有価証券報告書-第136期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/27 14:23
【資料】
PDFをみる
【項目】
118項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、堅調な企業業績や合理化・省力化を中心とした設備投資の増加、個人消費の回復傾向に支えられ、年間を通して緩やかな成長が続きました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、国内景気の緩やかな拡大基調を受け需要も堅調に推移し、需給バランスは改善傾向となりました。
当社の戦略分野である高機能材につきましては、米国・中国をはじめとした旺盛な耐久消費材向け需要や環境・エネルギー分野向け用途の拡大継続、化学・肥料向け用途の回復等、海外向けを中心に需要は堅調に推移いたしました。
当社グループの当連結会計年度の販売数量につきましては、2017年5月14日に発生した熱延工場火災事故の影響もあり前年同期比7.4%減(高機能材8.6%減、一般材7.2%減)となったものの、売上高は1,190億91百万円(前年同期比61億28百万円増)となりました。また、利益面につきましては、営業利益41億68百万円(前年同期比1億84百万円減)、経常利益33億86百万円(前年同期比5億37百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益45億75百万円(前年同期比22億26百万円増)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は1,486億51百万円となり、前連結会計年度末比129億85百万円増加しております。これは主としてたな卸資産の増加(63億18百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における負債の額は1,068億22百万円となり、前連結会計年度末比80億45百万円増加しております。これは主として支払手形及び買掛金の増加(59億48百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における純資産の額は418億29百万円となり、前連結会計年度比49億40百万円増加しております。これにより自己資本比率は28.1%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(40億88百万円)等により、50億31百万円の収入(前連結会計年度比33億31百万円の収入減少)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(△27億46百万円)等により、28億52百万円の支出(前連結会計年度比1億96百万円の支出減少)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済(△115億23百万円)及び調達(95億67百万円)等により、24億75百万円の支出(前連結会計年度比17億53百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて56億80百万円となり、前連結会計年度比2億54百万円減少いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業88,5914.7

(注)1.金額は製品製造原価によっております。
2.上記金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高受注残高
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業123,3607.716,53634.8

(注)上記金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業119,0915.4

(注)1.上記金額には消費税等は含まれておりません。
2.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
ステンレス特殊鋼業界においては、国内景気の緩やかな拡大基調を受けて需要も堅調に推移し、高水準の国内生産が続きました。海外においては、中国をはじめとしたアジア地域における設備能力の過剰状態に大きな改善は見られないものの、ニッケル等の原料価格上昇等を背景に、全体としては安定した需給環境が続きました。
当社の戦略分野である高機能材(ニッケルを20%以上含有する高ニッケル合金の板、帯製品)部門では、米国・中国をはじめとした旺盛な耐久消費財向け需要に加え、石油・ガス分野向け用途の増加、太陽光発電等環境・エネルギー向け用途の拡大継続、化学・肥料向け用途の回復等、海外向けを中心に堅調に推移しました。
このような事業環境のもと、戦略分野の高機能材の拡販とともに、休止設備の再稼動等、ステンレス一般材の生産体制整備に着手し、需要の最大取込を進めてまいりました。しかしながら、2017年5月14日に当社川崎製造所熱延工場で発生した火災事故による生産量の減少は避けられず、販売数量は前年同期比7.4%減となりました。
一方で利益面においては、主原料であるニッケルやその他の原料、副資材価格の上昇に見合った適正な販売価格交渉に取り組んだこと、生産コスト低減に向けた取り組み等により売上高は前年同期比61億28百万円の増収、経常利益は前年同期比5億37百万円の増益となりました。
※連結損益計算書概要 単位:百万円、%
当連結会計年度
(2018年3月期)
前連結会計年度
(2017年3月期)
前年度対比増減率
売上高119,091112,9626,1285.4
営業利益4,1684,352△184△4.2
経常利益3,3862,84953718.8
親会社株主に帰属する当期純利益4,5752,3492,22694.8

b.財政状態
当連結会計年度末時点の資産の状況は、ステンレス特殊鋼の堅調な需要と売上高の増加を背景にたな卸資産が前年同期比で63億18百万円増加、受取手形及び売掛金も23億41百万円増加したこと等により総資産の金額は前年同期比129億85百万円増加の1,486億51百万円となりました。
一方で負債は借入金及び社債の合計残高が前年度対比で13億53百万円減少したものの、支払手形及び買掛金が59億48百万円増加したこと等により、負債の総額は前年同期比80億45百万円増加の1,068億22百万円となりました。
以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比49億40百万円増加の418億29百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は28.1%となり、前年同期比で0.9%上昇しました。
※連結貸借対照表概要 単位:百万円、%
当連結会計年度
(2018年3月期)
前連結会計年度
(2017年3月期)
前年度対比増減率
現金及び預金5,7886,045△256△4.2
受取手形及び売掛金22,81820,4772,34111.4
たな卸資産35,15828,8406,31821.9
固定資産83,21379,9483,2654.1
その他資産1,6753571,318369.0
資産合計148,651135,66612,9859.6
支払手形及び買掛金22,97217,0245,94834.9
借入金及び社債53,84655,199△1,353△2.5
その他負債30,00426,5543,45013.0
負債合計106,82298,7778,0458.1
純資産合計41,82936,8894,94013.4
自己資本比率28.127.20.9-

c.キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(40億88百万円)、減価償却費(36億30百万円)、仕入債務の増加(59億48百万円)による収入の一方で、売上債権の増加(23億41百万円)、たな卸資産の増加(63億35百万円)による支出等により、50億31百万円の収入となり、前年同期比で33億31百万円の収入減少となりました。減価償却費を除く各項目はステンレス特殊鋼の堅調な需要を背景とした生産と販売の増加が反映されたものと認識しております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(27億46百万円)等により28億52百万円支出となり、前年同期比で1億96百万円の支出減少となりました。
以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、21億79百万円となり、前年同期比で31億35百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の削減による借入金及び社債の減少(14億1百万円)の他、前期に実施した1株当たり2円50銭の配当金の支払による支出(3億84百万円)等により、24億75百万円の支出となり、前年同期比で17億53百万円の支出減少となりました。
※連結キャッシュ・フロー計算書概要 単位:百万円
当連結会計年度
(2018年3月期)
前連結会計年度
(2017年3月期)
前年度対比
営業活動によるキャッシュ・フロー5,0318,361△3,331
税金等調整前当期純利益4,0882,7651,322
減価償却費3,6303,844△214
売上債権の増減額(△は増加)△2,341△300△2,041
たな卸資産の増減額(△は増加)△6,335△389△5,947
仕入債務の増減額(△は減少)5,9481,8264,122
その他41615△574
投資活動によるキャッシュ・フロー△2,852△3,048196
有形・無形固定資産の取得による支出△2,746△3,030285
その他△106△18△88
フリー・キャッシュ・フロー2,1795,313△3,135
財務活動によるキャッシュ・フロー△2,475△4,2281,753
借入金及び社債の純増減額(△は減少)△1,401△3,2821,881
配当金の支払額△384△230△155
その他△689△71627
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△2541,105△1,360

②資本の財源及び資金の流動性の状況
当社は「中期経営計画2017」の基本戦略の1つである製造プロセス革新と川崎製造所リフレッシュの実現に向けて、戦略的設備投資を実行いたします。その他の投資を含めた投資規模としては、本中期経営計画期間中の減価償却費の2倍以上に相当する280億円を計画しております。
この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。
資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。
③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容
当社は2017年度を初年度とする「中期経営計画2017」を策定しております。中期経営計画の実行に関する当連結会計年度の主な実績は以下の通りであります。
※「中期経営計画2017」の詳細につきましては、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 [株式会社の支配に関する基本方針](2)基本方針の実現に資する特別な取り組みの概要 に記載のとおりであります。
・高機能材事業では、高度化する中国ユーザーのニーズに応えるべく、南京鋼鉄股份有限公司等との合弁会社(南鋼日邦冶金商貿(南京)有限公司)を設立し、現地生産体制の整備及び販売機能の強化を図りました。
・ステンレス一般材事業では、休止設備の再稼動等の体制整備を進め、生産能力の増強を図りました。
・製造プロセス革新と川崎製造所リフレッシュのための戦略的設備投資に向けた工場レイアウトの再配置に着手し、試験・研究部門施設の一部と従業員の福利厚生施設とを統合させた「複合棟」の建設を決定しました。
・「中期経営計画2017」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。
経常利益(個別)
(百万円)
経常利益(連結)
(百万円)
ROE(%)ネットD/Eレシオ(倍)配当性向(連結)
(%)
中計目標(注)5,5007,0008.0以上1.0未満20.0以上
2017年度実績1,5083,38611.61.213.5
2016年度実績1,5522,8496.61.316.5

(注)中計目標は「中期経営計画2017」の最終年度である2019年度における達成目標であります。
2017年度実績を踏まえた「中期経営計画2017」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。
・収益面の達成目標(経常利益(個別・連結))につきましては、2017年度実績に2017年5月に当社川崎製造所熱延工場にて発生した火災事故による影響が含まれていることを考慮すると順調に進捗していると評価され、最終年度における目標達成は可能な状況であると認識しております。
・財務指標の達成目標(ROE・ネットD/Eレシオ)につきましては、順調に改善が進捗していると評価され、最終年度における目標達成は可能な状況であると認識しております。
・配当性向の達成目標につきましては、当期を含め3期連続で安定的に配当が継続されていることから、最終年度における目標達成は可能な状況であると認識しております。
・設備投資計画につきましては、計画に従い実行しております。
今後につきましては、「中期経営計画2017」において計画している戦略的設備投資を引き続き実行していくとともに、中国合弁会社の戦力化、原料・大江山競争力強化、高機能材の新たな市場の開拓を重点課題として取り組んでまいります。