四半期報告書-第144期第3四半期(令和2年10月1日-令和2年12月31日)

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2021/02/12 11:17
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(1) 業績の概要
当期(2020年4-12月期)の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円)
前年同期当期対前年同期
売上収益25,19524,275△919△3.6%
売上原価△8,416△7,4091,007△12.0%
販売費及び一般管理費△7,117△6,413704△9.9%
研究開発費△3,531△3,425105△3.0%
製品に係る無形資産償却費及び減損損失△3,291△3,076216△6.6%
その他の営業収益2981,185887297.8%
その他の営業費用△1,513△1,551△382.5%
営業利益1,6253,5871,962120.7%
金融収益32558025578.5%
金融費用△1,240△1,734△49439.9%
持分法による投資損益△151△8071△46.9%
税引前四半期利益5602,3541,793320.2%
法人所得税費用△133△563△431324.2%
四半期利益4271,7901,363319.0%

[売上収益]
売上収益は、前年同期から919億円減収(△3.6%)の24,275億円となりました。前年同期の実勢為替レートを当期に適用することにより算出した為替影響を除くと、売上収益は△1.0%の減収となりました。
当社の主要な疾患領域のうち、消化器系疾患、血漿由来の免疫疾患治療およびオンコロジー(がん)は増収となりました。しかしながら、これら疾患領域における増収は、希少疾患における競争の激化や後発品の浸透による影響、および製品ポートフォリオ全般に亘った為替変動による減収影響を受けて相殺されました。当期における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のグローバルな流行拡大に伴う売上収益に対する全体的な影響は、複数の要因が相殺し合い、重要性のあるものではありませんでした。ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域において、外出制限期間中に患者さんの医療機関訪問の頻度が減少する等のマイナス影響が見られました。この動向は、特に最近の数ヶ月、世界各所で著しいCOVID-19の流行拡大が起きていることもあり、当期を通じて変動してきました。これらのマイナス影響は、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大が流行拡大の初期に見られる等、処方動向によるプラス影響により一部相殺されております。
当社の主要な疾患領域以外の売上収益は、主に前年度に完了した複数の事業売却による減収影響、および高尿酸血症治療剤「ユーロリック」や痛風治療剤「コルクリス」等の特許満了製品の減収影響を受け、1,104億円の減収(△19.9%)となりました。
各疾患領域における売上収益の前年同期からの増減は、主に以下の製品によるものです。
・消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年同期から556億円増収(+10.4%)の5,888億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年同期から558億円増収(+21.2%)の3,193億円となり、売上成長を牽引しました。「エンティビオ」は、長期の寛解維持と安全性を示す唯一の腸管選択的な炎症性腸疾患(IBD)治療剤であり、米国およびヨーロッパで成長しているIBDの生物学的製剤市場で患者シェアを拡大しました。米国内の売上は、前年同期から347億円増収(+18.8%)の2,192億円となり、欧州およびカナダにおける売上は、前年同期から163億円増収(+25.4%)の805億円となりました。日本においては、主に潰瘍性大腸炎に対する効能により売上が伸長しました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、日本において新規処方が拡大し、売上は85億円増収(+15.2%)の641億円となりました。慢性特発性便秘症治療剤「RESOLOR / MOTEGRITY」は、米国市場への浸透がさらに進んだことにより、売上は39億円増収(+82.6%)の85億円となりました。短腸症候群治療剤「GATTEX / REVESTIVE」は、主に成人患者の平均治療期間が伸長したことにより、売上は32億円増収(+6.8%)の501億円となりました。「エンティビオ」、「タケキャブ」、「RESOLOR / MOTEGRITY」および「GATTEX / REVESTIVE」の売上成長により、特許満了製品である消化性潰瘍治療剤「パントプラゾール」(60億円の減収)や、逆流性食道炎治療剤「デクスラント」(46億円の減収)および慢性便秘症治療剤「アミティーザ」(33億円の減収)等、主に競争の激化および円高の影響を受けたその他製品の減収を吸収しました。
・希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年同期から388億円減収(△8.0%)の4,467億円となりました。希少血液疾患領域の売上収益は、406億円減収(△15.7%)の2,186億円となりました。「アドベイト」は、260億円減収(△21.1%)の971億円となり、「アディノベイト」は、10億円減収(△2.3%)の438億円となりました。これは主に米国の血友病Aのインヒビター非保有市場における競争の激化によるものです。「ファイバ」の売上は、主に欧州において、インヒビター保有市場の出血予防セグメントにおける競争圧力が高まったことにより、54億円減収(△13.5%)の342億円となりました。また、希少代謝性疾患領域の売上収益は、105億円減収(△7.9%)の1,218億円となりました。これは主に、副甲状腺機能低下症治療剤「NATPARA」を2019年9月に米国において回収したことにより、同製品の売上が105億円減収(△80.8%)の25億円となったことに起因します。遺伝性血管性浮腫領域の売上収益は、124億円増収(+13.1%)の1,064億円となりました。これは、「TAKHZYRO」の新規患者獲得により、同剤の売上が、170億円増収(+34.9%)の659億円となったことによります。なお、「フィラジル」は、後発品参入と「TAKHZYRO」への切り替え影響により、26億円減収(△11.5%)の201億円となり、「CINRYZE」は、主に「TAKHZYRO」への切り替え影響により、16億円減収(△8.7%)の173億円となりました。
・血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の売上収益は、前年同期から165億円増収(+5.6%)の3,130億円となりました。免疫グロブリン製剤の売上合計は、強い需要と供給能力の拡大により、227億円増収(+10.1%)の2,480億円となりました。特に、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」は、これら疾患に対する米国における標準治療剤としてのポジションを引き続き強固なものにしました。皮下注製剤である「CUVITRU」も2桁台の増収率となりました。また、主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「ALBUMIN GLASS」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は前年同期から61億円減収(△12.3%)の436億円となりました。これは、前年度上期の中国において、さらにその前の年度からの期ずれによる供給量の増加があり売上が大きくなったこと、および当第3四半期において「ALBUMIN GLASS」のバッチの一時的な出荷中断があったこと等によります。
・オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の売上収益は、前年同期から5億円増収(+0.2%)の3,185億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、服薬の利便性が高い経口投与の製品特性もあり、特に米国と中国での好調な業績が成長に寄与し、前年同期から98億円増収(+16.9%)の679億円となりました。「ニンラーロ」は週一回経口投与のカプセル剤であり、医療機関での点滴や注射を必要としないため、COVID-19拡大下において当期の最初の数ヶ月患者さんの通院負担を軽減することができました。また、悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、近年、とりわけ2019年末において複数の効能追加を取得した日本において特に伸長し、前年同期から49億円増収(+12.5%)の444億円となりました。白血病治療剤「アイクルシグ」の売上は、米国における新たなオムニチャネル販促アプローチおよび米国外における地理的拡大により、前年同期から34億円増収(+15.0%)の263億円となりました。非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、引き続き欧州および新興諸国での上市があったことにより、前年同期から14億円増収(+26.4%)の65億円となりました。これら製品の売上成長は、特許満了製品の売上減少によって相殺されました。多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の売上は、前年同期から149億円減収(△16.4%)の759億円となり、うち、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益は、2019年の欧州および中国における後発品の参入により、前年同期から47億円の大幅な減収(△55.6%)の37億円となりました。米国内の売上は、COVID-19に関連する懸念から患者さんが受診を控え、第一選択薬としての新規処方患者数が減少したこと、および2020年5月初めに競合他社の皮下注射製剤が米国において上市されたことから、前年同期から102億円減収(△12.4%)の722億円となりました。子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられる特許満了製品の「リュープロレリン」は、前年同期から74億円減収(△9.0%)の753億円となりました。これは、規制当局による査察を受けて、是正措置の一環である当社の品質基準遵守の取り組みを拡大して実施した日本の製造拠点における生産停止に関連しております。
・ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の売上収益は、前年同期から154億円減収(△4.7%)の3,151億円となりました。減収影響の一部は、アルツハイマー病治療剤「レミニール」の後発品が、2020年6月に日本において上市されたことによるものであり、同剤の売上は前年同期から73億円減収(△52.8%)の66億円となりました。また、不眠症治療剤「ロゼレム」および注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「ADDERALL XR」の売上も、2019年7月に米国における独占販売期間が満了したことによる減収影響を受けました。米国におけるADHD治療の主要製品である「バイバンス」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上は、前年同期から44億円減収(△2.1%)の2,024億円となりました。大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、前年同期から16億円減収(△3.0%)の527億円になりました。「バイバンス」および「トリンテリックス」の売上は、COVID-19に伴う外出制限期間中の外来患者数および診断数の減少と、服薬の一時的な中断による減収影響を受けてきました。COVID-19の流行拡大前の水準に一時的に正常化した時期もありましたが、直近の3ヶ月においては、世界各所での感染拡大により再度影響を受けました。
地域別売上収益
(単位:億円、%は売上収益の構成比)
売上収益:前年同期当期
日本4,67418.6%4,35117.9%
米国12,15748.3%11,89049.0%
欧州およびカナダ4,83519.2%5,00020.6%
ロシア/CIS5932.4%3871.6%
中南米1,1174.4%9543.9%
アジア(日本を除く)1,2735.1%1,1924.9%
その他(注)5462.2%5022.1%
合計25,195100.0%24,275100.0%

(注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
[売上原価]
売上原価は、前年同期から1,007億円減少(△12.0%)の7,409億円となり、売上原価率は30.5%(△2.9pp)となりました。これは主に、Shire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用の減少993億円によるものです。
[販売費及び一般管理費]
販売費及び一般管理費は、前年同期から704億円減少(△9.9%)の6,413億円となりました。この減少は主に、Shire社との統合による経費効率化およびコストシナジーのほか、出張および営業活動の減少等、COVID-19の影響に伴う経費の減少によるものです。
[研究開発費]
研究開発費は、Wave1(注)パイプラインの一部やその他の前臨床試験段階にある新規候補物質に関連する費用の増加がありましたが、主にパイプラインの重点化に関連する費用等の減少やCOVID-19の影響に伴う出張経費の減少により、対前年同期105億円減少(△3.0%)の3,425億円となりました。
(注)2024年度末までに承認取得を予定している当社の重点領域においてベスト・イン・クラスもしくはファースト・イン・クラスとなる12の新規候補物質
[製品に係る無形資産償却費及び減損損失]
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、前年同期から216億円減少(△6.6%)の3,076億円となりました。この減少は主に、2019年5月の中間解析を受けTAK-616 AMRプログラムの開発中止を決定したことに伴い、156億円の減損損失を前年同期に計上したことによるものです。
[その他の営業収益]
その他の営業収益は、前年同期から887億円増加(+297.8%)の1,185億円となりました。この増加は主に、SHP647および関連する権利の売却に関する当社グループの義務を解除する欧州委員会の決定に伴い、当社グループがSHP647に関する臨床試験プログラムを中止する意思決定を行ったことを反映し、これまで計上していた当該プログラムに関連する負債の再見積りを行った結果、602億円の益を計上したこと、また、アジア・パシフィック、ヨーロッパ、カナダにおけるノン・コア資産の譲渡完了に伴い372億円の益を計上したことによるものです。この増加は、前年同期に計上した、当社グループとTeva Pharmaceutical Industries Ltd.が設立した合弁会社である、武田テバ薬品株式会社に移管した長期収載品事業に関連する無形資産の減損に伴う繰延事業譲渡益の実現額、108億円により一部相殺されております。
[その他の営業費用]
その他の営業費用は、前年同期から38億円増加(+2.5%)の1,551億円となりました。この増加は主に、XIIDRAの欧州における販売許可申請を同社が取り下げたことに伴う条件付対価に関連する資産の公正価値の変動により、187億円の損失を当期に計上したことによるものです。この増加は、主にShire社との統合費用を含む事業構造再編費用が対前年同期172億円減少したことにより一部相殺されております。
[営業利益]
営業利益は、上記の要因を反映し、前年同期から1,962億円増益(+120.7%)の3,587億円となりました。
[金融損失]
金融収益と金融費用をあわせた金融損失は1,154億円の損失となり、前年同期から損失が239億円増加しました。当期の金融損失の増加は主に、2019年10月に上場した企業のワラントにかかる評価益が前年同期から209億円減少したことによるものです。
[持分法による投資損益]
当期の持分法による投資損益は、主に武田テバファーマ株式会社で認識された減損損失の減少により前年同期の持分法による投資損失151億円から71億円減少の80億円の損失となりました。なお、当期認識された減損損失は、武田テバファーマ株式会社においてジェネリック医薬品事業の一部および製造拠点の売却を決定したこと、および長期収載品事業の将来予測を見直したことに伴う、関連資産の回収可能価額の再評価によるものです。
[法人所得税費用]
法人所得税費用は、前年同期から431億円増加の563億円となりました。この増加は主に、税引前四半期利益の増加、および前年同期にスイスにおける税制改正に伴い計上された非資金性の繰延税金便益666億円によるものです。これらの影響は、前年同期におけるShire社との統合に関連する税務上の事業構造再編費用と一部相殺されております。なお、税務上の事業構造再編費用には、Shire社買収に伴う企業結合会計により認識された無形資産にかかる繰延税金負債に適用される税率変更により計上された非資金性の繰延税金費用526億円が含まれております。
[四半期利益]
四半期利益は、上記の要因を反映し、前年同期から1,363億円増益の1,790億円となりました。
当期(2020年4-12月期)における実質的な成長の概要
Coreと実質的な成長の定義
当社は、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。
「実質的な成長」は、当年度と前年度(四半期もしくは年間)の業績を共通の基準で比較するものであり、マネジメントによる業績評価に使用されています。これら共通の基準で比較される業績は、年間計画レートを用いた為替レートを一定として、事業等の売却影響およびその他の非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除し算定されます。当社は、この「実質的な成長」が、事業活動のパフォーマンスを表す共通の基準を提供するため、投資家に有用であると考えています。なお、本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
当社は、「Underlying Revenue Growth」(実質的な売上収益の成長)、「Underlying Core Operating Profit Growth」(実質的なCore営業利益の成長)および「Underlying Core EPS Growth」(実質的なCore EPSの成長)を重要な財務指標としています。
実質的な売上収益は、為替レートを一定として、財務ベースの売上収益に、報告期間における非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore営業利益は、為替レートを一定として、Core営業利益(以下に定義)に、報告期間における事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore EPSは、為替レートを一定として、純利益から、事業等の売却影響、およびCore EPS(以下に定義)の算出において控除された項目を調整した後、比較年度末の自己株式控除後の発行済株式総数で除して算定します。
Core営業利益は、純利益から、法人所得税費用、持分法にかかる投資損益、金融損益、その他の営業収益およびその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。
Core EPSは、純利益から、Core営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、重要性のある、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算定します。
実質的な業績
当期
実質的な売上収益の成長+1.1%
実質的なCore営業利益の成長+8.5%
実質的なCore営業利益率32.1%
実質的なCore EPSの成長+4.5%

[実質的な売上収益の成長]
実質的な売上収益の成長は、前年同期から+1.1%となりました。タケダの14のグローバル製品(注)の実質的な売上収益は、米国における「NATPARA」の回収や特許が満了した製品による減収影響があったものの、前年同期から+15.4%成長しました。
(注)タケダの14のグローバル製品消化器系疾患:エンティビオ、GATTEX/REVESTIVE、ALOFISEL希少疾患:NATPARA、アディノベイト/ADYNOVI、TAKHZYRO、エラプレース、VPRIV血漿由来の免疫疾患治療:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRU、ALBUMIN/FLEXBUMINオンコロジー:ニンラーロ、アルンブリグ
疾患領域別の実質的な売上収益の成長当期
消化器系疾患+13.7%
希少疾患△3.0%
希少代謝性疾患△1.0%
希少血液疾患△10.9%
遺伝性血管性浮腫+16.2%
血漿由来の免疫疾患治療+8.8%
オンコロジー+2.6%
ニューロサイエンス△1.7%
その他△12.7%
合計+1.1%

(注) 実質的な売上収益は、為替レートを一定として、非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整します。本調整前の疾患領域別の売上収益や主要な製品売上については「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績の概要 [売上収益]」をご参照ください。
実質的な売上収益の計算において控除した主な非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響は次の通りです。
・2019年7月に売却が完了した「XIIDRA」(ドライアイ治療剤)の前年同期の売上を控除して調整しております。
・2020年3月に売却が完了した中近東・アフリカ諸国における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2020年3月に売却が完了したロシア、ジョージアなどの独立国家共同体の国々における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2020年11月に売却が完了したアジア太平洋における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る当期と前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2020年12月までに売却の完了を予定していたことから、2021年1月に売却が完了した中南米における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る当期と前年同期の売上収益を控除して調整しております
・2021年1月に売却が完了した「TACHOSIL」(手術用パッチ剤)の当期と前年同期の売上を控除して調整しております。
・売却に合意したことを公表し、2020年12月までに売却が完了した、または完了を予定していたその他の案件についても、対象製品に係る当期と前年同期の売上を控除して調整しております。
[当期の実質的なCore営業利益の成長]
当期の実質的なCore営業利益の成長は、製品構成の変化に伴う売上総利益の減少があったものの、COVID-19の影響による経費減少およびコストシナジー等を反映し、前年同期から+8.5%となりました。
Shire社の統合費用や企業結合会計に伴う非資金性の費用など、当社の本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除した当期のCore営業利益は7,806億円となりました。
[当期の実質的なCore営業利益率]
当期の実質的なCore営業利益率は、前年同期から2.2pp増加の32.1%となりました。
[当期の実質的なCore EPSの成長]
当期の実質的なCore EPSの成長は、+4.5%となりました。
(2) 財政状態の分析
[資産]
当第3四半期末における資産合計は、前年度末から5,350億円減少し、12兆2,861億円となりました。無形資産は、主に償却により4,146億円減少しました。のれんは、主に当期の事業売却に伴う売却目的で保有する資産への振替の結果、1,877億円減少しました。これらの減少は、主に武田コンシューマーヘルスケア株式会社株式の譲渡(注1)に関連するのれんおよびその他の資産の振替による、売却目的で保有する資産の増加1,210億円と一部相殺されております。
(注1) 2020年8月、当社グループは武田コンシューマーヘルスケア株式会社株式をBlackstoneへ譲渡する契約を締結したことを公表しました。
[負債]
当第3四半期末における負債合計は、前年度末から4,469億円減少し、7兆6,467億円となりました。社債及び借入金は、借入金の返済、社債の償還およびコマーシャルペーパー発行額減少の結果、前年度末から3,423億円減少の4兆7,510億円(注2)となりました。また、繰延税金負債は1,342億円減少しております。
(注2) 当第3四半期末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆6,623億円および1兆888億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
銘柄
(外貨建発行額)
発行時期償還期限帳簿価額
米ドル建無担保普通社債
(1,520百万米ドル)
2015年6月2022年6月
~2045年6月
1,565億円
米ドル建無担保普通社債
(6,400百万米ドル)
2016年9月2021年9月
~2026年9月
6,283億円
米ドル建無担保普通社債
(500百万米ドル)
2017年7月2022年1月514億円
ユーロ建無担保普通社債
(5,250百万ユーロ)
2018年11月2022年11月
~2030年11月
6,605億円
米ドル建無担保普通社債
(4,500百万米ドル)
2018年11月2021年11月
~2028年11月
4,616億円
ハイブリッド社債
(劣後特約付社債)
2019年6月2079年6月4,973億円
米ドル建無担保普通社債
(7,000百万米ドル)
2020年7月2030年3月
~2060年7月
7,159億円
ユーロ建無担保普通社債
(3,600百万ユーロ)
2020年7月2027年7月
~2040年7月
4,518億円
コマーシャルペーパー2020年10月
~2020年12月
2021年1月
~2021年3月
390億円
合計3兆6,623億円

借入金:
名称
(外貨建借入額)
借入時期返済期限帳簿価額
シンジケートローン2016年4月2023年4月
~2026年4月
2,000億円
2017年4月2027年4月1,135億円

(1,500百万米ドル)
2017年4月2027年4月1,543億円
株式会社国際協力銀行
(3,700百万米ドル)
2019年1月2025年12月3,812億円
その他のバイラテラルローン2016年3月
~2017年4月
2023年3月
~2026年3月
2,100億円
その他298億円
合計1兆888億円


2020年4月、米ドル建およびユーロ建のシンジケート・タームローン借入金の借入契約に基づく返済100億円がありました。2020年7月9日、当社グループは元本合計7,000百万米ドルの米ドル建無担保普通社債および元本合計3,600百万ユーロのユーロ建無担保普通社債を発行しました。これらの社債の募集により調達した資金は、2020年7月10日の3,250百万米ドルおよび3,019百万ユーロのシンジケート・タームローンの繰上返済、ならびに2020年8月3日の額面金額2,400百万米ドル(償還期限:2021年9月)および1,250百万ユーロ(償還期限:2020年11月)の無担保普通社債の繰上償還に充てられました。2020年7月、2013年7月に発行された債務の返済1,300億円(借入金700億円、無担保普通社債600億円)がありました。さらに、2020年11月、Shire社買収に伴い発行された変動利付の無担保普通社債の満期償還1,000百万ユーロがありました。また、コマーシャルペーパーの発行残高は1,050億円減少しております。
[資本]
当第3四半期末における資本合計は、前年度末から881億円減少の4兆6,394億円となりました。この減少は、四半期利益の計上があったものの、2,837億円の配当金の支払により利益剰余金が634億円減少したことや、主に円高の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が510億円減少したことによるものです。
[キャッシュ・フロー]
(単位:億円)
前年同期(2019年4-12月期)当期(2020年4-12月期)
営業活動によるキャッシュ・フロー4,8436,100
投資活動によるキャッシュ・フロー2,5591,002
財務活動によるキャッシュ・フロー△8,613△7,183
現金及び現金同等物の増減額△1,211△81
現金及び現金同等物の期首残高7,0216,376
現金及び現金同等物に係る換算差額△134△118
売却目的で保有する資産との振替額(純額)6△1
現金及び現金同等物の期末残高5,6836,176

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期4,843億円から1,257億円増加の6,100億円となりました。これは四半期利益の増加1,363億円に加え、主に非資金性費用である繰延税金から構成される法人所得税費用の増加431億円等によりプラスの調整額が増加したこと、また、法人所得税等の支払額の減少および仕入債務及びその他の債務の増加に伴う増加影響がそれぞれ356億円および341億円あったことによるものです。これらの増加は、Shire社買収日において公正価値評価された棚卸資産の費用化の減少に伴い、棚卸資産において867億円の減少影響があったこと、およびパイプラインSHP647および関連する権利の売却に関する義務の解除による非資金性の収益の調整602億円等により一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期2,559億円から1,557億円減少の1,002億円となりました。これは主に、前年同期に「XIIDRA」の売却による収入3,755億円を計上したことに伴い、事業売却による収入が2,506億円減少したことによるものです。この影響は、有形固定資産の売却による収入、および投資の売却、償還による収入の増加それぞれ426億円および259億円と一部相殺されております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期△8,613億円から1,430億円増加の△7,183億円となりました。主な増加要因は、前年同期にハイブリッド社債5,000億円を発行した一方、当期に米ドル建社債7,000百万米ドルおよびユーロ建社債3,600百万ユーロを発行したことに伴い、社債の発行及び長期借入れによる収入が6,833億円増加したことです。また、コマーシャルペーパー発行残高の減少があったものの、主に2019年6月に短期借入金5,000億円を返済したことにより、短期借入金及びコマーシャルペーパーにおける増加影響が2,402億円となりました。これらの増加要因は、主に当期における早期償還および早期返済に伴う、社債の償還及び長期借入金の返済による支出の増加7,660億円により一部相殺されております。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第3四半期累計において、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組みに関する状況は以下のとおりです。
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ウイルスの複数の変異とともに、最近の数ヶ月、世界各所で著しい流行拡大が起きており、医療システムと医療従事者に多大な負担をかけています。ワクチン接種が次第に可能となり始めておりますが、変異種ウイルスの初期の拡大にこれがどのように影響するかは明らかになっておりません。当社は、過去1年間実施してきた既存の当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、これまでのところ影響は限定的です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な問題は発生しておらず、また、発生の可能性を予測しておりません。
この一年、当社は渡航制限や業界関連団体の集会への参加自粛、当社主催の集会の休止等、特定の事業活動を自主的に制限しております。
新たな臨床試験については、COVID-19の流行拡大の初期に、治療薬候補である血漿分画製剤(CoVIg-19)を除き、臨床試験の開始を一時的に休止しました。同時に、すでに進行中の臨床試験についても、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しましたが、これは一時的な措置であり、現在大部分の臨床試験は再開しております。
いくつかの臨床試験については、一定の遅延が見込まれており、再度、一時的に休止する可能性もありますが、臨床試験ごとに状況を注視するとともに、各国および各試験実施施設での状況も把握してまいります。
金融市場の動向は注視を続けており、流動性や資金調達に係る問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、バリュー(価値観)に基づき、従業員の安全確保、当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供、当社従業員が就業・居住するコミュニティでの感染の軽減およびサポートを中心に引き続き取り組んでおります。
当社は、COVID-19の流行拡大に伴う様々な問題に対処するため、2020年1月に、グローバル危機管理委員会を始動させ、社内外の専門家の支援のもと、様々な対策を講じております。具体的には、COVID-19流行拡大に対する従業員向けガイダンスの策定、関連情報の提供、必須業務における感染対策の強化および職場毎の事例対応プロトコールの導入などが含まれます。また、本委員会では、職場復帰が可能と判断できた時点で、安全かつ段階的な復帰を支援するための包括的なチェックリストも作成しました。
当社は、従業員の安全を確保する措置として、在宅勤務ポリシーの適用を継続し拡充したIT技術によりこれを支援しています。テレワークのガイダンスは、医療従事者と関わる外勤の従業員も可能な限り対象として、世界中の従業員に広範囲で適用しております。また、製造施設や研究所、血漿収集センターであるBioLifeにおいて引き続き勤務する必要のある従業員については、ウイルス感染を軽減するための安全措置を強化しました。
グローバル危機管理委員会ならびにReturn to the Workplace(職場復帰対策)チームは、新型コロナウイルスの侵入と感染を抑制しながらも、事業を継続および強化していくために「新しい職場環境」をどのように作るべきかについて、ガイダンスを作成しました。新しい職場プランは、科学、疫学、地域の公衆衛生事情に基づき、各国の状況に合わせて調整しておりますが、地方自治体の方針および公衆衛生関連規制の遵守、フェイスカバーの使用や物理的な距離を保つことなどの感染予防対策を含めた職場の準備、タケダの拠点における人口密度の低減、感染対策プロトコールの強化、個々の従業員の状況の考慮、慎重かつ段階的な実施など、共通原則・要件にも従っております。
また、当社のCOVID-19収束後の職場戦略においては、単一の戦略あるいは方針ではなく、基本方針、新しい職場のデザインに関するガイダンスおよびツールを策定・提供することで、各職場あるいは各機能のリーダーが、最適な職場環境を決定および導入できるようにしてまいります。
今後の状況については常に注視していくものの、移動および大規模な集会に関する制限については継続し、不要不急の移動、大規模な集会の開催や参加については今後新たな方針が示されるまで引き続き休止してまいります。
外勤の従業員については、医療従事者との対面の訪問業務を一部再開したものの、現在も大部分はバーチャルで実施しております。対面の訪問業務は、医療従事者の合意の下でのみ、当社が定める厳格な感染予防対策に加え、公衆衛生上求められる対策および医療機関から求められる追加の対策も行った上で実施しております。
当社は赤十字社や国連主導の組織を含む非営利団体(国連世界食糧計画(国連WFP)、国連人口基金(UNFPA)、国際原子力機関(IAEA))に対する約25百万米ドルの寄付金や現物寄付、社員によるマッチング寄付を通じて、COVID-19対策を支援しております。
事業の継続性の維持の側面では、当社医薬品の製造代替業者の選定を含め、適正な在庫水準を管理し、当社医薬品を患者さんに継続的に提供できる施策を整備しています。当施策は、主要な出発物質、添加剤、医薬品原料、医薬品原薬(API)ならびに製品のグローバルなサプライチェーン全体に対して適用しております。当社は、当社の医薬品を必要とされる方々に確実にお届けできるよう、引き続き状況を注視し、あらゆる必要な措置を講じて製品供給の継続性を確保してまいります。
研究開発においては、患者さんへの治験薬の直接配送や潜在的な中断の可能性も勘案した臨床試験デザインの再検討を可能な限り実施しています。また、臨床試験に参加されている患者さんの遠隔モニタリングが可能となるデジタル技術についても、引き続き検証および構築を進めてまいります。
CoVIg-19のプログラムは、COVID-19に対抗する治療法を開発するという当社の取り組みの一つです。当社は、2020年4月に血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、患者さん中心の価値観の下、一企業としての利益を顧みることなく、COVID-19の治療法開発を促進することに注力しております。2020年10月初旬には、CoVIg-19 Plasma Alliance が、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施する臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、患者さんの登録が開始されたことを公表しました。ITAC試験では、COVID-19により重篤化リスクのある患者さんを治療できる可能性のある、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)の安全性、忍容性、有効性を評価します。本試験は完了するまでに数か月を要すると考えておりますが、良好な結果が得られる想定の下に、規制当局への新薬承認申請に向けて準備を進めてまいります。COVID-19回復者の血漿にはCOVID-19に対する重要な抗体が含まれていることから、全米で実施中のThe Fight Is In Us キャンペーンを通じて、COVID-19回復者に血漿提供を呼び掛けております。
また、当社は、CoVIg-19 Plasma Allianceに加え、COVID-19に対処するため様々な取り組みを進めており、複数の既存製品およびパイプラインについて新型コロナウイルスに対する有効性を検証するとともに、グローバルな共同研究にも参画しております。
さらに、当社は、日本におけるCOVID-19ワクチンの供給に係る2つの提携について公表しました。一つ目は、Novavax社のCOVID-19ワクチン候補であるNVX-CoV2373の日本における開発、製造、流通に関する提携です。二つ目は、Moderna社のCOVID-19ワクチン候補であるmRNA-1273(日本での開発コード:TAK-919)の日本への輸入及び供給に関するModerna社および厚生労働省との提携です。
③ 2020年度第3四半期累計におけるCOVID-19影響
COVID-19の世界的な流行拡大に伴う、2020年度第3四半期累計の連結業績への影響は複数の要因が相殺し合い軽微でありました。売上収益については、ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域において、外出制限期間中に患者さんの医療機関訪問の頻度が減少する等のマイナス影響が見られました。この動向は、特に最近の数ヶ月、世界各所で著しいCOVID-19の流行拡大が起きていることもあり、当期を通じて変動してきました。これらのマイナス影響は、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大が流行拡大の初期に見られる等、処方動向によるプラス影響により一部相殺されております。営業経費については、渡航制限や集会の自粛等、特定の事業活動を自主的に制限したことにより経費使用が減少しました。これらの結果の利益に対する影響は軽微でした。
(4) 研究開発活動の内容および成果
当第3四半期累計の研究開発費の総額は3,425億円であります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。革新的なバイオ医薬品に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。革新的なバイオ医薬品における重点疾患領域(オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス、消化器系疾患)には高いアンメットメディカルニーズが存在し、当社はベストインクラスあるいはファーストインクラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、Shire社の買収によってさらに強化されましたが、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図ってまいりました。
当期におけるこれまでの主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「アルンブリグ」を含む肺がんを対象とするパイプラインおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社外との提携による新規のがん免疫療法標的および次世代基盤技術の追求ならびに革新的な細胞療法の探索、にフォーカスしています。
[ニンラーロ 一般名:イキサゾミブ]
・2020年5月、当社は、「ニンラーロ」について、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴の無い成人患者を対象としたファーストライン(一次)治療後の維持療法の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認の申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。今回の申請は、主にランダム化プラセボ対照二重盲検の多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。
・2020年6月、当社は、第25回欧州血液学会(EHA)において、2つの臨床試験結果をオーラルプレゼンテーションとして発表しました。本発表には、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴のない成人患者を対象として、経口で単剤投与された「ニンラーロ」のファーストライン維持療法としての有効性を評価した無作為化臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」における良好な結果も含まれています。また、当社は、非経口剤である「ボルテゾミブ」をベースとした3剤併用導入療法をすでに受けている初発の多発性骨髄腫患者を対象に、同じプロテアソーム阻害剤の経口薬である「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」との併用療法へ移行した際の有効性と安全性を検討した「US MM-6試験」から得られた重要な知見についても発表しました。
・2020年9月、当社は、第8回血液腫瘍学会議のバーチャル会議にて臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM2試験」のデータを発表しました。本試験は、自家幹細胞移植が適応とならない初発の多発性骨髄腫患者を対象として、「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」の併用療法を、プラセボと「レナリドミド」および「デキサメタゾン」の併用療法と比較して評価しました。本試験結果では、「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」の併用療法群で無増悪生存期間(PFS)の中央値が13.5ヵ月(プラセボ群21.8ヵ月に対しニンラーロ群35.3ヵ月、HR=0.830、p=0.073)改善したことが実証されましたが、統計的有意水準を満たしておらず、主要評価項目であるPFSは達成されませんでした。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
・2020年5月、当社は、「アイクルシグ」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「OPTIC(Optimizing Ponatinib Treatment In CML)」の中間解析データを発表しました。「OPTIC試験」は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療へ抵抗性または不耐性を示す慢性期の慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者に対する、有効性および安全性を最適化することを目的として、「アイクルシグ」の3つの投与開始用量(45mg~、30mg~あるいは15mg~)における奏効に基づく投与量調整レジメンをプロスペクティブに評価する、進行中の無作為化非盲検試験です。
・2020年12月、当社は、米国食品医薬品局(FDA)より、「アイクルシグ」について、少なくとも2種類以上のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療へ抵抗性または不耐性を示す慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)成人患者における医薬品承認事項変更申請(sNDA)の承認を取得したことを公表しました。改訂後の添付文書には、CP-CML患者に対して1日45mgから投与を開始し、BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量する、最適化された「アイクルシグ」の奏効に基づく投与量調整レジメンが追記されます。この投与量調整レジメンは、有効性を得ながら、動脈閉塞イベント(AOE)を含む有害事象(AE)のリスクを低減することによって、ベネフィット・リスクプロファイルの最適化を目的としています。
[アルンブリグ 一般名:ブリグチニブ]
・2020年5月、当社は、「アルンブリグ」について、米国食品医薬品局(FDA)が承認した検査により診断された成人の未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)転移性非小細胞肺がん患者に対する治療薬としてFDAより承認を取得したことを公表しました。今回の承認により、「アルンブリグ」の適応症にファーストライン(一次)治療が追加されました。
・2020年9月、当社は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)のバーチャル会議において、「アルンブリグ」のサブ解析データを発表しました。臨床第3相試験である「ALTA 1L試験」のサブ解析により、未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するファーストライン治療薬としての「アルンブリグ」について、頭蓋内病変に対する有効性にかかる説得力のあるエビデンスを確認するとともに、QOLの改善効果も見られました。
・2021年1月、当社は、「アルンブリグ」について、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を適応とする一次および二次以降の治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は主に、ALKチロシンキナーゼ阻害剤治療後に増悪したALK融合遺伝子陽性(以下、ALK陽性)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者さん72例を対象とした国内臨床第2相試験である「Brigatinib-2001 (J-ALTA)」およびALKチロシンキナーゼ阻害剤による治療歴のないALK陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者さんを対象とした海外臨床第3相試験である「AP26113-13-301(ALTA-1L)」の結果に基づくものです。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
・2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、欧州委員会(EC)より、現在の条件付承認に加えて、未治療の全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の成人患者に対するCHP(シクロホスファミド・ドキソルビシン・プレドニゾン)との併用治療に関して適応追加の承認を取得したことを公表しました。ALCLは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプです。
・2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫またはCD30陽性ホジキンリンパ腫の成人患者に対する治療薬として、中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。
[カボメティクス 一般名:カボザンチニブ]
・2020年4月、当社は、「カボメティクス」と小野薬品工業株式会社(小野薬品)のヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体、「オプジーボ」(ニボルマブ)について、未治療の進行性又は転移性の腎細胞がんを対象に両製剤の併用療法を評価した多施設国際共同無作為化非盲検第3相試験である「CheckMate -9ER試験」のトップライン結果が得られたことを公表しました。本試験において、「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法は、「スニチニブ」と比較して、最終解析で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を、あらかじめ計画されていた中間解析で副次評価項目である全生存期間(OS)、および奏効率(ORR)を改善しました。本試験結果を踏まえ、2020年10月、当社と小野薬品は「オプジーボ」と「カボメティクス」について、根治切除不能又は転移性の腎細胞がんを対象とした両製剤の併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。
・2020年9月、当社と中外製薬株式会社(中外製薬)は、抗PD-L1(Programmed Death-Ligand 1)ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク点滴静注」(アテゾリズマブ)とキナーゼ阻害剤「カボメティクス錠」の併用療法について、国内での開発を両社で実施する決定をしたことを公表しました。日本における両剤の併用療法の開発は、Roche社-Exelixis社間で締結された全世界における「アテゾリズマブ」と「カボザンチニブ」の併用療法に関する共同開発契約に基づき、日本国内での権利を有する当社と中外製薬が実施します。新たな治療法としての「アテゾリズマブ」と「カボザンチニブ」併用療法を検討する3つのグローバル臨床第3相臨床試験である「CONTACT試験」が複数のがん種を対象として進行中であり、当社と中外製薬は国内においてこれらの臨床試験に参加する予定です。
・2020年9月、ピボタル臨床第3相試験である「CheckMate-9ER試験」の結果がブリストル マイヤーズ スクイブとExelixis社より発表されました。本試験において、未治療の進行腎細胞がん(RCC)を対象に、「オプジーボ」(ニボルマブ)と「カボメティクス」の併用療法が、全生存期間(OS)を含む全ての有効性評価項目で有意な改善を示しました。「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法は、「スニチニブ」と比較して、死亡リスクを40%低減しました(ハザード比 [HR] 0.60;98.89% 信頼区間 [CI]:0.40 - 0.89;p=0.0010;OSの中央値は両群とも未達)。本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、「スニチニブ」単剤群(8.3カ月)と比較して、「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法群(16.6カ月)で2倍の延長を示しました(HR 0.51;95% CI:0.41 - 0.64;p⦅0.0001)。本試験結果は欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)のバーチャル会議のプレジデンシャルシンポジウムで「Proffered Paper」として取り上げられました。なお、本試験は、ブリストル マイヤーズ スクイブおよび小野薬品がスポンサーとなり、Exelixis社、Ipsen社および当社が共同出資を行っています。
・2020年11月、当社は、「カボメティクス」について、がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に対する治療薬として、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、主に、プラセボ群と比較して本剤の有効性が統計的に有意な結果を示し、かつ安全性プロファイルについても確認された二次治療以降の進行肝細胞癌患者を対象とした海外臨床第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である「CELESTIAL試験」、ならびに日本人における有効性および安全性を検討した国内臨床第2相非盲検単群試験である「Cabozantinib-2003試験」の結果に基づくものです。
[ゼジューラ 一般名:ニラパリブ]
・2020年9月、当社は、経口のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬「ゼジューラカプセル100㎎」について、「卵巣癌における初回化学療法後の維持療法、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌」を適応とする治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、海外臨床第3相試験である「PRIMA試験」、海外臨床第3相試験である「NOVA試験」、海外臨床第2相試験である「QUADRA試験」、ならびに日本人卵巣がん患者に対し安全性を検討した国内臨床第2相試験の「Niraparib-2001試験」、日本人卵巣がん患者に対し有効性および安全性を検討した国内臨床第2相試験の「Niraparib-2002試験」の結果に基づくものです。
・2020年11月、当社は、厚生労働省に「ゼジューラカプセル100㎎」の剤形追加として、「ゼジューラ錠100㎎」の製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の承認申請は、「ゼジューラカプセル」と「ゼジューラ錠」の同等性を確認した「ヒト生物学的同等性試験(3000-01-004 study)及び溶出試験」の結果に基づいています。「ゼジューラカプセル」の貯法は冷蔵ですが、このたび承認申請を行った「ゼジューラ錠」は、室温で管理することが可能となり、医療関係者の皆さんや患者さんにおける利便性の改善につながる可能性があります。
[開発コード:TAK-924 一般名:pevonedistat]
・2020年5月、当社は、「pevonedistat」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(ASCO: American Society of Clinical Oncology)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「Pevonedistat-2001」の結果を発表しました。本試験では、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)を含む造血器腫瘍の患者を対象に、「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法と「アザシチジン」単剤療法を比較しました。これらの結果より、「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法は非常に有効であり、有望な治療法であることが示されるとともに、HR-MDS患者群においては、「アザシチジン」単剤療法と同様の安全性プロファイルであり、全生存期間(OS)、無イベント生存期間(EFS)、完全寛解率(CR)および輸血非依存達成率を含む臨床的に意義のある複数の評価項目でも有用性が示されました。
・2020年7月、当社は、「pevonedistat」について、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)よりBreakthrough Therapyの指定を受けたことを公表しました。
[開発コード:TAK-788 一般名:mobocertinib]
・2020年4月、当社は、プラチナ製剤をベースとした化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する治療薬「mobocertinib」を米国食品医薬品局(FDA)がBreakthrough Therapyに指定したことを公表しました。
・2020年9月、当社は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)のバーチャル会議において、「mobocertinib」の臨床第1/2相試験の10カ月間の追跡調査結果を発表しました。本追跡調査では、上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性NSCLC患者において、1年以上の奏効期間(DoR)を達成したことが示されました。
・2021年1月、当社は、国際肺癌学会(International Association for the Study of Lung Cancer:IASLC)の2020年度世界肺癌学会議(World Conference on Lung Cancer :WCLC)の最新演題オーラルセッションにおいて、治療歴を有する上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん患者を対象とした「mobocertinib」の臨床第1/2相試験の新たなデータを発表しました。経口標的治療薬である「mobocertinib」は、治験責任医師の判定で奏効率35%、独立判定委員会(IRC)による判定で28%が確認され、臨床的に意義のある奏効を示し、IRCによる判定で奏効期間の中間値で17.5カ月と持続的奏効を示しました。安全性プロファイルは管理可能でした。2020年11月のデータカットオフ時からの安全性プロファイルは、同年5月のデータカットオフ時のものと一致していました。
希少遺伝子疾患および血液疾患
当社は、既存の治療パラダイムを変えうる、最近上市された「TAKHZYRO」を含む遺伝性血管性浮腫に注力するとともに、今後は希少血液疾患および希少代謝性疾患において新たなモダリティとプラットフォームを活用し、特定の疾患に対して機能的な治療を提供していくことを目指します。
[TAKHZYRO 一般名:lanadelumab-flyo]
・2020年5月、当社は、「TAKHZYRO」のプレフィルドシリンジ製剤の一部変更承認申請(Type II Variation)について、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)より承認を推奨する旨の肯定的見解が示されたことを公表しました。TAKHZYROは、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者における再発性発作の標準的抑制薬として、欧州では皮下投与製剤として承認されています。
・2020年6月、当社は、臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」において、2つの新たな中間解析結果が得られたことを公表しました。解析の結果、「TAKHZYRO」は良好な忍容性を示し、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作の1ヵ月あたりの発現率は様々なサブグループで持続的かつ一貫して低下しており、延長期間中においてもHAE発作を抑制していることが示されました。本試験結果は、オンライン開催となった2020年欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI:European Academy of Allergy and Clinical Immunology)にて発表されました。
・2020年11月、当社は、臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」より、「TAKHZYRO」による平均29.6ヵ月(標準偏差8.2ヵ月)の治療を受けた12歳以上の患者において、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作が長期的に抑制され、発作頻度の低下を示す最終結果が得られたことを公表しました。結果はピボタル試験における「TAKHZYRO」の安全性および有効性と一致するものでした。HAE発作の平均発現率は全体でベースラインから87.4%(最小-100%、最大852.8%)低下し(n=212)、予め設定された探索的評価項目では、「TAKHZYRO」300mgによる治療を2週毎に受けた患者の70%近く(68.9%)で発作のない期間が12ヵ月を超えました(n=209)。本データは、2020年米国アレルギー喘息免疫学会(American College of Allergy, Asthma and Immunology: ACAAI)のオンライン年次総会で発表され、ACAAIの学会誌Annals of Allergy, Asthma & Immunology 11月号にも掲載されました。
・2020年12月、当社は、「TAKHZYRO」皮下注射剤について、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の発作を抑制する発作予防薬として、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。
[アドベイト 一般名:血液凝固第VIII因子(遺伝子組換え)、rAHF]
・2020年6月、当社は、2020年世界血友病連盟世界会議(WFH2020)のオーラルプレゼンテーションにおいて、血友病A患者に対する「アドベイト」について長期の転帰を検討した実臨床における「AHEAD試験」からの最新結果を発表しました。「AHEAD試験」の実臨床におけるアウトカム試験の中間解析からは、出血ゼロを達成することができた血友病Aの患者の数が、血液凝固第VIII因子(遺伝子組換え)を投与することによって長年にわたって増加したことを示しています。予防を受けている患者では、出血ゼロの患者数は1年目の34%から6年目の53%に増加し、オンデマンド治療を受けている患者では、1年目の28%から6年目の38%に増加しました。
[開発コード:TAK-620 一般名:maribavir]
・2020年12月、当社は、移植後の難治性/抵抗性サイトメガロウイルス(CMV)感染治療薬「maribavir」の有効性および安全性を評価する臨床第3相試験の結果が得られたことを公表しました。「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」は、既存の抗ウイルス療法(「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」、「シドフォビル」のいずれか1剤またはその併用)に難治性または抵抗性のCMV感染に罹患する移植後の患者を対象に、「maribavir」または治験責任医師が認めた治療法(IAT)のいずれかを8週間投与して比較する多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照試験です。「SOLSTICE試験」では、IATとの比較において、投与8週終了時にCMV血症が消失した患者の割合と定義される主要評価項目を達成しました。また、投与8週終了時に達成し、さらに投与16週まで維持されたCMV血症の消失および症状コントロールと定義される主な副次的評価項目も達成しました。新たな安全性シグナルは確認されず、「maribavir」はIATと比較して好中球減少症の発生率の低下と関連していました。
ニューロサイエンス
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患を患っている患者さんに革新的な医薬品を提供することを目指しています。当社は、社内の専門知識やパートナーとの提携をいかして、アルツハイマー病、パーキンソン病といった神経疾患、ナルコレプシーやその他の睡眠障害、ハンチントン病といった希少中枢疾患に対するパイプラインを構築します。
[ブコラム 一般名:ミダゾラム]
・2020年9月、当社は、てんかん重積状態の治療剤である「ブコラム口腔用液」について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、けいれん性てんかん重積状態を発症した18歳未満の患者に対して「ブコラム」を頬粘膜投与した2つの国内臨床第3相多施設共同介入非無作為化非盲検試験の結果などに基づくものです。「ブコラム」は日本初のてんかん重積状態に対する頬粘膜投与製剤であり、医師の指導に従い、家庭内など医療機関外でも投与可能です。2020年10月、当社は「ブコラム」のNeuraxpharm Groupの子会社(Neuraxpharm社)への売却を完了しました。当社は、日本における製造販売権の保持者として、一定期間にわたり一定のサービスをNeuraxpharm社に提供します。
[開発コード:TAK-935/OV935 一般名:soticlestat]
・2020年8月、当社とOvid Therapeutics Inc.(Ovid社)は、ドラベ症候群(DS)またはレノックス・ガストー症候群(LGS)の小児患者を対象とした「soticlestat」の無作為化臨床第2相「ELEKTRA試験」の良好なトップラインデータを発表しました。「ELEKTRA試験」において、12週間の治験薬投与維持期に、プラセボ投与群では、けいれん発作(DS)および脱力発作(LGS)の頻度が中央値で3.1%増加したのに対し、「soticlestat」投与群ではベースラインから中央値で27.8%の統計学的に有意な減少が示され(プラセボ調整後の減少率の中央値=30.5%、p=0.0007、治験薬投与維持期において発作がみられた120例での有効性解析に基づく)、主要評価項目を達成しました。さらに、「ELEKTRA試験」の20週間の全治療期間(用量最適化期および治験薬投与維持期)中にプラセボ投与群ではけいれん発作(DS)および脱力発作(LGS)の頻度の変化が中央値で0.0%であったのに対し、「soticlestat」による治療を受けたDSおよびLGS患者群では中央値で29.8%減少しました(プラセボ調整後の減少率=25.1%、p=0.0024)。「soticlestat」の忍容性は概ね良好で、安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であり、新たに安全性で留意すべき点は認められませんでした。
消化器系疾患
消化器系疾患・肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうる治療法をお届けすることにフォーカスしています。「エンティビオ」および「ALOFISEL」といった炎症性腸疾患におけるフランチャイズのポテンシャルを最大化するとともに、「GATTEX/REVESTIVE」のスペシャリティ消化器系疾患領域におけるポジショニングを拡大させ、社外との提携を通じて消化管運動関連疾患、セリアック病、肝疾患およびマイクロバイオーム(腸内細菌)における機会を探索し、パイプラインの構築を進めています。
[エンティビオ/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
・2020年4月、当社は、「エンティビオ」の自己注射製剤について、カナダにおいて、既存療法または TNF-αアンタゴニスト 「infliximab」 に対して、効果不十分、効果消失、または不耐性であった、18歳以上の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の在宅での維持療法として承認されたことを公表しました。本承認は、中等症から重症の、活動期潰瘍性大腸炎の成人患者を対象とする、「エンティビオ」皮下注用製剤の維持療法の有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験である「VISIBLE 1試験」に基づくものです。
・2020年5月、当社は、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎またはクローン病成人患者に対する維持療法として、「エンティビオ」の皮下注射(SC)製剤の製造販売について、欧州委員会より承認を取得したことを公表しました。「エンティビオ」のSC製剤は、プレフィルドシリンジ製剤およびペン製剤の両剤型で利用可能となります。
・2020年9月、当社は成人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした維持療法に関する「エンティビオ」の皮下注射製剤の米国における開発プログラムの進捗を公表しました。当社は2020年8月にFDAと会議を行い、当社が新しく得たデータの評価を得るとともに、「エンティビオ」皮下注射製剤の承認を支持するのに必要な追加データについて助言を求めました。会議において、追加で必要な注射デバイスのデータに関して明確な理解が得られたため、その対応に向けて取り組んでいます。継続的な注射デバイスの試験実施に時間を要することから、米国での中等症から重症の潰瘍性大腸炎を対象とした「エンティビオ」皮下注射製剤の発売は、承認が得られた後、2022年になる可能性があります。
・2020年10月、当社は、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とした、「エンティビオ」の皮下注射製剤による維持療法の長期安全性および有効性を検討する非盲検長期継続投与(VISIBLE OLE)試験の中間解析結果を発表しました。本試験における安全性の主要評価項目の評価において、潰瘍性大腸炎の患者集団の中間解析データから、2年間の「エンティビオ」皮下注射製剤による維持療法後の長期安全性に関する所見が「エンティビオ」の既報の安全性プロファイルと一致していることが示されました。また、この患者集団では、本試験の臨床的有効性の評価項目である臨床的寛解(注1)の維持およびステロイドフリーでの臨床的寛解(注2)が得られた患者の割合から、治療による臨床的効果が継続的に示されました。これらのデータは、バーチャルで開催された欧州消化器病週間(United European Gastroenterology Week: UEG Week)におけるオーラルプレゼンテーションで発表されました。
(注1)主要評価項目である臨床的寛解は、部分的Mayoスコアが2ポイント以下、かつ全てのサブスコアが1ポイント以下と定義
(注2)ステロイドフリーの臨床的寛解は、ベースライン(0週目)で経口コルチコステロイドを使用している患者として定義
[GATTEX/REVESTIVE 一般名:テデュグルチド]
・2020年10月、当社は、「テデュグルチド」(遺伝子組換え)について、短腸症候群治療剤として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の申請は、国内で実施された成人および小児を対象とした臨床第3相試験、ならびに海外にて行われた試験結果に基づくものです。これらの試験において、本剤の有効性が認められ、安全性に大きな問題は見られませんでした。
[開発コード:TAK-721 一般名:ブデソニド経口懸濁液]
・2020年12月、当社は、好酸球性食道炎の治療薬として特異的にデザインされ開発中のブデソニド経口懸濁液である「TAK-721」について、新薬承認申請(NDA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査に指定されたことを公表しました。承認された場合、「TAK-721」は好酸球性食道炎の治療薬として初のFDA承認となる見込みであり、製品名は「Eohilia」を予定しています。「TAK-721」はこれまでにFDAからBreakthrough TherapyおよびOrphan Drugの両方の指定を受けています。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では製品のライフサイクル全体にわたってイノベーションを推進することにより、希少および複雑な疾患に対する血漿分画製剤による治療の価値を最大化させます。血漿分画製剤に特化した研究開発組織は、新たな治療ターゲットの特定、および、現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。PDTでは、世界中で、様々な希少疾患や、生命を脅かす、慢性および遺伝性疾患の患者さんに有効な治療を行う上で不可欠な治療薬を開発することに焦点を絞ります。
[開発コード:CoVIg-19 (旧 TAK-888) 一般名:抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤]
・2020年4月、当社とCSL Behring社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬となり得る血漿分画製剤の開発に関する提携契約、「CoVIg-19 Plasma Alliance」を締結し、本提携にBiotest、BPL、LFB、Octapharmaの各社が参画したことを公表しました。本提携を通じ、COVID-19による重篤な合併症を有する患者の治療薬となり得るノーブランドの製品として、抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の臨床開発に直ちに着手します。
・2020年5月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は参画メンバーとして血漿分画製剤に携わる企業を10社に拡大し、また、COVID-19から回復されたより多くの人々に血漿を提供してもらえるようにするために重要なサポートを行う血漿分画製剤の企業以外のグローバル機関も参画したことを公表しました。本アライアンスの発足当初に発表されたBiotest、BPL、CSL Behring、LFB、Octapharmaならびに当社に加え、新たな業界メンバーとしてADMA Biologics、BioPharma Plasma、GC Pharma、およびSanquinが参画します。これらの企業が一丸となり、COVID-19の治療選択肢となり得る薬剤の開発と流通を加速させるという本アライアンスの目標に寄与するため、専門知識に基づく助言、技術指導および/または物資による支援を提供します。
・2020年10月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施する臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、患者が登録されたことを公表しました。「ITAC試験」では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により重篤な合併症のリスクのある入院した成人の治療における、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)の安全性、忍容性、有効性を評価します。「ITAC試験」は、国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、NIHのグローバルなINSIGHTネットワークを通じて米国やメキシコ、およびその他16カ国の5大陸にわたる最大58施設において成人患者500人を対象に実施される予定です。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱、新型コロナウイルス感染、ジカウイルス感染、ノロウイルス感染など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国、シンガポール)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[開発コード:mRNA-1273(日本での開発コード:TAK-919) 一般名:新型コロナウイルス感染症ワクチン]
・2020年10月、当社は、Moderna, Inc.(Moderna社)の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補である「mRNA-1273」を、2021年前半より、5,000万回の接種分を輸入し、日本において供給することを公表しました。この日本における供給は、日本国内での「mRNA-1273」の製造販売承認取得後に行われます。この取り組みは、当社、Moderna社、厚生労働省の三者間の契約に基づくものです。当該契約に基づき、当社は日本国内に「mRNA-1273」ワクチン5,000万回の接種分を流通させるために必要な製造販売承認の取得を目指します。Moderna社は、ワクチン最終製品の提供に加え、当社へ臨床開発および製造販売承認申請に関する支援を行います。
・2021年1月、当社は、「TAK-919」について、国内での臨床第1/2相試験を開始したことを公表しました。本試験は、成人被験者200例を対象に、「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価するプラセボ対照試験です。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
・2020年6月、当社とNeurocrine Biosciences, Inc.(Neurocrine Biosciences社)は、当社の早期から中期開発段階の精神疾患領域パイプラインに関する開発および製品化に関する戦略的提携契約を締結したことを公表しました。当社は、本契約に基づき、統合失調症、治療抵抗性うつ病、無快楽症に関し臨床試験段階にある3つのパイプラインを含む7つのパイプラインプログラムについて、Neurocrine Biosciences社に対し独占的権利を付与します。
・2020年6月、当社とCarmine Therapeutics(Carmine社)は赤血球細胞外小胞に基づくCarmine社のREGENT(TM)テクノロジーを使用し、希少疾患領域における2つの標的に対する変革的な非ウイルス性遺伝子治療の創薬、開発、および商業化に関する共同研究契約を締結しました。
・2020年8月、「COVID R&D Alliance」のメンバーである、当社、AbbVie Inc.およびAmgen Inc. (Amgen社)は「I-SPY COVID (Investigation of Serial Studies to Predict Your COVID Therapeutic Response with Biomarker Integration and Adaptive Learning) 臨床試験」(I-SPY COVID試験)に第1例目の患者を登録したことを公表しました。「I-SPY COVID試験」は、高流量酸素療法を必要とするCOVID-19の重症入院患者を対象に、CCケモカイン受容体2および5(CCR2/CCR5)拮抗薬の「cenicriviroc」、PDE4阻害薬の「オテズラ(アプレミラスト)」、およびブラジキニンB2受容体拮抗薬の「フィラジル(イカチバント皮下注)」の有効性の評価を行う試験です。「I-SPY COVID試験」は、治療薬候補の評価に要する被験者数と期間を最小限に留めることにより試験効率性を向上する目的で設計された、「Quantum Leap Healthcare Collaborative(QLHC)」のアダプティブ・プラットフォーム臨床試験デザインを活用します。
・2020年8月、当社とNovavax, Inc.(Novavax社)は、Novavax社が開発中の新型コロナウイルス感染症ワクチン「NVX-CoV2373」の日本における開発、製造、流通に向けた提携に関して基本合意したことを公表しました。「NVX-CoV2373」は、Novavax社の遺伝子組換えたんぱく質ナノ粒子技術を用いた安定したプレフュージョンたんぱく質であり、Novavax社が特許を有するアジュバント「Matrix-M™」を含有しています。当社とNovavax社の提携により、日本における「NVX-CoV2373」の開発、製造、承認申請が進められます。Novavax社は、当社へワクチンの製造技術の使用許諾および移転を行い、「Matrix-M™」を供給します。当社は、厚生労働省への承認申請ならびに、日本における「NVX-CoV2373」の製造および流通を行います。また、当社は、Novavax社からのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領します。当社は年間2億5千万回分以上の新型コロナウイルス感染症ワクチンの生産能力を整備することを見込んでいます。
・2020年9月、当社は細胞医薬品の製造能力を拡張するため、米国マサチューセッツ州ボストンの研究開発拠点内に研究開発用の細胞医薬品製造施設(24,000平方フィート)を新設したことを公表しました。新施設ではエンド・ツー・エンドの研究開発を行い、当初はがん領域に重点を置き、他の疾患領域への拡大の可能性を探りながら、当社の次世代細胞療法の開発に向けた取り組みをさらに加速します。
・2020年10月、当社とArrowhead Pharmaceuticals Inc.(Arrowhead社)は、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患(AATLD)を対象とし、現在臨床第2相試験の段階にあるRNA干渉(RNAi)治療候補薬「ARO-AAT」の開発に向けた提携およびライセンス契約を締結したことを公表しました。「ARO-AAT」は、「AATLD」の進行を引き起こす変異型α-1アンチトリプシン蛋白の産生を低減する目的で設計されたファーストインクラスの治療薬となる可能性があります。本契約に基づき、当社とArrowhead社は、「ARO-AAT」を共同で開発するとともに、本剤が承認された場合、米国においては両社が利益を50:50で折半する形で共同販売を行います。当社は、米国外の全世界における販売戦略を主導するとともにARO-AATの独占販売権を取得します。
・2020年12月、当社とペプチドリーム株式会社は、神経筋疾患領域における複数のペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate、以下「PDC」)創製に関する包括的な共同研究および独占的ライセンス契約を締結したことを公表しました。神経筋疾患領域においては、疾患に対する理解が進んでいる一方、治療にあたっては全身に広く存在する標的組織に治療薬を届けることが必要であり、医薬品開発の大きな課題となっています。今回の契約では、ペプチドリーム株式会社とJCRファーマ株式会社が開発したトランスフェリン受容体結合ペプチドと当社が選択した医薬品候補化合物によるPDC医薬品を創製することでこれらの課題に取り組み、神経筋疾患の治療薬において組織内分布プロファイルを向上させることを目標としています。
・2020年12月、「COVID R&D Alliance」のメンバーである、当社、Amgen社、およびUCB, Inc.(UCB社)は、「COMMUNITY(COVID-19 Multiple Agents and Modulators Unified Industry Members)試験」に最初の患者を登録したことを公表しました。「COMMUNITY試験」は、新型コロナウイルス感染症の入院患者を対象とした複数の治療薬候補の検討が可能な、無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブ・プラットフォーム試験です。コントロール不良の血管および免疫炎症反応は、新型コロナウイルス感染症の重症患者にみられる顕著な症状であることが確認されています。このような患者では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や脳卒中、死亡のリスクが高まるおそれがあります。「COMMUNITY試験」に追加される最初の治療薬は、免疫反応またはそれによって生じる炎症を抑制またはコントロールする可能性に基づいて選択されました。これら治療薬には次のものが含まれます。:Amgen社の「オテズラ」(一般名:apremilast):免疫反応による炎症を抑制する可能性があります。;当社の「lanadelumab」:開発中の静脈内注射製剤で、カリクレイン-キニン系の調整によりブラジキニン産生を抑制することにより、炎症を軽減する可能性があります。;UCB社の「zilucoplan」:開発中の薬剤で、ARDSの原因となる免疫系の過剰活性化を抑制する可能性があります。