四半期報告書-第144期第1四半期(令和2年4月1日-令和2年6月30日)
(1) 業績の概要
当期(2020年4-6月期)の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円) | ||||
前年同期(注) | 当期 | 対前年同期 | ||
売上収益 | 8,491 | 8,019 | △473 | △5.6% |
売上原価 | △2,918 | △2,381 | 537 | △18.4% |
販売費及び一般管理費 | △2,392 | △2,024 | 368 | △15.4% |
研究開発費 | △1,169 | △1,068 | 100 | △8.6% |
製品に係る無形資産償却費及び減損損失 | △1,218 | △1,042 | 175 | △14.4% |
その他の営業収益 | 67 | 637 | 571 | 856.1% |
その他の営業費用 | △410 | △468 | △58 | 14.1% |
営業利益 | 452 | 1,673 | 1,221 | 270.4% |
金融収益 | 87 | 196 | 109 | 126.2% |
金融費用 | △461 | △468 | △8 | 1.7% |
持分法による投資損益 | 23 | △98 | △121 | △516.3% |
税引前四半期利益 | 101 | 1,303 | 1,202 | ― |
法人所得税費用 | △31 | △478 | △447 | ― |
四半期利益 | 70 | 825 | 755 | ― |
(注) 前年度において、当社グループはShire社買収により取得した資産および引き受けた負債について取得対価の配分を完了しました。
この結果、前年同期の要約四半期連結純損益計算書を遡及修正しております。
[売上収益]
売上収益は、前年同期から473億円減収(△5.6%)の8,019億円となりました。減収のうちの4.0パーセントポイント(以下、「pp」)は、円高の為替影響によるものです。
このような為替変動による減収影響があったものの、当社の主要な疾患領域のうち、消化器系疾患、血漿由来の免疫疾患治療、およびオンコロジー(がん)は増収となりました。しかしながら、これら疾患領域における増収は、その他の疾患領域における競争の激化や後発品の浸透による影響を受けて相殺されました。また、ノン・コア事業の売上収益は、前年度に完了した複数の事業売却等の影響を受け、減収となりました。なお、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)の流行拡大に伴う売上収益に対するマイナス影響としては、生命を脅かす恐れの少ない疾患や慢性疾患を患う患者さんの医療機関への訪問頻度の減少等がニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域で見られましたが、一方で、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大も見られました。当期におけるCOVID-19の売上収益への全体的な影響は、重要性のあるものではありませんでした。
各疾患領域における売上収益の前年同期からの増減は、主に以下の製品によるものです。
・消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年同期から153億円増収(+8.9%)の1,869億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年同期から173億円増収(+20.7%)の1,012億円となり、売上成長を牽引しました。米国および欧州においては、潰瘍性大腸炎とクローン病に対する生物学的製剤の新規投与患者シェアがさらに拡大したことにより、同剤の全体の市場シェアも伸長しました。日本においては、主に潰瘍性大腸炎に対する効能により売上が伸長しました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、日本において新規処方が拡大し、売上は19億円増収(+10.6%)の202億円となりました。短腸症候群治療剤「GATTEX / REVESTIVE」は、成人患者の平均治療期間が伸長したことなどにより、売上は23億円増収(+15.5%)の175億円となりました。「エンティビオ」、「タケキャブ」及び「GATTEX / REVESTIVE」の売上成長により、特許満了製品である消化性潰瘍治療剤「パントプラゾール」(24億円の減収)や、逆流性食道炎治療剤「デクスラント」(22億円の減収)及び慢性便秘症治療剤「アミティーザ」(15億円の減収)等、主に競争の激化の影響を受けたその他製品の減収を吸収しました。
・希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年同期から138億円減収(△8.2%)の1,550億円となりました。希少血液疾患領域の売上収益は113億円減収(△12.9%)の768億円となりました。血友病A治療剤である「アドベイト」は、競争の激化(影響は地域によって異なりましたが、米国と日本に比べ欧州における影響は小さいものでした)や短半減期セグメントにおける価格圧力及び「アディノベイト」への切り替えにより、91億円減収(△21.3%)の337億円となりました。また、副甲状腺ホルモン製剤「NATPARA」の米国における回収の影響を主として、希少代謝性疾患領域は89億円減収(△18.3%)の399億円となりました。「NATPARA」の売上は71億円減収(△90.7%)の7億円となり、これは前年同期から増減のなかった米国外の売上にあたります。遺伝性血管性浮腫領域の売上収益は64億円増収(+20.2%)の383億円となりました。これは米国および欧州においてさらに市場浸透した同疾患の発作予防剤「TAKHZYRO」の売上が88億円増収(+60.7%)の232億円となり、「フィラジル」の後発品の参入と「CINRYZE」の患者数の減少による売上減少を上回ったことが主な要因となりました。
・血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の売上収益は、前年同期から135億円増収(+14.8%)の1,053億円となりました。免疫グロブリン製剤の売上合計は、強い需要と供給能力の拡大に加え、前年同期に出荷が後ろ倒しになった期ずれによる影響も一部あり171億円増収(+25.2%)の851億円となりました。特に、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」は、これら疾患に対する米国における標準治療剤としてのポジションを引き続き強固なものにしました。皮下注製剤である「CUVITRU」も2桁台の増収率となりました。また、主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「ALBUMIN GLASS」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は前年同期から32億円減収(△19.6%)の130億円となりました。これは主に中国において、前年同期に期ずれによる供給量の増加があったことによります。
・オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の売上収益は、前年同期から15億円増収(+1.4%)の1,080億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、服薬の利便性が高い製品特性もあり、特に米国と中国での好調な業績が成長に寄与し、前年同期から46億円増収(+25.4%)の229億円となりました。「ニンラーロ」は週一回経口投与のカプセル剤であり、医療機関での点滴や注射を必要としないため、患者さんの通院負担を軽減することができます。米国における「ニンラーロ」の新規処方患者数は、当期の最初の2ヶ月に増加し、当期末にかけてCOVID-19の感染拡大前の水準に戻りました。また、悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、近年複数の効能追加を取得した日本において特に伸長し、前年同期から23億円増収(+18.4%)の151億円となりました。非小細胞肺がん治療剤「ALUNBRIG」の売上は、引き続き欧州及び新興諸国での上市があったことにより前年同期から4億円増収(+21.9%)の20億円となりました。なお、多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の売上は、前年同期から75億円減収(△23.7%)の242億円となり、うち、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益は、2019年における欧州及び中国での後発品の参入により、前年同期から25億円の大幅な減収(△69.5%)の11億円となりました。米国内における同剤の売上は、COVID-19に関連する懸念から患者さんが受診を控えたことが想定され、第一選択薬としての新規処方患者数が減少し、前年同期から50億円減収(△17.8%)の231億円となりました。「ベルケイド」は医療機関において、主に皮下注射により投与される薬剤です。
・ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の売上収益は、前年同期から51億円減収(△4.5%)の1,069億円となりました。注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「バイバンス」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上が28億円減収(△4.1%)の660億円となったことと、不眠症治療剤「ロゼレム」の売上が21億円減収(△40.8%)の30億円となったことが、減収の主な要因となりました。また、両剤は為替が円高に変動したことによる減収影響を受けました。また、米国におけるADHD治療の主要製品である「バイバンス」の売上は、COVID-19に伴う外出制限により、外来患者数および診断数が大幅に減少し、また、服薬の一時的な中断につながったことによる減収影響を受けました。「ロゼレム」の売上は、米国における独占販売期間が前年に満了したことの減収影響を受けました。
地域別売上収益
(単位:億円、%は売上収益の構成比)
売上収益: | 前年同期 | 当期 | |||
日本 | 1,523 | 17.9% | 1,440 | 18.0% | |
米国 | 4,157 | 49.0% | 4,026 | 50.2% | |
欧州およびカナダ | 1,652 | 19.5% | 1,576 | 19.6% | |
ロシア/CIS | 190 | 2.2% | 130 | 1.6% | |
中南米 | 374 | 4.4% | 308 | 3.8% | |
アジア(日本を除く) | 410 | 4.8% | 369 | 4.6% | |
その他(注) | 185 | 2.2% | 169 | 2.1% | |
合計 | 8,491 | 100.0% | 8,019 | 100.0% |
(注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
[売上原価]
売上原価は、前年同期から537億円減少(△18.4%)の2,381億円となり、売上原価率は29.7%(△4.7pp)となりました。これは主に、Shire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用の減少491億円によるものです。
[販売費及び一般管理費]
販売費及び一般管理費は、前年同期から368億円減少(△15.4%)の2,024億円となりました。この減少は主に、Shire社との統合による経費効率化およびコストシナジーのほか、出張および営業活動の減少等、COVID-19の影響に伴う経費の減少によるものです。
[研究開発費]
研究開発費は、主にパイプラインの重点化およびCOVID-19の影響により、対前年同期100億円減少(△8.6%)の1,068億円となりました。
[製品に係る無形資産償却費及び減損損失]
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、前年同期から175億円減少(△14.4%)の1,042億円となりました。この減少は主に、2019年5月の中間解析を受けTAK-616 AMRプログラムの開発中止を決定したことに伴い、156億円の減損損失を前年同期に計上したことによるものです。
[その他の営業収益]
その他の営業収益は、前年同期から571億円増加(+856.1%)の637億円となりました。この増加は主に、SHP647および関連する権利の売却に関する当社グループの義務を解除する欧州委員会の決定に伴い、臨床試験プログラムの中止コストなど将来発生が見込まれるSHP647関連費用の変動影響を反映し、これまで計上していた当該負債の再見積もりを行った結果、602億円の益を計上したことによるものです。
[その他の営業費用]
その他の営業費用は、前年同期から58億円増加(+14.1%)の468億円となりました。この増加は主に、2019年7月に当社グループがNovartis社に譲渡したXIIDRAの欧州における販売許可申請を同社が取り下げたことに伴う条件付対価に関連する資産の公正価値の変動により、186億円の損失を当期に計上したことによるものです。この増加は、主にShire社買収に関連する統合費用の減少により事業構造再編費用が96億円減少したこと、また当期承認前在庫にかかる評価損の戻入を計上したことによる、対前年同期40億円の益影響により一部相殺されております。
[営業利益]
営業利益は、上記の要因を反映し、前年同期から1,221億円増益(+270.4%)の1,673億円となりました。
[金融損益]
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は272億円の損失となり、前年同期から102億円の減少となりました。これは主に、社債および借入金の残高の減少と変動金利の引き下げにより、利息費用が86億円減少したこと、および2019年10月に上場した企業のワラントにかかる評価益56億円を計上したことによるものです。
[持分法による投資損益]
持分法による投資損益は、前年同期の持分法による投資利益23億円から121億円減少の98億円の損失となりました。これは主に武田テバファーマ株式会社(注)において認識された一部資産の減損損失によるものです。
(注) 武田テバファーマ株式会社は長期収載品事業およびジェネリック医薬品事業を営んでおります。
[法人所得税費用]
法人所得税費用は、主に税引前四半期利益の増加および外国子会社合算税制による課税額の増加により、前年同期から447億円増加の478億円となりました。
[四半期利益]
四半期利益は、上記の要因を反映し、前年同期から755億円増益の825億円となりました。
当期(2020年4-6月期)における実質的な成長の概要
Coreと実質的な成長の定義
当社は、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。
「実質的な成長」は、当年度と前年度(四半期もしくは年間)の業績を共通の基準で比較するものであり、マネジメントによる業績評価に使用されています。これら共通の基準で比較される業績は、年間計画レートを用いた為替レートを一定として、事業等の売却影響およびその他の非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除し算定されます。当社は、この「実質的な成長」が、事業活動のパフォーマンスを表す共通の基準を提供するため、投資家に有用であると考えています。なお、本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
当社は、「Underlying Revenue Growth」(実質的な売上収益の成長)、「Underlying Core Operating Profit Growth」(実質的なCore営業利益の成長)および「Underlying Core EPS Growth」(実質的なCore EPSの成長)を重要な財務指標としています。
実質的な売上収益は、為替レートを一定として、財務ベースの売上収益に、報告期間における非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore営業利益は、為替レートを一定として、Core営業利益(以下に定義)に、報告期間における事業等の売却影響を調整して計算します。
Core営業利益は、純利益から、法人所得税費用、持分法にかかる投資損益、金融損益、その他の営業収益およびその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。
実質的なCore EPSの算定にあたっては、為替レートを一定として、純利益から、事業等の売却影響、およびCore営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、重要性のある、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、比較年度末の自己株式控除後の発行済株式総数で除して算定します。
実質的な業績
当期 | |
実質的な売上収益の成長 | +0.9% |
実質的なCore営業利益の成長 | +11.2% |
実質的なCore営業利益率 | 34.7% |
実質的なCore EPSの成長 | +8.7% |
[実質的な売上収益の成長率]
実質的な売上収益の成長率は、COVID-19の流行拡大の時期においても当社のポートフォリオは強固さを示し、前年同期から+0.9%となりました。タケダの14のグローバル製品(注)の実質的な売上収益は、米国における「NATPARA」の回収や特許が満了した製品による減収影響があったものの、前年同期から+19.8%成長しました。
(注)タケダの14のグローバル製品消化器系疾患:エンティビオ、GATTEX/REVESTIVE、ALOFISEL希少疾患:NATPARA、アディノベイト/ADYNOVI、TAKHZYRO、エラプレース、VPRIV血漿由来の免疫疾患治療:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRU、ALBUMIN/FLEXBUMINオンコロジー:ニンラーロ、ALUNBRIG
疾患領域別の実質的な売上収益の成長 | 当期 |
消化器系疾患 | +13.6% |
希少疾患 | △2.0% |
希少代謝性疾患 | △9.9% |
希少血液疾患 | △7.0% |
遺伝性血管性浮腫 | +24.5% |
血漿由来の免疫疾患治療 | +19.4% |
オンコロジー | +5.4% |
ニューロサイエンス | △0.8% |
その他 | △21.0% |
合計 | +0.9% |
実質的な売上収益の計算において控除した主な非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響は次の通りです。
・ 2019年度に完了した事業等の売却影響を控除しています。2019年7月に売却が完了した「XIIDRA」(ドライアイ治療剤)の前年同期の売上を控除して調整しております。また、2020年3月に売却が完了した中近東・アフリカ諸国、およびロシア、ジョージアなどの独立国家共同体の国々における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。なお、これらの事業等の売却に係る当期の残余の影響についても控除して調整しております。
・ 2019年5月にEthicon社へ売却することについて合意した「TACHOSIL」(手術用パッチ剤)の売上を控除して調整しております。2020年4月に同社との譲渡契約は解除されましたが、当社は引き続き、売却戦略・レバレッジ低下戦略の一環として売却の機会を検討していくことから、「TACHOSIL」に係る当期と前年同期の売上を控除して調整するものです。また、売却に合意したことを公表し、2020年12月までに売却の完了を予定する案件についても、売却予定製品に係る当期と前年同期の売上を控除して調整しております。
[当期の実質的なCore営業利益の成長]
当期の実質的なCore営業利益は、経費効率化およびコストシナジーを反映し、前年同期から+11.2%となりました。
Shire社の統合費用や企業結合会計に伴う非資金性の費用など、当社の本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除した当期のCore営業利益は2,809億円となりました。
[当期の実質的なCore営業利益率]
当期の実質的なCore営業利益率は、前年同期から3.2pp増加の34.7%となりました。
[当期の実質的なCore EPSの成長]
当期の実質的なCore EPSは、+8.7%となりました。
(2) 財政状態の分析
[資産]
当第1四半期末における資産合計は、前年度末から2,072億円減少し、12兆6,139億円となりました。無形資産は、主に償却により1,282億円減少しました。また、現金及び現金同等物は478億円減少しております。
[負債]
当第1四半期末における負債合計は、前年度末から1,705億円減少し、7兆9,231億円となりました。売却目的で保有する資産に直接関連する負債は、主にパイプラインSHP647および関連する権利の売却に関する義務の解除により、780億円減少しました。また、その他の流動負債および仕入債務及びその他の債務はそれぞれ438億円および291億円減少しております。なお、社債及び借入金は前年度末から183億円減少の5兆750億円(注)となっております。
(注) 当第1四半期末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆1,987億円および1兆8,763億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
銘柄 (外貨建発行額) | 発行時期 | 償還期限 | 帳簿価額 |
15回 無担保社債 | 2013年7月 | 2020年7月 | 600億円 |
米ドル建無担保普通社債 (1,520百万米ドル) | 2015年6月 | 2022年6月 ~2045年6月 | 1,634億円 |
米ドル建無担保普通社債 (8,800百万米ドル) | 2016年9月 | 2021年9月 ~2026年9月 | 9,062億円 |
米ドル建無担保普通社債 (500百万米ドル) | 2017年7月 | 2022年1月 | 537億円 |
ユーロ建無担保普通社債 (7,500百万ユーロ) | 2018年11月 | 2020年11月 ~2030年11月 | 9,021億円 |
米ドル建無担保普通社債 (4,500百万米ドル) | 2018年11月 | 2021年11月 ~2028年11月 | 4,822億円 |
ハイブリッド社債 (劣後特約付社債) | 2019年6月 | 2079年6月 | 4,970億円 |
コマーシャルペーパー | 2020年4月 ~2020年6月 | 2020年7月 ~2020年9月 | 1,340億円 |
合計 | 3兆1,987億円 |
借入金:
名称 (外貨建借入額) | 借入時期 | 返済期限 | 帳簿価額 |
シンジケートローン | 2013年7月 | 2020年7月 | 600億円 |
〃 | 2016年4月 | 2023年4月 ~2026年4月 | 2,000億円 |
〃 | 2017年4月 | 2027年4月 | 1,135億円 |
〃 (1,500百万米ドル) | 2017年4月 | 2027年4月 | 1,612億円 |
〃 (3,250百万米ドル) | 2019年1月 | 2024年1月 | 3,492億円 |
〃 (3,019百万ユーロ) | 2019年1月 | 2024年1月 | 3,639億円 |
株式会社国際協力銀行 (3,700百万米ドル) | 2019年1月 | 2025年12月 | 3,984億円 |
その他 | 2,300億円 | ||
合計 | 1兆8,763億円 |
2020年7月9日、当社グループは元本合計7,000百万米ドルの米ドル建無担保普通社債、および元本合計3,600百万ユーロのユーロ建無担保普通社債を発行しました。これらの社債の募集により調達した資金の主な使途は、2019年におけるShire社買収に関連して調達したシンジケート・タームローン(当第1四半期末残高:3,250百万米ドルおよび3,019百万ユーロ)の繰上返済、および額面金額2,400百万米ドルおよび1,250百万ユーロの無担保普通社債の繰上返済であります。残額は、運転資金に充当する予定です。
[資本]
当第1四半期末における資本合計は、前年度末から367億円減少の4兆6,908億円となりました。この減少は主に、四半期利益の計上があったものの、1,419億円の配当金の支払により利益剰余金が399億円減少したことによるものです。
[キャッシュ・フロー]
(単位:億円)
前年同期 (2019年4-6月期) | 当期 (2020年4-6月期) | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,208 | 1,459 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △416 | 7 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △1,777 | △1,928 |
現金及び現金同等物の増減額 | △985 | △462 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 7,021 | 6,376 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △105 | △16 |
売却目的で保有する資産の純増減額 | 6 | ― |
現金及び現金同等物の期末残高 | 5,937 | 5,898 |
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期1,208億円から251億円増加の1,459億円となりました。これは四半期利益の増加755億円に加え、主に非資金性費用である繰延税金から構成される法人所得税費用によるプラスの調整額が447億円増加したこと等の影響によるものです。これらの増加は、パイプラインSHP647および関連する権利の売却に関する義務の解除による非資金性の収益の調整602億円、およびShire社買収日において公正価値評価された棚卸資産の費用化の減少に伴い、当期は棚卸資産が増加したことによるマイナスの影響476億円等により一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期△416億円から423億円増加の7億円となりました。これは主に、資本性金融商品の売却額増加により投資の売却、償還による収入が300億円増加したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期△1,777億円から151億円減少の△1,928億円となりました。これは主に当期におけるコマーシャルペーパー及び長期借入金の返済200億円によるものです。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第1四半期において、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組みに関する状況は以下のとおりです。
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
当社の事業活動は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により、様々に影響を受けており、また、今後影響を受ける可能性があります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、これまでのところ影響は限定的です。ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域では、患者さんの医療機関への訪問頻度の減少等が見られておりますが、一方で、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大も見られております。なお、ドナーからの血漿採取量に幾らかの減少が見られていますが、今後数カ月のうちに、一部あるいは完全に補えるほどに採取量が回復し得る複数の要素があるため、総採取量についての長期的な影響を現時点で予測することは時期尚早です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な問題は発生しておらず、また、発生の可能性を現時点で予測しておりません。
事業運営においては、渡航制限や業界関連団体の集会への参加自粛、当社主催の集会の休止等、特定の事業活動を自主的に制限しております。
新たな臨床試験については、COVID-19の治療薬候補である血漿分画製剤(CoVIg-19)を除き、臨床試験の開始を一時的に休止しておりました。また、すでに進行中の臨床試験についても、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しておりましたが、これは一時的な措置であり、少なくとも一部の試験実施施設および国では、大部分の臨床試験について、患者さんの登録を再開することができております。
ただし、臨床試験のスケジュールや申請計画に対する影響を現時点で予測することは未だに時期尚早です。いくつかの臨床試験については、一定の遅延が見込まれていますが、試験再開により遅れを取り戻すことも可能であると考えています。臨床試験ごとに状況を注視するともに、各国および各試験実施施設での状況も把握していくことで、潜在的な影響を精査してまいります。
金融市場の動向は注視を続けており、流動性や資金調達に係る問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、COVID-19の大流行に対して、3つの優先事項を中心に取り組んでおります。
1.従業員とその家族の安全確保とヘルスケアシステムに対する影響の低減
2.事業の継続性の維持、特に当社医薬品の患者さんへの提供
3.COVID-19を治療もしくは予防し得る医薬品の開発
当社は、COVID-19の流行拡大に伴う様々な問題に対処するため、2020年1月に、グローバル危機管理委員会を始動させ、社内外の専門家の支援のもと、様々な対策を講じております。具体的には、COVID-19流行拡大に対する従業員向けガイダンスの策定、関連情報の提供、必須業務における感染対策の強化および職場毎の事例対応プロトコールの導入などが含まれます。また、本委員会では、職場復帰が可能と判断できた時点で、安全かつ段階的な復帰を支援するための包括的なチェックリストも作成しました。本委員会は、チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ オフィサーとグローバル ワクチン ビジネス ユニット プレジデントのリードのもと、機能横断のチームによって組織されています。
当社は、従業員の安全を確保する措置として、在宅勤務ポリシーの適用を継続し拡充したIT技術によりこれを支援しています。テレワークのガイダンスは、医療従事者と関わる外勤の従業員も可能な限り対象として、世界中の従業員に広範囲で適用しております。また、製造施設や研究所、血漿収集センターであるBioLifeにおいて引き続き勤務する必要のある従業員については、ウイルス感染の安全・軽減措置を強化しました。
グローバル危機管理委員会ならびにReturn to the Workplace(職場復帰対策)チームは、新型コロナウイルスの侵入と感染を抑制しながらも、事業を継続および強化していくために「新しい職場環境」をどのように作るべきかについて、ガイダンスを作成しました。新しい職場プランは、科学、疫学、地域の公衆衛生事情に基づき、各国の状況に合わせて調整していきますが、地方自治体の方針および公衆衛生関連規制の遵守、フェイスカバーの使用や物理的な距離を保つことなどの感染予防対策を含めた職場の準備、タケダの拠点における人口密度の低減、感染対策プロトコールの強化、個々の従業員の状況の考慮、慎重かつ段階的な実施など、共通原則・要件にも従ってまいります。
また、今後の状況については引き続き注視していくものの、移動および大規模な集会に関する制限を継続し、不要不急の移動については、原則としてすべて2020年12月31日まで休止し、大規模な集会の開催や参加については2021年3月31日まで制限しております。一方、地域の公衆衛生指導を遵守した感染予防対策の強化を実施した後、職場復帰可能なテレワーク勤務の従業員を段階的に職場に戻す計画を準備しています。
外勤の従業員については、医療従事者との対面の訪問業務を一部再開したものの、現在も大部分はバーチャルで実施しております。対面の訪問業務は、医療従事者から要請があった場合に、当社が定める厳格な感染予防対策に加え、医療機関から求められる追加の対策も行った上で実施しております。
事業の継続性の維持の側面では、当社医薬品の製造代替業者の選定を含め、適正な在庫水準を管理し、当社医薬品を患者さんに継続的に提供できる施策を整備しています。当施策は、主要な出発物質、添加剤、医薬品原料、医薬品原薬(API)ならびに製品のグローバルなサプライチェーン全体に対して適用しております。当社は、当社の医薬品を必要とされる方々に確実にお届けできるよう、引き続き状況を注視し、あらゆる必要な措置を講じて製品供給の継続性を確保してまいります。
研究開発においては、進行中の臨床試験に対する影響を最小限に抑えるため、引き続きCRO(医薬品開発業務受託機関)と連携しながら、取り組んでおります。当社は、COVID-19の世界的な拡大に伴い、COVID-19による重篤な合併症患者さんの治療薬候補である抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19)を除き、新たな臨床試験の開始は一時的に休止しておりました。すでに進行中の臨床試験については、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しておりましたが、これは一時的な措置であり、少なくとも一部の試験実施施設および国では、大部分の臨床試験について、患者さんの登録を再開することができております。当社では、患者さんへの治験薬の直接配送や遠隔モニタリング、臨床試験デザインの再検討など、対策の検証および構築を行っております。
CoVIg-19のプログラムは、COVID-19に対抗する治療法を開発するという当社の取り組みの一つです。当社は、2020年4月に血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、患者さん中心の価値観の下、一企業としての利益を顧みることなく、あらゆるパートナーと協働することを通じてCOVID-19の治療法開発を促進することに注力しております。また、COVID-19回復者の血漿にはCOVID-19に対する重要な抗体が含まれていることから、2020年5月に、公的機関、民間団体と提携し、COVID-19回復者に血漿提供を促すキャンペーンであるThe Fight Is In Usを全米で開始しました。
アライアンスにおける取り組みの一環としては、当社は、AbbVie社、Amgen社とともに、I-SPY COVID (Investigation of Serial Studies to Predict Your COVID Therapeutic Response with Biomarker Integration and Adaptive Learning) 臨床試験に第1例目の患者を登録したことを公表しました。本試験では、COVID-19患者を対象に、cenicriviroc、「オテズラ」(アプレミラスト)および当社の「フィラジル」(イカチバント皮下注)の炎症反応に対する有効性を評価します。I-SPY COVID試験は、治療薬候補の評価に要する被験者数と期間を最小限に留めることにより試験効率性を向上する目的で設計された、Quantum Leap Healthcare Collaborative(QLHC)のアダプティブ・プラットフォーム臨床試験デザインを活用します。I-SPY COVID試験は、COVID R&D Allianceのメンバー企業と Quantum Leap、そして米国食品医薬品局(FDA)の連携の下で行われます。
また、当社は、Novavax社が開発中の新型コロナウイルス感染症ワクチンNVX-CoV2373の日本における開発、製造、流通に向けた提携に関して基本合意したことを公表しました。当社は、Novavax社からのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受けて、年間2億5千万回分以上の新型コロナウイルス感染症ワクチンの生産能力を整備することを見込んでいます。
さらに、当社は赤十字社や国連主導の組織を含む非営利団体(国連世界食糧計画(国連WFP)、国連人口基金(UNFPA)、国際原子力機関(IAEA))に対する約25百万米ドルの寄付金や現物寄付、社員によるマッチング寄付を通じて、COVID-19対策を支援しております。
③ 2020年度第1四半期におけるCOVID-19影響
COVID-19の世界的な流行拡大に伴う、2020年度第1四半期の連結業績への影響は軽微でありました。売上収益に対するマイナス影響としては、生命を脅かす恐れの少ない疾患や慢性疾患を患う患者さんの医療機関への訪問頻度の減少等がニューロサイエンスといった一部の疾患領域で見られましたが、一方で、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大も見られました。同時に、渡航制限や集会の自粛等、特定の事業活動を自主的に制限したことにより経費使用が減少したため、利益に対する影響は限定的でした。
(4) 研究開発活動の内容および成果
当第1四半期の研究開発費の総額は1,068億円であります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。革新的なバイオ医薬品に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。革新的なバイオ医薬品における重点疾患領域(オンコロジー、希少疾患、ニューロサイエンス、消化器系疾患)には高いアンメットメディカルニーズが存在し、当社はベストインクラスあるいはファーストインクラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、最近ではShire社の買収によってさらに強化されましたが、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図ってまいりました。
当第1四半期における主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「アルンブリグ」を含む肺がんを対象とするパイプラインおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社外との提携による新規のがん免疫療法標的および次世代基盤技術の追求ならびに革新的な細胞療法の探索、にフォーカスしています。
[ニンラーロ 一般名: イキサゾミブ]
・2020年5月、当社は、「ニンラーロ」について、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴の無い成人患者を対象としたファーストライン(一次)治療後の維持療法の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認の申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。今回の申請は、主にランダム化プラセボ対照二重盲検の多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。
・2020年6月、当社は、第25回欧州血液学会(EHA)において、2つの臨床試験結果をオーラルプレゼンテーションとして発表しました。本発表には、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴のない成人患者を対象として、経口で単剤投与された「ニンラーロ」のファーストライン維持療法としての有効性を評価した無作為化臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」における良好な結果も含まれています。また、当社は、非経口剤である「ボルテゾミブ」をベースとした3剤併用導入療法をすでに受けている初発の多発性骨髄腫患者を対象に、同じプロテアソーム阻害剤の経口薬である「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」との併用療法へ移行した際の有効性と安全性を検討した「US MM-6試験」から得られた重要な知見についても発表しました。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
・2020年5月、当社は、「アイクルシグ」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「OPTIC(Optimizing Ponatinib Treatment In CML)」の中間解析データを発表しました。「OPTIC試験」は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療へ抵抗性または不耐性を示す慢性期の慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者に対する、有効性および安全性を最適化することを目的として、「アイクルシグ」の3つの投与開始用量(45mg~、30mg~あるいは15mg~)における奏効に基づく投与量調整レジメンをプロスペクティブに評価する、進行中の無作為化非盲検試験です。
[アルンブリグ 一般名:ブリグチニブ]
・2020年5月、当社は、「アルンブリグ」について、米国食品医薬品局(FDA)が承認した検査により診断された成人の未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)転移性非小細胞肺がん患者に対する治療薬としてFDAより承認を取得したことを公表しました。今回の承認により、「アルンブリグ」の適応症にファーストライン(一次)治療が追加されました。
[アドセトリス 一般名: ブレンツキシマブ ベドチン]
・2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、欧州委員会(EC)より、現在の条件付承認に加えて、未治療の全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の成人患者に対するCHP(シクロホスファミド・ドキソルビシン・プレドニゾン)との併用治療に関して適応追加の承認を取得したことを公表しました。ALCLは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプです。
・2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫またはCD30陽性ホジキンリンパ腫の成人患者に対する治療薬として、中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。
[カボメティクス 一般名: カボザンチニブ]
・2020年4月、当社は、「カボメティクス」と小野薬品工業株式会社のヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体、「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)について、未治療の進行性又は転移性の腎細胞がんを対象に両製剤の併用療法を評価した多施設国際共同無作為化非盲検第3相試験である「CheckMate -9ER試験」のトップライン結果が得られたことを公表しました。本試験において、「オプジーボ」と「カボザンチニブ」の併用療法は、「スニチニブ」と比較して、最終解析で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を、あらかじめ計画されていた中間解析で副次評価項目である全生存期間(OS)、および奏効率(ORR)を改善しました。
[開発コード: TAK-924 一般名:pevonedistat]
・2020年5月、当社は、「pevonedistat」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「Pevonedistat-2001」の結果を発表しました。本試験では、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)を含む造血器腫瘍の患者を対象に、「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法と「アザシチジン」単剤療法を比較しました。これらの結果より、「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法は非常に有効であり、有望な治療法であることが示されるとともに、HR-MDS患者群においては、「アザシチジン」単剤療法と同様の安全性プロファイルであり、全生存期間(OS)、無イベント生存期間(EFS)、完全寛解率(CR)および輸血非依存達成率を含む臨床的に意義のある複数の評価項目でも有用性が示されました。
・2020年7月、当社は、「pevonedistat」について、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)よりBreakthrough Therapyの指定を受けたことを公表しました。
[開発コード: TAK-788 一般名:mobocertinib]
・2020年4月、当社は、プラチナ製剤をベースとした化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する治療薬「mobocertinib」を米国食品医薬品局(FDA)がBreakthrough Therapyに指定したことを公表しました。
希少疾患
当社は、次の3治療分野に注力しています。(1)これまでの治療パラダイムを変え得る、最近上市された「TAKHZYRO」を含む希少免疫疾患(例:遺伝性血管性浮腫)、(2)幅広いポートフォリオを有する希少血液疾患、(3)希少代謝性疾患(ファブリー病、ハンター症候群、ならびにゴーシェ病治療薬への注力)。
[TAKHZYRO 一般名:lanadelumab-flyo]
・2020年5月、当社は、「TAKHZYRO」のプレフィルドシリンジ製剤の一部変更承認申請(Type II Variation)について、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)より承認を推奨する旨の肯定的見解が示されたことを公表しました。TAKHZYROは、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者における再発性発作の標準的抑制薬として、欧州では皮下投与製剤として承認されています。
・2020年6月、当社は、臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」において、2つの新たな中間解析結果が得られたことを公表しました。解析の結果、「TAKHZYRO」は良好な忍容性を示し、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作の1ヵ月あたりの発現率は様々なサブグループで持続的かつ一貫して低下しており、延長期間中においてもHAE発作を抑制していることが示されました。本試験結果は、オンライン開催となった2020年欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI:European Academy of Allergy and Clinical Immunology)にて発表されました。
[アドベイト 一般名:血液凝固第VIII因子(遺伝子組換え)、rAHF]
・2020年6月、当社は、2020年世界血友病連盟世界会議(WFH2020)のオーラルプレゼンテーションにおいて、血友病A患者に対する「アドベイト」について長期の転帰を検討した実臨床における「AHEAD試験」からの最新結果を発表しました。「AHEAD試験」の実臨床におけるアウトカム試験の中間解析からは、出血ゼロを達成することができた血友病Aの患者の数が、血液凝固第VIII因子(遺伝子組換え)を投与することによって長年にわたって増加したことを示しています。予防を受けている患者では、出血ゼロの患者数は1年目の34%から6年目の53%に増加し、オンデマンド治療を受けている患者では、1年目の28%から6年目の38%に増加しました。
ニューロサイエンス
当社は、治療法が確立していない神経疾患を患っている患者さんに革新的な医薬品を提供することを目指しています。当社は、社内の専門知識やパートナーとの提携をいかして、アルツハイマー病、パーキンソン病といった神経疾患、ナルコレプシーやその他の睡眠障害、ハンチントン病といった希少中枢疾患に対するパイプラインを構築します。
消化器系疾患
消化器系疾患・肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうる治療法をお届けすることにフォーカスしています。「エンティビオ」および「アロフィセル」といった炎症性腸疾患におけるフランチャイズのポテンシャルを最大化するとともに、「ガテックス」のスペシャリティ消化器系疾患領域におけるポジショニングを拡大させ、社外との提携を通じて消化管運動関連疾患、セリアック病、肝疾患およびマイクロバイオーム(腸内細菌)における機会を探索し、パイプラインの構築を進めています。
[エンティビオ/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
・2020年4月、当社は、「ENTYVIO」の自己注射製剤について、カナダにおいて、既存療法または TNF-αアンタゴニスト infliximab に対して、効果不十分、効果消失、または不耐性であった、18歳以上の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の在宅での維持療法として承認されたことを公表しました。本承認は、中等症から重症の、活動期潰瘍性大腸炎の成人患者を対象とする、「ENTYVIO」皮下注用製剤の維持療法の有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験である「VISIBLE 1試験」に基づくものです。
・2020年5月、当社は、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎またはクローン病成人患者に対する維持療法として、「ENTYVIO」の皮下注射(SC)製剤の製造販売について、欧州委員会より承認を取得したことを公表しました。「ENTYVIO」のSC製剤は、プレフィルドシリンジ製剤およびペン製剤の両剤型で利用可能となります。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では製品のライフサイクル全体にわたってイノベーションを推進することにより、希少および複雑な疾患に対する血漿分画製剤による治療の価値を最大化させます。血漿分画製剤に特化した研究開発組織は、新たな治療ターゲットの特定、および、現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。PDTでは、世界中で、様々な希少疾患や、生命を脅かす、慢性および遺伝性疾患の患者さんに有効な治療を行う上で不可欠な治療薬を開発することに焦点を絞ります。
[開発コード:CoVIg-19 (旧 TAK-888)/ 一般名:抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤]
・2020年4月、当社とCSL Behring社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬となり得る血漿分画製剤の開発に関する提携契約、「CoVIg-19 Plasma Alliance」を締結し、本提携にBiotest、BPL、LFB、Octapharmaの各社が参画したことを公表しました。本提携を通じ、COVID-19による重篤な合併症を有する患者の治療薬となり得るノーブランドの製品として、抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の臨床開発に直ちに着手します。
・2020年5月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は参画メンバーとして血漿分画製剤に携わる企業を10社に拡大し、また、COVID-19から回復されたより多くの人々に血漿を提供してもらえるようにするために重要なサポートを行う血漿分画製剤の企業以外のグローバル機関も参画したことを公表しました。本アライアンスの発足当初に発表されたBiotest、BPL、CSL Behring、LFB、Octapharmaならびに当社に加え、新たな業界メンバーとしてADMA Biologics、BioPharma Plasma、GC Pharma、およびSanquinが参画します。これらの企業が一丸となり、COVID-19の治療選択肢となり得る薬剤の開発と流通を加速させるという本アライアンスの目標に寄与するため、専門知識に基づく助言、技術指導および/または物資による支援を提供します。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱、ジカウイルス感染、ノロウイルス感染など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国、シンガポール)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
・2020年6月、当社とNeurocrine Biosciences, Inc.(Neurocrine Biosciences社)は、当社の早期から中期開発段階の精神疾患領域パイプラインに関する開発および製品化に関する戦略的提携契約を締結したことを公表しました。当社は、本契約に基づき、統合失調症、治療抵抗性うつ病、無快楽症に関し臨床試験段階にある3つのパイプラインを含む7つのパイプラインプログラムについて、Neurocrine Biosciences社に対し独占的権利を付与します。
・2020年6月、当社とCarmine Therapeutics(Carmine社)は赤血球細胞外小胞に基づくCarmine社のREGENT(TM)テクノロジーを使用し、希少疾患領域における2つの標的に対する変革的な非ウイルス性遺伝子治療の創薬、開発、および商業化に関する共同研究契約を締結しました。
・2020年8月、「COVID R&D Alliance」のメンバーである、当社、AbbVie Inc.およびAmgen Inc.は「I-SPY COVID (Investigation of Serial Studies to Predict Your COVID Therapeutic Response with Biomarker Integration and Adaptive Learning) 臨床試験」(以下、「I-SPY COVID試験」)に第1例目の患者を登録したことを公表しました。「I-SPY COVID試験」は、高流量酸素療法を必要とするCOVID-19の重症入院患者を対象に、CCケモカイン受容体2および5(CCR2/CCR5)拮抗薬の「cenicriviroc」、PDE4阻害薬の「オテズラ(アプレミラスト)」、およびブラジキニンB2受容体拮抗薬の「フィラジル(イカチバント皮下注)」の有効性の評価を行う試験です。「I-SPY COVID試験」は、治療薬候補の評価に要する被験者数と期間を最小限に留めることにより試験効率性を向上する目的で設計された、「Quantum Leap Healthcare Collaborative(QLHC)」のアダプティブ・プラットフォーム臨床試験デザインを活用します。
・2020年8月、当社とNovavax, Inc.(以下、「Novavax社」)は、Novavax社が開発中の新型コロナウイルス感染症ワクチン「NVX-CoV2373」の日本における開発、製造、流通に向けた提携に関して基本合意したことを公表しました。「NVX-CoV2373」は、Novavax社の遺伝子組換えたんぱく質ナノ粒子技術を用いた安定したプレフュージョンたんぱく質であり、Novavax社が特許を有するアジュバント「Matrix-M™」(以下、「Matrix-M」)を含有しています。当社とNovavax社の提携により、日本における「NVX-CoV2373」の開発、製造、承認申請が進められます。Novavax社は、当社へワクチンの製造技術の使用許諾および移転を行い、「Matrix-M」を供給します。当社は、厚生労働省への承認申請ならびに、日本における「NVX-CoV2373」の製造および流通を行います。また、当社は、Novavax社からのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領します。当社は年間2億5千万回分以上の新型コロナウイルス感染症ワクチンの生産能力を整備することを見込んでいます。