有価証券報告書-第60期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/27 16:24
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

「将来予想に関する事項」については、有価証券報告書提出日時点において判断しています。
(1) 経営成績に重要な影響を与えた要因
当社の連結子会社であるAVX Corporationは、米国環境保護局、米国の州政府当局などから、浄化が必要な区域に関する浄化費用を負担するように、包括的環境対策補償責任法もしくはそれと同等の州法などに基づく「潜在的責任当事者」として指定されています。包括的環境対策補償責任法や類する州法は連帯責任を認めるため、米国環境保護局や規制当局は関与している複数の潜在的責任当事者のいずれに対しても、その区域の浄化費用の全額を要求することができます。区域によっては、AVX Corporation以外の潜在的責任当事者も区域の調査及び浄化活動に関与しています。AVX Corporationは、これらの区域に関連して発生する責任はすべて、AVX Corporationと他の潜在的責任当事者によって分担されると考えています。
AVX Corporationは、潜在的責任当事者として指定された各区域における責任を果たすために、調査や浄化の時期や方法を決定している連邦及び州の行政当局の様々な行政指導や同意判決を受けいれてきました。慣例により、決定された浄化方法を潜在的責任当事者が自ら実施していない区域に関する指導及び判決については、区域の状態について重要な新しい情報が発見された場合など、ある特定の事象が発生した場合に、米国環境保護局は同意に関する交渉を再開し、関連する潜在的責任当事者に対して追加の費用を求めることができる条項が盛り込まれています。
平成3年、AVX Corporationは同意判決(平成4年に最終確定した同意判決)に関連して、米国マサチューセッツ州ニューベッドフォード湾の環境問題のために8,878百万円(66百万米ドル)とこれに対する利息を支払った上で、該当区域の特定の汚染浄化費用が13,442百万円(130.5百万米ドル)を上回る場合には交渉を再開するという条項を含む交渉再開条項を条件として、米国政府、米国環境保護局及び米国マサチューセッツ州政府(以下、米国政府当局)と和解しました。
平成24年4月18日、米国環境保護局は、交渉再開条項に基づき、AVX Corporationに対し行政命令を発令し、ニューベッドフォード湾の浄化を目的とした特定の浄化活動の実施を命じました。
平成24年10月10日、米国政府当局及びAVX Corporationは、ニューベッドフォード湾において米国環境保護局が継続中の浄化作業に関する費用負担について和解に至ったことを発表しました。この和解契約は、平成4年に確定した同意判決を修正する補足的同意判決となり、将来の浄化作業の再開条項に関する米国政府当局の全ての権利を失わしめる内容を含みます。AVX Corporationは、この和解契約の条件に基づき、37,324百万円(366.25百万米ドル)とこれに対する平成24年8月1日時点から計算される利息を、米国環境保護局及び米国マサチューセッツ州政府が浄化作業の完了に利用するため、2年にわたり3回に分けて支払う義務を負いました。また、この和解契約により、米国環境保護局は行政命令を取り下げることが要求されました。平成25年9月19日、米国連邦地方裁判所は、この和解契約を承認し、補足的同意判決を許諾しました。
平成25年10月18日、AVX Corporationは、和解契約に基づく初回支払額の13,335百万円(133.35百万米ドル)に加えて、395百万円(3.95百万米ドル)の利息を支払いました。また、平成26年3月26日に11,414百万円(110.82百万米ドル)とその時点の未払残高に対する利息の85百万円(0.82百万米ドル)を前払いしました。なお、AVX Corporationは補足的同意判決に従い、平成27年9月21日に12,575百万円(122.08百万米ドル)と利息を支払う義務を負っていますが、未払残高を支払期日に先んじて前払いすることも選択できます。
AVX Corporation及び当社は、本件に関して、平成24年3月期に7,900百万円(100百万米ドル)、平成25年3月期に21,300百万円(266.25百万米ドル)の費用を連結損益計算書上の「販売費及び一般管理費」に計上しました。また、平成26年3月31日現在、AVX Corporation及び当社は、補足的同意判決における3回目の支払額を負債として計上しています。
(2) 営業成績
① 売上高
当連結会計年度の売上高は1,447,369百万円となり、前連結会計年度の1,280,054百万円と比較し、167,315百万円(13.1%)増加しました。主要市場における需要増を確実に捉えるとともに、グループの総合力による受注獲得に努めたことにより、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度と比較して増収となりました。なお、欧米通貨に対する円安の影響を主因として、当連結会計年度の邦貨換算後の売上高は、前連結会計年度に比べ約140,000百万円押し上げられました。
部品事業における当連結会計年度の売上高は825,028百万円となり、前連結会計年度の725,102百万円と比較し、99,926百万円(13.8%)増加しました。機器事業における当連結会計年度の売上高は494,597百万円となり、前連結会計年度の427,848百万円と比較し、66,749百万円(15.6%)増加しました。
売上高の詳細については、後述の「⑪ レポーティングセグメント別営業概況」を参照下さい。
② 売上原価及び売上総利益
当連結会計年度の売上原価は1,068,465百万円となり、前連結会計年度の952,350百万円と比較し、116,115百万円(12.2%)増加しました。これは主に、平成25年10月に京セラサーキットソリューションズ㈱を連結子会社化したこと及び円安の影響によるものです。
売上原価の主な内訳は、原材料費が前連結会計年度の384,509百万円から41,963百万円(10.9%)増加の426,472百万円で全体の39.9%を占め、人件費が前連結会計年度の179,040百万円から17,204百万円(9.6%)増加の196,244百万円で全体の18.4%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の54,214百万円から1,841百万円(3.4%)増加の56,055百万円となり、全体の5.2%を占めています。
この結果、当連結会計年度の売上総利益は378,904百万円となり、前連結会計年度の327,704百万円と比較し51,200百万円(15.6%)増加し、売上高に対する売上総利益率は、25.6%から26.2%へ0.6ポイント上昇しました。
③ 販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は258,322百万円となり、前連結会計年度の250,778百万円と比較し、7,544百万円(3.0%)増加しました。前連結会計年度にはAVX Corporationにおける環境汚染浄化費用として21,300百万円が含まれていた一方で、当連結会計年度は主に販売増加及び円安の影響により諸費用が増加しました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は17.9%となり、前連結会計年度の19.6%から1.7ポイント低下しました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費の主な内訳は、人件費が前連結会計年度の126,691百万円から15,244百万円(12.0%)増加の141,935百万円で全体の54.9%を占め、続いて販売費及び広告宣伝費が、前連結会計年度の38,246百万円から7,648百万円(20.0%)増加の45,894百万円で全体の17.8%を占めています。また減価償却費は前連結会計年度の13,886百万円から253百万円(1.8%)減少の13,633百万円で全体の5.3%を占めています。
この結果、当連結会計年度の営業利益は120,582百万円となり、前連結会計年度の76,926百万円と比較し、43,656百万円(56.8%)増加しました。売上高に対する比率は前連結会計年度の6.0%から2.3ポイント上昇し、8.3%となりました。
④ 受取利息・配当金
当連結会計年度の受取利息・配当金は18,172百万円となり、前連結会計年度の14,666百万円と比較し、3,506百万円(23.9%)増加しました。これは主に、KDDI㈱からの受取配当金が増加したことによるものです。
⑤ 支払利息
当連結会計年度の支払利息は1,945百万円となり、前連結会計年度の1,890百万円と比較し、55百万円
(2.9%)増加しました。これは主に、AVX Corporationの環境汚染浄化費用に係る利息計上によるものです。
⑥ 為替換算差損益
当連結会計年度の平均為替レートは、前連結会計年度と比較し、米ドルは17円(20.5%)の円安、ユーロは27円(25.2%)の円安となりました。また、当連結会計年度末の為替レートは、前連結会計年度末と比較し米ドルは9円(9.6%)の円安、ユーロは21円(17.4%)の円安となりました。なお、当連結会計年度の為替換算差損益は5,108百万円の利益となりました。
当社では、外貨建の債権債務に係る為替変動リスクを最小にするために、主に先物為替予約を利用しています。当社は、先物為替予約については、外国為替の変動をヘッジする目的に限定して利用しており、トレーディング目的のための先物為替予約は行っていません。
⑦ 投資損益
当連結会計年度の有価証券売却損益は2,875百万円の利益となり、前連結会計年度の4,542百万円の利益と比較し、1,667百万円(36.7%)利益が減少しました。
当連結会計年度の有価証券評価損は109百万円となり、前連結会計年度の729百万円の損失と比較し、620百万円(85.0%)損失が減少しました。
⑧ 税引前当期純利益
当連結会計年度の税引前当期純利益は146,268百万円となり、前連結会計年度の101,363百万円と比較し、44,905百万円(44.3%)増加しました。売上高に対する税引前当期純利益の比率は前連結会計年度の7.9%から2.2ポイント上昇し、10.1%となりました。
営業利益は、増収効果や生産性の向上を図ったことに加え、前連結会計年度にはAVX Corporationが環境汚染浄化費用21,300百万円を計上したこともあり、大幅に増加しました。営業利益の増加に加え、受取配当金の増加等により、税引前当期純利益は前連結会計年度と比較して増加しました。なお、欧米通貨に対する円安の影響により、当連結会計年度の邦貨換算後の税引前当期純利益は、前連結会計年度に比べ約29,000百万円押し上げられました。
部品事業における当連結会計年度の事業利益は98,386百万円となり、前連結会計年度の51,903百万円と比較し、46,483百万円(89.6%)増加しました。機器事業における当連結会計年度の事業利益は29,630百万円となり、前連結会計年度の23,090百万円と比較し、6,540百万円(28.3%)増加しました。
税引前当期純利益の詳細については、後述の「⑪ レポーティングセグメント別営業概況」を参照下さい。
⑨ 法人税等
当連結会計年度の税額及び繰延税額は合計で51,254百万円となり、前連結会計年度の34,012百万円と比較し、17,242百万円(50.7%)増加しました。当連結会計年度の実効税率は35.0%となり、前連結会計年度の33.6%と比較して1.4ポイント上昇しました。これは主に当連結会計年度において、日本の税制改正の影響により、翌連結会計年度において解消が見込まれる一時差異について法定実効税率が引き下げられ、繰延税金資産の取崩額が繰延税金負債の取崩額を上回った結果、繰延税額が増加したことによるものです。また、当連結会計年度の実効税率35.0%は、日本の実効税率の38.0%を3.0ポイント下回っていますが、これは主に海外子会社の税率差の影響によるものです。
⑩ 非支配持分帰属損益
当連結会計年度の非支配持分帰属利益は6,258百万円となり、前連結会計年度の878百万円と比較し、5,380百万円(612.8%)増加しました。これは主に、当社以外の株主比率が約30%を占めるAVX Corporationが、前連結会計年度において、環境汚染浄化費用の計上に伴い当期純損失を計上したことによるものです。
⑪ レポーティングセグメント別営業概況
ファインセラミック部品関連事業
当連結会計年度のファインセラミック部品関連事業の売上高は80,020百万円となり、前連結会計年度の74,852百万円と比較し5,168百万円(6.9%)増加しました。デジタルコンシューマ機器向けの一部の部品需要は伸び悩んだものの、自動車関連市場や半導体製造装置用部品をはじめとした産業機械市場向けに部品の需要が堅調に伸びました。また、売上高は円安により連結会計年度に比べ約6,500百万円押し上げられました。
事業利益は11,836百万円となり、前連結会計年度の7,614百万円と比較し4,222百万円(55.5%)増加しました。部品価格の下落の影響はあったものの、主要製品の売上増及び原価低減の効果に加え、円安の効果により約2,500百万円、減価償却費及び研究開発費の減少により約1,500百万円の利益の押し上げ要因があったことを主因に、大幅な増益となりました。
半導体部品関連事業
当連結会計年度の半導体部品関連事業の売上高は187,891百万円となり、前連結会計年度の167,241百万円と比較し20,650百万円(12.3%)増加しました。デジタルカメラ向けの需要は減少したものの、スマートフォン向け等にセラミックパッケージの需要が増加しました。また、情報・通信インフラ向けの有機パッケージの需要の増加に加え、平成25年10月に連結子会社化した京セラサーキットソリューションズ㈱の売上高が6ヵ月分寄与しました。なお、売上高は円安により前連結会計年度に比べ約20,000百万円押し上げられました。
事業利益は31,889百万円となり、前連結会計年度の30,379百万円と比較し1,510百万円(5.0%)増加しました。京セラサーキットソリューションズ㈱の子会社化による費用増やベトナム工場の稼働開始に伴う減価償却費の増加等により事業利益は約10,000百万円押し下げられたものの、増収及び円安の効果により約11,000百万円の利益押し上げ要因があったことを主因に、事業利益は増加しました。
ファインセラミック応用品関連事業
当連結会計年度のファインセラミック応用品関連事業の売上高は、ソーラーエネルギー事業及び機械工具事業の増収により272,795百万円となり、前連結会計年度の211,439百万円と比較し61,356百万円(29.0%)増加しました。主に国内の公共・産業用にソーラーエネルギー事業の売上高が、また自動車市場向けに機械工具事業の売上高が増加したことにより、大幅な増収となりました。なお、売上高は円安により前連結会計年度に比べ約12,000百万円押し上げられました。
事業利益は33,501百万円となり、前連結会計年度の17,924百万円と比較し15,577百万円(86.9%)増加しました。円安により海外調達の原材料等の費用が約7,500百万円増加した一方、増収効果により約13,000百万円、原価低減等により約7,000百万円、減価償却費及び研究開発費の減少により約3,000百万円、それぞれ事業利益を押し上げたことにより、大幅な増益となりました。
電子デバイス関連事業
当連結会計年度の電子デバイス関連事業の売上高は284,322百万円となり、前連結会計年度の271,570百万円と比較し12,752百万円(4.7%)増加しました。民生機器用タッチパネル事業の縮小を中心とする構造改革の実施及びデジタルカメラ向けの部品需要の減少により売上高は約25,000百万円減少しました。しかし、円安及びコンデンサやコネクタの売上高が自動車及びスマートフォン向けに増加したことにより、売上高が前連結会計年度に比べ約40,000百万円押し上げられ、増収となりました。
事業利益は21,160百万円となり、前連結会計年度の4,014百万円の損失と比較し25,174百万円増加しました。前連結会計年度には米国連結子会社AVX Corporationにおいて環境汚染浄化費用21,300百万円を計上した一方、当連結会計年度には民生機器用タッチパネル事業の縮小に加え、水晶部品事業やコンデンサ事業での構造改革費用約5,000百万円を計上しました。また、増収及び円安の効果により、利益が約8,000百万円押し上げられた結果、増益となりました。
通信機器関連事業
当連結会計年度の通信機器関連事業の売上高は186,749百万円となり、前連結会計年度の177,314百万円と比較し9,435百万円(5.3%)増加しました。携帯電話端末の新製品を国内外で積極的に投入したことに加え、海外市場での大手客先開拓により、国内外を合わせた販売台数は前連結会計年度に比べ約15%増加しました。なお、売上高は円安により前連結会計年度に比べ約13,000百万円押し上げられました。
事業利益は1,437百万円となり、前連結会計年度の1,340百万円と比較し97百万円(7.2%)増加しました。円安により海外調達の原材料費等が約2,000百万円増加したものの、増収効果や減価償却費及び償却費が約2,500百万円減少した結果、事業利益は増加しました。
情報機器関連事業
当連結会計年度の情報機器関連事業の売上高は307,848百万円となり、前連結会計年度の250,534百万円と比較し57,314百万円(22.9%)増加しました。積極的な新製品の投入及び拡販活動を進めたことにより、新興国や欧州において複合機の販売台数が伸び、増収となりました。なお、売上高は円安により前連結会計年度に比べ約47,000百万円押し上げられました。
事業利益は28,193百万円となり、前連結会計年度の21,750百万円と比較し6,443百万円(29.6%)増加しました。価格下落や拡販のための販促費の増加に加え、生産能力増強のための設備投資に伴う減価償却費の増加や、新製品開発に対する研究開発費の増加等により、事業利益は約14,500百万円押し下げられたものの、円安効果により約16,000百万円、増収効果により約5,000百万円の利益押し上げ要因があり、増益となりました。
その他の事業
当連結会計年度のその他の事業の売上高は173,137百万円となり、前連結会計年度の159,902百万円と比較し13,235百万円(8.3%)増加しました。京セラコミュニケーションシステム㈱の売上高が主にソーラー発電所の建設工事の需要増を中心に約5,500百万円増加したことに加え、京セラケミカル㈱をはじめとしたその他の子会社の売上高も増加したことにより、増収となりました。なお、売上高は円安により前連結会計年度に比べ約1,500百万円押し上げられました。
事業利益は6,276百万円となり、前連結会計年度の10,542百万円と比較し4,266百万円(40.5%)減少しました。事業利益は増収効果により約2,000百万円、円安の効果により約500百万円、それぞれ押し上げられたものの、新技術・新製品開発のための研究開発費等の増加により約5,500百万円、減価償却費及び償却費の増加により約1,000百万円押し下げられたことを主因に、減益となりました。
本社部門損益及び持分法投資損益
本社部門損益は、金融資産に係る損益や、各レポーティングセグメントに対して本社部門から提供される経営管理サービスに伴う収入等から構成されます。
当連結会計年度は11,889百万円の収益となり、前連結会計年度の17,248百万円の収益と比較し、5,359百万円(31.1%)の減少となりました。これは主に、KDDI㈱からの受取配当金が2,577百万円増加した一方で、経営管理サービス収入等が8,105百万円減少したことによるものです。
(3) 流動性及び資金の源泉
① 資金の源泉
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは149,141百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金等価物を335,174百万円保有しています。また、換金性の高い金融資産も保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。
当社は、主な短期的な資金需要として、事業の拡大のための運転資金及び設備投資資金、年金制度への拠出、配当支払等を見込んでいます。当社の短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によって獲得した現金です。一部の連結子会社は金融機関からの借入により資金調達を行っていますが、当連結会計年度末の短期債務、一年以内返済予定長期債務、並びに長期債務の残高は35,890百万円であり、総資産に対し1.4%と引き続き低い依存度となっています。当社の借入は、主にユーロ建、円建、並びに米ドル建で行っていますが、その他の外国通貨での借入も行っています。設備の発注契約残高を含め、当社の債務の詳細については、後述の「④ 契約債務」を参照下さい。
当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の56,688百万円と比較し、77百万円(0.1%)減少し、56,611百万円となりました。当連結会計年度は主に、半導体部品関連事業において国内外の新たな生産拠点の設立及び生産能力増強のための設備投資を行った一方、電子デバイス関連事業への設備投資を抑制したことにより、設備投資額は前連結会計年度に比べ、ほぼ横ばいとなりました。研究開発費については、前連結会計年度の47,519百万円と比較し、1,311百万円(2.8%)増加し、48,830百万円となりました。これらの設備投資額及び研究開発費のほぼすべては、自己資金によって賄われました。
当社は翌連結会計年度において、約64,000百万円の設備投資と約54,000百万円の研究開発費を予定しています。設備投資額は、半導体部品関連事業及び情報機器関連事業における増産設備の導入を主因として、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。研究開発費についても、さらなる事業拡大に向けて、新技術・新製品開発を強化していく考えであり、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。なお、売上高に対する割合は当連結会計年度とほぼ同等の割合を維持する考えであり、これらの設備投資額及び研究開発費のほぼすべてを、自己資金によって賄う予定です。当社は新製品の創造、技術の進歩、将来の利益の獲得のために、新規事業分野の開拓と既存技術の高度化に対する継続的な投資が必要であると考えています。
当社は、退職給付制度に対し、当連結会計年度において15,733百万円の拠出を行い、翌連結会計年度において12,045百万円の拠出を行う予定です。当社の退職給付制度の積立状況は、加入者及び受給者に対する給付金等の支払いを行う上で必要な原資を確保しており、大幅な追加拠出が必要となる状況にはありません。当社は制度資産への拠出を自己資金によって賄う予定です。
当社の米国の連結子会社 AVX Corporationは、「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績に重要な影響を与えた要因」に記載のとおり、米国マサチューセッツ州ニューベッドフォード湾の環境汚染浄化に係る米国政府等との和解契約に基づき、当連結会計年度において、環境汚染浄化費用として24,749百万円と利息を同社の自己資金より米国政府等へ支払いました。なお、同社は和解契約に基づき、平成27年9月21日までに12,575百万円と利息を支払う義務を負っています。
当社は当連結会計年度において、1株当たり年間140円、総額25,681百万円の配当金の支払いを行いました。また、平成26年6月26日に開催された当社の定時株主総会において、平成26年3月31日現在の株主に対し、平成26年6月27日に1株当たり40円、総額14,675百万円の期末配当を実施することが承認されました。
当社は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記2」に記載のとおり、当連結会計年度において株式取得及び事業承継を実施しました。これらの取引に係る対価は、取得現金控除後で15,975百万円となり、自己資金によって賄われました。
当連結会計年度末の運転資本は、営業活動によって獲得した現金が増加したことにより、前連結会計年度末の941,753百万円から98,231百万円(10.4%)増加し、1,039,984百万円となりました。当社は、自己資金によって必要となる運転資本を確保し、また将来の事業拡大のための設備投資を実施するとともに、債務の返済を行いました。
当社が恒久的に再投資する方針である海外の連結子会社の未分配利益は282,556百万円です。海外の連結子会社の保有する現金及び現金等価物と換金性の高い有価証券の合計額は、当連結会計年度末において232,649百万円になりますが、日本での利用を目的として当社への配当を行うことは現時点で想定していません。当社は、日本での事業を展開するために十分な資金の流動性を確保していると考えており、海外の連結子会社が保有する現金及び現金等価物と換金性の高い有価証券について、少なくとも翌連結会計年度において日本へ還流させる必要はないと考えています。
以上の結果、翌連結会計年度に関しても、自己資金の範囲で上記の資金需要に対応できると考えています。従って、現時点では格付機関による信用格付に影響を与えるような外部からの資金調達を行う予定はありません。しかし、万一、営業活動によって十分な現金が得られなかった場合、当社は短期借入金、長期借入金といった外部からの資金調達や社債、株式の発行といった他の資金調達源泉を有しています。当連結会計年度末における当社の株主資本比率は72.5%と引き続き良好な財務体質を保っており、必要な資金を比較的低いコストで外部から調達することができると考えています。なお、当社は、いくつかの主要金融機関と良好な関係を維持しています。
今後、市場での需要動向が更に悪化した場合や製品価格が当社の予想を大きく超えて下落した場合には、当社の経営成績や財政状態にも影響が及び、結果として当社の流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。
② キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」を参照下さい。
③ 資産、負債及び純資産
当連結会計年度末における当社の総資産は、前連結会計年度末の2,282,853百万円から353,851百万円(15.5%)増加し、2,636,704百万円となりました。
現金及び現金等価物は、事業利益で得たキャッシュに加え、譲渡性預金の解約を行ったことを主因として、前連結会計年度末から29,720百万円(9.7%)増加し、335,174百万円となりました。
一年以内償還予定負債証券及び持分証券は、有価証券の購入を主因として、前連結会計年度末から72,007百万円(164.1%)増加し、115,900百万円となりました。
その他短期投資は、定期預金の解約を行ったことを主因として、前連結会計年度末から19,512百万円(10.8%)減少し、160,331百万円となりました。
たな卸資産は、ソーラーエネルギー事業における受注の拡大を主因として、前連結会計年度末から39,352百万円(13.3%)増加し、335,802百万円となりました。
負債証券及び持分証券は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇に伴う時価総額の増加等により、前連結会計年度末から231,722百万円(45.8%)増加し、738,212百万円となりました。
減価償却累計額控除後の有形固定資産合計は、前連結会計年度末から1,733百万円(0.6%)増加し、270,557百万円となりました。当連結会計年度の設備投資額は56,611百万円、減価償却費は65,760百万円でした。
営業権は、京セラサーキットソリューションズ㈱の連結子会社化及び円安の影響により、前連結会計年度末から13,207百万円(12.8%)増加し、116,632百万円となりました。
当連結会計年度末における当社の負債合計は、前連結会計年度末の567,911百万円から81,567百万円(14.4%)増加し、649,478百万円となりました。
支払手形及び買掛金は、生産活動の拡大に伴う仕入の増加により、前連結会計年度末に比べて11,175百万円(10.0%)増加し、122,424百万円となりました。
繰延税金負債は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇に伴う時価総額の増加を主因として、前連結会計年度末から89,725百万円(61.4%)増加し、235,954百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末の1,714,942百万円から272,284百万円(15.9%)増加し、1,987,226百万円となりました。
利益剰余金は当社株主に帰属する当期純利益88,756百万円から支払配当金25,681百万円、及び、自己株式の消却15,803百万円を差し引き、47,272百万円(3.5%)の増加となりました。
累積その他の包括利益は前連結会計年度末より200,825百万円(400.5%)増加し、250,963百万円となりました。未実現有価証券評価損益はKDDI株式を含む保有株式の株価上昇により、前連結会計年度末より158,535百万円(117.2%)増加しました。
為替換算調整勘定は、米ドルに対して円安が進んだことを主因として、前連結会計年度末より40,168百万円増加し、残高は△21,459百万円となりました。
当連結会計年度末の株主資本比率は、前連結会計年度末の72.1%から0.4ポイント増加し、72.5%となりました。
AVX Corporationなどの連結子会社の非支配持分は、前連結会計年度末の68,785百万円から8,358百万円(12.2%)増加し、77,143百万円となりました。
④ 契約債務
当社の予定決済日ごとの契約債務は次のとおりです。当社はこれらの契約債務については自己資金で履行可能であると考えています。
(百万円)

平成27年3月期平成28年3月期-
平成29年3月期
平成30年3月期-
平成31年3月期
平成32年3月期
以降
合 計
短期借入金4,064---4,064
支払利息(短期借入金)(注)48---48
長期借入金
(一年以内返済予定分を含む)
12,36014,3244,79334931,826
支払利息(長期借入金)
(一年以内返済予定分を含む)
(注)
1,1161,03819972,360
資材品購入契約7,05061,12163,86278,766210,799
オペレーティング・リース5,9916,0152,8922,27317,171
設備の発注契約6,483190-6,502
契約債務計37,11282,51771,74681,395272,770

(注) 変動金利による借入金の支払利息については、当連結会計年度末の実質利率を使用して、将来見込まれる支払利息を算出しています。
当社は翌連結会計年度において、退職給付制度に対し、12,045百万円を拠出する予定です。また、当社は、当連結会計年度末において会計基準編纂書740「法人税等」に基づき、未認識税務ベネフィットを負債として4,804百万円計上していますが、将来の解決時期を合理的に見積ることができないため、上記の表には含めていません。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記15」を参照下さい。
なお、AVX Corporationにおける環境汚染浄化費用については、「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績に重要な影響を与えた要因」を参照下さい。
(4) 市場リスクに関する定量的及び定性的開示
当社は、為替相場、金利、株価などの変動による市場リスクにさらされています。当社ではデリバティブを用いて、これらのリスクをヘッジしていますが、トレーディング目的でデリバティブは保有していません。当社では、主に金融商品の市場価値を基本に、前述のリスク及びその他の潜在的なリスクを回避するためにリスク管理方針及び手続きを設定して、市場リスクを定期的に評価しています。また、取引相手の契約不履行により損失を被る恐れがありますが、当社は取引先を信用度の高い取引相手に限定しており、このような可能性はないか、万一発生しても重要な影響を与えるものではないと考えています。
当社には、通常の事業活動において、カントリーリスク、信用リスク、法的リスクなど上記以外のリスクも存在しますが、次の表には反映されていません。
① 為替リスク
当社は、主に米ドル及びユーロの外貨建資産及び負債に対する通貨変動リスクを軽減するために、先物為替予約を行っています。当連結会計年度末における先物為替予約は、主として4ヵ月以内に満期となります。
次の表に、当連結会計年度末における、ヘッジ会計を適用しているものを含む当社の主要な先物為替予約に関する契約高、公正価値、加重平均予約レートを表示しています。契約高は、通常、契約上の交換支払額を算出するのに利用されます。
(売り/買い)
先物為替売予約EURO/円US$/円STG/EURO
契約金額(百万円)73,01063,9393,517
公正価値(百万円)△1,157△692△6
平均予約レート0.0070.0100.830

(買い/売り)
先物為替買予約US$/円円/US$CZK/US$
契約金額(百万円)5,7625,6162,909
公正価値(百万円)321711
平均予約レート0.010102.46620.008

② 金利リスク
当社は、市場における金利の変動リスクを軽減するために、金利スワップを行っています。
下記の表は、金利変動の影響を受けやすい金融商品を表示しています。
長期債務(一年内返済予定分を含む)(百万円)
平均支払
利率
満期日
平成27年
3月期
平成28年
3月期
平成29年
3月期
平成30年
3月期
平成31年
3月期
平成32年
3月期
以降
合 計公正価値
銀行等からの
借入金
4.27%12,3608,5265,7983,3451,44834931,82631,834

金利スワップ(百万円)
想定元本平均受取
利率
平均支払
利率
満期日
平成27年
3月期
平成28年
3月期
平成29年
3月期
平成30年
3月期
平成31年
3月期
平成32年
3月期
以降
合 計公正価値
(変動金利から固定金利へ)
890.50%3.55%89-----89△13

③ 株価リスク
当社は、市場性のある持分証券及び負債証券を保有しており、売却可能として区分される有価証券については公正価値で評価し、連結貸借対照表に計上しています。公正価値の変動は、税効果控除後の金額で累積その他の包括利益として株主資本の中で独立表示しています。市場性のある持分証券に含まれる未実現利益総額462,020百万円のうち435,428百万円は、当社が保有するKDDI株式に関する未実現利益です。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記3」を参照下さい。
当社は、負債証券及び持分証券について公正価値の下落が一時的なものであるか否かを判定します。一時的でない公正価値の下落は評価損失として連結損益計算書に計上され、評価損失後の金額が有価証券の新たな原価となります。当該評価損失は、主に公正価値が原価を下回る期間とその程度及び予測される公正価値の回復の可能性に依拠しています。
当社は、時価を容易に算定できる負債証券及び持分証券について、前連結会計年度に728百万円の減損処理を行いました。当連結会計年度末において、当社は下記の売却可能有価証券を保有しています。
(百万円)

平成26年3月31日現在
原 価公正価値
持分証券283,612745,631

(5) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、米国において一般に認められた会計原則に準拠して作成されています。これらの財務諸表を作成する際には、見積り、判断並びに仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、及び開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断並びに仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社の財務諸表における見積りは次の場合において会計上非常に重要な見積りとなります。すなわち、当社が見積りを行った時点ではその対象となった事象が非常に不確実な状況にも関わらず見積りを行う必要があった場合、また、当該期間において当社が実際に採用したものとは異なるが当社が採用することができた見積りがある、もしくは複数の会計年度にわたって変更が発生すると予想される見積りがあり、その見積りが当社の財政状態及び経営成績の開示に重要な影響を及ぼす場合です。当社は会計情報の開示を行う上で、下記の項目を重要な会計方針として認識しています。
① 貸倒引当金
当社は営業債権及び金融債権について、顧客が利息支払いを含め、期日までに返済する能力があるか否かを考慮し、回収不能額を見積った上で貸倒引当金を計上しています。見積りには期日経過債権の回収期間、経験値並びに現在の経営環境を含む様々な要因を考慮しています。なお、特定の顧客について債務の返済が困難であることが明らかになった場合には、債権の担保資産の価値を考慮の上、個別に引当を行います。また、債権を回収できる見込みがないと判断した場合には、債権を直接減額しています。
② たな卸資産の評価
当社は、たな卸資産が適正な価値で評価されるように評価減の金額を見積っています。過剰、滞留、並びに陳腐化したたな卸資産に対して評価減を行っています。また、たな卸資産は市場価値まで評価減を行っています。当社は通常、一定の保有期間を超えるたな卸資産を滞留もしくは陳腐化していると見なします。また、当社では、将来の需要予測や市況そして関与する経営者の判断のもとに、一定の保有期間に満たないたな卸資産についても評価減を行うことがあります。
当社は、評価損を前連結会計年度に11,507百万円、当連結会計年度に7,256百万円を計上しました。これらは主に通信機器関連事業において計上されました。評価損は、製品寿命の短い製品や市況が急速に悪化した製品の販売価格が下落したことに伴い、市場価値まで評価減を行ったことによるものです。従って、今後も市場の状況や製品の需要が当社の想定を下回れば、たな卸資産の評価損を計上しなければならない可能性があります。
なお、事業セグメント別のたな卸資産評価損の金額は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記17」を参照下さい。
③ 有価証券の減損
当社は負債証券及び持分証券について、その公正価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。当社は定期的に個々の有価証券について、その公正価値が取得原価を下回っている期間と程度、予測される公正価値の回復の可能性、並びに発行者の財政状態を精査しています。仮に発行者の経営状態が著しく悪化した場合、もしくは市場において著しく悪影響を与える事象が発生した場合には、将来的に減損処理を行う可能性があります。なお、減損処理を行う場合には、主に本社部門損失として計上します。
当社は、前連結会計年度及び当連結会計年度に、負債証券及び持分証券について、729百万円及び109百万円の評価損を計上しました。
なお、当社は現在、KDDI㈱の主要な株主であり、KDDI株式の市場価格が大きく変動すれば、当社の財政状態に影響を及ぼすことがあります。当連結会計年度末において、当社が保有するKDDI株式の未実現利益は、KDDI株式の市場価格の変動に伴い、前連結会計年度末における194,216百万円から241,212百万円(124.2%)増加し、435,428百万円となりました。KDDI㈱の業績は堅調であることから、当社は、KDDI株式の市場価格についても堅調に推移するものと考えています。未実現利益総額または未実現損失総額の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記3」を参照下さい。
④ 長期性資産の減損
当社は長期性資産及び償却性無形固定資産について、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で、減損の判定を行っています。
長期性資産及び償却性無形固定資産については、その資産から将来生み出されると期待される割引前のキャッシュ・フローが、帳簿価額を下回っている場合に減損していると判断しています。減損していると判断した場合は、当該資産の帳簿価額が公正価値を超過している金額に基づいて損失額を算出しています。
⑤ 営業権及びその他の無形固定資産
当社は、営業権及び耐用年数が確定できない無形固定資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損の判定を行っています。また、耐用年数を確定できる無形固定資産については、その見積耐用年数にわたり残存価額まで継続して定額法で償却し、減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損の判定を行います。
平成26年1月1日時点において、18,456百万円の営業権を有している通信機器関連事業セグメントの第1ステップにおける公正価値の帳簿価額に対する超過率は17.9%でした。しかしながら、今後の市場環境、通信機器関連事業の業績動向、並びに、割引率などの評価項目の主要な前提数値が変わることにより将来フリーキャッシュ・フローが減少した場合、当該営業権の減損リスクが生じます。
また、当社が当連結会計年度に取得した営業権5,706百万円は、主に京セラサーキットソリューションズ㈱の連結子会社化によるものであり、これは半導体部品関連事業に含まれます。
これらの詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記2及び注記9」を参照下さい。
⑥ 繰延税金資産
当社は繰延税金資産を計上しており、その繰延税金資産が実現しないと考えられる金額についてはその資産の帳簿価額を調整するため評価性引当金を設定しています。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上、実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度末における連結貸借対照表に繰延税金資産を102,327百万円計上しています。当社は、当連結会計年度の税引前当期純利益及び法人税等と比較し、当該繰延税金資産が将来において合理的に実現するものと考えます。
⑦ 給付制度
確定給付型退職制度の制度資産及び予測給付債務に基づく積立超過または積立不足の状況は、連結貸借対照表の資産もしくは負債として認識し、会計年度中の積立状況の変化は当該年度の包括利益の増減として認識します。予測給付債務は数理計算に基づき決定され、その計算には前提条件として、割引率、昇給率などが基礎率として用いられます。制度資産の運用状況に基づく長期期待収益率も前提条件として用いられます。
当社は日本の国債などの優良債券の固定利回りを参考に割引率を決定します。昇給率は主に過去の実績、近い将来の見通し、物価変動などにより決定されます。長期期待収益率は、制度資産の投資対象の予想される収益率と、過去の実績率をもとに決定されます。当社は毎年、数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じてその時点の市場環境をもとに調整を行っています。
日本及び世界的な経済の停滞により、当社が割引率及び制度資産に係る長期期待収益率の基礎率を引き下げる場合には、予測給付債務や期間純退職給付費用が増加します。
(感応分析)
当社グループの予測給付債務と期間純退職給付費用の主要な部分を占める当社と一定の国内子会社の給付制度について、その計算の前提となる割引率と期待収益率の仮定を変化させ、その他の前提をすべて一定とした場合の影響は次のとおりです。
(百万円)

平成26年3月31日現在の
予測給付債務への影響
平成27年3月期の
税引前当期純利益への影響
割引率
0.25%の減少5,455△61
0.25%の増加△5,14859
期待収益率
0.25%の減少-△383
0.25%の増加-383

⑧ 偶発債務
当社は通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社は、法律専門家と相談の上で、こうした偶発債務が重要な結果を引き起こす可能性を予測しています。当社は、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際、当社は受けている訴訟の進捗、及び他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する要因を考慮します。発生した負債は、見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。
⑨ 収益認識
当社は、産業用部品及び通信情報機器の販売を主な収益源としています。当社のセグメントは、「ファインセラミック部品関連事業」、「半導体部品関連事業」、「ファインセラミック応用品関連事業」、「電子デバイス関連事業」、「通信機器関連事業」、「情報機器関連事業」並びに「その他の事業」の7つのレポーティングセグメントで構成されています。
当社は、会計基準編纂書605「収益の認識」に準拠し、取引が存在しているという説得力のある証拠が存在すること、引渡しが行われ、所有権及び所有によるリスクが顧客へ移転されたこと、もしくは役務が履行されたこと、販売価格が確定もしくは確定可能であり、回収可能性が合理的に確実であるというすべての条件を満たした時点で収益を認識しています。上記の各々のセグメントにおいて顧客への販売は、顧客と締結した取引基本契約書及び注文書に記載された条件に基づいて行われています。この取引基本契約書及び注文書には価格、数量並びに(損失リスク及び権利等の)所有権の移転時点が記されています。
顧客からの注文の大半において、製品が顧客へ出荷された時点で所有権が移転し、収益を認識しています。その他の顧客からの注文については、ファインセラミック応用品関連事業及び情報機器関連事業における、最終消費者向けの設置を伴う太陽光発電システムや情報機器の販売を除いて、顧客が製品を受領した時点で所有権が移転し、収益を認識しています。
ファインセラミック応用品関連事業及び情報機器関連事業における、最終消費者向けの設置を伴う太陽光発電システムや情報機器の販売について、契約上の義務がない限り会計基準編纂書605「収益の認識」の認識基準が満たされた時点、すなわち、製品が設置され、顧客が受入れた時点で所有権が移転し、収益を認識しています。当社は、製品とサービスを組み合わせて提供する場合、会計基準編纂書605-25「複数の製品・サービス等を提供する取引の取決め」に基づいて収益を認識しています。
情報機器関連事業において、当社は、販売契約及び1年から7年にわたるリース契約を最終消費者と直接締結している場合があります。販売契約及びリース契約には、製品の設置と顧客の受入れの条項が存在します。販売及び販売型リース契約において、設置が完了し、顧客が受入れた時点で収益を認識しています。なお、出荷日と設置日は通常同日です。販売型リースにおける未稼得収益(受取利息該当分)は、会計基準編纂書840「リース」に従い利息法を用いて、リース期間にわたって収益を認識しています。
すべてのセグメントにおいて、当社は製品に欠陥があった場合のみ返品を受入れます。また、当社の販売条件には、電子デバイス関連事業における販売プログラムを除いて、価格保証、ストック・ローテーションまたは返品規定はありません。
販売奨励金について
電子デバイス関連事業において、電子部品を販売する代理店への販売については、以下の様々な販促活動が定められており、会計基準編纂書605-50「顧客への支払と販売奨励」及び会計基準編纂書605-15「製品」に準拠し、売上を認識した時点で収益から販売奨励金を控除しています。
(a) ストック・ローテーション・プログラムについて
ストック・ローテーション・プログラムとは、品質に問題のない在庫について、直近6ヵ月の純売上高に対して特定の比率を乗じ算出される金額分を、代理店が半年毎に返品することが可能な制度です。売上に対するストック・ローテーション・プログラムの引当金は、会計基準編纂書605-15「製品」に準拠し、現時点までの推移、現在の価格と流通量の情報、市場の特定の情報や売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて算出した代理店の売上に対する比率に基づき、売上時点で算定し、計上されており、これらの手続きには、重要な判断を必要とします。当社は、ストック・ローテーション・プログラムによる将来の返品について妥当な算定ができていると考えており、これまでの実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。なお、製品が返品され、検収された時点で、代理店に対する売掛金を減額しています。
(b) シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラムについて
シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム(以下、シップ・アンド・デビット)は、代理店が顧客への販売活動における市場での価格競争に対して代理店を補助する仕組みです。シップ・アンド・デビットが適用されるためには、代理店が在庫から顧客へ販売する特定部分についての価格調整を、代理店が要求する必要があります。シップ・アンド・デビットは、現在及び将来の代理販売において、代理店が顧客へ販売する特定部分について適用されることがあります。会計基準編纂書605「収益の認識」に準拠し、当社は代理店に対して売上を計上した時点で、その代理店への売上にシップ・アンド・デビットが適用される可能性を考慮して、その売上に関連する代理店の将来の活動に対して引当金を算定し、計上しています。当社は、会計基準編纂書605-15「製品」に準拠し、当該期間における純売上高、代理店に対する売掛金の残額、代理店の在庫水準、現時点までの推移、市場状況、設備製造業やその他顧客に対する直接的な販売活動に基づく価格変動の傾向、売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて、売上に対する引当金を算定し、引当金を計上しています。これらの手続きは慎重な判断のもとで行われており、またその結果、当社はシップ・アンド・デビットにおける引当金について、妥当な算定、計上ができていると考えています。これまでの当社の実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。
リベートについて
ファインセラミック応用品関連事業と情報機器関連事業における代理店への販売において、当社は、定められた期間内に予め定めた売上目標を達成した代理店に対し、現金でリベートを支払っています。このリベートについては、会計基準編纂書605-50「顧客への支払と販売奨励」に準拠して、製品の売上を認識した時点で各代理店の予想販売額を見積り、収益から控除しています。
返品について
当社は、過去の実績に基づいて返品による損失額を見積り、引当金を計上しています。
製品保証について
当社は、保証期間中に発生が見込まれるアフターサービス費用に備えるため、過去実績を基礎に将来の見込みを加味して製品保証額を見積り、引当金を計上しています。
情報機器関連事業において、当社は、製品に対して通常1年間の製品保証を提供しています。また、最終消費者への販売において、1年間の保証期間終了後、延長保証契約を締結する場合があります。役務提供に係る収益については、会計基準編纂書605-20「役務」に準拠し契約期間にわたり収益を認識しています。
⑩ 法人税等の不確実性
法人税等における不確実性に関する会計処理は、会計基準編纂書740「法人税等」に準拠しています。税務調査を受けることを前提に税務上認識された税務ベネフィットについて、50%超の実現可能性がないと判断した場合、当該部分を未認識税務ベネフィットとして負債に計上しています。法人税等における不確実性に関する会計処理の金額と将来の税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。
当社は、当連結会計年度末において未認識税務ベネフィットを総額で4,804百万円計上しています。当社は、法人税等の不確実性に関する最終的な解決が将来の損益計算書へ重要な影響を及ぼすことはないと考えています。
(6) 新規に適用された会計基準
当社は、平成25年4月1日より米国財務会計基準審議会の会計基準編纂書更新2011-10号「実質的不動産の認識の中止―適用範囲の明確化」を適用しています。本基準は、実質的に不動産である子会社の財務持分の支配を遡及権の無い債務の不履行により喪失する場合、当該子会社の認識を中止するか否かを判断するにあたって会計基準編纂書360-20「有形固定資産―不動産販売」のガイダンスを適用することを要求しています。本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はありません。
当社は、平成25年4月1日より米国財務会計基準審議会の会計基準編纂書更新2011-11号「資産と負債の相殺に関する開示」及び会計基準編纂書更新2013-01号「資産と負債の相殺に関する開示の適用範囲の明確化」を適用しています。会計基準編纂書更新2011-11号は、貸借対照表にて相殺が認められるマスターネッティング契約に類似する取り決めによる金融商品及び取引について、総額及び純額の情報の双方の開示を要求しています。会計基準編纂書更新2013-01号は、会計基準編纂書更新2011-11号の適用範囲が、会計基準編纂書210-20-45「貸借対照表―相殺―その他の表示に関する事項」または会計基準編纂書815-10-45「デリバティブ及びヘッジ―全般―その他の表示に関する事項」に基づき相殺された、もしくは、行使可能なマスターネッティング契約または類似した契約の対象となったデリバティブであることを明確化しています。なお、当該デリバティブは、会計基準編纂書815「デリバティブ及びヘッジ」に基づき処理されるものであり、区分処理された組込デリバティブ、再購入契約、逆再購入契約、証券貸付並びに証券借入取引を含みます。これらの基準は開示に係る規定であるため、これらの基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はありません。
当社は、平成25年4月1日より米国財務会計基準審議会の会計基準編纂書更新2012-02号「耐用年数が確定できない無形資産の減損判定」を適用しています。本基準は、耐用年数が確定できない無形資産の減損判定を実施する必要性を決定する基準として、当該無形資産の減損が必要となる可能性が50%を超えるか否かを判断するために定性的要因を最初に評価することを認めるものです。企業は、当該無形資産の減損が必要となる可能性が50%を超えると判断されない限り、その公正価値を算出することを要求されません。本基準は減損金額の算出方法を変更するものではないため、本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はありません。
当社は、平成25年4月1日より米国財務会計基準審議会の会計基準編纂書更新2013-02号「累積その他の包括利益からの組替修正額の報告」を適用しています。本基準は、累積その他の包括利益からの組替修正額に関する情報を構成要素ごとに表示することを要求しています。更に、本基準は、米国会計基準に基づき同一期間において全額を当期純利益へ組替修正することが要求された場合は、当期純利益が表示される財務諸表上または注記にて、累積その他の包括利益から当期純利益へ組替修正を行った重要な金額をそれぞれの項目ごとに表示することを要求しています。一方、米国会計基準に基づき同一期間において全額を当期純利益へ組替修正することが要求されない場合は、米国会計基準に基づき組替修正額に関する詳細な表示が求められる他の開示との相互参照を要求しています。本基準は開示に係る規定であるため、本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はありません。
当社は、平成25年7月17日より米国財務会計基準審議会の会計基準編纂書更新2013-10号「ヘッジ会計目的のベンチマーク金利としてのフェデラル・ファンド・実効スワップ金利(またはオーバーナイト・インデックス・スワップ金利)の算入」を適用しています。本基準は、米国債金利及びロンドン銀行間取引金利に加え、フェデラル・ファンド・実効スワップ金利(オーバーナイト・インデックス・スワップ金利)を、会計基準編纂書815「デリバティブ及びヘッジ」に基づき、ヘッジ会計を目的とする場合の米国におけるベンチマーク金利として用いることを認めるものです。本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はありません。
(7) 新規に発行された会計基準
平成25年7月、米国財務会計基準審議会は、会計基準編纂書更新2013-11号「繰越欠損金、類似の欠損金並びに繰越税額控除が存在する場合の未認識税務ベネフィットの表示」を発行しました。本基準は、未認識税務ベネフィットもしくはその一部を、繰越欠損金、類似の欠損金並びに繰越税額控除に起因する繰延税金資産から控除し、財務諸表上にて表示することを要求しています。本基準は、平成25年12月16日以降に開始する連結会計年度及びその期中期間において適用されます。当社は、本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はないと考えています。
平成26年4月、米国財務会計基準審議会は、会計基準編纂書更新2014-08号「非継続事業の報告及び企業の構成要素の処分に関する開示」を発行しました。本基準は、会計基準編纂書205-20「財務諸表の表示―非継続事業」における非継続事業の報告要件を変更するものです。企業の構成要素または構成要素のグループの処分が企業の事業活動、及び、業績へ重要な影響を与える戦略の転換を意味する場合において、当該処分は非継続事業として報告されることが要求されます。また、本基準は企業に対し、非継続事業の表示要件を満たさなかった個々の重要な構成要素の処分に関して、財務諸表において開示を行うことを要求しています。本基準は、平成26年12月15日以降に開始する連結会計年度及びその期中期間において発生する全ての企業の構成要素の処分(または売却予定としての区分)について適用されます。本基準は開示に係る規定であるため、本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はありません。
平成26年5月、米国財務会計基準審議会は、会計基準編纂書更新2014-09号「顧客との契約から生じる収益」を発行しました。本基準は、顧客への契約に基づいた物品またはサービスの移転を表現するために、企業に対し、物品またはサービスと引き換えに権利を得ることが見込まれる対価を反映した金額で収益を認識することを要求しています。また、本基準は企業に対し、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期並びに不確実性について、財務諸表の利用者が理解するのに十分な情報を開示することを要求しています。要求される定性的・定量的情報は以下のとおりです。
1.顧客との契約―認識された収益及び評価損、収益の内訳、並びに、契約残高および履行義務(未履行義務に配分された取引価格含む)の情報を含む
2.重要な判断および判断の変更―(一定期間にわたる、またはある時点における)履行義務を充足する時期の決定、及び、取引価格及び履行義務へ配分される金額の決定
3.契約の獲得及び履行のための費用から認識された資産
本基準は平成28年12月16日以降に開始する連結会計年度及びその期中期間において適用されます。当社は本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの影響を検討しています。
平成26年6月、米国財務会計基準審議会は、会計基準編纂書更新2014-10号「会計基準編纂書810『連結』における変動持分事業体についてのガイダンスの修正を含む、特定の財務報告要求の削除」を発行しました。本基準は、創業準備段階の企業の定義を会計基準編纂書の用語から削除し、米国会計基準において創業準備段階の企業と他の報告企業の間の財務報告についての差異を解消するものです。また本基準は、リスクにさらされる持分投資の金額に基づいて企業が変動持分事業体に該当するか否かを決定するにあたり、会計基準編纂書810「連結」において、創業準備段階の企業に与えられた例外規定を削除しています。本基準は、平成27年12月16日以降に開始する連結会計年度及びその期中期間において遡及的に適用されます。当社は、本基準の適用に伴う当社の経営成績、財政状態並びにキャッシュ・フローへの重要な影響はないと考えています。