有価証券報告書-第20期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/27 15:22
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当連結会計年度(2019年1月1日から2019年12月31日)における当社グループの経営成績等の状況については以下のとおりです。なお、当連結会計年度において、当社は2019年4月1日付の会社分割による楽天グループ企業の組織再編に基づき楽天銀行株式会社、楽天証券株式会社、楽天インシュアランスホールディングス株式会社及び楽天投信投資顧問株式会社等を連結子会社としており、そのため、楽天銀行株式会社、楽天証券株式会社、並びに楽天インシュアランスホールディングス株式会社とその主要子会社である楽天生命保険株式会社、楽天損害保険株式会社等の経営成績等については、2019年4月1日から2019年12月31日の状況です。
(1) 経営成績等の状況
当社グループでは、売上収益、Non-GAAP営業利益を経営成績評価上の重要な指標としております。当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。
なお、前期比変動の主な要因は、楽天グループ企業の組織再編に伴い、2019年4月1日を効力発生日として、当社を承継会社とする吸収分割方式により、楽天銀行株式会社、楽天証券株式会社、楽天インシュアランスホールディングス株式会社及び楽天投信投資顧問株式会社の株式を当社の親会社である楽天株式会社より無対価で承継したことにより連結対象会社が大幅に増加したためです。
① 当期の経営成績
当連結会計年度における国内経済は、消費税引上げや、自然災害の発生等により10-12月期以降、景気は減速傾向となりました。また、世界経済においても、米中貿易摩擦拡大や中東及び香港の地政学リスクの拡大への懸念、英国のEU離脱の問題により減速傾向となりました。
このような環境の中、上述の組織再編による連結子会社の大幅な増加に加え、クレジットカード事業セグメントを中心に、以下のように売上収益、Non-GAAP営業利益ともに大きく増加し、着実な成長を果たすことができました。なお、セグメントごとの分析は「(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。また、当第2四半期より、楽天グループの共通費の配賦方法を変更したため、Non-GAAP営業利益を遡及修正しています。
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
増減額増減率
売上収益188,756369,860181,10495.9%
Non-GAAP営業利益26,99063,98636,996137.1%

Non-GAAP営業利益から営業利益への調整は、以下の通りです。
(単位:百万円)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
Non-GAAP営業利益63,986
無形資産償却費△1,798
株式報酬費用△737
その他の調整項目6,173
営業利益67,624


② 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は369,860百万円となり、前連結会計年度の188,756百万円から181,104百万円(95.9%)増加しました。これは連結子会社の増加に加え、クレジットカード事業における『楽天カード』の会員基盤拡大による包括信用購入あっせん収益及び融資収益の増加が寄与しました。
なお、前連結会計年度において、当社グループは、楽天銀行株式会社に対して信用保証を提供しています。当該顧客に対する売上収益は、19,165百万円で連結売上収益の10.2%です。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は300,327百万円となり、前連結会計年度の150,124百万円から150,203百万円(100.1%)増加しました。これは連結子会社の増加に加え、クレジットカード事業における売上収益の更なる成長を目指した販促活動に伴う費用が増加したためです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は67,624百万円となり、前連結会計年度の38,473百万円から29,151百万円(75.8%)増加しました。これは連結子会社の増加に加え、クレジットカード事業の好調が寄与したためです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度における税引前当期利益は67,409百万円となり、前連結会計年度の38,474百万円から28,935百万円(75.2%)増加しました。これは、営業利益で説明した要因等により利益が増加したためです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は22,266百万円となり、前連結会計年度の11,222百万円から11,044百万円(98.4%)増加しました。
(当期利益)
以上の結果、当期利益は45,143百万円となり、前連結会計年度の27,252百万円から17,891百万円(65.7%)増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は45,155百万円となり、前連結会計年度の27,253百万円から17,902百万円(65.7%)増加しました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は7,326,801百万円となり、前連結会計年度末の資産合計1,755,603百万円と比べ、5,571,198百万円増加しました。これは主に、連結対象会社が増加したことで、証券事業の金融資産、銀行事業の有価証券・貸付金及び保険事業の有価証券等の資産が増加したためです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は6,870,124百万円となり、前連結会計年度末の負債合計1,666,007百万円と比べ、5,204,117百万円増加しました。これは主に、連結対象会社が増加したことで、銀行事業の預金、証券事業の金融負債及び保険事業の保険契約準備金等が増加したためです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は456,677百万円となり、前連結会計年度末の資本合計89,596百万円と比べ、367,081百万円増加しました。これは主に、当社を承継会社とする吸収分割方式により、楽天銀行株式会社、楽天証券株式会社、楽天インシュアランスホールディングス株式会社及び楽天投信投資顧問株式会社の株式を当社の親会社である楽天株式会社より無対価で承継したことにより利益剰余金が増加したためです。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,160,602百万円増加し、1,309,112百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、313,978百万円の資金流入(前連結会計年度は242,292百万円の資金流出)となりました。これは主に、カード事業の貸付金の増加による資金流出が364,138百万円となった一方で、連結対象会社が増加したことで、銀行事業の預金の増加による資金流入が681,117百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、142,578百万円の資金流出(前連結会計年度は13,559百万円の資金流出)となりました。これは主に、連結対象会社が増加したことで、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が77,994百万円(有価証券の取得による資金流出が328,394百万円、売却及び償還による資金流入が250,400百万円)、有形固定資産及び無形資産の取得による資金流出が39,653百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、109,201百万円の資金流入(前連結会計年度は307,102百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が303,508百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が428,322百万円となったことによるものです。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当事項はございません。また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に各セグメントの状況を記載しております。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
2019年4月の組織再編により、当期より、クレジットカード事業、銀行事業、証券事業、保険事業を報告セグメントとしました。
なお、クレジットカード事業以外のセグメントについては前連結会計年度との比較を省略しています。また、クレジットカード事業における前連結会計年度との比較のため、セグメントごとの分析については当社グループ内部取引控除前の数値です。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。以下、セグメント単位で経営成績等の分析・検討内容を記載しております。
(クレジットカード事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
増減額増減率
売上収益188,756231,82343,06722.8%
セグメント損益
(Non-GAAP営業利益)
26,99032,3745,38419.9%

クレジットカード事業セグメントでは、10月より開始された政府のキャッシュレス・消費者還元事業の追い風もあり、引き続きカード会員が増加し、グループ内外でのショッピング取扱高やリボルビング残高も、業界平均を上回る高い成長を収めました。
具体的には、楽天グループ各社のサイト上に当社のバナー広告の展開や、テレビCMやWebCMの放送による認知度向上に加え、VISAブランド及びAmerican Expressブランドのお買い物パンダデザインカードの投入や、新たにアルペン株式会社と提携したアルペングループ楽天カードの投入等により会員数が伸長し、1,899万人(前期末比14.6%増)となりました。また、会員数の伸長及び積極的なキャンペーン活動を継続的に行った結果、主要KPIであるショッピング取扱高は9兆4,567億97百万円(前期比27.4%増)、ショッピングリボルビング残高は6,140億26百万円(前期末比18.7%増)、キャッシング残高は1,354億20百万円(前期末比15.4%増)まで伸ばすことができました。
結果として、売上収益は231,823百万円となり、前連結会計年度の188,756百万円から43,067百万円(22.8%)増加しました。
また、債権回収におきましては、未収債権の回収強化のため全社を挙げての回収業務を継続実施したことにより、資産の健全性を維持できました。楽天カードのステージ2以上の債権残高は798億31百万円(前期末比15.6%増)であり、ショッピング取扱高及び営業債権残高の増加と比較し抑制できております。
一方で、営業費用は、収益のさらなる拡大を目指した積極的な販促活動による販売促進費の増加により増加しました。以上の結果から、セグメント損益は前期比19.9%増の32,374百万円となりました。
(銀行事業)
(単位:百万円)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
売上収益67,443
セグメント損益
(NonGAAP営業利益)
20,613

銀行事業セグメントでは、楽天カード株式会社との協業施策等の楽天グループ間でのシナジー効果を目指した取り組みや、銀行口座獲得キャンペーン等を継続的に行った結果、主要KPIである銀行口座数が伸長し、825万口座(前期末比17.5%増)となりました。また、継続的な営業活動の結果、預金残高は3兆3,242億47百万円(前期末比34.0%増)となりました。資産が順調に積みあがった結果、売上収益は67,443百万円となりました。
営業費用は業況拡大により増加しておりますが、貸倒引当金繰入額は低位で推移しております。結果としてセグメント損益は20,613百万円となりました。
(証券事業)
(単位:百万円)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
売上収益41,847
セグメント損益
(NonGAAP営業利益)
7,923

証券事業セグメントでは、投信積立で楽天カード決済が可能となるサービスや楽天ポイントなどで投資信託や国内株式が購入できるポイント投資サービスなど、楽天グループとのシナジー効果を目指した継続的な取り組みにより、主要KPIである証券総合口座数は376万口座(前期末比24.5%増)及び証券預かり資産残高は6兆8,932億65百万円(前期末比35.8%増)となりました。一方、国内株式市場の低迷により株式の売買高が減少していることに加え、各種手数料の引き下げや為替のボラティリティ低下による影響もあり、売上収益は41,847百万円となりました。費用面では積極的な新規顧客獲得を行いました。結果として、セグメント損益は7,923百万円となりました。
(保険事業)
(単位:百万円)
当連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
売上収益56,602
セグメント損益
(NonGAAP営業利益)
3,076

保険事業セグメントでは、楽天保険の総合窓口の開設により、楽天生命、楽天損保、楽天ペット保険が提供する保険商品のお客様窓口を一本化し、ご契約者様のお手続きをワンストップで受けることができるようにすることで、お客様にとって利便性の高い保険サービスを提供しています。また、楽天グループ間でのシナジーの最大化を図るべく、楽天IDを使ったネット経由での楽天生命、楽天損保、楽天ペット保険のご加入者様に、保険料支払い額の1%分の楽天ポイントを還元するサービスを開始しました。これらの取組等により、保険事業セグメントの主要KPIである楽天生命保険の保有契約件数(共済事業及び1年定期ガン保険の契約を除く)は、43.6万件(前期比7.6%増)となりました。また、保険収支改善のための保険引受審査強化等の施策により楽天損害保険の自動車保険、住宅向け火災保険、インターネット申込保険の新規契約件数は16.8万件(前期比0.5%減)となりました。
お客様にとって利便性の高い保険サービスの提供及び、楽天グループ間でのシナジーの最大化を目指す取り組み等を行っており、売上収益は56,602百万円となりました。また、楽天損保において自然災害による保険金の支払いが発生した一方で、ペーパーレス化や事務の自動化等の推進による営業費用削減の取組を行いました。結果として、セグメント利益は3,076百万円となりました。
以上により、クレジットカード事業の伸長と業績の拡大に加え、組織再編による連結子会社の大幅な増加により、セグメント損益は前期比137%増の63,986百万円となりました。
今後の施策として、引き続きキャッシュレス決済の社会全体への浸透を追い風として、クレジットカード事業を中心に、新規会員の獲得に向けた積極的なプロモーション活動と、クレジットカード利用促進に向けた効果的かつ効率的なマーケティング戦略を行っていきます。また、当社グループの顧客基盤を最大限に活用し、各社間でのクロスユースを促進することで、当社グループ内でのシナジーを更に発揮してまいります。これらにより、資産の健全性、財務の安定性を維持しつつも、各事業のKPIの拡大に努め、売上収益、Non-GAAP営業利益の更なる増加を目指してまいります。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするために、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行う事、また、各社の高い財務健全性を維持するために、十分な流動性を確保することが重要だと認識しております。具体的な資金調達手法および資金調達については、低利かつ安定的な調達を行い、十分な流動性の確保に努めております。
なお、当社の当連結会計年度末時点の信用格付けは、JCRから、発行体格付け「A(シングルA)」を取得しております。また、R&Iからは発行体格付け「A-(シングルAマイナス)」を取得しております。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループにおける重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計上の見積り及び判断 (1) 重要な会計上の見積り及び仮定」に記載しております。
(3) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。
当連結会計年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)
① 売上収益
当社グループが顧客による継続的なサービス利用を促す目的等で導入しているポイントプログラムにおけるポイントに関する将来の負担について、日本基準では、ポイント引当金繰入額として販売費及び一般管理費に計上していますが、IFRSでは、そのうち、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に従って会計処理される、顧客に支払われる対価に該当するポイントは、付与時に売上収益から控除しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約88,594百万円減少しています。
当社グループにおけるアクワイアリング加盟店手数料等について、日本基準では売上高を計上し、関連する売上原価を総額表示していますが、IFRSでは、対象となる取引が、IFRS第15号に従って会計処理される、当社グループが他の第三者の代理人の立場で行われる取引に該当するものと判断されるため、売上収益を純額表示しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約17,048百万円減少しています。
② 営業利益
のれんは、日本基準では一定の期間に亘って規則的に償却されますが、IFRSでは償却されず、減損テストの実施が求められています。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約3,001百万円増加しています。
IFRSでは、顧客との契約獲得のための増分コスト及び契約に直接関連する履行コストの内、回収可能であると見込まれる部分について資産として認識しています。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約10,489百万円増加しています。