四半期報告書-第146期第1四半期(令和4年4月1日-令和4年6月30日)

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2022/08/04 13:13
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35項目

(1) 業績の概要
当期(2022年4-6月期)の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円、%以外)
前年同期当期対前年同期
増減額実勢レートベース
増減率
CERベース
増減率(注1)
売上収益9,4969,7252292.4%△6.8%
売上原価△2,413△2,929△51621.4%11.3%
販売費及び一般管理費△2,198△2,315△1165.3%△4.4%
研究開発費△1,225△1,436△21117.2%4.4%
製品に係る無形資産償却費及び減損損失△1,028△1,313△28527.7%12.5%
その他の営業収益11155△56△50.7%△52.5%
その他の営業費用△258△282△249.4%△6.2%
営業利益2,4861,505△980△39.4%△42.2%
金融収益及び費用(純額)△25255307--
持分法による投資損益△4△5△139.3%△2.0%
税引前四半期利益2,2301,555△675△30.3%△33.7%
法人所得税費用△853△505348△40.8%△41.7%
四半期利益1,3771,050△327△23.7%△28.7%

(注1) 「当期(2022年4-6月期)におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
[売上収益]
売上収益は、前年同期から229億円増収(+2.4%、CERベース増減率:△6.8%)の9,725億円となりました。これは主に、事業が好調に推移したことと円安の為替相場による増収影響が、前年同期に売上収益に計上した日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの帝人ファーマ株式会社への譲渡価額1,330億円の減収影響を上回ったことによります。
主要な疾患領域(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、およびニューロサイエンス(神経精神疾患))の売上収益は、前年同期から1,458億円増収(+20.6%)の8,538億円となりました。各疾患領域における好調な業績があったことに加え、円安による増収影響により、オンコロジーを除き、それぞれ全社の売上収益の増収に貢献しました。オンコロジーにおいては、一部の製品が後発品の参入や競争の激化による影響を受けました。
当社の主要な疾患領域以外の売上収益は、前年同期に非定常的な売上収益として計上した日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円が当期はなくなったことを主な要因として、前年同期から1,230億円減収(△50.9%)の1,187億円となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
売上収益:前年同期当期対前年同期
増減額実勢レートベース
増減率
CERベース
増減率(注1)
日本(注2)2,5901,405△1,184△45.7%△45.9%
米国4,1225,01188821.6%5.4%
欧州およびカナダ1,7872,05626815.0%9.3%
アジア(日本を除く)4034615814.4%2.9%
中南米30140310234.0%16.7%
ロシア/CIS1231745040.8%24.7%
その他(注3)1702164626.8%34.2%
合計9,4969,7252292.4%△6.8%

(注1) 「当期(2022年4-6月期)におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
(注2) 前年同期は、日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を含みます。
(注3) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
疾患領域別売上収益
各疾患領域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
売上収益:前年同期当期対前年同期
増減額実勢レートベース
増減率
CERベース
増減率(注1)
消化器系疾患2,1052,70459928.4%15.4%
希少疾患1,5551,81626216.8%7.3%
希少血液疾患722791699.6%0.7%
希少遺伝子疾患およびその他8331,02519223.1%13.1%
血漿分画製剤(免疫疾患)1,0721,41934732.3%18.0%
オンコロジー1,2141,175△39△3.2%△10.1%
ニューロサイエンス1,1341,42429025.6%10.7%
その他(注2)2,4161,187△1,230△50.9%△52.9%
合計9,4969,7252292.4%△6.8%

(注1) 「当期(2022年4-6月期)におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義」をご参照ください。
(注2) 前年同期は、日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を含みます。
各疾患領域における売上収益の前年同期からの増減は、主に以下の製品によるものです。
・消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年同期から599億円増収(+28.4%、CERベース増減率:+15.4%)の2,704億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ENTYVIO」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年同期から429億円増収(+34.2%)の1,683億円となり、売上成長を牽引しました。本剤の米国における売上は、炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎とクローン病に対する生物学的製剤の新規投与患者が引き続き増加したことにより、前年同期から342億円増収(+40.9%)の1,179億円となりました。なお、前年度第4四半期において、COVID-19に関連する売上の減収影響がありましたが当期は徐々に改善されており、また、出荷時期に係る減収影響については概ね解消されております。欧州およびカナダにおける本剤の売上は、前年同期から62億円増収(+18.8%)の389億円となりました。成長新興国においては、ブラジルが本剤の売上を伸ばしました。逆流性食道炎治療剤「DEXILANT」の売上は、米国におけるオーソライズド・ジェネリックの売上の伸長により、前年同期から115億円増収(+107.0%)の223億円となりました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ/VOCINTI」の売上は、日本において2022年4月に適用された市場拡大再算定による減収影響があったものの、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、主に日本において新規処方が拡大したことにより、前年同期から34億円増収(+13.9%)の276億円となりました。短腸症候群治療剤「GATTEX/レベスティブ」の売上は、主に市場浸透が進んだこと、および2021年8月の日本をはじめ新たな国々での上市により、38億円増収(+20.9%)の219億円となりました。
・希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年同期から262億円増収(+16.8%、CERベース増減率:+7.3%)の1,816億円となりました。
希少血液疾患領域の売上収益は、69億円増収(+9.6%、CERベース増減率:+0.7%)の791億円となりました。血友病A治療剤「アドベイト」の売上は、14億円増収(+4.7%)の321億円となり、血友病A治療剤「アディノベイト/ADYNOVI」の売上は、21億円増収(+13.9%)の175億円となりました。両剤はいずれも、円安による増収影響により伸長しました。また、血友病Aおよび血友病B治療剤「ファイバ」の売上は、米国における競合品の影響により、前年同期から9億円減収(△7.6%)の105億円となりました。
希少遺伝子疾患およびその他の疾患領域の売上収益は、192億円増収(+23.1%、CERベース増減率:+13.1%)の1,025億円となりました。遺伝性血管性浮腫治療剤「タクザイロ」の売上は、主に予防薬市場の拡大、販売エリアの拡大、および処方の増加により、86億円増収(+33.7%)の340億円となりました。ファブリー病治療剤「リプレガル」の売上は、2022年2月のライセンス契約の終結に伴い、日本における製造販売権を承継したことを主な要因として、前年同期から36億円(+25.3%)増収の176億円となりました。その他の酵素補充療法のハンター症候群治療剤「エラプレース」およびゴーシェ病治療剤「ビプリブ」の売上は、主に成長新興国における伸長により、それぞれ36億円と14億円の増収となりました。2021年12月に米国で上市した移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療剤「LIVTENCITY」の当期の売上は22億円となりました。
・血漿分画製剤(免疫疾患)
血漿分画製剤(免疫疾患)領域の売上収益は、前年同期から347億円増収(+32.3%、CERベース増減率:+18.0%)の1,419億円となりました。免疫グロブリン製剤の売上合計は、302億円増収(+37.0%)の1,118億円となりました。特に、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」の売上は、パンデミックによる下方圧力が緩和した米国を中心に引き続きグローバルに需要が堅調に推移し供給量が増加したことにより、前期から増収となりました。また、皮下注製剤である「CUVITRU」と「HYQVIA」は2桁台の売上収益増収率となりました。主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「HUMAN ALBUMIN」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は、成長新興国における「HUMAN ALBUMIN」の旺盛な需要により、前年同期から42億円増収(+23.8%)の220億円となりました。
・オンコロジー
オンコロジー領域の売上収益は、前年同期から39億円減収(△3.2%、CERベース増減率:△10.1%)の1,175億円となりました。これは米国において、多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の後発品が急速に浸透し始めたことによります。本剤の売上は、2022年5月から複数の後発品が米国市場に参入し始めてきたことにより、前年同期から136億円減収(△45.3%)の165億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、前年同期から6億円減収(△2.6%)の237億円となりました。本剤の米国における売上は、競合品の影響や需要減少の影響により、6億円(△4.0%)の減収となりました。これら「ベルケイド」および「ニンラーロ」の減収は、その他のオンコロジー製品の増収により一部相殺されました。悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、イタリアや日本などで好調に伸長し、前年同期から27億円増収(+15.9%)の200億円となりました。子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられる特許満了製品の「リュープリン/ENANTONE」は、主に中国において供給改善による売上の伸長があったものの、日本における後発品の浸透および競合品による減収影響によって一部相殺され、前年同期から18億円増収(+6.8%)の280億円となりました。また、非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、日本および欧州における需要が堅調に推移したことにより、14億円増収(+45.9%)の45億円となりました。卵巣がん治療剤「ゼジューラ」の売上は、主に日本の売上が伸長したことにより、前年同期から15億円増収(+94.0%)の30億円となりました。2021年9月に米国で上市した非小細胞肺がん治療剤「EXKIVITY」の当期の売上は7億円となりました。
・ニューロサイエンス
ニューロサイエンス領域の売上収益は、前年同期から290億円増収(+25.6%、CERベース増減率:+10.7%)の1,424億円となりました。注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「VYVANSE/ELVANSE」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上は、主に米国における成人向け市場の拡大により、前年同期から208億円増収(+26.2%)の1,000億円となりました。大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、主に米国および日本における処方の増加により、前年同期から36億円増収(+20.0%)の214億円となりました。ADHD治療剤「ADDERALL XR」の売上は、米国を中心に売上が伸長し、前年同期から22億円(+56.4%)増収の62億円となりました。また、ADHD治療剤「インチュニブ」の売上は、日本における伸長により、前年同期から19億円増収(+57.3%)の51億円となりました。
[売上原価]
売上原価は、前年同期から516億円増加(+21.4%、CERベース増減率:+11.3%)の2,929億円となりました。この増加は主に、当期における円安の為替影響、および主要な疾患領域の売上が前年同期と比較し増加したことによります。売上原価率は前年同期から4.7pp増加の30.1%となりました。この増加は主に、前年同期において日本の糖尿病治療剤ポートフォリオを譲渡したことに伴い、譲渡価額1,330億円の売上収益を計上したことによるものです。
[販売費及び一般管理費]
販売費及び一般管理費は、当期における円安の為替影響により、前年同期から116億円増加(+5.3%、CERベース増減率:△4.4%)の2,315億円となりました。
[研究開発費]
研究開発費は、主に当期における円安の為替影響により、前年同期から211億円増加(+17.2%、CERベース増減率:+4.4%)の1,436億円となりました。
[製品に係る無形資産償却費及び減損損失]
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、主に当期における円安の為替影響、および当期計上した特定の資産に係る減損損失により、前年同期から285億円増加(+27.7%、CERベース増減率:+12.5%)の1,313億円となりました。
[その他の営業収益]
その他の営業収益は、前年同期に計上した訴訟にかかる受取額の影響により、前年同期から56億円減少(△50.7%、CERベース増減率:△52.5%)の55億円となりました。
[その他の営業費用]
その他の営業費用は、前年同期から24億円増加(+9.4%、CERベース増減率:△6.2%)の282億円となりました。この増加は主に、Shire社との統合費用の減少に伴い事業構造再編費用が減少したものの、承認前在庫にかかる評価損が66億円増加したことによります。
[営業利益]
営業利益は、上記の要因を反映し、前年同期から980億円減益(△39.4%、CERベース増減率:△42.2%)の1,505億円となりました。
[金融損益]
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は55億円の収益となり、前年同期の252億円の損失から収益が307億円増加しました。この増加は主に、これまで持分法適用会社であったGammaDelta Therapeutics社およびAdaptate Biotherapeutics社を2022年4月に買収したことに伴う投資の再測定に係る利益、および2022年5月に上場した企業のワラントにかかるデリバティブ評価益を計上したことによるものです。
[持分法による投資損益]
当期の持分法による投資損益は、前年同期の持分法による投資損失から1億円増加(+39.3%、CERベース増減率:△2.0%)の5億円の損失となりました。
[法人所得税費用]
法人所得税費用は、前年同期から348億円減少(△40.8%、CERベース増減率:△41.7%)の505億円となりました。この減少は主に、前年同期に認識した、2014年にShire社がAbbVie社からの買収申し出の取下げに関連して受領した違約金に対するアイルランドでの課税を巡る税務評価から生じた税金および利息の合計と関連する税務便益5億円との純額627億円、ならびに税引前四半期利益の減少によるものです。これらの減少は、グループ内の組織再編により前年同期に認識された税務上の便益および当期における繰延税金資産の評価減による税務費用と一部相殺されております。
[四半期利益]
四半期利益は、上記の要因を反映し、前年同期から327億円減益(△23.7%、CERベース増減率:△28.7%)の1,050億円となりました。
当期(2022年4-6月期)におけるCore業績の概要
Core財務指標とCERベースの増減の定義
Core売上収益は、売上収益から、重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響を控除して算出します。
Core営業利益は、当期利益から、法人所得税費用、持分法による投資損益、金融損益、その他の営業収益及びその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、非定常的な事象に基づく影響、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。
Core EPSは、当期利益から、Core営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算出します。
CER(Constant Exchange Rate:恒常為替レート)ベースの増減は、当期の財務ベースの業績もしくはCore業績について、前年同期に適用した為替レートを用いて換算することにより、前年同期との比較において為替影響を控除するものです。
Core業績
(単位:億円、%以外)
前年同期当期対前年同期
増減額実勢レートベース
増減率
CERベース
増減率
Core売上収益8,1669,7251,55919.1%8.3%
Core営業利益2,4893,19170128.2%17.0%
Core EPS(円)1131453228.5%15.8%

[Core売上収益]
当期のCore売上収益は、前年同期から1,559億円増収(+19.1%、CERベース増減率:+8.3%)の9,725億円となりました。前年同期のCore売上収益は、非定常的な日本の糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を控除し8,166億円でした。当期においては、売上収益から控除した重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響はないことから、Core売上収益は財務ベースの売上収益と同額の9,725億円でした。タケダの成長製品・新製品(注)は、前年同期から1,045億円増収(+40.3%、CERベース増減率:+25.8%)の3,636億円となり、好調に推移した事業を牽引しました。
(注)タケダの成長製品・新製品
消化器系疾患:ENTYVIO、アロフィセル
希少疾患:タクザイロ、LIVTENCITY
血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID、HYQVIA、CUVITRUを含む免疫グロブリン製剤、HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤
オンコロジー:アルンブリグ、EXKIVITY
その他:スパイクバックス筋注、ヌバキソビッド筋注
[Core営業利益]
当期のCore営業利益は、主要な疾患領域の売上が増加したこと、および当期における円安の為替影響により、701億円増加(+28.2%、CERベース増減率:+17.0%)の3,191億円となりました。
[Core EPS]
当期のCore EPSは、32円増加の145円(+28.5%、CERベース増減率:+15.8%)となりました。
(2) 財政状態の分析
[資産]
当第1四半期末における資産合計は、前年度末から8,874億円増加し、14兆654億円となりました。のれん、無形資産および有形固定資産は、主に為替換算の影響によりそれぞれ4,059億円、3,265億円および1,226億円増加しました。これらの資産を含む増加影響は、現金及び現金同等物の減少2,037億円と一部相殺されております。
[負債]
当第1四半期末における負債合計は、前年度末から2,535億円増加し、7兆7,480億円となりました。社債及び借入金が、主に為替換算の影響により、前年度末から2,568億円増加の4兆6,023億円(注)となったことに加え、未払法人所得税が534億円増加しました。これらの増加は、仕入債務及びその他の債務の減少919億円と一部相殺されております。
(注) 当第1四半期末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆8,733億円および7,289億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
銘柄
(外貨建発行額)
発行時期償還期限帳簿価額
米ドル建無担保普通社債
(1,301百万米ドル)
2015年6月2025年6月
~2045年6月
1,776億円
米ドル建無担保普通社債
(4,000百万米ドル)
2016年9月2023年9月
~2026年9月
5,211億円
ユーロ建無担保普通社債
(3,750百万ユーロ)
2018年11月2022年11月
~2030年11月
5,306億円
米ドル建無担保普通社債
(3,250百万米ドル)
2018年11月2023年11月
~2028年11月
4,408億円
ハイブリッド社債
(劣後特約付社債)
2019年6月2079年6月4,983億円
米ドル建無担保普通社債
(7,000百万米ドル)
2020年7月2030年3月
~2060年7月
9,471億円
ユーロ建無担保普通社債
(3,600百万ユーロ)
2020年7月2027年7月
~2040年7月
5,084億円
円貨建無担保普通社債2021年10月2031年10月2,494億円
合計3兆8,733億円

借入金:
名称
(外貨建借入額)
借入時期返済期限帳簿価額
シンジケートローン2016年4月2023年4月
~2026年4月
2,000億円
2017年4月2027年4月1,135億円

(1,500百万米ドル)
2017年4月2027年4月2,041億円
その他のバイラテラルローン2016年3月
~2017年4月
2023年3月
~2026年3月
2,100億円
その他14億円
合計7,289億円

当社グループは、2015年6月に発行した米ドル建無担保普通社債219百万米ドルについて、2022年6月23日の償還期日に先立ち、2022年4月23日に繰上償還を実行しております。
[資本]
当第1四半期末における資本合計は、前年度末から6,339億円増加の6兆3,174億円となりました。これは、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が6,685億円増加したことによるものです。この増加は、主に利益剰余金の減少200億円、および当期の自己株式取得の実施による自己株式の増加132億円と一部相殺されております。利益剰余金は、四半期利益の計上があったものの、主に1,382億円の配当金の支払により減少しました。
[キャッシュ・フロー]
(単位:億円)
前年同期(2021年4-6月期)当期(2022年4-6月期)
営業活動によるキャッシュ・フロー1,669842
投資活動によるキャッシュ・フロー△704△947
財務活動によるキャッシュ・フロー△4,110△2,157
現金及び現金同等物の増減額△3,146△2,262
現金及び現金同等物の期首残高9,6628,497
現金及び現金同等物に係る換算差額33225
現金及び現金同等物の四半期末残高6,5496,460

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期1,669億円から826億円減少の842億円となりました。これは主に、非資金項目、財務活動に関連する損益項目、およびその他の調整項目を調整した後の四半期利益が減少したことに加え、仕入債務及びその他の債務における減少、およびその他の金融負債における減少があったことによるものです。これらの減少影響は、引当金における増加と一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期△704億円から243億円減少の△947億円となりました。これは主に、無形資産の取得による支出および有形固定資産の取得による支出がそれぞれ438億円および123億円増加したことによるものです。これらの増加は、事業取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)の減少275億円と一部相殺されております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期△4,110億円から1,953億円増加の△2,157億円となりました。これは主に、社債の償還及び長期借入金の返済による支出の減少2,161億円によるものです。これは、当期に実施した自己株式取得に伴う、自己株式の取得による支出の増加244億円と一部相殺されております。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第1四半期において、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響軽減のための当社の取り組みと、ウクライナとロシアにおける事業の状況については、以下のとおりです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響軽減のための当社の取り組み
当社は、従業員の健康・安全確保、当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供、当社従業員が就業・居住するコミュニティでの感染の軽減およびサポートを中心に引き続き取り組んでおります。COVID-19に対するワクチンが広く普及しつつありますが、当社は、当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、新しい変異株を含め、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。
当社は、Novavax社からライセンス供与と技術移転を受けた組換えスパイクタンパクを抗原としたCOVID-19ワクチン「ヌバキソビッド筋注」を当社の光工場において製造しており、2022年5月から、日本国内において供給を行っております。また、Moderna社との提携を通じて、引き続き、COVID-19に対するmRNAワクチンである「スパイクバックス筋注」の日本国内における流通支援を行ってまいります。
ウクライナとロシアにおける事業について
すべての患者さんと従業員を大切にするという私たちの変わらぬ約束は、危機の中において、より重要なものとなっています。当社は従業員の安全を確保し、ウクライナや周辺地域の患者さんに必要な医薬品を提供し続けるために、あらゆる努力を重ねています。
当社は、患者さんへの医薬品の安定供給と従業員への支援を維持するために必要不可欠な活動を除き、ロシアにおける活動を中止しました。これには、すべての新規投資の中止、広告・宣伝活動の中止、新規の臨床試験を実施しないこと、および進行中の臨床試験への新規患者登録の中止を含みます。当社はタケダイズムと患者さんを中心に考えるという私たちの価値観、そして私たちの医薬品や治療法を必要とするウクライナやロシア、周辺地域の患者さんへの倫理的な責任に基づいた必要不可欠な活動に注力します。それと同時に、当社はロシアに課せられたすべての国際的な制裁を遵守しています。
また、ウクライナで被害を受けた方々への寄付金や医薬品の無償提供などの人道的支援活動を強化します。そして、周辺地域の患者さんが必要とする、新たな支援についても検討を続けます。
当期のロシア/CISにおける売上収益は、連結の売上収益9,725億円の1.8%でした(第2 事業の状況2.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績の概要の当期(2022年4-6月期)における地域別売上収益をご参照ください)。これら国々における危機による当期の当社業績に対する重大な影響はありませんでした。しかしながら、今後の事態の進展によっては、当社の業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
(4) 研究開発活動の内容および成果
当第1四半期の研究開発費の総額は1,436億円であります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。「革新的なバイオ医薬品」に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。「革新的なバイオ医薬品」における重点疾患領域(オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患)には未だ有効な治療法が確立されていない疾患に対する高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在し、当社はベスト・イン・クラスあるいはファースト・イン・クラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、Shire社の買収も含め、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図っています。また、当社はデータとデジタル技術を活用し、イノベーションの質を向上させ、実行を加速させています。
当社のパイプラインは、当社事業の短期的および長期的かつ持続的な成長を支えるものです。初回の承認取得後も上市後の製品に対して、地理的拡大や効能追加に加え、市販後調査および剤型追加の可能性を含めた継続的な研究開発活動による支援体制が整っています。当社の研究開発チームは、販売部門との緊密な連携を通じ既発売品の価値の最大化を図り、販売活動を通じて得られた知見を研究開発戦略やポートフォリオに反映します。
当社の2022年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「アルンブリグ」「EXKIVITY」を含む肺がんを対象とするポートフォリオおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社内および社外との提携を通じ、新規のがん免疫療法標的および自然免疫システムを活用した次世代基盤技術の追求(「modakafusp alfa(TAK-573)」、「subasumstat(TAK-981)など)の3つの分野にフォーカスしています。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2022年5月、当社は、「アドセトリス」について、CD30陽性ホジキンリンパ腫における小児の一次治療に対する用法用量について、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。
- 2022年5月、当社とSeagen Inc.は、「アドセトリス」と化学療法の併用を検討した臨床第3相試験である「ECHELON-1」の全生存期間(OS)のデータを公表しました。本データは第59回米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO)および第27回欧州血液学会議年次総会(EHA)のオーラルセッションにおいて発表されました。未治療のⅢ期またはⅣ期の成人古典的ホジキンリンパ腫患者を対象とした「ECHELON-1試験」において、「アドセトリス」、「ドキソルビシン」、「ビンブラスチン」および「ダカルバジン」併用群(A+AVD)は、「ドキソルビシン」、「ブレオマイシン」、「ビンブラスチン」および「ダカルバジン」併用群(ABVD)に対して統計学的に有意なOSの改善を示しました。約6年間の観察期間(中央値73ヶ月)において、A+AVDの併用療法を受けた患者群は死亡リスクが41%低下し(ハザード比[HR]0.59;95%信頼区間[CI]:0.396-0.879)、推定全生存率は6年時点で93.9%(95%信頼区間[CI]:91.6-95.5)でした。「アドセトリス」の安全性プロファイルはこれまでの臨床試験の結果と一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
[ベクティビックス 一般名:パニツムマブ]
- 2022年6月、当社は、「ベクティビックス」のRAS遺伝子野生型で化学療法未治療の切除不能進行再発大腸がんの日本人患者を対象とした国内臨床第3相試験である「PARADIGM試験」に関するデータを、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のPlenary Sessionにおいて発表しました。「PARADIGM試験」は、RAS遺伝子野生型で原発巣占居部位が左側(下行結腸、S状結腸、直腸)である大腸がん患者における適切な治療を世界で初めて前向きに検証しました。主要評価項目である全生存期間(OS)において、原発巣占居部位が左側及び全体、いずれの集団でもmFOLFOX6+「ベクティビックス」併用療法がmFOLFOX6+「ベバシズマブ」併用療法に対し、統計学的に有意な延長が認められました(左側 OS中央値:37.9 vs. 34.3, HR=0.82 [95.798% CI: 0.68-0.99], p=0.031、全体 OS中央値:36.2 vs. 31.3, HR=0.84 [95% CI:0.72-0.98], p=0.030)。なお、本試験における「ベクティビックス」投与時の安全性プロファイルはこれまでに公表された臨床試験結果と同様の内容でした。
希少遺伝子疾患および血液疾患
当社は、希少遺伝子疾患および血液疾患において、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する複数の疾患に注力しています。遺伝性血管性浮腫においては、「タクザイロ」におけるC1インヒビターが正常レベルのブラジキニン介在性血管性浮腫に対する評価を含め、同製品をはじめとするライフサイクルマネジメントプログラムへの継続的な研究開発投資を通じて、既存の治療パラダイムの変革を目指します。希少血液疾患においては、「アドベイト」、「アディノベイト/ADYNOVI」に加えて、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(iTTP)および先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)治療に対するパイプラインである「TAK-755」の開発を通じて、出血性疾患治療における現在のニーズへ対応することに注力しています。希少遺伝子疾患およびその他の疾患においては、ライソゾーム病(LSD)に対し、「ELAPRASE」や「リプレガル」を含む既発売品、ハンター症候群治療薬「pabinafusp alfa」をはじめとする後期開発段階の治験中のパイプライン候補品を含む治療薬を開発しています。また、「LIVTENCITY」においては、移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の治療を再定義することを目指しています。当社は、希少疾患の患者さんに対し差別化された遺伝子治療の候補品を開発し、患者さんの機能回復を提供するための研究開発機能を構築しています。
[タクザイロ 一般名:ラナデルマブ]
- 2022年4月、当社は、2歳以上12歳未満の患者を対象とした臨床第3相試験である「SPRING試験」において、「タクザイロ」の安全性プロファイルおよび薬物動態の評価が終了し、主要評価項目を達成したことを公表しました。安全性プロファイルはこれまでに公表された12歳以上の小児患者を対象とした臨床プログラムと一致し、重篤な有害事象および有害事象による脱落はありませんでした。また、本試験において、2歳以上12歳未満の小児を対象とする遺伝性血管性浮腫(HAE)の発症抑制における「タクザイロ」の臨床活性および臨床アウトカムを評価し、本剤の薬力学を特徴付ける副次評価項目も達成しました。
- 2022年7月、当社は、ハイブリッドで開催された2022年欧州アレルギー臨床免疫学会議(EAACI)において、「タクザイロ」の臨床第3相「SPRING試験」の最新データを発表しました。多施設共同非盲検臨床第3相試験である「SPRING試験」の主要評価項目は、2歳以上12歳未満のHAE患者を対象とした「タクザイロ」の安全性および薬物動態(PK)です。また、副次評価項目として、HAE発作抑制の臨床効果を評価しています。本試験では、本剤150mgを2歳以上6歳未満の患者では4週毎に、6歳以上12歳未満の患者では2週毎に投与しました。「タクザイロ」は投与開始時と比較して小児患者におけるHAEの発作発症率を平均94.8%低下させ、投与期間における発作は1か月あたり1.84回から0.08回になりました。患者の大多数(76.2%)は52週間の投与期間中に無発作となり、平均99.5%の日数が無発作日となりました。本試験中に報告された死亡または重篤な有害事象(TEAEs)はなく、TEAEsにより試験を中止した患者はいませんでした。これらの結果は、成人および12歳以上の小児患者を対象に既に実施された試験結果と一貫していました。これらのデータは、タクザイロの低年齢の患者への適応拡大に向けて、世界各国の規制当局に提出される予定です。
[LIVTENCITY 一般名:maribavir]
- 2022年4月、当社は、米国ユタ州ソルトレークシティにて開催されたTandem移植・細胞治療学会およびポルトガルのリスボンにて開催された第32回欧州臨床微生物感染症学会議(ECCMID)において、「LIVTENCITY」に関する4つの抄録を発表しました。発表演題には、移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症患者において、「LIVTENCITY」投与群では従来の抗ウイルス療法群と比較して、入院率の低下(34.8%、p=0.021)と入院期間の短縮(53.8%、p=0.029)を示す臨床第3相「SOLSTICE試験」の探索的解析が含まれます。また、臨床第3相「SOLSTICE試験」のサブグループ別の事後解析では、CMVのDNA濃度が定量検出限界以下(⦅LLOQ)となることが最初に確認されるまでの期間が、従来の抗ウイルス療法群と比較して「LIVTENCITY」投与群で短縮することが示され、これまで報告された試験結果と一致していました。
[アディノベイト/ADYNOVI 一般名:ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組み換え)]
- 2022年6月、当社は、「アディノベイト」について、定期補充療法の用法・用量に関する製造販売承認事項一部変更承認申請を日本において行ったことを公表しました。今回の申請は、主に国際共同臨床第3相試験である「CONTINUATION試験」および「PROPEL試験」の成績に基づいて行っています。
[開発コード:TAK-611]
- 2022年6月、当社は、遺伝子組換えヒトアリルスルファターゼA(recombinant human arylsulfatase A :rhASA)「TAK-611」が、異染性白質ジストロフィー(Metachromatic Leukodystrophy:MLD)を予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を取得したことを公表しました。日本では、MLDの効能・効果を有する治療法は現時点においてなく、「TAK-611」はMLDに対する酵素補充療法を目的としたrhASAであり、現在、国際共同第2b相試験などが進行中です。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資をフォーカスし、当社の専門知識やパートナーとの提携を生かし、パイプラインを構築しています。疾患の生物学的理解、トランスレーショナルなツール、革新的なモダリティの進展により、当社は希少神経疾患、特にオレキシン2受容体作動薬フランチャイズ(「TAK-861」、「TAK-925」など)によるナルコレプシーや特発性過眠症などの睡眠・覚醒障害および「soticlestat」(「TAK-935」)による希少てんかんの治療薬の開発に注力しています。当社はさらに、神経筋疾患、神経変性疾患および運動障害のうち患者セグメントを明確に定義できる疾患に特化した投資を行っています。
[開発コード:TAK-994]
- 2022年6月、当社は、「TAK-994」のベネフィット・リスクプロファイルを評価した結果、本プログラムの開発を継続しないことを決定しました。「TAK-994」の臨床第2相試験(「TAK-994-1501試験」および「TAK-994-1504試験」)において安全性シグナルの存在が明らかになったことにより、2021年10月に2つの臨床第2相試験を予定より早く終了することを決定していました。
消化器系疾患
消化器系疾患において、消化管疾患および肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうるような治療法をお届けすることにフォーカスしています。炎症性腸疾患においては、「ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)」に関する皮下注射製剤、針なしの医療用デバイスの開発および活動性の慢性回腸嚢炎をはじめとする適応症拡大を含め、フランチャイズのポテンシャルを最大化しています。加えて、「GATTEX/レベスティブ」および「アロフィセル」により当社の消化器系疾患におけるポジショニングの拡大を目指しており、米国を含む一層の地理的拡大のために臨床第3相試験を実施および計画しています。また、当社は、社外との提携を通じて炎症性腸疾患、セリアック病、厳選した肝疾患、消化管運動関連疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めております。そのうち後期開発段階にある「fazirsiran(TAK-999)」は、社外との提携を通じたパイプライン構築の一例であり、α-1アンチトリプシン欠損関連肝疾患に対するファースト・イン・クラスのRNAi干渉治療薬となる可能性があります。
[開発コード:TAK-999 一般名:fazirsiran]
- 2022年6月、当社とArrowhead Pharmaceuticals Inc.は、α-1アンチトリプシン欠乏症(AATD)による肝疾患(AATLD)の治療薬として開発中の「fazirsiran」の臨床第2相試験「AROAAT-2002」の結果がThe New England Journal of Medicineに掲載され、欧州肝臓学会(EASL)の年次会議であるThe International Liver Congress 2022において口頭発表したことを公表しました。本剤は、変異型α-1アンチトリプシン蛋白(Z-AAT)の産生を低減する目的で設計されたファースト・イン・クラスの薬剤となる可能性のあるRNA干渉(RNAi)治療薬候補で、希少な遺伝子性疾患であるAATDによる肝疾患の治療薬として現在開発中です。「fazirsiran」はAATDの治療薬候補として、米国食品医薬品局(FDA)より2021年7月にブレークスルーセラピー指定(BTD)、2018年2月に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)指定を受けています。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造、研究開発および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では、様々な希少かつ複雑な慢性疾患に対する患者さんにとって生命の維持に必要不可欠な治療薬の開発を目指しています。本領域に特化した研究開発部門は、既発売の治療薬の価値最大化、新たな治療ターゲットの特定および現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。短期的には、当社の幅広い免疫グロブリン製剤ポートフォリオ(「HYQVIA」、「CUVITRU」、「GAMMAGARD」および「GAMMAGARD S/D」)における効能追加、地理的拡大および総合的な医療テクノロジーの活用を通じたより良い患者体験を追求しています。血液製剤およびスペシャリティケアのポートフォリオにおいては、「PROTHROMPLEX(4F-PCC)」、「ファイバ」、「CEPROTIN」および「ARALAST」における効能追加や剤型追加の開発機会の追求を優先しています。また、当社は、グローバルに販売している20種類以上にわたる治療薬ポートフォリオに加え、「20% fSCIg」(「TAK-881」)や「IgG Low IgA」(「TAK-880」)といった次世代の免疫グロブリン製剤(高シアル化免疫グロブリン(hsIgG)を含む)の開発、およびその他の早期段階の治療薬候補の開発を行っています。
[HYQVIA 一般名:遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼ含有皮下注(ヒト)免疫グロブリン10%]
- 2022年7月、当社は、「HYQVIA」を慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)に対する維持療法として評価する無作為化プラセボ対照二重盲検臨床第3相「ADVANCE-1試験」において、主要評価項目を達成したことを公表しました。本試験では、投与前の少なくとも3ヵ月間、静注免疫グロブリン(IVIG)療法の用法・用量に変更がなかったCIDPの成人患者132名を対象として、「HYQVIA」の有効性、安全性、忍容性を評価しました。INCATスコアを指標とした主要評価項目の解析では、「HYQVIA」を事前のIVIGと同じ用量および用法で投与した場合、プラセボと比較してCIDPの再発を減少させました[それぞれ9.7% vs 31.4%、p値 = 0.0045]。本試験において患者の大半が「HYQVIA」の4週間投与レジメンでの治療を受けました。「HYQVIA」による治療を受けた患者62名のうち、治験薬と関連のある有害事象の大半が軽度または中等度であり、「HYQVIA」による新たな安全性リスクは報告されませんでした。CIDPにおける「HYQVIA」の安全性プロファイルは、同薬効で最長となる6年間の長期臨床試験で、一部の患者に対して進行中の「ADVANCE-3試験」のデータによって、さらに裏付けられる予定です。全データ解析の完了次第、2022年度中に米国およびEUの規制当局へ「HYQVIA」の申請を行う予定です。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱(「TAK-003」)、新型コロナウイルス感染(COVID-19)(「ヌバキソビッド筋注」)、ジカウイルス感染(「TAK-426」)など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[スパイクバックス筋注(旧販売名:COVID-19ワクチンモデルナ筋注) (開発コード:mRNA-1273、日本での開発コード:TAK-919)]
- 2022年5月、当社とModerna, Inc.(Moderna社)は、2022年8月1日付で「スパイクバックス筋注」の製造販売承認を当社からモデルナ・ジャパン株式会社(モデルナ・ジャパン)に承継することを公表しました。承継後モデルナ・ジャパンは、日本における「スパイクバックス筋注」の輸入、薬事、開発、品質保証および情報提供活動などのすべてに責任を持つことになります。当社は、当面の間、新型コロナウイルス感染症にかかわる特例臨時接種の枠組みの下、米国Moderna社の新型コロナウイルスワクチンの流通を引き続き担います。
[ヌバキソビッド筋注 開発コード:NVX-CoV2373(日本での開発コード:TAK-019)]
- 2022年4月、当社は、組換えスパイクタンパクを抗原とした新型コロナウイルス感染症ワクチン 「ヌバキソビッド筋注」について、18歳以上を対象として、厚生労働省より初回免疫および追加免疫に対する製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、当社が実施した国内臨床第1/2相試験における中間結果、Novavax社が実施した英国ならびに米国およびメキシコで実施した2つの臨床ピボタル第3相試験、オーストラリアおよび米国における臨床第1/2相試験の安全性と有効性のデータ、申請後に追加提出した海外の安全性および有効性のデータに基づいています。国内臨床第1/2相試験の中間結果は良好で、これまで実施された臨床試験の結果と一致していました。国内臨床試験において本ワクチン投与群に重篤な有害事象は認められませんでした。 また、米国およびオーストラリアで実施した臨床第1/2相試験ならびに南アフリカで実施した臨床第2相試験において、初回接種から約6ヵ月後に本ワクチンを1回追加接種したところ、追加接種前と比較して顕著な抗体価の上昇が確認され、安全性に関する大きな懸念は認められませんでした。
- 2022年5月、当社は、「ヌバキソビッド筋注」について、予防接種法で定められた新型コロナワクチンの臨時予防接種に係る法令等の改正を経て、特例臨時接種として初回免疫(1、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)を行う場合に使用するワクチンに指定されたことを公表しました。「ヌバキソビッド筋注」は、多くの医療用医薬品やワクチンと同様に冷蔵保存(保管温度:2-8℃)であり、通常のワクチンにおけるサプライチェーンを利用して輸送・保管することが可能です。
[開発コード:TAK-003 一般名:デング熱ワクチン]
- 2022年6月、当社は、「TAK-003」がグローバル臨床第3相試験である「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」において、ワクチン接種後4年半(54ヵ月)にわたる継続したデング熱の予防効果を示し、安全性について大きな懸念が認められなかったことを、第8回Northern European Conference on Travel Medicine(NECTM8)で発表しました。4年半を通して、「TAK-003」はデングウイルス感染症による入院に対して84.1%のワクチン有効性(95%信頼区間:77.8, 88.6)を示し、ワクチン接種前の血清反応陽性者では85.9%の有効性(78.7, 90.7)、血清反応陰性者では79.3%の有効性(63.5, 88.2)を示しました。また、ウイルス学的に確認されたデングウイルス感染症に対して61.2%(95%信頼区間:56.0, 65.8)の全体的な有効性を示し、ワクチン接種前の血清反応陽性者では64.2%の有効性(58.4, 69.2)、血清陰性者では53.5%の有効性(41.6, 62.9)でした。有効性は血清型によって異なっていましたが、この結果はこれまでに報告された結果と一貫性のあるものでした。「TAK-003」の忍容性は概ね良好であり、重要な安全性リスクは特定されませんでした。54ヵ月間の探索的解析からは、疾患増強のエビデンスは認められませんでした。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
(5)主要な設備
当第1四半期に著しい変動があった新設の設備計画は、次のとおりであります。
区分事業所名及び
子会社事務所名
《主な所在地》
セグメントの
名称
設備の内容投資予定金額(注)資金調達
方法
着手及び完了予定
総額
(百万円)
既支払額
(百万円)
着手完了
新設武田ファーマシューティカルズU.S.A., Inc.
《米国 マサチューセッツ州
ケンブリッジ》
医薬品事業研究開発施設
およびオフィス
238,069自己資金及び
リース
2023年
1月
2026年
10月

(注)投資予定金額には、2025年開始予定のリース契約に基づくリース料支払義務を含んでおります。