訂正有価証券報告書-第105期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資や雇用環境の改善傾向が続き緩やかな回復基調にある一方で、米中貿易摩擦の激化や中国経済の急減速などの影響により先行きが不透明な状態が続きました。また、当連結会計年度末にかけては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により景況感が大きく悪化しました。
国内石油製品販売量は、ガソリンについては車両の燃費改善など構造的要因による若干の需要減に加え、昨年度に引き続き、暖冬の影響による灯油等の中間留分、電源の多様化などの影響に伴う電力向け重油の需要減少により、全体では前年度を下回りました。
ドバイ原油価格は、5月中旬までは70ドル/バレルで推移しましたが、米中対立等を受けた世界経済の先行き不透明感の強まり等を背景に5月以降は下落が続きました。12月にOPECプラスの減産目標の引き上げやサウジアラビアの自発的な追加減産の表明などから上昇傾向になりましたが、2月末以降、新型コロナウイルスの拡大による世界経済失速・原油需要減退懸念等にOPECプラスの協調減産協議の決裂が重なり下落が進みました。この結果、平均価格では前期比9.0ドル/バレル下落の60.3ドル/バレルとなりました。
石油化学製品は、需要は堅調に推移しましたが、新規装置増設を背景に供給過剰となり、石油化学原料であるナフサの平均価格は、前期比で81ドル/トン下落の540ドル/トンとなりました。
円の対米ドルレートは、4月は111円台でスタートしましたが、5月~9月の米中貿易摩擦の激化等により一時105円台まで円高が進行したものの、米中協議進展の期待が高まった10月以降は円安に推移しました。その後新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、一時102円台まで円高が進みました。その結果、平均レートは前期比2.1円/ドル下落し108.7円/ドルとなりました。
イ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格やナフサ価格は下落したものの、4月1日に実施した昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル」という。)との株式交換による経営統合などにより6兆459億円(前期比+36.6%)となりました。
売上原価は、5兆6,327億円(前期比+43.1%)となり、販売費及び一般管理費は、4,171億円(前期比+35.2%)となりました。 営業損益は、燃料油セグメントにおける在庫評価、及び資源セグメントにおける生産量減少や資源価格の下落の影響などにより△39億円(前期比△1,832億円)となりました。
営業外損益は、持分法投資損失の計上などにより101億円(前期比+1億円)の損失となりました。その結果、経常損益は△140億円(前期比△1,831億円)となりました。 特別損益は、昭和シェル株式の段階取得に係る差益や前年度に計上した固定資産の減損損失、LPG事業に係る違約金負担額の減少などにより、33億円(前期比+212億円)の損失となりました。 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、36億円(前期比△544億円)となり、非支配株主に帰属する当期純利益は、資源セグメントでの減益などにより21億円(前期比△59.7%)となりました。 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は△229億円(前期比△1,044億円)となりました。
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
なお、「第5 経理の状況 (セグメント情報)」に記載のとおり、昭和シェルと経営統合したことに伴い、当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「石油製品」「石油化学製品」及び「資源」の3つのセグメントから、「燃料油」「基礎化学品」「高機能材」「電力・再生可能エネルギー」及び「資源」の5つのセグメントに再編しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
(注)セグメント別利益又は損失(△)は、セグメント別の営業利益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向け海外事業の確立に取り組みました。
国内製造供給においては、製油所・事業所間のネットワーク連携強化によるシナジー創出、設備・オペレーションの最適化によるIMO規制への対応、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みました。
国内販売においては、地域になくてはならないお客さま一人ひとりの暮らしと移動を支えるライフパートナーとしてSSを捉え、法人向けカーリース商品「オートフラットBiz」の販売開始や、岐阜県飛騨市および高山市における超小型EVを活用したMaaS事業実証開始など、新しい事業モデルの構築に取り組みました。
海外においては、2018年に商業運転を開始したベトナムのニソン製油所の設備初期不具合の検査・補修を実施し、安定操業の実現に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の海外成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
燃料油セグメントの売上高は、原油価格は下落したものの昭和シェルとの経営総合の影響などにより、4兆8,210億円(前期比+47.4%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、原油価格急落によるタイムラグや、持分法投資損失の増加などにより△1,094億円(前期比△1,373億円)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価損益は△893億円です。
(イ)基礎化学品セグメント
徳山事業所において従来比約30%の省エネルギー効果がある高効率型ナフサ分解炉の建設に着手するなど、基礎化学品事業の更なる収益基盤の強化に努めました。また全社横断的なワーキンググループを発足し、廃棄プラスチック問題解決に向けた検討を開始しました。
基礎化学品セグメントの売上高は、ほぼ前年並みの4,592億円(前期比△2.0%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、スチレンモノマー等製品マージンの縮小などにより119億円(前期比△62.5%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
「技術立脚型&地域密着型グローバル潤滑剤メーカーとして新しい価値を創出し続ける」を基本方針に、さらなる海外展開と新領域の商品開発の推進に努めました。製造においてはインドネシアに2か所目の工場を開所、中国でも2か所目となる工場建設に着工し、販売においては新たにフィリピンに販売会社を設立、パキスタンで販売会社が営業開始しました。また商品開発では電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)の駆動ユニット向け専用フルードを新開発しました。
(機能化学品事業)
自社技術を軸に、自動車、情報・通信、生活必需品、耐久消費財向け中間体事業の拡大に努めました。エンジニアリングプラスチック事業においては、マレーシアに第2SPS(シンジオタクチックポリスチレン)製造装置を建設し、当社オンリーワン技術であるSPS樹脂の生産規模を現状の2倍に引き上げることを決定しました。粘接着基材事業では、台湾FPCC社(Formosa Petrochemical Corporation)と共同で建設した水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)の生産装置が完成し、2020年度に商業生産を開始する予定です。
(電子材料事業)
有機EL材料、タフゼット(特殊ポリカーボネート樹脂)、ポリアニリン(導電性高分子)、酸化物半導体を軸に事業を展開するとともに、新規事業開発、新規用途開発に取り組みました。2018年に中国四川省内の成都に建設を開始した有機EL材料製造工場は、2020年度の可能な限り早い時期の商業運転開始を目指しています。本拠点は日本、韓国に次ぐ当社第三の有機EL材料製造拠点となり、日中韓の3極体制を構築します。本拠点稼働開始後は、3つの工場合計の年間製造能力が22トンとなります。
(高機能アスファルト事業)
日本のインフラを支える社会的使命を果たすべく、道路工事に伴うCO2排出量の削減や道路のライフサイクルコストの低減に取り組むとともに、国内で培った技術をアジアや中東エリアのインフラ構築に役立てるべく検討を進めました。
(アグリバイオ事業)
世界の農産畜産物生産の効率化に貢献すべく、天然物由来の生物農薬・畜産資材の開発・販売に取り組みました。生物農薬の新規剤開発においては、㈱エス・ディー・エス バイオテックと連携しながら取り組みを進めています。
(全固体リチウムイオン電池向け固体電解質)
独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体リチウムイオン電池の主要素材である固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、千葉事業所内への固体電解質の小型量産設備新設を決定しました。
高機能材セグメントの売上高は、3,938億円(前期比+11.9%)となり、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、284億円(前期比△4.4%)となりました。
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
「基盤事業の維持・拡大」、「国内外での再生可能エネルギー電源開発の促進」、「ソリューション事業の実証と展開」の3点を基本方針として取り組みました。2点目については、ベトナムにおけるメガソーラー発電所を完工、米国にて3件の太陽光発電プロジェクトを開始、フィリピンにおける太陽光発電プロジェクトに参画、国内では徳山事業所におけるバイオマス発電の事業化決定など、着実に取り組みを進めました。また3点目については、地域新電力「気仙沼グリーンエナジー株式会社」へ出資し、再生可能エネルギーを用いた地産地消モデル推進による地域との共生について実証をスタートするなど、取り組みを進めました。
電力・再生可能エネルギーの売上高は、1,277億円(前期比+458.1%)となり、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、△5億円(前期比△12億円)となりました。
(オ)資源セグメント事業
(石油・天然ガス開発事業、地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、欧州ではノルウェー北部北海地域の既存の生産油田の安定生産、探鉱に成功した北部北海やバレンツ海域での油田開発に取り組みました。また環境負荷低減を推進すべく、世界初の試みとなる石油ガス生産設備に直接接続する浮体式洋上風力発電設備の開発を開始しました。一方ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは、当社がオペレーターとなって引き続き天然ガス開発に取り組みました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域など国内での新規地熱事業の開発や海外への展開の検討を進めました。
石油開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格下落の影響などにより489億円(前期比△36.9%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は178億円(前期比△52.1%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
オーストラリアおよびインドネシアに展開する既存鉱山の競争力強化に向け、堅実な経営及び将来の環境変化に向けた遠隔自動採炭などの新技術の導入検討を進めました。またブラックペレット(バイオマス燃料)の開発や石炭ボイラ制御最適化システムの販売を通じて、低炭素ソリューションの提供を進めるとともに、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討など、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
石炭事業・その他事業の売上高は、1,929億円(前期比△16.3%)となりました。セグメント(営業利益+持分法投資損益)は240億円(前期比△53.4%)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は2,418億円(前期比△21.5%)、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は418億円(前期比△52.8%)となりました。
② 財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
ア.資産の部
当期末における資産合計は、3兆8,869億円(前期末比+9,966億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、2兆6,864億円(前期末比+6,750億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、4月1日付の株式交換に伴う資本剰余金の増加(前期末比+3,308億円)や自己株式の処分、市場買付による自己株式の取得及び消却などにより、1兆2,006億円(前期末比+3,216億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の29.1%から当期末は29.6%(前期末比+0.5ポイント)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,293億円となり、前期末に比べ、386億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
原油の輸入価格の下落に伴い必要運転資金は減少したものの、前期末の休日要因解消による未払石油諸税の支払増加の影響などにより、327億円の支出となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
主に設備投資による有形固定資産の取得(1,186億円)により、1,345億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
配当金の支払い(340億円)や自己株式の取得(132億円)を実施した一方、短期借入金・コマーシャル・ペーパーによる資金調達を行ったことなどにより、1,579億円の収入となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.前年同期比(%)は、前年同期の生産実績を変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものと比較しています。
4.当連結会計年度において、燃料油セグメントの生産実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において昭和シェルと経営統合をしたこと等によるものです。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
4.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
5.前年同期比(%)は、前年同期の販売実績を変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものと比較しています。
6.当連結会計年度において、燃料油セグメント及び電力・再生可能エネルギーセグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において昭和シェルと経営統合をしたこと等によるものです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。営業費用の主なものは、人件費、物流費、作業費、研究開発費等です。
設備投資資金については、維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、成長分野・海外成長市場への進出による事業拡大のための投資、及び石油開発事業等における保有鉱区の安定生産継続と探鉱開発による埋蔵量確保に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行及び特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の活用、更に資本増強等を効果的に組み合わせて調達していきます。
当期末の短期借入金の残高は2,109億円、長期借入金(1年以内返済分を含む)の残高は6,969億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は800億円、コマーシャル・ペーパーの残高は3,160億円となりました。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は、各々の子会社が現地通貨を借入にて調達するほか、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と2021年3月までの契約期間において短期借入を実行できる特定融資枠契約を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当該契約の極度額は内貨で2,100億円であり、当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社3社と共同で、取引金融機関2行と特定融資枠契約を締結しています。当該契約の極度額は外貨で360百万米ドルであり、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。
③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現と持続的な成長を目指しています。この経営の基本戦略を達成するため、自己資本利益率(ROE)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
当該指標のうち自己資本比率については、昭和シェルとの株式交換により自己資本が増加したため改善しています。前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)の主な悪化要因は、以下のとおりです。
(ア)原油価格急落によるタイムラグや、持分法投資損失の増加などによる燃料油セグメントの減益、及び製品マージン縮小等による基礎化学品セグメントの減益
(イ)資源価格下落などによる資源セグメントの減益
(ウ)上記などによる親会社株主に帰属する当期純利益の減少
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):当期純利益/自己資本(期首期末平均)
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2016年3月期及び2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する
当期純損失を計上しているため記載していません。
① 経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資や雇用環境の改善傾向が続き緩やかな回復基調にある一方で、米中貿易摩擦の激化や中国経済の急減速などの影響により先行きが不透明な状態が続きました。また、当連結会計年度末にかけては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により景況感が大きく悪化しました。
国内石油製品販売量は、ガソリンについては車両の燃費改善など構造的要因による若干の需要減に加え、昨年度に引き続き、暖冬の影響による灯油等の中間留分、電源の多様化などの影響に伴う電力向け重油の需要減少により、全体では前年度を下回りました。
ドバイ原油価格は、5月中旬までは70ドル/バレルで推移しましたが、米中対立等を受けた世界経済の先行き不透明感の強まり等を背景に5月以降は下落が続きました。12月にOPECプラスの減産目標の引き上げやサウジアラビアの自発的な追加減産の表明などから上昇傾向になりましたが、2月末以降、新型コロナウイルスの拡大による世界経済失速・原油需要減退懸念等にOPECプラスの協調減産協議の決裂が重なり下落が進みました。この結果、平均価格では前期比9.0ドル/バレル下落の60.3ドル/バレルとなりました。
石油化学製品は、需要は堅調に推移しましたが、新規装置増設を背景に供給過剰となり、石油化学原料であるナフサの平均価格は、前期比で81ドル/トン下落の540ドル/トンとなりました。
円の対米ドルレートは、4月は111円台でスタートしましたが、5月~9月の米中貿易摩擦の激化等により一時105円台まで円高が進行したものの、米中協議進展の期待が高まった10月以降は円安に推移しました。その後新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、一時102円台まで円高が進みました。その結果、平均レートは前期比2.1円/ドル下落し108.7円/ドルとなりました。
イ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格やナフサ価格は下落したものの、4月1日に実施した昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル」という。)との株式交換による経営統合などにより6兆459億円(前期比+36.6%)となりました。
売上原価は、5兆6,327億円(前期比+43.1%)となり、販売費及び一般管理費は、4,171億円(前期比+35.2%)となりました。 営業損益は、燃料油セグメントにおける在庫評価、及び資源セグメントにおける生産量減少や資源価格の下落の影響などにより△39億円(前期比△1,832億円)となりました。
営業外損益は、持分法投資損失の計上などにより101億円(前期比+1億円)の損失となりました。その結果、経常損益は△140億円(前期比△1,831億円)となりました。 特別損益は、昭和シェル株式の段階取得に係る差益や前年度に計上した固定資産の減損損失、LPG事業に係る違約金負担額の減少などにより、33億円(前期比+212億円)の損失となりました。 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、36億円(前期比△544億円)となり、非支配株主に帰属する当期純利益は、資源セグメントでの減益などにより21億円(前期比△59.7%)となりました。 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は△229億円(前期比△1,044億円)となりました。
[参考] 昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△12.0%、営業損益は、前期比△2,453億円となりました。 |
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
なお、「第5 経理の状況 (セグメント情報)」に記載のとおり、昭和シェルと経営統合したことに伴い、当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「石油製品」「石油化学製品」及び「資源」の3つのセグメントから、「燃料油」「基礎化学品」「高機能材」「電力・再生可能エネルギー」及び「資源」の5つのセグメントに再編しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | ||
(2019年3月期) | (2020年3月期) | 増減額 | 増減率 | |
燃料油 | 32,702 | 48,210 | +15,508 | +47.4% |
基礎化学品 | 4,684 | 4,592 | △92 | △2.0% |
高機能材 | 3,520 | 3,938 | +418 | +11.9% |
電力・再生可能エネルギー | 229 | 1,277 | +1,048 | +458.1% |
資源 | 3,080 | 2,418 | △662 | △21.5% |
その他 | 37 | 23 | △14 | △38.5% |
合計 | 44,251 | 60,459 | +16,207 | +36.6% |
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | ||
(2019年3月期) | (2020年3月期) | 増減額 | 増減率 | |
燃料油 (在庫評価影響除き) | 280 (220) | △1,094 (△201) | △1,373 (△421) | - - |
基礎化学品 | 318 | 119 | △199 | △62.5% |
高機能材 | 297 | 284 | △13 | △4.4% |
電力・再生可能エネルギー | 7 | △5 | △12 | - |
資源 | 885 | 418 | △468 | △52.8% |
その他 | 26 | 4 | △22 | △84.4% |
調整額 | △152 | 11 | +163 | - |
合計 (在庫評価影響除き) | 1,662 (1,602) | △262 (631) | △1,924 (△971) | - (△60.6%) |
(注)セグメント別利益又は損失(△)は、セグメント別の営業利益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向け海外事業の確立に取り組みました。
国内製造供給においては、製油所・事業所間のネットワーク連携強化によるシナジー創出、設備・オペレーションの最適化によるIMO規制への対応、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みました。
国内販売においては、地域になくてはならないお客さま一人ひとりの暮らしと移動を支えるライフパートナーとしてSSを捉え、法人向けカーリース商品「オートフラットBiz」の販売開始や、岐阜県飛騨市および高山市における超小型EVを活用したMaaS事業実証開始など、新しい事業モデルの構築に取り組みました。
海外においては、2018年に商業運転を開始したベトナムのニソン製油所の設備初期不具合の検査・補修を実施し、安定操業の実現に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の海外成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
燃料油セグメントの売上高は、原油価格は下落したものの昭和シェルとの経営総合の影響などにより、4兆8,210億円(前期比+47.4%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、原油価格急落によるタイムラグや、持分法投資損失の増加などにより△1,094億円(前期比△1,373億円)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価損益は△893億円です。
[参考] 昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△10.4%、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、前期比△1,892億円となりました。 |
(イ)基礎化学品セグメント
徳山事業所において従来比約30%の省エネルギー効果がある高効率型ナフサ分解炉の建設に着手するなど、基礎化学品事業の更なる収益基盤の強化に努めました。また全社横断的なワーキンググループを発足し、廃棄プラスチック問題解決に向けた検討を開始しました。
基礎化学品セグメントの売上高は、ほぼ前年並みの4,592億円(前期比△2.0%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、スチレンモノマー等製品マージンの縮小などにより119億円(前期比△62.5%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
「技術立脚型&地域密着型グローバル潤滑剤メーカーとして新しい価値を創出し続ける」を基本方針に、さらなる海外展開と新領域の商品開発の推進に努めました。製造においてはインドネシアに2か所目の工場を開所、中国でも2か所目となる工場建設に着工し、販売においては新たにフィリピンに販売会社を設立、パキスタンで販売会社が営業開始しました。また商品開発では電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)の駆動ユニット向け専用フルードを新開発しました。
(機能化学品事業)
自社技術を軸に、自動車、情報・通信、生活必需品、耐久消費財向け中間体事業の拡大に努めました。エンジニアリングプラスチック事業においては、マレーシアに第2SPS(シンジオタクチックポリスチレン)製造装置を建設し、当社オンリーワン技術であるSPS樹脂の生産規模を現状の2倍に引き上げることを決定しました。粘接着基材事業では、台湾FPCC社(Formosa Petrochemical Corporation)と共同で建設した水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)の生産装置が完成し、2020年度に商業生産を開始する予定です。
(電子材料事業)
有機EL材料、タフゼット(特殊ポリカーボネート樹脂)、ポリアニリン(導電性高分子)、酸化物半導体を軸に事業を展開するとともに、新規事業開発、新規用途開発に取り組みました。2018年に中国四川省内の成都に建設を開始した有機EL材料製造工場は、2020年度の可能な限り早い時期の商業運転開始を目指しています。本拠点は日本、韓国に次ぐ当社第三の有機EL材料製造拠点となり、日中韓の3極体制を構築します。本拠点稼働開始後は、3つの工場合計の年間製造能力が22トンとなります。
(高機能アスファルト事業)
日本のインフラを支える社会的使命を果たすべく、道路工事に伴うCO2排出量の削減や道路のライフサイクルコストの低減に取り組むとともに、国内で培った技術をアジアや中東エリアのインフラ構築に役立てるべく検討を進めました。
(アグリバイオ事業)
世界の農産畜産物生産の効率化に貢献すべく、天然物由来の生物農薬・畜産資材の開発・販売に取り組みました。生物農薬の新規剤開発においては、㈱エス・ディー・エス バイオテックと連携しながら取り組みを進めています。
(全固体リチウムイオン電池向け固体電解質)
独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体リチウムイオン電池の主要素材である固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、千葉事業所内への固体電解質の小型量産設備新設を決定しました。
高機能材セグメントの売上高は、3,938億円(前期比+11.9%)となり、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、284億円(前期比△4.4%)となりました。
[参考] 昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△9.7%、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、前期比△14.5%となりました。 |
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
「基盤事業の維持・拡大」、「国内外での再生可能エネルギー電源開発の促進」、「ソリューション事業の実証と展開」の3点を基本方針として取り組みました。2点目については、ベトナムにおけるメガソーラー発電所を完工、米国にて3件の太陽光発電プロジェクトを開始、フィリピンにおける太陽光発電プロジェクトに参画、国内では徳山事業所におけるバイオマス発電の事業化決定など、着実に取り組みを進めました。また3点目については、地域新電力「気仙沼グリーンエナジー株式会社」へ出資し、再生可能エネルギーを用いた地産地消モデル推進による地域との共生について実証をスタートするなど、取り組みを進めました。
電力・再生可能エネルギーの売上高は、1,277億円(前期比+458.1%)となり、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、△5億円(前期比△12億円)となりました。
[参考] 昭和シェルの前年同期を100%連結ベースにした概算値との比較においては、売上高は、前期比△6.9%、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は、前期比+70億円となりました。 |
(オ)資源セグメント事業
(石油・天然ガス開発事業、地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、欧州ではノルウェー北部北海地域の既存の生産油田の安定生産、探鉱に成功した北部北海やバレンツ海域での油田開発に取り組みました。また環境負荷低減を推進すべく、世界初の試みとなる石油ガス生産設備に直接接続する浮体式洋上風力発電設備の開発を開始しました。一方ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは、当社がオペレーターとなって引き続き天然ガス開発に取り組みました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域など国内での新規地熱事業の開発や海外への展開の検討を進めました。
石油開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格下落の影響などにより489億円(前期比△36.9%)となりました。セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は178億円(前期比△52.1%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
オーストラリアおよびインドネシアに展開する既存鉱山の競争力強化に向け、堅実な経営及び将来の環境変化に向けた遠隔自動採炭などの新技術の導入検討を進めました。またブラックペレット(バイオマス燃料)の開発や石炭ボイラ制御最適化システムの販売を通じて、低炭素ソリューションの提供を進めるとともに、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討など、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
石炭事業・その他事業の売上高は、1,929億円(前期比△16.3%)となりました。セグメント(営業利益+持分法投資損益)は240億円(前期比△53.4%)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は2,418億円(前期比△21.5%)、セグメント利益(営業利益+持分法投資損益)は418億円(前期比△52.8%)となりました。
② 財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
前連結会計年度 (2019年3月期) | 当連結会計年度 (2020年3月期) | 増減 | |
流動資産 | 12,254 | 15,503 | +3,249 |
固定資産 | 16,649 | 23,366 | +6,718 |
資産合計 | 28,903 | 38,869 | +9,966 |
流動負債 | 11,958 | 16,484 | +4,526 |
固定負債 | 8,156 | 10,380 | +2,224 |
負債合計 | 20,114 | 26,864 | +6,750 |
純資産合計 | 8,789 | 12,006 | +3,216 |
負債純資産合計 | 28,903 | 38,869 | +9,966 |
ア.資産の部
当期末における資産合計は、3兆8,869億円(前期末比+9,966億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、2兆6,864億円(前期末比+6,750億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、4月1日付の株式交換に伴う資本剰余金の増加(前期末比+3,308億円)や自己株式の処分、市場買付による自己株式の取得及び消却などにより、1兆2,006億円(前期末比+3,216億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の29.1%から当期末は29.6%(前期末比+0.5ポイント)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
前連結会計年度 (2019年3月期) | 当連結会計年度 (2020年3月期) | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,510 | △327 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,223 | △1,345 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △202 | 1,579 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △47 | △9 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 39 | △101 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 868 | 907 |
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の 増減額(△は減少) | △1 | 488 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 907 | 1,293 |
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,293億円となり、前期末に比べ、386億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
原油の輸入価格の下落に伴い必要運転資金は減少したものの、前期末の休日要因解消による未払石油諸税の支払増加の影響などにより、327億円の支出となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
主に設備投資による有形固定資産の取得(1,186億円)により、1,345億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
配当金の支払い(340億円)や自己株式の取得(132億円)を実施した一方、短期借入金・コマーシャル・ペーパーによる資金調達を行ったことなどにより、1,579億円の収入となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
燃料油 | 2,441,756 | 146.9 |
基礎化学品 | 510,971 | 112.3 |
高機能材 | 256,218 | 111.5 |
電力・再生可能エネルギー | 16,239 | - |
資源 | 168,858 | 75.4 |
その他 | - | - |
合計 | 3,394,045 | 132.0 |
(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.前年同期比(%)は、前年同期の生産実績を変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものと比較しています。
4.当連結会計年度において、燃料油セグメントの生産実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において昭和シェルと経営統合をしたこと等によるものです。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
燃料油 | 4,820,992 | 147.4 |
基礎化学品 | 459,227 | 98.0 |
高機能材 | 393,837 | 111.9 |
電力・再生可能エネルギー | 127,713 | 558.1 |
資源 | 241,775 | 78.5 |
その他 | 2,304 | 61.5 |
合計 | 6,045,850 | 136.6 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
4.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
5.前年同期比(%)は、前年同期の販売実績を変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものと比較しています。
6.当連結会計年度において、燃料油セグメント及び電力・再生可能エネルギーセグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において昭和シェルと経営統合をしたこと等によるものです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。営業費用の主なものは、人件費、物流費、作業費、研究開発費等です。
設備投資資金については、維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、成長分野・海外成長市場への進出による事業拡大のための投資、及び石油開発事業等における保有鉱区の安定生産継続と探鉱開発による埋蔵量確保に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行及び特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の活用、更に資本増強等を効果的に組み合わせて調達していきます。
当期末の短期借入金の残高は2,109億円、長期借入金(1年以内返済分を含む)の残高は6,969億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は800億円、コマーシャル・ペーパーの残高は3,160億円となりました。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は、各々の子会社が現地通貨を借入にて調達するほか、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と2021年3月までの契約期間において短期借入を実行できる特定融資枠契約を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当該契約の極度額は内貨で2,100億円であり、当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社3社と共同で、取引金融機関2行と特定融資枠契約を締結しています。当該契約の極度額は外貨で360百万米ドルであり、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。
③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現と持続的な成長を目指しています。この経営の基本戦略を達成するため、自己資本利益率(ROE)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
当該指標のうち自己資本比率については、昭和シェルとの株式交換により自己資本が増加したため改善しています。前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)の主な悪化要因は、以下のとおりです。
(ア)原油価格急落によるタイムラグや、持分法投資損失の増加などによる燃料油セグメントの減益、及び製品マージン縮小等による基礎化学品セグメントの減益
(イ)資源価格下落などによる資源セグメントの減益
(ウ)上記などによる親会社株主に帰属する当期純利益の減少
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
2016年 3月期 | 2017年 3月期 | 2018年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | |
自己資本利益率(ROE)(%) | - | 16.3 | 22.3 | 9.5 | - |
ネットD/Eレシオ(倍) | 1.6 | 1.6 | 0.9 | 1.0 | 1.0 |
自己資本比率(%) | 20.8 | 22.1 | 29.7 | 29.1 | 29.6 |
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):当期純利益/自己資本(期首期末平均)
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2016年3月期及び2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する
当期純損失を計上しているため記載していません。