有価証券報告書-第138期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/25 14:46
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【項目】
162項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、民間企業の設備投資や個人消費が堅調に推移しましたが、米中間をはじめとする各国間の通商摩擦問題の解決が長引いていることによる経済成長鈍化懸念により輸出産業を中心に先行きが不透明な状況が続きました。また、10月1日の消費税率改定や、2月以降新型コロナウィルス感染症(以下、「感染症」とする)対策として外出自粛が強く要請されたことにより、個人消費の減少等を中心に景気が急減速する局面となりました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、昨年度から続いた市中在庫増加による需給バランス調整は終息したものの、工作機械関連や自動車関連等の一部分野で需要が低迷しました。当社の戦略分野である高機能材につきましては、排煙脱硫装置・船舶向けSOxスクラバーなど環境・エネルギー分野向け用途の拡大が継続したほか、石油・ガス向け用途やプレスプレート用途など幅広い分野において、海外向けを中心に需要は堅調に推移致しました。
当社グループの当連結会計年度の販売数量につきましては、前年同期比8.3%減(高機能材4.9%減、一般材7.6%減)となり、売上高は136,373百万円(前年同期比7,366百万円減)となりました。また、利益面につきましては、営業利益7,838百万円(前年同期比1,605百万円減)、経常利益6,342百万円(前年同期比1,836百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,325百万円(前年同期比2,361百万円減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は158,568百万円となり、前連結会計年度末比8,453百万円増加しております。これは主として現金及び預金の増加(11,132百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における負債の額は107,437百万円となり、前連結会計年度末比5,262百万円増加しております。これは主として借入金及び社債の増加(10,723百万円)、支払手形及び買掛金の減少(3,340百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における純資産の額は51,131百万円となり、前連結会計年度比3,191百万円増加しております。これにより自己資本比率は32.2%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(6,144百万円)、たな卸資産の減少(1,931百万円)、売上債権の減少(1,384百万円)等により、7,979百万円の収入(前連結会計年度比1,192百万円の収入減少)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(5,505百万円)等により、5,511百万円の支出(前連結会計年度比696百万円の支出減少)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行(5,000百万円)及び償還(754百万円)長期借入金の調達(11,401百万円)及び返済(8,859百万円)等により、8,692百万円の収入(前連結会計年度比11,109百万円の収入増加)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて17,398百万円となり、前連結会計年度比11,141百万円増加いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業101,544△2.9

(注)1.金額は製品製造原価によっております。
2.上記金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高受注残高
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
金額(百万円)前年同期比増減
(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業135,212△6.215,743△6.9

(注)上記金額には消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
セグメントの名称金額(百万円)前年同期比増減(%)
ステンレス鋼板及びその加工品事業136,373△5.1

(注)1.上記金額には消費税等は含まれておりません。
2.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、米中貿易摩擦、英国のEU離脱問題などを背景に海外経済が減速する中、年度前半は内需により小幅ながらも成長を維持したものの、消費増税後の後半は個人消費のみならず生産活動が弱まり、更に年度末にかけて新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、景気は急速に悪化しました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、半導体関連需要の低迷や自動車関連の需要減退により、市中在庫の調整局面が続く状況となりステンレス鋼の需要が盛り上がりに欠ける中、更に原料のニッケル価格が下落することで需要家の買い控え等も追い打ちをかける結果となりました。一方、当社の戦略分野である高機能材(ニッケルを20%以上含有する高ニッケル合金の板、帯製品)では、石油・ガス分野向け用途や排煙脱硫装置、船舶向けSOxスクラバー等の環境・エネルギー分野向け用途等において、海外向けを中心に需要は引続き堅調に推移いたしました。
こうした事業環境のもと、当社グループといたしましては、ステンレス一般材においては在庫レベル正常化を意識した需要見合いの販売量を維持しつつ、生産コストに応じた販売価格の適正化に努める一方、戦略分野である高機能材におきましては一層の拡販に注力してまいりました。
この結果、当社における当年度の販売数量は前年同期比8.3%減(高機能材4.9%減、一般材7.6%減)となり、当連結会計年度の売上高は136,373百万円(前年同期比7,366百万円減)、経常利益は6,342百万円(前年同期比1,836百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,325百万円(前年同期比2,361百万円減)となりました。
※連結損益計算書概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2020年3月期)
前連結会計年度
(2019年3月期)
前年度対比増減率
売上高136,373143,740△7,366△5.1
営業利益7,8389,443△1,605△17.0
経常利益6,3428,178△1,836△22.4
親会社株主に帰属する当期純利益5,3257,686△2,361△30.7


b.財政状態
当連結会計年度末時点の資産の状況は、将来の設備投資資金を確保するため前倒しで資金調達を行ったことにより現預金残高が11,132百万円増加したこと、たな卸資産が1,931百万円減少したこと、前連結会計年度の期末日が銀行休日であったため当連結会計年度末の売上債権の残高が相対的に減少したこと等により総資産の金額は前年同期比8,453百万円増加の158,568百万円となりました。
一方で負債は、上述の通り将来の設備投資資金を社債の発行及び長期借入金の新規借入により調達したため、借入金及び社債の合計残高が10,723百万円増加したこと、前連結会計年度の期末日が銀行休日であったため当連結会計年度末の仕入債務の残高が相対的に減少したこと等により負債の総額は前年同期比5,262百万円増加の107,437百万円となりました。
以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比3,191百万円増加の51,131百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は32.2%となり、前年同期比で0.3%上昇しました。
※連結貸借対照表概要単位:百万円、%
当連結会計年度
(2020年3月期)
前連結会計年度
(2019年3月期)
前年度対比増減率
現金及び預金17,4916,35911,132175.1
受取手形及び売掛金20,40421,788△1,384△6.4
たな卸資産35,74237,673△1,931△5.1
固定資産83,94283,6353070.4
その他資産98966032849.7
資産合計158,568150,1158,4535.6
支払手形及び買掛金16,85320,193△3,340△16.5
借入金及び社債63,87453,15110,72320.2
その他負債26,71028,831△2,121△7.4
負債合計107,437102,1755,2625.2
純資産合計51,13147,9403,1916.7
自己資本比率32.231.90.3-

c.キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(6,144百万円)、減価償却費(3,892百万円)、たな卸資産の減少(1,931百万円)売上債権の減少(1,384百万円)による収入の一方で、仕入債務の減少(3,341百万円)、法人税等の支払(1,578百万円)による支出等により、7,979百万円の収入となり、前年同期比で1,192百万円の収入減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(5,505百万円)等により5,511百万円の支出となり、前年同期比で696百万円の支出減少となりました。
以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、2,469百万円となり、前年同期比で496百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、将来の設備投資資金の前倒し調達による借入金及び社債の増加による収入(10,731百万円)の他、当期中に支払った1株当たり合計60円(2019年10月1日付で行った株式併合の影響を考慮した金額)の配当金の支払による支出(916百万円)、自己株式取得による支出(623百万円)等により、8,692百万円の支出となり、前年同期比で11,109百万円の収入増加となりました。
※連結キャッシュ・フロー計算書概要単位:百万円
当連結会計年度
(2020年3月期)
前連結会計年度
(2019年3月期)
前年度対比
営業活動によるキャッシュ・フロー7,9799,172△1,192
税金等調整前当期純利益6,1448,236△2,092
減価償却費3,8923,79894
売上債権の増減額(△は増加)1,3841,030354
たな卸資産の増減額(△は増加)1,931△2,5154,446
仕入債務の増減額(△は減少)△3,341△2,778△563
その他△2,0301,401△3,431
投資活動によるキャッシュ・フロー△5,511△6,207696
有形・無形固定資産の取得による支出△5,505△6,396891
その他△6189△195
フリー・キャッシュ・フロー2,4692,965△496
財務活動によるキャッシュ・フロー8,692△2,41711,109
借入金及び社債の純増減額(△は減少)10,731△71611,447
配当金の支払額△916△1,077162
その他△1,123△624△499
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)11,14157710,564

②資本の財源及び資金の流動性の状況
当社は「中期経営計画2020」の基本戦略の1つである「戦略設備投資の実行と技術力の更なる向上による競争力強化」に向けて、高効率電気炉設備をはじめとした戦略的設備投資を実行してまいります。
この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。
資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。
③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容
当社は、これまで2017年度をスタートとする3ヵ年計画「中期経営計画2017」を策定し、高機能材事業と一般材事業を両輪に国内外において競争力あるステンレス特殊鋼メーカーとして勝ち抜くための諸施策を実行してまいりました。その結果、2017年度からの3年間合計で連結経常利益179億円(「中期経営計画2017」3年間計画合計170億円)を計上するなど、収益面では一定程度の成果をあげることができました。一方、この3年間において、中国経済のプレゼンス拡大とその成長鈍化、環境問題・地球温暖化対応の鮮明化、国内における人口減少に伴う労働力不足の慢性化など、事業環境は大きく変化してきており、当社グループが今後も持続的に成長していくためには乗り越えるべき課題が山積している状況にあります。
こうした事業環境の構造変化を踏まえて、当社グループが2025年の当社創立100周年、さらには、その先もレジリエント(困難な状況に直面した際の強靭さや回復力がある)かつ持続的な成長を遂げるために、2020年度からの3か年で実行すべき施策を『中期経営計画2020』として取り纏めました。
※「中期経営計画2020」の詳細につきましては、1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 [中長期的な会社の経営戦略]に記載の通りであります。
「中期経営計画2017」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。
経常利益(個別)
(百万円)
経常利益(連結)
(百万円)
ROE(%)ネットD/Eレシオ(倍)配当性向(連結)
(%)
中計目標
(注)
5,5007,0008.0以上1.0未満20.0以上
2019年度実績5,0926,34210.80.917.1
2018年度実績6,1838,17817.11.012.1
2017年度実績1,5083,38611.61.213.5

(注)中計目標は「中期経営計画2017」の最終年度である2019年度における達成目標であります。
2019年度実績を踏まえた「中期経営計画2017」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。
・収益面の達成目標(経常利益(個別・連結))につきましては、上述の通り一定の成果をあげることができたと評価しておりますが、一方で今後に向けた新たな課題も浮き彫りになりました。
・財務指標の達成目標(ROE・ネットD/Eレシオ)につきましては、順調に改善が進捗し、中計で掲げた最終年度における目標を達成することができました。
・配当性向の達成目標につきましては、目標値には若干届かなかったものの、安定的に配当が継続されており、一定の評価に値する結果であると認識しております。
・設備投資計画につきましては、計画に従い実行しております。
今後につきましては、今般新たに策定された『中期経営計画2020』において掲げた諸施策を着実に実行し、「業界トップレベルの品質・納期・対応力で信頼され続けるグローバルサプライヤー」としての姿を目指して邁進してまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報) 及び 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載があります。
a.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、期末時点で翌期以降の連結会計年度の計画数値として見込んだ経常利益金額を、過去の計画の達成状況と整合的に修正し見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
b.退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、予想昇給率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)(5)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。