有価証券報告書-第137期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/26 13:44
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【項目】
163項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、合理化・省力化を中心とした設備投資や個人消費が堅調に推移しましたが、米国と中国の貿易摩擦の激化や英国のEU離脱問題による欧州経済の混乱など、世界経済の先行きへの不透明感から年度後半に減速傾向が見られました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、一部の一般材において輸入量が高水準で推移したことから市中在庫が増加し、需給バランスは調整局面となりました。当社の戦略分野である高機能材につきましては、排煙脱硫装置・船舶向けSOxスクラバーなど環境・エネルギー分野向け用途が拡大したほか、石油・ガス向け用途、有機ELディスプレイ製造用治具・シーズヒーターをはじめとする耐久消費財向け用途など幅広い分野において、海外向けを中心に需要は堅調に推移いたしました。
当社グループの当連結会計年度の販売数量につきましては、前年同期比9.3%増(高機能材23.2%増、一般材4.8%増)となり、売上高は143,740百万円(前年同期比24,649百万円増)となりました。また、利益面につきましては、営業利益9,443百万円(前年同期比5,275百万円増)、経常利益8,178百万円(前年同期比4,792百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,686百万円(前年同期比3,111百万円増)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は150,115百万円となり、前連結会計年度末比2,492百万円増加しております。これは主としてたな卸資産の増加(2,515百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における負債の額は102,175百万円となり、前連結会計年度末比3,619百万円減少しております。これは主として支払手形及び買掛金の減少(2,779百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における純資産の額は47,940百万円となり、前連結会計年度比6,111百万円増加しております。これにより自己資本比率は31.9%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(8,236百万円)等により、9,172百万円の収入(前連結会計年度比4,141百万円の収入増加)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(6,396百万円)等により、6,207百万円の支出(前連結会計年度比3,355百万円の支出増加)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済(8,081百万円)及び調達(6,896百万円)等により、2,417百万円の支出(前連結会計年度比57百万円の支出減少)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて6,257百万円となり、前連結会計年度比577百万円増加いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業104,62818.1

(注)1.金額は製品製造原価によっております。
2.上記金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高受注残高
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業144,10716.816,9042.2

(注)上記金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業143,74020.7

(注)1.上記金額には消費税等は含まれておりません。
2.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
ステンレス特殊鋼業界におきましては、国内景気の緩やかな回復傾向を背景に建築資材用途を中心として需要は堅調な動きを示しましたが、中国をはじめとしたアジア地域における設備能力が引き続き過剰状態にあり、一部のステンレス一般材において輸入量が高レベルで推移し、第2四半期以降、市中在庫の過剰感から在庫調整局面が続きました。
一方、当社の戦略分野である高機能材(ニッケルを20%以上含有する高ニッケル合金の板、帯製品)部門では、石油・ガス分野向け用途や排煙脱硫装置、船舶向けSOxスクラバー等の環境・エネルギー向け用途、有機ELディスプレイ製造用治具、バイメタルやシーズヒーターをはじめとする耐久消費財向け用途など幅広い分野において、海外向けを中心に需要は順調に推移いたしました。
こうした事業環境のもと、当社グループといたしましては、ステンレス一般材部門では在庫レベルの正常化を意識した需要見合いの販売量を維持しつつ、生産コストに応じた販売価格の適正化に努める一方、戦略分野である高機能材部門では一層の拡販に注力してまいりました。また、原料関連を中心にさらなるコスト削減にも努めてまいりました。
この結果、当社における当年度の販売数量は前年同期比9.3%増(高機能材23.2%増、一般材4.8%増)となり、当連結会計年度の売上高は143,740百万円(前年同期比24,649百万円増)、経常利益は8,178百万円(前年同期比4,792百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,686百万円(前年同期比3,111百万円増)となりました。
※連結損益計算書概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2019年3月期)
前連結会計年度
(2018年3月期)
前年度対比増減率
売上高143,740119,09124,64920.7
営業利益9,4434,1685,275126.6
経常利益8,1783,3864,792141.5
親会社株主に帰属する当期純利益7,6864,5753,11168.0


b.財政状態
当連結会計年度末時点の資産の状況は、ステンレス特殊鋼の堅調な需要と売上高の増加を背景にたな卸資産が前年同期比で2,515百万円増加、当社川崎製造所『複合棟』の建設等により有形固定資産が1,293百万円増加したこと等により総資産の金額は前年同期比2,492百万円増加の150,115百万円となりました。
一方で負債は、支払手形及び買掛金が2,779百万円減少、借入金及び社債の合計残高が前年度対比で695百万円減少したこと等により負債の総額は前年同期比3,619百万円減少の102,175百万円となりました。
以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比6,111百万円増加の47,940百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は31.9%となり、前年同期比で3.6%上昇しました。
※連結貸借対照表概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2019年3月期)
前連結会計年度
(2018年3月期)
前年度対比増減率
現金及び預金6,3595,7885719.9
受取手形及び売掛金21,78822,818△1,030△4.5
たな卸資産37,67335,1582,5157.2
固定資産83,63583,2284070.5
その他資産660631294.6
資産合計150,115147,6242,4921.7
支払手形及び買掛金20,19322,972△2,779△12.1
借入金及び社債53,15153,846△695△1.3
その他負債28,83128,976△145△0.5
負債合計102,175105,794△3,619△3.4
純資産合計47,94041,8296,11114.6
自己資本比率31.928.33.6

c.キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(8,236百万円)、減価償却費(3,798百万円)、売上債権の減少(1,030百万円)による収入の一方で、仕入債務の減少(2,778百万円)、たな卸資産の増加(2,515百万円)による支出等により、9,172百万円の収入となり、前年同期比で4,141百万円の収入増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(6,396百万円)等により6,207百万円の支出となり、前年同期比で3,355百万円の支出増加となりました。
以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、2,965百万円となり、前年同期比で786百万円増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の削減による借入金及び社債の減少(716百万円)の他、当期中に支払った1株当たり合計6円の配当金の支払による支出(1,077百万円)等により、2,417百万円の支出となり、前年同期比で57百万円の支出減少となりました。
※連結キャッシュ・フロー計算書概要単位:百万円
当連結会計年度
(2019年3月期)
前連結会計年度
(2018年3月期)
前年度対比
営業活動によるキャッシュ・フロー9,1725,0314,141
税金等調整前当期純利益8,2364,0884,148
減価償却費3,7983,630168
売上債権の増減額(△は増加)1,030△2,3413,371
たな卸資産の増減額(△は増加)△2,515△6,3353,820
仕入債務の増減額(△は減少)△2,7785,948△8,726
その他1,401411,360
投資活動によるキャッシュ・フロー△6,207△2,852△3,355
有形・無形固定資産の取得による支出△6,396△2,746△3,651
その他189△106295
フリー・キャッシュ・フロー2,9652,179786
財務活動によるキャッシュ・フロー△2,417△2,47557
借入金及び社債の純増減額(△は減少)△716△1,401684
配当金の支払額△1,077△384△693
その他△624△68966
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)577△254831

②資本の財源及び資金の流動性の状況
当社は「中期経営計画2017」の基本戦略の1つである製造プロセス革新と川崎製造所リフレッシュの実現に向けて、戦略的設備投資を実行しております。その他の投資を含めた投資規模としては、本中期経営計画期間中の減価償却費の2倍以上に相当する280億円を計画しております。
この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。
資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。
③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容
当社は2017年度を初年度とする「中期経営計画2017」を策定しております。中期経営計画の実行に関する当連結会計年度の主な実績は以下の通りであります。
※「中期経営計画2017」の詳細につきましては、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 [株式会社の支配に関する基本方針](2)基本方針の実現に資する特別な取組みの概要 に記載のとおりであります。
・高機能材事業では、注力製品である高耐食・耐熱ニッケル合金コイルの広幅化、高強度合金を主体とした設備能力向上による増産体制整備、および機動的な在庫・仕掛り運営等により、中期経営計画最終年度(2019年度)の販売目標(3,000t/月)を1年前倒しで達成いたしました。市場拡大の面では、中国合弁会社(南鋼日邦冶金商貿(南京)有限公司)の活用による中国市場の深耕、環境・エネルギー分野を中心としたインド市場の開拓を行いました。
・ステンレス一般材部門では、国内市場の構造変化を睨んで、お客様との関係強化を図りつつ、国内市場での確固たるプレゼンスの確立のため、冷延供給体制強化を実施し生産能力増強を図りました。
・製造プロセス革新と川崎製造所リフレッシュのための戦略的設備投資に向け、工場レイアウトの再配置に着手し、『複合棟』が完成いたしました。
・「中期経営計画2017」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。
経常利益(個別)
(百万円)
経常利益(連結)
(百万円)
ROE(%)ネットD/Eレシオ(倍)配当性向(連結)
(%)
中計目標
(注)
5,5007,0008.0以上1.0未満20.0以上
2018年度実績6,1838,17817.11.012.1
2017年度実績1,5083,38611.61.213.5
2016年度実績1,5522,8496.61.316.5

(注)中計目標は「中期経営計画2017」の最終年度である2019年度における達成目標であります。
2018年度実績を踏まえた「中期経営計画2017」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。
・収益面の達成目標(経常利益(個別・連結))につきましては、中計目標を1年前倒しで達成いたしました。
・財務指標の達成目標(ROE・ネットD/Eレシオ)につきましては、順調に改善が進捗していると評価され、最終年度における目標達成は可能な状況であると認識しております。
・配当性向の達成目標につきましては、当期を含め3期連続で安定的に配当が継続されていることから、最終年度における目標達成は可能な状況であると認識しております。
・設備投資計画につきましては、計画に従い実行しております。
今後につきましては、『中期経営計画2017』において計画している戦略的設備投資のタイムリーな実行による納期、品質、コスト競争力のレベルアップ、原料・大江山製造所の競争力強化、中国合弁事業の更なる深掘り、高機能材の新たな市場開拓等を重点課題として取り組んでまいります。