有価証券報告書-第16期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/09/29 16:00
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【項目】
126項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2020年7月1日~2021年6月30日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大に対して、各国政府が積極的な財政・金融対策を打ち出したことで、一部の地域で景気の改善が見られ始めました。特に中国は、米中対立の深刻化に注意を払う必要があるものの、電気製品や電子部品などの好調な輸出が牽引役となり、いち早く経済活動が正常化しつつあります。また、米国においても、追加経済対策などを背景とした個人消費や雇用の改善により、経済は回復基調にあります。一方、我が国経済は、製造業で持ち直しが見られたものの、2021年1月に2度目の、同年4月には3度目の緊急事態宣言が発出され、今後の経済活動への影響が懸念されるなど、依然として先行き不透明な状況が続いています。
このような環境下において当社は、不確実性を増す経済情勢や顧客需要の変化、転就職市場の動向、在宅勤務やリモートワークなど新しい働き方への変革など、多面的な視野から適時・適切な分析のもと、慎重な事業運営を進めてまいりました。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けながらも、当社グループが注力しているIT・DX関連業務、建築施工管理業務、化学・バイオ関連業務などを中心とした底堅い顧客需要に支えられた期間となりました。
当連結会計年度における、当社グループの主な取組みは、以下のとおりです。
(技術者の確保)
新型コロナウイルス感染症が国内で拡大した前連結会計年度第4四半期以降、社員の雇用を守ることを最優先課題に据え、新規採用を大幅に縮減してまいりましたが、当連結会計年度第2四半期以降は、特定技術領域における技術者不足による稼働率の改善を受け、高付加価値技術者を対象に中途採用を再開いたしました。しかし採用応募者の母集団形成までのタイムラグにより、在籍技術者数の減少傾向は続き、当連結会計年度第3四半期末の国内技術者数は19,949人となりました。その後、2021年4月の新卒技術者292人の入社に加え、再開した中途採用の効果が現れ出したことで、当連結会計年度末の国内技術者数は20,330人となりました。今後も、旺盛なIT・DX関連の技術者需要に対する新規採用に注力し、また退職抑制に向けた取組みを継続することで、成長の源泉である技術者の確保に努めてまいります。
(サービスの多様化や高品質化、技術者の高付加価値化)
大手ITベンダーからのパートナー認定の獲得や先進技術を持つ企業群とのアライアンスにより、今後需要拡大が見込まれる技術領域における提供サービスの多様化や高品質化を推進しました。また、良質な人材の採用に加え、大手ITベンダーや先進企業との連携により、既存技術者の育成による高付加価値化への取組みを継続して実施しました。
大手ITベンダーからのパートナー認定による技術者の育成と提供サービスの多様化への取組み事例は、以下のとおりです。
・企業向け基盤システムERPパッケージを提供するヨーロッパ最大級のソフトウェア会社の日本法人であるSAPジャパン㈱から、「SAP PartnerEdge Silver パートナー」として認定
・顧客管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピューティングサービスを提供する㈱セールスフォース・ドットコムから、「コンサルティングパートナー」として認定
・世界標準のプロジェクト管理ソフトMicrosoft Projectの導入支援パートナーとして、日本マイクロソフト㈱から「Microsoft Partner(Gold Project and Portfolio Management / Gold Communications)」として認定
・世界で最も広く採用されるクラウドプラットフォームであるAmazon Web Services(AWS)を提供するアマゾンウェブサービスジャパン㈱から、「AWS Partner Network(APN)セレクトコンサルティングパートナー」として認定
先進技術を持つ企業群とのアライアンスによる技術者の育成と提供サービスの高品質化への取組み事例は、以下のとおりです。
・㈱アイズファクトリーや㈱ALBERTとのデータサイエンティストやデータアナリストの養成や派遣事業での協業
・㈱サイバージムジャパンとのサイバーセキュリティエキスパート育成事業での協業
・自動車産業向けモデルベース開発に強みを有するインテグレーションテクノロジー㈱との協業
・AIに強みを持つ㈱LIGHTzやAI学習支援プラットフォームを提供する㈱アイデミーとの協業
また、当社連結子会社で、技術領域における教育研修事業を手がけるピーシーアシスト㈱が運営するWinスクールにおいて、時代に即したニーズの高い技術を習得するための講座を新たに開設するなど、様々な取組みを進めました。
(IT分野へのシフト)
新型コロナウイルス感染症の影響如何にかかわらず、IT分野は、他の技術分野に比べて需要が堅調であるとともに、今後も需要の拡大が予想されています。当社グループにおいて、IT技術者は全在籍技術者の半数以上を占め、その人数と全在籍技術者に占める割合はともに増加傾向にあります。新規採用に加え、ハード系技術領域からのスキル転換(リスキリング)や複数スキルの習得を進め、デジタル技術(データサイエンス、クラウド、IoT、セキュリティ、5G等)を有する技術者の拡充や、IT分野への資源投下を積極的に進めてまいります。
(グローバル化の推進)
アジア地域に拠点を持つテクノプロ中国グループやHelius Technologies Pte Ltd、イギリスに拠点を持つOrion Managed Services Limitedとの連携を行い、同地域に拠点を有する日系企業への技術系サービスの提供を進めるとともに、2019年9月にはインドにTPRI Technologies Private Limitedを設立し、インドを拠点としたグローバルサービス展開の基礎固めを行ってきました。
(新型コロナウイルス感染症対策)
コロナ禍が継続する状況において、従業員の健康・安全確保を最優先とする事業運営を徹底いたしました。具体的には、在宅勤務や時差出勤の推進、Webビデオシステムによる商談や会議体制の構築、マスクや消毒液の全国拠点への配布、押印による承認から他の承認フローへの見直し、一時帰休への対応などを継続しました。また、2021年3月には、前年に続き経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定され、テレワークなど就業環境が変化していても、従業員の健康増進を図るための各種施策を実施しています。このように、感染症が拡大している状況下であっても、継続して事業運営のできる体制強化を進めています。
(デジタルトランスフォーメーションの推進)
当社グループは、中期経営計画「-10年後も輝く企業であるために-」(2017年7月1日から2022年6月30日[注:当該中期経営計画は5年間の数値目標を概ね達成したことを受け、1年前倒しで2021年6月30日に終了])の4つの戦略の一つに『IT技術を活用したプラットフォーム化』を掲げ、タレントマネジメントシステムの構築を進めてきました。既に数多くの機能がリリースされ、社内の各種データの有効活用に向けた体制整備が進んでいます。今後も、データの有効活用はもとより管理作業の効率化や正確性の確保のため、社内のデジタルトランスフォーメーションの取組みを加速してまいります。
なお当社は、2021年6月1日付で、経済産業省の定める「DX認定事業者」に選定されました。本制度は、デジタル技術による社会変革を踏まえて経営者に求められる対応をまとめた「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する形で、DX推進の準備が整っていると認められる企業を国が認定する制度です。
これら事業上の取組みの結果、社員の雇用確保を最優先とする事業運営による新規採用の大幅抑制などもあり、当連結会計年度末の国内技術者数は20,330人となりました。前連結会計年度末に比べて934人減少しましたが、再開した中途採用が順調に推移したことで、当第3四半期終了時点での当連結会計年度末の予想より180人増加しました。また、当連結会計年度の平均稼働率は94.6%(前連結会計年度比0.5pt増加)となり、従前より進めてきた技術者一人当たり売上単価の向上については、新卒技術者の入社、政府主導の働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大に伴うテレワーク浸透に起因する残業時間の減少などの影響がありながらも、当連結会計年度の月次平均売上単価(㈱テクノプロ及び㈱テクノプロ・コンストラクションの平均)は月額634千円(同4千円増加)となりました。なお、直近1年間に入社した技術者を除く既存社員の契約単価で見ると、前連結会計年度比で月額8千円上昇しています。
採用面においては、当第2四半期より段階的に新規採用活動を再開しましたが、大幅な新規採用抑制期間の影響もあり、当連結会計年度の国内技術者採用数は1,405人(前連結会計年度比2,993人減少)となりました。
費用面においては、有給休暇引当金の増加や確定拠出年金の会社負担額増などの影響を受け、当連結会計年度の売上総利益率は24.6%(前連結会計年度比0.8pt減少)となりました。一方、コストコントロールを継続して実施した結果、売上収益に対する販売管理費の比率は13.7%(同1.4pt改善)に抑えられました。
加えて、国内において雇用維持に努めた結果、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う特例を受けて、当連結会計年度にその他の収益として計上した雇用調整助成金は17億80百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの業績につきましては、売上収益は1,613億16百万円(前連結会計年度比1.8%増加)、事業利益は176億39百万円(同8.4%増加)、営業利益は194億61百万円(同23.4%増加)、税引前当期利益は194億72百万円(同22.9%増加)、親会社の所有者に帰属する当期利益は132億45百万円(同22.4%増加)となりました。
※ 事業利益は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を減算したもので、「その他の収益」や「その他の費用」に計上される特別項目(雇用調整助成金や減損損失など)による影響を除いたものを示している当社独自の利益指標です。
当連結会計年度における主要事業分野の業績は、以下のとおりです。
(R&Dアウトソーシング事業)
R&Dアウトソーシング事業の中でも好調を維持しているIT分野を拡大するため、高付加価値技術者を主体とした中途採用の再開に加え、ハード系技術者に対するIT教育を実施し、スキル転換や複数スキルの習得により配属を進める取組みを実施いたしました。また、先端技術を有するパートナーとの協業や社内外での研修を積極的に進め、配属先の確保に努めました。これらの取組みにより、当連結会計年度末の在籍技術者数及び稼働技術者数は、それぞれ17,692人及び16,823人となり、前連結会計年度末に比べて、それぞれ779人及び28人の減少に留めることができました。稼働率の改善・稼働日数の増加・売上単価の改善などもあり、結果として、同事業の売上収益は1,278億70百万円(前連結会計年度比1.3%増加)となりました。
(施工管理アウトソーシング事業)
施工管理アウトソーシング事業のメインである施工管理サービスに加え、ドローンを使用した3次元計測、空撮、点検等の実施や、一級建築士事務所の新設等、設計分野・施工管理分野で培われた技術力をもとに、様々なサービスを展開しています。同事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は軽微で高稼働率を維持したものの、当連結会計年度末の在籍技術者数及び稼働技術者数は、それぞれ2,638人及び2,524人となり、前連結会計年度末に比べて、それぞれ155人及び68人減少しました。その結果、同事業の売上収益は196億70百万円(前連結会計年度比0.6%減少)となりました。
(国内その他事業)
国内その他事業は、人材紹介事業及び技術系教育研修事業で構成されています。これらの事業はともに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、ピーシーアシスト㈱が手掛けるWinスクールは、前連結会計年度より着手したオンラインスクール講座を順次開講しており、通常の来校による受講に加え、オンライン受講を進めるなど、落ち込みをカバーする施策を進めています。その結果、同事業の売上収益は38億円(前連結会計年度比7.4%減少)となりました。
(海外事業)
海外事業では、国によって新型コロナウイルス感染症拡大の影響に差異がありました。中国ではいち早く低迷状況から脱し、主要顧客である日系中国法人とその親会社である日本法人を交えて国を越えた受託開発も進みました。また、英国においても人材派遣・人材紹介ともに旺盛な需要に支えられ、良好な業績を収めることができました。その結果、同事業の売上収益は114億32百万円(前連結会計年度比15.0%増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ97億27百万円増加し、325億24百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は220億81百万円の収入(前期は180億59百万円の収入)となりました。これは主に、税引前当期利益(194億72百万円)、前払費用の減少(29億80百万円)、減価償却費及び償却費(26億58百万円)による資金の増加に対し、法人所得税支払額(61億69百万円)、未払消費税等の減少(13億円)により資金が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は13億74百万円の支出(前期は14億98百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出(11億98百万円の支出)、有形固定資産の取得(2億65百万円)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は111億14百万円の支出(前期は149億27百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入(100億円)による資金の増加に対し、長期借入金の返済による支出(81億58百万円)、リース負債の返済による支出(65億35百万円)、配当金支払額(54億21百万円)により資金が減少したこと等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ロ.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しています。
ハ.販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、以下のとおりです。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年7月1日
至 2021年6月30日)
金額
(百万円)
前年同期比
(%)
R&Dアウトソーシング事業127,870101.3
施工管理アウトソーシング事業19,67099.4
国内その他事業3,80092.6
海外事業11,432115.0
全社/消去△1,45690.8
合計161,316101.8

(注)上記金額には、消費税等は含まれていません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 注記4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。
② 経営成績の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
③ 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は1,179億89百万円(前連結会計年度末比100億22百万円増加)となりました。主な内訳は、のれん363億7百万円、現金及び現金同等物325億24百万円、売掛金及びその他の債権207億16百万円等です。
各項目の状況は、以下のとおりです。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は641億13百万円(前連結会計年度末比128億6百万円増加)となりました。主な内訳は、現金及び現金同等物325億24百万円(同97億27百万円増加)、売掛金及びその他の債権207億16百万円(同5億2百万円増加)等です。
(非流動資産)
当連結会計年度末における非流動資産の残高は538億76百万円(前連結会計年度末比27億83百万円減少)となりました。主な内訳は、のれん363億7百万円(同1億92百万円増加)、使用権資産50億74百万円(同15億74百万円減少)、繰延税金資産43億93百万円(同1億10百万円増加)等です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は436億47百万円(前連結会計年度末比4億81百万円増加)となりました。主な内訳は、買掛金及びその他の債務142億88百万円(同9億19百万円増加)、従業員給付に係る負債73億48百万円(同9億49百万円増加)、その他の流動負債70億93百万円(同9億43百万円減少)等です。
(非流動負債)
当連結会計年度末における非流動負債の残高は156億9百万円(前連結会計年度末比3億17百万円増加)となりました。主な内訳は、借入金64億67百万円(同32億62百万円増加)、リース負債42億2百万円(同16億63百万円減少)、その他の長期金融負債41億18百万円(同10億95百万円減少)等です。
(親会社の所有者に帰属する持分)
当連結会計年度末における親会社の所有者に帰属する持分の残高は572億26百万円(前連結会計年度末比89億96百万円増加)となりました。主な内訳は、資本剰余金74億60百万円(同1億11百万円増加)、利益剰余金435億57百万円(同74億18百万円増加)等です。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
① 資金需要
当社グループは技術者派遣業務を主体として事業運営しているため、主要な運転資金需要は、人件費(給与手当、賞与、法定福利費等)の支払となります。また、技術者派遣業務は、役務提供の対価が毎月入金されることが基本であるため、運転資金の大半は顧客からの入金で充足されます。なお、当連結会計年度における売上債権回転期間は1.5ヶ月、未払人件費等回転期間は1.4ヶ月です。
その他、情報システム投資や営業拠点投資、自己株式取得、M&A投資が主要な資金需要となります。
② 財務政策
当社グループは、(ア)将来的成長へ向けた積極投資、(イ)適正な財務健全性・レバレッジの確保、(ウ)株主還元の規律、の最適なバランスを踏まえた財務政策を基本方針としており、指標としては基本的1株当たり当期利益の長期継続的改善を重視し、資本コストが相対的に低い借入を主体とした負債性資本による調達を基本としています。
また、当社グループでは、当連結会計年度末時点において、短期的資金需要及びM&A資金需要を賄うため、総額220億円のコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しています。