有価証券報告書-第74期(2023/04/01-2024/03/31)

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2024/06/25 15:37
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189項目
(1)財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、受取手形・完成工事未収入金等の増加及び有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ578億円増加し、5,660億円となった。負債合計は、借入金や社債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ417億円増加し、3,930億円となった。純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末と比べ161億円増加し、1,731億円となった。
(2)経営成績の状況
①事業全体の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が第5類へ移行し、個人消費やインバウンド消費の回復等により、緩やかな景気回復が続いた。世界経済も総じて回復基調にあるものの、欧米における金融引き締め及び資源・原材料価格の高騰や供給制約が続いており、ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスク、中国経済の成長鈍化等、依然として先行き不透明な状況が続いている。 建設業を取り巻く環境は、国内では政府による防災・減災、国土強靭化加速化対策等による堅調な公共投資の継続ならびに経済安全保障等の観点からの民間設備投資の増加により、建設投資は官民ともに堅調に推移した。その一方で、建設資材価格の高止まりが続いていることに加えて、建設需要が集中する地域において協力会社の労務逼迫が生じている。また海外においても、当社の主要市場であるシンガポール、香港及び東南アジアの建設投資は堅調であったが、国内同様、建設資材価格や労務費の高騰が続いた。
このような事業環境の下、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高6,177億円(前連結会計年度比23.0%増)、営業利益292億円(同607.7%増)、経常利益272億円(同1,823.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益179億円(同2,511.3%増)となった。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況(セグメント利益は連結損益計算書の営業利益ベース)
(国内土木事業)
国内土木事業においては、前年度に受注した大型港湾工事等の進捗により、売上高は2,664億円(前連結会計年度比34.3%増)、セグメント利益は278億円(同59.6%増)と、売上・利益ともに大幅な増加となった。
当社個別の受注高については、前年度に国内最大規模の大型港湾工事や洋上風力建設工事を受注した影響で、前期より369億円減少し2,736億円(同11.9%減)となったが、これら大型工事の影響を除けば前期比625億円の大幅な増加となった。
(国内建築事業)
国内建築事業においては、手持工事が順調に進捗したことにより、売上高は1,893億円(同16.5%増)となった。売上高の増加に加え、工事採算の改善によりセグメント利益は49億円(同133.4%増)となった。
当社個別の受注高については、官庁及び民間の大型工事を複数受注したことが寄与し、前期に過去最大規模の再開発工事の受注が含まれているにもかかわらず、前期より289億円増加し2,506億円(同13.0%増)となった。
(海外建設事業)
海外建設事業においては、売上高は1,506億円(同13.2%増)となり、セグメント損失は42億円(前連結会計年度は161億円のセグメント損失)となった。これは、船舶の稼働率低下による船舶管理収支の悪化に加え、前期に工事損失引当金を計上した工事において当連結会計年度の為替変動の影響などにより工事損失額が増加したことなどによるものである。
当社個別の受注高については、大型港湾工事が期ずれしたことなどから、前期より684億円減少し680億円(同50.2%減)となった。
(その他)
国内開発事業、造船事業、環境関連事業等を主な内容とするその他の売上高は114億円(前連結会計年度比36.7%増)となり、セグメント利益は6億円(同11.5%減)となった。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりである。
④目標とする経営指標の達成状況
目標の達成状況を判断するための主要な指標と当連結会計年度における達成状況は以下のとおりである。
連結2023年度目標2023年度実績増減
業績指標売上高6,100億円6,177億円77億円
営業利益340億円292億円△48億円
経常利益320億円272億円△48億円
親会社株主に帰属する当期純利益220億円179億円△41億円
1株当たり当期純利益(EPS)77.2円62.7円△14.4円
財務指標自己資本比率31.3%30.6%△0.7pt
有利子負債残高1,135億円1,103億円△32億円
D/Eレシオ(ネット)0.3倍0.3倍△0.0pt
自己資本利益率(ROE)13.4%10.8%△2.5pt
配当性向31.2%38.4%7.2pt
総還元性向40.0%49.6%9.6%

なお当社グループは、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標及び(3)中長期的な会社の経営戦略並びに会社の対処すべき課題」に記載しているとおり、2023年度を初年度とする「中期経営計画(2023~2025年度)」を策定しており、その中で目標とする業績指標、財務指標及び総還元性向を定めている。
⑤生産、受注及び販売の実績は、次のとおりである。
イ.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
(百万円)
国内土木事業325,165288,578( 11.3%減)
国内建築事業224,504255,629( 13.9%増)
海外建設事業139,28171,539(48.6%減)
合計688,951615,747(10.6%減)

ロ.売上実績
当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称前連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
(百万円)
当連結会計年度
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
(百万円)
国内土木事業198,324266,439( 34.3%増)
国内建築事業162,447189,273(16.5%増)
海外建設事業133,129150,639(13.2%増)
その他8,30411,355(36.7%増)
合計502,206617,708(23.0%増)

(注) 1 その他の受注実績については、当社グループ各社における受注の定義が異なり、また、金額も
僅少であるため、建設事業のみ記載している。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
3 受注実績、売上実績については、セグメント間の取引を相殺消去して記載している。
4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりである。
第73期国土交通省69,479百万円13.8%
第74期国土交通省115,864百万円18.8%


なお、参考のため提出会社単独の事業の状況は次のとおりである。
提出会社における受注高、売上高の状況
イ.受注高、売上高及び繰越高
期別種類別前期繰越高
(百万円)
当期受注高
(百万円)

(百万円)
当期売上高
(百万円)
次期繰越高
(百万円)
第73期
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
国内土木事業204,579310,563515,143185,032330,110
国内建築事業256,488221,699478,188160,113318,074
海外建設事業(324,117)
379,317
136,415515,733123,491392,241
建設事業計(785,185)
840,386
668,6771,509,064468,6381,040,426
その他-426426426-
合計(785,185)
840,386
669,1041,509,491469,0651,040,426
第74期
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
国内土木事業330,110273,632603,743244,007359,735
国内建築事業318,074250,560568,635186,056382,579
海外建設事業(392,241)
428,602
68,002496,605135,327361,277
建設事業計(1,040,426)
1,076,787
592,1961,668,984565,3911,103,592
その他-478478478-
合計(1,040,426)
1,076,787
592,6741,669,462565,8701,103,592

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含む。
したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 前期繰越高の上段( )内表示額は前期における次期繰越高を表わし、下段表示額は、当該事業年度の外国為替相場が変動したため海外繰越高を修正したものである。
3 当期受注高のうち海外工事の割合は、第73期20.4%、第74期11.5%でそのうち請負金額100億円以上の主なものは次のとおりである。
第73期シンガポール政府エレクティブケアセンター&ナショナル
デンタルセンター新築工事
( シンガポール )
インドネシア政府パティンバン港開発事業(第一期-フェーズ2)パッケージ6コンテナターミナルNo.2
建設工事
( インドネシア )
第74期香港ジョッキークラブ厩舎改修工事( 香 港 )
香港科技大学生命化学研究棟新築工事( 香 港 )

ロ.受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
期別区分特命(%)競争(%)計(%)
第73期
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
土木工事49.051.0100
建築工事10.789.3100
第74期
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
土木工事51.448.6100
建築工事34.565.5100

(注) 百分比は請負金額比である。
ハ.完成工事高
期別区分国内海外
(B)
(百万円)
官公庁
(百万円)
民間
(百万円)
(A)
(百万円)
(A)/(B)
(%)
第73期
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
土木工事131,02654,00574,62228.7259,655
建築工事20,245139,86848,86923.4208,982
151,271193,874123,49126.4468,638
第74期
(自 2023年4月1日
至 2024年3月31日)
土木工事177,94166,06678,01224.2322,020
建築工事25,583160,47257,31523.6243,371
203,524226,539135,32723.9565,391

(注)1 海外完成工事高の地域別割合は、次のとおりである。
地域第73期(%)第74期(%)
東南アジア79.486.3
その他20.613.7
100100

2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
第73期 請負金額20億円以上の主なもの
米軍横須賀米軍桟橋建設工事
西日本高速道路株式会社中国横断自動車道 牧トンネル工事
富士見町開発合同会社(仮称)広島市中区富士見町地区
フルサービスホテル建設工事
西新宿五丁目北地区防災街区
整備事業組合
西新宿五丁目北地区防災街区整備事業に伴う
施設建築物等新築工事
香港特別行政区政府香港政府データセンター

第74期 請負金額20億円以上の主なもの
西日本高速道路株式会社松山自動車道 東峰工事
東京都下水道局大田区仲池上二丁目、東雪谷四丁目付近枝線工事
万葉倶楽部株式会社(仮称)千客万来施設6街区新築計画
岐阜県厚生農業協同組合連合会西濃厚生病院施設整備事業
香港特別行政区政府ヘブンオブホープ病院拡張工事

3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
第73期国土交通省68,739百万円14.7%
第74期国土交通省113,968百万円20.2%

ニ.次期繰越工事高(2024年3月31日現在)
区分国内海外
(百万円)

(百万円)
官公庁
(百万円)
民間
(百万円)
土木工事214,669145,065110,344470,080
建築工事131,722250,856250,933633,512
346,392395,921361,2771,103,592

(注) 次期繰越工事高のうち請負金額50億円以上の主なものは、次のとおりである。
九州地方整備局令和4年度馬毛島係留施設等築造工事2027年3月完成予定
月島三丁目北地区市街地
再開発組合
月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業
施設建築物新築工事
2026年6月完成予定
香港ジョッキークラブ厩舎改修工事2029年9月完成予定

(3)キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ122億円(25.7%)増加し、596億円となった。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が274億円となったことなどにより、91億円の収入超過(前連結会計年度は197億円の収入超過)となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
SEP型多目的起重機船の建造による支出などにより、64億円の支出超過(前連結会計年度は117億円の支出超過)となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
借入金の増加や社債の発行による収入などにより、67億円の収入超過(前連結会計年度は70億円の支出超過)となった。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの資金の源泉は、主として国内及び海外建設事業に係る営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入及び社債の発行等による収入からなる。
資金調達を行う際は、期間や国内外の市場金利動向等、または自己資本比率、D/Eレシオ(ネット)や自己資本利益率(ROE)といった財務指標への影響度等を総合的に勘案しながら、最適な調達を実施することとしている。
なお、コミットメントライン契約については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載のとおりである。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成に当たっては、資産・負債並びに収益・費用の数値に影響を与える見積り及び判断が一定の会計基準の範囲内で行われており、これらの見積り等については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらとは異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するに当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりである。
①重要な収益及び費用の計上基準
主要な事業である建設事業においては、顧客との工事請負契約に基づき、目的物の完成及び顧客に引渡す義務を負っている。
当該履行義務は、主として工事の進捗に伴い支配を顧客に移転することになるため、一定の期間にわたり充足されると判断しており、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識している。一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法による完成工事高、工事収益総額、工事原価総額等を、信頼性をもって見積る必要があるが、これらの見積りは、気象条件、海象条件、施工条件、資機材価格等様々な仮定に基づいている。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する完成工事高、完成工事原価等に重要な影響を与える可能性がある。
②退職給付に係る会計処理
当社グループの退職給付債務、退職給付費用及び年金資産は、数理計算上の仮定と見積りに基づいて計算されている。これらの数理計算上の仮定には、退職給付債務の割引率、予想昇給率、死亡率、退職率、期待運用収益率等の様々な計算基礎がある。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債、退職給付費用等の金額に重要な影響を与える可能性がある。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務、退職給付費用及び年金資産の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)」に記載している。