有価証券報告書-第75期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 17:10
【資料】
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【項目】
156項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、米中貿易摩擦の激化や世界経済の減速に伴い輸出は低迷、消費増税後の反動減や経済の先行きへの不透明感などから、個人消費や設備投資などの内需も力強さを欠く状況となっております。また、当連結会計年度終盤に入って新型コロナウイルスがパンデミックに発展したことにより、世界経済の先行きに対する不透明感が大きくなってきており、今後影響が長期化した場合には、需要の落ち込み、サプライチェーンの分断による供給能力の低下、インバウンド需要の低迷、サービス消費の減少、設備投資の減少など、広い範囲で落ち込みが一段と激しくなる可能性が生じております。
当社グループの主要事業である建築関連では、特に関東地区の物流施設工事及び内装仕上げ材製品の販売において、プラント関連においては、電力、石油その他プラントにおける工事及び製品販売において堅調な需要が続いており、コロナウイルス蔓延の当社事業に対する著しい影響は、当連結会計年度においては見受けられておりませんが、今後については予断を許さないものと考えております。
その結果、当社グループにおける当連結会計年度の売上高は14,195,882千円(前年同期比20.6%増)、営業利益2,074,912千円(前年同期比32.7%増)、経常利益は2,024,775千円(前年同期比34.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,464,441千円(前年同期比49.4%増)となりました。
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
<建築関連>工事につきましては、全国的な大型物流倉庫需要及び首都圏を中心とした再開発需要が堅調に推移している他、免震装置用耐火被覆「めんしんたすけ」シリーズの品種追加が功を奏し、順調に推移しております。
販売につきましては、不燃内装材である「タイカライトウッド・タイカライトウッド-FX」、型材「アルティーボード」等における新規顧客の獲得、海外での製品販売等が堅調に推移しましたが、主力製品である耐火被覆用けい酸カルシウム板において他社商品との販売競争激化により若干の減収となりました。
以上の結果、工事及び販売を合わせた建築関連全体の売上高は5,558,473千円(前年同期比14.5%増)、営業利益は1,311,233千円(前年同期比16.7%増)となりました。
<プラント関連>工事につきましては、石油プラント向けの大型メンテナンス工事の実施年度であったこと、電力プラント向け及びその他建設工事について好調な受注環境が継続したこと、また、昨年関東地区を襲った自然災害関連の復旧工事が加わったこと等により、売上が順調に推移しました。
販売につきましては、前期にあった韓国の大型地下発電所向け案件がなくなったこと、海外向け案件の一部で受注ができなかったこと等により、売上が低調に推移しました。
以上の結果、工事及び販売を合わせたプラント関連全体の売上高は8,637,408千円(前年同期比24.9%増)、営業利益1,611,431千円(前年同期比25.3%増)となりました。
当連結会計年度末の財政状態は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べて1,819,604千円増加し、15,776,569千円となりました。
(流動資産)
流動資産については前連結会計年度末に比べて1,499,307千円増加し、9,205,102千円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が111,164千円減少したものの、現金及び預金が297,085千円、完成工事未収入金が1,228,218千円、商品及び製品が110,343千円増加したことによるものであります。
(固定資産)
固定資産については前連結会計年度末に比べて320,296千円増加し、6,571,466千円となりました。これは主に、建物及び構築物が49,416千円、投資有価証券が64,051千円減少したものの、建設仮勘定が333,891千円、繰延税金資産が138,057千円増加したことによるものであります。
(流動負債)
流動負債については前連結会計年度末に比べて373,476千円増加し、3,956,251千円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が157,934千円減少したものの、支払手形及び買掛金が113,878千円、工事未払金が62,186千円、未払法人税等が164,161千円、移転損失引当金が44,941千円、その他の流動負債が117,354千円増加したことによるものであります。
(固定負債)
固定負債については前連結会計年度末に比べて691,709千円減少し、1,300,199千円となりました。これは主に、長期借入金が603,105千円、移転損失引当金が44,941千円減少したことによるものであります。
(純資産)
純資産については前連結会計年度末に比べて2,137,837千円増加し、10,520,118千円となりました。これは主に、資本金が456,487千円、資本剰余金が456,487千円、利益剰余金が1,219,968千円増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末と比較して302,081千円増加し、1,250,702千円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、963,762千円(前年同期比651,189千円減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益2,013,482千円、減価償却費326,102千円により増加した一方で、売上債権の増加額1,133,471千円、法人税等の支払額504,838千円により減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は、614,212千円(前年同期比219,505千円増加)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出618,969千円、無形固定資産の取得による支出10,717千円により減少したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、42,080千円(前年同期比1,140,956千円減少)となりました。これは主に株式の発行による収入912,975千円により増加した一方で、長期借入金の返済による支出930,582千円、配当金の支払額244,473千円により減少したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
建築関連3,516,469114.5
プラント関連6,457,185132.2
合計9,973,655125.4

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.金額は、工事原価、製造原価によっております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
建築関連5,328,812103.22,403,81891.3
プラント関連7,861,442104.71,290,83462.5
合計13,190,254104.13,694,65378.6

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
建築関連5,558,473114.5
プラント関連8,637,408124.9
合計14,195,882120.6

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に占める割合が10%以上である販売先は、該当ありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
a. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収可能額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益が変動する可能性があります。
b. 健康被害補償引当金
アスベスト(石綿)健康被害を受けた元従業員等に対する支払に備えるため、将来発生すると見込まれる補償額を計上しております。
対象者が増加した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
c. 完成工事高及び完成工事原価の計上
成果の確実性が認められる工事については、工事進行基準(工事の進捗率の見積りは原価比例法)により完成工事高を計上しています。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
d. 投資の減損
当社グループは、長期的かつ戦略的な取引関係維持を目的に特定の取引先の株式を所有しております。これら株式には上場株式と非上場株式が存在します。当社グループは投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、減損処理を行っております。上場株式については、時価が取得原価の50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。非上場株式及び関係会社株式については、実質価額が取得原価の50%以上下落した場合に、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。将来、株式市場の悪化または投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
e. 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、収益性が著しく低下した場合は、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析
売上高については、建築事業・プラント事業とも工事が増収、販売が減収となり、全体としては当社グループの売上高は前年同期に対し20.6%増の14,195,882千円となりました。
売上原価については、前年同期と比較して1,879,688千円増加し、10,092,690千円となりました。これは主に売上増加に伴うものであります。
この結果、当連結会計年度における売上総利益は、前年同期と比較して549,239千円増加し、4,103,191千円となりました。
販売費及び一般管理費については、給料、賞与等の人件費が増加したことなどにより、前年同期と比較して38,458千円増加し、2,028,278千円となりました。これにより営業利益については、前年同期と比較して510,781千円増加し、2,074,912千円となりました。
営業外収益については、地役権設定に伴う受取補償金等によって増加し、営業外費用については、健康被害補償引当金繰入額は減少したものの、株式上場に伴う株式交付費及び上場関連費用の発生があり、営業外損益は前年同期と比較して3,929千円改善しました。
これにより経常利益については2,024,775千円となり、前年同期と比較して514,710千円の増益となりました。
特別損益については、投資有価証券評価損11,292千円を計上しました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,464,441千円となり、前年同期と比較して484,356千円の増益となりました。
また、セグメントごとの経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 財政状態の分析
当連結会計年度末における総資産は、工事売上の増加による完成工事未収入金の増加及び岐阜工場事務所建設に伴う建設仮勘定の増加等により、前連結会計年度末と比較して1,819,604千円増加の15,776,569千円となりました。
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末と比べ支払手形及び買掛金が113,878千円、未払法人税等が164,161千円それぞれ増加したものの、長期借入金の返済が進捗し603,105千円減少したこと等により、前連結会計年度末と比較して318,232千円減少の5,256,451千円となりました。
当連結会計年度末における純資産は、資本金が456,487千円、資本剰余金が456,487千円、利益剰余金が1,219,968千円それぞれ増加したこと等により、前連結会計年度末と比較して2,137,837千円増加の10,520,118千円となりました。
c. キャッシュ・フローの分析並びに、資本の財源及び資金の流動性に係る情報
1.キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2.資金需要について
運転資金のうち主なものは、当社グループの製品製造のための原材料購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いによるものです。
設備投資資金需要については、生産設備の省力化、合理化投資等によるものであります。
3.財務政策について
運転資金として必要な資金は、営業活動により得られるキャッシュ・フローにより賄い、設備投資については、自己資金及び資本市場から得られた資金により実施しております。なお、設備資金及び長期運転資金として金融機関から調達した長期借入金につきましては、約定通りの返済を行い、金融機関との関係維持の為に一定の借入を実施する予定です。
また、金融上のリスクに対応するために取引金融機関との間で当座貸越契約を締結することで、手元流動性を確保しております。当座貸越契約とその借入実行残高(短期借入金)の状況は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結貸借対照表関係)5」に記載のとおりであります。
d.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗について
当社グループは、2020年3月期を初年度とする中期経営計画(2019~2021年度)を策定し、以下に挙げる方針のもと、持続的な成長と収益性の向上に取り組んでまいりました。
①実質完全無借金経営を目指す。
②更なる生産性向上推進による高収益体質への転換と、内部統制水準の向上を通じて株式上場を実現させ
る。
③海外事業の安定的拡大を推進する。
経営上の目標の達成状況につきましては、「売上高」、「営業利益」、「配当性向」の指標で判断しており、目標として、売上高及び営業利益前期比100%以上、配当性向30%以上を目指しております。
以上の結果、2020年3月19日に東京証券取引所市場第二部に上場し、また、2020年3月期における売上高の前期比は120.6%、営業利益の前期比は132.7%、配当性向は18.5%となりました。