有価証券報告書-第22期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)
当連結会計年度(2021年1月1日から2021年12月31日)における当社グループの経営成績等の状況については以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1)経営成績等の状況
当社グループでは、売上収益、Non-GAAP営業利益を経営成績評価上の重要な指標としています。当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
① 当期の経営成績
当連結会計年度における国内経済及び世界経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症の流行による、海外渡航制限や飲食店の営業自粛・休業により、旅行観光や外食産業等を中心に大きな影響を受けました。日本国内ではワクチン接種の普及に伴い、消費需要は回復しつつありましたが、依然としてコロナ禍以前の水準には戻っていません。新種の変異株の発生等、完全に感染拡大が収まる見通しについては不透明なため、引き続き感染状況について注視していきます。
このような環境の中、当社グループは以下のように成長を果たすことができました。なお、セグメントごとの分析は「(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。
(単位:百万円)
Non-GAAP営業利益から営業利益への調整は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
② 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は525,719百万円となり、前連結会計年度の494,055百万円から31,664百万円(6.4%)増加しました。これはクレジットカード事業における『楽天カード』の会員基盤拡大による収益の増加、証券事業における米国株を中心とした株式売買の手数料収益及び信用取引収益の増加、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴う手数料収益の増加が主な要因です。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は430,549百万円となり、前連結会計年度の402,758百万円から27,791百万円(6.9%)増加しました。これはクレジットカード事業における業容の拡大による費用の増加、証券事業における金融市場のボラティリティの上昇による取引関連費用の増加、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴うプロモーション活動によるマーケティング費用の増加、及び保険事業における業容の拡大による費用の増加等が主な要因です。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は95,789百万円となり、前連結会計年度の88,754百万円から7,035百万円(7.9%)増加しました。これは各セグメントとも業績が好調に推移したためです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度における税引前当期利益は95,925百万円となり、前連結会計年度の88,945百万円から6,980百万円(7.8%)増加しました。これは、営業利益で説明した要因等により利益が増加したためです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は29,626百万円となり、前連結会計年度の33,919百万円から4,293百万円(12.7%)減少しました。
(当期利益)
以上の結果、当期利益は66,299百万円となり、前連結会計年度の55,026百万円から11,273百万円(20.5%)増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は67,205百万円となり、前連結会計年度の55,547百万円から11,658百万円(21.0%)増加しました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は13,884,877百万円となり、前連結会計年度末の資産合計10,383,432百万円と比べ、3,501,445百万円増加しました。これは主に、銀行事業における顧客からの預金の増加に伴う現金及び現金同等物の増加や、貸付金の増加、証券事業における顧客の売買取引増加に伴う金融資産の増加、クレジットカード事業における貸付金が増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は13,352,739百万円となり、前連結会計年度末の負債合計9,899,322百万円と比べ、3,453,417百万円増加しました。これは主に、銀行事業における顧客からの預金の増加、証券事業における顧客の売買取引増加に伴う金融負債の増加、手元流動性を高めるための借入金が増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は532,138百万円となり、前連結会計年度末の資本合計484,110百万円と比べ、48,028百万円増加しました。これは主に、親会社である楽天株式会社(現 楽天グループ株式会社)への配当、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の下落により減少したものの、当期利益による利益剰余金、及び為替変動の影響により増加しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,350,016百万円増加し、4,233,895百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、983,062百万円の資金流入(前連結会計年度は1,023,808百万円の資金流入)となりました。これは主に、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が1,092,153百万円、カード事業の貸付金の増加による資金流出が354,240百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が2,305,796百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、231,504百万円の資金流出(前連結会計年度は41,821百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が205,128百万円(有価証券の取得による資金流出が765,206百万円、売却及び償還による資金流入が560,078百万円)、無形資産の取得による資金流出が27,678百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、589,720百万円の資金流入(前連結会計年度は594,408百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が137,926百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が577,229百万円、短期借入金の増加による資金流入が116,519百万円となったことによるものです。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当事項はありません。また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に各セグメントの状況を記載しています。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。以下、セグメント単位で経営成績等の分析・検討内容を記載しています。
(クレジットカード事業)
(単位:百万円)
クレジットカード事業セグメントでは、首都圏を中心とする緊急事態宣言の発出、延長等による、事業者への時短要請、休業要請に伴い、消費需要の減退等の影響を受けたものの、引き続きカード発行枚数(注)とショッピング取扱高を伸ばすことができました。ショッピングリボルビング、キャッシング残高については、前年同期末比で減少しているものの、四半期ごとの減少幅は徐々に縮小しています。
そのような環境下において、楽天グループ各社のサイト上に当社のバナー広告の展開やテレビCM、Web CMの放送による認知度向上に加え、6月に本格開始した2枚目の楽天カードの発行、カードデザインのリニューアル、株式会社ゆうちょ銀行と連携した新たなデザインカードの発行等により、カード発行枚数は2,510万枚(前年同期末比16.4%増)と、2,500万枚を突破しました。また、2枚目のカード発行についてはお客様より好評いただいており、累計100万枚を突破しました。また、カード発行枚数の伸長及び効果的なキャンペーン活動を継続的に行った結果、主要KPIであるショッピング取扱高は14兆4,523億26百万円(前年同期比26.0%増)となりました。一方、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、ショッピングリボルビング残高は6,119億46百万円(前年同期末比1.3%減)、キャッシング残高は1,193億1百万円(前年同期末比0.3%減)となりました。
結果として、当連結会計年度において、売上収益は281,432百万円(前年同期比7.2%増)となりました。
また、引き続き債権回収の効率化を図ったこと、及び新型コロナウイルス感染症の影響での資金需要の減退に伴う残高の減少等により、貸倒関連費用は前年同期比で減少した一方で、会員獲得に係る費用等、業容拡大に伴い費用が増加したため、営業費用は前年同期比で増加しました。
以上の結果から、セグメント損益は38,409百万円(前年同期比4.3%増)となりました。
(銀行事業)
(単位:百万円)
銀行事業セグメントでは、当社との協業施策等の楽天グループ間でのシナジー効果を目指した取り組み等により、銀行口座獲得に注力した結果、主要KPIである銀行口座数が伸長し、1,182万口座(前年同期末比19.3%増)となりました。銀行口座数の伸長に伴い、預金残高は7兆2,630億93百万円(前年同期末比48.6%増)となりました。楽天証券との口座連携サービス「マネーブリッジ」はお客様から好評いただいており、2021年12月には、設定口座数が300万口座、預金残高が4兆円を突破しました。また、お客様の利便性の向上のため、口座振替及び楽天銀行コンビニ支払サービス(アプリで払込票支払)の対応先の拡大、楽天ペイ(アプリ決済)における楽天銀行口座からの即時払いサービスの開始等、サービスの拡充を実施しました。それらの取組により、口座数が伸長し、手数料収益が順調に増加した結果、売上収益は102,798百万円(前年同期比7.5%増)となりました。
営業費用については業容拡大に伴い、販売促進費用等が増加しています。また、台湾において2021年1月に営業を開始した樂天國際商業銀行が創業赤字を計上しており、結果としてセグメント損益は27,558百万円(前年同期比1.4%増)となりました。
(証券事業)
(単位:百万円)
証券事業セグメントでは、投信積立で楽天カード決済が可能となるサービスや楽天ポイント等で投資信託や国内株式が購入できるポイント投資サービス等、楽天グループとのシナジー効果を目指した継続的な取組により、主要KPIである証券総合口座数は714万口座(前年同期末比40.6%増)及び証券預かり資産残高(楽天銀行との口座連携サービスにおいて、自動入出金(スイープ)を設定している顧客の楽天銀行普通預金残高も含む)は15兆3,656億52百万円(前年同期末比53.9%増)となりました。同社は、2021年12月に米国株式のサービス拡充として、米株積立とポイント投資(米国株式 円貨決済)を開始しました。また、投資情報メディア「トウシル」の運営や、スマートフォンに特化した新たなロボアドバイザーサービス「らくらく投資」の提供を始める等、既に投資をしている方だけでなく、これから投資を始める方へのサービスの提供にも力を入れています。また、お客様に安心してご利用していただくべく、セキュリティ対策も改善し続けており、9月には特許技術を用いた「ログイン追加認証サービス」を提供開始し、一層のセキュリティ強化を推進しています。
昨年から引き続き、金融市場のボラティリティの上昇による、米国株式をはじめとする株式売買の手数料収益の増加や、信用取引による金利収益の増加により、結果として当連結会計年度の売上収益は90,059百万円(前年同期比22.7%増)となりました。営業費用は業容拡大による支払手数料の増加や広告宣伝費の増加等により、引き続き増加していますが、結果として、セグメント損益は18,562百万円(前年同期比10.3%増)となりました。
(保険事業)
(単位:百万円)
保険事業セグメントでは、楽天保険の総合窓口の開設により、楽天生命保険、楽天損害保険、楽天ペット保険が提供する保険商品のお客様窓口を一本化し、ご契約者様のお手続きをワンストップで受けることができるようにすることで、お客様にとって利便性の高い保険サービスを提供しています。2021年2月1日には楽天生命対面募集代理店にて損害保険、ペット保険の取扱いを本格的に開始しました。また、楽天グループ間でのシナジーの最大化を図るべく、楽天IDを使った楽天生命保険、楽天損害保険、楽天ペット保険の対象商品のご加入者様に、保険料支払い額の1%分の楽天ポイントを還元するサービス(所定の条件があります)は開始以来好評いただいており、申込数が伸長しました。これらの取組等により、保険事業セグメントの主要KPIである楽天生命保険の保有契約件数(共済事業及び1年定期ガン保険の契約を除く)は、48.5万件(前年同期末比4.0%増)となりました。また、注力している楽天損害保険のインターネット申込保険の新規契約件数は16.7万件(前年同期比16.1%増)となりました。
楽天生命保険においては7月よりウェブでの給付金請求に対してポイントの進呈を開始する等、ペーパーレス化を促進させることで、業務効率の改善を図っています。また、8月に販売開始した「認知症保険」は順調に申込数を伸ばしています。楽天損害保険では、楽天グループ内での付帯保険の販売等グループシナジーの向上に努めつつ、引き続き保険引受の適正化を図っており、保険収益は前年同期比で減少しましたが、損害率は着実に改善しています。 以上の結果から、売上収益は97,273百万円(前年同期比6.4%減)、セグメント損益は9,074百万円(前年同期比20.9%増)となりました。
以上により、当連結会計年度においては、当社グループのNon-GAAP営業利益は93,603百万円(前年同期比5.9%増)となりました。
今後の施策として、クレジットカード事業においては、引き続きキャッシュレス決済の社会全体への浸透を追い風として、新規会員の獲得及びクレジットカード利用促進に向けた効果的かつ効率的なマーケティング戦略を行い、中期的な戦略として掲げた「トリプル3」(カード発行枚数「3,000万枚」、ショッピング取扱高「30兆円」、取扱高シェア「30%」)の達成を目指します。また、当社グループの顧客基盤を最大限に活用し、各社間でのクロスユースを促進することで、当社グループ間でのシナジーを更に発揮していきます。なお、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景気の不透明さは残っていますが、資産の健全性、財務の安定性を維持しつつ、各事業のKPI、売上収益、Non-GAAP営業利益への影響を注意深く見ていきます。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするために、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行う事、また、各社の高い財務健全性を維持するために、十分な流動性を確保することが重要だと認識しており、低利かつ安定的な調達を行い、十分な流動性の確保に努めています。
なお、当社の当連結会計年度末時点の信用格付けは、JCRから、発行体格付け「A(シングルA)」を取得しています。また、R&Iからは発行体格付け「A-(シングルAマイナス)」を取得しています。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループにおける重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計上の見積り及び判断(1)重要な会計上の見積り及び仮定」に記載しています。
(1)経営成績等の状況
当社グループでは、売上収益、Non-GAAP営業利益を経営成績評価上の重要な指標としています。当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
① 当期の経営成績
当連結会計年度における国内経済及び世界経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症の流行による、海外渡航制限や飲食店の営業自粛・休業により、旅行観光や外食産業等を中心に大きな影響を受けました。日本国内ではワクチン接種の普及に伴い、消費需要は回復しつつありましたが、依然としてコロナ禍以前の水準には戻っていません。新種の変異株の発生等、完全に感染拡大が収まる見通しについては不透明なため、引き続き感染状況について注視していきます。
このような環境の中、当社グループは以下のように成長を果たすことができました。なお、セグメントごとの分析は「(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 494,055 | 525,719 | 31,664 | 6.4% |
Non-GAAP営業利益 | 88,355 | 93,603 | 5,248 | 5.9% |
Non-GAAP営業利益から営業利益への調整は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) | |
Non-GAAP営業利益 | 88,355 | 93,603 |
無形資産償却費 | △4,456 | △3,403 |
株式報酬費用 | △922 | △1,030 |
その他の調整項目 | 5,777 | 6,619 |
営業利益 | 88,754 | 95,789 |
② 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は525,719百万円となり、前連結会計年度の494,055百万円から31,664百万円(6.4%)増加しました。これはクレジットカード事業における『楽天カード』の会員基盤拡大による収益の増加、証券事業における米国株を中心とした株式売買の手数料収益及び信用取引収益の増加、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴う手数料収益の増加が主な要因です。
(営業費用)
当連結会計年度における営業費用は430,549百万円となり、前連結会計年度の402,758百万円から27,791百万円(6.9%)増加しました。これはクレジットカード事業における業容の拡大による費用の増加、証券事業における金融市場のボラティリティの上昇による取引関連費用の増加、銀行事業における銀行口座数の伸長に伴うプロモーション活動によるマーケティング費用の増加、及び保険事業における業容の拡大による費用の増加等が主な要因です。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は95,789百万円となり、前連結会計年度の88,754百万円から7,035百万円(7.9%)増加しました。これは各セグメントとも業績が好調に推移したためです。
(税引前当期利益)
当連結会計年度における税引前当期利益は95,925百万円となり、前連結会計年度の88,945百万円から6,980百万円(7.8%)増加しました。これは、営業利益で説明した要因等により利益が増加したためです。
(法人所得税費用)
当連結会計年度における法人所得税費用は29,626百万円となり、前連結会計年度の33,919百万円から4,293百万円(12.7%)減少しました。
(当期利益)
以上の結果、当期利益は66,299百万円となり、前連結会計年度の55,026百万円から11,273百万円(20.5%)増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は67,205百万円となり、前連結会計年度の55,547百万円から11,658百万円(21.0%)増加しました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は13,884,877百万円となり、前連結会計年度末の資産合計10,383,432百万円と比べ、3,501,445百万円増加しました。これは主に、銀行事業における顧客からの預金の増加に伴う現金及び現金同等物の増加や、貸付金の増加、証券事業における顧客の売買取引増加に伴う金融資産の増加、クレジットカード事業における貸付金が増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は13,352,739百万円となり、前連結会計年度末の負債合計9,899,322百万円と比べ、3,453,417百万円増加しました。これは主に、銀行事業における顧客からの預金の増加、証券事業における顧客の売買取引増加に伴う金融負債の増加、手元流動性を高めるための借入金が増加したことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末の資本合計は532,138百万円となり、前連結会計年度末の資本合計484,110百万円と比べ、48,028百万円増加しました。これは主に、親会社である楽天株式会社(現 楽天グループ株式会社)への配当、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の下落により減少したものの、当期利益による利益剰余金、及び為替変動の影響により増加しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,350,016百万円増加し、4,233,895百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、983,062百万円の資金流入(前連結会計年度は1,023,808百万円の資金流入)となりました。これは主に、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が1,092,153百万円、カード事業の貸付金の増加による資金流出が354,240百万円となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が2,305,796百万円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、231,504百万円の資金流出(前連結会計年度は41,821百万円の資金流出)となりました。これは主に、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が205,128百万円(有価証券の取得による資金流出が765,206百万円、売却及び償還による資金流入が560,078百万円)、無形資産の取得による資金流出が27,678百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、589,720百万円の資金流入(前連結会計年度は594,408百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が137,926百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が577,229百万円、短期借入金の増加による資金流入が116,519百万円となったことによるものです。
⑤ 生産、受注及び販売の実績
生産及び受注の実績については、該当事項はありません。また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に各セグメントの状況を記載しています。
(2) 経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。以下、セグメント単位で経営成績等の分析・検討内容を記載しています。
(クレジットカード事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 262,548 | 281,432 | 18,884 | 7.2% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 36,827 | 38,409 | 1,582 | 4.3% |
クレジットカード事業セグメントでは、首都圏を中心とする緊急事態宣言の発出、延長等による、事業者への時短要請、休業要請に伴い、消費需要の減退等の影響を受けたものの、引き続きカード発行枚数(注)とショッピング取扱高を伸ばすことができました。ショッピングリボルビング、キャッシング残高については、前年同期末比で減少しているものの、四半期ごとの減少幅は徐々に縮小しています。
そのような環境下において、楽天グループ各社のサイト上に当社のバナー広告の展開やテレビCM、Web CMの放送による認知度向上に加え、6月に本格開始した2枚目の楽天カードの発行、カードデザインのリニューアル、株式会社ゆうちょ銀行と連携した新たなデザインカードの発行等により、カード発行枚数は2,510万枚(前年同期末比16.4%増)と、2,500万枚を突破しました。また、2枚目のカード発行についてはお客様より好評いただいており、累計100万枚を突破しました。また、カード発行枚数の伸長及び効果的なキャンペーン活動を継続的に行った結果、主要KPIであるショッピング取扱高は14兆4,523億26百万円(前年同期比26.0%増)となりました。一方、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、ショッピングリボルビング残高は6,119億46百万円(前年同期末比1.3%減)、キャッシング残高は1,193億1百万円(前年同期末比0.3%減)となりました。
結果として、当連結会計年度において、売上収益は281,432百万円(前年同期比7.2%増)となりました。
また、引き続き債権回収の効率化を図ったこと、及び新型コロナウイルス感染症の影響での資金需要の減退に伴う残高の減少等により、貸倒関連費用は前年同期比で減少した一方で、会員獲得に係る費用等、業容拡大に伴い費用が増加したため、営業費用は前年同期比で増加しました。
以上の結果から、セグメント損益は38,409百万円(前年同期比4.3%増)となりました。
(銀行事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 95,610 | 102,798 | 7,188 | 7.5% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 27,188 | 27,558 | 370 | 1.4% |
銀行事業セグメントでは、当社との協業施策等の楽天グループ間でのシナジー効果を目指した取り組み等により、銀行口座獲得に注力した結果、主要KPIである銀行口座数が伸長し、1,182万口座(前年同期末比19.3%増)となりました。銀行口座数の伸長に伴い、預金残高は7兆2,630億93百万円(前年同期末比48.6%増)となりました。楽天証券との口座連携サービス「マネーブリッジ」はお客様から好評いただいており、2021年12月には、設定口座数が300万口座、預金残高が4兆円を突破しました。また、お客様の利便性の向上のため、口座振替及び楽天銀行コンビニ支払サービス(アプリで払込票支払)の対応先の拡大、楽天ペイ(アプリ決済)における楽天銀行口座からの即時払いサービスの開始等、サービスの拡充を実施しました。それらの取組により、口座数が伸長し、手数料収益が順調に増加した結果、売上収益は102,798百万円(前年同期比7.5%増)となりました。
営業費用については業容拡大に伴い、販売促進費用等が増加しています。また、台湾において2021年1月に営業を開始した樂天國際商業銀行が創業赤字を計上しており、結果としてセグメント損益は27,558百万円(前年同期比1.4%増)となりました。
(証券事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 73,415 | 90,059 | 16,644 | 22.7% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 16,835 | 18,562 | 1,727 | 10.3% |
証券事業セグメントでは、投信積立で楽天カード決済が可能となるサービスや楽天ポイント等で投資信託や国内株式が購入できるポイント投資サービス等、楽天グループとのシナジー効果を目指した継続的な取組により、主要KPIである証券総合口座数は714万口座(前年同期末比40.6%増)及び証券預かり資産残高(楽天銀行との口座連携サービスにおいて、自動入出金(スイープ)を設定している顧客の楽天銀行普通預金残高も含む)は15兆3,656億52百万円(前年同期末比53.9%増)となりました。同社は、2021年12月に米国株式のサービス拡充として、米株積立とポイント投資(米国株式 円貨決済)を開始しました。また、投資情報メディア「トウシル」の運営や、スマートフォンに特化した新たなロボアドバイザーサービス「らくらく投資」の提供を始める等、既に投資をしている方だけでなく、これから投資を始める方へのサービスの提供にも力を入れています。また、お客様に安心してご利用していただくべく、セキュリティ対策も改善し続けており、9月には特許技術を用いた「ログイン追加認証サービス」を提供開始し、一層のセキュリティ強化を推進しています。
昨年から引き続き、金融市場のボラティリティの上昇による、米国株式をはじめとする株式売買の手数料収益の増加や、信用取引による金利収益の増加により、結果として当連結会計年度の売上収益は90,059百万円(前年同期比22.7%増)となりました。営業費用は業容拡大による支払手数料の増加や広告宣伝費の増加等により、引き続き増加していますが、結果として、セグメント損益は18,562百万円(前年同期比10.3%増)となりました。
(保険事業)
(単位:百万円)
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) | 増減額 | 増減率 | |
売上収益 | 103,971 | 97,273 | △6,698 | △6.4% |
セグメント損益 (Non-GAAP営業利益) | 7,505 | 9,074 | 1,569 | 20.9% |
保険事業セグメントでは、楽天保険の総合窓口の開設により、楽天生命保険、楽天損害保険、楽天ペット保険が提供する保険商品のお客様窓口を一本化し、ご契約者様のお手続きをワンストップで受けることができるようにすることで、お客様にとって利便性の高い保険サービスを提供しています。2021年2月1日には楽天生命対面募集代理店にて損害保険、ペット保険の取扱いを本格的に開始しました。また、楽天グループ間でのシナジーの最大化を図るべく、楽天IDを使った楽天生命保険、楽天損害保険、楽天ペット保険の対象商品のご加入者様に、保険料支払い額の1%分の楽天ポイントを還元するサービス(所定の条件があります)は開始以来好評いただいており、申込数が伸長しました。これらの取組等により、保険事業セグメントの主要KPIである楽天生命保険の保有契約件数(共済事業及び1年定期ガン保険の契約を除く)は、48.5万件(前年同期末比4.0%増)となりました。また、注力している楽天損害保険のインターネット申込保険の新規契約件数は16.7万件(前年同期比16.1%増)となりました。
楽天生命保険においては7月よりウェブでの給付金請求に対してポイントの進呈を開始する等、ペーパーレス化を促進させることで、業務効率の改善を図っています。また、8月に販売開始した「認知症保険」は順調に申込数を伸ばしています。楽天損害保険では、楽天グループ内での付帯保険の販売等グループシナジーの向上に努めつつ、引き続き保険引受の適正化を図っており、保険収益は前年同期比で減少しましたが、損害率は着実に改善しています。 以上の結果から、売上収益は97,273百万円(前年同期比6.4%減)、セグメント損益は9,074百万円(前年同期比20.9%増)となりました。
以上により、当連結会計年度においては、当社グループのNon-GAAP営業利益は93,603百万円(前年同期比5.9%増)となりました。
今後の施策として、クレジットカード事業においては、引き続きキャッシュレス決済の社会全体への浸透を追い風として、新規会員の獲得及びクレジットカード利用促進に向けた効果的かつ効率的なマーケティング戦略を行い、中期的な戦略として掲げた「トリプル3」(カード発行枚数「3,000万枚」、ショッピング取扱高「30兆円」、取扱高シェア「30%」)の達成を目指します。また、当社グループの顧客基盤を最大限に活用し、各社間でのクロスユースを促進することで、当社グループ間でのシナジーを更に発揮していきます。なお、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景気の不透明さは残っていますが、資産の健全性、財務の安定性を維持しつつ、各事業のKPI、売上収益、Non-GAAP営業利益への影響を注意深く見ていきます。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループでは、グループ全体における持続的成長の実現を可能とするために、安定的かつ多様な資金調達手段の確保を行う事、また、各社の高い財務健全性を維持するために、十分な流動性を確保することが重要だと認識しており、低利かつ安定的な調達を行い、十分な流動性の確保に努めています。
なお、当社の当連結会計年度末時点の信用格付けは、JCRから、発行体格付け「A(シングルA)」を取得しています。また、R&Iからは発行体格付け「A-(シングルAマイナス)」を取得しています。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループにおける重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計上の見積り及び判断(1)重要な会計上の見積り及び仮定」に記載しています。