有価証券報告書-第21期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
当連結会計年度(2020年1月1日から2020年12月31日)における当社グループの経営成績等の状況については以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1)経営成績等の状況
当社グループでは、売上収益、Non-GAAP営業利益を経営成績評価上の重要な指標としております。当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
① 当期の経営成績
当連結会計年度においては、 2019年4月1日を効力発生日とする連結対象会社の増加に加え、クレジットカード事業セグメントを中心に、以下のように売上収益、Non-GAAP営業利益ともに大きく増加し、着実な成長を果たすことができました。なお、セグメントごとの分析は「(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。また、前第2四半期連結会計期間より楽天グループの共通費の配賦方法を変更したため、前連結会計年度のNon-GAAP営業利益は変更後配賦方法に基づいて記載しています。
(単位:百万円)
Non-GAAP営業利益から営業利益への調整は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
② 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は494,055百万円となり、前連結会計年度の369,860百万円から124,195百万円(33.6%)増加しました。これは2019年4月1日を効力発生日とする楽天グループ企業の組織再編に伴う連結子会社の増加の影響に加え、クレジットカード事業における『楽天カード』の会員基盤拡大による収益の増加、証券事業において金融市場のボラティリティの上昇による株式売買の手数料収入の増加、顧客の信用取引増加による収益の拡大、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴う手数料収益の増加、及び保険事業におけるインターネット経由での販売増加等が主な要因です。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は402,758百万円となり、前連結会計年度の300,327百万円から102,431百万円(34.1%)増加しました。これは2019年4月1日を効力発生日とする楽天グループ企業の組織再編に伴う連結子会社の増加の影響に加え、クレジットカード事業における業容の拡大による費用の増加、証券事業における金融市場のボラティリティの上昇による取引関連費用の増加、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴うプロモーション活動によるマーケティング費用の増加、及び保険事業における業容の拡大による費用の増加等が主な要因です。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は88,754百万円となり、前連結会計年度の67,624百万円から21,130百万円(31.2%)増加しました。これは2019年4月1日を効力発生日とする楽天グループ企業の組織再編に伴う連結子会社の増加の影響に加え、各セグメントとも業績が好調に推移したためです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度における税引前当期利益は88,945百万円となり、前連結会計年度の67,409百万円から21,536百万円(31.9%)増加しました。これは、営業利益で説明した要因等により利益が増加したためです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は33,919百万円となり、前連結会計年度の22,266百万円から11,653百万円(52.3%)増加しました。
(当期利益)
以上の結果、当期利益は55,026百万円となり、前連結会計年度の45,143百万円から9,883百万円(21.9%)増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は55,547百万円となり、前連結会計年度の45,155百万円から10,392百万円(23.0%)増加しました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は10,383,432百万円となり、前連結会計年度末の資産合計7,326,801百万円と比べ、3,056,631百万円増加しました。これは主に、クレジットカード事業において貸付金が増加したこと、証券事業において顧客の売買取引増加に伴う金融資産が増加したことや、銀行事業において住宅ローンが増加したこと、顧客からの預金受入に伴い現金及び現金同等物が増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は9,899,322百万円となり、前連結会計年度末の負債合計6,870,124百万円と比べ、3,029,198百万円増加しました。これは主に、手元流動性を高めるため、社債及び借入金が増加したことに加え、証券事業において顧客の売買取引増加に伴う金融負債の増加や、銀行事業において顧客からの預金が増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は484,110百万円となり、前連結会計年度末の資本合計456,677百万円と比べ、27,433百万円増加しました。これは主に、親会社である楽天株式会社への配当、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融商品の時価の下落により減少したものの、当期利益による利益剰余金、及び新たに連結子会社となった樂天國際商業銀行股份有限公司に係る非支配持分により増加しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,574,767百万円増加し、2,883,879百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,023,808百万円の資金流入(前連結会計年度は313,978百万円の資金流入)となりました。これは主に、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が386,707百万円、カード事業の貸付金の増加による資金流出が204,590百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が1,552,528百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、41,821百万円の資金流出(前連結会計年度は142,578百万円の資金流出)となりました。これは主に、無形資産の取得による資金流出が30,036百万円、保険事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が15,327百万円(有価証券の取得による資金流出が75,676百万円、売却及び償還による資金流入が60,349百万円)となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、594,408百万円の資金流入(前連結会計年度は109,201百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が247,774百万円となった一方で、短期借入金の増加による資金流入が411,429百万円、長期借入れによる資金流入が321,250百万円、コマーシャル・ペーパーの増加による資金流入が99,500百万円となったことによるものです。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当事項はありません。また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に各セグメントの状況を記載しています。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
2019年4月の組織再編により、クレジットカード事業、銀行事業、証券事業、保険事業を報告セグメントとしています。そのため、当期においては、クレジットカード事業以外のセグメントの前年同期との比較のために、当連結会計年度に加え、当第4四半期連結会計期間での比較を記載しており、クレジットカード事業以外のセグメントにおいては、前期比較は第4四半期連結会計期間にて行っています。
また、セグメントごとの分析については当社グループ内部取引控除前の数値です。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。以下、セグメント単位で経営成績等の分析・検討内容を記載しています。
(クレジットカード事業)
(単位:百万円)
(単位:百万円)
クレジットカード事業セグメントでは、2019年10月から2020年6月まで実施された政府のキャッシュレス・消費者還元事業の追い風もあり順調に推移していましたが、2020年2月下旬以降は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による国内及び世界経済全体の経済活動の落ち込みの影響が徐々に表れ、特に2020年4月7日に緊急事態宣言が発出されて以降は外出自粛の広がりや大規模商業施設等が休業や営業時間短縮となるなど、国内の経済活動が停滞しました。2020年5月下旬に地域ごとに順次緊急事態宣言が解除されて以降は徐々に消費が回復し、コロナ禍における押し下げ影響はあるものの、引き続きカード会員数及びショッピング取扱高が伸長いたしました。その一方で、ショッピングリボルビング残高及びキャッシング残高については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による人々の行動様式の変容による需要減少の影響を受けました。
そのような環境下において、楽天グループ各社のサイト上での当社のバナー広告の展開や、テレビCMやWebCMの放送による認知度向上に加え、JCBブランドにて、楽天カードディズニー・デザインでのミニーマウスデザインの投入や、Mastercardブランドにて、みちのく銀行デザインの投入等により会員数は2,155万人(前年同期末比13.5%増)となりました。また、会員数の伸長及び利用促進キャンペーン活動を継続的に行った結果、主要KPIであるショッピング取扱高は11兆4,691億16百万円(前年同期比21.3%増)となり、コロナ禍においても2桁成長を維持することができました。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により、ショッピングリボルビングやキャッシングへの消費者需要は徐々に回復しているもののコロナ禍以前の水準までは回復しておらず、ショッピングリボルビング残高は6,198億38百万円(前年同期末比0.9%増)と微増となり、キャッシング残高は1,196億74百万円(前年同期末比11.6%減)と減少となりました。
結果として、当連結会計年度において、売上収益は262,548百万円(前年同期比13.3%増)となりました。
また、債権回収におきましては、与信管理を適切に行ったこと等により、貸倒関連費用比率の上昇はなく、資産の健全性を維持できました。また、広告宣伝費の抑制にも取り組みました。
以上の結果から、セグメント損益は36,827百万円(前年同期比13.8%増)となりました。
(銀行事業)
(単位:百万円)
(単位:百万円)
銀行事業セグメントでは、楽天カード株式会社との協業施策等の楽天グループ間でのシナジー効果を目指した取り組み等により、主要KPIである銀行口座数が伸長し、991万口座(前年同期末比20.0%増)となりました。また、銀行口座数の伸長及び給与受け取り口座や自動引落口座獲得のためのプロモーション活動の結果、預金残高は4兆8,881億17百万円(前年同期末比47.0%増)となりました。また、2020年1月に住宅ローンの団体信用生命保険に、がん保障特約を新たに追加するなど、サービスの拡充を実施いたしました。それらの取組により、当連結会計年度において資産が順調に積みあがった結果、売上収益は95,610百万円となりました。
営業費用は業容拡大により増加しておりますが、結果としてセグメント損益は27,188百万円となりました。
当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症による影響により、カードローン残高の減少や、金融緩和政策の実施等による売上収益へのマイナス影響があった一方、銀行口座数の伸長に伴い運用資産や決済件数が順調に拡大したことにより、売上収益は24,704百万円(前年同期比7.6%増)となりました。一方で、営業費用においては、銀行口座数伸長に伴うプロモーション活動により、マーケティング費用が増加し、その結果セグメント損益は6,619百万円(前年同期比5.5%減)となりました。
(証券事業)
(単位:百万円)
(単位:百万円)
証券事業セグメントでは、投信積立で楽天カード決済が可能となるサービスや楽天ポイントなどで投資信託や国内株式が購入できるポイント投資サービスなど、楽天グループ間でのシナジー効果を目指した継続的な取り組みにより、主要KPIである証券総合口座数は508万口座(前年同期末比35.2%増)及び証券預かり資産残高(楽天銀行との口座連携サービスにおいて、自動入出金(スイープ)を設定している顧客の楽天銀行普通預金残高も含む)は9兆9,860億43百万円(前年同期末比44.9%増)となりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響による金融市場のボラティリティの上昇による株式の売買高の増加もあり、当連結会計年度においては、売上収益は73,415百万円となりました。営業費用は業容拡大により増加しておりますが、結果として、セグメント損益は16,835百万円となりました。
当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症の影響による金融市場のボラティリティの上昇による国内外の株式の売買高の増加もあり、売上収益は20,088百万円(前年同期比40.0%増)となりました。営業費用は業容拡大により増加しておりますが、売上収益の増加により、セグメント損益は4,195百万円(前年同期比68.8%増)と大幅に増加しました。
(保険事業)
(単位:百万円)
(単位:百万円)
保険事業セグメントでは、楽天保険の総合窓口の開設により、楽天生命、楽天損保、楽天ペット保険が提供する保険商品のお客様窓口を一本化し、ご契約者様のお手続きをワンストップで受けることができるようにすることで、ユーザーにとって利便性の高い保険サービスを提供しています。また、楽天グループ間でのシナジーの最大化を図るべく、楽天IDを使ったネット経由での楽天生命、楽天損保、楽天ペット保険の対象商品のご加入者様に、保険料支払い額の1%分の楽天ポイントを還元するサービスを2019年12月より開始しました。また、認知度向上のためテレビCMを放映しました。これらの取組等により、保険事業セグメントの主要KPIである楽天生命保険の保有契約件数(共済事業及び1年定期ガン保険の契約を除く)は、46.6万件(前年同期末比6.9%増)となりました。また、楽天損害保険の自動車保険、住宅向け火災保険、インターネット申込保険の新規契約件数は19.4万件(前年同期比22.5%増)となりました。
ユーザーにとって利便性の高い保険サービスの提供及び、楽天グループ間でのシナジーの最大化を目指す取り組み等を行っており、当連結会計年度においては、売上収益は103,971百万円となりました。また、業容拡大による営業費用の増加により、結果として、セグメント損益は7,505百万円となりました。
当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症の影響により保険の対面販売が減少した一方で、インターネット経由での販売が増加したこと等により、売上収益は25,033百万円(前年同期比27.4%増)となりました。業容拡大により営業費用は増加しておりますが、売上収益の増加により、セグメント損益は前年同期比2,937百万円(前年同期比10.2%増)となりました。
以上により、当連結会計年度においては、クレジットカード事業の伸長と業績の拡大に加え、組織再編による連結子会社の増加もあり、セグメント損益は88,355百万円(前年同期比38.1%増)となりました。また、当第4四半期連結会計期間においては、当第2四半期連結会計期間及び第3四半期連結会計期間に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞によるマイナス影響があった一方、金融市場のボラティリティが上昇する等による環境下で証券事業が好調な影響もあり、セグメント損益は20,558百万円(前年同期比2.5%増)となりました。
今後の施策として、引き続きキャッシュレス決済の社会全体への浸透を追い風として、クレジットカード事業を中心に、新規会員の獲得及びクレジットカード利用促進に向けた効果的かつ効率的なマーケティング戦略を行っていきます。また、当社グループの顧客基盤を最大限に活用し、各社間でのクロスユースを促進することで、当社グループ間でのシナジーを更に発揮していきます。なお、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景気の不透明さは残っておりますが、資産の健全性、財務の安定性を維持しつつ、各事業のKPI、売上収益、Non-GAAP営業利益への影響を注意深く見ていきます。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするために、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行う事、また、各社の高い財務健全性を維持するために、十分な流動性を確保することが重要だと認識しており、低利かつ安定的な調達を行い、十分な流動性の確保に努めています。
なお、当社の当連結会計年度末時点の信用格付けは、JCRから、発行体格付け「A(シングルA)」を取得しています。また、R&Iからは発行体格付け「A-(シングルAマイナス)」を取得しています。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループにおける重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計上の見積り及び判断(1)重要な会計上の見積り及び仮定」に記載しています。
(1)経営成績等の状況
当社グループでは、売上収益、Non-GAAP営業利益を経営成績評価上の重要な指標としております。当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
① 当期の経営成績
当連結会計年度においては、 2019年4月1日を効力発生日とする連結対象会社の増加に加え、クレジットカード事業セグメントを中心に、以下のように売上収益、Non-GAAP営業利益ともに大きく増加し、着実な成長を果たすことができました。なお、セグメントごとの分析は「(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。また、前第2四半期連結会計期間より楽天グループの共通費の配賦方法を変更したため、前連結会計年度のNon-GAAP営業利益は変更後配賦方法に基づいて記載しています。
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 369,860 | 494,055 | 124,195 | 33.6% |
Non-GAAP営業利益 | 63,986 | 88,355 | 24,369 | 38.1% |
Non-GAAP営業利益から営業利益への調整は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | |
Non-GAAP営業利益 | 63,986 | 88,355 |
無形資産償却費 | △1,798 | △4,456 |
株式報酬費用 | △737 | △922 |
その他の調整項目 | 6,173 | 5,777 |
営業利益 | 67,624 | 88,754 |
② 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は494,055百万円となり、前連結会計年度の369,860百万円から124,195百万円(33.6%)増加しました。これは2019年4月1日を効力発生日とする楽天グループ企業の組織再編に伴う連結子会社の増加の影響に加え、クレジットカード事業における『楽天カード』の会員基盤拡大による収益の増加、証券事業において金融市場のボラティリティの上昇による株式売買の手数料収入の増加、顧客の信用取引増加による収益の拡大、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴う手数料収益の増加、及び保険事業におけるインターネット経由での販売増加等が主な要因です。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は402,758百万円となり、前連結会計年度の300,327百万円から102,431百万円(34.1%)増加しました。これは2019年4月1日を効力発生日とする楽天グループ企業の組織再編に伴う連結子会社の増加の影響に加え、クレジットカード事業における業容の拡大による費用の増加、証券事業における金融市場のボラティリティの上昇による取引関連費用の増加、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴うプロモーション活動によるマーケティング費用の増加、及び保険事業における業容の拡大による費用の増加等が主な要因です。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は88,754百万円となり、前連結会計年度の67,624百万円から21,130百万円(31.2%)増加しました。これは2019年4月1日を効力発生日とする楽天グループ企業の組織再編に伴う連結子会社の増加の影響に加え、各セグメントとも業績が好調に推移したためです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度における税引前当期利益は88,945百万円となり、前連結会計年度の67,409百万円から21,536百万円(31.9%)増加しました。これは、営業利益で説明した要因等により利益が増加したためです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は33,919百万円となり、前連結会計年度の22,266百万円から11,653百万円(52.3%)増加しました。
(当期利益)
以上の結果、当期利益は55,026百万円となり、前連結会計年度の45,143百万円から9,883百万円(21.9%)増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は55,547百万円となり、前連結会計年度の45,155百万円から10,392百万円(23.0%)増加しました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は10,383,432百万円となり、前連結会計年度末の資産合計7,326,801百万円と比べ、3,056,631百万円増加しました。これは主に、クレジットカード事業において貸付金が増加したこと、証券事業において顧客の売買取引増加に伴う金融資産が増加したことや、銀行事業において住宅ローンが増加したこと、顧客からの預金受入に伴い現金及び現金同等物が増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は9,899,322百万円となり、前連結会計年度末の負債合計6,870,124百万円と比べ、3,029,198百万円増加しました。これは主に、手元流動性を高めるため、社債及び借入金が増加したことに加え、証券事業において顧客の売買取引増加に伴う金融負債の増加や、銀行事業において顧客からの預金が増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は484,110百万円となり、前連結会計年度末の資本合計456,677百万円と比べ、27,433百万円増加しました。これは主に、親会社である楽天株式会社への配当、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融商品の時価の下落により減少したものの、当期利益による利益剰余金、及び新たに連結子会社となった樂天國際商業銀行股份有限公司に係る非支配持分により増加しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,574,767百万円増加し、2,883,879百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,023,808百万円の資金流入(前連結会計年度は313,978百万円の資金流入)となりました。これは主に、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が386,707百万円、カード事業の貸付金の増加による資金流出が204,590百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が1,552,528百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、41,821百万円の資金流出(前連結会計年度は142,578百万円の資金流出)となりました。これは主に、無形資産の取得による資金流出が30,036百万円、保険事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が15,327百万円(有価証券の取得による資金流出が75,676百万円、売却及び償還による資金流入が60,349百万円)となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、594,408百万円の資金流入(前連結会計年度は109,201百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が247,774百万円となった一方で、短期借入金の増加による資金流入が411,429百万円、長期借入れによる資金流入が321,250百万円、コマーシャル・ペーパーの増加による資金流入が99,500百万円となったことによるものです。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当事項はありません。また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に各セグメントの状況を記載しています。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
2019年4月の組織再編により、クレジットカード事業、銀行事業、証券事業、保険事業を報告セグメントとしています。そのため、当期においては、クレジットカード事業以外のセグメントの前年同期との比較のために、当連結会計年度に加え、当第4四半期連結会計期間での比較を記載しており、クレジットカード事業以外のセグメントにおいては、前期比較は第4四半期連結会計期間にて行っています。
また、セグメントごとの分析については当社グループ内部取引控除前の数値です。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。以下、セグメント単位で経営成績等の分析・検討内容を記載しています。
(クレジットカード事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 231,823 | 262,548 | 30,725 | 13.3% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 32,374 | 36,827 | 4,453 | 13.8% |
(単位:百万円)
前第4四半期 連結会計期間 (自 2019年10月1日 至 2019年12月31日) | 当第4四半期 連結会計期間 (自 2020年10月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 64,424 | 69,196 | 4,772 | 7.4% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 7,897 | 6,807 | △1,090 | △13.8% |
クレジットカード事業セグメントでは、2019年10月から2020年6月まで実施された政府のキャッシュレス・消費者還元事業の追い風もあり順調に推移していましたが、2020年2月下旬以降は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による国内及び世界経済全体の経済活動の落ち込みの影響が徐々に表れ、特に2020年4月7日に緊急事態宣言が発出されて以降は外出自粛の広がりや大規模商業施設等が休業や営業時間短縮となるなど、国内の経済活動が停滞しました。2020年5月下旬に地域ごとに順次緊急事態宣言が解除されて以降は徐々に消費が回復し、コロナ禍における押し下げ影響はあるものの、引き続きカード会員数及びショッピング取扱高が伸長いたしました。その一方で、ショッピングリボルビング残高及びキャッシング残高については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による人々の行動様式の変容による需要減少の影響を受けました。
そのような環境下において、楽天グループ各社のサイト上での当社のバナー広告の展開や、テレビCMやWebCMの放送による認知度向上に加え、JCBブランドにて、楽天カードディズニー・デザインでのミニーマウスデザインの投入や、Mastercardブランドにて、みちのく銀行デザインの投入等により会員数は2,155万人(前年同期末比13.5%増)となりました。また、会員数の伸長及び利用促進キャンペーン活動を継続的に行った結果、主要KPIであるショッピング取扱高は11兆4,691億16百万円(前年同期比21.3%増)となり、コロナ禍においても2桁成長を維持することができました。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により、ショッピングリボルビングやキャッシングへの消費者需要は徐々に回復しているもののコロナ禍以前の水準までは回復しておらず、ショッピングリボルビング残高は6,198億38百万円(前年同期末比0.9%増)と微増となり、キャッシング残高は1,196億74百万円(前年同期末比11.6%減)と減少となりました。
結果として、当連結会計年度において、売上収益は262,548百万円(前年同期比13.3%増)となりました。
また、債権回収におきましては、与信管理を適切に行ったこと等により、貸倒関連費用比率の上昇はなく、資産の健全性を維持できました。また、広告宣伝費の抑制にも取り組みました。
以上の結果から、セグメント損益は36,827百万円(前年同期比13.8%増)となりました。
(銀行事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 67,443 | 95,610 | 28,167 | 41.8% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 20,613 | 27,188 | 6,575 | 31.9% |
(単位:百万円)
前第4四半期 連結会計期間 (自 2019年10月1日 至 2019年12月31日) | 当第4四半期 連結会計期間 (自 2020年10月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 22,955 | 24,704 | 1,749 | 7.6% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 7,002 | 6,619 | △383 | △5.5% |
銀行事業セグメントでは、楽天カード株式会社との協業施策等の楽天グループ間でのシナジー効果を目指した取り組み等により、主要KPIである銀行口座数が伸長し、991万口座(前年同期末比20.0%増)となりました。また、銀行口座数の伸長及び給与受け取り口座や自動引落口座獲得のためのプロモーション活動の結果、預金残高は4兆8,881億17百万円(前年同期末比47.0%増)となりました。また、2020年1月に住宅ローンの団体信用生命保険に、がん保障特約を新たに追加するなど、サービスの拡充を実施いたしました。それらの取組により、当連結会計年度において資産が順調に積みあがった結果、売上収益は95,610百万円となりました。
営業費用は業容拡大により増加しておりますが、結果としてセグメント損益は27,188百万円となりました。
当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症による影響により、カードローン残高の減少や、金融緩和政策の実施等による売上収益へのマイナス影響があった一方、銀行口座数の伸長に伴い運用資産や決済件数が順調に拡大したことにより、売上収益は24,704百万円(前年同期比7.6%増)となりました。一方で、営業費用においては、銀行口座数伸長に伴うプロモーション活動により、マーケティング費用が増加し、その結果セグメント損益は6,619百万円(前年同期比5.5%減)となりました。
(証券事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 41,847 | 73,415 | 31,568 | 75.4% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 7,923 | 16,835 | 8,912 | 112.5% |
(単位:百万円)
前第4四半期 連結会計期間 (自 2019年10月1日 至 2019年12月31日) | 当第4四半期 連結会計期間 (自 2020年10月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 14,353 | 20,088 | 5,735 | 40.0% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 2,485 | 4,195 | 1,710 | 68.8% |
証券事業セグメントでは、投信積立で楽天カード決済が可能となるサービスや楽天ポイントなどで投資信託や国内株式が購入できるポイント投資サービスなど、楽天グループ間でのシナジー効果を目指した継続的な取り組みにより、主要KPIである証券総合口座数は508万口座(前年同期末比35.2%増)及び証券預かり資産残高(楽天銀行との口座連携サービスにおいて、自動入出金(スイープ)を設定している顧客の楽天銀行普通預金残高も含む)は9兆9,860億43百万円(前年同期末比44.9%増)となりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響による金融市場のボラティリティの上昇による株式の売買高の増加もあり、当連結会計年度においては、売上収益は73,415百万円となりました。営業費用は業容拡大により増加しておりますが、結果として、セグメント損益は16,835百万円となりました。
当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症の影響による金融市場のボラティリティの上昇による国内外の株式の売買高の増加もあり、売上収益は20,088百万円(前年同期比40.0%増)となりました。営業費用は業容拡大により増加しておりますが、売上収益の増加により、セグメント損益は4,195百万円(前年同期比68.8%増)と大幅に増加しました。
(保険事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2019年1月1日 至 2019年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 56,602 | 103,971 | 47,369 | 83.7% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 3,076 | 7,505 | 4,429 | 144.0% |
(単位:百万円)
前第4四半期 連結会計期間 (自 2019年10月1日 至 2019年12月31日) | 当第4四半期 連結会計期間 (自 2020年10月1日 至 2020年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 19,649 | 25,033 | 5,384 | 27.4% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 2,665 | 2,937 | 272 | 10.2% |
保険事業セグメントでは、楽天保険の総合窓口の開設により、楽天生命、楽天損保、楽天ペット保険が提供する保険商品のお客様窓口を一本化し、ご契約者様のお手続きをワンストップで受けることができるようにすることで、ユーザーにとって利便性の高い保険サービスを提供しています。また、楽天グループ間でのシナジーの最大化を図るべく、楽天IDを使ったネット経由での楽天生命、楽天損保、楽天ペット保険の対象商品のご加入者様に、保険料支払い額の1%分の楽天ポイントを還元するサービスを2019年12月より開始しました。また、認知度向上のためテレビCMを放映しました。これらの取組等により、保険事業セグメントの主要KPIである楽天生命保険の保有契約件数(共済事業及び1年定期ガン保険の契約を除く)は、46.6万件(前年同期末比6.9%増)となりました。また、楽天損害保険の自動車保険、住宅向け火災保険、インターネット申込保険の新規契約件数は19.4万件(前年同期比22.5%増)となりました。
ユーザーにとって利便性の高い保険サービスの提供及び、楽天グループ間でのシナジーの最大化を目指す取り組み等を行っており、当連結会計年度においては、売上収益は103,971百万円となりました。また、業容拡大による営業費用の増加により、結果として、セグメント損益は7,505百万円となりました。
当第4四半期連結会計期間においては、新型コロナウイルス感染症の影響により保険の対面販売が減少した一方で、インターネット経由での販売が増加したこと等により、売上収益は25,033百万円(前年同期比27.4%増)となりました。業容拡大により営業費用は増加しておりますが、売上収益の増加により、セグメント損益は前年同期比2,937百万円(前年同期比10.2%増)となりました。
以上により、当連結会計年度においては、クレジットカード事業の伸長と業績の拡大に加え、組織再編による連結子会社の増加もあり、セグメント損益は88,355百万円(前年同期比38.1%増)となりました。また、当第4四半期連結会計期間においては、当第2四半期連結会計期間及び第3四半期連結会計期間に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞によるマイナス影響があった一方、金融市場のボラティリティが上昇する等による環境下で証券事業が好調な影響もあり、セグメント損益は20,558百万円(前年同期比2.5%増)となりました。
今後の施策として、引き続きキャッシュレス決済の社会全体への浸透を追い風として、クレジットカード事業を中心に、新規会員の獲得及びクレジットカード利用促進に向けた効果的かつ効率的なマーケティング戦略を行っていきます。また、当社グループの顧客基盤を最大限に活用し、各社間でのクロスユースを促進することで、当社グループ間でのシナジーを更に発揮していきます。なお、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景気の不透明さは残っておりますが、資産の健全性、財務の安定性を維持しつつ、各事業のKPI、売上収益、Non-GAAP営業利益への影響を注意深く見ていきます。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするために、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行う事、また、各社の高い財務健全性を維持するために、十分な流動性を確保することが重要だと認識しており、低利かつ安定的な調達を行い、十分な流動性の確保に努めています。
なお、当社の当連結会計年度末時点の信用格付けは、JCRから、発行体格付け「A(シングルA)」を取得しています。また、R&Iからは発行体格付け「A-(シングルAマイナス)」を取得しています。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループにおける重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計上の見積り及び判断(1)重要な会計上の見積り及び仮定」に記載しています。