訂正有価証券報告書-第117期(2022/04/01-2023/03/31)

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2023/09/08 10:11
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
①経営成績の状況
当社グループは、当連結会計年度からスタートした3カ年の中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation ~1st Stage~」において、「スペシャリティ化学を中心としてグローバルに利益成長を追求」「地球環境問題に対応した事業構造改革」「持続的成長に向けた人的資本の充実」「DXの推進による企業価値の向上と顧客価値の創出」「ガバナンスの更なる向上」を基本方針とし、事業構造改革と成長の実現に向けた取組みを推進してまいりました。
当連結会計年度においては、ウクライナ情勢に伴う原燃料価格高騰に対して各製品の販売価格是正を進め、また機能品セグメントにおいて販売が堅調に推移しましたが、セメント関連事業を持分法適用関連会社(UBE三菱セメント㈱)に移管した影響が大きく、売上高は前連結会計年度を下回りました。営業利益は、樹脂・化成品セグメントにおける原燃料価格高騰及び需要減退による販売数量減少に加え、アンモニア工場で隔年の定期修理を実施した影響が大きく、前連結会計年度を下回りました。経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の減少に加え、セメント関連事業が石炭価格高騰の影響を受け持分法投資損益が大きく悪化したことから、前連結会計年度を下回り損失となりました。
この結果、当社グループの売上高は前連結会計年度に比べ1,605億2千7百万円減の4,947億3千8百万円、営業利益は277億4千8百万円減の162億9千万円、経常損失は86億8千9百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は70億6百万円となりました。
項 目売上高営業利益経常利益
又は経常損失(△)
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純
損失(△)
当連結会計年度494,738百万円16,290百万円△8,689百万円△7,006百万円
前連結会計年度655,265百万円44,038百万円41,549百万円24,500百万円
増 減△160,527百万円△27,748百万円△50,238百万円△31,506百万円
増 減 率△24.5%△63.0%--

②生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
機能品61,3022.2
樹脂・化成品289,17514.1
機械92,391△2.9
その他28,145256.2
合計471,013△11.4

(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっております。
2.前年同期比の算出に当たって、セメント関連事業の前連結会計年度における生産実績(114,971百万円)は各セグメントの生産実績に含めておらず、合計にのみ含めております。
b.受注実績
当連結会計年度における機械の受注実績を示すと、次のとおりです。
なお、機械を除くセグメントの製品については、受注生産は行っておりません。
セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)
機械74,3282.852,2290.3

c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)
機能品62,1582.3
樹脂・化成品293,38812.8
機械96,921△0.1
その他73,11034.8
消去△30,839-
合計494,738△24.5

(注)セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっております。
③財政状態
総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ、セメント関連事業を持分法適用関連会社に移管した影響等により、1,063億1千8百万円(△12.7%)減少し、7,316億3千6百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金、売掛金等の売上債権が減少したこと等により1,116億7千3百万円(△28.3%)減少し、2,830億1千6百万円となりました。
固定資産は、有形固定資産等が減少した一方で、投資有価証券が増加したこと等により53億3千9百万円(1.2%)増加し、4,484億7千1百万円となりました。
繰延資産は、社債発行費が増加したことにより1千6百万円増加し、1億4千9百万円となりました。
負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ、セメント関連事業を持分法適用関連会社に移管した影響等により、939億4千2百万円(△21.2%)減少し、3,499億7千7百万円となりました。有利子負債は236億6千9百万円(△9.8%)減少し、2,181億4千3百万円となりました。
流動負債は、支払手形及び買掛金、コマーシャル・ペーパーが減少したこと等により780億1千5百万円(△31.3%)減少し、1,711億5千9百万円となりました。
固定負債は、社債が増加したものの、長期借入金が減少したこと等により159億2千7百万円(△8.2%)減少し、1,788億1千8百万円となりました。
純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ、123億7千6百万円(△3.1%)減少し、3,816億5千9百万円となりました。
株主資本は、剰余金の配当により96億9千2百万円、親会社株主に帰属する当期純損失により利益剰余金が70億6百万円減少したこと等により164億3千4百万円(△4.7%)減少し、3,351億1千5百万円となりました。
その他の包括利益累計額は、為替換算調整勘定が増加したこと等により89億3千1百万円(50.8%)増加し、265億2千4百万円となりました。
非支配株主持分は、44億3千4百万円(△18.2%)減少し、199億4千9百万円となりました。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ、5.3ポイント増加し49.4%となりました。
当連結会計年度前連結会計年度増 減
総資産731,636百万円837,954百万円△106,318百万円
負債349,977百万円443,919百万円△93,942百万円
純資産381,659百万円394,035百万円△12,376百万円

④キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ、145億8千4百万円減の181億2千7百万円となりました。これは、運転資金が改善したものの、税金等調整前当期純損失となったこと等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ、173億5千4百万円減の260億1千9百万円となりました。これは、貸付金の回収による収入が増加したことと、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したこと等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ、59億2千8百万円減の24億4千3百万円となりました。これは、自己株式の取得による支出が減少したものの、有利子負債の増減による収入が減少したこと等によるものです。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、セメント関連事業を持分法適用関連会社に移管したことによる減少の影響もあり、現金及び現金同等物に係る換算差額等を含め、前連結会計年度末に比べ、480億5千8百万円(△61.0%)減の307億3百万円となりました。
当連結会計年度前連結会計年度増 減
営業活動によるキャッシュ・フロー18,127百万円32,711百万円△14,584百万円
投資活動によるキャッシュ・フロー△26,019百万円△43,373百万円17,354百万円
財務活動によるキャッシュ・フロー2,443百万円8,371百万円△5,928百万円

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析、検討内容
中期経営計画の初年度に当たる当連結会計年度の業績は、前連結会計年度に比べ、売上高は機械セグメントを除くすべてのセグメントで増加しましたが、セメント関連事業を持分法適用関連会社(UBE三菱セメント㈱)に移管したことが影響し、減少となりました。営業利益は機械セグメントを除いて減少し、特に樹脂・化成品セグメントにおいては、原燃料価格高騰及び需要減退による販売数量減少に加え、アンモニア工場で隔年の定期修理を実施したことが大きく影響しました。
<売上高>
当連結会計年度前連結会計年度増 減増減率
機能品62,158百万円60,787百万円1,371百万円2.3%
樹脂・化成品293,388百万円260,044百万円33,344百万円12.8%
機械96,921百万円96,987百万円△66百万円△0.1%
その他73,110百万円54,242百万円18,868百万円34.8%
調整額△30,839百万円183,205百万円△214,044百万円-
合計494,738百万円655,265百万円△160,527百万円△24.5%

<営業利益>
当連結会計年度前連結会計年度増 減増減率
機能品10,464百万円11,627百万円△1,163百万円△10.0%
樹脂・化成品2,426百万円23,516百万円△21,090百万円△89.7%
機械5,215百万円5,130百万円85百万円1.7%
その他2,643百万円3,548百万円△905百万円△25.5%
調整額△4,458百万円217百万円△4,675百万円-
合計16,290百万円44,038百万円△27,748百万円△63.0%

各セグメントの主要製品の状況は次のとおりです。
機能品セグメント
主要な事業内容
ポリイミド、分離膜、セラミックス、セパレータ等の製造・販売

◆ポリイミド
ポリイミドについては、原料であるBPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、フィルム及びワニスのそれぞれの強みを活かし、ニッチな市場で高いシェアを維持・拡大してまいります。
当連結会計年度においては、大型ディスプレイ向けCOFフィルムで高いシェアを維持するとともに、半導体の製造装置・検査装置で使用されるパウダーについては、販売量が増加しました。
足元の事業環境においては、ディスプレイ市場は、パネルメーカーの生産調整が長期化しておりますが、ディスプレイの需要は今後も成長が見込まれており、新規用途(5G対応FPC、車載モーター等)での需要拡大も予想されます。
今後については、現在建設中のBDPA及びフィルムの新規設備の速やかな立ち上げを目指すとともに、パウダーや新規ワニス等の非回路基板分野での販売拡大や、フレキシブルPV向けフィルムや水系ワニス等の環境貢献型製品の販売拡大を図ってまいります。
◆分離膜
分離膜については、環境・エネルギー分野を基軸とした事業拡大と商品力強化に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、受注数量が中期計画を大きく上回り、特に、バイオメタン製造向けCO2分離膜の需要が急増しました。また、ガス分離膜用ポリイミド中空糸膜製造設備及び分離膜モジュール製造設備の増設を前倒しで決定し、2025年度上期稼働に向けて着手しました。
足元の事業環境では、非化石エネルギー確保のため欧米でバイオ燃料の検討や生産が急速に進んでおり、カーボンニュートラルへ向け多様化する再生可能なエネルギー・化学品用途の需要が増加することが予想されます。
今後については、欧州・北米とともに南米・アジアへ伸長するバイオメタン製造向けの需要を確実に取り込みながら、生産能力の増強を図ります。また、再生可能なエネルギー・化学品製造用途の水素分離膜及びアルコール脱水膜の販売計画の上積みにも取り組んでまいります。
◆セラミックス
セラミックスについては、着実に伸長を見せる需要に応じた生産体制の確立に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、需要の拡大にあわせ、xEV市場向けの軸受及び基板用途を中心に販売を拡大しました。
足元の事業環境では、軸受及び基板用途は、川下顧客の増産計画が進行しており、xEV市場向けの需要拡大が加速しております。切削工具やグロープラグ、蛍光体向けは需要が安定しております。需給バランスが非常にタイトになっており、生産性向上を図ってまいります。
今後については、更なる需要の増加が見込まれるxEV市場向けに拡販、事業拡大を図るとともに、イミド熱分解法の特長を活かし、品質の更なる差別化を推進してまいります。
◆セパレータ
セパレータについては、xEV向けでの競争力強化による拡販に加え、乾式膜の特性が活かせる非車載用途への展開に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、車載用ではHEV用途を中心に新規案件を獲得しました。また、非車載用での拡販対応及び顧客要求にあわせた開発を推進しました。
足元の事業環境では、世界的な脱炭素化社会の流れで自動車の電動化及び再生可能エネルギー発電の普及による電力貯蔵システム(ESS)の必要性が拡大しております。セパレータの需要は旺盛なものの、半導体や他部材供給逼迫による自動車減産により、足元の需要は軟調です。
今後については、HEV用途を中心に、xEV向け製品特性の向上による販売拡大を図ってまいります。また、更なる競争力強化のためのコストダウン及び品質向上を推進してまいります。
樹脂・化成品セグメント
主要な事業内容
コンポジット、ナイロンポリマー、カプロラクタム(ナイロン原料)、硫安、工業薬品、ファインケミカル(C1ケミカル)、高機能コーティング、エラストマー(合成ゴム)等の製造・販売

◆コンポジット
コンポジットについては、エンプラコンポジットメーカーとしてグローバルに存在感のあるソリューションプロバイダーを目指しております。
当連結会計年度においては、タイでのコンポジット能力増強と、水素タンクライナー用途グレードや難燃グレード等の非強化特殊グレードの生産設備の新設に計画どおり着手しました。北米でも非強化付加価値製品の販売が本格化し、ナイロン6製品だけでなくナイロン12製品の立ち上げも現在進行中です。
足元においては、半導体等の部材不足による自動車減産に伴い、エンプラ需要も一時的に減少しております。世界の自動車生産台数は、2023年度は一定の回復が予測されますが、コロナ前の水準までは至らないと考えられます。
今後については、現状の生産能力は約5万トン/年、売上規模は約400億円ですが、2030年までに生産能力を8万トン/年以上まで増強し、600億円以上の売上規模を目指します。そのために、環境対応型製品の開発及び市場投入を行い、スペシャリティビジネスの事業拡大とグローバル展開に取り組んでまいります。また、自動車部材の需要拡大にあわせ、タイに続き欧州やアメリカでも能力増強を計画しており、M&Aやアライアンスによる事業拡大(水平展開、川下展開)も選択肢として検討してまいります。
◆ナイロンポリマー
ナイロンポリマーについては、環境貢献型製品投入及びアジア重合期系再編の加速を進めております。
当連結会計年度においては、タイで共重合グレード製造ラインへの改造が完了し、アジア向けに販売を開始しました。
足元においては、物価高止まりによる欧州食品包装用フィルムの需要が減速し、半導体不足等による民生用LiB外装フィルム用途の需要が減少しました。汎用グレードは、中国品との価格競争が世界市場で激化しております。
今後については、共重合グレードを日本からタイへ完全移管し、アジア重合体制最適化の更なる推進に取り組んでまいります。また、環境貢献型製品(バイオマス、マテリアルリサイクル材、薄膜化材)の市場投入や価格競争に晒されない共重合ナイロン高付加価値グレードの拡充にも取り組んでまいります。
◆カプロラクタム・硫安
ナイロン原料のカプロラクタム及び硫安については、事業損益変動の最小化に向けた再編の検討及び実行を加速するとともに、大粒硫安等の高付加価値製品の事業拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、硫安は、大粒硫安増産に向けた投資を検討するとともに、タイ品大粒硫安の日本向け拡販を実現しました。
足元においては、川下需要や原料価格の変動が大きく厳しい事業環境となりました。日本・スペイン・タイの三極で機動的に生産・出荷バランスを調整し、利益を最大化します。
今後については、カプロラクタムは、宇部地区の2024年度主要期系停止による減産計画を深化させるとともに、硫安は、2024年のスペインでの付加価値品増産に向けた投資・開発の検討を本格化してまいります。また、スペイン・タイでのユーティリティーコスト、GHG削減に向けた設備投資の検討及び着手を進めてまいります。
◆工業薬品
工業薬品についても、事業損益変動の最小化に向けた再編の検討及び実行を加速するとともに、高純度硝酸等の高付加価値製品の事業拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、宇部地区再編プロジェクトを発足し、アンモニア停止に向けた詳細ステップの検討を進めております。また、2024年初頭に向けた高純度硝酸工場の能力増強を推進しております。
足元においては、アンモニアの川下需要は低調です。原料ガス価格の軟化もあり、市場価格は下落しております。損益への影響を抑えるべく、可能な限りの生産・販売を維持します。
今後については、アンモニアは、市況に注視しつつ最大限の生産・販売量を確保するとともに、硝酸は、半導体市場の拡大にあわせて高純度硝酸工場の生産能力増強に引き続き注力してまいります。
◆ファインケミカル(C1ケミカル)
ファインケミカル(C1ケミカル)については、DMC及びEMCの北米・欧州での新規工場建設の検討を進めており、誘導品の高機能コーティングを含めたC1ケミカルチェーン製品(DMC、EMC、PCD、PUD)の積極拡大に取組んでおります。
当連結会計年度においては、LiB電解液用DMCの販売は、概ね計画どおり進捗しました。中国でのDMCライセンス案件数も順調に拡大しております。
足元の事業環境については、半導体不足の影響はあるものの、BEVの生産量は伸長しております。DMCの用途であるLiBの市場規模についても拡大が見込まれ、2030年には現状の4~5倍に拡大すると予想されます。
今後については、C1ケミカルチェーン製品の現在の連結売上高は約130億円ですが、2030年までに北米・欧州にDMC及びEMCの生産拠点を拡大することで、C1ケミカルチェーン製品として連結売上高600~800億円、連結営業利益率20~25%を目指してまいります。2023年度は、DMC及びEMCの北米・欧州での新規工場建設の具体化に向けて取り組んでまいります。
◆高機能コーティング
高機能コーティングについては、事業の積極拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、PCDは、タイでのPCD3期設備の建設に着工しました。PUDは、宇部ケミカル工場での無溶剤グレード設備が稼働を開始しております。また、中国市場での販路拡大のため、PUDの中国ラボを設置しました。
足元の事業環境については、PCDは、欧州・日本市場が成熟するものの、アジア、特に中国では成長が継続しております。PUDは、中国を中心に環境対応(溶剤フリー等)製品の需要が拡大しております。
今後については、2023年度にタイにおけるPCD3期設備の稼働を開始するとともに、2025年稼働開始を目標として、タイでのPUD設備の設置を具体化してまいります。
◆エラストマー(合成ゴム)
エラストマーについては、製・販・技一体で意思決定及び施策実行をスピードアップさせ、ステークホルダーからの信頼の厚い事業への変革に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、千葉・タイは通年で安定生産を継続しました。期初から原燃料価格が高騰し、下期には需要が減退しましたが、製・販・技一体となり厳しい事業環境に対応しました。
足元の事業環境については、原油や主原料であるブタジエン等の原燃料価格の上昇による収益悪化の懸念があるとともに、景気減速によってブタジエンゴムの需要が低迷しております。また、カーボンニュートラルやサステナビリティへの対応に向けた意識が高まってきております。
今後については、安全・安定生産を継続するとともに、マレーシア工場の再稼働後の安定生産に尽力します。また、スペシャリティ化を推進するとともに、地球環境問題への対応を推進してまいります。
機械セグメント
主要な事業内容
成形機(ダイカストマシン、押出プレス、射出成形機)、産業機械(窯業機、化学機器、粉砕機、運搬機、除塵機、破砕機)、橋梁・鉄構、製鋼品(ビレット、鋳造品)等の製造・販売

◆成形機
成形機については、自動車のxEV化や電動化、車両部品の軽量化ニーズに対応した製品開発に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、ダイカストマシンは、生産・稼働時間短縮に貢献する超ハイサイクル機を開発し、検証設備を設置しました。xEV化進展に伴い、高まる生産効率向上への要求に応えるとともに、CO2削減によりカーボンニュートラルに寄与します。射出成型機は、2プラテン電動射出成型機を2023年2月に販売開始しました。省エネ及び生産効率向上を実現し、油圧機の更新需要を取り込みます。
足元の事業環境では、自動車のxEV化・電動化・軽量化及びカーボンニュートラル・リサイクル分野に資する技術ニーズが高まっております。また、北米、中国、韓国、そしてインド顧客の設備投資が増加傾向にあります。なお、半導体不足による電気部品の長納期化は、継続しております。
今後については、中国では現地OEM体制構築を目指すとともに、インドでは現地代理店を活用した拡販に取り組んでまいります。また、ダイカストマシンは、車のxEV化に伴う生産効率向上への要求に対応した車体部品を低コストで生産可能な超大型ダイカストマシンの開発を行い、射出成型機は、カーボンニュートラルや循環型社会に対応した新製品やプロセスの開発を行ってまいります。
◆産業機械
産業機械については、バイオマスハンドリング、洋上風力発電設備、アンモニア関連設備等の環境新市場に参入してまいります。
当連結会計年度においては、洋上風力市場で2つのプロジェクトの大型構造物関連機器を受注しました。
足元の事業環境では、再生可能エネルギー市場や製品リサイクル市場に資する技術ニーズが高まっておりますが、原燃料価格高騰の影響による設備投資の先送りや中止等が生じております。
今後については、環境関連のマーケットニーズを実現する製品やサービスの提供で事業拡大に取り組むとともに、バイオマス燃料搬送設備、洋上風力発電設備、アンモニア関連市場への参入を図ってまいります。また、政府からの補助金を背景に拡大する設備投資やインフラ投資による需要も取り込んでまいります。
その他セグメント
主要な事業内容
医薬品(原体・中間体)等の製造・販売、電力供給、不動産の売買・賃貸借及び管理等

◆医薬
医薬については、既存分野の収益基盤拡大と核酸医薬品等高付加価値領域の拡充により高収益化を目指しております。
当連結会計年度においては、参天製薬㈱との共同開発によるOMLONTI®(オミデネパグ イソプロピル点眼液0.002%)の米国食品医薬品局(FDA)承認を取得しました。また、2022年12月には医薬品受託製造会社である㈱エーピーアイコーポレーションの株式を取得しました。核酸原薬開発のためパイロットプラント建設にも着工しており、完工は2025年3月を予定しております。
足元の事業環境では、低分子治療薬は緩やかに成長する一方、核酸やバイオに加え遺伝子治療や再生医療等、新しいモダリティ(治療手段)が浸透しております。国際政情不安による原燃料価格等の高騰とそれに伴うコストアップが発生しており、国内では度重なる品質不適合事象により、高い品質と安定供給に対する要求が高まっております。
今後については、早期ライセンスアウトモデルの継続とマイルストンの着実な獲得を実行してまいります。また、少量・高薬理活性原薬の製造設備である第五医薬品工場の収益最大化を図るとともに、㈱エーピーアイコーポレーションとの協業を深化し、製・販・技各領域における効率的運営体制を構築してまいります。
②経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
中期経営計画の初年度にあたる当連結会計年度においては、原燃料価格高騰等の影響を受けたことによって目標未達となりました。足元の経済環境は厳しいですが、ポリイミドや分離膜等のスペシャリティ事業の成長及びベーシック事業の収益改善を進め、2024年度計画の達成を目指してまいります。
<主要項目・経営指標>
2022年度
実績
2022年度
(原計画)
2023年度
予想
2023年度
(原計画)
2024年度
(原計画)
売上高4,947億円5,100億円5,450億円5,200億円5,200億円
営業利益163億円345億円300億円410億円400億円
経常利益△87億円310億円385億円450億円470億円
親会社株主に帰属する
当期純利益
△70億円210億円275億円320億円330億円
売上高営業利益率(ROS)3.3%6.8%5.5%7.9%8%
自己資本利益率(ROE)△1.9%5.6%7.4%8.2%8%

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
(財務の基本方針)
当社グループは、財務構造の健全性維持及び資金の効率的調達・運用を基本方針として財務活動を行っております。資金調達については、自己資金のほか、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により行っております。資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、一部の取引銀行とコミットメントライン契約を締結しております。
(キャッシュ・フロー及び流動性の状況)
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは181億円のキャッシュ・イン、投資活動によるキャッシュ・フローは260億円のキャッシュ・アウトとなり、フリー・キャッシュ・フローは79億円のキャッシュ・アウトとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払106億円、有利子負債の増減による収入143億円等により24億円のキャッシュ・インとなり、期末における現金及び現金同等物の残高は、セメント関連事業を持分法適用関連会社に移管したことによる減少433億円の影響もあり、307億円となりました。
資金の使途については、当連結会計年度は設備投資に293億円、M&Aを含む投融資に104億円、研究開発費に104億円と、合計501億円を支出しております。このうち、スペシャリティ事業、ベーシック事業、及びその他への支出は、それぞれ42%、24%、34%となりました。中期経営計画に比べてその他の割合が増加しているのは、DX推進のための設備投資を前倒ししたことによるものです。
今後の経営資源の投入計画について、中期経営計画の原計画では、設備投資1,100億円、M&Aを含む投融資200億円、研究開発費320億円、合計して1,620億円の投入計画を策定しておりましたが、足元の3カ年の見通しでは、設備投資額を300億円増額させ、合計で1,920億円の投入計画に見直しております。翌連結会計年度においては、合計585億円の投入を計画しており、その内訳は設備投資が475億円、研究開発費が110億円です。比率はスペシャリティ事業が55%、ベーシック事業が15%、その他が30%であり、ベーシック事業への投入比率を下げ、代わりにスペシャリティ事業への投入比率を上げる予定です。
(ポートフォリオ別経営資源投入計画)
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(資本政策)
当連結会計年度は、原燃料価格高騰及び自動車減産、中国市場の需要減退等により、利益項目は期初予想を大幅に下回りましたが、財務体質を示す指標については、UBE三菱セメント㈱へ資産・負債を承継させた影響等により、D/Eレシオは0.60倍、自己資本比率は49.4%と改善し、健全な水準を維持しております。
現中期経営計画では、スペシャリティ事業の成長に向けて重点的に資金を投下します。また、必要に応じて投資の前倒しも行います。スペシャリティ事業を成長させることによりキャッシュ創出力の拡大につなげてまいりますが、その一方で、負債を現在のキャッシュ創出力・株主資本に見合う水準にコントロールし、財務の健全性を維持します。3カ年での分配可能額は、研究開発費を除いた営業キャッシュ・フロー1,820億円、資産売却等150億円及び手元現預金350億円を合計した2,320億円を計画しておりましたが、研究開発費を除いた営業キャッシュ・フローが当連結会計年度及び翌連結会計年度の業績下振れに伴い、1,450億円へと減少を見込んでおります。しかし、新たに550億円の負債調達を行うことで、資産売却等150億円及び手元現預金350億円と合わせて、2,500億円の配分可能総額を予定しております。これに対し、キャッシュ・アロケーションとして、設備投資・投融資1,600億円、研究開発320億円、株主還元は290億円を想定しております。設備投資・投融資については、原計画の1,300億円から300億円積み増し、ポリイミドフィルム工場や分離膜工場の増設等、スペシャリティ事業への投資を進めております。
株主還元については、安定的な配当の継続を基本方針としており、連結総還元性向30%以上、株主資本配当率(DOE)2.5%以上としております。当連結会計年度は連結当期利益が赤字となりましたが、DOEに基づき、前期と同額の配当としました。現中期経営計画期間において積極的な成長投資を行うことにより、将来の株主還元の更なる充実を目指しております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告年度における収益・費用の数値に影響を与える将来に関する見積り及び仮定が必要であり、過去の実績やその他の様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。