有価証券報告書-第19期(2023/07/01-2024/06/30)
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年7月1日~2024年6月30日)における世界経済は、ウクライナ情勢に端を発した資源価格の上昇、米国や欧州でのインフレ対応利上げによる景気抑制政策に起因した景気後退懸念、また、中東や極東アジア地域での地政学リスクの高まり等もあり、不透明な状況が継続しました。国内経済においても、円安の継続等による物価高や原材料調達への制約があり、依然として不透明な状況が続いています。
このような環境下においても、当社グループが注力する技術者派遣・請負業務に対する顧客需要は底堅く、特に、輸送用機器や情報産業におけるIT技術者へのオーダーは引き続き堅調となりました。
当社グループでは、当連結会計年度において、主に以下の取組みを実施しました。
(技術者の確保)
顧客からの旺盛な技術者需要は継続している一方、当社グループの稼働率は95%前後の状態が続き、新たなオーダーに対応できる技術者が不足しています。そのため、高い採用基準を維持しつつ、育成前提の未経験者採用を増やすなど、技術者の確保に努めています。また、コロナ禍において凍結していたグローバル外国籍採用も再開し、対象とする国を広げてグローバルでの人材獲得に取り組んでいます。
引き続き、有能な技術者の確保を進め、持続的な成長を実現してまいります。
(契約単価の上昇)
国内技術者の採用は、概ねコロナ禍前の水準に回復しましたが、技術者の契約単価にはまだ上昇余地があると考えており、単価の改善を積極的に推進しています。教育研修を通じたアップスキルやリスキリングなど、顧客から求められる技術の習得やレベルの向上に継続的に取り組み、それらの技術やレベルの向上に合わせた適正単価による契約獲得に努めています。一人ひとりの単価上昇は、全体の売上収益への貢献とともに、技術者の処遇改善にもつながり、リテンション効果を期待できます。
引き続き、有能な技術者の確保に加えて、契約単価の上昇を進めてまいります。
(ソリューション事業の強化)
2022年6月期を初年度とする5年計画の中期経営計画『Evolution 2026』では、ソリューション事業の強化を掲げており、同事業の売上収益や同事業に携わる技術者数も増加しています。2024年6月期以降の後半3年は、高成長の実現期と位置づけ、国内外の技術動向予測や当社の内部ケイパビリティ評価に基づき注力ソリューションを絞り込んだうえで、マーケティング・営業から採用・育成・デリバリーまでの首尾一貫したオペレーションを組織的に行っています。また、2023年7月1日付でコンサルティング組織「TechnoPro Consulting & Advisory」を立ち上げ、戦略・構想策定、業務分析といった上流工程から、保守・管理といった下流工程までを、一貫して支援可能な体制を強化しています。
引き続き、採用や育成を通して上流工程に対応できる人材を増やすとともに、競争優位性の高い、柱となるソリューションの確立・拡大を目指してまいります。
これら事業上の取組みの結果、当連結会計年度末の国内在籍技術者数は26,054人(前連結会計年度末比1,929人増加)、当連結会計年度の平均稼働率は95.0%(前連結会計年度比0.2pt減少)となりました。従前より進めてきた技術者一人当たり売上単価の向上については、前連結会計年度と比較して稼働日数が減少したものの、シフトアップやチャージアップ、加えてソリューション事業の拡大等による単価上昇もあり、当連結会計年度の月次平均売上単価は678千円(同9千円増加)となりました。
費用面においては、前連結会計年度に比べて販売費及び一般管理費が増加しました。主に、人材獲得のための採用費、育成のための教育訓練費、海外子会社における先行投資やインフレの影響によるものです。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの業績につきまして、売上収益は2,192億18百万円(前連結会計年度比9.7%増加)、事業利益は243億95百万円(同14.1%増加)、営業利益は219億18百万円(同0.4%増加)、税引前当期利益は221億39百万円(同1.4%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は146億84百万円(同4.4%減少)となりました。
※ 事業利益は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を減算したもので、「その他の収益」や「その他の費用」に計上される特別項目(雇用調整助成金や減損損失など)による影響を除いたものを示している当社独自の利益指標です。
当連結会計年度における主要事業分野の業績は、以下のとおりです。
(R&Dアウトソーシング事業)
R&Dアウトソーシング事業の中でも好調を維持しているIT分野を拡大するため、高付加価値技術者を主体とした中途採用の強化に加え、ハード系技術者、化学・バイオ系技術者に対するデジタル技術の教育を行い、スキル転換や複数スキルの習得により、デジタル領域の旺盛な需要に対応する取組みを実施しています。また、先端技術を有するアライアンス企業との協業や社内外での研修を積極的に進め、提供サービスの高品質化や多様化によって、より高い単価での配属に努めています。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数は22,848人(前連結会計年度末比1,685人増加)、稼働技術者数は21,497人(同1,612人増加)となりました。
その結果、同事業の売上収益は1,686億94百万円(前連結会計年度比10.4%増加)となりました。
(施工管理アウトソーシング事業)
施工管理アウトソーシング事業のメインである施工管理サービスに加え、ドローンを使用した3次元計測、空撮、点検等の実施や、一級建築士事務所の設置等、設計分野・施工管理分野で培われた技術力をもとに、さまざまなサービスを展開しています。また、慢性的な施工管理技術者不足に対応すべく、自社の技術センターを活用し、建設業界未経験者や経験の浅い若手技術者を積極的に採用・育成しています。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数は3,206人(前連結会計年度末比244人増加)、稼働技術者数は3,060人(同225人増加)となりました。
その結果、同事業の売上収益は232億93百万円(前連結会計年度比7.6%増加)となりました。
(国内その他事業)
国内その他事業は、人材紹介及び技術系教育研修サービスで構成されています。人材紹介では、採用を通じた当社グループへの人材供給は伸張している一方、外部顧客が求めるハイスキル人材の獲得に苦戦し、また、景気の不透明感によって採用を一時抑制する動きも見られます。また、技術系教育研修では、当社グループ内でのシナジーを活かした研修プログラムの開発や効率化を行う一方、人的資本投資への需要を取り込むべく先行して費用を投じながら、企業向け技術者育成コンサルティング、e-Learningシステムの整備や外販の拡大に取り組んでいます。
その結果、同事業の売上収益は48億39百万円(前連結会計年度比13.1%減少)となりました。
(海外事業)
海外事業は、インドや中国において、主に欧米や日本の顧客に対するオフショア・デリバリーサービスを、東南アジアや英国において、技術者派遣及び人材紹介サービスをそれぞれ展開しています。国によって多少の違いはあるものの、世界的な景気後退懸念や地政学リスクを背景とした投資抑制の影響を徐々に受けつつあります。一方、国内ソリューション事業のケイパビリティ獲得にも寄与する、高利益率のオフショア・デリバリー案件や新規顧客を開拓すべく、セールス&マーケティングを中心とした先行投資を継続しています。
その結果、同事業の売上収益は256億82百万円(前連結会計年度比9.2%増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ98億68百万円増加し、452億41百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は311億77百万円の収入(前期は214億24百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期利益(221億39百万円)、減価償却費及び償却費(32億71百万円)、減損損失(27億69百万円)等による資金の増加に対し、法人所得税支払額(70億93百万円)等により資金が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は7億85百万円の支出(前期は44億49百万円の支出)となりました。これは主に、投資の売却及び償還による収入(28億1百万円)、定期預金の払戻による収入(22億86百万円)等による資金の増加に対し、投資の取得による支出(31億23百万円)、定期預金の預入による支出(24億30百万円)等により資金が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は209億29百万円の支出(前期は192億31百万円の支出)となりました。これは主に、配当金支払額(82億22百万円)、リース負債の返済による支出(69億99百万円)、自己株式の取得による支出(39億23百万円)等により資金が減少したことによるものです。なお、非支配持分からの子会社持分取得による支出(7億83百万円)は、Orion Managed Services Limitedの残株式の取得対価支払額になり、本取得により同社の所有割合は100%となっています。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ロ.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ハ.販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、以下のとおりです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
① 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 注記4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。
② 経営成績の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
③ 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は1,526億51百万円(前連結会計年度末比86億33百万円増加)となりました。主な内訳は、のれん464億94百万円、現金及び現金同等物452億41百万円、売掛金及びその他の債権289億63百万円等です。
各項目の状況は、以下のとおりです。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は875億75百万円(前連結会計年度末比109億18百万円増加)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物452億41百万円(同98億68百万円増加)、売掛金及びその他の債権289億63百万円(同15億58百万円増加)等です。
(非流動資産)
当連結会計年度末における非流動資産の残高は650億75百万円(前連結会計年度末比22億85百万円減少)となりました。主な内訳は、のれん464億94百万円(同1億22百万円増加)、使用権資産44億54百万円(同4億62百万円減少)等です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は581億14百万円(前連結会計年度末比111億69百万円増加)となりました。主な内訳は、買掛金及びその他の債務181億17百万円(同20億73百万円増加)、従業員給付に係る負債94億5百万円(同7億19百万円増加)等です。
(非流動負債)
当連結会計年度末における非流動負債の残高は126億38百万円(前連結会計年度末比76億71百万円減少)となりました。主な内訳は、社債及び借入金77億35百万円(同59億81百万円減少)、リース負債35億50百万円(同5億65百万円減少)等です。
(親会社の所有者に帰属する持分)
当連結会計年度末における親会社の所有者に帰属する持分の残高は807億41百万円(前連結会計年度末比52億12百万円増加)となりました。主な内訳は、利益剰余金659億13百万円(同66億50百万円増加)、資本金69億29百万円(同増減なし)等です。なお、自己株式の消却等により、資本剰余金は前連結会計年度末比48億76百万円減少しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
① 資金需要
当社グループは技術者派遣業務を主体として事業運営しているため、主要な運転資金需要は、人件費(給与手当、賞与、法定福利費等)の支払となります。また、技術者派遣業務は、役務提供の対価が毎月入金されることが基本であるため、運転資金の大半は顧客からの入金で充足されます。なお、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.6ヶ月、未払人件費等回転期間は1.3ヶ月です。
その他、情報システム投資や営業拠点投資、自己株式取得、M&A投資が主要な資金需要となります。
② 財務政策
当社グループは、(ア)将来的成長へ向けた積極投資、(イ)適正な財務健全性・レバレッジの確保、(ウ)株主還元の規律、の最適なバランスを踏まえた財務政策を基本方針としており、指標としては基本的1株当たり当期利益の長期継続的改善を重視し、資本コストが相対的に低い借入を主体とした負債性資本による調達を基本としています。
また、当社グループでは、当連結会計年度末時点において、短期的資金需要及びM&A資金需要を賄うため、当社において総額160億円のコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しています。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年7月1日~2024年6月30日)における世界経済は、ウクライナ情勢に端を発した資源価格の上昇、米国や欧州でのインフレ対応利上げによる景気抑制政策に起因した景気後退懸念、また、中東や極東アジア地域での地政学リスクの高まり等もあり、不透明な状況が継続しました。国内経済においても、円安の継続等による物価高や原材料調達への制約があり、依然として不透明な状況が続いています。
このような環境下においても、当社グループが注力する技術者派遣・請負業務に対する顧客需要は底堅く、特に、輸送用機器や情報産業におけるIT技術者へのオーダーは引き続き堅調となりました。
当社グループでは、当連結会計年度において、主に以下の取組みを実施しました。
(技術者の確保)
顧客からの旺盛な技術者需要は継続している一方、当社グループの稼働率は95%前後の状態が続き、新たなオーダーに対応できる技術者が不足しています。そのため、高い採用基準を維持しつつ、育成前提の未経験者採用を増やすなど、技術者の確保に努めています。また、コロナ禍において凍結していたグローバル外国籍採用も再開し、対象とする国を広げてグローバルでの人材獲得に取り組んでいます。
引き続き、有能な技術者の確保を進め、持続的な成長を実現してまいります。
(契約単価の上昇)
国内技術者の採用は、概ねコロナ禍前の水準に回復しましたが、技術者の契約単価にはまだ上昇余地があると考えており、単価の改善を積極的に推進しています。教育研修を通じたアップスキルやリスキリングなど、顧客から求められる技術の習得やレベルの向上に継続的に取り組み、それらの技術やレベルの向上に合わせた適正単価による契約獲得に努めています。一人ひとりの単価上昇は、全体の売上収益への貢献とともに、技術者の処遇改善にもつながり、リテンション効果を期待できます。
引き続き、有能な技術者の確保に加えて、契約単価の上昇を進めてまいります。
(ソリューション事業の強化)
2022年6月期を初年度とする5年計画の中期経営計画『Evolution 2026』では、ソリューション事業の強化を掲げており、同事業の売上収益や同事業に携わる技術者数も増加しています。2024年6月期以降の後半3年は、高成長の実現期と位置づけ、国内外の技術動向予測や当社の内部ケイパビリティ評価に基づき注力ソリューションを絞り込んだうえで、マーケティング・営業から採用・育成・デリバリーまでの首尾一貫したオペレーションを組織的に行っています。また、2023年7月1日付でコンサルティング組織「TechnoPro Consulting & Advisory」を立ち上げ、戦略・構想策定、業務分析といった上流工程から、保守・管理といった下流工程までを、一貫して支援可能な体制を強化しています。
引き続き、採用や育成を通して上流工程に対応できる人材を増やすとともに、競争優位性の高い、柱となるソリューションの確立・拡大を目指してまいります。
これら事業上の取組みの結果、当連結会計年度末の国内在籍技術者数は26,054人(前連結会計年度末比1,929人増加)、当連結会計年度の平均稼働率は95.0%(前連結会計年度比0.2pt減少)となりました。従前より進めてきた技術者一人当たり売上単価の向上については、前連結会計年度と比較して稼働日数が減少したものの、シフトアップやチャージアップ、加えてソリューション事業の拡大等による単価上昇もあり、当連結会計年度の月次平均売上単価は678千円(同9千円増加)となりました。
費用面においては、前連結会計年度に比べて販売費及び一般管理費が増加しました。主に、人材獲得のための採用費、育成のための教育訓練費、海外子会社における先行投資やインフレの影響によるものです。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの業績につきまして、売上収益は2,192億18百万円(前連結会計年度比9.7%増加)、事業利益は243億95百万円(同14.1%増加)、営業利益は219億18百万円(同0.4%増加)、税引前当期利益は221億39百万円(同1.4%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は146億84百万円(同4.4%減少)となりました。
※ 事業利益は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を減算したもので、「その他の収益」や「その他の費用」に計上される特別項目(雇用調整助成金や減損損失など)による影響を除いたものを示している当社独自の利益指標です。
当連結会計年度における主要事業分野の業績は、以下のとおりです。
(R&Dアウトソーシング事業)
R&Dアウトソーシング事業の中でも好調を維持しているIT分野を拡大するため、高付加価値技術者を主体とした中途採用の強化に加え、ハード系技術者、化学・バイオ系技術者に対するデジタル技術の教育を行い、スキル転換や複数スキルの習得により、デジタル領域の旺盛な需要に対応する取組みを実施しています。また、先端技術を有するアライアンス企業との協業や社内外での研修を積極的に進め、提供サービスの高品質化や多様化によって、より高い単価での配属に努めています。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数は22,848人(前連結会計年度末比1,685人増加)、稼働技術者数は21,497人(同1,612人増加)となりました。
その結果、同事業の売上収益は1,686億94百万円(前連結会計年度比10.4%増加)となりました。
(施工管理アウトソーシング事業)
施工管理アウトソーシング事業のメインである施工管理サービスに加え、ドローンを使用した3次元計測、空撮、点検等の実施や、一級建築士事務所の設置等、設計分野・施工管理分野で培われた技術力をもとに、さまざまなサービスを展開しています。また、慢性的な施工管理技術者不足に対応すべく、自社の技術センターを活用し、建設業界未経験者や経験の浅い若手技術者を積極的に採用・育成しています。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数は3,206人(前連結会計年度末比244人増加)、稼働技術者数は3,060人(同225人増加)となりました。
その結果、同事業の売上収益は232億93百万円(前連結会計年度比7.6%増加)となりました。
(国内その他事業)
国内その他事業は、人材紹介及び技術系教育研修サービスで構成されています。人材紹介では、採用を通じた当社グループへの人材供給は伸張している一方、外部顧客が求めるハイスキル人材の獲得に苦戦し、また、景気の不透明感によって採用を一時抑制する動きも見られます。また、技術系教育研修では、当社グループ内でのシナジーを活かした研修プログラムの開発や効率化を行う一方、人的資本投資への需要を取り込むべく先行して費用を投じながら、企業向け技術者育成コンサルティング、e-Learningシステムの整備や外販の拡大に取り組んでいます。
その結果、同事業の売上収益は48億39百万円(前連結会計年度比13.1%減少)となりました。
(海外事業)
海外事業は、インドや中国において、主に欧米や日本の顧客に対するオフショア・デリバリーサービスを、東南アジアや英国において、技術者派遣及び人材紹介サービスをそれぞれ展開しています。国によって多少の違いはあるものの、世界的な景気後退懸念や地政学リスクを背景とした投資抑制の影響を徐々に受けつつあります。一方、国内ソリューション事業のケイパビリティ獲得にも寄与する、高利益率のオフショア・デリバリー案件や新規顧客を開拓すべく、セールス&マーケティングを中心とした先行投資を継続しています。
その結果、同事業の売上収益は256億82百万円(前連結会計年度比9.2%増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ98億68百万円増加し、452億41百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は311億77百万円の収入(前期は214億24百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期利益(221億39百万円)、減価償却費及び償却費(32億71百万円)、減損損失(27億69百万円)等による資金の増加に対し、法人所得税支払額(70億93百万円)等により資金が減少したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は7億85百万円の支出(前期は44億49百万円の支出)となりました。これは主に、投資の売却及び償還による収入(28億1百万円)、定期預金の払戻による収入(22億86百万円)等による資金の増加に対し、投資の取得による支出(31億23百万円)、定期預金の預入による支出(24億30百万円)等により資金が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は209億29百万円の支出(前期は192億31百万円の支出)となりました。これは主に、配当金支払額(82億22百万円)、リース負債の返済による支出(69億99百万円)、自己株式の取得による支出(39億23百万円)等により資金が減少したことによるものです。なお、非支配持分からの子会社持分取得による支出(7億83百万円)は、Orion Managed Services Limitedの残株式の取得対価支払額になり、本取得により同社の所有割合は100%となっています。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ロ.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ハ.販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、以下のとおりです。
セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) | |
金額 (百万円) | 前年同期比 (%) | |
R&Dアウトソーシング事業 | 168,694 | 110.4 |
施工管理アウトソーシング事業 | 23,293 | 107.6 |
国内その他事業 | 4,839 | 86.9 |
海外事業 | 25,682 | 109.2 |
全社/消去 | △3,289 | 88.2 |
合計 | 219,218 | 109.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
① 重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 注記4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。
② 経営成績の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
③ 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は1,526億51百万円(前連結会計年度末比86億33百万円増加)となりました。主な内訳は、のれん464億94百万円、現金及び現金同等物452億41百万円、売掛金及びその他の債権289億63百万円等です。
各項目の状況は、以下のとおりです。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は875億75百万円(前連結会計年度末比109億18百万円増加)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物452億41百万円(同98億68百万円増加)、売掛金及びその他の債権289億63百万円(同15億58百万円増加)等です。
(非流動資産)
当連結会計年度末における非流動資産の残高は650億75百万円(前連結会計年度末比22億85百万円減少)となりました。主な内訳は、のれん464億94百万円(同1億22百万円増加)、使用権資産44億54百万円(同4億62百万円減少)等です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は581億14百万円(前連結会計年度末比111億69百万円増加)となりました。主な内訳は、買掛金及びその他の債務181億17百万円(同20億73百万円増加)、従業員給付に係る負債94億5百万円(同7億19百万円増加)等です。
(非流動負債)
当連結会計年度末における非流動負債の残高は126億38百万円(前連結会計年度末比76億71百万円減少)となりました。主な内訳は、社債及び借入金77億35百万円(同59億81百万円減少)、リース負債35億50百万円(同5億65百万円減少)等です。
(親会社の所有者に帰属する持分)
当連結会計年度末における親会社の所有者に帰属する持分の残高は807億41百万円(前連結会計年度末比52億12百万円増加)となりました。主な内訳は、利益剰余金659億13百万円(同66億50百万円増加)、資本金69億29百万円(同増減なし)等です。なお、自己株式の消却等により、資本剰余金は前連結会計年度末比48億76百万円減少しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
① 資金需要
当社グループは技術者派遣業務を主体として事業運営しているため、主要な運転資金需要は、人件費(給与手当、賞与、法定福利費等)の支払となります。また、技術者派遣業務は、役務提供の対価が毎月入金されることが基本であるため、運転資金の大半は顧客からの入金で充足されます。なお、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.6ヶ月、未払人件費等回転期間は1.3ヶ月です。
その他、情報システム投資や営業拠点投資、自己株式取得、M&A投資が主要な資金需要となります。
② 財務政策
当社グループは、(ア)将来的成長へ向けた積極投資、(イ)適正な財務健全性・レバレッジの確保、(ウ)株主還元の規律、の最適なバランスを踏まえた財務政策を基本方針としており、指標としては基本的1株当たり当期利益の長期継続的改善を重視し、資本コストが相対的に低い借入を主体とした負債性資本による調達を基本としています。
また、当社グループでは、当連結会計年度末時点において、短期的資金需要及びM&A資金需要を賄うため、当社において総額160億円のコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しています。