び堆砂対策費用を追加計上または一部戻入する可能性がある。
⑦ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
当連結会計年度の連結業績への影響としては、軽微なものであった。これは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、事業領域が広く、個別のマーケットの影響を直ちに受け難いという当社グループの特質もあるが、素材をベースとした企業グループの構成からして、最終のお客様の影響がすぐに現れない、すなわちマーケット変化に対するタイムラグの存在が影響していると判断している。このほか、サプライチェーンへの影響としても中国からの材料調達難が一時的に発生したが、ほぼ解消された。今後は、サプライチェーンが寸断された場合の影響を抑えるため、原燃料等の在庫量のコントロールも課題であると認識している。
また、従前より取り組んできた財務体質強化により財務基盤が安定しており、当社が金融機関との間で契約している1,000億円のコミットメントライン及び2020年3月31日現在の現預金残高を合わせ、約1,350億円の手元資金を確保している。これは、当社グループの月商3~4カ月分に相当する規模である。
当連結会計年度の連結財務諸表作成にあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については会計上の見積りの参考となる前例がなく、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がないため、今後の当社グループ業績への影響を予測することは極めて困難ではあるが、ある一定の仮定を置いたうえで、繰延税金資産の回収可能性の判断や、固定資産の減損テストの判定などの会計上の見積りを実施し、会計処理に反映した結果、連結財務諸表に重要な影響を与えていない。なお、一定の仮定としては、国内および海外の大半の地域の事業は翌連結会計年度(2020年度)の下半期のうちに業績の回復が見られるものとしている。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦の動向、英国のEU離脱、中東地域の地政学リスクなどの先行き懸念要因が増大したことに加え、本年に入り新型コロナウイルスの感染が拡大し急激に悪化した。わが国経済も、海外経済の動向に加え、消費税率引上げや相次ぐ自然災害などにより足踏み感が見られたところ、年度末には国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大し、悪化へと転じた。
アルミニウム業界においては、半導体製造装置向けや自動車向けの需要が減少し、全体として力強さを欠く展開となった。また、アルミニウム地金価格は下落基調で推移した。
このような状況のもと、当社グループは、当連結会計年度が初年度となる中期経営計画(2019年度~2021年度)(以下「中計」という。)の基本方針に則り、連結収益の最大化に注力してきた。
中計第一の基本方針「新商品・新ビジネスの創出」では、グループ連携の強みを徹底的に追求し、すべてのお客様の新しい価値を創造するべく、ものづくりを核としサプライチェーン全体を通じた商品・ビジネス開発に取り組んできた。具体的には、環境対応車向け熱デバイスビジネスの分野などにおいて、素材・設計・加工の一気通貫で、高付加価値の新商品を創出・提供してきた。
中計第二の基本方針「成長に向けた資源投入」では、グループの強みを活かせる分野・地域へより積極的に資源を投入すべく、以下の取組みを行ってきた。
まず、中国のNEV(新エネルギー車)規制による環境対応車の需要増に対応し、技術力と日本での採用実績を活かした関連商品の現地生産を開始するため、工場建屋の拡張を行った。また、インドの自動車市場の成長と日系メーカーの進出に対応するため、二次合金事業において、現地企業との合弁会社が第二工場の稼働を開始した。
さらに、北米においても環境規制の強化、自動車軽量化ニーズの高まりを背景として、アルミ製品の需要拡大が見込まれることから、既設のマーケティング拠点に続き、自動車足回り部品の開発と製造・販売を行う子会社を米国に設立した。
加えて、お客様の満足を追求する取組みとして、アルミペースト事業では、自動車用塗料の新色ニーズに応えるべく、お客様と同等の評価が可能な設備を有し、世界5極(フランス、米国、中国、インド、日本)のビジネス展開を支えるセントラルラボ(高機能アルミペースト研究開発中核拠点)が、国内において本格稼働している。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりである。


アルミナ・化成品部門は、化学品関連において、凝集剤や有機塩化物の販売は堅調だったが、主力の水酸化アルミニウムおよびアルミナ関連製品において、耐火物向けや半導体関連の需要が落ち込み、部門全体の売上高は前期を下回った。一方、採算面では、品種構成改善の効果や高付加価値品の堅調な販売、原料価格の下落により、前期に比べ増益となった。 地金部門においては、主力の自動車向け二次合金の分野において、北米における需要は堅調だったが、国内および中国・タイにおける需要が減少したことに加え、中国製汎用合金との競合による販売減・販売価格下落の影響もあり、部門全体で前期を下回る売上高となり、採算面でも減益となった。
以上の結果、アルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比12.1%減の1,028億33百万円となったが、営業利益は前期比13.4%増の109億2百万円となった。
(板、押出製品)

板製品部門においては、半導体・液晶製造装置向けの厚板や環境対応車向け部材、パソコン筐体向け部材の販売量が減少し、部門全体で前期を下回る売上高となった。採算面でも、高付加価値品の販売減に加え、アルミニウム地金価格を反映した販売価格下落の影響もあり、前期に比べ大幅な減益となった。 押出製品部門においては、データセンター向けなど通信関連の販売量は増加したが、トラック関連が伸び悩んだことに加え、半導体製造装置向けや自動車関連の販売量が減少し、部門全体の売上高は前期を下回った。採算面でも、販売量の減少に加え、アルミニウム地金価格を反映した販売価格下落の影響もあり、前期に比べ大幅な減益となった。 以上の結果、板・押出製品セグメントの売上高は前期比6.2%減の1,011億93百万円、営業利益は前期比50.3%減の35億56百万円となった。
(加工製品、関連事業)

主要部門の概況は以下のとおりである。 輸送関連部門のうち、トラック架装事業においては、トレーラ向けの需要が堅調に推移した半面、排ガス規制強化に伴う駆け込み需要の反動減により小型トラック向けの販売が減少したほか、温度管理車向けの需要が減少した影響などもあり、前期を下回る売上高となった。一方、採算面では、生産性向上の効果や材料価格下落の影響により、前期に比べ増益となった。 熱交製品事業は、エアコン用コンデンサは主力の軽自動車向けを中心に堅調に推移したが、環境対応車関連商品の販売が大きく落ち込んだ。なお、2019年8月、持分法適用関連会社であった日軽熱交株式会社の株式を追加取得し、完全子会社とした。今般の完全子会社化により、当社グループとの連携をさらに強化し、環境対応車関連部材など熱デバイスの分野において、新商品・新ビジネスの創出を加速させていく。 素形材製品事業は、鋳造品において、主力のブレーキキャリパーの販売が減少したことに加え、鍛造品においても、中国・タイ向けの需要が大きく落ち込んだことから、売上高・営業利益とも前期に比べ大幅に減少した。 電子材料部門においては、電機・電子関連の市場環境悪化により、アルミ電解コンデンサ用電極箔の需要が低迷し、売上高・営業利益とも前期を大幅に下回った。 パネルシステム部門においては、クリーンルーム分野では、5G(第5世代移動通信システム)の基盤整備に伴い電子部品工場向けが増加したほか、医療・医薬向けの需要も増加したが、冷蔵・冷凍分野において、食品加工工場向けの需要が大型物件を中心に減少し、売上高・営業利益ともに前期を下回りった。 景観エンジニアリング部門においては、道路・橋梁向けにおいて、高欄の需要が減少したが、橋梁点検用の新商品は、前期に引き続き堅調に推移した。構造物向けにおいては水門や浄水場の覆蓋の需要が増加し、部門全体の売上高は前期を上回ったが、株式会社住軽日軽エンジニアリング(現 日軽エンジニアリング株式会社)を前期中に子会社化した際に発生したのれんの償却額の影響により、営業利益は前期を下回った。 炭素製品部門においては、主要顧客となる鉄鋼業界は減速傾向にあったが、主力製品である高炉・電炉用カーボンブロックにて高付加価値品の販売が多かったこと、加えて、リチウムイオン電池用負極材の熱処理事業が進展したことから、前期を上回る売上高・営業利益となった。 以上の結果、加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比4.0%減の1,729億75百万円、営業利益は前期比10.6%減の104億40百万円となった。
(箔、粉末製品)

箔部門においては、素材箔の分野では、リチウムイオン電池外装用箔や正極材用箔の販売は、スマートフォン・パソコン向けが減少した一方で車載向けが増加し、前期を上回ったが、コンデンサ用箔の販売は、電子部品・ハイテク製品の需要減により大幅に減少した。加工箔の分野では、医薬包材向け加工箔の販売が増加した一方、食品向け撥水性加工箔・ICカード用アンテナ回路向け製品の販売が減少し、部門全体で前期を下回る売上高・営業利益となった。 パウダー・ペースト部門においては、粉末製品は、放熱用途の電子材アルミパウダーの販売は堅調に推移したが、窒化アルミニウムの販売は、熱伝導フィラー向けが増加したものの、全体としては低調だった。ペースト製品は、インキ用において、グラビア印刷向けなど高付加価値品の販売は比較的堅調だったが、主力の自動車塗料用において、自動車生産台数の減少やシルバー色の低迷により販売量が減少した結果、部門全体の売上高・営業利益は前期を下回った。
ソーラー部門においては、太陽電池用バックシートは、中国政府の太陽光発電設備導入に関する支援策見直しや価格競争により販売量が減少した。太陽電池用機能性インキにおいても、競合他社の参入により競争が激化したことに加え、次世代型セル対応の新商品の販売が伸び悩み、部門全体の売上高は前期を大きく下回った。
以上の結果、箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比6.7%減の889億45百万円、営業利益は前期比39.9%減の30億74百万円となった。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における連結ベースの現金および現金同等物については、前期末に比べ29億51百万円(8.8%)増加の362億96百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは486億76百万円の収入となった。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、法人税等の支払などによる支出を上回ったことによるものである。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前連結会計年度と比べ140億32百万円増加しているが、これは主に売上債権が減少したことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは296億84百万円の支出となった。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものである。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ69億7百万円増加しているが、これは主に有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは157億45百万円の支出となった。これは主として長期借入金の返済による支出によるものである。なお、財務活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ68億41百万円増加しているが、これは主に長期借入れによる収入が減少したことによるものである。
③生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。
このため、生産実績及び受注実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント業績に関連付けて示している。
(b)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前連結会計年度比(%) | |
アルミナ・化成品 | 34,280 | △7.3 | |
地金 | 68,553 | △14.4 | |
アルミナ・化成品、地金 | 102,833 | △12.1 | |
板製品 | 58,828 | △3.4 | |
押出製品 | 42,365 | △9.8 | |
板、押出製品 | 101,193 | △6.2 | |
輸送関連製品 | 81,797 | △5.3 | |
電子材料 | 5,465 | △35.3 | |
その他 | 85,713 | 0.3 | |
加工製品、関連事業 | 172,975 | △4.0 | |
箔、粉末製品 | 88,945 | △6.7 | |
合計 | 465,946 | △6.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去している。
2.当連結会計年度において、主要な販売先として記載すべきものはない。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていない。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 中期経営計画進捗
当社グループは、足元の事業環境は大きく変わっているものの、中期経営計画で掲げた基本方針に関して、決して歩みを止めず進めていく所存である。
一番目の柱である「新商品・新ビジネスの創出」については、お客様の価値創造を念頭に、お客様に選んでいただける商品・ビジネスを創出していく。
二番目の柱である「成長に向けた資源投入」については、成長市場・成長地域でたゆまぬ前進を続けていく。新型コロナウイルスの影響は現状様々な事業部門で発生しているが、当社グループの成長を図るべく、将来の種まきは着実に実行していく考えである。特に、現在小休止状態ではあるものの環境対応車を中心に今後も成長が期待される自動車分野では、中国での部品ビジネスの拡充、アメリカでの製造販売拠点の新設、インドでのリサイクルビジネス拡大など、日本で確立した技術・商流をもとに、数年後の成功を目指し、内容を精査しながら投資を続ける。
三番目の柱「経営基盤強化」については、盤石な財務基盤の下、さらなる成長に向けた設備投資、研究開発、設備メンテナンスは費用を絞るべきではないと判断している。
② 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ112億99百万円減少し、4,700億4百万円となった。これは、受取手形及び売掛金が減少したことなどによるものである。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ97億62百万円減少し、2,688億6百万円となった。これは、支払手形及び買掛金が減少したことなどによるものである。有利子負債残高は、前連結会計年度末の1,395億70百万円から69億48百万円減少し、1,326億22百万円となった。
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ15億37百万円減少し、2,011億98百万円となった。これは、為替換算調整勘定の減少などによるものである。この結果、自己資本比率(期末純資産から非支配株主持分を控除したベース)は、前連結会計年度末の39.0%から0.6ポイント上昇し、39.6%となった。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)概要
当連結会計年度の売上高は4,659億46百万円(前連結会計年度比 6.9%減、345億5百万円減)、営業利益は246億7百万円(同 18.1%減、54億45百万円減)、経常利益は234億75百万円(同 24.5%減、76億9百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は74億76百万円(同 63.6%減、130億84百万円減)となった。
(b)営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ、54億45百万円減の246億7百万円となった。これは、売上高が前期を下回ったこと等によるものである。営業利益のセグメント毎の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載している。
(c)営業外収益・費用
営業外収益は、持分法による投資利益が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、14億60百万円減少し、34億14百万円となった。
営業外費用は、為替差損が増加したことなどにより、前連結会計年度と比べ、7億4百万円増加し、45億46百万円となった。
(d)特別利益・損失
特別利益は、前連結会計年度においては、段階取得に係る差益として13億71百万円計上した。当連結会計年度においては、特別利益を計上していない。
特別損失は、前連結会計年度においては、減損損失として9億57百万円、投資有価証券評価損として3億86百万円計上した。当連結会計年度においては、堆砂対策費用として110億円計上した。
(e)税金費用等
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、課税所得が減少したこと等により、前連結会計年度と比べ、59億16百万円減少し、31億90百万円となった。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主として子会社である日本フルハーフ㈱、日本電極㈱及び㈱住軽日軽エンジニアリング(現・日軽エンジニアリング㈱)の非支配株主に帰属する利益であり、前連結会計年度と比べ、3億63百万円増加し当連結会計年度は18億9百万円となった。
(f)親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の205億60百万円に対して63.6%減の74億76百万円となり、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の33円20銭に対し当連結会計年度は12円7銭となり21円13銭の減少となった。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ29億51百万円(8.8%)増加し、362億96百万円となった。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ、140億32百万円(40.5%)増加し、486億76百万円の収入となった。これは主に売上債権が減少したことなどによるものである。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の227億77百万円の支出に対し、当連結会計年度は296億84百万円の支出となった。これは主に有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものである。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の89億4百万円の支出に対し、157億45百万円の支出となった。これは主に長期借入による収入が減少したことなどによるものである。
(b)資金需要・調達及び流動性について
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の維持に留意している。当社グループの資金需要としては、製品製造のための原料及び操業材料の購入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動に係る運転資金需要、製造設備の購入及び事業買収等の投資活動に係る長期資金需要がある。
当社グループは、資金調達に当たって資金の安定性強化と資金コストの低減に傾注しつつ、社債の発行や、主力銀行をはじめとする幅広い金融機関からの借り入れによる調達を行なっている。
また、流動性に関して、当社グループは金融情勢の変化等を勘案しながら、現金同等物の残高が適正になるように努めている。
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度346億44百万円、当連結会計年度486億76百万円であり、キャッシュ・フローの水準としては比較的安定していると当社グループは考えているが、将来の当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び長期資金を調達するためには、必ずしも充分ではない可能性があると認識している。将来の成長を維持・加速するために必要な資金は、基本的に新商品・新規事業の創出による売上、収益の拡大を通じて営業キャッシュ・フローの増大により確保していく方針である。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載している。当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えている。
(a)貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能見込額を見積り、貸倒引当金として計上している。将来、顧客等の財務状況悪化、経営破綻等により、顧客等の支払能力が低下したとの疑義が生じたと判断される場合には、貸倒引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性がある。
(b)資産の評価
当社グループは、たな卸資産については主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しているが、製品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上している。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性がある。
当社グループは、長期的な取引関係の維持・構築のため、一部の顧客及び金融機関等の株式を所有しており、金融商品に係る会計基準に基づいて評価している。将来において市場価格のある株式の時価が著しく下落したとき、回復する見込みがあると認められない場合には、評価損を計上する可能性がある。一方、市場価格のない株式については、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性がある。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性がある。
(c)繰延税金資産
当社グループは、合理的で実現可能なタックスプランニングに基づき将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を充分に検討し繰延税金資産を計上している。
将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性がある。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の当期純利益を増加させる可能性がある。
(d)退職給付費用及び債務
当社グループは、従業員の退職給付費用及び債務を算出するに当たり、数理計算上で設定した基礎率(割引率、昇給率、退職率、死亡率、期待運用収益率等)は、統計数値等により合理的な見積りに基づいて採用している。これらの見積りを含む基礎率が実際の結果と異なる場合、その影響額は数理計算上の差異として累積され、将来期間にわたって償却されるため、将来において計上される退職給付費用及び債務に影響を及ぼす。当社グループは採用している基礎率は適切であると考えているが、実際の結果との差異が将来の当社グループの退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性がある。
(e)堆砂対策引当金
当社の連結子会社である日本軽金属㈱が保有する雨畑ダム(山梨県南巨摩郡早川町)の堆砂対策の計画のうち、計画実行の課題である「搬出先」と「搬出方法」において、搬出能力の増強、土砂の骨材活用、土砂運搬道路の整備や地域造成用盛土等への土砂の活用等に関し一定の仮定を置き、その負担額を合理的に見積りができる2020年度から2021年度にかけて実施する堆砂対策について、当該見積額を計上している。今後の工事の進捗状況等によって見積りの前提となっている計画内容に変更が生じた場合には、堆砂対策引当金及び堆砂対策費用を追加計上または一部戻入する可能性がある。
⑦ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
当連結会計年度の連結業績への影響としては、軽微なものであった。これは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、事業領域が広く、個別のマーケットの影響を直ちに受け難いという当社グループの特質もあるが、素材をベースとした企業グループの構成からして、最終のお客様の影響がすぐに現れない、すなわちマーケット変化に対するタイムラグの存在が影響していると判断している。このほか、サプライチェーンへの影響としても中国からの材料調達難が一時的に発生したが、ほぼ解消された。今後は、サプライチェーンが寸断された場合の影響を抑えるため、原燃料等の在庫量のコントロールも課題であると認識している。
また、従前より取り組んできた財務体質強化により財務基盤が安定しており、当社が金融機関との間で契約している1,000億円のコミットメントライン及び2020年3月31日現在の現預金残高を合わせ、約1,350億円の手元資金を確保している。これは、当社グループの月商3~4カ月分に相当する規模である。
当連結会計年度の連結財務諸表作成にあたり、新型コロナウイルス感染症の影響については会計上の見積りの参考となる前例がなく、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解がないため、今後の当社グループ業績への影響を予測することは極めて困難ではあるが、ある一定の仮定を置いたうえで、繰延税金資産の回収可能性の判断や、固定資産の減損テストの判定などの会計上の見積りを実施し、会計処理に反映した結果、連結財務諸表に重要な影響を与えていない。なお、一定の仮定としては、国内および海外の大半の地域の事業は翌連結会計年度(2020年度)の下半期のうちに業績の回復が見られるものとしている。