有価証券報告書-第143期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 15:07
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(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当年度の業績および財政状態は以下のとおりとなりました。
売上収益3兆2,912億円[前年度比1兆1,940億円( 56.9%)増]
研究開発費4,924億円[ 〃1,241億円( 33.7%)増]
営業利益1,004億円[ 〃1,373億円( 57.8%)減]
税引前当期利益
(△は損失)
△608億円[ 〃1,884億円( 147.6%)減]
当期利益443億円[ 〃908億円( 67.2%)減]
基本的1株当たり利益28円41銭[ 〃112円20銭( 79.8%)減]
資産合計12兆8,211億円[前年度末比9,717億円( 7.0%)減]
負債合計8兆936億円[ 〃5,132億円( 6.0%)減]
資本合計4兆7,275億円[ 〃4,585億円( 8.8%)減]

なお、当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの経営成績の記載を
省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照下さい。
③ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当年度における生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)
医薬品事業1,554,934151.1
合計1,554,934151.1

(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 生産実績金額は、消費税等を除いた販売価格によっております。
3 Shire社の買収に伴い、生産実績が増加しております。
(b) 受注状況
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。
一部の事業において受注生産を行っていますが、受注高および受注残高の金額に重要性はありません。
(c) 販売実績
当年度における販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
医薬品事業3,291,18856.9
(国内)( 592,786 )( 3.8 )
(海外)( 2,698,402 )( 76.8 )
連結純損益計算書計上額
(うち知的財産権収益・役務収益)
3,291,188
( 87,036 )
56.9
( 22.7 )

(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 販売実績は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、総販売実績に対する割合が100分の10未満となっている年度については記載を省略しております。
相手先前年度当年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
㈱メディパルホールディングスおよびそのグループ会社225,96210.8
アメリソースバーゲン・コーポレーションおよびそのグループ会社367,62511.2
マッケソン・コーポレーションおよびそのグループ会社342,21010.4

4 販売実績金額は、消費税等を除いた金額であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(a) 当年度の経営成績の分析
(ⅰ) 当社グループの経営成績に影響を与える事項
事業の概況
当社は、バリュー(価値観)、すなわち当社の経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考える、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。当社は、革新的な医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造、および販売を主要な事業としており、グローバルに展開した事業基盤をもとに、世界各国で医療用医薬品を販売しています。
当社は、既存事業の自立的な伸長と企業買収を通じて成長してまいりました。これまで複数の企業買収を実施したことにより、疾患領域、地理的拠点、パイプラインの拡大を推進してまいりました。特に2019年1月にShire社を買収したことにより、当社の消化器系疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の領域が強化され、希少疾患と血漿分画製剤の主導的地位を獲得しました。また、研究開発エンジンのさらなる強化と相互補完的で強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインの構築を実現しました。さらに、販売においては、本買収は米国におけるプレゼンスを飛躍的に向上させました。
当社は、Shire社買収の対価の現金部分の資金を調達するため、多額の負債を計上しましたが、営業活動から生じるキャッシュ・フローを用いると共にノン・コア資産の処分を進めることにより、レバレッジの低下を引き続き速やかに実現させる方針です。
当社グループの事業は単一セグメントであり、資源配分、業績評価、および将来業績の予測においてマネジメントの財務情報に対する視点と整合しております。2020年3月期における売上収益および営業利益はそれぞれ3兆2,912億円および1,004億円であります。
当社グループの経営成績に影響を与える事項
当社グループの経営成績は、グローバルな業界トレンドや事業環境における以下の事項に影響を受けます。
買収
当社グループは、研究開発能力を拡大し(新たな手法に展開することを含みます。)、新しい製品(開発パイプラインや上市済み製品)やその他の戦略的領域を獲得するために、新たな事業を買収する可能性があります。同様に、当社グループの主な成長ドライバーに注力するため、また当社グループのポートフォリオを維持するために、事業や製品ラインを売却しております。
これらの買収は企業結合として会計処理され、取得した資産および引き受けた負債は公正価値で計上されております。当社グループの業績は、通常、棚卸資産、および有形固定資産の公正価値の増加や、無形資産の認識に伴う調整にかかる費用および償却費の計上を含む企業結合会計により影響を受けます。また、買収の対価が追加的な借入金で賄われている場合、支払利息の増加も当社グループの業績に影響を与えます。
当社グループは、2019年1月8日、約6兆2,100億円を対価としてShire社を買収し、このうち3兆294億円を現金にて、残額を主に当社普通株式にて支払いました。当社グループは、対価の現金部分の資金を調達するため、3兆2,959億円の有利子負債を計上し、また買収を通じ1兆6,032億円のShire社の有利子負債を引き受けました。当該有利子負債は連結財政状態計算書に計上されております。2019年3月期において買収日における暫定的なShire社の買収に係る取得対価の配分を行い、3兆874億円ののれんおよび3兆8,993億円の無形資産を認識しております。2020年3月期において、当該取得対価の配分が完了したことに伴い前期取得した資産および引き受けた負債の公正価値を遡及修正しており、遡及修正を含むShire社買収日ののれんおよび無形資産はそれぞれ3兆1,655億円、および3兆7,691億円であります。完了したShire社の買収に係る取得対価の配分の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注記 31 企業結合」をご参照ください。
Shire社買収は、当社グループの製品ポートフォリオや地理的なプレゼンスの大幅な拡大等を通して、当社グループの事業に大きな変化をもたらしました。当社グループの業績は、売上収益及び関連費用の増加、取得した無形資産に係る償却費、および在庫の公正価値調整の費用化に起因する追加的な費用、買収資金を調達するための借入金に関連する支払利息、また事業統合に係る費用の支払い等により、大きく影響を受けます。Shire社買収完了と当社事業への統合に伴い、Shire社買収完了から3期目の会計年度末までに、売上、販売管理機能、研究開発の合理化に向けた取り組みや製品の製造と供給における効率化を通じ、年間約23億米ドルの税引前シナジーが継続的に発生すると予想しております。当社グループは、このようなシナジーを実現するために、Shire社買収完了から会計期間3期にわたり、約30億米ドルの臨時的な費用を要すると考えております。当社グループは、大幅なキャッシュ・フロー創出により、安定した配当政策や、買収完了後のレバレッジ低下を維持することができると考えており、速やかなレバレッジ低下を進めるため、ノンコア資産の処分を開始しております。
買収および上記の影響により、当社グループの業績は期間比較ができない可能性があります。
事業売却
買収に加え、当社グループは、主要な成長ドライバーに注力し、また長期借入金を速やかに返済するための追加キャッシュ・フローを創出するため、事業や製品ラインを売却しております。前年度および当年度における主要な事業売却は以下となります。
•2018年7月、当社グループの連結子会社であるMultilab Indústria e Comércio de Produtos Farmacêuticos Ltda.の全株式およびそれに伴う全ての資産をNovamed Fabricação de Produtos Farmacêuticos Ltd.に譲渡しております。
•2018年8月、当社グループが保有する広東テックプール・バイオファーマCo., Ltd.の全株式およびそれに伴う全ての資産をShanghai Pharmaceutical Holding Co.に2億8,000万米ドル(308億円(注))で譲渡し、2019年3月期において184億円の事業譲渡益を計上しております。
•2019年7月、当社グループはLifitegrast点眼剤Xiidra®5%(以下、「XIIDRA」)をNovartis AGに34億米ドル(3,755億円)で譲渡し、今後追加で最大19億米ドル(2,062億円(注))のマイルストンを受領する可能性があります。なお、当譲渡における譲渡損益に重要性はありません。
•2020年3月、当社グループの中近東・アフリカ諸国およびロシア・ジョージア・独立国家共同体の国々の一部のノンコア資産をAcino International AGおよびSTADA Arzneimittel AGに合計約8億6,000万米ドル(約919億円(注))で譲渡しており、2020年3月期に売却目的保有資産に分類した際に129億円の減損損失を計上しております。当譲渡における譲渡損益に重要性はありません。
•2020年3月、当社グループはラテンアメリカに限定された一部のノンコア資産をHypera S.Aに8億2,500万米ドル(約895億円(注))で譲渡する契約を締結しております。
•2020年4月、当社グループは欧州で販売する一般用医薬品および医療用医薬品ポートフォリオの一部、ならびにデンマークおよびポーランドに所在する2つの製造拠点を、ノンコア資産としてOrifarm Groupに、一定の法律上・規制上のクロージング条件を満たすことを前提に、最大6億7,000万米ドル(727億円(注))で譲渡する契約を締結しております。
•2020年4月、当社グループは欧州委員会による独占禁止法上の懸念が生じた結果、Ethicon, Inc.とのTachoSil譲渡契約を解除しておりますが、継続してTachoSilの売却機会を模索しております。
•2020年6月、当社グループはアジア・パシフィックの国々のみで販売する当社ノン・コア資産である一部の一般用医療薬品および医療用薬品を、一定の法律上・規制上のクロージング条件を満たすことを前提に、総額最大2億7,800万米ドル(302億円(注))でCelltrion Inc.に譲渡する契約を締結しております。
当社グループは速やかなレバレッジ低下を進めるため、引き続きノンコア資産の処分を行います。
(注) 2020年3月31日期末為替レートで米ドルを日本円に換算しております。
特許保護と後発品との競争
医薬品は特に、特許保護や規制上の独占権によって市場競争が規制されることにより、当社グループの業績に貢献する場合があります。代替治療の利用が容易でない新製品は当社グループの売上の増加に貢献します。ただし、保護されている製品についても、効能、副作用や価格面で他社との競争が存在します。一方で、特許保護もしくは規制上の独占権の喪失や満了により、後発品が市場に参入するため、当社グループの業績に大きな悪影響を及ぼすことがあります。当社グループの主要製品の一部は、特許やその他の知的財産権保護の満了により、厳しい競争に晒されており、あるいは晒されると予想しております。例えば、米国において当社グループの最大の売上製品の一つであるベルケイドに含まれる有効成分のボルテゾミブの特許権が満了したことにより、ボルテゾミブを含む競合製品が販売されています。これにより、ベルケイドの売上が減少しており、競合品が市場に参入することにより当社製品の売上がさらに大幅に減少する可能性があります。後発品を販売する他社が特許権の有効性に対する申し立てに成功する場合、もしくは想定される特許侵害訴訟に係る費用以上のベネフィットを前提として参入することを決定する場合があります。また、当社グループの特許権の有効性、あるいは製品保護に対する申し立てが提起された場合には、関連する無形資産の減損損失を認識する可能性があります。
原材料の調達による影響
重要な原材料を社内外から調達することができない場合に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。例えば、ヒト血漿は当社グループの血漿分画製剤において重要な原材料であります。血漿をより多く収集するため、原料血漿の収集や血漿分画に関連する施設への委託、及び規制当局からの承認を受ける取り組みを行っております。
外国為替変動
2020年3月期において、当社グループでは日本以外の売上が82.0%を占めております。当社グループの収益および費用は、特に当社の表示通貨である日本円に対する米ドルおよびユーロの外国為替レートの変動に影響を受けます。円安は日本円以外の通貨による収益の増加要因となり当社グループの業績に好影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の増加により相殺される可能性があります。反対に、円高は日本円以外の通貨による収益減少要因となり当社グループの業績に悪影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の減少により相殺される可能性があります。為替変動リスクを低減するため、当社グループは重要な一部の外貨建取引について、主に先物為替予約、通貨スワップおよび通貨オプションを利用しヘッジを行っております。
季節的要因
当社グループの売上収益、営業利益および当期利益は、主に日本国内での売上収益の変動により2019年3月期および2020年3月期において第4四半期に減少しています。日本の医薬品卸売業者は、一般的に3月31日である期末に向けて在庫数が減少するよう調整する傾向があり、第4四半期における当社グループの売上収益の減少につながっています。また、日本の医薬品卸売業者は年末年始休暇に向けて在庫数を増やす傾向があり、10月1日から12月31日までの第3四半期に売上収益が増加いたします。
(ⅱ) 重要な会計方針
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成されております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産および負債の金額、決算日現在の偶発資産および偶発負債の開示、ならびに報告期間における収益および費用の金額に影響を及ぼす見積りおよび仮定の設定を行うことが求められております。見積りおよび仮定は、継続的に見直されます。経営者は、過去の経験、ならびに見積りおよび仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき当該見積りおよび仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積りおよび仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積りおよび仮定に影響を受ける重要な会計方針は以下の通りであります。なお、見積りおよび仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
収益認識
当社グループの収益は主に医薬品販売に関連したものであり、製品に対する支配が顧客に移転した時点で認識されております。収益の認識額は、当社グループが製品と交換に受け取ると見込まれる対価に基づいております。一般的には、出荷時または顧客による受領時点もしくはサービスが履行された時点で収益は認識されます。収益の認識額は、当社グループが財およびサービスと交換に受け取ると見込んでいる対価に基づいております。契約に複数の履行義務が含まれる場合、対価は独立販売価格の比率で各履行義務に配分しております。
当社グループが財およびサービスと交換に受け取る対価は固定金額または変動金額の場合があります。変動対価は重要な戻入れが生じない可能性が非常に高い場合のみ認識しております。
売上高からは、主に小売業者、政府機関、卸売業者、医療保険会社およびマネージドヘルスケア団体に対する割戻や値引等の様々な項目が控除されております。これらの控除額は関連する義務に対し見積られますが、報告期間における当該収益に係る控除額の見積りには判断が伴います。総売上高からこれらの控除額を調整して、純売上高が算定されます。当社グループは、これらの控除額に係る義務を少なくとも四半期毎に確認しており、割戻の変動、リベート・プログラムおよび契約条件、法律の改定、その他重大な事象により関連する義務の見直しが適切であることが示されている場合には、調整を行っております。なお、これまで売上割戻に関する引当金に対する調整が、純損益に重要な影響を与えたことはありません。
米国市場における収益控除に関する取り決めが最も複雑なものになっております。
収益に係る調整のうち最も重要なものは以下のとおりであります。
• 米国メディケイド: 米国のメディケイド・ドラッグ・リベート・プログラムは、連邦政府および州が共同で拠出した資金により医療費を賄えない特定の条件を満たす個人および家族に対して医療費を負担する制度であり、各州が運営を行っております。当プログラムに係る割戻の支払額の算定には、関連規定の解釈が必要となりますが、これは異議申し立てによる影響または政府機関の解釈指針の変更による影響を受ける可能性があります。メディケイドの割戻に係る引当金は、割戻の対象として特定された製品、過去の経験、患者さんからの要請、製品価格ならびに各州の制度における契約内容および関連条項を考慮して算定しております。メディケイドの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、メディケイドに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的なメディケイドに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国のメディケイド・プログラムの対象となるかに関連しています。
• 米国メディケア: 米国のメディケア・プログラムは65歳以上の高齢者もしくは特定の障害者向けの公的医療保険制度であり、当プログラムのパートDにおいて処方薬に係る保険が規定されております。パートDの制度は民間の処方薬剤費保険により運営、提供されております。メディケア・パートDに係る割戻は各処方薬剤費保険の制度内容、患者さんからの要請、製品価格ならびに契約内容を考慮して算定しております。メディケア・パートDの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、メディケア・パートDに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的なメディケア・パートDに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国のメディケア・プログラムの対象となるかに関連しています。
• 顧客に対する割戻: 当社グループは、マーケットシェアの維持と拡大、また、患者さんの当社グループ製品へのアクセスを確実にするために、購入機関、保険会社、マネージドヘルスケア団体およびその他の直接顧客ならびに間接顧客に対して米国コマーシャル・マネージドケアを含む割戻を実施しております。割戻は契約上取決めがなされているため、係る引当金は各取決めの内容、過去の経験および患者さんからの要請を基に算定しております。米国コマーシャル・マネージドケアの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、米国コマーシャル・マネージドケアに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的な米国コマーシャル・マネージドケアに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国コマーシャル・マネージドケアの対象となるかに関連しています。
• 卸売業者に対するチャージバック: 当社グループは特定の間接顧客と、顧客が卸売業者から割引価格で製品を購入可能とする取決めを結んでおります。チャージバックは卸売業者に対する当社グループの請求額および間接顧客に対する契約上の割引価格の差額であります。チャージバックの見積額は各取決めの内容、過去の経験および製品の需要を基に算定しております。当社グループは、売上債権とチャージバックを相殺する法的に強制可能な権利を有し、かつ純額で決済するか、または資産の実現と負債の決済を同時に行う意図を有しております。そのため、チャージバックの見積額は連結財政状態計算書において売上債権から控除しております。
• 返品調整引当金: 返品権付き製品を顧客に販売する際は、当社グループの返品ポリシーや過去の返品率に基づいた返品見込み額を引当金として計上しております。返品見込み率を見積る際は、過去の返品実績、予想される流通チャネル内の在庫量および製品の保管寿命を含む関連要因を考慮しております。
引当額は見積りに基づくため、実際の発生額を完全に反映していない場合があり、特に購入機関の種類、最終消費者および製品の売上構成により変動する可能性があります。
当社グループは、一般的に製品が顧客に引き渡された時点から90日以内に顧客から支払を受けます。当社グループは主としてそれらの取引を本人として履行しますが、他の当事者に代わって販売を行うことがあります。その場合は、代理人として受け取ることが見込まれる販売手数料の金額が収益として認識されます。
当社グループは、知的財産の導出にかかるロイヤルティ、契約一時金およびマイルストンにかかる収益を計上しております。知的財産にかかるロイヤルティ収益は、基礎となる売上が発生した時点で認識しております。契約一時金にかかる収益は、一般的にはライセンスの使用権を付与した時点で認識されます。マイルストンにかかる収益は、一般的にはマイルストンの支払条件が達成される可能性が非常に高く、認識した収益の額の重大な戻入が生じない可能性が非常に高くなった時点で認識しております。導出した化合物の研究開発等のその他のサービスにかかる収益については、サービスの提供期間に応じて認識しております。
当社グループは、一般的に知的財産の導出契約の締結または顧客によるマイルストンの支払条件の達成の確認から60日以内に顧客から支払を受けます。当社グループはグループの知的財産を導出しているため、本人として契約を履行しております。また、当社グループはその他のサービスも本人として提供しております。
のれんおよび無形資産の減損
当社グループは、長期性無形資産について、その資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象または状況の変化がある場合には、減損テストを行っております。のれんおよびその他の現在まだ未償却の無形資産については、少なくとも年次で減損テストを実施しております。2020年3月31日時点において、当社グループはのれんを4兆125億円、無形資産を4兆1,714億円計上しており、これは総資産の63.8%を占めております。
製品に係る無形資産は特許期間に応じた3年から20年の耐用年数を用いて定額法で償却しております。開発中の製品に係る無形資産は、特定の市場における商用化が規制当局により承認されるまで償却をしておりません。商用化が承認された時点で、当該資産の見積耐用年数を確定し、償却を開始しております。
資産は、通常、その財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には減損していると判断されます。回収可能価額は個別資産、またはその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。のれんは、シナジーから便益を得ると見込まれる資金生成単位または資金生成単位グループに配分され、回収可能価額はその資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。回収可能価額の見積りには以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
·将来キャッシュ・フローの金額および時期
·競合他社の動向(競合製品の販売開始、マーケティングイニシアチブ等)
·規制当局からの承認の取得可能性
·将来の税率
·永続成長率
·割引率
キャッシュ・フローが変動する可能性のある事象としては、研究開発プロジェクトの失敗もしくは上市後製品の価値の下落があげられます。研究開発プロジェクトの失敗には、開発の中止、大幅な上市の遅延、もしくは規制当局の承認が得られない場合が該当します。これらの事象が発生した場合、見積った将来キャッシュ・フローが回収できない、もしくは資産の取得後に実施した当初もしくは事後の研究開発投資額が回収できない可能性があります。
これらの仮定に変更が生じた場合は、当該連結会計年度において減損損失および減損損失の戻入れを認識しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれん および12 無形資産」をご参照ください。
退職給付およびその他の退職後給付制度
当社グループは、当社グループの従業員の大半を対象とする年金およびその他の退職後給付制度を有しております。退職給付費用およびこれらの制度に係る負債の現在価値の算定には将来の事象に関する重要な仮定および見積りの設定を行うことが求められております。これには将来の確定給付債務および確定給付費用の見積りに使用する利率や将来の年金増加率が含まれます。さらに、これらの見積りに関連して、年金数理人が制度からの脱退率や死亡率等の統計情報を経営者に提供しております。市場状況および経済状況の変化、脱退率の増減、加入者の寿命の変化等の要因により、使用した仮定および見積りは実績と大幅に異なる場合があります。重要な数理計算上の仮定に係る感応度情報については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 22 従業員給付」をご参照ください。見積りの大幅な変動は連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。2020年3月31日現在において、退職給付に係る負債を1,566億円計上しております。
企業結合―公正価値
企業結合の会計処理には、取得した資産および引き受けた負債ならびに条件付対価の公正価値を算定することが求められております。公正価値の見積りには、将来のキャッシュ・フロー予測、割引率、開発および承認マイルストン、市場動向に関する予測、ならびに条件付対価に関しては支払可能額等の様々な仮定の設定が必要となります。また、取得日に存在していた事実および状況について取得日から1年以内に新たな情報を入手したことにより、測定期間中の修正が求められることがあります。この修正により、当初算定した資産および負債の暫定的な公正価値が変更される、または新たな資産および負債の認識されることがあります。これらは過去の比較情報に遡及的に適用され、その後の財務諸表にも修正が反映されます。2020年3月期において、この修正は主に上市後製品から構成される無形資産から生じており、それぞれの公正価値を見積る際の主な仮定には、将来の売上予測および関連する市場の需要が含まれます。
条件付対価は各報告期間の末日おいて公正価値で計上しております。時間的価値に基づく公正価値の変動は金融費用として、その他の公正価値の変動はその他の営業収益またはその他の営業費用としてそれぞれ連結純損益計算書に認識しております。2020年3月期において、公正価値の変動により、条件付対価契約に関する金融負債が81億円減少しております。
当社グループの見積りは、過去の経験や業界における知識に基づいております。見積りは合理的に算出されますが、実績はこれらの見積りとは異なる場合があります。取得した資産グループや企業結合の価値を算出する際に使用される見積りの重要な変化は、当社グループによって取得された有形固定資産または無形資産の将来における減損につながり、当社グループの財政状態および業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、偶発負債を含む負債の価値が取得法によって過去に計上された金額と著しく異なる場合は、追加費用の計上が必要となり、当社グループの財政状態および業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
訴訟に係る偶発事象
当社グループは、通常の営業活動において主に製造物責任訴訟および賠償責任訴訟に関与しております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
偶発負債は、その特性から不確実なものであり複雑な判断や可能性に基づいております。訴訟およびその他の偶発事象に係る引当金を算定する際には、該当する訴訟の根拠や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の顛末および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。さらに、未だ提訴されていない製造物責任訴訟については、主に過去の訴訟の経験や製品の使用に係るデータに基づき、費用を合理的に見積ることができる範囲で引当金を計上しております。また、保険の補償範囲期間内である場合は保険による補償についても考慮しております。補償範囲の検討の際に、当社グループは、保険契約の制限や除外、保険会社による補償の拒否の可能性、保険業者の財政状態、ならびに回収可能性および回収期間を考慮しております。引当金および関連する保険補償額の見積りは、連結財政状態計算書上において負債および資産として総額で計上しております。2020年3月31日現在において、係争中の訴訟案件およびその他の案件について497億円の引当金を計上しております。
法人所得税
当社グループは、税法および税規制の解釈指針に基づき税務申告を行っており、これらの判断および解釈に基づいた見積額を計上しております。通常の営業活動において、当社グループの税務申告は様々な税務当局による税務調査の対象であり、これらの調査の結果、追加税額、利息、または罰金の支払いが課される場合があります。法律および様々な管轄地域の租税裁判所の判決に伴う法改正により、不確実な税務ポジションの見積りの多くは固有の不確実性を伴います。税務当局が当社グループの税務ポジションを認める可能性が高くないと結論を下した場合に、当社グループは、税務上の不確実性を解消するために必要となる費用の最善の見積り額を認識します。また、未認識の税務上の便益は事実および状況の変化に伴い調整されます。これらの税務ポジションは、例えば、現行の税法の大幅改正、税務当局による税制または解釈指針の発行、税務調査の際に入手した新たな情報、または税務調査の解決により調整が行われる可能性があります。当社グループは、不確実な税務ポジションに係る当社グループの見積りは、現時点において判明している事実および状況に基づき適切かつ十分であると判断しております。
また、各報告期間の末日において繰延税金資産の回収可能性を評価しております。繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予想される将来加算一時差異の解消スケジュール、予想される将来課税所得およびタックスプランニングを考慮しております。過去の課税所得の水準および繰延税金資産が認識できる期間における将来の課税所得の見積りに基づき、実現する可能性が高いと予想される税務上の便益の額を算定しております。2020年3月31日現在における繰延税金資産を認識していない未使用の繰越欠損金、将来減算一時差異、および未使用の繰越税額控除はそれぞれ1兆5,802億円、3,333億円、および93億円であります。将来における見積りおよび仮定の変更は法人所得税費用に重要な影響を与える可能性があります。
事業構造再編費用
当社グループでは、費用削減に関連した取り組みおよび買収に係る事業統合に関連して事業構造再編費用が発生します。退職金およびリース解約費用が事業構造再編費用の主な内訳であり、事業構造再編に係る引当金については、計画が承認され、費用を見積もることができ、支払の可能性が高い場合に引当金を計上しております。事業構造再編に係る引当金の認識には、支払時期や、退職金を受領した後一定期間会社に在籍する従業員数等の様々な見積りが必要となります。最終的なコストは当初の見積りから異なる可能性があります。
当社グループは、将来において買収および売却に関連した事業統合に係る追加の事業構造再編費用を計上すると見込んでおります。2020年3月31日現在において、当社グループは、事業構造再編に係る引当金を450億円計上しております。詳細および事業構造再編に係る引当金の推移は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 23 引当金」をご参照ください。
(ⅲ) 当年度における業績の概要
当年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円、%以外)
前年度(注)当年度対前年度
売上収益20,97232,91211,94056.9%
売上原価△6,517△10,898△4,38067.2%
販売費及び一般管理費△7,176△9,647△2,47134.4%
研究開発費△3,683△4,924△1,24133.7%
製品に係る無形資産償却費及び減損損失△1,786△4,554△2,768155.0%
その他の営業収益1,599602△997△62.3%
その他の営業費用△1,032△2,487△1,455141.1%
営業利益2,3771,004△1,373△57.8%
金融収益16827811065.2%
金融費用△833△1,650△81798.1%
持分法による投資損失△436△240196△45.0%
税引前当期利益(△は損失)1,276△608△1,884△147.6%
法人所得税費用751,050976-
当期利益1,351443△908△67.2%

(注) Shire社の買収に伴い、前年度の業績には、2019年1月8日から3月31日までの期間における同社の業績が含まれています。
当年度において、当社グループはShire 社買収により取得した資産および引き受けた負債について取得対価の配分を完了しました。この結果、前年度の連結純損益計算書を遡及修正しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 31企業結合」をご参照ください。
[売上収益]
売上収益は、前年度から1兆1,940億円増収(+56.9%)の3兆2,912億円となりました。Shire社買収により獲得した製品の売上が年間を通じて計上された(1兆5,222億円)ことが主な要因であり、これによる増収額は1兆2,130億円となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
売上収益:前年度当年度
日本5,71027.2%5,92818.0%
米国8,29039.5%15,95948.5%
欧州およびカナダ4,05619.3%6,45519.6%
ロシア/CIS5972.8%7682.3%
中南米8814.2%1,4354.4%
アジア1,0545.0%1,6545.0%
その他3831.8%7132.2%
合計20,972100.0%32,912100.0%

(注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
当社グループの売上収益の大部分は、主要な医療用医薬品により占められております。当年度の各領域における主要製品の売上は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
前年度当年度対前年度
消化器系疾患:
エンティビオ2,6923,47278029.0%
タケキャブ(注)58272714524.8%
デクスラント692628△64△9.2%
GATTEX / REVESTIVE128618491384.7%
パントプラゾール616495△122△19.7%
ALOFISEL043728.9%
その他6831,03535351.7%
消化器系疾患 合計5,3936,9791,58629.4%
希少疾患:
希少代謝性疾患:
エラプレース151679528350.3%
リプレガル114513398348.1%
ビプリブ87380293337.5%
NATPARA711366592.2%
希少代謝性疾患 合計4231,7081,285303.8%
希少血液疾患:
アドベイト3211,5791,258391.8%
アディノベイト107587479446.3%
ファイバ96515419434.7%
その他142662520365.2%
希少血液疾患 合計6673,3422,675401.1%
遺伝性血管性浮腫:
TAKHZYRO97683585601.8%
フィラジル64327262409.1%
CINRYZE31243212684.4%
KALBITOR124534289.2%
遺伝性血管性浮腫 合計2041,2981,094535.9%
希少疾患合計1,2946,3495,055390.6%
血漿由来の免疫疾患治療:
免疫グロブリン7352,9872,252306.6%
アルブミン123672549446.5%
その他77283205266.0%
血漿由来の免疫疾患治療 合計9353,9423,007321.7%
オンコロジー:
ベルケイド1,2791,183△95△7.5%
リュープリン1,1011,090△10△0.9%
ニンラーロ62277615424.7%
アドセトリス4295279822.8%
アイクルシグ2873183110.8%
アルンブリグ52722039.2%
その他225243187.9%
オンコロジー 合計3,9944,2102155.4%
ニューロサイエンス:
バイバンス/ビバンセ4942,7412,247455.3%
トリンテリックス57670713122.8%
ADDERALL XR54243189349.7%
その他42469527164.0%
ニューロサイエンス 合計1,5474,3852,839183.5%
その他:
アジルバ(注)708767608.5%
ネシーナ(注)548580325.8%
ロトリガ30931892.9%
その他6,2455,383△862△13.8%
その他 合計7,8097,048△761△9.8%
総合計20,97232,91211,94056.9%

(注) 配合剤、パック製剤を含む。
各疾患領域における売上収益の前年度からの増減は、主に以下の製品によるものです。
- 消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年度から1,586億円増収(+29.4%)の6,979億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年度から780億円増収(+29.0%)の3,472億円となり、売上成長を牽引しました。米国および欧州においては、潰瘍性大腸炎とクローン病に対する生物学的製剤の新規投与患者シェアがさらに拡大し、同剤の全体の市場シェアも伸長しました。また、日本においては、当第1四半期において、クローン病の効能追加を取得しました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、日本において新規処方が拡大し、売上は145億円増収(+24.8%)の727億円となりました。また、Shire社買収により獲得した短腸症候群治療剤「GATTEX / REVESTIVE」の当年度の売上は、年間を通じて計上されたことから、491億円増収の618億円となりました。
- 希少疾患
Shire社買収により獲得した希少疾患領域の当年度の売上収益は、年間を通じて計上されたことから、5,055億円増収の6,349億円となりました。売上収益に最も寄与した製品の売上は、希少血液疾患領域では血友病A治療剤「アドベイト」の1,579億円、遺伝性血管性浮腫領域では同疾患の発作予防剤「TAKHZYRO」の683億円、希少代謝性疾患領域ではハンター症候群治療剤「エラプレース」の679億円であり、それぞれ1,258億円、585億円および528億円の増収となりました。
- 血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の売上収益は、主にShire社買収により獲得した製品が加わったことにより、3,007億円増収の3,942億円となりました。当売上収益は、Shire社買収前から日本で血漿分画製剤事業を展開してきた当社連結子会社である日本製薬株式会社の製品売上を含みます。免疫グロブリン製剤の売上合計は2,987億円となり、最も寄与した製品は、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に主に用いられ、これら疾患に対する米国における標準治療剤である静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」でした。また、主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「ALBUMIN GLASS」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は672億円となり、その他の血漿由来の免疫疾患治療剤の売上合計は283億円となりました。
- オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の売上収益は、前年度から215億円増収(+5.4%)の4,210億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、特に米国と中国での好調な業績が成長に寄与し、前年度から154億円増収(+24.7%)の776億円となりました。また、悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、CD30陽性ホジキンリンパ腫に対する一次治療の効能追加を取得した日本において特に伸長し、98億円増収(+22.8%)の527億円となりました。非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、引き続き欧州諸国での上市があったことにより前年度から20億円増収(+39.2%)の72億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」はオンコロジー領域の中でも売上が大きい製品ですが、同剤の売上は、対前年度95億円減収(△7.5%)の1,183億円となり、うち、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益は、対前年度127億円の大幅な減収(△57.0%)により96億円となりました。米国では、競合品の追加参入による影響が想定を下回り、31億円増収(+2.9%)の1,088億円となりました。
- ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の売上収益は、前年度から2,839億円増収(+183.5%)の4,385億円となりました。増収の主な要因は、2,247億円増収の2,741億円の売上となった注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「バイバンス」(国内製品名:「ビバンセ」)を含め、Shire社買収により獲得したポートフォリオが、年間を通じて売上計上されたことによります。旧武田薬品の製品である大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、新規患者の増加と治療期間の拡大により、前年度から131億円増収(+22.8%)の707億円となりました。両製品は、当第3四半期に日本においても上市されております。
[売上原価]
売上原価は、対前年度4,380億円増加(+67.2%)の1兆898億円となりました。この増加は、主にShire社の買収により取得した製品にかかる年間の売上原価およびShire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用の増加1,257億円によるものです。これらの増加は、主に製品構成の改善等による旧武田薬品の製品にかかる売上原価の減少と一部相殺されております。
[販売費及び一般管理費]
販売費及び一般管理費は、主に買収したShire社の事業運営にかかる費用の影響により、対前年度2,471億円増加(+34.4%)の9,647億円となりました。この増加は、グローバル経費削減イニシアチブ(注1)による削減効果、Shire社との統合によるコストシナジーのほか、前年度に発生したShire社買収関連費用238億円の影響により一部相殺されております。
(注1)消費量の削減、購買価格低減による経費削減、および組織の最適化によって売上収益比率の向上を目指す当社グループのイニシアチブ
[研究開発費]
研究開発費は、主にShire社買収により取得した研究開発活動にかかる費用の影響により、対前年度1,241億円増加(+33.7%)の4,924億円となりました。
[製品に係る無形資産償却費及び減損損失]
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、対前年度2,768億円増加(+155.0%)の4,554億円となりました。これは主にShire社買収に伴い取得した無形資産の償却費が2,506億円増加したことによります。減損損失は347億円増加の433億円となりました。この減損損失の増加は、2019年5月の中間解析結果を受けTAK-616 AMRプログラムの開発中止を決定したことに伴い計上した減損損失156億円、およびTAK-607の治験デザイン変更に伴い計上した減損損失109億円を含む、一部の上市後製品および開発中の製品に係る減損損失を計上したことによるものです。なお、前年度は、Mersana Therapeuticsとの共同研究開発の終了に伴う減損損失72億円を含む86億円の減損損失を計上しました。
[その他の営業収益]
その他の営業収益は、対前年度997億円減少(△62.3%)の602億円となりました。この減少は、主に前年度において、当社グループの旧東京本社ビルを含む有形固定資産の売却益503億円、および不動産事業の譲渡に関連して連結子会社株式譲渡益382億円を計上したことによります。また、前年度に広東テックプール・バイオファーマCo., Ltd.の株式売却益184億円を計上したことも減少要因となりました。
[その他の営業費用]
その他の営業費用は、対前年度1,455億円増加(+141.1%)の2,487億円となりました。このうち事業構造再編費用については、対前年度981億円増加の1,810億円となりました。この増加は、主にShire社との統合が進捗していることに伴い、アイルランドの製造拠点の合理化により計上した減損損失を含むShire社買収に関連する統合費用が対前年度757億円増加し1,354億円となったことに加え、湘南ヘルスイノベーションパーク(「湘南アイパーク」)のセール・アンド・リースバック契約に伴い有形固定資産の減損損失等を計上したことによるものです。また、当年度において承認前在庫にかかる評価損を304億円計上した一方、前年度は承認取得に伴い過去の承認前在庫にかかる評価損の戻入41億円を計上したことにより、承認前在庫にかかる評価損が345億円増加しました。
[営業利益]
営業利益は、上記の要因を反映し、前年度から1,373億円減少(△57.8%)の1,004億円となりました。
[金融損益]
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は1,372億円の損失となり、前年度から707億円の損失増加となりました。これは、主にShire社買収に伴い発行された社債及び借入金により利息費用が1,008億円増加したことによるものです。この利息費用の増加は、前年度に計上されたShire社買収のためのブリッジローン契約に伴うファシリティー・フィー161億円、および当社がワラントを保有する未上場企業の株式が上場されたことに伴い当年度計上した評価益213億円により一部相殺されております。
[持分法による投資損益]
持分法による投資損益は240億円の損失となり、前年度から196億円(△45.0%)の損失減少となりました。これは、主に武田テバ薬品株式会社(注2)において認識された減損損失の減少によるものです。
(注2)武田テバ薬品株式会社は長期収載品事業およびジェネリック医薬品事業を営んでおります。
[法人所得税費用]
法人所得税費用は、前年度△75億円に対して、当年度は△1,050億円となりました。これは主に、当年度のスイスにおける税制改正に伴い計上された非資金性の繰延税金便益△946億円の計上、繰越欠損金に対する繰延税金資産の認識、および主に償却費、棚卸資産の公正価値調整、統合費用等のShire社買収に関連する費用を計上したことに伴う税引前利益の減少によるものです。これらの税金費用の減少影響は、不確実な税務ポジションによる税金負債の増加および事業構造再編にかかる税金影響と一部相殺されております。
[当期利益]
当期利益は、上記の要因を反映し、前年度から908億円減益(△67.2%)の443億円となりました。
(ⅳ) 当年度における実質的な成長の概要
Coreと実質的な成長の定義
当社は、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。
「実質的な成長」は、当年度と前年度(四半期もしくは年間)の業績を共通の基準で比較するものであり、マネジメントによる業績評価に使用されています。これら共通の基準で比較される業績は、為替レートを一定として、事業等の売却影響およびその他の非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除し算定されます。当社は、この「実質的な成長」が、事業活動のパフォーマンスを表す共通の基準を提供するため、投資家に有用であると考えています。なお、本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
当社は、「Underlying Revenue Growth」(実質的な売上収益の成長)、「Underlying Core Operating Profit Growth」(実質的なCore営業利益の成長)および「Underlying Core EPS Growth」(実質的なCore EPSの成長)を重要な財務指標としています。
実質的な売上収益は、為替レートを一定として、財務ベースの売上収益に、報告期間における非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore営業利益は、為替レートを一定として、Core営業利益(以下に定義)に、報告期間における事業等の売却影響を調整して計算します。
Core営業利益*は、当期利益から、法人所得税費用、持分法による投資損益、金融損益、その他の営業収益およびその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。
* 2019年度より、「Core Earnings」の名称を「Core営業利益」に変更しました。なお、その定義に変更はありません。
実質的なCore EPSの算定にあたっては、為替レートを一定として、当期利益から、事業等の売却影響、およびCore営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、重要性のある、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、比較年度末の自社株式控除後の発行済株式総数で除して算定します。
当年度の実質的な成長は、以下のとおりとなりました。
当年度
実質的な売上収益の成長(注1)+1.6%
実質的なCore営業利益率28.9%
実質的なCore EPS395円

(注1)当年度の実質ベースの成長率は、対前年度のpro-forma成長率。前年度 pro-formaは、前年度(2018年4月-2019年3月)の武田薬品売上収益(事業売却等を調整)と、前年度の年間平均レート(1米ドル111円)で円貨換算し米国会計基準(US GAAP)から国際会計基準(IFRS)に組み替えた(なお、重要な差異は認められなかった)2018年4月から買収完了日(2019年1月8日)までの旧Shire社売上収益(事業売却等を調整)の合計
[実質的な売上収益の成長]
実質的な売上収益の成長は、タケダの14のグローバル製品(注2)の好調な業績(+21.2%)が牽引し、対前年度+1.6%となりました。競争の激化や後発品の浸透により、一部の製品、特に希少血液疾患領域において影響を受けましたが、当社の主要な疾患領域である消化器系疾患、血漿由来の免疫疾患治療、オンコロジーおよびニューロサイエンスにおいて、それぞれ+11.5%、+9.2%、+8.4%、+10.9%の成長となりました。
(注2)タケダの14のグローバル製品 消化器系疾患:エンティビオ、GATTEX/REVESTIVE、ALOFISEL 希少疾患:NATPARA、アディノベイト/ADYNOVI、TAKHZYRO、エラプレース、ビプリブ 血漿由来の免疫疾患治療:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRU、アルブミン オンコロジー:ニンラーロ、アルンブリグ
・ 消化器系疾患
消化器系疾患領域の実質的な売上収益は、前年度から+11.5%の成長となりました。後発品のさらなる浸透により、「パントプラゾール」(△15.3%)、「ランソプラゾール」(△23.0%)、「リアルダ」(△38.9%)などの特許満了製品の売上が減少したものの、「エンティビオ」(+32.9%)と「タケキャブ」(+24.9%)が、これらの減収影響を上回る増収となりました。また、「GATTEX / REVESTIVE」は、2019年5月、米国において小児適応の効能追加を取得し、成人患者の平均治療期間が伸長したことなどにより+21.7%の増収となりました。
・ 希少疾患
希少疾患領域の実質的な売上収益は、競争圧力の高まりと米国における「NATPARA」の回収の影響により△4.9%の減収となりました。特に、希少血液疾患領域(△8.6%)では競合品による影響が顕著となり、半減期延長型製剤「アディノベイト」(+9.8%)の増収により一部相殺したものの、血友病A治療剤である「アドベイト」(△12.3%)と「ファイバ」(△15.5%)が大幅な減収となりました。希少代謝性疾患領域(△3.2%)では、副甲状腺ホルモン製剤「NATPARA」(△49.7%)のカートリッジのゴム製隔壁に関連する問題が判明したため、2019年9月、米国において同剤を回収しました。また、遺伝性血管性浮腫領域(+3.4%)においては、「フィラジル」(△50.2%)が後発品の参入により、「CINRYZE」(△30.7%)が患者数の減少により減収となりましたが、米国および欧州における「TAKHZYRO」(+318.3%)の増収がこれらの影響を上回り、増収となりました。
・ 血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の実質的な売上収益は、+9.2%の成長となりました。免疫グロブリン製剤は、静注製剤、皮下注製剤ともに伸長し+7.2%の増収となりました。また、アルブミン製剤は、中国における需要の増加による好調な売上伸長や生産能力の拡大もあり、+20.3%の増収となりました。
・ オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の実質的な売上収益は、「ニンラーロ」(+28.5%)と「アドセトリス」(+33.1%)が牽引し、前年度から+8.4%の成長となりました。また、「アルンブリグ」も+43.1%の増収となりました。オンコロジー製品の中では、唯一、「ベルケイド」(△5.9%)が減収となりましたが、これは、欧州において2019年4月に後発品が参入したことにより、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益が△56.3%減少したことによります。
・ ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の実質的な売上収益は、それぞれが注意欠陥/多動性障害(ADHD)と大うつ病(MDD)治療の米国における主要製品である「バイバンス」(+13.7%)および「トリンテリックス」(+25.0%)の増収により、+10.9%の成長となりました。「ADDERALL XR」は、後発品との競合の影響が増大し、△27.5%の減収となりました。
疾患領域別の実質的な売上収益の成長(注3)当年度
消化器系疾患+11.5%
希少疾患△4.9%
希少代謝性疾患△3.2%
希少血液疾患△8.6%
遺伝性血管性浮腫+3.4%
血漿由来の免疫疾患治療+9.2%
オンコロジー+8.4%
ニューロサイエンス+10.9%
その他△12.5%
合計+1.6%

(注3) 当年度の実質ベースの成長率は、対前年度のpro-forma成長率。前年度 pro-formaは、前年度(2018年4月-2019年3月)の武田薬品売上収益(事業売却等を調整)と、前年度の年間平均レート(1米ドル111円)で円貨換算し米国会計基準(US GAAP)から国際会計基準(IFRS)に組み替えた(なお、重要な差異は認められなかった)2018年4月から買収完了日(2019年1月8日)までの旧Shire社売上収益(事業売却等を調整)の合計
実質的な売上収益の計算において控除した主な非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響は次の通りです。
・ 2019年3月期に連結子会社であった広東テックプール・バイオファーマCo,.Ltd.(「テックプール社」)およびMultilab Indústria e Comércio de Produtos Farmacêuticos Ltda.(「マルチラブ社」)を売却したため、前年度における両社の売上収益を連結の売上収益から控除しています。
・ 2019年5月に売却に合意した 「XIIDRA」(2019年7月に売却完了)および「TACHOSIL」の売上を、当年度および前年度の売上収益から控除しています。
[当年度の実質的なCore営業利益率]
当年度の実質的なCore営業利益率は、グローバル経費削減イニシアチブおよびShire社との統合のコストシナジーを反映し、28.9%となりました。
Shire社の統合費用や企業結合会計に伴う非資金性の費用など、当社の本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除した当年度のCore営業利益は9,622億円となりました。
[当年度の実質的なCore EPS]
当年度の実質的なCore EPSは、395円となりました。
(b)当年度の財政状態の分析
前年度における連結財政状態計算書は、Shire社の買収に係る取得対価の配分が完了したことを反映し、遡及修正されております。
[資産]
当年度末における資産合計は、前年度末から9,717億円減少し、12兆8,211億円となりました。のれんおよび無形資産は、 主に為替影響や無形資産の償却により、それぞれ2,277億円および5,798億円減少しました。また、主に「XIIDRA」の売却完了により売却目的で保有する資産が3,319億円減少し、さらに棚卸資産が主に買収により取得した棚卸資産の公正価値調整の費用化に伴い1,601億円減少しました。これらの減少は、主に繰延税金資産の増加2,191億円、「XIIDRA」の売却に伴い条件付対価契約に関する資産が認識されたことによるその他の金融資産(非流動)の増加704億円、および主に新リース会計基準(IFRS第16号)(注1)を適用したことによる有形固定資産の増加544億円により一部相殺されております。
(注1)IFRS第16号では、リースの評価額および関連する負債を連結財政状態計算書の非流動資産および非流動負債に計上することを規定しております。負債に関する説明は以下をご覧ください。
[負債]
当年度末における負債合計は、前年度末から5,132億円減少し、8兆936億円となりました。この減少は、主に社債の償還、借入金の返済および為替影響により社債及び借入金が6,576億円減少し5兆933億円(注2)となったことによるものです。なお、2019年6月にハイブリッド社債(劣後特約付社債)5,000億円を発行した一方、シンジケートローン5,000億円を返済しております。さらに、2019年8月には、1,404.5百万米ドル(1,502億円)の米ドル建て無担保普通社債を繰上償還し、2019年9月には3,300百万米ドル(3,507億円)の米ドル建て無担保普通社債を償還しました。2020年3月には700百万米ドル(774億円)の米ドル建てシンジケートローンを繰上返済しました。また、社債及び借入金の減少に加え、主に「XIIDRA」の売却完了により売却目的で保有する負債が1,278億円減少しております。これらの減少は、主に上述のIFRS第16号を適用したことによるその他の金融負債(非流動)の増加1,589億円により一部相殺されております。
(注2)当年度における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆2,050億円および1兆8,883億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
銘柄
(外貨建発行額)
発行時期償還期限帳簿価額
15回 無担保社債2013年7月2020年7月600億円
米ドル建無担保普通社債
(1,520百万米ドル)
2015年6月2022年6月
~2045年6月
1,646億円
米ドル建無担保普通社債
(8,800百万米ドル)
2016年9月2021年9月
~2026年9月
9,103億円
米ドル建無担保普通社債
(500百万米ドル)
2017年7月2022年1月541億円
ユーロ建無担保普通社債
(7,500百万ユーロ)
2018年11月2020年11月
~2030年11月
8,895億円
米ドル建無担保普通社債
(4,500百万米ドル)
2018年11月2021年11月
~2028年11月
4,858億円
ハイブリッド社債 (劣後特約付社債)2019年6月2079年6月4,968億円
コマーシャルペーパー2020年2月
~2020年3月
2020年4月
~2020年6月
1,440億円
合計3兆2,050億円

借入金:
名称
(外貨建借入額)
借入時期返済期限帳簿価額
シンジケートローン2013年7月2020年7月600億円
2016年4月2023年4月
~2026年4月
2,000億円
2017年4月2027年4月1,135億円

(1,500百万米ドル)
2017年4月2027年4月1,624億円

(3,300百万米ドル)
2019年1月2024年1月3,572億円

(3,057百万ユーロ)
2019年1月2024年1月3,634億円
株式会社国際協力銀行
(3,700百万米ドル)
2019年1月2025年12月4,015億円
その他2,304億円
合計1兆8,883億円

[資本]
当年度における資本合計は、前年度末から4,585億円減少の4兆7,275億円となりました。この減少は、主に2,827億円の配当金の支払により利益剰余金が2,255億円減少したことや、円高の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が2,573億円減少したことによります。
(c)流動性および資金調達源
資金の調達および使途
当社グループにおいて流動性は、主に営業活動に必要な現金、資本支出、契約上の義務、債務の返済、利息や配当の支払いに関連して必要となります。営業活動においては、研究開発費、マイルストン支払い、販売およびマーケティングに係る費用、人件費およびその他の一般管理費、原材料費等の支払いにあたり現金が必要となります。また、法人所得税の支払いや運転資金にも多額の現金が必要となります。
当社グループは、生産設備の能力増強・合理化、減価償却を終えた資産の入れ替え、業務管理の効率化等のために設備投資を行っています。無形資産に係る資本的支出は、主に第三者のパートナーから導入したライセンス製品に対するマイルストン支払い、およびソフトウェア開発費です。連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産および無形資産に係る資本支出は、2019年3月期および2020年3月期において、それぞれ2,446億円および2,463億円であります。また、2020年3月31日現在において、有形固定資産の取得に関する契約上のコミットメントは302億円であります。加えて、2020年3月31日現在において、無形資産の取得に関して契約上の取決めを有しております。無形資産に係るマイルストン支払いの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記32 コミットメントおよび偶発債務」をご参照ください。また、資本管理の一環として、当社グループは、資金需要、市場等の環境、またはその他の関連する要因に照らして、定期的に資本的支出の評価を行っております。
当社の配当金の支払額は、2019年3月期および2020年3月期において、それぞれ1,430億円および2,827億円であります。1株当たり配当額は中間配当および期末配当金それぞれ90円ずつとし、年間180円を継続することを目指しています。詳細は、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
当社グループは、有利子負債に対し元本と利息を支払う必要があります。2020年3月31日現在において、1年内に必要となる社債および借入金の返済額および利息の支払額は、それぞれ5,871億円、1,025億円であります。詳細は、「有利子負債および金融債務」をご参照ください。
当社グループの資金の調達源は、主に現金及び現金同等物、短期コマーシャルペーパー、金融機関からのコミットメントラインによる借入、グローバル資本市場からの長期借入金であります。当社グループは、キャッシュ・フロー予測に基づき保有外貨を監視し、調整しております。当社グループの事業の大部分は日本国外で行っており、多額の現金を日本国外に保有しております。日本国内で必要なキャッシュ・フローを創出するために外貨を使用することは国内規制による影響を受ける可能性があり、また比較的影響は小さいものの、日本へ現金を移転することから生じる所得税による影響も受けます。
2020年3月31日現在において、当社グループは6,376億円の現金及び現金同等物と7,000億円の未使用のコミットメントライン契約を保有しており、現在の事業活動に必要となる資金は十分に確保できていると考えております。当社グループは、事業活動を支えるため、持続的に高い流動性を保ち、資本市場へのアクセス拡大を追求していきます。
連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(単位:億円)
前年度当年度
営業活動によるキャッシュ・フロー3,2856,698
投資活動によるキャッシュ・フロー△28,3572,921
財務活動によるキャッシュ・フロー29,462△10,052
現金及び現金同等物の増減額4,390△433
現金及び現金同等物の期首残高2,9457,021
現金及び現金同等物に係る換算差額△313△218
売却目的で保有する資産の純増減額△26
現金及び現金同等物の期末残高7,0216,376

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度3,285億円から3,413億円増加の6,698億円となりました。この増加は、前年度より当期利益は908億円減少したものの、主にShire社買収に関連する非資金性費用の影響を除いた、事業から生み出されるキャッシュが増加したことによります。非資金性費用の影響は、主にShire社買収に伴い計上した製品に係る無形資産により減価償却費及び償却費が3,360億円増加したこと、一部の上市後製品および開発中の製品、アイルランドの製造拠点や湘南アイパーク等の拠点再編に関連して減損損失が918億円増加したこと、また、主にShire社買収日において公正価値評価された棚卸資産の費用化に伴い棚卸資産が868億円減少したこと等によるものです。
また、Shire社買収のための資金調達にかかる利息費用を含む金融費用(純額)の増加707億円、および賞与引当金等の資産負債の増減影響が営業活動によるキャッシュ・フローのプラスの調整項目として含まれています。
これらの増加は、主に前年度に買収した旧Shire社における法人所得税の支払いによる法人所得税等の支払額の増加1,831億円により一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△2兆8,357億円から3兆1,278億円増加の2,921億円となりました。これは主に、前年度においてShire社買収に伴い2兆8,919億円(取得した現預金等を除いた支出額)を支出したことによるものです。加えて、当年度において「XIIDRA」の売却による3,755億円の収入を計上したことに伴い、事業売却による収入が3,764億円増加したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度の2兆9,462億円から△1兆52億円となりました。この3兆9,515億円の減少は主に、前年度にShire社買収のための社債の発行及び長期借入れによる収入2兆7,959億円を計上したこと、また当年度に7,011億円の社債の償還及び長期借入金の返済による支出を計上したことによるものです。さらに、短期借入金の減少7,185億円、配当金の支払額の増加1,396億円、および主にShire社買収のための資金調達に伴い利息の支払額の増加923億円等がありました。
なお、当年度において、ハイブリッド社債の発行5,000億円を含む長期借入れ及び社債の発行による収入4,962億円があった一方、主に短期シンジケートローンの返済5,000億円による短期借入金の純減少額3,512億円がありました。
有利子負債および金融債務
2019年3月31日および2020年3月31日現在において社債及び借入金はそれぞれ5兆7,510億円、5兆933億円であります。これらの有利子負債は、当社が過年度に発行した無担保社債、普通社債、およびシンジケートローン、また、Shire社買収に必要な資金の一部を調達するための借入金、およびShire社買収により引き受けた負債を含み、連結財政状態計算書に計上されております。当社の借入金は主に買収関連のものであり、季節性によるものではありません。
当社グループは2019年6月6日に合計元本額5,000億円の劣後特約付きハイブリッド社債(以下、「ハイブリッド債」)を発行しました。当発行による収入はShire社の買収に必要な資金を調達するために発行されたショートタームローンによる既存のシンジケートローンの返済に充てられました。当ハイブリッド債の返済期限は2079年6月6日ですが、当ハイブリッド債の契約条件に基づき、元本全額を、2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があります。利息は毎年改定される利率に基づき半年毎に支払われます。なお、当ハイブリッド債は無担保であり、財務制限条項は付されておりません。
当社グループは2019年9月に7,000億円のコミットメントファシリティー契約を複数の日本および在外銀行と締結することに合意しました。当コミットメントファシリティーの期間は、2019年10月から最低5年間です。なお、当コミットメントファシリティーの契約締結にあたり、2020年3月に満期を迎える既存の短期コミットメントファシリティー3,000億円は、2019年9月に解約しております。当コミットメントファシリティーは、一般事業資金として使用することを目的としております。なお、2020年3月31日現在において当7,000億円のコミットメントファシリティーの使用はありません。
2019年3月期に関しては社債および長期借入金の償還または返済を行っておりませんが、当社グループは2020年3月期に7,011億円の社債および長期借入金を償還または返済しております。2019年7月、600億円の無担保社債および600億円のシンジケートローンをそれぞれの返済期限に伴い償還または返済しております。また2019年8月、合計1,404.5百万米ドル(1,502億円)の米ドル建無担保普通社債の早期償還を行っております。2019年9月、合計3,300百万米ドル(3,507億円)の米ドル建て無担保普通社債を償還期日に伴い償還しております。さらに2020年3月、700万米ドル(774億円)の米ドル建てシンジケートローンの早期償還を行っております。
当社グループは2019年12月に、2018年11月19日に私募により発行された2018年度米ドル建無担保普通社債のうち、2019年8月29日に償還した1,000百万米ドル(利率3.8%)を除く全額(以下、「発行済社債」)についてエクスチェンジ・オファーを完了しました。当該エクスチェンジ・オファーの結果、4,461百万米ドルに相当する発行済社債残高の概ねが、元本および契約条件を同一とする、1933年米国証券法に基づく登録債への交換に応募されました。本交換募集に応募され、受理された全ての発行済社債は償却された一方、応募されなかった元本金額39百万米ドル相当は未登録の発行済社債として残っております。
2020年3月31日時点において、当社グループの長期融資契約には、特定の財務比率や社債及び借入金の上限額、その他の制限を規定する各種の制限条項を含む様々な財務制限条項が付されております。2020年3月31日現在、当社グループはこれらの全ての制限条項を遵守しております。2020年3月期において、当社グループは特定の借入金に関する複数の財務制限条項を改定しました。この改定による主な変更は、2020年7月以降に最終弁済期限を迎える一定の借入金を対象としております。当該変更は、連続する2事業年度において税引前利益がマイナスになることを禁じる財務制限条項の削除、並びにこれに替わる毎年3月末および9月末において連結財政状態計算書における純負債の過去12か月間の連結EBITDA(連結EBITDAは契約書にて定義されたもの)に対する比率が一定水準を上回らないことを求める財務制限条項の導入が含まれます。2020年3月31日現在、当社グループは全ての制限条項を遵守しております。これらは、7,000億円の未使用のコミットメントラインからの借入を制限するものではありません。
当社グループは、短期の流動性の管理のため、日本の無担保コマーシャルペーパープログラムを保有しております。2020年3月31日時点におけるコマーシャルペーパープログラムの資金調達額は1,440億円であります。当社グループは、さらに2020年3月期において極度額2,300億円の短期コミットメントライン契約を締結しておりますが、借入はしておりません。
借入金の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
信用格付け
当社グループの信用格付けは、当社グループの財務の健全性、業績、債務の返済能力等に関する各格付機関の意見が反映されております。本報告書時点における当社グループの信用格付けは以下のとおりです。
格付会社カテゴリー信用格付評価構造
S&Pグローバル・レーティング発行体格付け/外貨長期および国内通貨長期BBB+11段階の格付けのうち4番目であり、同じカテゴリーの中で最上位(例:BBB+,BBB,BBB-は同じカテゴリーに属する)
発行体格付け(短期)A-26段階の格付けのうちの2番目
ムーディーズ長期発行体格付および長期優先無担保格付けBaa29段階の格付けのうち上から4番目であり、同じカテゴリーの中で2番目(例Baa1,Baa2,Baa3は同じカテゴリーに属する)

この格付けは、社債の購入、売却、保有を推奨するものではありません。この格付けは指定された格付機関によって適宜改訂あるいは撤回される可能性があります。それぞれの財務の健全性レーティングは、独立評価されたものであります。
オフバランス取引
マイルストン支払
新製品の開発に係る第三者との提携契約に基づき、当社グループは、パイプライン品目の開発、新製品の上市および上市後の販売等にかかる一定のマイルストン達成に応じた支払義務が生じる場合があります。2019年3月31日および2020年3月31日現在における潜在的なマイルストン支払の契約金額は、それぞれ6,555億円および8,239億円であります。これらは、開発中のパイプライン品目に係る潜在的なコマーシャルマイルストン支払を除いた金額であります。
契約負債
2020年3月31日現在における契約負債は以下のとおりです。
(単位:億円)
総契約額(1)1年以内1年超3年以内3年超5年以内5年超
社債及び借入金の返済(2) (3)
社債(4)37,2845,5179,75410,33411,679
借入金19,8401,3782,2637,3688,831
有形固定資産の取得に関する義務302302
リース負債の返済5,4574117375923,717
確定給付制度への拠出(5)7979
合計(6) (7)62,9627,68712,75418,29424,227

(1) 2020年3月31日現在における日本円以外の通貨建債務は、期末為替レートで日本円に換算しており、為替レートの変動により金額が異なる可能性があります。
(2) 当社グループが関連する金融商品の財務制限条項違反を行った場合、返済義務が早まる可能性があります。
(3) 利息支払義務を含みます。
(4) 社債の契約額のうち、「3年超5年以内」の金額には、劣後特約付きハイブリッド社債(ハイブリッド債)元本全額を2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があるため、当ハイブリッド債の元本5,000億円が含まれています(早期償還可能日である2024年10月6日までの利率(1.720%)を用いて期日別残高を作成しています。2024年10月以降の利息は上記の表には含まれておりません)。ハイブリッド債の詳細については、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
(5) 2021年3月31日以降の年金および退職後給付制度への拠出額については、拠出の時期が不確実であり、利率、運用収益、および法律およびその他の変動要因に依存するため、確定することはできません。
(6) 確定給付債務、訴訟引当金および長期未払法人税等、時期を見積もることができない契約負債、また、金額が公正価値の変動により変化するデリバティブ負債および条件付対価等の負債は含まれておりません。また、特定の将来の事象の発生に左右されるマイルストン支払いも含んでおりません。
(7) 通常の事業活動における購買に関する発注は含んでおりません。