訂正有価証券報告書-第107期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発出および行動制限措置により一進一退の状況が続きましたが、ワクチン接種の普及などもあり年間を通しては緩やかに回復しました。
国内石油製品販売量は、ガソリン等主燃料は新型コロナによる外出自粛等の影響により前年度並みの実績となりましたが、ジェット燃料は国内航空便の再開・増便等に伴い、前年度を上回りました。
原油価格は、上期は新型コロナワクチン普及に伴い米欧を中心とした経済正常化等から需要は回復し、供給面においてもOPECプラスが協調減産を継続したこと等から需給バランスはタイトな状況が継続し上昇基調で推移しました。下期に入り新型コロナ・オミクロン株感染拡大による経済減速懸念等から一時下落する場面もありましたが、経済に与える影響は限定的との観測等から上昇に転じ年を越しました。2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻により地政学的リスクが顕在化したことを受け、原油をはじめとした資源価格が急騰して年度末を迎えました。この結果、ドバイ原油価格は年度初めの63ドル/バレル台から右肩上がりで上昇を続け、年度末にかけては一時期120ドル/バレルを越える状況もあり、年間平均価格では前期比33.6ドル/バレル上昇の78.1ドル/バレルとなりました。
円の対米ドルレートは、上半期は概ね109円~111円のレンジで推移しましたが、10月以降は米国の物価上昇による利上げ観測の高まりや原油高などを背景にした日本の貿易収支悪化観測から円が売られ、11月下旬には4年ぶりに115円台をつけ、その後もドル高基調が続きました。3月以降は米国が政策金利の引き上げを決める中、ロシアによるウクライナ侵攻により更に資源高が進んだことを背景としてドル高が急加速し、年度末にかけて一時125円台まで進みました。その結果、平均レートは前期比6.3円/ドル円安の112.4円/ドルとなりました。
イ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格の上昇などにより、6兆6,868億円(前期比+46.7%)となりました。
売上原価は、5兆8,026億円(前期比+45.2%)となり、販売費及び一般管理費は、4,497億円(前期比+7.3%)となりました。
営業損益は、在庫評価影響が前年度の75億円の利益から大幅に増加し、2,332億円の利益となったことに加えて、燃料油セグメントにおける増益などにより、4,345億円(前期比+2,944億円)となりました。
営業外損益は、持分法投資損益の改善などにより、248億円(前期比+565億円)の利益となりました。その結果、経常損益は4,593億円(前期比+3,509億円)となりました。
特別損益は、子会社に対する長期貸付金等評価損失の計上などにより、712億円(前期比△274億円)の損失となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、1,113億円(前期比+819億円)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は27億円(前期比△30億円)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は2,795億円(前期比+2,446億円)となりました。
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2021年1月~12月期、国内子会社は2021年4月~2022年3月期について記載しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
(注)セグメント利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向け海外事業の確立に取り組みました。
国内製造供給においては、製油所・事業所間のネットワーク連携強化によるシナジー創出、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みました。コロナ禍による激しい需要変動の中、製油所の稼働調整や製品の輸出入等の柔軟な需給対応を実施し、燃料油の安定供給に努めました。
国内販売においては、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、新アプリ「Drive On」・カーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus/SEIBIS」を基盤としたスマート施策と、SSをあらゆる移動体のメンテナンス拠点とすべく、「らくらく安心車検」や個人向けカーリース「オートフラット」を始めとしたモビリティ施策を展開します。また、2030年ビジョンで掲げた「地域のつながりを支える責任」を果たすべく、SSの「スマートよろずや」化構想に向けて、移動式脳ドックやゴーストキッチンなどの実証を開始しました。更には、次世代モビリティサービスを手掛ける「㈱出光タジマEV」の設立や、介護事業を包括的に連携・サポートする仕組みづくりに取り組むQLCプロデュース㈱の株式を取得するなど新たな取り組みを加速しています。
海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
以上の結果、燃料油セグメントの売上高は、原油価格の上昇などにより5兆2,194億円(前期比+45.3%)となりました。セグメント損益は、年間を通した原油価格上昇に伴う在庫評価益の影響やタイムラグによる製品マージン改善および持分法投資損益の増加要因が、自家燃などのコスト増加の減益要因を上回り3,697億円(前期比+262.1%)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価益は2,332億円です。
(イ)基礎化学品セグメント
既存事業の競争力強化として、徳山事業所のエチレン製造装置内にある旧型ナフサ分解炉2基の停止、高効率ナフサ分解炉1基の新設を行い、2021年2月に稼働を開始しました。エチレン製造の効率化により、従来比30%の省エネルギー効果を実現し、年間約16,000トンのCO2排出量削減に寄与する予定です。
更にカーボンニュートラルへの対応として、全社横断的なワーキンググループを発足し、ケミカルリサイクルをはじめとするサーキュラーエコノミーに向けた検討を開始しています。
以上の結果、基礎化学品セグメントの売上高は、ナフサ価格が上昇したことなどにより5,635億円(前期比+71.3%)となりました。セグメント損益は、スチレンモノマーの製品マージンの回復等により82億円(前期比+140.2%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
グローバルでの販売拡大に向けて、今後更なる需要増加が見込まれるEVの電動ユニットに適合する潤滑油やモーター駆動に伴う高耐熱性化・低騒音化のニーズに対応するグリースの開発推進に努めました。また、海外における出光ブランド製品の拡販に向けて商品開発・販売戦略の取り組みを強化しました。
(機能化学品事業)
自社技術を軸に、自動車、情報・通信向けエンジニアリングプラスチック、生活必需品向け粘接着基材、耐久消費材向け中間体等、高機能材の拡大に努めました。事業規模拡大については、粘接着基材において、2020年に水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)生産を台湾FPCC(Formosa Petrochemical Corporation)社と協業にて実施し、市場に供給開始しています。更にエンジニアリングプラスチックにおいて、当社独自技術であるSPS(シンジオタクチックポリスチレン)樹脂の生産規模拡大を決定、マレーシアにて第二装置を建設開始し、2022年度末に完工予定です。
(電子材料事業)
有機EL材料、酸化物半導体を軸に事業を展開するとともに、新規事業開発、新規用途開発に取り組みました。2020年に商業運転を開始した、中国四川省内成都の有機EL材料製造工場は順調に稼働し、日本、韓国、中国の三拠点による製造供給体制を確立しました。
(機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))
国内のアスファルト需要は堅調に推移し、インフラ整備への安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく商品開発や、他部門との共同でカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発に取り組みました。海外事業においては、東南アジアにおける現地発注者との高速道路における試験的施工の結果を踏まえ、発注仕様に採用されることとなりました。
(アグリバイオ事業)
2011年6月に株式公開買付により㈱エス・ディー・エス バイオテックを連結子会社化し、農業関連資材を中心とした共同取組みを推進してきましたが、更なる連携強化とシナジー発揮のため、同社を当社の完全子会社とし、更に当社アグリバイオ事業部を同社に吸収分割により承継し、アグリバイオ事業を一体運営することとしました。
以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、4,214億円(前期比+26.7%)となり、セグメント損益は、潤滑油事業における販売数量の減少に伴う減益を機能化学品事業のマージン拡大および電子材料事業の販売数量増加による増益などが上回ったことにより171億円(前期比+31.8%)となりました。
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
「基盤事業の維持・拡大」、「国内外での再生可能エネルギー電源開発の促進」、「ソリューション事業の実証と展開」の3点を基本方針として取り組んでいます。国内においては、さいたま市とゼロカーボンシティ実現に向けた共創推進の連携協定を締結するなど、自治体との取り組みを進めています。海外においては、米国、フィリピンにおいて、開発を進めていた大型太陽光発電所が無事完工を迎えました。また、成長市場である東南アジアにおいては大型の太陽光発電所に加え、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置にも取り組んでいます。
以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,383億円(前期比+11.8%)となりました。セグメント損益は、前年度の電力市況高騰による調達コスト上昇の反動などにより△99億円(前期比+74億円)となりました。
(オ)資源セグメント
(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、欧州ではノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱に成功した北部北海での油田開発に取り組み、ドゥーヴァ油ガス田の生産を開始しました。また、従来当社の連結子会社であった出光スノーレ石油開発(株)(現:(株)INPEXノルウェー)は、当社が一部株式を(株)INPEXに譲渡したことによって持分法適用会社となり、連結バランスシートの圧縮、スリム化に繋がりました。一方、当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、2020年11月から生産を開始したベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは安定生産を継続しました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域など国内での新規案件の開発や海外案件の検討を進めました。
石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格上昇などにより754億円(前期比+128.9%)となり、セグメント損益は387億円(前期比+473.4%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
オーストラリアでは、既存鉱山の競争力強化に向け、遠隔自動採炭などの新技術導入に向けたトライアル生産を実施しました。また、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討、ニューキャッスル港でのグリーン水素・アンモニアプロジェクトにおける共同検討・調査の開始等、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
低炭素ソリューション事業においては、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット™」)の商業プラントをベトナムに建設することを決定しました。また、石炭ボイラ制御最適化システムに加え、バイオマス燃料混焼率最適化システムも販売を開始しました。
石炭事業・その他事業の売上高は、2,634億円(前期比+89.4%)となりました。セグメント損益は、石炭価格の上昇などにより423億円(前期比+443億円)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は3,388億円(前期比+97.0%)、セグメント損益は810億円(前期比+763億円)となりました。
(カ)研究開発及び新ビジネス開発
(全固体リチウムイオン電池向け固体電解質)
独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体リチウムイオン電池のキーマテリアルである固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、2021年11月に、商業生産に向けた実証設備を千葉事業所内に建設し、稼働を開始しました。
② 財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
ア.資産の部
当期末における資産合計は、原油価格の上昇による棚卸資産および売掛金の増加等により、4兆6,012億円(前期末比+6,467億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、原油価格の上昇により買掛債務が増加したこと等により、3兆1,647億円(前期末比+4,254億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、配当金の支払い357億円や非支配株主持分398億円の減少があった一方、親会社株主に帰属する当期純利益2,795億円の計上などにより、1兆4,365億円(前期末比+2,214億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の29.1%から当期末は30.7%(前期末比+1.6ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.9(前期末:1.0)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,390億円となり、前期末に比べ、81億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
原油の輸入価格の上昇に伴い必要運転資金は増加したものの、減価償却費や税金等調整前当期純利益などの資金増加要因により、1,461億円の収入となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
主に製油所設備の維持更新投資や米国におけるメガソーラー発電事業への投資などによる有形固定資産の取得(947億円)により、1,116億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
配当金の支払い(357億円)や有利子負債の返済などにより、300億円の支出となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。
設備投資資金については、エネルギー安定供給のための維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、先進マテリアルや次世代モビリティ&コミュニティ等の成長分野への進出・事業拡大のための投資、及び石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債・コマーシャル・ペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様な選択肢から効果的に組み合わせて調達しています。
当連結会計年度末の短期借入金の残高は2,848億円、長期借入金(1年以内返済分を含む)の残高は6,750億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は1,400億円、コマーシャル・ペーパーの残高は2,370億円となりました。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社4社と共同で、取引金融機関2行とマルチカレンシーによる特定融資枠契約360百万米ドルを締結しており、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現を達成するため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)および投下資本利益率(ROIC)の主な改善要因は、以下のとおりです。
(ア)原油価格急騰を受け、前年度に比較し在庫評価影響の大幅な改善
(イ)石炭をはじめとする資源価格高騰により、資源セグメントにおける収益改善
(ウ)燃料油セグメントにおける製品マージンの改善
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)
投下資本利益率(ROIC):税後営業利益/(純資産+有利子負債)
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。
4.2020年3月期以前の投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。
当社が2021年5月に公表した「中期経営計画の見直し(2020~2022年度)」における経営目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (1)中期経営計画の見直し(2020~2022年度)」に記載しています。
① 経営成績の状況
ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発出および行動制限措置により一進一退の状況が続きましたが、ワクチン接種の普及などもあり年間を通しては緩やかに回復しました。
国内石油製品販売量は、ガソリン等主燃料は新型コロナによる外出自粛等の影響により前年度並みの実績となりましたが、ジェット燃料は国内航空便の再開・増便等に伴い、前年度を上回りました。
原油価格は、上期は新型コロナワクチン普及に伴い米欧を中心とした経済正常化等から需要は回復し、供給面においてもOPECプラスが協調減産を継続したこと等から需給バランスはタイトな状況が継続し上昇基調で推移しました。下期に入り新型コロナ・オミクロン株感染拡大による経済減速懸念等から一時下落する場面もありましたが、経済に与える影響は限定的との観測等から上昇に転じ年を越しました。2022年2月以降ロシアによるウクライナ侵攻により地政学的リスクが顕在化したことを受け、原油をはじめとした資源価格が急騰して年度末を迎えました。この結果、ドバイ原油価格は年度初めの63ドル/バレル台から右肩上がりで上昇を続け、年度末にかけては一時期120ドル/バレルを越える状況もあり、年間平均価格では前期比33.6ドル/バレル上昇の78.1ドル/バレルとなりました。
円の対米ドルレートは、上半期は概ね109円~111円のレンジで推移しましたが、10月以降は米国の物価上昇による利上げ観測の高まりや原油高などを背景にした日本の貿易収支悪化観測から円が売られ、11月下旬には4年ぶりに115円台をつけ、その後もドル高基調が続きました。3月以降は米国が政策金利の引き上げを決める中、ロシアによるウクライナ侵攻により更に資源高が進んだことを背景としてドル高が急加速し、年度末にかけて一時125円台まで進みました。その結果、平均レートは前期比6.3円/ドル円安の112.4円/ドルとなりました。
イ.業績
当社グループの当期の売上高は、原油価格の上昇などにより、6兆6,868億円(前期比+46.7%)となりました。
売上原価は、5兆8,026億円(前期比+45.2%)となり、販売費及び一般管理費は、4,497億円(前期比+7.3%)となりました。
営業損益は、在庫評価影響が前年度の75億円の利益から大幅に増加し、2,332億円の利益となったことに加えて、燃料油セグメントにおける増益などにより、4,345億円(前期比+2,944億円)となりました。
営業外損益は、持分法投資損益の改善などにより、248億円(前期比+565億円)の利益となりました。その結果、経常損益は4,593億円(前期比+3,509億円)となりました。
特別損益は、子会社に対する長期貸付金等評価損失の計上などにより、712億円(前期比△274億円)の損失となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、1,113億円(前期比+819億円)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は27億円(前期比△30億円)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は2,795億円(前期比+2,446億円)となりました。
ウ.事業の経過及び成果
セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。
当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2021年1月~12月期、国内子会社は2021年4月~2022年3月期について記載しています。
セグメント別売上高
(単位:億円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | ||
(2021年3月期) | (2022年3月期) | 増減額 | 増減率 | |
燃料油 | 35,934 | 52,194 | +16,260 | +45.3% |
基礎化学品 | 3,290 | 5,635 | +2,345 | +71.3% |
高機能材 | 3,326 | 4,214 | +888 | +26.7% |
電力・再生可能エネルギー | 1,237 | 1,383 | +145 | +11.8% |
資源 | 1,720 | 3,388 | +1,668 | +97.0% |
その他・調整額 | 59 | 53 | △5 | △9.2% |
合計 | 45,566 | 66,868 | +21,301 | +46.7% |
セグメント別利益又は損失(△)
(単位:億円)
前連結会計年度 | 当連結会計年度 | 増減 | ||
(2021年3月期) | (2022年3月期) | 増減額 | 増減率 | |
燃料油 (在庫評価影響除き) | 1,021 (947) | 3,697 (1,365) | +2,676 (+418) | +262.1% (+44.2%) |
基礎化学品 | 34 | 82 | +48 | +140.2% |
高機能材 | 130 | 171 | +41 | +31.8% |
電力・再生可能エネルギー | △173 | △99 | +74 | ― |
資源 | 47 | 810 | +763 | ― |
その他 | 9 | 8 | △1 | △13.4% |
調整額 | △66 | △174 | △108 | ― |
合計 (在庫評価影響除き) | 1,003 (928) | 4,495 (2,162) | +3,492 (+1,234) | +348.3% (+133.0%) |
(注)セグメント利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。
(ア)燃料油セグメント
日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向け海外事業の確立に取り組みました。
国内製造供給においては、製油所・事業所間のネットワーク連携強化によるシナジー創出、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みました。コロナ禍による激しい需要変動の中、製油所の稼働調整や製品の輸出入等の柔軟な需給対応を実施し、燃料油の安定供給に努めました。
国内販売においては、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、新アプリ「Drive On」・カーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus/SEIBIS」を基盤としたスマート施策と、SSをあらゆる移動体のメンテナンス拠点とすべく、「らくらく安心車検」や個人向けカーリース「オートフラット」を始めとしたモビリティ施策を展開します。また、2030年ビジョンで掲げた「地域のつながりを支える責任」を果たすべく、SSの「スマートよろずや」化構想に向けて、移動式脳ドックやゴーストキッチンなどの実証を開始しました。更には、次世代モビリティサービスを手掛ける「㈱出光タジマEV」の設立や、介護事業を包括的に連携・サポートする仕組みづくりに取り組むQLCプロデュース㈱の株式を取得するなど新たな取り組みを加速しています。
海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。
以上の結果、燃料油セグメントの売上高は、原油価格の上昇などにより5兆2,194億円(前期比+45.3%)となりました。セグメント損益は、年間を通した原油価格上昇に伴う在庫評価益の影響やタイムラグによる製品マージン改善および持分法投資損益の増加要因が、自家燃などのコスト増加の減益要因を上回り3,697億円(前期比+262.1%)となりました。なお、営業利益に含まれる在庫評価益は2,332億円です。
(イ)基礎化学品セグメント
既存事業の競争力強化として、徳山事業所のエチレン製造装置内にある旧型ナフサ分解炉2基の停止、高効率ナフサ分解炉1基の新設を行い、2021年2月に稼働を開始しました。エチレン製造の効率化により、従来比30%の省エネルギー効果を実現し、年間約16,000トンのCO2排出量削減に寄与する予定です。
更にカーボンニュートラルへの対応として、全社横断的なワーキンググループを発足し、ケミカルリサイクルをはじめとするサーキュラーエコノミーに向けた検討を開始しています。
以上の結果、基礎化学品セグメントの売上高は、ナフサ価格が上昇したことなどにより5,635億円(前期比+71.3%)となりました。セグメント損益は、スチレンモノマーの製品マージンの回復等により82億円(前期比+140.2%)となりました。
(ウ)高機能材セグメント
(潤滑油事業)
グローバルでの販売拡大に向けて、今後更なる需要増加が見込まれるEVの電動ユニットに適合する潤滑油やモーター駆動に伴う高耐熱性化・低騒音化のニーズに対応するグリースの開発推進に努めました。また、海外における出光ブランド製品の拡販に向けて商品開発・販売戦略の取り組みを強化しました。
(機能化学品事業)
自社技術を軸に、自動車、情報・通信向けエンジニアリングプラスチック、生活必需品向け粘接着基材、耐久消費材向け中間体等、高機能材の拡大に努めました。事業規模拡大については、粘接着基材において、2020年に水添石油樹脂(商品名:アイマーブ®)生産を台湾FPCC(Formosa Petrochemical Corporation)社と協業にて実施し、市場に供給開始しています。更にエンジニアリングプラスチックにおいて、当社独自技術であるSPS(シンジオタクチックポリスチレン)樹脂の生産規模拡大を決定、マレーシアにて第二装置を建設開始し、2022年度末に完工予定です。
(電子材料事業)
有機EL材料、酸化物半導体を軸に事業を展開するとともに、新規事業開発、新規用途開発に取り組みました。2020年に商業運転を開始した、中国四川省内成都の有機EL材料製造工場は順調に稼働し、日本、韓国、中国の三拠点による製造供給体制を確立しました。
(機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))
国内のアスファルト需要は堅調に推移し、インフラ整備への安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく商品開発や、他部門との共同でカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発に取り組みました。海外事業においては、東南アジアにおける現地発注者との高速道路における試験的施工の結果を踏まえ、発注仕様に採用されることとなりました。
(アグリバイオ事業)
2011年6月に株式公開買付により㈱エス・ディー・エス バイオテックを連結子会社化し、農業関連資材を中心とした共同取組みを推進してきましたが、更なる連携強化とシナジー発揮のため、同社を当社の完全子会社とし、更に当社アグリバイオ事業部を同社に吸収分割により承継し、アグリバイオ事業を一体運営することとしました。
以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、4,214億円(前期比+26.7%)となり、セグメント損益は、潤滑油事業における販売数量の減少に伴う減益を機能化学品事業のマージン拡大および電子材料事業の販売数量増加による増益などが上回ったことにより171億円(前期比+31.8%)となりました。
(エ)電力・再生可能エネルギーセグメント
「基盤事業の維持・拡大」、「国内外での再生可能エネルギー電源開発の促進」、「ソリューション事業の実証と展開」の3点を基本方針として取り組んでいます。国内においては、さいたま市とゼロカーボンシティ実現に向けた共創推進の連携協定を締結するなど、自治体との取り組みを進めています。海外においては、米国、フィリピンにおいて、開発を進めていた大型太陽光発電所が無事完工を迎えました。また、成長市場である東南アジアにおいては大型の太陽光発電所に加え、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置にも取り組んでいます。
以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,383億円(前期比+11.8%)となりました。セグメント損益は、前年度の電力市況高騰による調達コスト上昇の反動などにより△99億円(前期比+74億円)となりました。
(オ)資源セグメント
(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)
石油・天然ガス開発事業について、欧州ではノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱に成功した北部北海での油田開発に取り組み、ドゥーヴァ油ガス田の生産を開始しました。また、従来当社の連結子会社であった出光スノーレ石油開発(株)(現:(株)INPEXノルウェー)は、当社が一部株式を(株)INPEXに譲渡したことによって持分法適用会社となり、連結バランスシートの圧縮、スリム化に繋がりました。一方、当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、2020年11月から生産を開始したベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは安定生産を継続しました。
地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域など国内での新規案件の開発や海外案件の検討を進めました。
石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は、原油価格上昇などにより754億円(前期比+128.9%)となり、セグメント損益は387億円(前期比+473.4%)となりました。
(石炭事業・その他事業)
オーストラリアでは、既存鉱山の競争力強化に向け、遠隔自動採炭などの新技術導入に向けたトライアル生産を実施しました。また、鉱山資産を活用した太陽光発電や揚水型水力発電の事業化検討、ニューキャッスル港でのグリーン水素・アンモニアプロジェクトにおける共同検討・調査の開始等、環境負荷軽減・地域貢献に向けた取り組みも進めました。
低炭素ソリューション事業においては、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット™」)の商業プラントをベトナムに建設することを決定しました。また、石炭ボイラ制御最適化システムに加え、バイオマス燃料混焼率最適化システムも販売を開始しました。
石炭事業・その他事業の売上高は、2,634億円(前期比+89.4%)となりました。セグメント損益は、石炭価格の上昇などにより423億円(前期比+443億円)となりました。
以上の結果、資源セグメントの売上高は3,388億円(前期比+97.0%)、セグメント損益は810億円(前期比+763億円)となりました。
(カ)研究開発及び新ビジネス開発
(全固体リチウムイオン電池向け固体電解質)
独自の製造技術を有する硫化リチウムを原料に、次世代電池である全固体リチウムイオン電池のキーマテリアルである固体電解質の研究・開発を行い、事業化に向けた取り組みを進めました。早期の事業化を実現すべく、2021年11月に、商業生産に向けた実証設備を千葉事業所内に建設し、稼働を開始しました。
② 財政状態の状況
要約連結貸借対照表
(単位:億円)
前連結会計年度 (2021年3月期) | 当連結会計年度 (2022年3月期) | 増減 | |
流動資産 | 16,655 | 23,681 | +7,026 |
固定資産 | 22,889 | 22,331 | △558 |
資産合計 | 39,544 | 46,012 | +6,467 |
流動負債 | 16,213 | 20,613 | +4,400 |
固定負債 | 11,180 | 11,034 | △146 |
負債合計 | 27,393 | 31,647 | +4,254 |
純資産合計 | 12,151 | 14,365 | +2,214 |
負債純資産合計 | 39,544 | 46,012 | +6,467 |
ア.資産の部
当期末における資産合計は、原油価格の上昇による棚卸資産および売掛金の増加等により、4兆6,012億円(前期末比+6,467億円)となりました。
イ.負債の部
当期末における負債合計は、原油価格の上昇により買掛債務が増加したこと等により、3兆1,647億円(前期末比+4,254億円)となりました。
ウ.純資産の部
当期末の純資産合計は、配当金の支払い357億円や非支配株主持分398億円の減少があった一方、親会社株主に帰属する当期純利益2,795億円の計上などにより、1兆4,365億円(前期末比+2,214億円)となりました。
以上の結果、自己資本比率は前期末の29.1%から当期末は30.7%(前期末比+1.6ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.9(前期末:1.0)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
要約連結キャッシュ・フロー計算書
(単位:億円)
前連結会計年度 (2021年3月期) | 当連結会計年度 (2022年3月期) | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,705 | 1,461 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,099 | △1,116 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △562 | △300 |
現金及び現金同等物に係る換算差額 | △32 | 31 |
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) | 12 | 76 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 1,293 | 1,310 |
連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の 増減額(△は減少) | 5 | 5 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 1,310 | 1,390 |
当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,390億円となり、前期末に比べ、81億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。
ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー
原油の輸入価格の上昇に伴い必要運転資金は増加したものの、減価償却費や税金等調整前当期純利益などの資金増加要因により、1,461億円の収入となりました。
イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー
主に製油所設備の維持更新投資や米国におけるメガソーラー発電事業への投資などによる有形固定資産の取得(947億円)により、1,116億円の支出となりました。
ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー
配当金の支払い(357億円)や有利子負債の返済などにより、300億円の支出となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
燃料油 | 2,567,751 | 159.2 |
基礎化学品 | 540,050 | 138.7 |
高機能材 | 232,786 | 109.4 |
電力・再生可能エネルギー | 8,218 | 85.8 |
資源 | 267,822 | 221.7 |
その他 | - | - |
合計 | 3,616,629 | 154.2 |
(注)1.上記の金額は、製造会社は製品生産額、資源セグメントは販売金額によって記載をしています。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
燃料油 | 5,219,413 | 145.3 |
基礎化学品 | 563,526 | 171.3 |
高機能材 | 421,437 | 126.7 |
電力・再生可能エネルギー | 138,289 | 111.8 |
資源 | 338,776 | 197.0 |
その他 | 5,319 | 90.8 |
合計 | 6,686,761 | 146.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。
3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「イ.業績」及び「ウ.事業の経過及び成果」に記載しています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
ア.資金需要
当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。
設備投資資金については、エネルギー安定供給のための維持更新投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、先進マテリアルや次世代モビリティ&コミュニティ等の成長分野への進出・事業拡大のための投資、及び石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。
イ.財務政策
当社グループは、中長期的な成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を、財務体質とのバランスを勘案しつつ、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入、社債・コマーシャル・ペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様な選択肢から効果的に組み合わせて調達しています。
当連結会計年度末の短期借入金の残高は2,848億円、長期借入金(1年以内返済分を含む)の残高は6,750億円、社債(1年以内償還分を含む)の残高は1,400億円、コマーシャル・ペーパーの残高は2,370億円となりました。
なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。
また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。
(特定融資枠契約)
当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。また当社は、在外連結子会社4社と共同で、取引金融機関2行とマルチカレンシーによる特定融資枠契約360百万米ドルを締結しており、当連結会計年度末において同契約に係る借入残高はありません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、レジリエントな事業ポートフォリオの実現を達成するため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標と考えています。
前期対比で変動した自己資本利益率(ROE)および投下資本利益率(ROIC)の主な改善要因は、以下のとおりです。
(ア)原油価格急騰を受け、前年度に比較し在庫評価影響の大幅な改善
(イ)石炭をはじめとする資源価格高騰により、資源セグメントにおける収益改善
(ウ)燃料油セグメントにおける製品マージンの改善
当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。
2018年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2022年 3月期 | |
自己資本利益率(ROE)(%) | 22.3 | 9.5 | - | 3.0 | 21.8 |
投下資本利益率(ROIC)(%) | - | - | - | 2.7 | 6.4 |
ネットD/Eレシオ(倍) | 0.9 | 1.0 | 1.0 | 1.0 | 0.9 |
自己資本比率(%) | 29.7 | 29.1 | 29.6 | 29.1 | 30.7 |
(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。
自己資本利益率(ROE):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)
投下資本利益率(ROIC):税後営業利益/(純資産+有利子負債)
ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)
自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。
3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。
4.2020年3月期以前の投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。
当社が2021年5月に公表した「中期経営計画の見直し(2020~2022年度)」における経営目標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (1)中期経営計画の見直し(2020~2022年度)」に記載しています。