四半期報告書-第145期第1四半期(令和3年4月1日-令和3年6月30日)
(1) 業績の概要
当期(2021年4-6月期)の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円、%以外) | ||||
前年同期 | 当期 | 対前年同期 | ||
売上収益 | 8,019 | 9,496 | 1,478 | 18.4% |
売上原価 | △2,381 | △2,413 | △32 | 1.3% |
販売費及び一般管理費 | △2,024 | △2,198 | △175 | 8.6% |
研究開発費 | △1,068 | △1,225 | △157 | 14.7% |
製品に係る無形資産償却費及び減損損失 | △1,042 | △1,028 | 14 | △1.4% |
その他の営業収益 | 637 | 111 | △526 | △82.6% |
その他の営業費用 | △468 | △258 | 210 | △44.9% |
営業利益 | 1,673 | 2,486 | 813 | 48.6% |
金融収益及び費用(純額) | △272 | △252 | 20 | △7.4% |
持分法による投資損益 | △98 | △4 | 94 | △96.3% |
税引前四半期利益 | 1,303 | 2,230 | 927 | 71.1% |
法人所得税費用 | △478 | △853 | △375 | 78.5% |
四半期利益 | 825 | 1,377 | 552 | 66.9% |
[売上収益]
売上収益は、前年同期から1,478億円増収(+18.4%)の9,496億円となりました。前年同期の実勢為替レートを当期に適用することにより算出した為替影響を除くと、売上収益は14.3%の増収となります。2021年4月、当社は、日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの1,330億円での帝人ファーマ株式会社への譲渡を完了し、これを売上収益に計上しました。当該譲渡価額は、売上収益の増加のうち、16.6パーセントポイント(以下、「pp」)を占めます。なお、当該譲渡価額を除くと、当期の売上収益は1.8%の増収となります。
当社の主要な疾患領域(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー、およびニューロサイエンス(神経精神疾患))はそれぞれ全社の売上収益の増収に貢献しました。しかしながら、希少疾患と血漿分画製剤(免疫疾患)における一部の製品は、競争の激化や後発品の浸透、出荷タイミングによる影響を受け、円安によるプラス影響を除くと両領域は減収となります。当期の売上収益は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のグローバルな流行拡大に大きく影響を受けることがありませんでした。
当社の主要な疾患領域以外の売上収益は、主に日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円が事業等の売却影響を吸収し、1,018億円増収(+72.8%)の2,416億円となりました。
各疾患領域における売上収益の前年同期からの増減は、主に以下の製品によるものです。
・消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年同期から236億円増収(+12.6%)の2,105億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年同期から241億円増収(+23.9%)の1,254億円となり、売上成長を牽引しました。本剤は需要の増加により、米国内の売上が、前年同期から122億円増収(+17.1%)の837億円となり、欧州およびカナダにおける売上は、前年同期から86億円増収(+35.6%)の327億円となりました。成長新興国においては、主にブラジルおよび中国における売上が伸長しました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、日本において新規処方が拡大し、売上は41億円増収(+20.1%)の243億円となりました。慢性便秘症治療剤「AMITIZA」は、2021年1月の米国における後発品参入により、売上は41億円減収(△65.8%)の21億円となりました。
・希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年同期から5億円微増(+0.3%)の1,555億円となりました。
希少代謝性疾患領域の売上収益は、43億円増収(+10.9%)の443億円となりました。酵素補充療法のファブリー病治療剤「リプレガル」、ゴーシェ病治療剤「ビプリブ」およびハンター症候群治療剤「エラプレース」の売上は、需要の増加と円安の影響により増収となりました。
希少血液疾患領域の売上収益は、46億円減収(△5.9%)の722億円となりました。「アドベイト」は30億円減収(△8.9%)の307億円となりました。「アディノベイト」は、円安の影響もあり、1億円増収(+0.6%)の154億円となりました。いずれも、米国の血友病Aのインヒビター非保有市場における競争の激化による影響を受けました。また、「ファイバ」の売上は、15億円減収(△11.3%)の114億円となりました。
遺伝性血管性浮腫領域の売上収益は、7億円増収(+1.8%)の390億円となりました。「TAKHZYRO」は、主に欧州におけるプレフィルドシリンジ製剤を含む上市により、22億円増収(+9.6%)の255億円となりました。「フィラジル」は、主に米国における後発品参入の影響が続き、12億円減収(△15.1%)の69億円となりました。
・血漿分画製剤(免疫疾患)
血漿分画製剤(免疫疾患)領域の売上収益は、前年同期から19億円増収(+1.8%)の1,072億円となりました。免疫グロブリン製剤の売上合計は、35億円減収(△4.1%)の816億円となりました。特に、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」の売上は、前年度の第4四半期の売上が大きくなった出荷タイミングの影響を主として減少しました。一方、皮下注製剤である「CUVITRU」は引き続き2桁台の増収率となりました。また、主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「HUMAN ALBUMIN」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は、前年度の下期に影響を与えた「HUMAN ALBUMIN」の中国における一時的な出荷中断が解消されたことにより、前年同期から48億円増収(+36.8%)の178億円となりました。
・オンコロジー
オンコロジー領域の売上収益は、前年同期から134億円増収(+12.4%)の1,214億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の売上は、前年同期から59億円増収(+24.6%)の301億円となりました。米国外の売上にかかるロイヤルティ収益は、後発品の浸透により前年同期から3億円の減収(△30.8%)となりましたが、米国内の売上は、COVID-19が流行拡大し処方者が点滴や注射よりも経口投与の薬剤を選好したことで売上が低下していた前年同期と比べ、当期は需要の回復があったことから63億円の増収(+27.3%)となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、前年同期から14億円増収(+6.3%)の244億円となりました。「ニンラーロ」は服薬の利便性が高い経口投与の製品特性から、医療機関での点滴や注射を必要としないため、COVID-19拡大下において特に前年度の最初の数ヶ月において一時的に需要が増加しました。その後、この傾向は米国では正常化しましたが、他の国々、特に中国において需要が増加しました。また、悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、2020年5月に承認された中国を中心に成長新興国において伸長し、前年同期から21億円増収(+14.2%)の172億円となりました。子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられる特許満了製品の「リュープリン」(一般名:「リュープロレリン」)は、主に日本における後発品の浸透および競合品の影響により、前年同期から12億円減収(△4.3%)の262億円となりました。
・ニューロサイエンス(神経精神疾患)
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の売上収益は、前年同期から66億円増収(+6.1%)の1,134億円となりました。注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「バイバンス」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上は、前年同期から132億円増収(+20.0%)の792億円となりました。同剤は、COVID-19パンデミックの期間を通じて、特に外出制限期間中の外来患者数および診断数の減少と、服薬の一時的な中断による減収影響を受けました。この傾向は2020年から2021年にかけて変動してきましたが、当期と前年同期を比較すると、処方の増加によるプラス影響がありました。大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、主に日本での浸透が進んだことにより、前年同期から10億円増収(+5.9%)の179億円になりました。これらの製品の増収は、主に後発品参入による競争の影響を受けたアルツハイマー病治療剤「レミニール」やADHD治療剤「ADDERALL XR」等の他のニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の製品の減収によって一部相殺されました。
地域別売上収益
(単位:億円、%は売上収益の構成比)
売上収益: | 前年同期 | 当期 | |||
日本(注1) | 1,440 | 18.0% | 2,590 | 27.3% | |
米国 | 4,026 | 50.2% | 4,122 | 43.4% | |
欧州およびカナダ | 1,576 | 19.6% | 1,787 | 18.8% | |
アジア(日本を除く) | 369 | 4.6% | 403 | 4.2% | |
中南米 | 308 | 3.8% | 301 | 3.2% | |
ロシア/CIS | 130 | 1.6% | 123 | 1.3% | |
その他(注2) | 169 | 2.1% | 170 | 1.8% | |
合計 | 8,019 | 100.0% | 9,496 | 100.0% |
(注1) 当期は、日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの譲渡価額1,330億円を含みます。
(注2) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
[売上原価]
売上原価は、前年同期から32億円増加(+1.3%)の2,413億円となり、売上原価率は25.4%(△4.3pp)となりました。この増加は主に、Shire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用が154億円減少したものの、前年同期と比較し当期において円安の影響を受けたことによります。なお、売上原価率の低下は主に、日本において糖尿病治療剤を帝人ファーマ株式会社に譲渡したことに伴い、譲渡価額1,330億円の売上収益を計上したことによるものです。
[販売費及び一般管理費]
販売費及び一般管理費は、前年同期から175億円増加(+8.6%)の2,198億円となりました。この増加は主に、当期における円安の為替影響に伴うものです。
[研究開発費]
研究開発費は、主に新規候補物質へのさらなる投資、および当期における円安の為替影響により、前年同期から157億円(+14.7%)増加の1,225億円となりました。
[製品に係る無形資産償却費及び減損損失]
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、前年同期から14億円減少(△1.4%)の1,028億円となりました。
[その他の営業収益]
その他の営業収益は、前年同期から526億円減少(△82.6%)の111億円となりました。この減少は主に、前年同期においてSHP647および関連する権利の売却に関する当社グループの義務を解除する2020年5月の欧州委員会の決定に伴い、当社グループがSHP647に関する臨床試験プログラムを中止する意思決定を行ったことを反映し、それまで計上していた当該プログラムに関連する負債の再見積りを行った結果、602億円の再評価益を計上したことによるものです。
[その他の営業費用]
その他の営業費用は、前年同期から210億円減少(△44.9%)の258億円となりました。この減少は主に、前年同期において当社グループが譲渡したXIIDRAにかかる条件付対価契約に関連する資産の公正価値の変動により、186億円の損失を計上したこと、またShire社との統合費用の減少に伴い、事業構造再編費用が対前年同期から81億円減少したことによるものです。これらの減少は、承認前在庫にかかる評価損が45億円増加したことにより一部相殺されております。
[営業利益]
営業利益は、上記の要因を反映し、前年同期から813億円増益(+48.6%)の2,486億円となりました。
[金融損益]
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は252億円の損失となり、前年同期から損失が20億円減少しました。当期の金融損失の減少は主に、これまで持分法適用会社であったMaverick Therapeutics社を2021年4月に買収したことに伴い、投資の再測定に係る利益を計上したことによるものです。この影響は、当社グループが保有するワラントの時価評価に伴うマイナスの影響により一部相殺されております。
[持分法による投資損益]
当期の持分法による投資損益は、前年同期の持分法による投資損失から94億円減少の4億円の損失となりました。この減少は主に、武田テバファーマ株式会社で認識された減損損失に対する当社グループ持分相当額を前年同期に計上したことによるものです。なお、前年同期に認識された減損損失は、武田テバファーマ株式会社においてジェネリック医薬品事業の一部および製造拠点の売却を決定したことによる関連資産の回収可能価額の再評価によるものです。
[法人所得税費用]
法人所得税費用は、前年同期から375億円増加の853億円となりました。この増加は主に、2014年にShire社がAbbVie社からの買収申し出の取下げに関連して受領した違約金に対するアイルランドでの課税を巡る税務評価から生じた税金および利息の合計と関連する税務便益5億円との純額627億円ならびに税引前四半期利益の増加によるものです。これらの増加は、グループ内の組織再編により当期に認識された税務上の便益および外国子会社合算税制による課税額の減少により一部相殺されております。
[四半期利益]
四半期利益は、上記の要因を反映し、前年同期から552億円増益の1,377億円となりました。
当期(2021年4-6月期)における実質的な成長の概要
Coreと実質的な成長の定義
当社は、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。
「実質的な成長」は、当年度と前年度(四半期もしくは年間)の業績を共通の基準で比較するものであり、マネジメントによる業績評価に使用されています。これら共通の基準で比較される業績は、年間計画レートを用いた為替レートを一定として、事業等の売却影響およびその他の非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(非中核)事象による影響を控除し算定されます。当社は、この「実質的な成長」が、事業活動のパフォーマンスを表す共通の基準を提供するため、投資家に有用であると考えています。なお、本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
当社は、「Underlying Revenue Growth」(実質的な売上収益の成長)、「Underlying Core Operating Profit Growth」(実質的なCore営業利益の成長)および「Underlying Core EPS Growth」(実質的なCore EPSの成長)を重要な財務指標としています。
実質的な売上収益は、為替レートを一定として、財務ベースの売上収益に、報告期間における非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore営業利益は、為替レートを一定として、Core営業利益(以下に定義)に、報告期間における事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore EPSは、為替レートを一定として、純利益から、事業等の売却影響、およびCore EPS(以下に定義)の算出において控除された項目を調整した後、比較年度末の自己株式控除後の発行済株式総数で除して算定します。
Core売上収益は、売上収益から、重要性のある本業に起因しない(非中核)事象による影響を控除して算出します。
Core営業利益は、純利益から、法人所得税費用、持分法にかかる投資損益、金融損益、その他の営業収益およびその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、非定常的な事象に基づく影響、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。
Core EPSは、純利益から、Core営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、重要性のある、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(非中核)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算定します。
実質的な業績
当期 | |
実質的な売上収益の成長 | +3.8% |
実質的なCore営業利益の成長 | △2.1% |
実質的なCore営業利益率 | 30.5% |
実質的なCore EPSの成長 | +3.9% |
[実質的な売上収益の成長]
実質的な売上収益の成長は、前年同期から+3.8%となりました。タケダの14のグローバル製品(注)の実質的な売上収益は、「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」の減収影響があったものの、前年同期から+6.8%成長しました。
(注)タケダの14のグローバル製品消化器系疾患:エンティビオ、GATTEX/REVESTIVE、ALOFISEL希少疾患:NATPARA/NATPAR、アディノベイト、TAKHZYRO、エラプレース、ビプリブ血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRU、HUMAN ALBUMIN/FLEXBUMINオンコロジー:ニンラーロ、アルンブリグ
疾患領域別の実質的な売上収益の成長(注) | 当期 |
消化器系疾患 | +7.9% |
希少疾患 | △3.4% |
希少代謝性疾患 | +6.6% |
希少血液疾患 | △9.4% |
遺伝性血管性浮腫 | △1.7% |
血漿分画製剤(免疫疾患) | △1.8% |
オンコロジー | +8.9% |
ニューロサイエンス(神経精神疾患) | +2.9% |
その他 | +9.0% |
合計 | +3.8% |
(注) 実質的な売上収益は、為替レートを一定として、非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整します。本調整前の疾患領域別の売上収益や主要な製品売上については「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績の概要 [売上収益]」をご参照ください。
実質的な売上収益の計算において控除した主な非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響は次の通りです。
・2020年11月に売却が完了したアジア太平洋における一部の一般用医薬品および非中核資産に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2020年12月に売却が完了した主に欧州における一部の非中核資産である医療用医薬品に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2021年1月に売却が完了した中南米における一部の一般用医薬品および非中核資産に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2021年1月に売却が完了した「TachoSil」(手術用パッチ剤)の前年同期の売上を控除して調整しております。
・2021年3月に売却が完了した主に欧州における一部の一般用医薬品および非中核資産に係る前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2021年3月に売却が完了した従来子会社であった武田コンシューマーヘルスケア株式会社の前年同期の売上収益を控除して調整しております。
・2021年4月1日に売却が完了した日本における糖尿病治療剤ポートフォリオ(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)に係る前年同期の売上を控除して調整しております。また、売却完了により計上された非定常的な譲渡価額1,330億円は当期の売上収益から控除して調整しております。
・売却が公表され、当年度上期中の売却完了を見込んでいた中国における一部の非中核資産である医療用医薬品に係る当期と前年同期の売上収益を控除して調整しております。
[当期の実質的なCore営業利益の成長]
当期の実質的なCore営業利益の成長は、研究開発投資の増加を反映し、前年同期から△2.1%となりました。
日本における糖尿病治療剤ポートフォリオの売却など、当社の本業に起因しない(非中核)事象による影響を控除した当期のCore営業利益は2,489億円となりました。
[当期の実質的なCore営業利益率]
当期の実質的なCore営業利益率は、30.5%となりました。
[当期の実質的なCore EPSの成長]
当期の実質的なCore EPSの成長は、+3.9%となりました。
(2) 財政状態の分析
[資産]
当第1四半期末における資産合計は、前年度末から2,551億円減少し、12兆6,572億円となりました。現金及び現金同等物が3,113億円減少し、また、無形資産が主に償却により527億円減少しました。これらの減少は、売上債権及びその他の債権の増加442億円および棚卸資産の増加253億円と一部相殺されております。
[負債]
当第1四半期末における負債合計は、前年度末から3,165億円減少し、7兆4,186億円となりました。社債及び借入金は、借入金の返済および社債の償還の結果、前年度末から2,295億円減少の4兆4,059億円(注)となりました。さらに、引当金が638億円減少しております。
(注) 当第1四半期末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆5,240億円および8,819億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
銘柄 (外貨建発行額) | 発行時期 | 償還期限 | 帳簿価額 |
米ドル建無担保普通社債 (1,520百万米ドル) | 2015年6月 | 2022年6月 ~2045年6月 | 1,679億円 |
米ドル建無担保普通社債 (5,500百万米ドル) | 2016年9月 | 2023年9月 ~2026年9月 | 5,788億円 |
ユーロ建無担保普通社債 (5,250百万ユーロ) | 2018年11月 | 2022年11月 ~2030年11月 | 6,858億円 |
米ドル建無担保普通社債 (3,250百万米ドル) | 2018年11月 | 2023年11月 ~2028年11月 | 3,571億円 |
ハイブリッド社債 (劣後特約付社債) | 2019年6月 | 2079年6月 | 4,976億円 |
米ドル建無担保普通社債 (7,000百万米ドル) | 2020年7月 | 2030年3月 ~2060年7月 | 7,677億円 |
ユーロ建無担保普通社債 (3,600百万ユーロ) | 2020年7月 | 2027年7月 ~2040年7月 | 4,691億円 |
合計 | 3兆5,240億円 |
借入金:
名称 (外貨建借入額) | 借入時期 | 返済期限 | 帳簿価額 |
シンジケートローン | 2016年4月 | 2023年4月 ~2026年4月 | 2,000億円 |
〃 | 2017年4月 | 2027年4月 | 1,135億円 |
〃 (1,500百万米ドル) | 2017年4月 | 2027年4月 | 1,654億円 |
株式会社国際協力銀行 (1,700百万米ドル) | 2019年1月 | 2025年12月 | 1,878億円 |
その他のバイラテラルローン | 2016年3月 ~2017年4月 | 2023年3月 ~2026年3月 | 2,100億円 |
その他 | 51億円 | ||
合計 | 8,819億円 |
当社グループは、2017年7月に発行した米ドル建無担保普通社債の残高200百万米ドルについて、2022年1月18日の償還期日に先立ち、2021年5月17日に繰上償還を実行しました。その後、当社グループは、2018年12月3日に契約締結した株式会社国際協力銀行ローンの残高3,700百万米ドルのうち2,000百万米ドルについて、2025年12月11日の返済期日に先立ち、2021年6月11日に繰上返済を実行しました。
[資本]
当第1四半期末における資本合計は、前年度末から615億円増加の5兆2,386億円となりました。この増加は、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が590億円増加したことによるものです。
[キャッシュ・フロー]
(単位:億円)
前年同期(2020年4-6月期) | 当期(2021年4-6月期) | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,459 | 1,669 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 7 | △704 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △1,928 | △4,110 |
現金及び現金同等物の増減額 | △462 | △3,146 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 6,376 | 9,662 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △16 | 33 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 5,898 | 6,549 |
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期1,459億円から210億円増加の1,669億円となりました。これは非資金項目およびその他の調整項目を調整後の四半期利益が増加したことによるものです。調整項目には、前年同期におけるパイプラインSHP647および関連する権利の売却に関する義務の解除による収益の調整が含まれます。この増加は、引当金の減少および棚卸資産の増加による影響と一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期7億円から711億円減少の△704億円となりました。これは主に、投資の売却、償還による収入が440億円減少し、事業取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)が275億円増加したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期△1,928億円から2,183億円減少の△4,110億円となりました。これは主に、社債の償還及び長期借入金の返済による支出が2,329億円増加したことによるものです。この減少は、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーにおける増加影響100億円と一部相殺されております。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
当第1四半期において、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組みに関する状況は以下のとおりです。
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が起きてから一年以上が経過しましたが、当社は、引き続きあらゆる取り組みを行っており、業界としても様々な支援を行っております。COVID-19に対するワクチンが広く普及しつつありますが、当社は、過去一年間実施してきた既存の当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、これまでのところ影響は限定的です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な問題は発生しておらず、また、発生の可能性を予測しておりません。
COVID-19の流行拡大が起きてから、当社は渡航制限や業界関連団体の集会への参加自粛、当社主催の集会の休止等、特定の事業活動を継続して自主的に制限しましたが、各国・地域のガイドラインに従い、ワクチン接種率が高く新規感染者率が低い地域では徐々に制限を緩和しております。さらに、外勤の従業員については、医療従事者との対面の訪問業務を一部再開したものの、現在も大部分はバーチャルで実施しております。対面の訪問業務は、医療従事者の合意の下でのみ、当社が定める厳格な感染予防対策に加え、公衆衛生上求められる対策および医療機関から求められる追加の対策も行った上で実施しております。
新たな臨床試験については、COVID-19の流行拡大の初期に、大部分の臨床試験の開始を一時的に休止しました。同時に、すでに進行中の臨床試験についても、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しましたが、これは一時的な措置であり、前年度のうちに大部分の臨床試験は再開しております。
金融市場の動向は注視を続けており、流動性や資金調達に係る問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、バリュー(価値観)に基づき、従業員の健康・安全確保、当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供、当社従業員が就業・居住するコミュニティでの感染の軽減およびサポートを中心に引き続き取り組んでおります。
COVID-19流行拡大に対する当社の取り組みについて、当期における主なアップデートは次の通りです。
・当社は、COVID-19収束後のいわゆるポストコロナの時代におけるバーチャルやハイブリッドな働き方が従業員に及ぼす長期的な影響を考慮に入れることができるように、また、優れた職場環境を実現できるように、新しい働き方について数ヶ月に亘り評価してまいりましたが、一部の職場から、新しい働き方であるハイブリッドモデルの導入を開始しております。本モデルは画一的なものではなく、基本方針やグローバルなガイドラインおよびツールを提供することで、当社のリーダーやマネジャーがCOVID-19収束後の各職場の実情に応じたハイブリッドモデルを決定し導入できるようにしております。
・当社は、COVID-19に対処するため様々な取り組みを世界中で行っておりますが、一例としては、二つの提携案件を通じてCOVID-19ワクチンを日本に供給することがあります。一つ目は、Novavax社のCOVID-19ワクチン候補であるNVX-CoV2373(日本での開発コード:TAK-019)の日本における開発、製造、流通に関する提携です。二つ目は、Moderna社のCOVID-19 mRNAワクチン(日本での開発コード:TAK-919)の日本への輸入および供給に関するModerna社および厚生労働省との提携です。2021年5月、当社は日本における「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験の良好な結果を受けて、厚生労働省より製造販売承認を取得し、日本における供給を開始しております。当初、当社はModerna社および厚生労働省と、5,000万回接種分の同ワクチンを日本において供給する三者間契約を締結しましたが、2021年7月には、同ワクチンを追加で早ければ2022年初頭から5,000万回接種分を輸入し、日本において供給する追加の三者間契約を締結したことを公表しました。これにより二つの契約をあわせて、合計1億回接種分を供給することになります。なお、2021年7月の契約には、Moderna社による開発が成功し、厚生労働省より製造販売の承認が得られた場合には、新型コロナウイルスの変異株に対応するワクチンや追加接種に用いるワクチンを日本国内へ供給する可能性も含まれています。
③ 2021年度第1四半期実績におけるCOVID-19影響
当期におけるCOVID-19のグローバルな流行拡大に伴う業績への影響は、軽微でありました。COVID-19が流行している期間においては、ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域において、外出制限期間中に患者さんの医療機関訪問の頻度が減少する等のマイナス影響が見られてきました。これは当社が事業活動を行っている国々においてCOVID-19が急激に流行拡大した前年同期に顕著でした。以降この動向は変動してきており、COVID-19流行前の水準にまで完全に回復しておりませんが、当社の生命を救う一定数の医薬品はこのような環境下においても耐久力を示し、また、成長を遂げることが出来ています。
(4) 研究開発活動の内容および成果
当第1四半期の研究開発費の総額は1,225億円であります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。革新的なバイオ医薬品に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。革新的なバイオ医薬品における重点疾患領域(オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患)には未だ有効な治療法が確立されていない疾患に対する高い医療ニーズ(アンメットメディカルニーズ)が存在し、当社はベストインクラスあるいはファーストインクラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、最近ではShire社の買収によってさらに強化されましたが、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図ってまいりました。
当社の2021年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「アルンブリグ」を含む肺がんを対象とするパイプラインおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社外との提携による新規のがん免疫療法標的および次世代基盤技術の追求ならびに革新的な細胞療法の探索、にフォーカスしています。
[ニンラーロ 一般名:イキサゾミブ]
・2021年5月、当社は、「ニンラーロ」について、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫に対する初回治療後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より多発性骨髄腫における維持療法の効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、主に、ランダム化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。本試験では、幹細胞移植歴のない成人の多発性骨髄腫患者を対象に無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として、本剤による維持療法がPFSを統計学的に有意に改善することが確認されました。ニンラーロの維持療法における安全性プロファイルは、単剤療法における既知の安全性プロファイルと同様であり、「TOURMALINE-MM4試験」で新たな懸念は確認されませんでした。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
・2021年6月、当社は、「アイクルシグ」について、バーチャルで開催される第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会および第26回欧州血液学会(EHA)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「OPTIC(Optimizing Ponatinib Treatment In CML)」の主要解析データを発表しました。変異の有無にかかわらず治療抵抗性例の患者群での治療を評価する「OPTIC試験」は主要評価項目を達成しました。慢性期の慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者において、「アイクルシグ」1日45mgを開始用量とし、BCR-ABL1IS1%以下達成時に15mgに減量するレジメンにより、同剤の最適なベネフィット・リスクプロファイルが示されました。本試験により、本剤の安全性プロファイルは動脈閉塞イベント(AOE)を含め臨床的に管理可能であることが示唆されました。
[アルンブリグ 一般名:ブリグチニブ]
・2021年6月、当社は、「アルンブリグ」について国内でALK融合タンパクキット「ベンタナ OptiView ALK(D5F3)」(以下、「ベンタナALK」)によりALK融合遺伝子陽性(ALK陽性)が確認された非小細胞肺癌(NSCLC)患者の一次治療に使用が可能となったことを公表しました。「ベンタナALK」は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社が製造販売する免疫組織化学染色法(IHC法)を測定原理とした体外診断用医薬品で、「アルンブリグ」に対するコンパニオン診断薬として承認されました。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法に加え、「ベンタナALK」がコンパニオン診断薬として追加承認されたことで、より幅広く、ALK陽性NSCLC患者に対して「アルンブリグ」による治療機会を提供できることとなりました。
[開発コード:TAK-788 一般名:mobocertinib]
・2021年4月、当社は、プラチナ製剤ベースの化学療法による治療歴を有し、米国食品医薬品局(FDA)で承認された検査で検出された上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんの成人患者に対する治療薬「mobocertinib」の新薬承認申請(NDA)を、FDAが優先審査に指定したことを公表しました。「mobocertinib」は、EGFRエクソン20挿入変異を選択的に標的とするよう特異的に設計された初めての経口治療薬です。今回の新薬承認申請は、主に転移性非小細胞肺がん患者を対象に、経口投与された「mobocertinib」の安全性および有効性を評価する臨床第1/2相試験の結果に基づくものです。この申請はFDAの迅速承認制度により行われました。なお、審査終了目標日(PDUFA date)は2021年10月26日です。
・2021年5月、当社は、「mobocertinib」の安全性および有効性を評価する臨床第1/2相試験から、プラチナ製剤ベースの化学療法の治療歴を有する上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異陽性を伴う転移性非小細胞肺がん患者を対象とした最新データを公表しました。試験結果から、「mobocertinib」は1年間の追跡調査後も臨床的に意義のある効果を持続することが示され、バーチャルで開催される第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表されました。本試験の結果、全生存期間(OS)の中央値は24ヶ月、フォローアップ期間の中央値は14ヶ月、多様なEGFRエクソン20挿入変異に対して奏功したことが示されました。その他の主要なデータポイントである客観的奏効率(ORR)、奏功期間(DoR)の中央値および病勢コントロール率(DCR)においては、既報データと一貫していました。また、安全性プロファイルにおいても対応可能なもので、既報データと一貫していました。
・2021年7月、当社は、中国国家薬品監督管理局(NMPA)の国家食品医薬品監督管理局医薬品審査評価センター (CDE)が、EGFRエクソン20の変異を伴うNSCLCの成人患者を対象とする、クラス‐1イノベーティブドラッグ「mobocertinib」の新薬承認申請(NDA)を受理し、優先審査に指定したことを公表しました。
希少遺伝子疾患および血液疾患
当社は、既存の治療パラダイムを変えうる、「TAKHZYRO」を含む遺伝性血管性浮腫に注力するとともに、希少血液疾患および希少代謝性疾患において新たなモダリティとプラットフォームを活用し、特定の疾患に対して機能的な治療を提供していくことを目指します。
[TAKHZYRO 一般名:ラナデルマブ]
・2021年7月、当社は、「TAKHZYRO」300mgを最長2.5年間、2週間間隔で投与した場合の長期の安全性(主要評価項目)および有効性を評価した、 臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」で得られた2つの最終解析結果を公表しました。最初の解析では、試験対象集団(n=212)で観察された発作発現回数の平均(最小値、最大値)低下率は、ベースラインと比較して87.4%(-100;852.8)であり、低下率の中央値は97.7%、「TAKHZYRO」の患者への平均投与期間(標準偏差)は29.6ヵ月(8.2)でした。安定期間(投与70日目から投与期間終了時)において、発作発現率はさらに平均92.4%、中央値98.2%まで低下しました。また、追加の解析では、特定の背景および疾患の特徴を有するHAE患者のサブグループにおいて、「TAKHZYRO」は予定されていた132週間の延長投与期間でHAE発作を抑制し、良好な忍容性を示しました。これらのデータは、2021年欧州アレルギー臨床免疫学会議(EAACI:European Academy of Allergy and Clinical Immunology)にて発表されました。
[ボンベンディ 一般名:フォン・ヴィレブランド因子(遺伝子組換え)]
・2021年6月、当社は、フォン・ヴィレブランド病の成人患者(18歳以上)における出血症状の予防または頻度の低下のための「ボンベンディ」の予防投与について、生物製剤承認事項変更申請(sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理されたことを公表しました。なお、審査終了目標日(PDUFA date)は2022年1月28日です。
[開発コード:TAK-620 一般名:maribavir]
・2021年5月、当社は、固形臓器移植(SOT)または造血幹細胞移植(HCT)の両移植後の難治性/抵抗性(無しも含む)(R/R)サイトメガロウイルス(CMV)感染の治療薬である「maribavir」について、新薬承認申請(NDA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査指定を受けたことを公表しました。この申請はグローバル臨床第3相試験である「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」に基づいています。「maribavir」は、FDAから、臨床的に重篤なCMV血症およびCMV感染症リスクの高い患者の治療薬として希少疾病用医薬品指定を受けています。またFDAは、CMV感染およびCMV感染症を有し、既存の治療に抵抗性を有するまたは難治性の移植患者への治療薬として、「maribavir」のBreakthrough Therapy指定を行っています。
・2021年6月、当社は、「maribavir」について、臨床第3相試験である「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」の固形臓器移植(SOT)患者に関する新たなサブグループ解析結果を、オンラインで開催された2021年米国移植学会議(American Transplant Congress:ATC)において発表しました。ベースラインで難治性/抵抗性(無しも含む)(R/R)サイトメガロウイルス(CMV)感染のSOT患者において、投与8週時(投与期終了時)でCMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群(治験責任医師が定めた治療法[IAT]で、「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」もしくは「シドフォビル」のいずれか1つまたはその併用)(26.1%、18/69)と比較して、「maribavir」投与群では2倍以上(55.6%、79/142)でした(調整群間差[95%信頼区間]:30.5%[17.3, 43.6])。発表された結果は、心臓移植、肺移植および腎移植を受けた患者において「maribavir」投与の一貫した有効性を示しました。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資をフォーカスし、当社の専門知識やパートナーとの提携を生かし、パイプラインを構築しています。疾患の生物学的理解、トランスレーショナルなツール、革新的なモダリティの進展により、当社は神経変性疾患のうち患者セグメントが明確に定義されている疾患(例えば、パーキンソン病)への治療可能性に特化した投資とともに、希少神経疾患(例えば、ナルコレプシー、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、その他の運動失調症)に主にフォーカスしています。
[開発コード:TAK-994]
・2021年7月、当社は、臨床第2相試験を実施中の経口投与可能なオレキシン2型受容体選択的作動薬である「TAK-994」につき、米国食品医薬品局(FDA)よりブレークスルーセラピーの指定を受けたことを公表しました。現在「TAK-994」は、睡眠-覚醒サイクルが変化する慢性神経疾患であるナルコレプシータイプ1(NT1)の患者における日中の過度の眠気(EDS)の治療薬として臨床第2相試験(「TAK-994-1501試験」)を実施中です。「TAK-994」のブレークスルーセラピー指定は、NT1の患者において開発中の当社の経口オレキシン受容体作動薬が日中の覚醒状態の客観的および主観的評価項目において大幅な改善を示す可能性を示唆した、初期段階の予備的臨床データなどに基づくものです。
消化器系疾患
消化器系疾患・肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうる治療法をお届けすることにフォーカスしています。「エンティビオ」および「ALOFISEL」といった炎症性腸疾患におけるフランチャイズのポテンシャルを最大化するとともに、「GATTEX/レベスティブ」のスペシャリティ消化器系疾患領域におけるポジショニングを拡大させ、社外との提携を通じて消化管運動関連疾患、セリアック病、厳選した肝疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めています。
[GATTEX/レベスティブ 一般名:テデュグルチド]
・2021年6月、当社は、短腸症候群の治療剤である「レベスティブ皮下注用3.8mg」(以下、「レベスティブ」)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、海外で行われた複数の試験、ならびに国内で小児および成人を対象として実施された臨床第3相試験(「SHP633-302」、「SHP633-305」、「SHP633-306」および「SHP633-307」)等の結果に基づくものです。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では製品のライフサイクル全体にわたってイノベーションを推進することにより、希少および複雑な疾患に対する血漿分画製剤による治療の価値を最大化させます。血漿分画製剤に特化した研究開発組織は、新たな治療ターゲットの特定、および、現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。PDTでは、世界中で、様々な希少疾患や、生命を脅かす、慢性および遺伝性疾患の患者さんに有効な治療を行う上で不可欠な治療薬を開発することに焦点を絞ります。
[開発コード:CoVIg-19 (旧 TAK-888) 一般名:抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤]
・2021年4月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が出資し実施した臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、評価項目を達成しなかったことを公表しました。臨床試験において安全性の重大な懸念は認められませんでした。本試験は、重篤な合併症のリスクのある成人のCOVID-19入院患者に対して、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)を、「レムデシビル」を含む標準治療に追加投与した際の、疾患進行のリスク低減を評価することを目的としていました。現在も解析は継続中であり、NIAIDおよびINSIGHT Networkは試験の全結果を近く発表する予定です。「ITAC試験」の結果を受けて、「CoVIg-19アライアンス」の取り組みは終了しました。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱、新型コロナウイルス感染(COVID-19)、ジカウイルス感染、ノロウイルス感染など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[COVID-19ワクチンモデルナ筋注 (開発コード:mRNA-1273、日本での開発コード:TAK-919)]
・2021年5月 、当社は日本における「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験の結果を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出したことを公表しました。当社はModerna社ならびに厚生労働省の三者間の合意により、「TAK-919」の5,000万回接種分を輸入し供給します。本試験の結果では、28日間の間隔で「TAK-919」0.5 mLを2回接種した被験者の100%に、結合抗体と中和抗体の上昇が本剤の2回目接種28日後に確認できたことが示されました。重大な安全性の懸念は報告されず、忍容性は概ね良好でした。当社は本試験の結果を、2021年3月に提出した新薬承認申請の一部として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しました。申請資料には、Moderna社が米国において実施中の臨床第3相試験(COVE試験)の安全性と有効性の結果も含まれています。
・2021年5月、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注(TAK-919)」について、厚生労働省より医薬品医療機器等法第14条の3に基づく特例承認を取得したことを公表しました。本承認は、米国で実施されたModerna社の臨床第3相試験(COVE試験)の結果と同様の免疫反応が得られた、日本で実施した「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の安全性および免疫原性を評価する臨床第1/2相試験の結果に基づいています。当社は、日本国内において「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の供給を開始しました。
・2021年7月、当社は、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」を、追加で早ければ2022年初頭から5,000万回接種分を輸入し、日本において供給することについてModerna社ならびに厚生労働省と合意したことを公表しました。本合意には、Moderna社による開発が成功し、厚生労働省より製造販売の承認が得られた場合には、新型コロナウイルスの変異株に対応するワクチンや追加接種に用いるワクチンを日本国内へ供給する可能性も含まれています。当社は、今回の追加5,000万回接種分と2020年10月に公表済みの5,000万回接種分とを合わせて計1億回接種分を輸入、供給します。
・2021年7月、当社は、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の日本における添付文書が改訂され、接種対象年齢が12歳以上に拡大されたことを公表しました。今回の改訂は、Moderna社が米国で実施した12歳以上17歳以下の3,732人を対象とした臨床第2/3相試験結果に基づき行われました。本試験では、主要評価項目として設定したワクチン2回目接種28日後の血清中和抗体価及び中和抗体価応答率において、本試験対象の青少年(12歳以上17歳以下)について、ワクチンの発症予防効果が確認された海外第3相試験(「mRNA-1273-P301試験」)の若年成人(18歳以上25歳以下)に対する非劣性が示されました。また、副次評価項目として設定したワクチン2回目接種後2週間以降のワクチン有効率においても高い発症予防効果を有することを示唆する結果が得られました。安全性については、18歳以上の臨床試験の結果と同様に、重大な安全性の懸念は報告されませんでした。
[開発コード:TAK-003 一般名:デング熱ワクチン]
・2021年5月、当社は、「TAK-003」が現在進行中のグローバル臨床第3相試験「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」のワクチン接種後3年間にわたる長期評価において、本ワクチンのデング熱感染およびデング熱感染による入院に対して持続的な予防効果(被験者のワクチン接種前のデング熱感染歴の有無を問わない)を示し、懸念されるような安全性リスクも認められなかったことを公表しました。「TIDES試験」には、デング熱流行国であるラテンアメリカやアジア地域において2万人以上の小児・若年層(4歳から16歳)の健常被験者が登録されています。「TIDES試験」の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、第17回国際渡航医学会(CISTM: Conference of the International Society of Travel Medicine)で発表されました。「TAK-003」の3年間(2回目接種後36ヵ月)にわたる長期評価では、デングウイルスの各血清型(計4種)に対する「TAK-003」のワクチン有効性は、各血清型で異なっていたものの、この結果は、これまで報告してきた結果と一貫性のあるものでした。また、安全性においても全般的に忍容性が良好で、懸念されるような安全性リスクも認められませんでした。病態の増悪のエビデンスは確認されませんでした。「TIDES試験」の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、欧州連合(EU)およびデング熱流行国における承認申請資料に含まれており、今後、2021年内に承認申請が予定されている米国を含むその他の国々における申請資料にも含まれる予定です。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
・2021年7月、当社とぺプチドリーム株式会社は、2020年12月に公表済みの両社の共同研究および独占的ライセンスの枠組みを拡大し、慢性神経変性疾患において重要な役割を担う複数の中枢神経系(CNS)ターゲットについてペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate」)の創製に向けた取り組みを進めることを公表しました。今回の共同研究の拡大により、神経変性疾患に関連する複数のCNSターゲットに対してTfR1結合ペプチドリガンドを用い、当社がTfR1結合ペプチドと医薬品候補化合物の複合体を作成し、医薬品候補化合物に血液脳関門(BBB)通過能を付与する研究が行うことが可能になります。神経変性疾患に効果的な医薬品の開発で大きな課題となるのが、治療薬物のBBB通過能を高め脳内に送達させる技術です。TfR1結合ペプチド(キャリアペプチド)を各種の治療用化合物に結合させることで、化合物のBBB通過能を高め脳内に取り込まれるため、医薬品としての機能が著しく向上します。このTfR1 BBBシャトルアプローチは、BBBの通過が困難なままである治療法の開発を加速する可能性があります。また、このアプローチは現在治療薬がほとんどないかまたは全く存在しない数多くの神経変性疾患を効果的に治療するために必要とされる、広い脳領域への薬物の生体内分布を可能にする可能性があります。
・2021年7月、当社とFrazier Healthcare Partnersは、当社のノロウイルスワクチンの開発および販売を行うバイオ医薬品企業HilleVax, Inc.(HilleVax社)設立に関して提携したことを公表しました。当社は、契約一時対価ならびに将来の売上に応じたキャッシュ・ロイヤルティおよびマイルストンを対価として、HilleVax社へノロウイルスワクチン候補である「HIL-214」(旧開発コード:「TAK-214」)の日本を除く世界における独占的開発および販売の権利を譲渡しました。当社は日本における販売権を保有し、HilleVax社は日本における開発活動をグローバル開発に統合します。ウイルス様粒子技術(VLP)を用いたワクチン候補である「HIL-214」は、4,712例の成人被験者を対象とした無作為割付プラセボ対照臨床第2相後期有効性フィールド試験を完了しています。本試験では、「HIL-214」の良好な忍容性およびノロウイルス感染に起因する中等度から重度の急性胃腸炎に対する予防効果のプルーフ・オブ・コンセプト(proof of concept)が確認されました。本ワクチンについては、これまでに9つの臨床試験が実施されており、4,500例以上の被験者の安全性データおよび2,000例以上の被験者から得られた免疫原性データが集積されています。