有価証券報告書-第170期(2022/04/01-2023/03/31)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度の我が国経済は、原材料・エネルギー価格の高騰や円安の進行などによる物価上昇が継続しましたが、経済活動の正常化が進み、個人消費や企業の生産活動を中心に持ち直しの傾向となりました。海外経済は、米国や欧州でインフレや金融引き締めの影響により経済活動が抑制されたことなどから、回復のペースが鈍化し、中国ではゼロコロナ政策に伴う活動制限などにより、本格的な回復には至らない状況となりました。また、半導体不足やサプライチェーンの混乱等の影響により、自動車生産の回復が遅れるなど、当社グループを取り巻く事業環境は厳しい状況が続きました。
このような中、当社はKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)に掲げる「安定収益基盤の確立」に向けた重点施策を着実に実行するとともに、引き続きものづくり力の強化や販売価格の改善に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比3,899億円増収の2兆4,725億円となり、営業利益は、鉄鋼メタルスプレッドが大幅に改善したものの、素材系事業や建設機械における販売数量の減少、固定費を中心としたコストの増加、在庫評価益の縮小などにより、前連結会計年度比12億円減益の863億円となりましたが、経常利益は、エンジン認証問題に関する補償金収入の増加などにより、前連結会計年度比136億円増益の1,068億円となりました。特別損益は、建設機械の中国事業における事業整理損や固定資産の減損損失を計上したことなどから87億円の損失となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比124億円増益の725億円となりました。
当連結会計年度のセグメント毎の状況は、次のとおりであります。
<素材系事業>[鉄鋼アルミ]
(鉄鋼)
鋼材の販売数量は、自動車向けの需要が減少したことなどから、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、鋼材市況の上昇や原料価格上昇分の転嫁などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比21.1%増の9,097億円となりました。経常利益は、販売数量の減少や固定費を中心としたコストの増加、在庫評価益の縮小による減益要因がある一方、販売価格の改善が大幅に進展したことなどにより、前連結会計年度比144億円増益の490億円となりました。
(アルミ板)
アルミ板の販売数量は、飲料用缶材向けの需要の伸び悩みなどにより、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、販売価格に転嫁される地金価格が上昇したことなどにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比19.3%増の1,954億円となりました。経常損益は、販売数量の減少や調達コスト上昇分の販売価格への転嫁遅れなどにより、前連結会計年度比99億円悪化の70億円の損失となりました。
鉄鋼アルミ全体では、売上高は、前連結会計年度比20.8%増の1兆1,051億円となり、経常利益は、前連結会計年度比44億円増益の419億円となりました。
[素形材]
素形材の販売数量は、造船向け需要を取り込んだ鋳鍛鋼や一般産業向け需要が回復したチタンで前連結会計年度を上回りました。一方、自動車向けの需要が減少したことから、アルミ押出、銅板、鉄粉は前連結会計年度を下回りました。
この結果、売上高は、前年度に銅管事業を譲渡した影響もあり、前連結会計年度比16.7%減の2,777億円となり、経常利益は、固定費を中心としたコストの増加や、銅管事業における在庫評価益の剥落などにより、前連結会計年度比42億円減益の9億円となりました。
[溶接]
溶接材料の販売数量は、東南アジア向けの需要が減少したことから、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、調達コスト上昇分の転嫁などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比15.0%増の884億円となり、経常利益は、前連結会計年度比0億円増益の28億円となりました。
<機械系事業>[機械]
受注高は、石油化学やエネルギー分野を中心に堅調に推移したことから、前連結会計年度比20.7%増の2,493億円となり、受注残高は2,147億円となりました。
売上高は、前連結会計年度比12.0%増の1,869億円となり、経常利益は、売上高の増加や、堅調な需要を受けた受注採算の改善などにより、前連結会計年度比17億円増益の143億円となりました。
[エンジニアリング]
受注高は、還元鉄関連事業や廃棄物処理関連事業で複数の大型案件を受注した前連結会計年度に比べ、24.4%減の1,575億円となり、受注残高は3,711億円となりました。
売上高は、前連結会計年度比7.0%増の1,452億円となる一方、経常利益は、還元鉄関連事業を中心とした案件構成差などにより、前連結会計年度比35億円減益の41億円となりました。
[建設機械]
油圧ショベルの販売台数は、インフラ投資の減退により需要が減少した中国での減少に加え、部品の調達不足影響を受けた日本や欧州、北米でも減少したことから、前連結会計年度を下回りました。クローラクレーンの販売台数は、エンジン認証問題を受けた北米での減少により、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、調達コスト上昇分の転嫁や、為替相場がドル、ユーロに対して円安となった影響などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比2.7%増の3,817億円となり、経常利益は、販売台数の減少や、調達コスト上昇分の販売価格への転嫁遅れによる減益要因がある一方、円安による輸出採算の改善やエンジン認証問題に関する補償金収入の増加などにより、前連結会計年度比2億円増益の123億円となりました。
<電力事業>[電力]
販売電力量は、神戸発電所3号機(2022年2月に営業運転開始)及び4号機(2023年2月に営業運転開始)の稼働により、前連結会計年度を上回りました。電力単価は発電用石炭価格の上昇により、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比195.2%増の3,243億円となり、経常利益は、神戸発電所3号機及び4号機の稼働などにより、前連結会計年度比113億円増益の245億円となりました。
<その他>売上高は、前連結会計年度比4.5%減の275億円となり、経常利益は、前連結会計年度比7億円減益の63億円となりました。
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、原料価格の上昇等により棚卸資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,460億円増加し2兆8,747億円となりました。また、負債については、原料価格の上昇により支払手形及び買掛金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ406億円増加し1兆8,970億円となりました。また、純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,053億円増加し9,776億円となりました。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
(注)1.プロジェクトファイナンスを含まない
2.2020年度分借入金の前倒し調達(621億円)含む
前倒し調達除く2019年度D/Eレシオ:1.10倍
3.2021年度分借入金の前倒し調達(1,862億円)含む
前倒し調達除く2020年度D/Eレシオ:0.84倍
4.2022年度分借入金の前倒し調達(1,011億円)含む
前倒し調達除く2021年度D/Eレシオ:0.68倍
(4)グループ中期経営計画の進捗
当社グループは、「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」で、「安定収益基盤の確立」、「カーボンニュートラルへの挑戦」の2つを最重要課題とし、新規電力プロジェクトの立上げが完遂し、収益貢献がフルに寄与する2023年度にROIC(投下資本収益率)5%以上の収益レベルを確保し、さらに、将来の姿として、ROIC8%以上を安定的に確保し、持続的に成長する企業グループを目指しております。
中期経営計画の2年目となる2022年度の経済環境は、国内経済は経済活動の正常化などを背景に、持ち直しの動きが見られましたが、海外経済は米国や欧州でのインフレや金融引き締めの影響などにより、回復のペースが鈍化しました。また、半導体不足やサプライチェーンの混乱等の影響により、自動車生産の回復が遅れるなど、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続きました。
このような中、コスト削減をはじめとする収益改善や、ものづくり力の強化による安定生産に取り組むとともに、販売価格の改善に努めてまいりました。この結果、2022年度の経常利益は1,068億円、ROICは4.9%となりました。目標とする2023年度ROIC5%以上の収益レベルの確保に向けて、引き続き「安定収益基盤の確立」のために中期経営計画で掲げた5つの重点施策である、「鋼材事業の収益基盤強化」、「新規電力プロジェクトの円滑な立上げと安定稼働」、「素材系事業の戦略投資の収益貢献」、「不採算事業の再構築」、「機械系事業の収益安定化と成長市場への対応」に着実に取り組むとともに、変動費に加えて人件費など固定費も含めたコストアップ分の販売価格への転嫁を早期かつ着実に実行してまいります。
(5)生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における下記セグメントの生産実績は、次のとおりであります。
(注)1.粗鋼には、高砂製作所の電炉の生産数量を含めております。
2.2022年3月31日付で(株)コベルコ マテリアル銅管等を連結の範囲から除外したことに伴い、当連結会計年度の素形材において銅管の生産実績はありません。
b.受注実績
当連結会計年度における下記セグメントの受注実績は、次のとおりであります。
c.販売実績
当連結会計年度におけるセグメント毎の販売実績は、次のとおりであります。
(注)1.当連結会計年度において、電力における販売実績が著しく増加しております。詳細については、「(1)経営成績の状況」をご覧ください。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(6)資本の財源及び資金の流動性に関する情報
①資本の財源及び資金の流動性
a.財務戦略
「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」における財務戦略の基本方針は、新規の設備投資・投融資を厳選した上で、投資キャッシュ・フローを営業キャッシュ・フローの範囲内とし、2023年度末のD/Eレシオの目標を0.7倍以下とすることとしております。また、運転資金改善等の活動を継続して進めるとともに、営業キャッシュ・フローの下振れリスクに備えて、モニタリング強化による投資案件の精査・厳選、事業用資産の売却・流動化、政策保有株式売却等のバックアップ策の検討・準備を進めることとしております。
本方針のもと、設備投資・投融資委員会を通じた新規設備投資・投融資の厳選、事業ポートフォリオ管理委員会によるキャッシュ・フローのモニタリングを継続するとともに、ROIC管理を通じた投下資本の管理強化に取り組みました。
その結果、D/Eレシオ(プロジェクトファイナンスを除く)は前連結会計年度の0.68倍から改善し0.65倍となり、目標である0.7倍以下を引き続き堅持しました。
引き続き、新規の設備投資・投融資案件の厳選に取り組むとともに、ROIC管理の強化を通じて、運転資金の改善を図ることで、財務規律の維持・向上を推進してまいります。

b.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化に資するための研究開発費が主な内容です。投資活動については、設備老朽化に伴う更新投資や事業伸張・生産性向上を目的とした設備投資及び事業遂行に関連した投融資が主な内容です。
今後、将来見込まれる成長分野での資金需要や、最新の市場環境及び受注動向も勘案し、資産の圧縮及び投資案件の選別を行う一方、必要な設備投資や研究開発投資等を継続してまいります。
②当連結会計年度の実績
a.プロジェクトファイナンスを除くキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローに係る収入が698億円、投資活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△700億円、財務活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△1,035億円となりました。
以上の結果、フリーキャッシュ・フローは△2億円の支出となり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ977億円減少の1,454億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
鉄鋼における販売価格改善の進展などにより、税金等調整前当期純利益が増益となった一方、原料市況高騰に伴い棚卸資産が増加したことなどから、前連結会計年度に比べて当連結会計年度の運転資金は悪化いたしました。
この結果、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて1,118億円収入が減少し、698億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
大型戦略投資の支払いがあった前年同期に比べて設備投資の支払いが減少したことや固定資産売却による収入が増加したことなどから、当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて549億円支出が減少し、△700億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
借入金の返済等による支出が減少したことから、当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて168億円支出が減少し、△1,035億円となりました。
(ご参考)
b.プロジェクトファイナンスを除く有利子負債の状況
有利子負債は、借入金の返済等により前連結会計年度から646億円減少の5,905億円となり、株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、551億円増加の8,382億円となりました。
当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることなどから、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要があり、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、返済期限が1年以内のものが1,417億円、返済期限が1年を超えるものが4,487億円となっております。
(注1)2022年度分借入金の前倒し調達(1,011億円)含む
前倒し調達除く2021年度D/Eレシオ:0.68倍
(7)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用しております。
連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、連結貸借対照表上の資産及び負債の計上額、並びに、連結損益計算書上の収益及び費用の計上額に影響を与えるような会計上の見積りを行う必要があります。会計上の見積りは、過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っておりますが、前提条件や事業環境等に変化が生じた場合には、見積りと将来の実績が異なることがあります。
会計上の見積りが必要となる項目のうち、経営者が当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は次のとおりです。
[棚卸資産の評価]
当社グループは、販売目的で保有する棚卸資産について、期末における正味売却価額が取得原価より下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価との差額を簿価の切り下げ額として当期の費用に計上しております。連結貸借対照表の「棚卸資産」は、収益性の低下に基づく簿価切り下げ額200億円を差し引いて計上しております。
正味売却価額については、期末前後における販売実績を基に、製品や原材料の価格動向等を踏まえて将来における売却価額を見積って算定しております。
また、滞留棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる方法等により収益性の低下の事実を適切に反映しております。
経営者は、棚卸資産の正味売却価額の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、経済情勢が大きく変化し、製品や原材料の価格等の仮定に大きな変化が生じた場合、将来の棚卸資産の簿価切り下げ額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[受注契約に係る収益及び損失の評価]
当社グループは、主に素形材の鋳鍛鋼品、機械及びエンジニアリングにおける受注契約のうち、履行義務が一定期間にわたり充足される工事契約については、主として顧客に提供する履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に応じて収益を認識し、連結貸借対照表の「流動資産」の「契約資産」に260億円計上しております。 また、受注契約について工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額を、「受注工事損失引当金」として、連結貸借対照表の「流動負債」に87億円計上しております。
進捗度は見積総原価に対する累積実績発生原価の割合で算出しております。見積総原価については、案件毎に労務費や資機材の調達価格等の費用を直近の工事スケジュールや過去の実績、調達先との交渉状況等から想定して算定しております。
受注工事損失引当金の算定については、原則、一つの契約を一つの案件とし、案件単位で引当金の計上要否を判定しますが、同一と見なされる案件が複数の契約に分かれている場合や、本体とその据付工事等の関連の深い複数の契約を前後して受注した場合等においては、複数の契約を一つの案件とみなして判定します。
経営者は、工事契約における進捗度に応じた収益の認識及び受注工事損失引当金の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、工期や調達価格の仮定及び輸入する資機材の調達価格に影響を与える為替の前提条件等に大きな変化が生じた場合、見積総原価の変動により進捗度が変動することに伴って、工事契約における進捗度に応じた収益の認識及び受注工事損失引当金の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[貸倒引当金]
当社グループは、将来の債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については過去の貸倒実績率により、また貸倒懸念債権等の特定の債権については、個別に回収可能性を検討しその回収不能見込額を、連結貸借対照表の「流動資産」の「貸倒引当金」に△48億円、「固定資産」の「投資その他の資産」の「貸倒引当金」に△202億円計上しております。
特定の債権について回収不能見込額を見積るにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に判断しております。
経営者は、貸倒引当金の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、経済情勢や金融機関の貸出姿勢等により、債務者の財政状態に大きな変化が生じた場合、回収不能見込額が変動し将来の貸倒引当金の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[固定資産の減損]
当社グループは、固定資産について営業損益が継続してマイナスとなるなど、減損の兆候があると判断された場合には、将来キャッシュ・フローを基に回収可能性を見積り、減損損失の認識の要否を判定し、資産グループから生じる将来キャッシュ・フロー総額が固定資産の帳簿価額を下回っている場合には減損損失を認識しております。
当社グループにおいて、当連結会計年度に減損損失を44億円計上しており、その内訳は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結損益計算書関係) 6 減損損失」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の固定資産の帳簿価額1兆1,036億円(有形固定資産1兆660億円、無形固定資産375億円)には、減損の兆候があるものの減損損失を認識しなかった資産グループが複数存在しますが、そのうち主な資産グループは次のとおりであります。
<建設機械>建設機械における当社の子会社であるコベルコ建機(株)の事業用固定資産について、海外における競合の激化、鋼材等の調達コストの増加、部品供給不足による減産等の影響により営業損益が継続してマイナスとなったことから、減損の兆候があると判断しております。将来の事業計画においては、販売単価の改善、建設投資の増加に基づく販売地域での需要の拡大やマーケットシェアの拡大による販売台数の増加等を、主要な仮定として織り込んでおります。このような仮定の下で策定した事業計画を基に見積った割引前将来キャッシュ・フロー総額が固定資産の帳簿価額611億円を上回ることから、減損損失は認識しておりません。
経営者は将来のキャッシュ・フローは合理的であると判断しておりますが、見積り時に設定した仮定と実際の結果に大きな乖離が見られるなど、見積りの前提に大きな変化が生じ、将来のキャッシュ・フローが下振れした場合、減損損失を認識する可能性があります。
[繰延税金資産]
当社グループは、将来減算一時差異や税務上の繰越欠損金等のうち、将来課税所得を減算する可能性が高いと見込まれるものに対して、連結貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の「繰延税金資産」に466億円を計上しております。
当社グループでは、中期経営計画や予算等の経営者が妥当と判断した事業計画に基づき将来の一定期間の課税所得を見積り、また将来減算一時差異については個別に解消見込み時期を判断し、一定期間に解消が見込まれると見積られる将来減算一時差異等に係る繰延税金資産については回収可能性が高いと判断しております。また、事業計画を策定するにあたっては、主要事業における需要や販売価格の予測等を、主要な仮定として織り込んでおります。
経営者は、繰延税金資産の算定に用いられる見積りは合理的であると考えていますが、世界的な半導体不足の長期化等が与える需要分野への影響に加えて、原料・資材、エネルギー価格の上昇に対する販売価格への転嫁遅れ等により、将来の課税所得が想定から大きく変動し繰延税金資産の回収可能性が大きく変動する場合や、税率の改正がある場合、将来の繰延税金資産の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[退職給付に係る資産、負債]
当社グループは、退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債について、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率、年金資産の長期期待運用収益率等の計算基礎を用いた数理計算により見積っており、連結貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の「退職給付に係る資産」に220億円、「固定負債」の「退職給付に係る負債」に713億円計上しております。
特に割引率や長期期待運用収益率は重要な前提条件となりますが、割引率は、年度末における国債もしくは高格付社債の利回りに基づき、また長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオや、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して、決定しております。
経営者は、年金数理計算上用いられる前提条件は適切であると考えていますが、前提条件に大きな変化が生じた場合、将来の退職給付資産及び退職給付負債の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
採用している退職給付制度の概要や年金資産の主な内訳、主要な数理計算上の計算基礎については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(退職給付会計関係)」に記載のとおりです。
[製品保証引当金]
当社グループは、主に素形材の鋳鍛鋼品・チタン製品、機械、エンジニアリング及び建設機械において、製品販売後及び工事引渡後の保証費用の支出に備えるため、売上高に対する過去の実績率に基づいて算定した将来の負担見積額の他、保証費用を支払う可能性が高い特定案件については、案件毎の将来の負担見積額を、連結貸借対照表の「流動負債」の「製品保証引当金」に174億円計上しております。
実績率については、売上高に対する過去の保証費用の支出額の割合に基づき算定しております。また、特定案件については、出荷した製品の不具合の内容を調査して、修復に係る費用を見積るとともに、不具合が当社の製品に起因しているか否かを判断し、契約等に基づき当社グループが負担する可能性が高いと判断される保証費用の支出額を算定しております。
経営者は、製品保証引当金の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、予期せぬ重大な不具合が発生した場合や、不具合の修復に係る費用が想定から大きく変動した場合等には、将来の製品保証引当金の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当連結会計年度の我が国経済は、原材料・エネルギー価格の高騰や円安の進行などによる物価上昇が継続しましたが、経済活動の正常化が進み、個人消費や企業の生産活動を中心に持ち直しの傾向となりました。海外経済は、米国や欧州でインフレや金融引き締めの影響により経済活動が抑制されたことなどから、回復のペースが鈍化し、中国ではゼロコロナ政策に伴う活動制限などにより、本格的な回復には至らない状況となりました。また、半導体不足やサプライチェーンの混乱等の影響により、自動車生産の回復が遅れるなど、当社グループを取り巻く事業環境は厳しい状況が続きました。
このような中、当社はKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)に掲げる「安定収益基盤の確立」に向けた重点施策を着実に実行するとともに、引き続きものづくり力の強化や販売価格の改善に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比3,899億円増収の2兆4,725億円となり、営業利益は、鉄鋼メタルスプレッドが大幅に改善したものの、素材系事業や建設機械における販売数量の減少、固定費を中心としたコストの増加、在庫評価益の縮小などにより、前連結会計年度比12億円減益の863億円となりましたが、経常利益は、エンジン認証問題に関する補償金収入の増加などにより、前連結会計年度比136億円増益の1,068億円となりました。特別損益は、建設機械の中国事業における事業整理損や固定資産の減損損失を計上したことなどから87億円の損失となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比124億円増益の725億円となりました。
当連結会計年度のセグメント毎の状況は、次のとおりであります。
<素材系事業>[鉄鋼アルミ]
(鉄鋼)
鋼材の販売数量は、自動車向けの需要が減少したことなどから、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、鋼材市況の上昇や原料価格上昇分の転嫁などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比21.1%増の9,097億円となりました。経常利益は、販売数量の減少や固定費を中心としたコストの増加、在庫評価益の縮小による減益要因がある一方、販売価格の改善が大幅に進展したことなどにより、前連結会計年度比144億円増益の490億円となりました。
(アルミ板)
アルミ板の販売数量は、飲料用缶材向けの需要の伸び悩みなどにより、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、販売価格に転嫁される地金価格が上昇したことなどにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比19.3%増の1,954億円となりました。経常損益は、販売数量の減少や調達コスト上昇分の販売価格への転嫁遅れなどにより、前連結会計年度比99億円悪化の70億円の損失となりました。
鉄鋼アルミ全体では、売上高は、前連結会計年度比20.8%増の1兆1,051億円となり、経常利益は、前連結会計年度比44億円増益の419億円となりました。
[素形材]
素形材の販売数量は、造船向け需要を取り込んだ鋳鍛鋼や一般産業向け需要が回復したチタンで前連結会計年度を上回りました。一方、自動車向けの需要が減少したことから、アルミ押出、銅板、鉄粉は前連結会計年度を下回りました。
この結果、売上高は、前年度に銅管事業を譲渡した影響もあり、前連結会計年度比16.7%減の2,777億円となり、経常利益は、固定費を中心としたコストの増加や、銅管事業における在庫評価益の剥落などにより、前連結会計年度比42億円減益の9億円となりました。
[溶接]
溶接材料の販売数量は、東南アジア向けの需要が減少したことから、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、調達コスト上昇分の転嫁などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比15.0%増の884億円となり、経常利益は、前連結会計年度比0億円増益の28億円となりました。
<機械系事業>[機械]
受注高は、石油化学やエネルギー分野を中心に堅調に推移したことから、前連結会計年度比20.7%増の2,493億円となり、受注残高は2,147億円となりました。
売上高は、前連結会計年度比12.0%増の1,869億円となり、経常利益は、売上高の増加や、堅調な需要を受けた受注採算の改善などにより、前連結会計年度比17億円増益の143億円となりました。
[エンジニアリング]
受注高は、還元鉄関連事業や廃棄物処理関連事業で複数の大型案件を受注した前連結会計年度に比べ、24.4%減の1,575億円となり、受注残高は3,711億円となりました。
売上高は、前連結会計年度比7.0%増の1,452億円となる一方、経常利益は、還元鉄関連事業を中心とした案件構成差などにより、前連結会計年度比35億円減益の41億円となりました。
[建設機械]
油圧ショベルの販売台数は、インフラ投資の減退により需要が減少した中国での減少に加え、部品の調達不足影響を受けた日本や欧州、北米でも減少したことから、前連結会計年度を下回りました。クローラクレーンの販売台数は、エンジン認証問題を受けた北米での減少により、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、調達コスト上昇分の転嫁や、為替相場がドル、ユーロに対して円安となった影響などにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比2.7%増の3,817億円となり、経常利益は、販売台数の減少や、調達コスト上昇分の販売価格への転嫁遅れによる減益要因がある一方、円安による輸出採算の改善やエンジン認証問題に関する補償金収入の増加などにより、前連結会計年度比2億円増益の123億円となりました。
<電力事業>[電力]
販売電力量は、神戸発電所3号機(2022年2月に営業運転開始)及び4号機(2023年2月に営業運転開始)の稼働により、前連結会計年度を上回りました。電力単価は発電用石炭価格の上昇により、前連結会計年度を上回りました。
この結果、売上高は、前連結会計年度比195.2%増の3,243億円となり、経常利益は、神戸発電所3号機及び4号機の稼働などにより、前連結会計年度比113億円増益の245億円となりました。
<その他>売上高は、前連結会計年度比4.5%減の275億円となり、経常利益は、前連結会計年度比7億円減益の63億円となりました。
(2)財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、原料価格の上昇等により棚卸資産が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,460億円増加し2兆8,747億円となりました。また、負債については、原料価格の上昇により支払手形及び買掛金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ406億円増加し1兆8,970億円となりました。また、純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,053億円増加し9,776億円となりました。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
| 目標指標推移 | |||||
| 目標指標 | 目標 (2023年度) | 2019年度 (実績) | 2020年度 (実績) | 2021年度 (実績) | 2022年度 (実績) |
| ROIC (税引後事業利益/投下資本) | 5%以上 | 0.9% | 1.1% | 4.7% | 4.9% |
| D/Eレシオ(注1) (有利子負債/自己資本) | 0.7倍以下 | 1.19倍 (注2) | 1.11倍 (注3) | 0.80倍 (注4) | 0.65倍 |
(注)1.プロジェクトファイナンスを含まない
2.2020年度分借入金の前倒し調達(621億円)含む
前倒し調達除く2019年度D/Eレシオ:1.10倍
3.2021年度分借入金の前倒し調達(1,862億円)含む
前倒し調達除く2020年度D/Eレシオ:0.84倍
4.2022年度分借入金の前倒し調達(1,011億円)含む
前倒し調達除く2021年度D/Eレシオ:0.68倍
(4)グループ中期経営計画の進捗
当社グループは、「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」で、「安定収益基盤の確立」、「カーボンニュートラルへの挑戦」の2つを最重要課題とし、新規電力プロジェクトの立上げが完遂し、収益貢献がフルに寄与する2023年度にROIC(投下資本収益率)5%以上の収益レベルを確保し、さらに、将来の姿として、ROIC8%以上を安定的に確保し、持続的に成長する企業グループを目指しております。
中期経営計画の2年目となる2022年度の経済環境は、国内経済は経済活動の正常化などを背景に、持ち直しの動きが見られましたが、海外経済は米国や欧州でのインフレや金融引き締めの影響などにより、回復のペースが鈍化しました。また、半導体不足やサプライチェーンの混乱等の影響により、自動車生産の回復が遅れるなど、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続きました。
このような中、コスト削減をはじめとする収益改善や、ものづくり力の強化による安定生産に取り組むとともに、販売価格の改善に努めてまいりました。この結果、2022年度の経常利益は1,068億円、ROICは4.9%となりました。目標とする2023年度ROIC5%以上の収益レベルの確保に向けて、引き続き「安定収益基盤の確立」のために中期経営計画で掲げた5つの重点施策である、「鋼材事業の収益基盤強化」、「新規電力プロジェクトの円滑な立上げと安定稼働」、「素材系事業の戦略投資の収益貢献」、「不採算事業の再構築」、「機械系事業の収益安定化と成長市場への対応」に着実に取り組むとともに、変動費に加えて人件費など固定費も含めたコストアップ分の販売価格への転嫁を早期かつ着実に実行してまいります。
(5)生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における下記セグメントの生産実績は、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 区分 | 生産数量(千トン) | |||
| 前連結会計年度(2021年4月~ 2022年3月) | 当連結会計年度(2022年4月~ 2023年3月) | 差異 | 前期比 (%) | ||
| 鉄鋼アルミ | 粗鋼 | 6,667 | 6,248 | △419 | △6.3 |
| アルミ板 | 356 | 349 | △7 | △2.0 | |
| 素形材 | アルミ押出 | 41 | 40 | △2 | △3.7 |
| 銅板 | 60 | 55 | △5 | △8.7 | |
| 銅管 | 76 | - | △76 | △100.0 | |
(注)1.粗鋼には、高砂製作所の電炉の生産数量を含めております。
2.2022年3月31日付で(株)コベルコ マテリアル銅管等を連結の範囲から除外したことに伴い、当連結会計年度の素形材において銅管の生産実績はありません。
b.受注実績
当連結会計年度における下記セグメントの受注実績は、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 区分 | 受注高(百万円) | |||
| 前連結会計年度(2021年4月~2022年3月) | 当連結会計年度(2022年4月~2023年3月) | 差異 | 前期比 (%) | ||
| 機械 | 国内 | 73,175 | 82,661 | 9,486 | 13.0 |
| 海外 | 133,446 | 166,646 | 33,200 | 24.9 | |
| 合計 | 206,622 | 249,308 | 42,686 | 20.7 | |
| エンジニアリング | 国内 | 151,719 | 120,869 | △30,849 | △20.3 |
| 海外 | 56,801 | 36,677 | △20,124 | △35.4 | |
| 合計 | 208,521 | 157,546 | △50,974 | △24.4 | |
| セグメントの名称 | 区分 | 受注残高(百万円) | |||
| 前連結会計 年度末 (2022年3月) | 当連結会計 年度末 (2023年3月) | 差異 | 前期比 (%) | ||
| 機械 | 国内 | 34,875 | 48,966 | 14,090 | 40.4 |
| 海外 | 122,146 | 165,762 | 43,616 | 35.7 | |
| 合計 | 157,022 | 214,729 | 57,706 | 36.8 | |
| エンジニアリング | 国内 | 269,500 | 283,065 | 13,565 | 5.0 |
| 海外 | 73,558 | 88,061 | 14,503 | 19.7 | |
| 合計 | 343,058 | 371,127 | 28,068 | 8.2 | |
c.販売実績
当連結会計年度におけるセグメント毎の販売実績は、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | ||||
| 前連結会計年度 (2021年4月~ 2022年3月) | 当連結会計年度 (2022年4月~ 2023年3月) | 差異 | 前期比 (%) | ||
| 鉄鋼 | 751,062 | 909,704 | 158,642 | 21.1 | |
| アルミ板 | 163,847 | 195,462 | 31,615 | 19.3 | |
| 鉄鋼アルミ | 914,909 | 1,105,166 | 190,257 | 20.8 | |
| 素形材 | 333,261 | 277,765 | △55,495 | △16.7 | |
| 溶接 | 76,924 | 88,429 | 11,505 | 15.0 | |
| 機械 | 166,847 | 186,915 | 20,068 | 12.0 | |
| エンジニアリング | 135,661 | 145,224 | 9,563 | 7.0 | |
| 建設機械 | 371,631 | 381,781 | 10,149 | 2.7 | |
| 電力 | 109,866 | 324,369 | 214,503 | 195.2 | |
| その他 | 28,812 | 27,513 | △1,299 | △4.5 | |
| 調整額 | △55,331 | △64,657 | △9,326 | - | |
| 合計 | 2,082,582 | 2,472,508 | 389,926 | 18.7 | |
(注)1.当連結会計年度において、電力における販売実績が著しく増加しております。詳細については、「(1)経営成績の状況」をご覧ください。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (2021年4月~2022年3月) | 当連結会計年度 (2022年4月~2023年3月) | ||
| 金額 (百万円) | 割合 (%) | 金額 (百万円) | 割合 (%) | |
| 神鋼商事(株) | 277,119 | 13.3 | 292,648 | 11.8 |
(6)資本の財源及び資金の流動性に関する情報
①資本の財源及び資金の流動性
a.財務戦略
「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」における財務戦略の基本方針は、新規の設備投資・投融資を厳選した上で、投資キャッシュ・フローを営業キャッシュ・フローの範囲内とし、2023年度末のD/Eレシオの目標を0.7倍以下とすることとしております。また、運転資金改善等の活動を継続して進めるとともに、営業キャッシュ・フローの下振れリスクに備えて、モニタリング強化による投資案件の精査・厳選、事業用資産の売却・流動化、政策保有株式売却等のバックアップ策の検討・準備を進めることとしております。
本方針のもと、設備投資・投融資委員会を通じた新規設備投資・投融資の厳選、事業ポートフォリオ管理委員会によるキャッシュ・フローのモニタリングを継続するとともに、ROIC管理を通じた投下資本の管理強化に取り組みました。
その結果、D/Eレシオ(プロジェクトファイナンスを除く)は前連結会計年度の0.68倍から改善し0.65倍となり、目標である0.7倍以下を引き続き堅持しました。
引き続き、新規の設備投資・投融資案件の厳選に取り組むとともに、ROIC管理の強化を通じて、運転資金の改善を図ることで、財務規律の維持・向上を推進してまいります。

b.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化に資するための研究開発費が主な内容です。投資活動については、設備老朽化に伴う更新投資や事業伸張・生産性向上を目的とした設備投資及び事業遂行に関連した投融資が主な内容です。
今後、将来見込まれる成長分野での資金需要や、最新の市場環境及び受注動向も勘案し、資産の圧縮及び投資案件の選別を行う一方、必要な設備投資や研究開発投資等を継続してまいります。
②当連結会計年度の実績
a.プロジェクトファイナンスを除くキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローに係る収入が698億円、投資活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△700億円、財務活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△1,035億円となりました。
以上の結果、フリーキャッシュ・フローは△2億円の支出となり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ977億円減少の1,454億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
鉄鋼における販売価格改善の進展などにより、税金等調整前当期純利益が増益となった一方、原料市況高騰に伴い棚卸資産が増加したことなどから、前連結会計年度に比べて当連結会計年度の運転資金は悪化いたしました。
この結果、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて1,118億円収入が減少し、698億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
大型戦略投資の支払いがあった前年同期に比べて設備投資の支払いが減少したことや固定資産売却による収入が増加したことなどから、当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて549億円支出が減少し、△700億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
借入金の返済等による支出が減少したことから、当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて168億円支出が減少し、△1,035億円となりました。
| (単位:億円) | |||
| 2021年度 | 2022年度 | 差異 | |
| 営業キャッシュ・フロー | 1,816 | 698 | △1,118 |
| 投資キャッシュ・フロー | △1,250 | △700 | 549 |
| フリーキャッシュ・フロー | 566 | △2 | △568 |
| 財務キャッシュ・フロー | △1,203 | △1,035 | 168 |
| (うち、株主還元) | (△72) | (△177) | (△104) |
| 株主還元後のフリーキャッシュ・フロー | 494 | △179 | △673 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 2,432 | 1,454 | △977 |
(ご参考)
| プロジェクトファイナンスを含むキャッシュ・フロー | (単位:億円) | ||
| 2021年度 | 2022年度 | 差異 | |
| 営業キャッシュ・フロー | 1,688 | 1,196 | △491 |
| 投資キャッシュ・フロー | △1,615 | △972 | 642 |
| フリーキャッシュ・フロー | 72 | 224 | 151 |
| 財務キャッシュ・フロー | △691 | △855 | △164 |
| (うち、株主還元) | (△72) | (△177) | (△104) |
| 株主還元後のフリーキャッシュ・フロー | 0 | 46 | 46 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 2,605 | 2,033 | △571 |
b.プロジェクトファイナンスを除く有利子負債の状況
有利子負債は、借入金の返済等により前連結会計年度から646億円減少の5,905億円となり、株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、551億円増加の8,382億円となりました。
当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることなどから、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要があり、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、返済期限が1年以内のものが1,417億円、返済期限が1年を超えるものが4,487億円となっております。
| (単位:億円) | ||
| 2021年度 | 2022年度 | |
| 有利子負債(注2) | 6,551 | 5,905 |
| 有利子負債(注3) (プロジェクトファイナンスを含む) | 9,084 | 8,618 |
| 株主資本 | 7,831 | 8,382 |
| D/Eレシオ (プロジェクトファイナンスを除く) | 0.80倍 (注1) | 0.65倍 |
(注1)2022年度分借入金の前倒し調達(1,011億円)含む
前倒し調達除く2021年度D/Eレシオ:0.68倍
| (注2)当連結会計年度末現在の有利子負債の内訳 | (単位:億円) | ||
| 合計 | 1年内 | 1年超 | |
| 短期借入金 | 327 | 327 | - |
| 長期借入金 | 5,118 | 1,080 | 4,037 |
| 社債 | 459 | 9 | 450 |
| 合計 | 5,905 | 1,417 | 4,487 |
| (注3)当連結会計年度末現在の有利子負債の内訳(プロジェクトファイナンスを含む) | (単位:億円) | |||
| 合計 | 1年内 | 1年超 | ||
| 短期借入金 | 327 | 327 | - | |
| 長期借入金 | 7,831 | 1,364 | 6,466 | |
| 社債 | 459 | 9 | 450 | |
| 合計 | 8,618 | 1,701 | 6,916 | |
(7)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用しております。
連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、連結貸借対照表上の資産及び負債の計上額、並びに、連結損益計算書上の収益及び費用の計上額に影響を与えるような会計上の見積りを行う必要があります。会計上の見積りは、過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っておりますが、前提条件や事業環境等に変化が生じた場合には、見積りと将来の実績が異なることがあります。
会計上の見積りが必要となる項目のうち、経営者が当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は次のとおりです。
[棚卸資産の評価]
当社グループは、販売目的で保有する棚卸資産について、期末における正味売却価額が取得原価より下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価との差額を簿価の切り下げ額として当期の費用に計上しております。連結貸借対照表の「棚卸資産」は、収益性の低下に基づく簿価切り下げ額200億円を差し引いて計上しております。
正味売却価額については、期末前後における販売実績を基に、製品や原材料の価格動向等を踏まえて将来における売却価額を見積って算定しております。
また、滞留棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる方法等により収益性の低下の事実を適切に反映しております。
経営者は、棚卸資産の正味売却価額の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、経済情勢が大きく変化し、製品や原材料の価格等の仮定に大きな変化が生じた場合、将来の棚卸資産の簿価切り下げ額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[受注契約に係る収益及び損失の評価]
当社グループは、主に素形材の鋳鍛鋼品、機械及びエンジニアリングにおける受注契約のうち、履行義務が一定期間にわたり充足される工事契約については、主として顧客に提供する履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に応じて収益を認識し、連結貸借対照表の「流動資産」の「契約資産」に260億円計上しております。 また、受注契約について工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額を、「受注工事損失引当金」として、連結貸借対照表の「流動負債」に87億円計上しております。
進捗度は見積総原価に対する累積実績発生原価の割合で算出しております。見積総原価については、案件毎に労務費や資機材の調達価格等の費用を直近の工事スケジュールや過去の実績、調達先との交渉状況等から想定して算定しております。
受注工事損失引当金の算定については、原則、一つの契約を一つの案件とし、案件単位で引当金の計上要否を判定しますが、同一と見なされる案件が複数の契約に分かれている場合や、本体とその据付工事等の関連の深い複数の契約を前後して受注した場合等においては、複数の契約を一つの案件とみなして判定します。
経営者は、工事契約における進捗度に応じた収益の認識及び受注工事損失引当金の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、工期や調達価格の仮定及び輸入する資機材の調達価格に影響を与える為替の前提条件等に大きな変化が生じた場合、見積総原価の変動により進捗度が変動することに伴って、工事契約における進捗度に応じた収益の認識及び受注工事損失引当金の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[貸倒引当金]
当社グループは、将来の債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については過去の貸倒実績率により、また貸倒懸念債権等の特定の債権については、個別に回収可能性を検討しその回収不能見込額を、連結貸借対照表の「流動資産」の「貸倒引当金」に△48億円、「固定資産」の「投資その他の資産」の「貸倒引当金」に△202億円計上しております。
特定の債権について回収不能見込額を見積るにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に判断しております。
経営者は、貸倒引当金の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、経済情勢や金融機関の貸出姿勢等により、債務者の財政状態に大きな変化が生じた場合、回収不能見込額が変動し将来の貸倒引当金の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[固定資産の減損]
当社グループは、固定資産について営業損益が継続してマイナスとなるなど、減損の兆候があると判断された場合には、将来キャッシュ・フローを基に回収可能性を見積り、減損損失の認識の要否を判定し、資産グループから生じる将来キャッシュ・フロー総額が固定資産の帳簿価額を下回っている場合には減損損失を認識しております。
当社グループにおいて、当連結会計年度に減損損失を44億円計上しており、その内訳は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結損益計算書関係) 6 減損損失」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の固定資産の帳簿価額1兆1,036億円(有形固定資産1兆660億円、無形固定資産375億円)には、減損の兆候があるものの減損損失を認識しなかった資産グループが複数存在しますが、そのうち主な資産グループは次のとおりであります。
<建設機械>建設機械における当社の子会社であるコベルコ建機(株)の事業用固定資産について、海外における競合の激化、鋼材等の調達コストの増加、部品供給不足による減産等の影響により営業損益が継続してマイナスとなったことから、減損の兆候があると判断しております。将来の事業計画においては、販売単価の改善、建設投資の増加に基づく販売地域での需要の拡大やマーケットシェアの拡大による販売台数の増加等を、主要な仮定として織り込んでおります。このような仮定の下で策定した事業計画を基に見積った割引前将来キャッシュ・フロー総額が固定資産の帳簿価額611億円を上回ることから、減損損失は認識しておりません。
経営者は将来のキャッシュ・フローは合理的であると判断しておりますが、見積り時に設定した仮定と実際の結果に大きな乖離が見られるなど、見積りの前提に大きな変化が生じ、将来のキャッシュ・フローが下振れした場合、減損損失を認識する可能性があります。
[繰延税金資産]
当社グループは、将来減算一時差異や税務上の繰越欠損金等のうち、将来課税所得を減算する可能性が高いと見込まれるものに対して、連結貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の「繰延税金資産」に466億円を計上しております。
当社グループでは、中期経営計画や予算等の経営者が妥当と判断した事業計画に基づき将来の一定期間の課税所得を見積り、また将来減算一時差異については個別に解消見込み時期を判断し、一定期間に解消が見込まれると見積られる将来減算一時差異等に係る繰延税金資産については回収可能性が高いと判断しております。また、事業計画を策定するにあたっては、主要事業における需要や販売価格の予測等を、主要な仮定として織り込んでおります。
経営者は、繰延税金資産の算定に用いられる見積りは合理的であると考えていますが、世界的な半導体不足の長期化等が与える需要分野への影響に加えて、原料・資材、エネルギー価格の上昇に対する販売価格への転嫁遅れ等により、将来の課税所得が想定から大きく変動し繰延税金資産の回収可能性が大きく変動する場合や、税率の改正がある場合、将来の繰延税金資産の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
[退職給付に係る資産、負債]
当社グループは、退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債について、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率、年金資産の長期期待運用収益率等の計算基礎を用いた数理計算により見積っており、連結貸借対照表の「固定資産」の「投資その他の資産」の「退職給付に係る資産」に220億円、「固定負債」の「退職給付に係る負債」に713億円計上しております。
特に割引率や長期期待運用収益率は重要な前提条件となりますが、割引率は、年度末における国債もしくは高格付社債の利回りに基づき、また長期期待運用収益率は、保有している年金資産のポートフォリオや、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して、決定しております。
経営者は、年金数理計算上用いられる前提条件は適切であると考えていますが、前提条件に大きな変化が生じた場合、将来の退職給付資産及び退職給付負債の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
採用している退職給付制度の概要や年金資産の主な内訳、主要な数理計算上の計算基礎については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(退職給付会計関係)」に記載のとおりです。
[製品保証引当金]
当社グループは、主に素形材の鋳鍛鋼品・チタン製品、機械、エンジニアリング及び建設機械において、製品販売後及び工事引渡後の保証費用の支出に備えるため、売上高に対する過去の実績率に基づいて算定した将来の負担見積額の他、保証費用を支払う可能性が高い特定案件については、案件毎の将来の負担見積額を、連結貸借対照表の「流動負債」の「製品保証引当金」に174億円計上しております。
実績率については、売上高に対する過去の保証費用の支出額の割合に基づき算定しております。また、特定案件については、出荷した製品の不具合の内容を調査して、修復に係る費用を見積るとともに、不具合が当社の製品に起因しているか否かを判断し、契約等に基づき当社グループが負担する可能性が高いと判断される保証費用の支出額を算定しております。
経営者は、製品保証引当金の算定に用いられる見積りは合理的であると考えておりますが、予期せぬ重大な不具合が発生した場合や、不具合の修復に係る費用が想定から大きく変動した場合等には、将来の製品保証引当金の計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。